JP2007280917A - 非水電解質電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、負極と、これら両極間に介装されたセパレータとから成る電極体と、溶媒及びリチウム塩から成る非水電解質とを備え、この非水電解質が上記電極体に含浸された非水電解質電池において、上記正極活物質には少なくともコバルト又はマンガンが含まれると共に、リチウム参照極電位に対して4.40V以上となるまで上記正極が充電され、且つ、上記正極と上記セパレータとの間には無機粒子とバインダーとが含まれた無機粒子層が形成され、しかも、上記リチウム塩にはLiBF4が含まれることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
また、電解液にLiBF4を添加する先行例が開示されているが(WO2006/54604号公報)、単に、電解液にLiBF4を添加するだけでは本発明の作用効果を発揮しえないことは、上述のことから明らかである。
無機粒子層は正極活物質層の表面及び/又はセパレータにおける正極側の表面に形成すれば良いのであるが、これらの全面に無機粒子層が形成されていれば、無機粒子層におけるコバルトイオンやマンガンイオンのトラップ効果が十分に発揮されるので、高温でのサイクル特性の劣化や高温での保存特性の劣化を一層抑制することができる。
上記のように規制するのは、非水電解質の総量に対するLiBF4の割合が0.1質量%未満の場合には、LiBF4の量が少な過ぎるために保存特性改善効果が十分に発揮されない一方、非水電解質の総量に対するLiBF4の割合が5.0質量%を超える場合には、LiBF4の副反応に伴う放電容量の低下、及び放電負荷特性の低下が著しくなるからである。
LiBF4は、充放電により反応し消費されるため、電解質がLiBF4単独の場合には、十分な伝導度を確保できず、放電負荷特性が低下してしまう。したがって、リチウム塩にはLiPF6が含まれていることが望ましい。また、リチウム塩にLiPF6が含まれている場合であっても、LiPF6の濃度が低すぎると、上記と同様の不都合があるので、LiPF6の濃度は0.6モル/リットル以上であることが好ましい。尚、LiPF6の濃度が2.0モル/リットル以下であるのが好ましいのは、LiPF6の濃度が2.0モル/リットルを超えると電解液の粘度が高くなり、電池内での液まわりが低下するという理由によるものである。
このように、無機粒子としてルチル型のチタニア及び/又はアルミナが好ましいのは、これらのものは、電池内での安定性に優れ(リチウムとの反応性が低く)、しかもコストが安価であるという理由によるものである。また、ルチル構造のチタニアとするのは、アナターゼ構造のチタニアはリチウムイオンの挿入離脱が可能であり、環境雰囲気、電位によっては、リチウムを吸蔵して電子伝導性を発現するため、容量低下や、短絡の危険性があるからである。
このように規制するのは、無機粒子の平均粒径がセパレータの平均孔径より小さい場合には、電池を作成する際の巻き潰し時にセパレータが一部貫通して、セパレータに大きなダメージを与えることがあり、しかも、セパレータの微多孔内へ無機粒子が侵入して、電池の諸特性を低下させることがあるため、これらの不都合を回避するためである。
上記無機粒子の平均粒径は1μm以下のものが好ましく、また、スラリーの分散性を考慮すると、アルミニウム、シリコン、チタンで表面処理がなされているものが好ましい。
尚、本明細書において平均粒径という場合には、BET法により測定した値をいうものとする。
上述した作用効果は、無機粒子層の厚みが大きい程発揮されるとはいうものの、無機粒子層の厚みが大きくなり過ぎると、電池内部抵抗の増大により負荷特性が低下したり、正負両極の活物質量が少なくなることによる電池エネルギー密度の低下を招来したりすることになるからである。このようなことを考慮すれば、無機粒子層の厚みは2μm以下であることが特に望ましい。
以上より、無機粒子層の厚みは1μm以上4μm以下であることが望ましく、特に1μm以上2μm以下であることが望ましい。尚、上記無機粒子層の厚みとは、片面での厚みをいうものとする。
このように上限を定めるのは、バインダーの濃度が余り高くなると、リチウムイオンの活物質層への透過性が極端に低下し、電極間の抵抗が増加することにより、充放電容量の低下を招くからである。このようなことを考慮すれば、無機粒子に対するバインダーの濃度が10質量%以下であることが更に望ましく、その中でも5質量%以下であることが特に望ましい。
