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JP2006004739A - リチウム二次電池と該電池に備えられる正極及びその製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池と該電池に備えられる正極及びその製造方法 Download PDF

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JP2006004739A JP2004179551A JP2004179551A JP2006004739A JP 2006004739 A JP2006004739 A JP 2006004739A JP 2004179551 A JP2004179551 A JP 2004179551A JP 2004179551 A JP2004179551 A JP 2004179551A JP 2006004739 A JP2006004739 A JP 2006004739A
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Abstract

【課題】 出力特性が良く長寿命のリチウム二次電池を構築するのに好適な正極及び該正極の製造方法を提供し、併せて該正極を備えたリチウム二次電池を提供すること。
【解決手段】 本発明により提供されるリチウム二次電池用正極は、集電体の表面に導電材と有機溶剤に対して可溶性である少なくとも一種のポリマーから成る結着材と有機溶剤とを有する導電層形成用組成物を付与して該集電体上に導電層を形成し、該形成された導電層の表面に正極用活物質と有機溶剤に対して不溶性である少なくとも一種のポリマーから成る結着材と水系溶媒とを有する活物質層形成用組成物を付与して該導電層上に活物質層を形成することにより製造される。
【選択図】 なし

Description

本発明はリチウムイオン二次電池の製造技術に関し、詳しくはリチウム二次電池に備えられる正極及びその製造方法に関する。
リチウム二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出し得る材料(活物質)を有する正極を備え、該正極と負極の間の電解質(典型的には非水電解液)をリチウムイオンが行き来することにより充放電する二次電池である。
一般にリチウム二次電池に装備される正極は、アルミニウム等から構成される導電性基体(以下「集電体」という。)と該集電体上に形成された活物質層とから構成されている。かかる活物質層は、LiNiO、LiCoO等の正極活物質と結着材(バインダー)と必要に応じて用いられる導電材とを含み、ペースト(又はスラリー)状に調製された活物質層形成用組成物(即ち活物質層形成用ペースト)を集電体に塗布することによって形成されている。
従前、活物質層形成用ペーストとして、有機溶剤を溶媒とし、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の溶剤系結着材を含む溶剤系ペーストが使用されていた(特許文献3及び4)が、近年は水を溶媒としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の水系結着材を含む水系ペーストの使用が提案されている。PTFE等の水系結着材は、非水電解液として用いられている有機溶剤(例えばNMP)に対して不溶性であり、活物質の結着性能に優れ、結果的に電池の長寿命化を実現し得る。例えば、特許文献1及び2には、リチウムイオン二次電池を構築するための正極活物質層形成用水系ペーストが記載されている。
特開2002−42817号公報 特開2000−182606号公報 特開平11−260411号公報 特開平8−106897号公報
しかしながら、正極活物質の内容によっては水系ペーストの使用によって電池容量の低下、或いは初期内部抵抗の増大による放電特性の低下といった問題が生じ得る。これらはペーストに含まれる正極活物質と水との反応に起因し得る。例えば正極活物質としてLiNiCo1−x(0≦x≦1)等のリチウム遷移金属複合酸化物を用いる場合、ペースト中において正極活物質の表面でプロトンとリチウムイオンの交換反応が生じ、結果、該水系ペーストのpHが高い値(即ち塩基性)となり得る。そして、かかる高pHペーストを用いて活物質層を形成する際、正極集電体(例えばAl)の表面に高電気抵抗性を示す化合物(例えば酸化物、水酸化物)が生成され易くなり、延いては電池の初期内部抵抗増大の要因となり得る。
