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JP2007088015A - 有機エレクトロルミネッセンス素子、および有機レクトロルミネッセンス素子の製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子、および有機レクトロルミネッセンス素子の製造方法 Download PDF

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JP2007088015A
JP2007088015A JP2005271708A JP2005271708A JP2007088015A JP 2007088015 A JP2007088015 A JP 2007088015A JP 2005271708 A JP2005271708 A JP 2005271708A JP 2005271708 A JP2005271708 A JP 2005271708A JP 2007088015 A JP2007088015 A JP 2007088015A
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Abstract

【課題】 本発明の目的は、駆動電圧が低下し、かつ、長期保存においても、輝度低下のない安定な有機EL素子を得ることにある。
【解決手段】 基板上に、陽極、陰極および少なくとも1層以上の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機層の1層は、金属塩を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【選択図】 なし

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子および有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関する。
発光層が有機化合物から構成される有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、低電圧駆動であることが知られているが、LED(発光ダイオード)等に比べると一般的に駆動電圧が高い。
特に発光の量子効率が高いといわれる「リン光発光有機EL素子」においては、蛍光発光有機EL素子に比して駆動電圧が高く、問題となっている。
一般に駆動電圧を下げるには、有機EL素子の膜厚を薄くすることで対応が可能となるが、その場合には電極間での通電に伴う不良が増え、歩留まりが低下してしまう。
これを解決する技術として、電極に隣接した層、例えば、電荷輸送層中にドーパントを入れることで、電荷輸送層の伝導率を上げるという試みがされている(例えば、特許文献1)。この中ではアルカリ金属、アルカリ土類金属と有機化合物が用いられており、これらの共蒸着膜により、有機EL素子の駆動電圧を下げることができる。
しかしながら、ここで用いられているアルカリ金属、アルカリ土類金属には、取り扱いが難しいという難点がある。
特に金属セシウムの様なアルカリ金属は、仕事関数も小さくドーピングの効果が大きいが、金属セシウムは空気中で不安定であり、取り扱うのが非常に危険である。
これらに鑑みて、アルカリ金属或いはアルカリ土類金属の塩と有機化合物によっても同様の効果が得られることが確認され、公開されている(例えば、特許文献2または3)。
しかしながら、これらの金属塩に関しては、有機EL素子の長期保存時において、金属イオンが拡散することによるものと思われるが、輝度低下が認められた。
特開平10−270172号公報 特開2004−193011号公報 特開2004−335137号公報
したがって、本発明の目的は、駆動電圧が低下し、かつ、長期保存においても、輝度低下のない安定な有機EL素子を得ることにある。
本発明の上記目的は以下の手段によって達成される。
1.基板上に、陽極、陰極および少なくとも1層以上の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機層の1層は、金属塩を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
2.前記金属塩を含有する有機層は、陰極と隣接していることを特徴とする前記1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
3.前記金属塩を含有する有機層は、更に金属原子が含有されていることを特徴とする前記2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
4.前記金属塩を含有する有機層の膜厚は、少なくとも20nm以上であることを特徴とする前記2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
5.前記金属塩は、硫酸塩であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
6.前記金属塩は、フッ素を含有するカルボン酸の塩であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
7.前記金属塩の対アニオンは、SCN-、NCS-であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
8.前記金属塩の対アニオンは、下記一般式(1)で表されることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2007088015
〔式中、R1〜R4はそれぞれ独立に置換基を表す。〕
9.前記金属塩の対アニオンは、ピリジン環、ビピリジン環、ターピリジン環を有するアニオンであることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
10.前記金属塩の対アニオンは、下記一般式(2−1)〜(2−5)のいずれかで表されることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2007088015
〔式中、R21はそれぞれ独立に置換基を表し、置換基同士は結合し環を形成してもよい。L1は二価の連結基もしくは直接結合を表し、A-は陰イオンを有する置換基を表す。nまたmは5以下の整数を表し、それぞれ一般式(2−1)において、m+nは1〜5の整数であり、mは少なくとも1である。また、一般式(2−2)〜(2−4)においては、m+nは1〜4の整数を表し、mは少なくとも1である。また、一般式(2−5)においては、m+nは1〜3の整数を表し、mは少なくとも1である。〕
11.前記金属塩の対アニオンは、大環状構造を有するアニオンであることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
12.前記大環状構造を有するアニオンは、下記一般式(3)で表されることを特徴とする前記11記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2007088015
〔式中、nは3以上の整数を表し、Xはそれぞれ独立に酸素原子(−O−)、イオウ原子(−S−)、−N(−L−A-)−を表すが、複数のXのうち少なくとも一つはN−L−A-である。ここで、Lは二価の連結基もしくは直接結合を表し、A-は陰イオンを有する置換基を表す。〕
13.前記金属塩は、アルカリ金属塩、またはアルカリ土類金属塩であることを特徴とする前記1〜12のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
14.前記金属塩は、リチウム塩であることを特徴とする前記1〜12のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
15.前記金属塩は、セシウム塩であることを特徴とする前記1〜12のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
16.前記金属塩は、ナトリウム塩であることを特徴とする前記1〜12のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
17.前記金属塩は、カルシウム塩であることを特徴とする前記1〜12のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
18.前記金属塩を構成する金属イオンの拡散を抑制する、拡散防止層を有することを特徴とする前記1〜17のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
19.発光が、リン光発光に基づく発光を含むことを特徴とする前記1〜18のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
20.発光が、少なくとも青色の成分を含んでいることを特徴とする前記1〜19のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
21.発光が、基板とは逆の方向から取り出されることを特徴とする前記1〜20のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
