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JP2010067756A - 圧電体膜、圧電素子、及び液体吐出装置 - Google Patents

圧電体膜、圧電素子、及び液体吐出装置 Download PDF

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JP2010067756A
JP2010067756A JP2008232005A JP2008232005A JP2010067756A JP 2010067756 A JP2010067756 A JP 2010067756A JP 2008232005 A JP2008232005 A JP 2008232005A JP 2008232005 A JP2008232005 A JP 2008232005A JP 2010067756 A JP2010067756 A JP 2010067756A
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Hiroyuki Kobayashi
宏之 小林
Yukio Sakashita
幸雄 坂下
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Abstract

【課題】より高い圧電性能を得ることが可能な新規なドメイン構造の圧電体膜を提供する。
【解決手段】圧電体膜1は、結晶配向性を有する複数のペロブスカイト型酸化物膜1A,1Bが積層されたものである。複数のペロブスカイト型酸化物膜は、互いに隣接する膜の自発分極軸方向が異なるという関係を有している。複数のペロブスカイト型酸化物膜は、互いに隣接する膜の結晶系が異なっていることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、結晶配向性を有する複数のペロブスカイト型酸化物膜が積層された圧電体膜、及びこれを用いた圧電素子及び液体吐出装置に関するものである。
強誘電性を有するペロブスカイト型酸化物は、圧電素子やスイッチング素子等の用途に利用されている。例えば、良好な圧電特性を示すペロブスカイト型酸化物としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が知られている。PZTは、モルフォトロピック相境界(MPB)及びその近傍で高い圧電性能を示すと言われている。図8にPZT系の相図を示す。PZT系では、Zrリッチなときに菱面体晶系、Tiリッチなときに正方晶系となり、Zr/Tiモル比=55/45近傍が菱面体晶系と正方晶系との相境界、すなわちMPBとなっている。
近年、PZTのMPB領域に関する研究が進んでおり、そのナノドメイン構造が解析されてきている。非特許文献1には、PbZr1−xTiセラミックス(x=0.425、0.44、0.45、0.46、0.475、0.55)について、高分解能シンクロトロンXRDによる結晶構造解析と高分解能TEMによるドメイン観察が報告されている。図9A〜図9Dに、非特許文献1のFIG.1に記載のXRDパターンとTEM写真を示す。
図9A及び図9Bに示すように、Zr/Ti=54/46,55/45(x=0.46,0.45、いずれもMPB組成)では、100nm程度の縞状のマイクロドメインが見られ、さらに各マイクロドメインはより小さな3〜30nmのナノドメインにより構成されていることが観察されている。これらのナノドメインは菱面体晶の対称性を有していると考えられている。
図9Cに示すように、Zr/Tiモル比=45/55(x=0.55)では、正方晶系にて典型的に見られる縞状のマイクロドメインが観察されている。図9Dに示すように、Zr/Ti=57.5/42.5(x=0.425)では、菱面体晶系にて典型的に見られるヘリンボーン型のマイクロドメインが観察されている。これら非MPB組成では、MPB組成のようなナノドメインは観察されていない。
他の文献には、非MPB組成のPZTのマイクロドメインに対して電界を印加してもドメインに大きな変化は見られないが、MPB組成のPZTのナノドメインに対して電界を印加するとドメインが相転移して変化することをTEMにより直接観察した例が報告されている。
以上のように、近年の研究によって、PZTにおいてMPB領域で高圧電性能が得られるのは、ドメインサイズが小さくナノオーダーであることによることが明らかとなっている。
一方、近年の圧電体の研究では、互いに隣接するドメインの境界部分に形成されるドメインウォールは外部電界に対して敏感に反応して格子歪みを発生させるため、通常のドメイン領域よりもドメインウォール領域において大きな圧電性能が得られることが報告されている。
例えば、山梨大学の和田智志は非特許文献2において、BaTiOの単結晶もしくはバルクセラミックスについて熱処理と印加電界を工夫することで、通常のドメインとドメインウォールとの体積比の異なる複数のサンプルを調製している。そして、通常のドメインとドメインウォールとの体積比と圧電定数の測定結果とから通常のドメインとドメインウォールの圧電定数を各々求めており、通常のドメイン領域ではd33=90〜224pC/Nであるのに対し、ドメインウォール領域ではd33≒80,000pC/Nにも達すると報告している。
PHYSICAL REVIEW B 75 , 184117 (2007) 「開発・製品企画者のための革新的環境調和型無機材料開発の最前線」テキスト、2007.11.29、東工大すずかけ台キャンパス
圧電歪には、
(1)自発分極軸のベクトル成分と電界印加方向とが一致したときに、電界印加強度の増減によって電界印加方向に伸縮する通常の圧電歪(電界誘起歪)、
(2)電界印加強度の増減によって分極軸が可逆的に非180°回転(例えば90°回転等)することで生じる圧電歪(特開2004-363557号公報等)、
(3)電界印加強度の増減によって結晶を相転移させ、相転移による体積変化を利用する圧電歪(特許第3568107号公報等)などが挙げられる。
可逆的非180°ドメイン回転による圧電歪(2)、及び相転移による圧電歪(3)では、通常の圧電歪(1)よりも大きな歪が得られる。
非特許文献1には、正方晶組成からMPB組成に近づくにつれて、格子定数比c/aが小さくなり、XRDパターンの回折ピークの半値幅が大きくなることが記載されている(図9A〜図9DのXRDパターンを参照。)。非特許文献1のTABLE IIには、PZTのZr/Tiモル比と格子定数比c/aとの関係が記載されている。表1に、Zr/Tiモル比と結晶系と格子定数比c/aとの関係を示す。表1に示すように、正方晶組成→MPB組成→菱面体晶組成の順にc/aが小さくなっている。
MPB組成では、2つの結晶系が共存した状態にある。これら2つの結晶系は組成が同一であるため、結晶系は異なっていても、格子定数比c/aは1.0に近くなってしまう。
PZTではMPB組成で高い圧電性能を示すと言われている。しかしながら、他の組成系への応用を考えると、組成系が変わるごとにMPB組成を探索しなければならず、材料設計に手間がかかってしまう。材料によっては、MPBのないものもある。
しかも、MPB組成では格子定数比c/aが1.0に近くなるため、可逆的非180°ドメイン回転による圧電歪(2)あるいは相転移による圧電歪(3)は大きく得られない(図4のイメージ図を参照)。すなわち、可逆的非180°ドメイン回転による圧電歪(2)あるいは相転移による圧電歪(3)の観点からすれば、MPB組成は不利である。