そこで本発明は、上記水系の活物質層形成用組成物(活物質層形成用ペースト)を使用してリチウム二次電池の正極を製造する場合の問題点を解決し、水系の活物質層形成用ペーストを利用して高性能な正極を提供すると共に、該正極を備えるリチウム二次電池を提供することを目的とする。
本発明は、リチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)に用いられる正極の製造方法を提供する。即ち、ここで開示される正極製造方法は、導電材と結着材と有機溶剤とを有する導電層形成用組成物を集電体の表面に付与して該集電体上に導電層を形成する工程を包含する。更に、正極用活物質と結着材と水系溶媒とを有する活物質層形成用組成物を前記形成された導電層の表面に付与して該導電層上に活物質層を形成する工程を包含する。
かかる構成の方法では、溶媒として有機溶剤(即ち非水系溶媒)を採用する導電層形成用組成物(典型的にはペースト状に調製される。)を用いることによって集電体上に先ず導電層を形成する。そして、本方法では、そうして得られた導電層上に、溶媒として水系溶媒を採用する活物質層形成用組成物(典型的にはペースト状に調製される。)を使用して活物質層を形成する。これにより、本方法では、集電体に活物質(層)を付与する際、該活物質を含む組成物(具体的には該組成物に含まれる水系溶媒)と集電体とが直接接触するのを防止し、該接触に起因する不具合の発生(例えば集電体表面における高電気抵抗性化合物の生成)を防止することができる。そして、本方法では、かかる集電体と水との接触を防止するバリアー層として前記導電層を形成するため、導電体表面と活物質との間の導電経路(導電パス)は確実に確保することができる。
好ましくは、前記導電層形成用組成物(典型的にはペースト状に調製される。)に含有される結着材は有機溶剤に対して可溶性(高度に分散した状態を含む。以下同じ。)である少なくとも一種のポリマーから成る。また、好ましくは、前記活物質層形成用組成物(典型的にはペースト状に調製される。)に含有される結着材は有機溶剤(例えば非水電解液として使用されるもの)に対して実質的に不溶性である少なくとも一種のポリマーから成る。
これら結着材の使用によって、導電層、或いは活物質層における結着性能が向上し、充放電サイクル特性等に優れる長寿命(高耐久性)のリチウム二次電池を製造することができる。
ここで開示される正極製造方法によると、上述したような水系溶媒を含む活物質層形成用組成物(典型的には水系ペースト)を使用する際の集電体に及ぼす悪影響を回避しつつ、該水系組成物によって活物質層が形成されたリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)用正極を製造することができる。
本発明により提供される好ましいリチウム二次電池用正極は、集電体と、該集電体上に形成された導電層であって、導電材と、結着材として有機溶剤に対して可溶性である少なくとも一種のポリマーを有する導電層と、該導電層上に積層された活物質層であって、正極用活物質と、結着材として有機溶剤に対して実質的に不溶性である少なくとも一種のポリマーを有する活物質層とを備える。更に本発明は、そのような正極を備えたリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)を提供する。
好ましくは、ここで開示される正極製造方法では、前記活物質として少なくとも一種のリチウム遷移金属複合酸化物が用いられる。ここで「リチウム遷移金属複合酸化物」とは、活物質として機能し得るリチウム及び一種又は二種以上の遷移金属を構成要素とする金属複合酸化物をいい、他の構成要素(例えばAl)を含むものであってもよい。
このような正極活物質と水系溶媒を含む活物質層形成用組成物(典型的には水系ペースト)はリチウム遷移金属複合酸化物と水系溶媒の存在によって高pH即ち強塩基性になり得るが、本態様の方法では、該組成物と集電体(例えばAl)との直接的な接触を回避し得るため、強塩基性(高pH)組成物との接触に起因する集電体の変性(例えば電気抵抗の増大)を防止することができる。このため、本方法によると、活物質として少なくとも一種のリチウム遷移金属複合酸化物を有する正極を製造することができる。また、該正極を備えた高性能リチウム二次電池、典型的には長寿命で初期内部抵抗の低いリチウムイオン二次電池を提供することができる。
また、好ましくは、ここで開示される正極製造方法では、前記導電材と結着材の合計量を100質量%としたときの該導電材の含有率が90〜98質量%となるように該導電材と結着材が配合された導電層形成用組成物を使用する。