22.前記陽極、陰極および有機層は、蒸着法により製造されることを特徴とする前記1〜21のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
23.前記1〜22記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、金属塩を蒸着する際に、蒸着前にあらかじめ金属塩を予備加熱することを特徴とする有機レクトロルミネッセンス素子の製造方法。
本発明の金属塩を用いることで、駆動電圧低下が低下でき、パワー効率向上が図れると同時に、長期保存時における安定性が向上した安定な有機EL素子をうることが出来る。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明は、陽極、陰極、および前記陽極と陰極の間に少なくとも1層以上の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であり、前記有機層の1層に、金属塩を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。
金属塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が好ましく、特に、リチウム塩、ナトリウム塩、セシウム塩、またカルシウム塩が好ましい。
前記参考文献に挙げられるように、金属セシウム等のアルカリ金属、また、例えば、セシウムの塩であるフッ化セシウム、塩化セシウム、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等のアルカリ金属塩、またはアルカリ土類金属塩等が混合された有機層を、陽極、陰極、および前記陽極と陰極の間に少なくとも1層以上の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子中に設けることで、キャリアの電極からの有機層への注入の障壁を低下させ、有機EL素子において、駆動電圧の低下をもたらすことができる。
例えば、金属セシウム、またセシウム塩等が有機化合物に混合されている層が、電子輸送性有機化合物層と陰極の間に、陰極と隣接して挿入されると、これにより、陰極からの電子注入障壁を低下させることができ、これらを有する有機EL素子の駆動電圧が大きく低下する。
陰極表面における有機物への電子注入過程は、陰極表面での有機物の還元であるため、有機化合物の最低空軌道準位(LUMO)への電子注入であり、これが低いほど陰極から電子が注入されやすい。本発明の有機層に混入、ドーピングされる金属化合物は従って、有機化合物のこの最低空軌道準位(LUMO)を低下させる化合物であればよい。
これらのエネルギー準位はドープされる金属、金属化合物の種類によって左右され、又、安定な準位であるかどうかも用いる金属化合物の種類で決まってくるものと考えられる。即ち、例えば共蒸着等によって有機化合物中にドープされた金属、或いは金属塩の状態は詳細に知られていないが、その形態により、安定な準位を形成し、効果の持続性が決まるものと考えられる。
しかしながら、金属セシウムの導入は、発火性が高いため注意を要することや、前記のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩の導入は、確かに、駆動電圧の低下をもたらすが、このドーピング効果は、経時で或いは繰り返し使用において低下し、続かないこと、換言すれば、これにより得られる有機EL素子の性能劣化が大きいことが判った。
本発明においては、危険性の高い金属セシウムの使用を避け、危険性の少ない金属塩、好ましくは、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩のなかから、種々の化合物を探索し、特に、これら金属塩について、対アニオンを種々検討することで、前記のキャリア注入障壁の低下効果が大きく、かつ、経時でもこの効果が持続し、劣化が少ない金属塩化合物を見いだしたことに基づくものである。
本発明は、これまで知られている前記のキャリア注入障壁の低下効果がある金属塩、特にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のなかでも、その効果、又その効果の持続性、安定性において、リチウム塩、ナトリウム塩、セシウム塩、またカルシウム塩の場合に好ましい効果を発揮する。特に、セシウム塩は優れた効果を有する。
金属塩の場合、セシウム等のアルカリ金属自体とは異なり、空気中でも安定であるため、取り扱いが簡単であり、安全性が高い。
例えば、セシウム塩は、フッ化セシウムについても潮解性が高いが、本発明に係わる対アニオンを有する金属塩についても潮解性があるものが多い、従って、金属塩を蒸着する際には、水分を同時に蒸発させるため、蒸着前にあらかじめ真空槽内で予備加熱することで、金属塩を十分に乾燥することが好ましい。特に、水分量を30ppm以下とすることが好ましい。
乾燥には、真空或いは、減圧下、又常圧において、乾燥機、オーブン等を用いるいことができ、用いる塩により異なるが、40℃〜250℃の範囲で、1秒〜数時間、予備加熱して前記の含水量以下にすることが好ましい。
本発明に係わる前記アルカリ金属或いはアルカリ土類金属(特に好ましくは、リチウム、ナトリウム、セシウム、またカルシウム等)の対イオン(カウンターイオン)となるアニオンについて、以下述べる。
先ず、本発明に係わる前記アルカリ金属或いはアルカリ土類金属の対イオンとして好ましいイオンに、硫酸イオン(SO4 2-)がある。例えば、硫酸セシウム等がある。
その他、金属塩の対アニオンとして、SCN-、NCS-が好ましく、またフッ素を含有するカルボン酸の金属塩が好ましい。
フッ素を含有するカルボン酸塩とは、カルボン酸を含有する有機酸の置換基の少なくとも一つがフッ素に置き換わっている有機酸であり、例えば、フッ素置換された酢酸(例えばトリフルオロ酢酸など)、フッ素置換されたプロピオン酸、フッ素置換安息香酸(例えばテトラフルオロ安息香酸など)などが挙げられる。例えば、トリフルオロ酢酸セシウム、トリフルオロ酢酸リチウム、テトラフルオロ安息香酸カルシウム等。
また、アニオンとして、以下のような有機アニオンが本発明に係わる金属塩の対イオンとして好ましい。
本発明に係わる金属塩において好ましい対イオンは、前記一般式(1)により表される。
前記一般式(1)において、R1〜R4はそれぞれ独立に置換基を表す。
ここにおいてR1〜R4で表される置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、ヘテロアリール基(ピロール基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、チエニル基、カルバゾリル基等)、アルケニル基(ビニル基、プロペニル基、スチリル基等)、アルキニル基(エチニル基等)、非芳香族性複素環基(ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、等)、シリル基(トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等)等が挙げられる。それぞれの置換基はさらに置換基を有していても良い。
この中で好ましいものとしては、アリール基が挙げられる。
一般式(1)で表されるアニオンの代表例を以下に示すが、これらに限定されない。
Figure 2007088015
Figure 2007088015
これらのアニオンを対イオンとするセシウム塩、リチウム塩等は、例えばテトラフェニル硼素ナトリウムを用いて、これを塩交換をすることにより容易に得ることが出来る。
本発明に係わる金属塩に好ましい別の対アニオンとしては、ピリジン環、また、ビピリジン環、ターピリジン環等の含窒素複素環を構造中に有するアニオンが挙げられる。
また、含窒素複素環を有する、別の好ましい対アニオンとして前記一般式(2−1)〜(2−5)のいずれかで表されるアニオンが挙げられる。
前記一般式(2−1)〜(2−5)において、R21はそれぞれ独立に置換基を表し、置換基同士は結合し環を形成してもよい。L1は二価の連結基もしくは直接結合を表し、A-は陰イオンを有する置換基を表す。
21で表される置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、ヘテロアリール基(ピロール基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、チエニル基、カルバゾリル基等)、アルケニル基(ビニル基、プロペニル基、スチリル基等)、アルキニル基(エチニル基等)、アルキルオキシ基(メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、i−プロピルキオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等)、アリールアミノ基(アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、シアノ基、ニトロ基、非芳香族性複素環基(ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、等)、シリル基(トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等)等が挙げられ、それぞれの置換基はさらに置換基を有していてもよい。