また、非特許文献2には、ドメインウォールにおいて大きな圧電性能が得られることが報告されている。しかしながら、単結晶あるいはバルクセラミックスにおいて基礎研究がなされている段階であり、ドメインウォールを効果的に利用した構造については、報告されていない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、より高い圧電性能を得ることが可能な新規なドメイン構造の圧電体膜を提供することを目的とするものである。
本発明はまた、可逆的非180°ドメイン回転による圧電歪、及び/又は相転移による圧電歪を効果的に得ることが可能な新規なドメイン構造の圧電体膜を提供することを目的とするものである。
本発明はまた、ドメインウォールの圧電歪を効果的に利用した新規なドメイン構造の圧電体膜を提供することを目的とするものである。
本発明の第1の圧電体膜は、結晶配向性を有する複数のペロブスカイト型酸化物膜が積層された圧電体膜において、
前記複数のペロブスカイト型酸化物膜は、互いに隣接する膜の自発分極軸方向が異なるという関係を有していることを特徴とするものである。
本発明の第2の圧電体膜は、結晶配向性を有する複数のペロブスカイト型酸化物膜が積層された圧電体膜において、
前記複数のペロブスカイト型酸化物膜は、互いに隣接する膜の結晶系が異なっており、かつ、互いに隣接する膜の自発分極軸方向が異なるという関係を有していることを特徴とするものである。
本明細書において、「ペロブスカイト型酸化物膜」は1種又は複数種のペロブスカイト型酸化物を主成分とする膜と定義する。本明細書において、「膜の主成分」は80モル%以上の成分と定義する。
本明細書において、「結晶配向性を有する」とは、Lotgerling法により測定される配向率Fが、80%以上であることと定義する。
配向率Fは、下記式(i)で表される。
F(%)=(P−P0)/(1−P0)×100・・・(i)
式(i)中、Pは、配向面からの反射強度の合計と全反射強度の合計の比である。(001)配向の場合、Pは、(00l)面からの反射強度I(00l)の合計ΣI(00l)と、各結晶面(hkl)からの反射強度I(hkl)の合計ΣI(hkl)との比({ΣI(00l)/ΣI(hkl)})である。例えば、ペロブスカイト結晶において(001)配向の場合、P=I(001)/[I(001)+I(100)+I(101)+I(110)+I(111)]である。
P0は、完全にランダムな配向をしている試料のPである。
完全にランダムな配向をしている場合(P=P0)にはF=0%であり、完全に配向をしている場合(P=1)にはF=100%である。
強誘電性を有するペロブスカイト型酸化物の自発分極軸方向は、結晶系によって決まる。主な結晶系の自発分極軸は以下の通りである。
正方晶系:<001>、菱面体晶系:<111>、斜方晶系:<110>、単斜晶系:<110>。
互いに隣接する膜の自発分極のベクトルが同一2次元面上になく、3次元的にずれている場合、互いに隣接する膜の自発分極軸方向と膜の厚み方向とのなす角θは同一でもよいし、非同一でもよい。
互いに隣接する膜の自発分極のベクトルが同一2次元面上にあるが、ベクトルの少なくとも1つの座標成分の正負が異なる場合、互いに隣接する膜の自発分極軸方向と膜の厚み方向とのなす角θは同一でもよいし、非同一でもよい。
互いに隣接する膜の自発分極のベクトルが同一2次元面上にあり、ベクトルの各座標成分の正負がいずれも同一の場合、互いに隣接する膜の自発分極軸方向と膜の厚み方向とのなす角θは非同一である。
上記いずれの態様にせよ、互いに隣接する膜の自発分極軸方向と膜の厚み方向とのなす角θは1°以上ずれていることが好ましく、5°以上ずれていることがより好ましい。
ペロブスカイト型酸化物膜の積層構造は下記の非特許文献3〜6に記載されている。
非特許文献3の請求項1には、少なくとも2種類の酸化物セラミックスを積層させたセラミックス超格子において、前記酸化物セラミックスが、ペロブスカイト型結晶であり、且つ互いに一定の結晶方位の関係を保って基板上に成長しており、該ペロブスカイト型結晶の層の成長厚さを、該ペロブスカイト型結晶の単位格子長を成長単位として、その整数倍となるようにしたことを特徴とするセラミックス超格子が開示されている。非特許文献3の請求項2及び実施例には、SrVO及びSrTiOの積層構造が記載されている。これらSrVO及びSrTiOはいずれも磁性体であり強誘電体ではない。非特許文献3の請求項6等には、上記セラミックス超格子が低温バリスター等に利用できることが記載されている。
非特許文献4の請求項1には、異なる強誘電体を少なくとも2種類積層したことを特徴とする超格子構造を有する強誘電体薄膜が開示されている。非特許文献4の実施例には、SrTiO及びBaTiOの積層構造が記載されている。非特許文献4の請求項1には異なる強誘電体を少なくとも2種類積層したとあるが、SrTiOは結晶系が立方晶系であり、強誘電体ではない。非特許文献4の請求項7,8等には、上記強誘電体薄膜が赤外線センサ及び圧力センサ等に利用できることが記載されている。
非特許文献5の請求項1には、基板結晶面上に原子層単位で酸化物がエピタキシー積層成長されていることを特徴とする酸化物人工超格子薄膜が開示されている。非特許文献5の実施例には、LaCrO及びLaFeOの積層構造が記載されている。非特許文献5の図2には、これらの結晶格子構造が同一であることが記載されている。LaCrO及びLaFeOはいずれも磁性体であり強誘電体ではない。
非特許文献6の請求項1には、基板上に、化学式ABO (ただし、AはCa、Sr、Ba、Pb、Laからなる群より選択された少なくとも1種の元素;BはTi、Zr、Nb、Taからなる群より選択された少なくとも1種の元素)で表される少なくとも2種類のペロブスカイト型酸化物薄膜が積層された酸化物超格子において、前記酸化物薄膜が、それぞれの分極軸と異なる方位に配向していることを特徴とする酸化物超格子が開示されている。非特許文献6の請求項2,3及び図2等には、いずれも(111)面配向であるBaTiOとSrTiOとの積層構造が記載されている。非特許文献6の請求項2,4及び図3等には、いずれも(110)面配向であるBaTiOとSrTiOとの積層構造が記載されている。SrTiOは結晶系が立方晶系であり、強誘電体ではない。
非特許文献3:特開平5-221800号公報、
非特許文献4:特開平7-82097号公報、
非特許文献5:特開2000-154100号公報、
非特許文献6:特開2001-302400号公報。
上記非特許文献3〜6はいずれも互いに隣接する膜の自発分極軸方向が異なるという関係を有しているものではない。
例えば、非特許文献5に記載の積層構造において、LaCrO及びLaFeOはいずれも磁性体であり強誘電体ではないので、そもそも自発分極性を有していない。すなわち、この文献では、成長させる結晶面による磁性状態の制御についてのみ記載されており、誘電性については一切触れられていない。しかも、この文献の図2等には、LaCrO膜及びLaFeO膜が同一方向に結晶配向しており、磁界方向が同一であることが記載されている。
非特許文献6に記載の積層構造において、SrTiOは結晶系が立方晶系であり、強誘電体ではないので、そもそも自発分極性を有していない。しかも、この文献の図2及び図3等には、BaTiO膜とSrTiO膜の結晶配向方向が同一であることが記載されている。
また、非特許文献3〜6には、可逆的非180°ドメイン回転構造あるいは相転移構造については記載がない。非特許文献3〜6には、ドメインウォールについても記載がない。
本発明の圧電素子は、上記の本発明の第1又は第2の圧電体膜と、該圧電体膜に対して電界を印加する電極とを備えたことを特徴とするものである。
本発明の液体吐出装置は、上記の本発明の圧電素子と、該圧電素子に隣接して設けられた液体吐出部材とを備え、該液体吐出部材は、液体が貯留される液体貯留室と、前記圧電体膜に対する前記電界の印加に応じて該液体貯留室から外部に前記液体が吐出される液体吐出口とを有することを特徴とするものである。
