JP2008270160A - 非水電解質電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】正極1と負極2とセパレータ3と非水電解液を有する非水電解質電池において、前記正極1とセパレータ3の間に電解液の拡散を制限する電解液拡散制限層11を形成して正極の劣化を早め、且つ、前記負極2とセパレータ3の間に電解液の拡散を促進する電解液拡散促進層21を形成して負極の劣化を抑制する。
【選択図】図4
Description
電解液拡散制限層をポリマー層とすることで、所期の電解液浸透性、即ちセパレータのTDに沿った電解液浸透性よりも劣る電解液浸透性を有する層を簡単な構成により容易に形成することができ、一方、電解液拡散促進層を多孔質層とすることで、所期の電解液浸透性、即ちセパレータのTDに沿った電解液浸透性よりも優れる電解液浸透性を有する層を容易に形成することができ、さらに、空孔率等を調整することにより電解液浸透性を所望のレベルに容易に制御することもできる。
ポリフッ化ビニリデン、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリロニトリル単位を含むポリマー化合物及びその誘導体は耐酸化性に優れるものであるため、前記ポリマー成分をこれらから選択されるものとすることにより、前記電解液拡散制限層を電池内で良好な安定性を有するものとすることができる。
電解液拡散促進層が無機粒子を含んでなる多孔質層であれば、電解液の浸透、拡散パスとして機能する空隙を形成しやすく、層の形成も容易である。
このように、フィラー粒子としてルチル型のチタニア及び/又はアルミナに限定するのは、これらのものは、電池内での安定性に優れ(リチウムとの反応性が低く)、しかもコストが安価であるという理由によるものである。また、ルチル構造のチタニアとするのは、アナターゼ構造のチタニアはリチウムイオンの挿入離脱が可能であり、環境雰囲気、電位によっては、リチウムを吸蔵して電子伝導性を発現するため、容量低下や、短絡の危険性があるからである。
但し、フィラー粒子の種類による本作用効果への影響は非常に小さいので、フィラー粒子としては上述のものの他に、ジルコニア、マグネシア等の無機粒子であっても良い。
多孔質層に含まれる結着剤が、負極に用いられる結着剤と溶剤系が異なるものであれば、特に該多孔質層が負極表面に形成される場合、該多孔質層に含まれる結着剤が負極にダメージを与えることが大幅に軽減される。
電解液拡散促進層がポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる樹脂系の材料群から選択される少なくとも1種で構成される多孔質層であれば、電解液の浸透、拡散パスとして機能する空隙を形成しやすい。また、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドは、機械的強度や熱安定性に優れるため、電池内で変質しにくい多孔質層を形成することができる。
電解液拡散制限層の厚さが0.1μm以上であれば、電解液拡散制限層の形成を技術的に容易に行い得る範囲となる。一方、電解液拡散制限層の厚さが1μm以内であれば、電解液拡散制限層の抵抗を許容範囲内としておくことができ、また、電解液拡散制限層を電池の高容量化を妨げない程度の薄膜としておくことができる。
電解液拡散促進層の厚さが1μm以上であれば、電解液拡散促進層を均一に形成しやすく、一方、電解液拡散促進層の厚さが3μm以下であれば、電解液拡散促進層を電池の高容量化を妨げない程度の薄膜としておくことができる。
(1)前記電解液拡散制限層が正極表面に形成され、前記電解液拡散促進層が負極表面に形成されている
(2)前記電解液拡散制限層が正極表面に形成され、前記電解液拡散促進層がセパレータの負極側表面に形成されている
(3)前記電解液拡散制限層がセパレータの正極側表面に形成され、前記電解液拡散促進層が負極表面に形成されている
(4)前記電解液拡散制限層がセパレータの正極側表面に形成され、前記電解液拡散促進層が、セパレータの負極側表面に形成されている
したがって、本発明によって、長期サイクル経過後の安全性に優れ、高容量を有する電池構成においても高い信頼性を発揮することが可能な非水電解質電池が得られる。