1で表される2価の連結基としてはアルキレン、アルケニレン等の非芳香族系の2価の連結基、或いは、芳香族系の2価の連結基を表す。非芳香族系の2価の連結基、例えばアルキレンアルケニレン等の基のうち好ましくはアルキレン基であるが、これらは置換されていてもよく、前記置換基として挙げられた基が挙げられるが、好ましくはメチレン、エチレン等の無置換のアルキレン基である。又、これら非芳香族系の置換基、例えばアルキレン等の基は、骨格となる炭素原子が構成するメチレン或いは置換メチレン等の基が酸素原子、硫黄原子或いは窒素原子等のヘテロ原子で置換されたエーテル、チオエーテル、又イミノ構造を有するものであってもよい。
又、芳香族系の2価の置換基としては同様にフェニレン基、ビフェニレン基等のほか、このような芳香族基が、メチレン、エチレン等のアルキレン基、又前記骨格となるメチレン基等がヘテロ原子により置換されたエーテル、チオエーテル基等を含むアルキレン基、或いは酸素原子、硫黄原子、窒素原子等によりそれぞれエーテル結合、チオエーテル結合、イミノ基等を介してそれぞれ複数連結した基であってもよい。
また、前記一般式(2−1)〜(2−5)において、A-で表される陰イオンを有する置換基とは、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等であり、好ましくはカルボン酸基である。nまたmは5以下の整数を表し、それぞれ一般式(2−1)において、m+nは1〜5の整数であり、mは少なくとも1である。また、一般式(2−2)〜(2−4)においては、m+nは1〜4の整数を表し、mは少なくとも1である。また、一般式(2−5)においては、m+nは1〜3の整数を表し、mは少なくとも1である。
これらの含窒素芳香族複素環構造をその部分構造として有するアニオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
Figure 2007088015
Figure 2007088015
前記金属塩の更に別の好ましい対アニオンとしては、大環状構造をその構造中に有するアニオンがある。大環状構造を構造中に有するアニオンとしては、前記一般式(3)で表されるものが好ましい。
一般式(3)において、Xはそれぞれ独立に酸素原子(−O−)、イオウ原子(−S−)、−N(−L−A-)−を表すが、複数のXのうち少なくとも一つはN−L−A-である。ここで、Lは二価の連結基もしくは直接結合を表す。A-は陰イオンを有する置換基を表す。
これら大環状構造を有するアニオンは、更に、下記一般式(3−1)、(3−2)により表されるものがより好ましい。
Figure 2007088015
一般式(3−1)、(3−2)において、nは3以上の整数を表し、A-は陰イオンを有する置換基を表し、また、L2は二価の連結基もしくは直接結合を表す。
以上一般式(3)、(3−1)、(3−2)における二価の連結基、また、陰イオンを有する置換基は、前記一般紙(2)におけるものと同様である。
以下にこれら大環状構造を有するアニオンについて、その代表的具体例を示すが、本発明はこれにより限定されるものではない。
Figure 2007088015
以上により示される本発明に係わる金属塩は、例えば、電子輸送性化合物と混合し電子輸送層と陰極、或いは陰極バッファー層間に新たな混合層を形成したり、また、電荷輸送層、例えば、電子輸送層等に含有させ、電子輸送層を兼ねて形成できる。電子輸送層や、別の有機層にドーピングして混合層を形成する場合、有機層の形成時に、ドープ量に応じ蒸着速度を調整しながら、有機材料とともに共蒸着してやればよい。これらの金属塩のドープ量(ドーパント濃度)は、特に限定はされないが、0.1〜99質量%の範囲であることが好ましい。
0.1質量%未満では、ドーパントの濃度が低すぎ効果が小さく、また、濃度が高すぎても、電極近傍において、電荷を注入されるべき有機化合物の濃度が低くなりすぎてドーピング効果が却って下がってしまう。
また、本発明の金属塩を含有する有機層の膜厚は、少なくとも20nm以上であることが好ましい。
本発明の有機EL素子は、基板上に順に陽極/有機層/陰極を積層した構成の素子であり、金属塩を含有する有機層を電極と有機層の間に有する。例えば、陰極と有機層との間に、金属塩と電荷輸送性有機材料を含む混合層が形成される。勿論陰極、陽極が逆構成となったものでもよい。
代表的な具体的層構成としては、
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(v)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
等が挙げられ、ここで、本発明による金属塩を含有する有機層は、例えば、陰極又は陰極バッファー層(電子注入層)と電子輸送層等、有機層との間に設けられ、また金属塩含有層が電子輸送性層や電子注入層の機能を兼ねてもよい。
以下、基板および各層について、詳述する。
《金属塩を含有する有機層について》
本発明において、金属塩を含有する有機層(以下混合層ともいう)に含有される金属塩としては、アルカリ金属或いはアルカリ土類金属の前記アニオンを対イオンとする塩である。
アルカリ金属或いはアルカリ土類金属としては、前記の通りリチウム、セシウム、ナトリウム、カルシウム等が好ましく、これらの金属と、前記対イオンからなる塩が好ましい。
本発明において、これら金属塩は、電子注入の際にエネルギー障壁を低下させる一方、陰極近傍での電子授受を担う有機材料濃度を維持し電子注入効率を上げる観点から、前記の通り、混合層における金属塩濃度として、前記の通り0.1〜99.0質量%であることが好ましく、1.0〜80.0質量%であることが更に好ましい。
特にセシウム塩の場合、電子輸送性有機材料との質量比は、0.1:99.9〜99:1が好ましく、1:99〜80:20がより好ましい。
また、これら混合層の厚みは、特に限定されないが、均一な膜の形成や駆動電圧を下げる上で、少なくとも20nm以上であることが好ましく、20nm〜80nmが特に好ましい。
混合層に含有させる電子輸送性有機材料は、陰極から注入される電子を受け取り、電子を輸送する機能を有しているものであればよい。混合層とは別にさらに電子輸送性層や電子注入性層を設けてもよい。
電子輸送性有機材料として金属ドーピング層に使用できる有機化合物としては、公知のものを用いることができ、特に限定はないが、p−テルフェニルやクアテルフェニルなどの多環化合物およびそれらの誘導体、ナフタレン、テトラセン、ピレン、コロネン、クリセン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ナフタセン、フェナントレンなどの縮合多環炭化水素化合物及びそれらの誘導体、フェナントロリン、バソフェナントロリン、フェナントリジン、アクリジン、キノリン、キノキサリン、フェナジンなどの縮合複素環化合物およびそれらの誘導体や、フルオロセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、オキシン、アミノキノリン、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、キナクリドン、ルブレン等およびそれらの誘導体、また、特開昭63−295695号公報、特開平8−22557号公報、特開平8−81472号公報、特開平5−9470号公報、特開平5−17764号公報に開示されている金属キレート錯体化合物、特に金属キレート化オキサノイド化合物では、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム、ビス[ベンゾ(f)−8−キノリノラト]亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、トリス(8−キノリノラト)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノラト)カルシウムなどの8−キノリノラトあるいはその誘導体を配位子として少なくとも一つ有する金属錯体が好適に使用される。
その他、特開平5−202011号公報、特開平7−179394号公報、特開平7−278124号公報、特開平7−228579号公報に開示されているオキサジアゾール類、特開平7−157473号公報に開示されているトリアジン類、特開平6−203963号公報に開示されているスチルベン誘導体およびジスチリルアリーレン誘導体、特開平6−132080号公報や特開平6−88072号公報に開示されているスチリル誘導体、特開平6−100857号公報や特開平6−207170号公報に開示されているジオレフィン誘導体も好ましい。
さらに、ベンゾオキサゾール系、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系などの化合物も使用でき、例えば、特開昭59−194393号公報に開示されているものが挙げられる。
その他、例えば欧州特許第0373582号明細書に開示されているジスチリルベンゼン系化合物、また、特開平2−252793号公報に開示されているジスチリルピラジン誘導体も金属ドーピング層として用いることができる。