本発明の圧電体膜は、互いに隣接する膜の自発分極軸方向が異なる複数のペロブスカイト型酸化物膜の積層構造を有するものである。
本発明によれば、より高い圧電性能を得ることが可能な新規なドメイン構造の圧電体膜を提供することができる。
本発明によれば、可逆的非180°ドメイン回転による圧電歪、及び/又は相転移による圧電歪を効果的に得ることが可能な新規なドメイン構造の圧電体膜を提供することができる。
本発明によれば、ドメインウォールの圧電歪を効果的に利用した新規なドメイン構造の圧電体膜を提供することができる。
「圧電体膜」
本発明の第1の圧電体膜は、結晶配向性を有する複数のペロブスカイト型酸化物膜が積層された圧電体膜において、
前記複数のペロブスカイト型酸化物膜は、互いに隣接する膜の自発分極軸方向が異なるという関係を有していることを特徴とするものである。
本発明の第2の圧電体膜は、結晶配向性を有する複数のペロブスカイト型酸化物膜が積層された圧電体膜において、
前記複数のペロブスカイト型酸化物膜は、互いに隣接する膜の結晶系が異なっており、かつ、互いに隣接する膜の自発分極軸方向が異なるという関係を有していることを特徴とするものである。
本発明の第1,第2の圧電体膜はいずれも、構造の異なる複数種類のペロブスカイト型酸化物膜の積層構造を有している。本明細書において、「構造が異なる」は、自発分極軸方向、結晶系、及び組成のうち少なくとも1つが異なることを指す。
互いに隣接する膜が上記規定を充足していれば、構造の異なるペロブスカイト型酸化物膜の種類の数、積層数、各層の膜厚、及び積層パターンについて、特に制限されない。本発明の第1,第2の圧電体膜は例えば、構造の異なる複数種類のペロブスカイト型酸化物膜をそれぞれ2層以上有していることが好ましく、構造の異なる複数種類のペロブスカイト型酸化物膜をそれぞれ2層以上周期的に有していることがより好ましい。
本発明の第1の圧電体膜においては、複数のペロブスカイト型酸化物膜の結晶系がいずれも同じ構造でもよいし、互いに隣接する膜の結晶系が部分的に同じ構造でもよい。本発明の第2の圧電体膜においては、互いに隣接する膜の結晶系が異なっている。いずれの構造においても、複数のペロブスカイト型酸化物膜は、それぞれの膜の結晶系が、正方晶系、菱面体晶系、斜方晶系、及び単斜晶系のうちいずれかであることが好ましい。
主な結晶系の自発分極軸は以下の通りである。
正方晶系:<001>、菱面体晶系:<111>、斜方晶系:<110>、単斜晶系:<110>。
本発明の第1,第2の圧電体膜は、同じ組成の膜の積層構造でもよいし、組成の異なる複数種類の膜の積層構造でもよい。積層構造の設計自由度が高いことから、本発明の第1,第2の圧電体膜において、複数のペロブスカイト型酸化物膜は互いに隣接する膜の組成が異なっていることが好ましい。
本発明の第1,第2の圧電体膜において、複数のペロブスカイト型酸化物膜のうち少なくとも一部の膜は、自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有していることが好ましい。
自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有する膜の結晶系は、<100>方向に結晶配向性を有する菱面体晶系、<110>方向に結晶配向性を有する菱面体晶系、<110>方向に結晶配向性を有する正方晶系、<111>方向に結晶配向性を有する正方晶系、<100>方向に結晶配向性を有する正方晶系、<100>方向に結晶配向性を有する斜方晶系、及び<111>方向に結晶配向性を有する斜方晶系のうちいずれかであることが好ましい。
本明細書において、「<abc>方向に結晶配向性を有する」とは、その方向の結晶配向率Fが80%以上であると定義する。
自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有する膜は、該膜の自発分極軸方向とは異なる方向の電界印加の増減によって分極軸が可逆的に非180°回転することが可能なドメイン、及び/又は該膜の自発分極軸方向とは異なる方向の電界印加により異なる結晶系に相転移することが可能なドメインを有することができる。
本発明の第2の圧電体膜の好ましい態様としては、1層以上の正方晶系のペロブスカイト型酸化物膜と1層以上の菱面体晶系のペロブスカイト型酸化物膜とが積層されたものが挙げられる。かかる態様においては、菱面体晶系のペロブスカイト型酸化物膜が、該膜の自発分極軸方向とは異なる方向の電界印加の増減によって分極軸が可逆的に非180°回転することが可能なドメイン、及び/又は該膜の自発分極軸方向とは異なる方向の電界印加により異なる結晶系に相転移することが可能なドメインを有することができる。
図面を参照して、本発明に係る一実施形態の圧電体膜の構造について説明する。図1は圧電体膜の厚み方向の断面図である。
図1に示す圧電体膜1は、複数の第1のペロブスカイト型酸化物膜1Aと複数の第2のペロブスカイト型酸化物膜1Bとが交互に周期的に積層された積層構造の圧電体膜である。図1では例として、第1のペロブスカイト型酸化物膜1Aと第2のペロブスカイト型酸化物膜1Bとが16層ずつ積層されたものについて図示してある。本発明の圧電体膜は、3種類以上のペロブスカイト型酸化物膜の積層構造でも構わない。
第1のペロブスカイト型酸化物膜1Aと第2のペロブスカイト型酸化物膜1Bの構造の組合せとしては以下の態様が挙げられる。図2A〜図2Dに各態様の構造例を模式的に示す。膜1Aと膜1Bの構造は、図2A〜図2Dに示すものの逆でも構わない。
図2A〜図2D中の矢印は自発分極軸方向を模式的に示すものである。図2A,図2C,及び図2Dにおいて、長方形は正方晶系の結晶格子を模式的に示すものであり、菱形は菱面体晶系の結晶格子を模式的に示すものである。図2A,図2C,及び図2Dでは、各層において結晶格子が面方向にのみ成長しているように図示してあるが、各層において結晶格子は面方向だけでなく厚み方向に成長していても構わない。圧電体膜では通常、膜の厚み方向に電界が印加される。したがって、厚み方向に電界が印加される場合について説明する。
<態様1>膜1Aと膜1Bとは結晶系が同一であるが、優先配向方向が異なる。
図2Aに態様1の一例を模式的に示す。この例では、膜1Aと膜1Bとはいずれも正方晶系であるが、膜1Aは(100)配向(a軸配向)であり、膜1Bは(001)配向(c軸配向)である。膜1Aのc軸(長軸)の長さと膜1Bのa軸(短軸)の長さとが比較的近い組成の場合には、エピタキシャル成長を用いて図2Aに示すような積層構造を作ることができる。
図2Aに示す構造では、a軸配向の膜1Aが、自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有している。a軸配向の膜1Aは、厚み方向の電界印加の増減によって分極軸が可逆的に非180°回転可能なドメインを有することができる。a軸配向の膜1Aにおいては、厚み方向の電界印加によって、少なくとも一部のaドメインがcドメインに90°回転することができる。a軸配向の膜1Aは、厚み方向の電界印加により異なる結晶系(例えば菱面体晶系等)に相転移することが可能なドメインを有することができる。
<態様2>膜1Aと膜1Bとは組成が同一であるが、優先配向方向が異なる。
図2Bに態様2の一例を模式的に示す。この例では、膜1Aと膜1Bとは組成が同じであるが、膜1Aは(001)配向(c軸配向)であり、膜1Bは(111)配向である。膜1Aと膜1Bとは組成が同一であるので、結晶系は同一である。例えば、PZT等をスパッタ法あるいはPLD法等により成膜する場合、成膜時の酸素圧を制御することで、(001)配向と(111)配向とを作り分けることができる。