かかる配合比の導電層形成用組成物を使用することにより、導電層における高導電率の実現、即ち、集電体と活物質層(正極活物質層)との間の導電パスを高いレベルで形成した正極、具体的には導電材と結着材の合計量を100質量%としたときの前記導電層における前記導電材の含有率が90〜98質量%である正極及びそのような正極を備えたリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)を提供することができる。
また、好ましくは、ここで開示される正極製造方法では、導電材をさらに含む活物質層形成用組成物を使用する。これにより、活物質層に導電材を含み、活物質層と集電体との間の導電パスを更に高いレベルで形成した正極及びそのような正極を備えたリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)を提供することができる。
ここで開示される正極製造方法として特に好ましい方法は、前記導電層と前記活物質層との厚みの比率(導電層:活物質層で表す。)が、1:5〜1:100であることを特徴とする。かかる比率で導電層及び活物質層を集電体上に積層することにより、導電層(即ち集電体と活物質層との間)における導電パスを確保すると共に、十分な容量の正極活物質を保持したリチウム二次電池用正極を製造することができる。本方法によると、前記導電層と前記活物質層との厚みの比率(導電層:活物質層)が1:5〜1:100である正極と、そのような正極を備え、初期内部抵抗が低く長寿命であるとともに高出力のリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書によって開示されている技術内容と該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここで開示されるリチウム二次電池用正極は、上述の通り、集電体の表面に導電層を形成し、次いで活物質層を積層することによって得られる正極であり、その構成要素である集電体の組成や形状に特に制限はない。導電性の良好な金属から成る導電性部材が集電体として使用可能であるが、特にリチウムイオン二次電池用の正極集電体としてはアルミニウム(Al)製のものが好ましい。
集電体の形状は、正極及び電池の形状に応じて異なり得るため特に制限はなく、棒状、板状、シート状若しくは箔状等の種々の形態であり得る。例えば、ここで開示されるいずれかの正極を用いて構築されるリチウムイオン二次電池の好ましい一態様として、捲回型電極体を備える電池が挙げられる。この態様において、アルミ箔等の箔状金属から成る集電体が使用される。即ち、捲回型電極体を備える電池では、Al等から成る正極用箔状集電体の表面に導電層と活物質層とを積層させて得た正極シートと、金属(例えば銅)又はカーボン等から成る負極用箔状集電体の表面に適当な負極活物質を付着させて得た負極シートとを、セパレータを介して重ね合わせ、これを捲回して捲回型電極体を作製する。セパレータとしては例えば多孔質ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)シートを用いることができる。そして、この捲回型電極体を電解液(典型的には後述するような非水電解液)とともに適当な容器に収容することによってリチウムイオン二次電池が構築される。なお、種々の形状の集電体自体の作製は、二次電池の製造分野において従来公知の方法であればよく、本発明を特徴付けるものではない。
ここで開示されるリチウム二次電池用正極に用いられる正極活物質は、従来この種の二次電池で用いられているものであればよく、特定の活物質に限定されない。一般的なリチウム二次電池に用いられる層状構造の酸化物系正極活物質、或いはスピネル構造の酸化物系正極活物質等を好ましく用いることができる。例えば、所望する電池がリチウムイオン二次電池である場合、種々のリチウム遷移金属複合酸化物の使用が好ましい。上述のとおり、本発明によるとリチウム遷移金属複合酸化物と水系溶媒とを含む活物質層形成用組成物(典型的にはペースト状のもの)を使用する際の集電体に及ぼす悪影響を回避し、高性能なリチウムイオン二次電池を提供することができる。例えば、リチウムコバルト系複合酸化物(典型的にはLiCoO)、リチウムニッケル系複合酸化物(典型的にはLiNiO)、リチウムマンガン系複合酸化物(LiMn)、等を主成分とする正極活物質を用いることができる。遷移金属元素が2種以上含まれる複合酸化物(例えば一般式:LiNiCo1−xで示される複合酸化物、ここでxは0<x<1を満足する正の実数)であってもよい。