その他、欧州特許第388768号明細書や特開平3−231970号公報に開示されている1,4−フェニレンジメチリディン、4,4′−(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル、等のジメチリディン、ビフェニル誘導体を発光層、電子輸送層、金属ドーピング層の材料として用いることもできる。更に、特開平6−49079 号公報、特開平6−293778号公報に開示されているシラナミン誘導体、特開平6−279322号公報、特開平6−279323号公報に開示されている多官能スチリル化合物、特開平6−206865号公報に開示されているアントラセン化合物、特開平6−145146号公報に開示されているオキシネイト誘導体、特開平4−96990 号公報に開示されているテトラフェニルブタジエン化合物、特開平3−296595号公報に開示されている有機三官能化合物、さらには、特開平2−191694号公報に開示されているクマリン誘導体、特開平2−196885号公報に開示されているペリレン誘導体、特開平2−255789号に開示されているナフタレン誘導体、特開平2−289676号及び特開平2−88689 号公報に開示されているフタロペリノン誘導体、特開平2−250292号公報に開示されているスチリルアミン誘導体などが挙げられる。
その他、特開平6−107648号公報や特開平6−92947号公報に開示されているオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、メタロフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等、従来有機EL素子の作製に使用されている公知のものを適宜用いることができる。
また、本発明に係わる金属塩化合物を含有する有機層には、本発明に係わる金属塩のほか、更にセシウム等のアルカリ金属がドーピングされていてもよく、単独で金属がドープされる場合よりも、安定したドーピング効果を得ることができる。
本発明の有機EL素子のその他の構成層について更に説明する。
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1000nm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
《陰極》
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。尚、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
次に、本発明の有機EL素子の構成層として用いられる、注入層、阻止層、電子輸送層等について説明する。
《注入層:電子注入層、正孔注入層》
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記のごとく陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び、陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
《阻止層:正孔阻止層、電子阻止層》
有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層であり、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
本発明の有機EL素子の正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられている。
本発明では、正孔阻止層の正孔阻止材料として前述した本発明に係る化合物を含有させることが好ましい。これにより、より一層発光効率の高い有機EL素子とすることができる。更に、より一層長寿命化させることができる。
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層であり、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
《発光層》
発光層は、蛍光発光性化合物および/または燐光発光性化合物を含有し、陰極あるいは陽極層側から発光が取り出される。各層に用いる化合物の具体例については、例えば「月刊ディスプレイ」1998年10月号別冊の「有機ELディスプレイ」(テクノタイムズ社)等に記載されている。
本発明に係る発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
発光層には、公知のものを用いることができ、特に限定はないが、p−テルフェニルやクアテルフェニルなどの多環化合物およびそれらの誘導体、ナフタレン、テトラセン、ピレン、コロネン、クリセン、アントラセン、ジフェニルアントラセン、ナフタセン、フェナントレンなどの縮合多環炭化水素化合物及びそれらの誘導体、フェナントロリン、バソフェナントロリン、フェナントリジン、アクリジン、キノリン、キノキサリン、フェナジンなどの縮合複素環化合物およびそれらの誘導体や。フルオロセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、オキシン、アミノキノリン、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、キナクリドン、ルブレン等およびそれらの誘導体、また、特開昭63−295695号公報、特開平8−22557号公報、特開平8−81472号公報、特開平5−9470号公報、特開平5−17764号公報に開示されている金属キレート錯体化合物、特に金属キレート化オキサノイド化合物では、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム、ビス[ベンゾ(f)−8−キノリノラト]亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、トリス(8−キノリノラト)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノラト)カルシウムなどの8−キノリノラトあるいはその誘導体を配位子として少なくとも一つ有する金属錯体等、その他、特開平5−202011号公報、特開平7−179394号公報、特開平7−278124号公報、特開平7−228579号公報に開示されているオキサジアゾール類、特開平7−157473号公報に開示されているトリアジン類、特開平6−203963号公報に開示されているスチルベン誘導体およびジスチリルアリーレン誘導体、特開平6−132080号公報や特開平6−88072号公報に開示されているスチリル誘導体、特開平6−100857号公報や特開平6−207170号公報に開示されているジオレフィン誘導体も、さらに、ベンゾオキサゾール系、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系などの化合物も使用でき、例えば、特開昭59−194393号公報に開示されているものが挙げられる。
その他、例えば欧州特許第0373582号明細書に開示されているジスチリルベンゼン系化合物、また、特開平2−252793号公報に開示されているジスチリルピラジン誘導体も金属ドーピング層として用いることができる。また、欧州特許第388768号明細書や特開平3−231970号公報に開示されている1,4−フェニレンジメチリディン、4,4′−(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル、等のジメチリディン、ビフェニル誘導体、更に、特開平6−49079号公報、特開平6−293778号公報に開示されているシラナミン誘導体、特開平6−279322号公報、特開平6−279323号公報に開示されている多官能スチリル化合物、特開平6−206865号公報に開示されているアントラセン化合物、特開平6−145146号公報に開示されているオキシネイト誘導体、特開平4−96990号公報に開示されているテトラフェニルブタジエン化合物、特開平3−296595号公報に開示されている有機三官能化合物、さらには、特開平2−191694号公報に開示されているクマリン誘導体、特開平2−196885号公報に開示されているペリレン誘導体、特開平2−255789号に開示されているナフタレン誘導体、特開平2−289676号及び特開平2−88689 号公報に開示されているフタロペリノン誘導体、特開平2−250292号公報に開示されているスチリルアミン誘導体などが挙げられる。その他、特開平6−107648号公報や特開平6−92947号公報に開示されているオキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、メタロフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等、従来有機EL素子の作製に使用されている公知のものを適宜用いることができる。
(ホスト化合物)
しかしながら、本発明の有機EL素子の発光層には、以下に示す、ホスト化合物とリン光性化合物(リン光発光性化合物ともいう)が含有されることが好ましく、リン光性化合物を用いることにより、一層発光効率を高くすることができる。
本発明においてホスト化合物とは、発光層に含有される化合物のうちで室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.01未満の化合物と定義される。