図2Bに示す構造では、(111)配向の膜1Bが、自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有している。(111)配向の膜1Bは、可逆的非180°ドメイン回転が起こるドメイン、及び/又は相転移が起こるドメインを有することができる。
図2Bに示す構造において、膜1Aを(100)配向とすることもできる。この場合、(100)配向の膜1A及び(111)配向の膜1Bが、自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有することとなる。この場合、(100)配向の膜1A及び/又は(111)配向の膜1Bは、可逆的非180°ドメイン回転が起こるドメイン、及び/又は相転移が起こるドメインを有することができる。
<態様3>膜1Aと膜1Bとは結晶系及び格子定数が同じであるが、結晶格子の向きが異なる。
図2Cに態様3の一例を模式的に示す。この例では、膜1Aと膜1Bとはいずれも同じ格子定数の菱面体晶系の膜であるが、菱面体晶系の結晶格子の向きが異なっている。例えば、エピタキシャル成長を利用することで、結晶格子の成長方向を制御することができる。また、基板を傾けて気相法による成膜を行い、その傾斜角を制御することで、結晶格子の成長方向を制御することができる。
図2Cに示す構造では、膜1A及び膜1Bがいずれも自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有している。膜1A及び/又は膜1Bは、可逆的非180°ドメイン回転が起こるドメイン、及び/又は相転移が起こるドメインを有することができる。菱面体晶系のドメインは、例えば正方晶系のcドメインに相転移することができる。
<態様4>膜1Aと膜1Bとは結晶系が同じであり、優先配向方向も同じであるが、格子定数が異なる。
図2Dに態様4の一例を模式的に示す。この例では、膜1Aと膜1Bとはいずれも菱面体晶系の膜であり、優先配向方向も同じであるが、格子定数が異なっている。格子定数の差は大きく誇張して図示してある。
図2Dに示す構造では、膜1A及び膜1Bがいずれも自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有している。膜1A及び/又は膜1Bは、可逆的非180°ドメイン回転が起こるドメイン、及び/又は相転移が起こるドメインを有することができる。菱面体晶系のドメインは、例えば正方晶系のcドメインに相転移することができる。
本発明の第1,第2の圧電体膜は、互いに隣接する膜の自発分極軸方向が異なる複数のペロブスカイト型酸化物膜の積層構造を有するものである。
本発明の圧電体膜では、複数のペロブスカイト型酸化物膜のうち少なくとも一部の膜は、自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有することができる。この膜は電界印加の増減によって可逆的非180°ドメイン回転が起こるドメイン及び/又は電界印加の増減によって相転移が起こるドメインを有することができる。「発明が解決しようとする課題」の項で述べたように、可逆的非180°ドメイン回転及び/又は相転移が起こるドメイン構造では、自発分極軸のベクトル成分と電界印加方向とが一致したときに、電界印加強度の増減によって電界印加方向に伸縮する通常の圧電歪よりも大きな歪が得られる。
圧電体膜の全体の厚みが同じ場合、積層数が多くなる程、各層の膜厚が薄くなり、通常のドメイン領域のドメインのサイズが小さくなるので、同じ電圧をかけても個々のドメインが変化しやすくなる。したがって、本発明では、圧電体膜の全体の厚みが同じ場合、同じ電圧をかけても単層構造のものよりも、ドメインが変化しやすくなるので、可逆的非180°ドメイン回転及び/又は相転移が起こりやすい。
また、可逆的非180°ドメイン回転及び/又は相転移が起こる膜は、自発分極軸方向が異なる方向である膜に挟まれているので、これら上下の膜の分極軸に引っ張られて、分極軸がより安定な方向に向きやすく、可逆的非180°ドメイン回転及び/又は相転移が効果的に起こると考えられる。
例えば、図2Aに示した態様では、膜1Aが膜1Bの分極軸に引っ張られて、分極軸がより安定な方向に向きやすいと考えられる。図2Bに示した態様では、膜1Bが膜1Aの分極軸に引っ張られて、分極軸がより安定な方向に向きやすいと考えられる。
図2Aの膜1Aのように、可逆的非180°ドメイン回転及び/又は相転移が起こる膜の自発分極軸方向は、電界印加方向に対して垂直方向でもよいし、図2Bの膜1B、図2Cの膜1A,1B、及び図2Dの膜1A,1Bのように、可逆的非180°ドメイン回転及び/又は相転移が起こる膜の自発分極軸方向は、電界印加方向に対して垂直方向から傾斜した方向でもよい。分極軸の回転のしやすさ及び分極軸の戻りやすさを考慮すると、後者、すなわち、可逆的非180°ドメイン回転及び/又は相転移が起こる膜の自発分極軸方向は、電界印加方向に対して垂直方向から傾斜した方向であることが好ましい。かかるドメイン構造については、本発明者が先に出願した特願2007−122099号(本件出願時において未公開)を参照されたい。
「発明が解決しようとする課題」の項において述べたように、MPB組成では格子定数比c/aが1.0に近くなるため、可逆的非180°ドメイン回転による圧電歪あるいは相転移による圧電歪は大きく得られないことを述べた。
本発明では、可逆的非180°ドメイン回転及び/又は相転移が起こる膜の組成を自由に設計でき、その格子定数比c/aを大きくすることができる。したがって、可逆的非180°ドメイン回転及び/又は相転移による圧電歪を効果的に得ることができる。図4には、菱面体晶系から正方晶系への相転移を例として、MPB組成と本発明の設計における格子定数比c/aと相転移による圧電歪の違いのイメージを示してある。
本発明では、MPB組成を探索する必要がないので、膜の組成設計が容易であり、材料設計の幅も広い。MPBのない組成を選択することもできる。
「背景技術」の項において、互いに隣接する2つのドメインの境界部分に形成されるドメインウォールは外部電界に対して敏感に反応して格子歪みを発生させるため、ドメインよりもドメインウォールにおいて大きな圧電性能が得られることを述べた。
図3に示すように、本発明では、互いに隣接するペロブスカイト型酸化物膜の境界部分にドメインウォールDWが形成される(図3ではドメインウォールDWの厚みを誇張して図示してある。)。図3では積層数の比較的多い構造(左図)と比較的少ない構造(右図)について図示してある。
ドメインウォールDWの厚みは積層数を変えても大きくは変わらないと考えられるが、積層数が多くなる程、ドメインウォールDWの数が増える。そのため、積層数が多くなる程、単位体積あたりに占めるドメインウォールDWの体積は大きくなると考えられる。かかる構造では、通常のドメインよりも大きい圧電性能を有するドメインウォールDWの圧電歪が効果的に発現し、より高い圧電性能が得られる。
本発明では、圧電体膜の全体の厚みが同じ場合、積層数が多い方がドメインサイズは小さくなり、より低電界で可逆的非180°ドメイン回転及び/又は相転移が起こりやすくなる。これにより、低電界強度の領域で使用することもできる。このことは省エネルギー等の観点で好ましい。さらに、通常のドメインでは可逆的非180°ドメイン回転及び/又は相転移が起こらず、ドメインウォールDWにおいてのみ可逆的非180°ドメイン回転及び/又は相転移が起こる電界領域で使用しても構わない。
通常のドメイン領域のドメインを小さくできること、及びドメインウォールDWの占める量を多くできることの2つの観点から、本発明では、各層の膜厚が薄い方が好ましく、積層数は多い方が好ましい。