このように規制するのは、充填密度が3.40g/cc未満である場合には、正極での反応は局所的な反応でなく全体的に反応するため、正極での劣化も均一に進行し、保存後の充放電反応に対してもさほど大きな影響はない。これに対して、充填密度が3.40g/cc以上である場合には、正極での反応は最表面層での局所的な反応に限定されるため、正極での劣化も最表面層での劣化が中心となる。このため、放電時の正極活物質中へのリチウムイオンの侵入、拡散が律速となるため、劣化の程度が大きくなる。このことから、正極活物質層の充填密度が3.40g/cc以上の場合に、本発明の作用効果がより発揮されることになる。
これは、正極がリチウム参照極電位に対して4.45V以上で充電されるような電池では、LiPF6の添加の有無及び無機粒子層の有無によって高温特性の差異が顕著に現れるからである。特に、正極がリチウム参照極電位に対して4.50V以上で充電されるような電池では、この差異が顕著に出現する。
このような構造とするのは、以下に示す理由による。即ち、正極活物質としてコバルト酸リチウムを用いた場合には、充電深度が高まるにつれて、結晶構造は不安定になり、高温雰囲気ではより劣化が早まることになる。そこで、アルミニウム或いはマグネシウムを正極活物質(結晶内部)に固溶させることで、正極における結晶歪みの緩和を図っている。但し、これらの元素は結晶構造の安定化には大きく寄与するものの、初回充放電効率の低下や放電作動電圧の低下等を招来する。そこで、このような問題を緩和すべく、コバルト酸リチウム表面にジルコニアを固着している。
これは、50℃以上の雰囲気下で使用された場合に電池の劣化が早くなるため、本発明を適用する効果が大きいからである。
セパレータの空孔体積を800(μm・%)以下となるように規制するのは、セパレータの空孔体積が小さいものほど析出物や反応生成物の影響を受けやすく、特性劣化が著しくなるため、このように規制されたセパレータを有する電池に本発明を適用することにより、顕著な効果を発揮しうるからである。但し、セパレータの空孔体積が1500(μm・%)以下の場合には、上記作用効果は十分に発揮され、さらに、セパレータの空孔体積が1500(μm・%)以上の場合であっても、上記作用効果が発揮されることがある。
尚、セパレータの空孔体積が小さい電池ではセパレータの薄型化を達成できるので、電池のエネルギー密度の向上を図ることもできる。
先ず、正極活物質であるコバルト酸リチウム(Al及びMgがそれぞれ1.0mol%固溶されており、且つZrが0.05mol%表面に固着されているもの)と、炭素導電剤としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのPVDFとを、95:2.5:2.5の質量比で混合した後、NMPを溶剤として特殊機化製コンビミックスを用いてこれらを攪拌し、正極合剤スラリーを調製した。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の両面に塗着し、更に、乾燥、圧延することにより、正極集電体の両面に正極活物質層を形成した。
炭素材料(人造黒鉛)と、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)と、SBR(スチレンブタジエンゴム)とを、98:1:1の質量比で水溶液中にて混合して負極スラリーを作製した後、負極集電体である銅箔の両面に負極スラリーを塗着し、更に、乾燥、圧延することにより、負極集電体の両面に負極活物質層を形成した。尚、負極活物質層の充填密度は1.60g/ccとした。
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とが容積比で3:7の割合で混合された混合溶媒に、LiPF6を1.0モル/リットル(M)の割合で、LiBF4を電解液の総量に対して1質量%の割合で、それぞれ溶解させることにより調製した。
セパレータとしては、ポリエチレン(以下、PEと略すことがある)製微多孔膜(膜厚:16μm、平均孔径0.1μm、空孔率47%)を用いた。
正、負極それぞれにリード端子を取り付け、セパレータを介して渦巻状に巻き取ったものをプレスして、扁平状に押し潰した電極体を作製した後、電池外装体としてのアルミニウムラミネートフィルムの収納空間内に電極体を配置し、更に、当該空間内に非水電解液を注液した後に、アルミニウムラミネートフィルム同士を溶着して封止することにより電池を作製した。尚、この電池では、充電終止電圧が4.40V(リチウム参照極基準に対する正極電位が4.50V)になるように電池設計を行い、且つ、この電位で正負極の容量比(負極の初回充電容量/正極の初回充電容量)が1.08になるように正負両極の活物質量を調整した。また、上記電池の設計容量は780mAhである。
充電終止電圧とセパレータの物性とを固定する一方、無機粒子層の有無とリチウム塩の種類とを変化させ、無機粒子層の有無及びリチウム塩の種類、濃度と充電保存特性(残存容量)との関係を調べたので、その結果を以下に示す。
(実施例1)
実施例1としては、前記最良の形態で示した電池を用いた。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池A1と称する。