本発明では、更に、公知のホスト化合物を複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種もちいることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、リン光性化合物を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。リン光性化合物の種類、ドープ量を調整することで白色発光が可能であり、照明、バックライトへの応用もできる。
ホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。本発明に用いられるホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が挙げられる。
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等。
また、発光層は、ホスト化合物として更に蛍光極大波長を有するホスト化合物を含有していてもよい。この場合、他のホスト化合物とリン光性化合物から蛍光性化合物へのエネルギー移動で、有機EL素子としての電界発光は蛍光極大波長を有する他のホスト化合物からの発光も得られる。蛍光極大波長を有するホスト化合物として好ましいのは、溶液状態で蛍光量子収率が高いものである。ここで、蛍光量子収率は10%以上、特に30%以上が好ましい。具体的な蛍光極大波長を有するホスト化合物としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素等が挙げられる。蛍光量子収率は、前記第4版実験化学講座7の分光IIの362頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定することができる。
(リン光性化合物(リン光発光性化合物))
発光層に使用される材料(以下、発光材料という)としては、上記のホスト化合物を含有すると同時に、リン光性化合物を含有することが好ましい。これにより、より発光効率の高い有機EL素子とすることができる。
本発明に係るリン光性化合物は、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物である。リン光量子収率は好ましくは0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられるリン光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記リン光量子収率が達成されればよい。
リン光性化合物の発光は、原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光性化合物に移動させることでリン光性化合物からの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはリン光性化合物がキャリアトラップとなり、リン光性化合物上でキャリアの再結合が起こりリン光性化合物からの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、リン光性化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
リン光性化合物は、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
本発明で用いられるリン光性化合物としては、好ましくは元素周期表で第8族〜第10族の少なくとも一つの金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
以下に、リン光性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
Figure 2007088015
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本発明においては、リン光性化合物のリン光発光極大波長としては特に制限されるものではなく、原理的には、中心金属、配位子、配位子の置換基等を選択することで得られる発光波長を変化させることができるが、リン光性化合物のリン光発光波長が380nm〜480nmにリン光発光の極大波長を有することが好ましい。このような青色リン光発光の有機EL素子や、白色リン光発光の有機EL素子で、より一層発光効率を高めることができる。
本発明の有機EL素子や本発明に係る化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(ミノルタ製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
発光層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。発光層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μm、好ましくは5nm〜200nmの範囲で選ばれる。この発光層は、これらのリン光性化合物やホスト化合物が1種または2種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
本発明に係る正孔輸送材料として、有機EL素子の外部取り出し量子効率の向上、発光寿命の長寿命化等の観点から、上記の一般式(1)〜(5)のいずれか一つの化合物が好ましく用いられる。
更には、従来知られている公知の正孔輸送材料、正孔の電荷注入輸送材料として慣用されているもの材料、正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知の材料等を併用してもよく、例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。さらに、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を併用することもできる。
芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、p型−Si,p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
また、本発明においては正孔輸送層の正孔輸送材料は415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、正孔輸送材料は、正孔輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
さらに、本発明においては、正孔輸送材料のリン光0−0バンドが480nm以下であることが好ましく、これにより、より一層高い発光輝度および優れた量子効率、さらにはより一層高い耐久性を有し、とくに発光初期における輝度低下の小さい有機エレクトロルミネッセンス素子、およびそれを具備してなる表示装置もしくは照明装置を提供することである。
本発明におけるリン光スペクトルの0−0バンドの測定方法について説明する。
まず、リン光スペクトルの測定方法について説明する。
測定する化合物を、よく脱酸素されたエタノール/メタノール=4/1(vol/vol)の混合溶媒に溶かし、リン光測定用セルに入れた後液体窒素温度77°Kで励起光を照射し、励起光照射後100msでの発光スペクトルを測定する。リン光は蛍光に比べ発光寿命が長いため、100ms後に残存する光はほぼリン光であると考えることができる。
なお、リン光寿命が100msより短い化合物に対しては遅延時間を短くして測定しても構わないが、蛍光と区別できなくなるほど遅延時間を短くしてしまうとリン光と蛍光が分離できないので問題となるため、その分離が可能な遅延時間を選択する必要がある。
また、上記溶剤系で溶解できない化合物については、その化合物を溶解しうる任意の溶剤を使用してもよい(実質上、上記測定法ではリン光波長の溶媒効果はごくわずかなので問題ない)。
次に0−0バンドの求め方であるが、本発明においては、上記測定法で得られたリン光スペクトルチャートのなかで最も短波長側に現れる発光極大波長をもって0−0バンドと定義する。
リン光スペクトルは通常強度が弱いことが多いため、拡大するとノイズとピークの判別が難しくなるケースがある。このような場合には定常光スペクトルを拡大し、励起光照射後100ms後の発光スペクトル(便宜上これをリン光スペクトルと言う)と重ねあわせリン光スペクトルに由来する定常光スペクトル部分からピーク波長を読みとることで決定することができる。また、リン光スペクトルをスムージング処理することでノイズとピークを分離しピーク波長を読みとることもできる。なお、スムージング処理としては、Savitzky&Golayの平滑化法等を適用することができる。
正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法、転写法、印刷法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5〜5000nm程度である。この正孔輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよい。
《電子輸送層》
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
電子輸送層は、上記電子輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5nm〜200nmである。電子輸送層は、上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