ここで開示されるリチウム二次電池用正極に用いられる導電材は、従来この種の二次電池で用いられているものであればよく、特定の導電材に限定されない。例えば、カーボンブラック(アセチレンブラック等)のような炭素(カーボン)粉末、ニッケル粉末等の導電性金属粉末等を用いることができる。
また、ここで開示されるリチウム二次電池用正極に用いられる結着材であって導電層に含まれる結着材は、有機溶剤を溶媒とする溶剤系活物質層形成用ペーストを調製するにあたって結着材として従来用いられている有機溶剤に可溶性のポリマーであることが好ましい。この種のポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体(PEO−PPO)等が挙げられる。PVDF、PVDC等が好ましい。
他方、ここで開示されるリチウム二次電池用正極に用いられる結着材であって活物質層に含まれる結着材は、水系溶媒(典型的には水)を採用する活物質層形成用水系ペーストを調製するにあたって結着材として従来用いられている有機溶剤に対して実質的に不溶性であって水に可溶又は分散するポリマーであることが好ましい。例えば、水に溶解する親水性ポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)等、種々のセルロース誘導体が挙げられる。CMCの使用が好ましい。また、水に分散するポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、酢酸ビニル共重合体、スチレンブタジエンブロック共重合体(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)、アラビアゴム等のゴム類が挙げられる。PTFE等のフッ素系樹脂が好ましい。
次に、本発明の正極製造方法を説明する。ここで開示される方法は、集電体の表面(形状・用途に応じて集電体の両面又は一方の面であり得る。)に導電層形成用組成物を付与し、次いで、形成された導電層上に活物質層を積層する。
導電層形成用組成物は、少なくとも一種の導電材と、結着材(好ましくは有機溶剤に対して可溶性である少なくとも一種のポリマーから成る。)と、有機溶剤とが混合されることにより調製される組成物である。典型的には、ペースト(又はスラリー)状に調製される。かかるペースト状導電層形成用組成物(以下「導電層形成用ペースト」ともいう。)は、従来の溶剤系の活物質層形成用ペーストと同様に調製すればよく、特別な操作を必要としない。例えば、適当な導電材(例えば炭素粉末)と、結着材(例えばPVDF)を適当な質量割合で適当な有機溶剤に添加し、混合することによってペースト(又はスラリー)状の導電層形成用組成物を調製することができる。
かかる導電層形成用ペーストを調製するための非水系溶媒としては、従来の溶剤系活物質層形成用ペーストの調製に用いられる有機溶剤が好適に用いられ得る。例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メチルエチルケトン、トルエン、等が例示される。NMPの使用が好ましい。
導電層における十分な導電経路(導電パス)と結着性を確保するため、導電材と結着材の合計量を100質量%としたときの該導電材の含有率が80〜99質量%(より好ましくは90〜98質量%、特に好ましくは95〜98質量%)となるように導電材と結着材とを配合することが好ましい。また、これら導電層を構成する要素と有機溶剤との配合比は特に限定されない。例えば、導電層形成用組成物全体のほぼ40〜90質量%が有機溶剤(例えばNMP)となるように調製することができる。
そして、上述のようにして調製した導電層形成用ペーストを、集電体の表面に付与することによって集電体上に導電層を形成する。典型的には、適当な塗布装置(コーター)を使用して、集電体表面に導電層形成用ペーストを所定の厚みで層状に塗布することができる。塗布する厚みは、特に限定されず、正極及び電池の形状や用途に応じて適宜異なり得る。導電層と活物質層との厚みの比率(導電層:活物質層)が、概ね1:5〜1:100(典型的にはプレス後の厚み比率)となるように、比較的薄く形成するのが好ましい。例えば、適当な塗布装置(コーター)を用いることによって、所定の厚みの箔状集電体(例えばAl箔)の表面に所望する厚みで導電層形成用ペーストを塗布することができる。塗布後、適当な乾燥機を用いて塗布物を乾燥することによって、集電体表面に所定の厚みの導電層を形成することができる。