電解液の総量に対するLiBF4の割合を、それぞれ、3質量%、5質量%とした他は、実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下それぞれ、本発明電池A2、A3と称する。
電解液にLiBF4を添加しない他は、上記実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、比較電池Z1と称する。
正極に無機粒子層を形成しない他は、上記比較例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、比較電池Z2と称する。
正極に無機粒子層を形成しない他は、上記実施例1〜3と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下それぞれ、比較電池Z3〜Z5と称する。
(実験)
本発明電池A1〜A3及び比較電池Z1〜Z5の充電保存特性(充電保存後の残存容量)について調べたので、その結果を表1に示す。尚、充放電条件及び保存条件は、下記の通りである。
・充電条件
1.0It(750mA)の電流で、電池電圧が設定電圧(上記充電終止電圧であり、本実験では全ての電池において4.40V[リチウム参照極基準に対する正極電位では4.50V])となるまで定電流充電を行なった後、設定電圧で電流値が1/20It(37.5mA)になるまで充電を行うという条件。
・放電条件
1.0It(750mA)の電流で、電池電圧が2.75Vまで定電流放電を行なうという条件。
尚、充放電の間隔は10分である。
上記充放電条件で充放電を1回行い、再度、上記充電条件で設定電圧まで充電した電池を60℃で5日間放置するという条件である。
[残存容量の算出]
上記電池を室温まで冷却し、上記放電条件と同一の条件で放電を行って残存容量を測定し、保存試験後1回目の放電容量と保存試験前の放電容量とを用いて、下記(1)式より、残存容量を算出した。
残存容量(%)=
(保存試験後1回目の放電容量/保存試験前の放電容量)×100・・・(1)
(1)全体考察
表1の結果から明らかなように、全ての電池において充電終止電圧とセパレータの物性とが同一であるのにも関わらず、正極(正極活物質層の表面)に無機粒子層が形成され且つ電解液にLiBF4が添加された本発明電池A1〜A3は、正極に無機粒子層が形成されず且つ電解液にLiBF4が添加されていない比較電池Z2、正極に無機粒子層が形成されているが電解液にLiBF4が添加されていない比較電池Z1、及び電解液にLiBF4が添加されているが正極に無機粒子層が形成されていない比較電池Z3〜Z5に比べて、残存容量が多くなっている(充電保存特性が向上している)ことが認められる。この理由を、下記電解液にLiBF4を添加することの利点に関する考察、及び、無機粒子層を形成したことの利点に関する考察に分けて説明する。
先ず、正極に無機粒子層が形成されていない電池(比較電池Z2〜Z5)同士を比較した場合には、電解液にLiBF4が添加された比較電池Z3〜Z5は、電解液にLiBF4が添加されていない比較電池Z2に比べて、残存容量が多くなっていることが認められる。一方、正極に無機粒子層が形成された電池(本発明電池A1〜A3、比較電池Z1)同士を比較した場合においても、電解液にLiBF4が添加された本発明電池A1〜A3は、電解液にLiBF4が添加されていない比較電池Z1に比べて、残存容量が多くなっていることが認められる。これは、以下に示す理由によるものと考えられる。
(I)正極の充電電位が高くなることによる強酸化雰囲気での電解液の分解
(II)充電された正極活物質の構造が不安定化することによる劣化
といった点が主たる要因として考えられる。
そこで、上記の如く電解液にLiBF4を添加すると、LiBF4由来の皮膜が正極活物質の表面に形成される。したがって、この皮膜の存在により、正極活物質を構成する物質(CoイオンやMnイオン)の溶出や、正極表面上での電解液の分解を抑制することができるということに起因して、充電保存特性の低下を抑制できるものと考えられる。
正極からの溶出物や分解生成物の有無を簡易的に調べる方法として、セパレータ等の着色状態を調べる方法がある。当該方法により調べることができるのは、正極から溶出したCoイオン等は電解液と反応してセパレータ等に付着するが、そのときの反応に応じてセパレータの着色状態が変化するからである。
先ず、電解液にLiBF4が添加されていない電池(比較電池Z1、Z2)同士を比較した場合には、正極に無機粒子層が形成された比較電池Z1は、正極に無機粒子層が形成されていない比較電池Z2に比べて、残存容量が多くなっていることが認められる。一方、電解液にLiBF4が添加された電池(本発明電池A1〜A3、比較電池Z3〜Z5)同士を比較した場合には、正極に無機粒子層が形成された本発明電池A1〜A3は、正極に無機粒子層が形成されていない比較電池Z3〜Z5に比べて、残存容量が多くなっていることが認められる。これは、以下に示す理由によるものと考えられる。