《拡散防止層》
本発明に係る拡散防止層とは、広くはEL素子の発光効率の低下または発光寿命の低減を引き起こす原因となるEL素子を構成する、各構成中の有機材料(例えば、電子輸送材料、電子供与性化合物等)・無機材料(例えば、金属、該金属の塩等)、または前記有機・無機材料中の混入物が(隣接層から)発光層内へ拡散すること、または発光層内での拡散を防止する役割を有するものをさす。この様な役割を有していれば、陽極バッファー層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、陰極バッファー層等、他の層と兼用しても構わない。
本発明の効果を最大限得るためには、電荷輸送材料、例えば、電子輸送材料含有層に含まれる前記金属塩中のイオンの拡散を防止または抑制することが好ましい。
また、該拡散防止層(他層と兼ねている場合も含む)は、発光層と陰極あるいは陽極との間に位置することが好ましく、さらには、陰極または陰極バッファー層と発光層の間にあり、陰極または陰極バッファー層に隣接する位置に有することがより好ましい。
本発明に係る拡散防止層の形成に用いられる材料は、従来公知の金属イオントラップ等に用いられる化合物(例えば、クラウンエーテル化合物)や、金属や金属イオンを包接できる化合物、または金属を配位することのできる配位性の有機化合物を用いることができる。ここで、前記包接可能な化合物は、例えば、「超分子科学:中嶋直敏編著;化学同人出版;2004年3月発刊」及び、同書に参考文献として挙げられている文献等に記載の化合物を用いることが出来る。
《基体》
本発明の有機EL素子は、基体上に形成されているのが好ましい。本発明の有機EL素子に用いることのできる基体(以下、基板、基材、支持体等ともいう)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また、透明のものであれば特に制限はないが、好ましく用いられる基板としては例えばガラス、石英、光透過性樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい基体は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光の室温における外部取り出し効率は1%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用しても、有機EL素子からの発光色を蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。色変換フィルターを用いる場合においては、有機EL素子の発光のλmaxは480nm以下が好ましい。
《有機EL素子の作製方法》
本発明の有機EL素子の作製方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
まず、適当な基体上に、所望の電極物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10nm〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を作製する。次に、この上に有機EL素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、本発明に係わる混合層と、有機化合物薄膜を形成させる。
この有機化合物薄膜の薄膜化の方法としては、前記の如く蒸着法、ウェットプロセス(例えば、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法が好ましい。特に真空蒸着法が好ましい。更に層ごとに異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50℃〜450℃、真空度10-6Pa〜10-2Pa、蒸着速度0.01nm/秒〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚0.1nm〜5μm、好ましくは5nm〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施してもかまわない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
多色の本発明の表示装置は、発光層形成時のみシャドーマスクを設け、他層は共通であるのでシャドーマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で膜を形成できる。
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、印刷法である。蒸着法を用いる場合においてはシャドーマスクを用いたパターニングが好ましい。
また、作製順序を逆にして、陰極、混合層、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。このようにして得られた多色の表示装置に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
従来、アクティブタイプの有機ELは、TFT駆動回路を有する基板側から光を取り出すボトムエミッション構造のため、発光面積の割合が小さくなり発光効率を落とす原因の一つとなっているため、回路基板の反対側から光を取り出すトップエミッション構造が好ましい。
この場合には、基板上に所定のパターンに従って、例えばAlを、1μm以下好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように蒸着により設けて陰極を形成した後、前記混合層、電子輸送層から発光層等、有機EL各層を前記同様に形成し、陽極を例えばITOターゲットを用いDCマグネトロンスパッタリング等により50〜200nmの範囲で形成する。
またトップエミッションにより駆動回路に安価なアモルファスシリコンを利用でき、有機ELの低コスト化に寄与できる可能性がある。
本発明の表示装置は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。表示デバイス、ディスプレイにおいて、青、赤、緑発光の3種の有機EL素子を用いることにより、フルカラーの表示が可能となる。
表示デバイス、ディスプレイとしてはテレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリックス(パッシブマトリックス)方式でもアクティブマトリックス方式でもどちらでもよい。
照明装置としては、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサの光源等が挙げられるがこれらに限定されない。また、本発明の有機EL素子に共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよい。
このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザ発振をさせることにより、上記用途に使用してもよい。
本発明に用いられる有機EL材料は、照明装置として、実質白色の発光を生じる有機EL素子に適用できる。複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を得る。複数の発光色の組み合わせとしては、青色、緑色、青色の3原色の3つの発光極大波長を含有させたものでも良いし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有したものでも良い。
また、複数の発光色を得るための発光材料の組み合わせは、複数のリン光または蛍光で発光する材料を、複数組み合わせたもの、蛍光またはリン光で発光する発光材料と、発光材料からの光を励起光として発光する色素材料との組み合わせたもののいずれでも良いが、本発明に係わる白色有機エレクトロルミネッセンス素子においては、発光ドーパントを複数組み合わせ混合するだけでよい。発光層もしくは正孔輸送層或いは電子輸送層等の形成時のみマスクを設け、マスクにより塗り分けるなど単純に配置するだけでよく、他層は共通であるのでマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で例えば電極膜を形成でき、生産性も向上する。この方法によれば、複数色の発光素子をアレー状に並列配置した白色有機EL装置と異なり、素子自体が発光白色である。
発光層に用いる発光材料としては特に制限はなく、例えば、液晶表示素子におけるバックライトであれば、CF(カラーフィルター)特性に対応した波長範囲に適合するように、オルトメタル化錯体(Ir錯体、Pt錯体など)、また公知の発光材料の中から任意のものを選択して組み合わせて白色化すれば良い。
このように、本発明に係る白色発光有機EL素子は、前記表示デバイス、ディスプレイに加えて、各種発光光源、照明装置として、家庭用照明、車内照明、また露光光源のような一種のランプとして、また液晶表示装置のバックライト等、表示装置にも有用に用いられる。
その他、時計等のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体等の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等、更には表示装置を必要とする一般の家庭用電気器具等広い範囲の用途が挙げられる。