上述のようにして導電層を形成した後、その導電層上に活物質層を積層する。この用途に用いられる活物質層形成用組成物は、少なくとも一種の正極用活物質と、結着材(好ましくは有機溶剤に対して実質的に不溶性である少なくとも一種のポリマーから成る。)と、水系溶媒(典型的には水)とが混合されることにより調製される組成物である。典型的には、ペースト(又はスラリー)状に調製される。かかる活物質層形成用ペーストは、リチウム二次電池用正極の製造に従来用いられてきた水系の活物質層形成用ペーストと同様に調製すればよく、特別な操作を必要としない。例えば、典型的には粉末状である少なくとも一種の適当な正極用活物質(例えばリチウム遷移金属複合酸化物)と、少なくとも一種の結着材(CMC、PTFE等)とを適当な質量割合で水に添加し、混合することによってペースト(又はスラリー)状の活物質層形成用組成物を調製することができる。活物質層中の正極活物質と導電層及び集電体との間における十分な導電経路(導電パス)を確保するため、導電材を更に含有させることが好ましい。例えば、活物質と結着材の合計量を100質量%としたときの活物質の含有率が85〜99質量%、結着材の含有率が1〜15質量%となるようにこれらを配合することが好ましい。あるいは、活物質と導電材と結着材の合計量を100質量%としたときの活物質の含有率が80〜95質量%、導電材の含有率が2〜15質量%、結着材の含有率が1〜15質量%となるようにこれらを配合することが好ましい。また、これら活物質層を構成する要素と水系溶媒との配合比は特に限定されない。例えば、活物質層形成用組成物全体のほぼ40〜90質量%が水系溶媒となるように調製することができる。
そして、上述のようにして調製した活物質層形成用ペーストを、導電層の表面に付与することによって活物質層を積層・形成することができる。上述した導電層と同様、適当な塗布装置(コーター)を使用して、集電体の導電層表面に活物質層形成用ペーストを所定の厚みで層状に塗布するとよい。塗布する厚みは、特に限定されず、正極及び電池の形状や用途に応じて適宜異なり得る。導電層と活物質層との厚みの比率(導電層:活物質層)が、概ね1:5〜1:100(典型的にはプレス後の厚み比率)となるように、比較的厚く形成するのが好ましい。導電層表面に所望する厚みで活物質層形成用ペーストを塗布した後、適当な乾燥機を用いて塗布物を乾燥することによって、集電体(導電層)の表面に所定の厚みの活物質層を形成することができる。
こうして得られた積層物(正極)を、所望によりプレスすることによって、目的とする厚みの正極シートを得ることができる。
尚、導電層と活物質層との厚みの比率は、周囲条件(温度、湿度等)、或いは集電体に導電層及び活物質層を塗布した後にプレスを行う場合は当該プレス条件、等により変化し得るが、温度や湿度等の周囲条件、プレス条件等に応じて導電層、活物質層の厚みを適宜設定することによって導電層と活物質層との厚みの比率を上記好適な範囲に容易に調整することができる。例えばプレス後の導電層と活物質層との厚みの比率が上記範囲にあることが特に好適である。
本発明によると、ここで開示される方法により得られる正極を備えたリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)を製造することができる。従って、本発明は、他の側面として、ここで開示される正極を作製又は用意することを特徴とするリチウム二次電池の製造方法を提供する。
なお、リチウム二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)を作製する手段は、上述の正極を製造(又は用意)し且つその正極を用いること以外、従来のリチウム二次電池製造方法に準じればよく、特に説明を要する特別な処理を必要としない。
例えば、本発明に係る正極シート(上述の説明文参照)と、適当な負極シート及びセパレータとを用い、従来公知の方法に基づいて、上述したような捲回型その他のシート構造電極を備えるリチウムイオン二次電池を構築することができる。
具体的には、リチウムイオン(Li)を挿入及び脱離可能なグラファイト構造(層状構造)のカーボン材料(即ち負極活物質)を有するリチウムイオン二次電池用負極シート及び上述したセパレータを予め用意する。そして、正極シートと負極シートとをセパレータを介して重ね合わせる(積層する)。この積層物を適当な電池容器に収容する。好ましい態様では、該積層物を捲回して捲回型電極構造体を構成し、それを電池容器に収容する。或いは、複数枚の正極シートおよび複数枚の負極シートをそれぞれセパレータを挟んで交互に積層した積層型電極構造体を構成し、それを電池容器に収容してもよい。