正極は、正極活物質であるコバルト酸リチウム(Al及びMgがそれぞれ1.0mol%固溶されており、かつZrが0.05mol%表面に電気的に接触しているもの)と、炭素導電剤であるアセチレンブラックと、バインダーであるPVdFとを95 : 2.5:2.5の質量比でNMPを希釈溶媒として、プライミクス社製コンビミックスを用いて攪拌し、正極合剤スラリーを調製した。これを正極集電体であるアルミ箔の両面に塗着し、乾燥後圧延して極板とした。正極の充填密度は3.7g/ccとした。
PVdF2質量%をジメチルカーボネート(DMC)に溶解させて正極側コート用スラリーを作製し、このスラリーをディップコート方式にて正極に塗工した。これを乾燥させて、ポリマーコート正極を得た。尚、この正極表面に塗工したPVdFの塗布厚さは0.5μmであった。
負極は、負極活物質である炭素材(黒鉛)と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)とを、98:1:1の質量比で水溶液中にて混合し、銅箔の両面に塗着した後、乾燥後圧延して極板とした。尚、負極の充填密度は1.60g/ccとした。
酸化チタン(チタン工業製KR380)と、バインダーであるPVdF(酸化チタンに対する割合は5質量%)とを混合し、固形分濃度が30質量%になるようにNMPで希釈し、プライミクス社製フィルミックスを用いて攪拌分散処理を行って負極側コート用スラリーを作製し、このスラリーをグラビアコート方式で負極表面に所定の厚みで塗工した。これを乾燥して、多孔質層が積層された負極を作製した。尚、この負極表面に作製した酸化チタン層の厚みは2μmであった。
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とが容積比で3:7の割合で混合された混合溶媒に、LiPF6を1.0mol/lの割合で溶解して電解液を得た。
電池の構成は正・負極それぞれにリード端子を取り付け、セパレータ(ポリエチレン製:膜厚16μm、空孔率47%)を介して渦巻状に巻き取ったものをプレスして、扁平状に押し潰した電極体を電池外装体としてアルミニウムラミネートを用いたものに入れて電解液の注液を行い、封止して電池を作製した。尚、本電池の設計容量は780mAhであり、充電終止電圧は4.2Vになるように電池設計を行った。また、4.2Vでの電位で正負極の容量比(負極の初回充電容量/正極の初回充電容量)が1.08になるように設計した。
サイクル劣化後の電池の状態としては、従来より評価されてきたところからすると、主に、負極の電解液が枯渇し、その影響で充放電反応が不均一になり、負極の内部抵抗の上昇もあいまって、正極から負極に移動するリチウムイオンの負極内部への吸蔵が困難となる場合が殆どである。究極まで劣化させてサイクル試験を行った場合、負極表面には、内部に吸蔵されないリチウムが析出する可能性があり、その量と析出形態によっては、劣化後電池は安全性が低下する可能性がある。
電池巻取り体の電解液の拡散について図2に基づき説明すると、図2(a)に示す電池の組立初期では減圧や加圧等の操作によって、強制的に正極101及び負極102内部へ電解液の浸透は確保されている。しかしながら、図2(b)ないし(c)に示す、電池缶を封口した後の段階ではこのような操作をすることができない為、電池の部材やその構成で自立的に電解液が拡散する必要がある。電池設計が緩く、例えば、電極の低充填密度やセパレータの膜厚が電極厚みに対して十分に厚い場合、電極巻取り体内部で電解液の移動は確保できる。しかし、電池の設計が非常に厳しい場合、正極101及び負極102内部の電解液は充放電による正極101及び負極102の膨張で、セパレータ103が収縮し、図2(b)の矢印A1に示すように巻取り体の外部へ電解液が搾り出されることになり、図2(c)に示すように正極101及び負極102が放電によって収縮した場合、巻取り体外部より電解液を再供給しなければ、サイクル経過に伴い、正極101及び負極102内部の電解液は徐々に失われ、特に中央部140を中心として、最終的には電解液の枯渇状態に至る。これがサイクル経過によって容量が急激に低下する要因と考えられる。このようなことを抑制するためには、電池の巻取り体の構成として電解液を再供給しやすい状況を作り出すことが必要になる。また、正極101及び負極102において、正極活物質よりも負極活物質の方が膨張が大きい為、電解液の出入りとしては負極102が最も大きく、電解液不足の影響を最も受けやすい。この点で、負極102への電解液供給を促進する電池構成にすることが好ましい。