本発明の圧電体膜において、各ペロブスカイト型酸化物膜の膜厚は、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。各ペロブスカイト型酸化物膜の膜厚の下限は特に制限なく、成膜の容易性等を考慮すると、好ましくは5nm以上である。
積層数に関しては、構造の異なる複数種類のペロブスカイト型酸化物膜をそれぞれ2層以上有している構造が好ましく、構造の異なる複数種類のペロブスカイト型酸化物膜をそれぞれ2層以上周期的に有している構造がより好ましい。トータルの積層数は好ましくは10層以上、より好ましくは20層以上である。2種類の膜が交互に積層された積層構造等の周期的な構造であれば、成膜装置の設定等が容易であり、好ましい。
(組成)
本発明の圧電体膜において、各ペロブスカイト型酸化物膜の組成は、特に制限されない。
各ペロブスカイト型酸化物膜は、下記一般式(P)で表される1種又は2種以上のペロブスカイト型酸化物を主成分とすることが好ましい。
一般式ABO・・・(P)
(A:Aサイトの元素であり、Pb,Ba,Sr,Bi,Li,Na,Ca,Cd,Mg,K,及びランタニド元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Mg,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe,Ni,Hf,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
O:酸素。
Aサイト元素とBサイト元素と酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
上記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物としては、
チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ジルコニウム酸鉛、チタン酸鉛ランタン、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、ニッケルニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛、亜鉛ニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛等の鉛含有化合物、及びこれらの混晶系;
チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム等の非鉛含有化合物、及びこれらの混晶系が挙げられる。
電気特性がより良好となることから、上記一般式(P)で表されるペロブスカイト型酸化物は、Mg,Ca,Sr,Ba,Bi,Nb,Ta,W,及びLn(=ランタニド元素(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,及びLu))等の金属イオンを、1種又は2種以上含むものであることが好ましい。
本発明の圧電体膜において、複数のペロブスカイト型酸化物膜は、互いに隣接する膜の組成が異なっていることが好ましい。この場合、各層の結晶系、自発分極軸方向、及び格子定数比c/a等を設計しやすく、より大きな圧電歪を得ることができる。
ペロブスカイト型酸化物においては、ある組成について、下記式で表される許容因子TFとその組成が取る結晶系とには相関関係がある。したがって、例えば、下記式で表される許容因子TFの異なる組成を選択することができる。
TF=(rA+rO)/√2(rB+rO)
(式中、rAはAサイトの平均イオン半径、rBはBサイトの平均イオン半径、rOは酸素のイオン半径である。)
本明細書において、「イオン半径」は、いわゆるShannonのイオン半径を意味している(R. D. Shannon, Acta Crystallogr A32,751 (1976)を参照)。「平均イオン半径」は、格子サイト中のイオンのモル分率をC、イオン半径をRとしたときに、ΣCiRiで表される量である。
TF=1.0のとき、ペロブスカイト構造の結晶格子は最密充填となる。この条件では、Bサイト元素は結晶格子内でほとんど動かず安定した構造を取りやすい。この組成では、立方晶又は疑立方晶などの結晶構造を取りやすい。
TF>1.0のとき、Aサイト元素に対してBサイト元素が小さい。この条件では、結晶格子が歪まなくてもBサイト元素は結晶格子内に入りやすく、かつBサイト元素は結晶格子内で動きやすい。この組成では、正方晶などの結晶構造を取りやすい。
TF<1.0のとき、Aサイト元素に対してBサイト元素が大きい。この条件では、結晶格子が歪まなければBサイト元素が結晶格子内に入らない。この組成では、斜方晶又は菱面体晶などの結晶構造を取りやすい。
例えば、TF>1.0の組成とTF<1.0の組成とを選択すれば、互いに隣接する膜の結晶系の異なる積層構造を得ることができる。
以下に、正方晶系、菱面体晶系、斜方晶系、及び単斜晶系について、組成例を示す。
正方晶系:BaTiO,PbTiO,(Bi0.50.5)TiO,及びこれらの組み合わせ等。
菱面体晶系;PbSnO,BiFeO,Pb(Fe,Nb)O,Pb(Zn,Nb)O,(Bi0.5Na0.5)TiO,及びこれらの組み合わせ等。
斜方晶系;KNbO,NaNbO,PbZrO,及びこれらの組み合わせ等。
単斜晶系;CaZrO,SrZrO,CdTiO,及びこれらの組み合わせ等。
上記各組成について、結晶系と格子定数(Å)を表2に示しておく。KNbO,NaNbO,及びPbZrOは、格子の取り方によって格子定数が変わる。
環境への負荷が少ないことから、本発明の圧電体膜はPbを含まない非鉛系であることが好ましい。Pbを含まないペロブスカイト型酸化物としては、下記一般式(PX)で表されるものが挙げられる。
一般式ABO・・・(PX)
(A:Aサイトの元素であり、Ca,Sr,Ba,La,Bi,K,及びNaからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含み、Pbを含まない。
B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,Nb,Ta,Fe,Al,及びCoからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を含む。
O:酸素。
Aサイト元素とBサイト元素と酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
本発明では、かかる非鉛系においても高圧電性能が得られる。
本発明の圧電体膜の各層は、一般にセラミックスの製造において、焼成温度を下げるあるいは焼結しやすくする等の目的で添加される各種助剤等の添加剤、その他の任意の成分を含むことができる。
(成膜方法)
結晶配向性を有するペロブスカイト型酸化物膜としては、配向膜(1軸配向性を有する膜)とエピタキシャル膜(3軸配向性を有する膜)とが挙げられる。
配向膜は、スパッタ法、MOCVD法、プラズマCVD法、PLD(パルスレーザデポジッション)法、及び放電プラズマ焼結法等の気相法;ゾルゲル法及び有機金属分解法等の液相法などの公知の薄膜形成方法を用い、一軸配向性結晶が生成される条件で成膜することで、形成できる。本発明では、好ましくは膜厚500nm以下の薄膜を複数積層させ、その結晶構造を制御するので、気相法がより好ましい。
エピタキシャル膜は、基板及び下部電極に圧電体膜と格子整合性の良い材料を用いることにより形成できる。エピタキシャル膜を形成可能な基板/下部電極の好適な組合せとしては、SrTiO/SrRuO、及びMgO/Pt等が挙げられる。
例えば、スパッタ法及びPLD法等においては、複数種類のターゲットを設置でき、基板ホルダが回転することでターゲットを変えながら積層成膜することが可能な成膜装置を用いて、複数種類の組成の積層構造の膜を簡易に成膜することができる。