このような電極構造体を収容した電池容器に、予め用意しておいた電解液を供給(注入)することにより、正極、負極及びセパレータに電解液を含浸させる。これにより、所望するリチウムイオン二次電池を構築することができる。
典型的には、リチウムイオン二次電池用電解液は、非水系溶媒と該溶媒に添加され溶解しているリチウム塩(支持塩)とを含む非水電解液である。
非水系溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性の溶媒を用いることができる。プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等の、一般に非水系電池(リチウムイオン二次電池等)の電解液等に使用し得るものとして知られている非水系溶媒から選択される一種または二種以上を用いることができる。
電解液に含有させる支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiI等から選択される一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)を用いることができる。
なお、電解液における支持塩の濃度は、従来のリチウムイオン二次電池で使用される電解液と同様でよく、特に制限はない。適当なリチウム化合物(支持塩)を0.1〜5mol/L程度の濃度で含有する電解液を使用することができる。
以下、本発明に関する実験例につき説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
<実施例1:リチウムイオン二次電池の製造(1)>
以下のようにして円筒形標準タイプである18650型のリチウムイオン二次電池を製造した。
導電材であるアセチレンブラック、及び、結着材であるPVDFを有機溶剤(NMP)と混合し、本実施例に係る導電層形成用ペーストを調製した。このペースト状組成物に含まれる各材料(NMP以外)の凡その質量比は、アセチレンブラックが95質量%、PVDFが5質量%である。
また、正極活物質であるニッケル酸リチウム(LiNiO)粉末、導電材であるアセチレンブラック、並びに、結着材であるCMCをイオン交換水と混合し、本実施例に係る活物質層形成用ペーストを調製した。このペースト状組成物に含まれる各材料(水以外)の凡その質量比は、ニッケル酸リチウムが87質量%、アセチレンブラックが10質量%、CMCが3質量%である。
前記導電層形成用ペーストを、正極集電体としての厚み約15μmの長尺状アルミニウム箔の両面に塗布(付着)して乾燥させ、該集電体の両面に厚み6μmの導電層を形成した。
次いで、前記活物質層形成用ペーストを、導電層上に塗布(付着)して乾燥させ、アルミニウム箔集電体両面の導電層上に厚み120μmの活物質層を形成した。次いで全体の厚みが85μmとなるようにプレスした。このようにして正極シートを作製した。
他方、負極活物質用のカーボン材料として黒鉛粉末(キシダ化学株式会社製品)を使用し、結着材としてCMC及びスチレンブタジエンブロック共重合体(SBR)を使用して負極活物質層形成用組成物を調製した。即ち、前記負極活物質及び結着材をイオン交換水と混合し、ペースト状の負極活物質層形成用組成物を調製した。この組成物に含まれる各材料(水以外)の凡その質量比は、前記カーボン材料が98質量%、CMCが1質量%、SBRが1質量%である。
前記調製した負極活物質層形成用組成物を、負極集電体としての厚み約15μmの長尺状銅箔の両面に塗布(付着)して乾燥させ、銅箔集電体両面に厚み120μmの負極活物質層を形成した。次いで全体の厚みが85μmとなるようにプレスした。このようにして負極シートを作製した。
これら作製した正極シート及び負極シートを2枚のセパレータ(ここでは多孔質ポリエチレンシートを用いた。)とともに積層し、この積層シートを捲回して捲回型電極構造体を作製した。この電極構造体を電解液とともに容器に収容して、直径18mm、高さ65mm(即ち18650型)の円筒型リチウムイオン二次電池を作製した。電解液としては従来のリチウムイオン二次電池に用いられる電解液を特に制限なく用いることができるが、ここではエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との3:7(体積比)混合溶媒に1mol/LのLiPFを溶解させた組成の電解液を用いた。