上述の如く、電解液にLiBF4を添加すると、LiBF4由来の皮膜が正極活物質の表面に形成されるが、LiBF4由来の皮膜により完全に正極活物質を覆うことは難しく、正極活物質からのCoイオン等の溶出や電解液の分解を完全に抑えることは難しかった。
表1から明らかなように、電解液にLiBF4が添加されていない電池(比較電池Z1、Z2)同士を比較した場合には、正極に無機粒子層が形成された比較電池Z1ではやや着色する程度であるのに対して、正極に無機粒子層が形成されていない比較電池Z2では着色の度合いが大きくなっていることが認められる。一方、電解液にLiBF4が添加された電池(本発明電池A1〜A3、比較電池Z3〜Z5)同士を比較した場合には、正極に無機粒子層が形成された本発明電池A1〜A3では着色していなかったのに対して、正極に無機粒子層が形成されていない比較電池Z3〜Z5やや着色していることが認められた。この結果より、正極での反応生成物が無機粒子層で移動抑制されることにより、セパレータ及び負極のダメージが軽減されているものと推測される。
上記(2)(3)より、電解液にLiBF4が添加されることにより、正極活物質を構成する物質(CoイオンやMnイオン)の溶出や、正極表面上での電解液の分解を抑制することができ、且つ、正極に無機粒子層を形成することによりフィルター効果が発揮されるという相乗効果により、本発明電池A1〜A3では充電保存特性が飛躍的に向上するものと考えられる。
本発明電池A1〜A3を比較した場合、電解液に添加するLiBF4の濃度が高いほど、充電保存特性の改善効果が大きくなっていることが認められる。このことからすれば、電解液に添加するLiBF4の濃度を高めれば、問題が解決するのではないかとも考えられる(極論すれば、LiBF4の濃度を極めて高くすれば、無機粒子層は必要ではないとも考えられる)。但し、電解液に添加するLiBF4の濃度を余り高めると、充電保存特性以外の電池特性(初期充放電効率等)が低下することを、本発明者らは見出した。そこで、このことについて、下記第2実施例にて説明する。
充電終止電圧とセパレータの物性とを固定し、且つ全ての電池の正極表面に無機粒子層を配置する一方、リチウム塩の濃度を1.0Mに固定し(但し、本発明電池A1を除く)、LiPF6とLiBF4との混合割合を変化させ、LiPF6とLiBF4との混合割合と充電保存特性(残存容量)、初期充放電特性(初期充放電効率)との関係を調べたので、その結果を以下に示す。
電解液のリチウム塩として、0.9MのLiPF6と0.1MのLiBF4とを用いた他は、前記第1実施例の実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池B1と称する。
電解液のリチウム塩として、0.5MのLiPF6と0.5MのLiBF4とを用いた他は、前記第1実施例の実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池B2と称する。
本発明電池B1、B2、前記本発明電池A1(リチウム塩の濃度は1.0Mではない)及び前記比較電池Z1の充電保存特性(残存容量)と初期特性(初期充放電効率)について調べたので、その結果を表2に示す。
尚、充放電条件、保存条件、及び残存容量の算出方法については、前記第1実施例の実験と同様の条件である。
また、初期充放電効率は、前記第1実施例の実験と同様の条件で充放電を行い、以下の(2)式により算出した。
初期充放電効率(%)=
(電池作製後1回目の放電容量/電池作製後1回目の充電容量)×100・・・(2)
リチウム塩濃度を1.0Mに固定し、且つ、正極表面に無機粒子層を形成した場合において、LiBF4が添加された本発明電池B1、B2は、LiBF4が添加されていない比較電池Z1に比べて残存容量が多くなっている(充電保存特性が向上している)ことが認められる。これは、LiBF4由来の皮膜が正極表面に形成され、正極活物質からの溶出物や電解液の分解を根本から抑制しているとともに、LiBF4の効果によっても抑制できなかった溶解物や分解生成物を無機粒子層でトラップすることができるということに起因するものと考えられる。また、このことは、比較電池Z1ではセパレータにやや着色がみられるのに対して、本発明電池B1、B2ではセパレータの着色がないということから裏づけられる。
セパレータの物性を固定する一方、充電終止電圧、無機粒子層の有無、及びLiBF4の添加の有無(電解液の総質量に対するLiBF4の割合は3質量%で固定)を変化させ、充電終止電圧、無機粒子層の有無、及びLiBF4の添加の有無と充電保存特性(残存容量)との関係を調べたので、その結果を以下に示す。