成膜する膜の配向制御は、基板あるいは下地の結晶方位(特に結晶面方位が重要である。)と、基板の熱膨張係数と成膜する膜の熱膨張係数との差によって制御することができる。
本明細書において、「熱膨張係数」は、バルク体について室温〜500℃において測定される一般的な線膨張率を意味するものとする。線膨張率は温度Tの変化に対するバルク体の1辺の長さLの変化率を表し、一般に下記式で表される。
α=(ΔL/L)/ΔT
以下に熱膨張係数の例を示す。
SrTiOの熱膨張係数(/℃)=11.1×10−6
Siの熱膨張係数(/℃)=3.0×10−6
BaTiOの平均的な熱膨張係数(/℃)=10.0×10−6程度(a軸方向の熱膨張係数(/℃)=6.2×10−6、c軸方向の熱膨張係数(/℃)=15.7×10−6)。
基板の熱膨張係数と成膜する膜の熱膨張係数とが略同一の条件では、基板の結晶方位と同一の結晶配向方向を有する膜が成長する。
例えば、(001)SrTiO基板上に下部電極としてSrRuOを成膜すれば該膜は(001)配向となり、その上にペロブスカイト型酸化物膜としてBaTiOあるいはBiFeOを成膜すれば該膜は(001)配向となる。
同様に、(111)SrTiO基板上に下部電極としてSrRuOを成膜すれば該膜は(111)配向となり、その上にペロブスカイト型酸化物膜としてBaTiOあるいはBiFeOを成膜すれば該膜は(111)配向となる。
同様に、(110)SrTiO基板上に下部電極としてSrRuOを成膜すれば該膜は(110)配向となり、その上にペロブスカイト型酸化物膜としてBaTiOあるいはBiFeOを成膜すれば該膜は(110)配向となる。
基板の熱膨張係数と成膜する膜の熱膨張係数とが異なる条件では、基板の結晶方位の他に、基板の熱膨張係数と成膜する膜の熱膨張係数との差が結晶配向方向に影響を与える。結晶配向方向は、成膜温度では温度が高く立方晶構造をとっていたペロブスカイト型酸化物が、成膜後の降温過程において相転移点(=キュリー点)を通過する際に、膜にかかる応力をより緩和する配向方向を選択することで決定されると考えられている。
具体的には、基板より成膜する膜の熱膨張係数が大きいと、成膜が終了して室温に戻った後には、成膜された膜が基板よりも横方向に相対的に大きく伸びるような状態となり(この量はごく僅かである)、成膜された膜に引張応力が発生する。逆に、基板より成膜する膜の熱膨張係数が小さいと、成膜された膜に圧縮応力が発生する。したがって、基板の結晶配向の影響がないと仮定すれば、かかる応力を緩和するような結晶配向方向となりやすい。
例えば、基板の結晶方位の影響がないと仮定すれば、下部電極としてSrRuOを成膜する場合、SrTiO基板上では圧縮応力が加わるので(001)配向し、Si基板上では引張応力が加わるので(100)配向しやすい。
Si基板上に結晶配向方向をそろえてSrRuOをエピタキシャル成長させる場合、SiとSrRuOとの間にMgOあるいはMgAlO等の適当なバッファ層を導入することが必要となる。本発明では、バッファ層による結晶配向制御を行わず、基板と成膜する膜の熱膨張係数差によって決まる結晶配向をそのまま利用してもよいし、所望の結晶配向に合わせてバッファ層を必要に応じて設けることもできる。
(001)配向のSrRuO下部電極上には(001)配向のBaTiOあるいはBiFeOが成長しやすい。(100)配向のSrRuO下部電極上には(100)配向のBaTiOあるいはBiFeOが成長しやすい。
以上説明したように、本発明の圧電体膜は、互いに隣接する膜の自発分極軸方向が異なる複数のペロブスカイト型酸化物膜の積層構造を有するものである。
本発明によれば、より高い圧電性能を得ることが可能な新規なドメイン構造の圧電体膜を提供することができる。
本発明によれば、可逆的非180°ドメイン回転による圧電歪、及び/又は相転移による圧電歪を効果的に得ることが可能な新規なドメイン構造の圧電体膜を提供することができる。
本発明によれば、ドメインウォールの圧電歪を効果的に利用した新規なドメイン構造の圧電体膜を提供することができる。
「圧電素子(強誘電体素子)、インクジェット式記録ヘッド」
図面を参照して、本発明に係る一実施形態の圧電素子、及びこれを備えたインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)の構造について説明する。図5はインクジェット式記録ヘッドの要部断面図(圧電素子の厚み方向の断面図)である。視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
図5に示す圧電素子2は、基板11の表面に、下部電極12と圧電体膜13と上部電極14とが順次積層された素子である。圧電体膜13に対して、下部電極12と上部電極14とにより厚み方向に電界が印加されるようになっている。本実施形態において、圧電体膜13は、図1に示したような積層構造の本発明の圧電体膜である。
基材11としては特に制限なく、シリコン,ガラス,ステンレス(SUS),イットリウム安定化ジルコニア(YSZ),アルミナ,サファイヤ,SiC,及びSrTiO等の基板が挙げられる。基材11としては、シリコン基板上にSiO膜とSi活性層とが順次積層されたSOI基板等の積層基板を用いてもよい。基板11としては、圧電体膜13に対して格子整合性が良好なものであることが好ましい。
下部電極12の組成としては特に制限なく、Au,Pt,Ir,IrO,RuO,LaNiO,及びSrRuO等の金属又は金属酸化物、及びこれらの組合せが挙げられる。下部電極12は通常の気相法あるいはエピタキシャル成長等により成膜できる。
上部電極14の組成としては特に制限なく、下部電極12で例示した材料,Al,Ta,Cr,Cu等の一般的に半導体プロセスで用いられている電極材料、及びこれらの組合せが挙げられる。上部電極14は通常の気相法等により成膜できる。
下部電極12と上部電極14の厚みは特に制限なく、50〜500nmであることが好ましい。
圧電アクチュエータ3は、圧電素子2の基板11の裏面に、圧電体膜13の伸縮により振動する振動板16が取り付けられたものである。圧電アクチュエータ3には、圧電素子2の駆動を制御する駆動回路等の制御手段15も備えられている。
インクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)4は、概略、圧電アクチュエータ3の裏面に、インクが貯留されるインク室(液体貯留室)21及びインク室21から外部にインクが吐出されるインク吐出口(液体吐出口)22を有するインクノズル(液体貯留吐出部材)20が取り付けられたものである。インクジェット式記録ヘッド4では、圧電素子2に印加する電界強度を増減させて圧電素子2を伸縮させ、これによってインク室21からのインクの吐出や吐出量の制御が行われる。
基板11とは独立した部材の振動板16及びインクノズル20を取り付ける代わりに、基板11の一部を振動板16及びインクノズル20に加工してもよい。例えば、基板11がSOI基板等の積層基板からなる場合には、基板11を裏面側からエッチングしてインク室21を形成し、基板自体の加工により振動板16とインクノズル20とを形成することができる。
圧電素子2及びインクジェット式記録ヘッド4は、以上のように構成されている。圧電素子2は本発明の圧電体膜13を備えたものであり、本実施形態によれば、圧電性能に優れた圧電素子2を提供することができる。
「インクジェット式記録装置」
図6及び図7を参照して、上記実施形態のインクジェット式記録ヘッド4を備えたインクジェット式記録装置の構成例について説明する。図6は装置全体図であり、図7は部分上面図である。