<比較例1:リチウムイオン二次電池の製造(2)>
本比較例では、ニッケル酸リチウム粉末、アセチレンブラック、並びに、結着材としてPVDFをNMPと混合して活物質層形成用ペーストを調製した。この溶剤系ペーストに含まれる各材料(NMP以外)の凡その質量比は、ニッケル酸リチウム85質量%、アセチレンブラック10質量%、PVDF5質量%である。
本比較例では、実施例1で用いた導電層形成用ペーストを使用して実施例1と同様に処理することによって、厚み約15μmの長尺状アルミニウム箔の両面に導電層を形成した。その後、前記調製した溶剤系活物質層形成用ペーストを用いる以外は実施例1と同様に処理することによって、導電層上に活物質層が積層された本比較例に係る正極シートを作製した。次いで、該正極シートを用いる以外は実施例1と同様の材料及び処理によって実施例1と同形状の円筒型リチウムイオン二次電池を作製した。
<比較例2:リチウムイオン二次電池の製造(3)>
本比較例では、アセチレンブラック、及び、結着材としてCMCを使用し、これらをイオン交換水と混合して導電層形成用ペーストを調製した。この水系ペーストに含まれる各材料(水以外)の凡その質量比は、アセチレンブラック95質量%、CMC5質量%である。
本比較例では、前記調製した水系導電層形成用ペーストを使用して実施例1と同様に処理することによって、厚み約15μmの長尺状アルミニウム箔の両面に導電層を形成した。その後、実施例1で使用した活物質層形成用ペーストを用いて実施例1と同様に処理することによって、導電層上に活物質層が積層された本比較例に係る正極シートを作製した。次いで、該正極シートを用いる以外は実施例1と同様の材料及び処理によって実施例1と同形状の円筒型リチウムイオン二次電池を作製した。
<比較例3:リチウムイオン二次電池の製造(4)>
本比較例では、導電層形成用ペーストとして比較例2に係る水系ペーストを使用し、活物質層形成用ペーストとして比較例1に係る溶剤系ペーストを使用した。
そして実施例1と同様に処理することによって、厚み約15μmの長尺状アルミニウム箔の両面に導電層を形成し、該導電層上に活物質層が積層された本比較例に係る正極シートを作製した。次いで、該正極シートを用いる以外は実施例1と同様の材料及び処理によって実施例1と同形状の円筒型リチウムイオン二次電池を作製した。
<比較例4:リチウムイオン二次電池の製造(5)>
本比較例では、実施例1で使用した活物質層形成用ペーストを用いて実施例1と同様に処理することによって、厚み約15μmの長尺状アルミニウム箔の両面に活物質層を形成し本比較例に係る正極シートを作製した。即ち、本比較例に係る正極には、導電層は形成されていない。次いで、該正極シートを用いる以外は実施例1と同様の材料及び処理によって実施例1と同形状の円筒型リチウムイオン二次電池を作製した。
<比較例5:リチウムイオン二次電池の製造(6)>
本比較例では、比較例1で使用した活物質層形成用ペーストを用いて実施例1と同様に処理することによって、厚み約15μmの長尺状アルミニウム箔の両面に活物質層を形成し本比較例に係る正極シートを作製した。即ち、本比較例に係る正極には、導電層は形成されていない。次いで、該正極シートを用いる以外は実施例1と同様の材料及び処理によって実施例1と同形状の円筒型リチウムイオン二次電池を作製した。
<試験例:初期内部抵抗及び耐久性の評価>
各実施例及び比較例で得られたリチウムイオン二次電池について、以下に示す抵抗測定方法によって、初期内部抵抗値(以下「初期抵抗値」という。)を測定した。また、これらの二次電池に下記条件の充放電サイクル試験を行った後に同様の測定方法によって、充放電繰り返し後の内部抵抗値(以下「耐久後抵抗値」という。)の値を測定した。
[初期抵抗値の測定]
環境温度25℃において、1000mA/cmの定電流で3.75Vまで充電した後に、3.75Vで定電位充電を行い、合計充電時間が1.5時間になるまで充電を続けた。このときの充電状態(State of charge:SOC)は満充電の約60%である。その後、以下の(a)〜(f)の順に充放電を行い、各充放電後の電圧を縦軸とし且つ充放電電流を横軸とした電流(I)−電圧(V)プロット値の一次近似直線の傾きから初期抵抗値を求めた。結果を表1に示す。
(a) 300mA/cm2で10秒間放電する。
(b) 300mA/cm2で10秒間充電する。
(c) 900mA/cm2で10秒間放電する。
(d) 900mA/cm2で10秒間充電する。
(e)2700mA/cm2で10秒間放電する。