充電終止電圧がそれぞれ、4.30V、4.35V(リチウム参照極基準に対する正極電位がそれぞれ、4.40V、4.45V)となるように電池設計を行い、且つ、各電位で正負極の容量比が1.08になるように設計した他は、前記第1実施例の実施例2と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下それぞれ、本発明電池C1、C2と称する。
充電終止電圧が4.20V(リチウム参照極基準に対する正極電位が、4.30V)となるように電池設計を行い、且つ、その電位で正負極の容量比が1.08になるように設計した他は、前記第1実施例の実施例2と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、比較電池Y1と称する。
電解液にLiBF4を添加しない他は、それぞれ、上記比較例1、上記実施例1、上記実施例2と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下それぞれ、比較電池Y2、Y5、Y8と称する。
正極表面に無機粒子層を形成しない他は、それぞれ、上記比較例1、上記実施例1、上記実施例2と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下それぞれ、比較電池Y3、Y6、Y9と称する。
電解液にLiBF4を添加せず、且つ、正極表面に無機粒子層を形成しない他は、それぞれ、上記比較例1、上記実施例1、上記実施例2と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下それぞれ、比較電池Y4、Y7、Y10と称する。
本発明電池C1、C2及び比較電池Y1〜Y10の充電保存特性(充電保存後の残存容量)について調べたので、その結果を表3に示す。尚、同表には、前記本発明電池A1及び前記比較電池Z1、Z2、Z4の結果についても示す。
尚、充放電条件、保存条件、及び残存容量の算出方法については、前記第1実施例の実験と同様の条件である(但し、保存条件において、充電終止電圧が4.20Vの比較電池Y1〜Y4においては、80℃で4日間放置するという条件とした)。
(1)充電終止電圧4.20V(リチウム参照極基準に対する正極電位が4.30V)の場合の考察
表3から明らかなように、充電終止電圧4.20Vの場合には、無機粒子層が正極表面に形成され且つLiBF4が添加された比較電池Y1は、無機粒子層が正極表面に形成されず且つLiBF4が添加されていない比較電池Y4や、無機粒子層が正極表面に形成されているがLiBF4が添加されていない比較電池Y2に比べて、残存容量が少なく(充電保存特性が低下している)ことが認められる。これは、以下に示す理由によるものと考えられる。
これに対して、充電終止電圧4.30V以上の場合には、無機粒子層が正極表面に形成され且つLiBF4が添加された本発明電池C1、C2、A2は、同一の充電終止電圧の電池同士で比較した場合(例えば、本発明電池C1の場合には、比較電池Y5〜Y7と比較した場合)、無機粒子層が正極表面に形成されず且つLiBF4が添加されていない比較電池Y7、Y10、Z2や、LiBF4が添加されているが無機粒子層が正極表面に形成されていない比較電池Y6、Y9、Z4や、無機粒子層が正極表面に形成されているがLiBF4が添加されていない比較電池Y5、Y8、Z1に比べて、残存容量が多くなっている(充電保存特性が向上している)ことが認められる。更に、充電終止電圧が高くなればなるほど、本発明電池と比較電池とにおける充電保存特性の差異が大きくなっている(例えば、本発明電池C1と比較電池Y5〜Y7との差異よりも、本発明電池C2と比較電池Y8〜Y10との差異の方が大きくなっている)ことが認められる。これは、以下に示す理由によるものと考えられる。
上記第1実施例〜第3実施例と比べて、セパレータの物性と、無機粒子層の配置位置と、電解液の総質量に対するLiBF4の割合とを変えた場合に、無機粒子層の有無及びLiBF4の添加の有無と充電保存特性(残存容量)との関係を調べたので、その結果を以下に示す。
セパレータとして、孔径が0.1μm、膜厚が12μm、空孔率が38%のものを用い、且つ、正極表面に無機粒子層を形成せずセパレータ表面(正極側の表面)に無機粒子層(厚さ:2μm)を形成し、しかも電解液の総量に対するLiBF4の割合を1質量%とした他は、前記第1実施例の実施例2と同様にして電池を作製した。尚、上記セパレータ表面への無機粒子層の作製は、正極活物質層の表面に無機粒子層を作製する場合と同様にして行った。
このようにして作製した電池を、以下、本発明電池Dと称する。
電解液にLiBF4を添加しない他は、上記実施例と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、比較電池X1と称する。