図示するインクジェット式記録装置100は、インクの色ごとに設けられた複数のインクジェット式記録ヘッド(以下、単に「ヘッド」という)4K,4C,4M,4Yを有する印字部102と、各ヘッド4K,4C,4M,4Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、印字部102のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送する吸着ベルト搬送部122と、印字部102による印字結果を読み取る印字検出部124と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とから概略構成されている。
印字部102をなすヘッド4K,4C,4M,4Yが、各々上記実施形態のインクジェット式記録ヘッド4である。
デカール処理部120では、巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム130により記録紙116に熱が与えられて、デカール処理が実施される。
ロール紙を使用する装置では、図6のように、デカール処理部120の後段に裁断用のカッター128が設けられ、このカッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター128は、記録紙116の搬送路幅以上の長さを有する固定刃128Aと、該固定刃128Aに沿って移動する丸刃128Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃128Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃128Bが配置される。カット紙を使用する装置では、カッター128は不要である。
デカール処理され、カットされた記録紙116は、吸着ベルト搬送部122へと送られる。吸着ベルト搬送部122は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部102のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)となるよう構成されている。
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示略)が形成されている。ローラ131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において印字部102のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ134が設けられており、この吸着チャンバ134をファン135で吸引して負圧にすることによってベルト133上の記録紙116が吸着保持される。
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図示略)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図6上の時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は図6の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。
吸着ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において印字部102の上流側に、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後に乾きやすくなる。
印字部102は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図7を参照)。各印字ヘッド4K,4C,4M,4Yは、インクジェット式記録装置100が対象とする最大サイズの記録紙116の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙116の送り方向に沿って上流側から、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応したヘッド4K,4C,4M,4Yが配置されている。記録紙116を搬送しつつ各ヘッド4K,4C,4M,4Yからそれぞれ色インクを吐出することにより、記録紙116上にカラー画像が記録される。
印字検出部124は、印字部102の打滴結果を撮像するラインセンサ等からなり、ラインセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まり等の吐出不良を検出する。
印字検出部124の後段には、印字された画像面を乾燥させる加熱ファン等からなる後乾燥部142が設けられている。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けた方が好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
後乾燥部142の後段には、画像表面の光沢度を制御するために、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144では、画像面を加熱しながら、所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で画像面を加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして得られたプリント物は、排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット式記録装置100では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り替える選別手段(図示略)が設けられている。
大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列にプリントする場合には、カッター148を設けて、テスト印字の部分を切り離す構成とすればよい。
インクジェット記記録装置100は、以上のように構成されている。
(設計変更)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
本発明に係る実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
SrTiO基板(10mm×10mm、0.5mm厚)の表面に、PLD法にてSrRuO下部電極をエピタキシャル成長させた。下部電極の成膜条件は以下の通りとした。
<下部電極の成膜条件>
装置:(株)エイコー社製のパルスレーザーデポジション装置、
使用レーザ:波長248nmのコヒーレント・ジャパン社製ArFエキシマレーザ、
ターゲット:化学量論組成のSrRuO焼結体(豊島製作所社製)、
レーザ発振強度:200mJ、
酸素分圧:10mTorr(=1.33Pa)、
基板温度:750℃、
下部電極の厚み:200nm。
下部電極の成膜後、2種類のターゲットを設置でき、基板ホルダが回転することで2種類のターゲットから交互に成膜することが可能なPLD装置を用いて、積層構造の圧電体膜を形成した。本実施例では、(001)配向の正方晶系のBaTiO膜と(001)配向の菱面体晶系のBiFeO膜とをPLD法により交互に積層させて成膜し、積層構造の圧電体膜を形成した。積層数はそれぞれ20層ずつとし、各膜厚は20〜50nmになるように成膜時間を調整した。圧電体膜の成膜条件は以下の通りとした。
<圧電体膜の成膜条件>
装置及び使用レーザ:下部電極の成膜に使用したものと同一、