(f)2700mA/cm2で10秒間充電する。
[耐久後抵抗値充放電サイクル試験]
環境温度60℃において、電流密度2Cの定電流で4.1Vまで充電し、次いで同じ電流密度で3.0Vまで放電した。このサイクル(2Cの定電流で4.1Vまで充電し、3.0Vまで放電するサイクル)を500回繰り返した。なお、符号「C」は放電時間率を表す。従って、電流密度2Cとは、その電池の電池容量(Ah)に相当する電気量を0.5時間で供給し得る電流密度(A)を意味する。そして、初期抵抗値と同様、充放電後のI−Vプロット値の一次近似直線の傾きから500サイクル充放電後の抵抗値(耐久後抵抗値)を求めた。結果を表1に示す。
Figure 2006004739
表1に示す結果から明らかなように、本発明によって提供される正極を採用したリチウムイオン二次電池(実施例)では、集電体表面に溶剤系の導電層形成用ペーストを使用して導電層を形成し、その層上に水系の活物質層形成用ペーストを使用して活物質層を積層形成した結果、集電体(ここではAl箔)と塩基性の水系溶媒との接触による反応を回避して抵抗成分となり得る化合物の生成を防止する。また、導電層に含まれる導電材によって活物質と集電体との間に十分な導電パスを形成し得る。このため、初期内部抵抗が低く、高出力を実現することができる。
また、活物質層自体は水系の活物質層形成用ペーストを使用して形成しているため、二次電池として十分機能し得る充放電サイクル特性に優れる高耐久性を有する。即ち長寿命を実現することができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、導電層及び/又は活物質層には、本発明の目的を阻害しない範囲で上述した主要構成要素以外の付加的な構成要素(副成分)を含有させることができる。例えば導電層に正極活物質を含有させてもよい。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。

Claims (11)

  1. リチウム二次電池に用いられる正極であって、
    集電体と、
    該集電体上に形成された導電層であって、導電材と、結着材として有機溶剤に対して可溶性である少なくとも一種のポリマーを有する導電層と、
    該導電層上に積層された活物質層であって、正極用活物質と、結着材として有機溶剤に対して実質的に不溶性である少なくとも一種のポリマーを有する活物質層と、
    を備える、正極。
  2. 前記活物質が少なくとも一種のリチウム遷移金属複合酸化物である、請求項1に記載の正極。
  3. 前記導電材と結着材の合計量を100質量%としたときの前記導電層における前記導電材の含有率が90〜98質量%である、請求項1又は2に記載の正極。
  4. 前記活物質層は導電材を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の正極。
  5. 前記導電層と前記活物質層との厚みの比率(導電層:活物質層)が、1:5〜1:100である、請求項1〜4のいずれかに記載の正極。
  6. リチウム二次電池に用いられる正極の製造方法であって、以下の工程:
    集電体の表面に、導電材と結着材と有機溶剤とを有する導電層形成用組成物を付与し、該集電体上に導電層を形成する工程;及び
    前記形成された導電層の表面に、正極用活物質と結着材と水系溶媒とを有する活物質層形成用組成物を付与し、前記集電体の導電層上に活物質層を形成する工程;
    を包含する正極製造方法。
  7. 前記活物質として少なくとも一種のリチウム遷移金属複合酸化物が用いられる、請求項6に記載の方法。
  8. 前記導電材と結着材の合計量を100質量%としたときの該導電材の含有率が90〜98質量%となるように該導電材と結着材が配合された導電層形成用組成物を使用する、請求項6又は7に記載の方法。
  9. 導電材をさらに含む活物質層形成用組成物を使用する、請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 前記導電層と前記活物質層との厚みの比率(導電層:活物質層)が、1:5〜1:100となるように、前記集電体上に前記導電層及び活物質層を積層する、請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 請求項1〜5のいずれかに記載の正極を備えたことを特徴とする、リチウム二次電池。
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