(実施例1)
実施例1として、前述の最良の形態で示した電池を用いた。
このようにして得られた電池を、以下、本発明電池A1と称する。
セパレータの負極側表面に、上記負極側コート用スラリーと同様のスラリーを用いて厚み2μmの多孔質層を作製する一方、負極表面に加工処理(多孔質層形成)を行わないこと以外は、実施例1と同様に電池を得た。
このようにして得られた電池を、以下、本発明電池A2と称する。
正極側コート用スラリーを作製する際のポリマー種として、PVdFの代わりにポリアクリロニトリル単位を含むポリマー化合物(PAN)を用いると共に、希釈溶媒としてシクロヘキサノンを用い、且つ、負極側コート用スラリーを作製する際のバインダーとしてPAN)を用いたこと以外は、実施例1と同様に電池を得た。
このようにして得られた電池を、以下、本発明電池A3と称する。
電池設計を充電終止電圧が4.4Vとなるようにした以外は、実施例1と同様に電池を得た。
このようにして得られた電池を、以下、本発明電池A4と称する。
電池設計を充電終止電圧が4.4Vとなるようにした以外は、実施例2と同様に電池を得た。
このようにして得られた電池を、以下、本発明電池A5と称する。
正極と負極との表面に加工処理を行っていない以外は、実施例1と同様に電池を得た。
このようにして得られた電池を、以下、比較電池Z1と称する。
負極の表面に加工処理を行っていない以外は、実施例1と同様に電池を得た。
このようにして得られた電池を、以下、比較電池Z2と称する。
正極の表面に加工処理を行っていない以外は、実施例1と同様に電池を得た。
このようにして得られた電池を、以下、比較電池Z3と称する。
正極と負極との表面に加工処理を行っていない以外は、実施例5と同様に電池を得た。
このようにして得られた電池を、以下、比較電池Z4と称する。
負極の表面に加工処理を行っていない以外は、実施例5と同様に電池を得た。
このようにして得られた電池を、以下、比較電池Z5と称する。
正極の表面に加工処理を行っていない以外は、実施例5と同様に電池を得た。
このようにして得られた電池を、以下、比較電池Z6と称する。
4.2V設計の本発明電池A1〜A3及び比較電池Z1〜Z3について、サイクル試験における容量残存率と負極表面の状態及びサイクル試験後電池のサーマル試験の結果を表1に示す。
なお、サイクル試験及びサーマル試験は以下のようにして行った。
・充電試験
1It(750mA)の電流で4.20Vまで定電流充電を行い、4.20V定電圧で電流1/20It(37.5mA)になるまで充電した。
・放電試験
1It(750mA)の電流で2.75Vまで定電流放電を行った。
・休止
充電試験と放電試験の間隔は10minとした。
・60℃サイクル試験
上記充放電条件に従って、60℃雰囲気における1It充放電サイクルを実施した。
・サーマル試験(サイクル試験後の安全性試験)
サイクル試験において容量維持率が50%以下となった電池を解体し、負極の電解液の残存状況を調べた。また、同様の試験後電池を放電状態とし、恒温槽内で昇温速度毎分2℃で25℃から150℃まで加温し、電池の発熱開始温度を調べた。
4.4V設計の本発明電池A4、A5及び比較電池Z4〜Z6について、サイクル試験における容量残存率と負極表面の状態及びサイクル試験後電池のサーマル試験の結果を表2に示す。なお、充電試験において、1It(750mA)の電流で4.40Vまで定電流充電を行い、4.40V定電圧で電流1/20It(37.5mA)になるまで充電するようにし、また、サイクル試験を45℃雰囲気における1It充放電サイクルとした以外は、前記4.2V設計の本発明電池A1〜A3及び比較電池Z1〜Z3の場合と同様の試験条件とした。
以上の結果から、正極とセパレータの間に電解液拡散制限層が形成されており、且つ、負極とセパレータの間に電解液拡散促進層が形成されていることによって、電極内部の電解液の供給を上手く配分でき、サイクル特性を改善するとともに、サイクル劣化した状況でも電池の安全性を確保できる。