セパレータ表面(正極側の表面)に無機粒子層を形成しない他は、上記実施例と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、比較電池X2と称する。
電解液にLiBF4を添加せず、且つ、セパレータ表面(正極側の表面)に無機粒子層を形成しない他は、上記実施例と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、比較電池X3と称する。
本発明電池D1及び比較電池X1〜X3の充電保存特性(充電保存後の残存容量)について調べたので、その結果を表4に示す。
尚、充放電条件、保存条件、及び残存容量の算出方法については、前記第1実施例の実験と同様の条件である。
(1)無機粒子層に用いるバインダーとしては、上記アクリロニトリル構造(単位)を含む共重合体(ゴム性状高分子)に限定するものではなく、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PAN(ポリアクリロニトリル)、SBR(スチレンブタジエンゴム)等やその変性体及び誘導体、ポリアクリル酸誘導体等であっても良い。
(I)電池の製造工程に耐え得る結着性を確保する機能
(II)電解液を吸収した後の膨潤による無機粒子間の隙間を充填する機能
(III)無機粒子の分散性確保(再凝集防止)
(IV)電解液への溶出が少ないという特性
したがって、(II)の機能と(IV)の特性とを満たすことを前提に、少量の添加でも上記(I)(III)の機能を満たすには、バインダーとしてアクリロニトリル単位を含む共重合体を用いることが特に望ましい。
また、スラリー作製時の溶媒としては、上記アセトンの他に、NMP、シクロヘキサノン、水などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
Claims (17)
- 正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、負極と、これら両極間に介装されたセパレータとから成る電極体と、溶媒及びリチウム塩から成る非水電解質とを備え、この非水電解質が上記電極体に含浸された非水電解質電池において、
上記正極活物質には少なくともコバルト又はマンガンが含まれると共に、上記正極と上記セパレータとの間には無機粒子とバインダーとが含まれた無機粒子層が形成され、且つ、上記リチウム塩にはLiBF4が含まれ、しかも、リチウム参照極電位に対して4.40V以上となるまで上記正極が充電されることを特徴とする非水電解質電池。 - 上記正極活物質層の表面に上記無機粒子層が形成されている、請求項1記載の非水電解質電池。
- 上記正極活物質層の表面の全面に上記無機粒子層が形成されている、請求項2記載の非水電解質電池。
- 上記セパレータにおける正極側の表面に上記無機粒子層が形成されている、請求項1〜3記載の非水電解質電池。
- 上記セパレータにおける正極側の表面の全面に上記無機粒子層が形成されている、請求項4記載の非水電解質電池。
- 上記非水電解質の総量に対する上記LiBF4の割合が、0.1質量%以上5.0質量%以下である、請求項1〜5記載の非水電解質電池。
- 上記リチウム塩にはLiPF6が含まれており、このLiPF6の濃度が0.6モル/リットル以上2.0モル/リットル以下である、請求項6記載の非水電解質電池。
- 上記無機粒子がルチル型のチタニア及び/又はアルミナから成る、請求項1〜7記載の非水電解質電池。
- 上記無機粒子の平均粒径が上記セパレータの平均孔径より大きくなるように規制される、請求項1〜8記載の非水電解質電池。
- 上記無機粒子層の厚みが4μm以下である、請求項1〜9記載の非水電解質電池。
- 上記フィラー粒子に対するバインダーの濃度が30質量%以下である、請求項1〜10記載の非水電解質電池。
- 上記正極活物質層の充填密度が3.40g/cc以上である、請求項1〜11記載の非水電解質電池。
- リチウム参照極電位に対して4.45V以上となるまで上記正極が充電される、請求項1〜12記載の非水電解質電池。
- リチウム参照極電位に対して4.50V以上となるまで上記正極が充電される、請求項1〜12記載の非水電解質電池。
- 上記正極活物質には、少なくともアルミニウム或いはマグネシウムが固溶されたコバルト酸リチウムが含まれており、且つ、このコバルト酸リチウム表面にはジルコニアが固着されている、請求項1〜14記載の非水電解質電池。
- 50℃以上の雰囲気下で使用されることがある、請求項1〜15記載の非水電解質電池。
- 上記セパレータの厚みをx(μm)とし、上記セパレータの空孔率をy(%)とした場合に、xとyとを乗じた値が800(μm・%)以下となるように規制される、請求項1〜16記載の非水電解質電池。
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