《表示装置》
本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような1種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。または、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を3種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。または、一色の発光色、例えば、白色発光をカラーフィルターを用いてBGRにし、フルカラー化することも可能である。更に、有機ELの発光色を色変換フィルターを用いて他色に変換しフルカラー化することも可能であるが、その場合、有機EL発光のλmaxは480nm以下であることが好ましい。
以上のような用途に用において、有機EL素子は、青色の発光のエネルギー効率が悪いため、本発明に係わる金属塩を有機層に含有させ駆動電位を低下する効果は、従って、少なくとも青色の成分を含んでいる有機EL素子において特に好ましいものである。
本発明の有機EL素子から構成される表示装置の一例を図面に基づいて説明する。
図1は、有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
ディスプレイ1は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。
制御部Bは、表示部Aと電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線毎の画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
図2は、表示部Aの模式図である。
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部と、複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。図2においては、画素3の発光した光が、白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
配線部の走査線5及び複数のデータ線6は、各々導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示せず)。
画素3は、走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を、適宜、同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
次に、画素の発光プロセスを説明する。
図3は、画素の回路を示す模式図である。
画素は、有機EL素子10、スイッチングトランジスタ11、駆動トランジスタ12、コンデンサ13等を備えている。複数の画素に有機EL素子10として、赤色、緑色、青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
図3において、制御部Bからデータ線6を介してスイッチングトランジスタ11のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線5を介してスイッチングトランジスタ11のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサ13と駆動トランジスタ12のゲートに伝達される。
画像データ信号の伝達により、コンデンサ13が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスタ12の駆動がオンする。駆動トランジスタ12は、ドレインが電源ライン7に接続され、ソースが有機EL素子10の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン7から有機EL素子10に電流が供給される。
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフしてもコンデンサ13は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ12の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子10の発光が継続する。順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ12が駆動して有機EL素子10が発光する。
すなわち、有機EL素子10の発光は、複数の画素それぞれの有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ11と駆動トランジスタ12を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子10の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
ここで、有機EL素子10の発光は、複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。
また、コンデンサ13の電位の保持は、次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
図4は、パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図4において、複数の走査線5と複数の画像データ線6が画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子がなく、製造コストの低減が計れる。
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例1
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を100nm製膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行なった。この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。ただし、蒸着装置内の蒸着用ボートそれぞれにCuPc(銅フタロシアニン)、α−NPD、CBP、Ir−1、B−Alq、BPhen、化合物1−1Cs塩を各々素子作製に最適の量、充填した。蒸着用ボートはモリブデン性抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
次いで、真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、CuPc(銅フタロシアニン)の入った前記蒸着用ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板に蒸着し20nmの正孔注入層を設けた。
次にα−NPDの入った前記蒸着用ボートに通電し、α−NPDを0.1nm/秒で蒸着し正孔輸送層を20nm設けた。その上にCBPとIr−1の入った前記加熱ボートそれぞれに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.2nm/秒、0.012nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着して発光層を30nm設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。更に、BAlqを蒸着速度0.1nm/秒で前記発光層の上に蒸着して膜厚10nmの正孔阻止の役割も兼ねた電子輸送層を設けた。その上に、更にBPhenと化合物1−1Cs塩を0.1nm/秒、0.025nm/秒で蒸着し電子輸送層を膜厚50nm設けた。
引き続きアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子1−1を作製した。
有機EL素子1−1の作製において、電荷輸送材料BPhenおよびこれと共蒸着させた化合物1−1Cs塩を表1に示す材料に変えた以外は有機EL素子1−1と同じ方法で有機EL素子1−2〜1−21を作製した。尚、表中混合比は蒸着速度比で示した。
上記で使用した化合物の構造を以下に示す。
Figure 2007088015
なお、セシウム塩は潮解性があるため、各金属塩について、真空槽内に蒸着源をセットしてから、真空にし、蒸着前に一度蒸着源を加熱し、水分を除去するという操作を行った。因みに、この手順を行わず、水分がを除去し切れていない場合、有機ELの性能は劣化した。
有機EL素子1−1〜1−21の寿命、駆動電圧の評価を下記に示す方法で行った。
〈駆動電圧〉
2.5mA/cm2の一定電流で駆動したときの電圧を測定し、
電圧評価値
=有機EL素子1−1〜1−20の駆動電圧/有機EL素子1−4の駆動電圧×100
で表した。値が小さい方が比較に対して駆動電圧が低いことを示している。
〈保存性〉
保存性は、85℃、100時間で保存したときの前後で、2.5mA/cm2定電流駆動における輝度がどれだけ変化したかをみて評価した。
保存性=100時間保存後の輝度/100時間保存前の輝度×100
有機EL素子構成および評価結果を以下に示す。
Figure 2007088015