ターゲット:化学量論組成のBaTiO、及びBiを10モル%過剰にしたBi1.1FeO。これらのターゲットは、発明者自身が所望のターゲット組成と同じ組成の粉末を焼結させて作製したものである。BaTiOの焼結温度は1200℃、BiFeOの焼結温度は900℃とした。
レーザ発振強度:200mJ、
酸素分圧:50mTorr(=6.66Pa)、
基板温度:600℃。
最後に、圧電体膜上にPt上部電極をスパッタ蒸着して、圧電素子を得た。
(比較例1)
(001)配向の正方晶系のBaTiO膜の単層構造の圧電体膜を形成した以外は実施例1と同様にして、圧電素子を得た。圧電体膜の膜厚は実施例1の積層構造の圧電体膜に合わせた。
(比較例2)
(001)配向の菱面体晶系のBiFeO膜の単層構造の圧電体膜を形成した以外は実施例1と同様にして、圧電素子を得た。圧電体膜の膜厚は実施例1の積層構造の圧電体膜に合わせた。
(評価及び結果)
各例において得られた圧電素子について、片持ち梁(15mm×2.5mm,膜厚0.5mm)を用い、20Vの電圧を印加した時の先端の変位量を測定した。片持ち梁の変位量は以下の通りであった。実施例1では比較例1,2よりも大きな変位量が得られた。
実施例1:0.50μm、
比較例1:0.15μm、
比較例2:0.30μm。
本発明の圧電体膜は、インクジェット式記録ヘッド,磁気記録再生ヘッド,MEMS(Micro Electro-Mechanical Systems)デバイス,マイクロポンプ,超音波探触子,及び超音波モータ等に搭載される圧電アクチュエータ、及び強誘電体メモリ等の強誘電体素子に好ましく利用できる。
本発明に係る一実施形態の圧電体膜の断面図 本発明の圧電体膜における積層構造の一態様 本発明の圧電体膜における積層構造のその他の態様 本発明の圧電体膜における積層構造のその他の態様 本発明の圧電体膜における積層構造のその他の態様 積層数とドメインウォールとの関係を説明する説明図 MPB組成と本発明の設計における、格子定数比c/aと相転移による圧電歪の違いのイメージ図 本発明に係る一実施形態の圧電素子及びこれを備えたインクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)の構造を示す要部断面図 図5のインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置の構成例を示す図 図6のインクジェット式記録装置の部分上面図 PZTの相図 非特許文献1のFIG.1に記載のXRDパターンとTEM写真(MPB組成) 非特許文献1のFIG.1に記載のXRDパターンとTEM写真(MPB組成) 非特許文献1のFIG.1に記載のXRDパターンとTEM写真(非MPB組成) 非特許文献1のFIG.1に記載のXRDパターンとTEM写真(非MPB組成)
符号の説明
1 圧電体膜
1A 第1のペロブスカイト型酸化物膜
1B 第2のペロブスカイト型酸化物膜
2 圧電素子
4,4K,4C,4M,4Y インクジェット式記録ヘッド(液体吐出装置)
12、14 電極
13 圧電体膜
20 インクノズル(液体貯留吐出部材)
21 インク室(液体貯留室)
22 インク吐出口(液体吐出口)
100 インクジェット式記録装置

Claims (15)

  1. 結晶配向性を有する複数のペロブスカイト型酸化物膜が積層された圧電体膜において、
    前記複数のペロブスカイト型酸化物膜は、互いに隣接する膜の自発分極軸方向が異なるという関係を有していることを特徴とする圧電体膜。
  2. 結晶配向性を有する複数のペロブスカイト型酸化物膜が積層された圧電体膜において、
    前記複数のペロブスカイト型酸化物膜は、互いに隣接する膜の結晶系が異なっており、かつ、互いに隣接する膜の自発分極軸方向が異なるという関係を有していることを特徴とする圧電体膜。
  3. 前記複数のペロブスカイト型酸化物膜は、それぞれの膜の結晶系が、正方晶系、菱面体晶系、斜方晶系、及び単斜晶系のうちいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電体膜。
  4. 前記複数のペロブスカイト型酸化物膜は、互いに隣接する膜の組成が異なっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電体膜。
  5. 前記複数のペロブスカイト型酸化物膜は、それぞれの膜厚が500nm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電体膜。
  6. 構造の異なる複数種類の前記ペロブスカイト型酸化物膜をそれぞれ2層以上周期的に有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の圧電体膜。
  7. 前記複数のペロブスカイト型酸化物膜のうち少なくとも一部の膜は、自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の圧電体膜。
  8. 自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有する前記膜の結晶系は、<100>方向に結晶配向性を有する菱面体晶系、<110>方向に結晶配向性を有する菱面体晶系、<110>方向に結晶配向性を有する正方晶系、<111>方向に結晶配向性を有する正方晶系、<100>方向に結晶配向性を有する正方晶系、<100>方向に結晶配向性を有する斜方晶系、及び<111>方向に結晶配向性を有する斜方晶系のうちいずれかであることを特徴とする請求項7に記載の圧電体膜。
  9. 自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有する前記膜は、該膜の自発分極軸方向とは異なる方向の電界印加の増減によって分極軸が可逆的に非180°回転することが可能なドメインを有していることを特徴とする請求項7又は8に記載の圧電体膜。
  10. 自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有する前記膜は、該膜の自発分極軸方向とは異なる方向の電界印加により異なる結晶系に相転移することが可能なドメインを有していることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の圧電体膜。
  11. 1層以上の正方晶系のペロブスカイト型酸化物膜と1層以上の菱面体晶系のペロブスカイト型酸化物膜とが積層されたものであることを特徴とする請求項2に記載の圧電体膜。
  12. 前記菱面体晶系のペロブスカイト型酸化物膜が自発分極軸方向とは異なる方向に結晶配向性を有しており、該膜の自発分極軸方向とは異なる方向の電界印加の増減によって分極軸が可逆的に非180°回転することが可能なドメイン、及び/又は該膜の自発分極軸方向とは異なる方向の電界印加により異なる結晶系に相転移することが可能なドメインを有していることを特徴とする請求項11に記載の圧電体膜。
  13. Pbを含まない非鉛系であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかの記載の圧電体膜。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の圧電体膜と、該圧電体膜に対して電界を印加する電極とを備えたことを特徴とする圧電素子。
  15. 請求項14に記載の圧電素子と、該圧電素子に隣接して設けられた液体吐出部材とを備え、該液体吐出部材は、液体が貯留される液体貯留室と、前記圧電体膜に対する前記電界の印加に応じて該液体貯留室から外部に前記液体が吐出される液体吐出口とを有することを特徴とする液体吐出装置。
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