加えて、本発明電池A1〜A5の場合、前記電解液拡散制限層11の厚さを0.5μmとしたので、電解液拡散制限層11が技術的に容易に形成し得るものとなっており、かつ、抵抗も許容範囲内で、また電池の高容量化を妨げない程度の薄膜となっている。
更に、本発明電池A1〜A5の場合、電解液拡散促進層21を無機粒子22を含んでなる多孔質層としたので、電解液の浸透、拡散パスとして機能する空隙が形成しやすく、層の形成も容易となっている。
更に、該多孔質層が負極2の表面に形成された本発明電池A1、A3、A4では、前記多孔質層に含まれる結着剤を負極2に用いられる結着剤と溶剤系が異なるものとしたので、該多孔質層に含まれる結着剤が負極2にダメージを与えることが大幅に軽減されている。
(1)正極活物質としては、上記コバルト酸リチウムに限定されるものではなく、コバルト−ニッケル−マンガンのリチウム複合酸化物、アルミニウム−ニッケル−マンガンのリチウム複合酸化物、アルミニウム−ニッケル−コバルトの複合酸化物等のコバルト、ニッケル或いはマンガンを含むリチウム複合酸化物や、スピネル型マンガン酸リチウム等でも構わない。但し、高電圧設計仕様の電池を評価する際には、上記のようにAl、Mg及びZrの添加等の工夫をこらした正極活物質を使用しない場合は、もともとの性能低下(材料劣化)が大きすぎて、正常な評価に値するベースとなる電池を作製し難く、本電池構成の優位性を確認できない可能性があり、正極活物質材料の選定は単なるコバルト酸リチウムでは好ましくない。
2 負極
3 セパレータ
11 電解液拡散制限層
21 電解液拡散促進層
Claims (13)
- 正極、負極、及びこれら正負極間に配置されたセパレータが渦巻状に巻回された巻取電極体と、この巻取電極体に含浸された非水電解液と、を有する非水電解質電池において、
上記正極と上記セパレータの間には電解液の拡散を制限する電解液拡散制限層が形成されている一方、上記負極と上記セパレータの間には電解液の拡散を促進する電解液拡散促進層が形成されていることを特徴とする非水電解質電池。 - 前記電解液拡散制限層がポリマー層であり、且つ、前記電解液拡散促進層が多孔質層である、請求項1に記載の非水電解質電池。
- 前記ポリマー層におけるポリマー成分として、ポリフッ化ビニリデン、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリロニトリル単位を含むポリマー化合物及びその誘導体から選択される少なくとも1種が用いられる、請求項2に記載の非水電解質電池。
- 前記多孔質層には無機粒子と結着剤とが含まれている、請求項2又は3に記載の非水電解質電池。
- 前記無機粒子が、アルミナ、ルチル型のチタニアから選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の非水電解質電池。
- 前記多孔質層に用いられる結着剤と負極に用いられる結着剤との溶剤系が異なる、請求項4又は5に記載の非水電解質電池。
- 前記電解液拡散促進層が、ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる樹脂系の材料群から選択される少なくとも1種で構成される多孔質層である、請求項1〜3に記載の非水電解質電池。
- 前記電解液拡散制限層の厚さが0.1〜1μmである、請求項1〜7に記載の非水電解質電池。
- 前記電解液拡散促進層の厚さが1〜3μmである、請求項1〜8に記載の非水電解質電池。
- 前記電解液拡散制限層が正極の表面に形成され、前記電解液拡散促進層が負極の表面に形成されている、請求項1〜9に記載の非水電解質電池。
- 前記電解液拡散制限層が正極の表面に形成され、前記電解液拡散促進層がセパレータの負極側表面に形成されている、請求項1〜9に記載の非水電解質電池。
- 前記電解液拡散制限層がセパレータの正極側表面に形成され、前記電解液拡散促進層が前記負極の表面に形成されている、請求項1〜9に記載の非水電解質電池。
- 前記電解液拡散制限層がセパレータの正極側表面に形成され、前記電解液拡散促進層がセパレータの負極側表面に形成されている、請求項1〜9に記載の非水電解質電池。
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