特開10−270172、また特開2004−193011号に記載のLiFを、BPhenとともに共蒸着した電子輸送層をもつ有機EL素子1−21(比較例)に比べ、駆動電圧については、本発明に係わる有機EL素子1−1〜1−20は遜色のないことがわかるとともに、85℃、100時間で保存した後にも、定電流駆動したとき、輝度の低下が比較例に比べ少ないことが判る。
実施例2
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウムチンオキシド)を100nm製膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行なった。この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
次いで、真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、m−MTDATAとF4−TCNQをそれぞれ蒸着速度0.2nm/秒、0.002nm/秒で透明支持基板上に100nm共蒸着し正孔注入層を設けた。次にm−MTDATXAを0.1nm/秒で蒸着し正孔輸送層を設けた。その上にCDBPとIr−14の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.1nm/秒、0.003nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着して発光層を30nm設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。更に、HB−1を蒸着速度0.1nm/秒で前記発光層の上に蒸着して膜厚10nmの正孔阻止の役割も兼ねた電子輸送層を設けた。その上に、更に、拡散防止層として、N−1を0.1nm/秒の蒸着速度で10nm設けた。
拡散防止層の上に、電荷輸送材料N−1と化合物1−1Cs塩をそれぞれ0.1nm/秒、0.025nm/秒の蒸着速度で蒸着し、電子輸送層(膜厚50nm)を設けた。
引き続きアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子2−1を作製した。
有機EL素子2−1の作製において、拡散防止層のない素子を有機EL素子2−2とした。
Figure 2007088015
表2に有機EL素子2−1および2−2の保存性を評価した結果を示す。
保存性は85℃、100時間で作製した有機EL素子を保存したときの前後で、2.5mA/cm2定電流駆動における輝度がどれだけ変化したがで、評価した。
保存性=100時間保存後の輝度/100時間保存前の輝度×100
Figure 2007088015
拡散防止層を設けた有機EL素子2−1は、実施例1に比べ、またこれのない有機EL素子2−2に比べ保存性が更に向上している。
これは、電子輸送層から発光層へのセシウムイオンの拡散を防いでいるためと推測される。
有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。 表示部Aの模式図である。 画素の回路を示す模式図である。 パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。
符号の説明
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
10 有機EL素子
11 スイッチングトランジスタ
12 駆動トランジスタ
13 コンデンサ
A 表示部
B 制御部

Claims (23)

  1. 基板上に、陽極、陰極および少なくとも1層以上の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記有機層の1層は、金属塩を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記金属塩を含有する有機層は、陰極と隣接していることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記金属塩を含有する有機層は、更に金属原子が含有されていることを特徴とする請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記金属塩を含有する有機層の膜厚は、少なくとも20nm以上であることを特徴とする請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記金属塩は、硫酸塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記金属塩は、フッ素を含有するカルボン酸の塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 前記金属塩の対アニオンは、SCN-、NCS-であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 前記金属塩の対アニオンは、下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2007088015
    〔式中、R1〜R4はそれぞれ独立に置換基を表す。〕
  9. 前記金属塩の対アニオンは、ピリジン環、ビピリジン環、ターピリジン環を有するアニオンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 前記金属塩の対アニオンは、下記一般式(2−1)〜(2−5)のいずれかで表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2007088015
    〔式中、R21はそれぞれ独立に置換基を表し、置換基同士は結合し環を形成してもよい。L1は二価の連結基もしくは直接結合を表し、A-は陰イオンを有する置換基を表す。nまたmは5以下の整数を表し、それぞれ一般式(2−1)において、m+nは1〜5の整数であり、mは少なくとも1である。また、一般式(2−2)〜(2−4)においては、m+nは1〜4の整数を表し、mは少なくとも1である。また、一般式(2−5)においては、m+nは1〜3の整数を表し、mは少なくとも1である。〕
  11. 前記金属塩の対アニオンは、大環状構造を有するアニオンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  12. 前記大環状構造を有するアニオンは、下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項11記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2007088015
    〔式中、nは3以上の整数を表し、Xはそれぞれ独立に酸素原子(−O−)、イオウ原子(−S−)、−N(−L−A-)−を表すが、複数のXのうち少なくとも一つはN−L−A-である。ここで、Lは二価の連結基もしくは直接結合を表し、A-は陰イオンを有する置換基を表す。〕
  13. 前記金属塩は、アルカリ金属塩、またはアルカリ土類金属塩であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  14. 前記金属塩は、リチウム塩であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  15. 前記金属塩は、セシウム塩であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  16. 前記金属塩は、ナトリウム塩であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  17. 前記金属塩は、カルシウム塩であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  18. 前記金属塩を構成する金属イオンの拡散を抑制する、拡散防止層を有することを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  19. 発光が、リン光発光に基づく発光を含むことを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  20. 発光が、少なくとも青色の成分を含んでいることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  21. 発光が、基板とは逆の方向から取り出されることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  22. 前記陽極、陰極および有機層は、蒸着法により製造されることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  23. 請求項1〜22記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、金属塩を蒸着する際に、蒸着前にあらかじめ金属塩を予備加熱することを特徴とする有機レクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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