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JP2006274733A - トリプルチューブ構造物及びトリプルチューブ構造物の制振システム - Google Patents

トリプルチューブ構造物及びトリプルチューブ構造物の制振システム Download PDF

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JP2006274733A JP2005098170A JP2005098170A JP2006274733A JP 2006274733 A JP2006274733 A JP 2006274733A JP 2005098170 A JP2005098170 A JP 2005098170A JP 2005098170 A JP2005098170 A JP 2005098170A JP 2006274733 A JP2006274733 A JP 2006274733A
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Abstract

【課題】 各住戸の面積を広くすることができるとともに、眺望を広くすることができ、さらに、建物の中心部からも採光が得られるトリプルチューブ構造物を提供する。
【解決手段】 柱と梁とを組み合わせてなるラーメン構造のチューブ架構を3層に設けたトリプルチューブ構造物であって、最も内側のチューブ架構2と中間のチューブ架構5との間に廊下空間21を設け、中間のチューブ架構5と最も外側のチューブ架構8との間に居住空間22を設ける。居住空間22内に設けられる各住戸内に中間のチューブ架構5の柱及び梁が配置されることがないので、各住戸の面積を広くすることができる。中間のチューブ架構5と内側のチューブ架構2との間に廊下空間21を設けているので、外側のチューブ架構8をワイドスパンにしても、超高層建物としての強度及び耐震性を十分に確保することができる。さらに、内側のチューブ架構2の内側に吹抜け空間を設けることができるので、建物の中心部からも採光が得られる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、トリプルチューブ構造物及びトリプルチューブ構造物の制振システムに関し、特に、20〜70階程度の集合住宅、オフィスビルディング等の超高層建物(ボイド型、センターコア型、板状型等)に有効なトリプルチューブ構造物及びトリプルチューブ構造物の制振システムに関する。
近年、集合住宅、オフィスビルディング等の超高層建物用の構造物として、中央部に吹抜け空間を設け、その周囲に吹抜け空間を囲むように居住空間を設けたボイド型の構造物、中央部にエレベータを設け、その周囲にエレベータを囲むように居住空間を設けたセンターコア型の構造物、長方形状の建物の長辺に沿って居住空間を設けた板状型の構造物等のS造、RC造、SRC造又はCFT造の構造物が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
このような構成の構造物にあっては、柱と梁とを組み合わせて構成したラーメン構造のチューブ架構を二層又は三層に設けたチューブ構造を採用し、このチューブ構造により超高層建物(20〜70階程度)としての強度及び耐震性を確保している。
特開2004−211288号公報 特開2004−122495号公報 特開平11−264183号公報
しかし、上記のような構成の構造物にあっては、建物の強度を確保するために外側のチューブ架構の隣接する柱間の間隔を4〜5m程度と狭く設定しているため、眺望が狭くなってしまう。また、内側のチューブ架構の梁や柱が居住空間の各住戸の居室部分に配置されてしまうため、各住戸の面積が狭くなってしまう。さらに、建物の中心部から採光を得ることができない。
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、眺望を広くすることができるとともに、居住空間内に設けられる各住戸の面積を広くとることができ、さらに、建物の中心部からも採光が得られるトリプルチューブ構造物及びトリプルチューブ構造物の制振システムを提供することを目的とする。
本発明は、上記のような課題を解決するために、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、柱と梁とを組み合わせてなるラーメン構造のチューブ架構を3層に設けたトリプルチューブ構造物であって、最も内側のチューブ架構と中間のチューブ架構との間に廊下空間を設け、中間のチューブ架構と最も外側のチューブ架構との間に居住空間を設けたことを特徴とする。
本発明によるトリプルチューブ構造物によれば、集合住宅、オフィスビルディング等の超高層建物に適用した場合に、居住空間内に中間のチューブ架構の柱及び梁が配置されることがないので、居住空間内に設けられる各住戸の面積を広くすることができる。また、中間のチューブ架構と内側のチューブ架構との間に廊下空間を設けているので、外側チューブ架構の柱間の間隔を拡げることが可能になり、広い眺望が得られることになる。さらに、内側のチューブ架構は柱と梁とからなるラーメン構造であるので、建物の中心部からも採光を得ることができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のトリプルチューブ構造物であって、前記中間のチューブ架構の柱を支持する杭と前記内側のチューブ架構の柱を支持する杭とを、基礎梁及び厚盤の基礎スラブを介して各柱の直下から偏心させたことを特徴とする。
本発明によるトリプルチューブ構造物によれば、中間のチューブ架構と内側のチューブ架構との間に廊下空間を設けることによって両チューブ架構間の間隔が狭まっても、両チューブ架構の柱を支持する杭を基礎梁を介して柱の直下から偏心させているので、両チューブ架構の柱からの荷重を十分に支持することができる。また、杭のない直接基礎にも適用することができる。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のトリプルチューブ構造物であって、前記中間のチューブ架構と前記内側のチューブ架構との間の廊下空間には二重構造の床スラブが設けられ、該二重構造の床スラブには凹部が形成され、該凹部に設備ダクトが設けられていることを特徴とする。
本発明によるトリプルチューブ構造物によれば、中間のチューブ架構と内側のチューブ架構との間の廊下空間に設けられる床スラブは二重構造によって曲げ剛性が高められる。また、二重構造の床スラブの凹部に設けられる設備ダクト内に、各住戸への配管、配線等を敷設することができる。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のトリプルチューブ構造物であって、前記床スラブは、前記中間のチューブ架構から前記内側のチューブ架構の方向に延出する片持スラブと、該片持スラブの上部に打設される増打部とからなり、該増打部と前記中間のチューブ架構との間に前記凹部が形成されていることを特徴とする。
本発明によるトリプルチューブ構造物によれば、内側チューブ架構と中間チューブ架構との間に形成される床スラブは、中間チューブ架構側から延出する片持スラブとその上部に打設される増打部とからなる二重構造によって曲げ剛性が高められる。また、増打部と中間のチューブ架構との間の凹部に設けられる設備ダクト内に、各住戸への配管、配線等を敷設することができる。
請求項5に係る発明は、請求項3に記載のトリプルチューブ構造物であって、前記床スラブは、前記中間のチューブ架構から前記内側のチューブ架構の方向に延出する片持スラブと、前記内側のチューブ架構から前記中間のチューブ架構の方向に延出して、前記片持スラブの上部に載置される片持スラブとからなり、前記内側のチューブ架構側の片持スラブと前記中間のチューブ架構との間に前記凹部が形成されていることを特徴とする。
本発明によるトリプルチューブ構造物によれば、内側のチューブ架構と中間のチューブ架構との間に形成される床スラブは、中間のチューブ架構側から延出する片持スラブとその上部に載置される内側のチューブ架構から延出する片持スラブとからなる二重構造によって曲げ剛性が高められる。また、内側のチューブ架構側の片持スラブと中間のチューブ架構との間の凹部に設けられる設備ダクト内に、各住戸への配管、配線等を敷設することができる。
請求項6に係る発明は、請求項1から5の何れかのトリプルチューブ構造物を制振するためのトリプルチューブ構造物の制振システムであって、前記中間のチューブ架構と前記内側のチューブ架構との間を鉛直方向に分断し、この分断した部分に位置する中間のチューブ架構の水平方向の端面と内側のチューブ架構の水平方向の端面との間に、鉛直方向の制振を行うための鉛直方向ダンパーを介装したことを特徴とする。
本発明によるトリプルチューブ構造物の制振システムによれば、地震、風等の外力がトリプルチューブ構造物に入力して、内側のチューブ架構と中間のチューブ架構とが鉛直方向に相対的に変位した場合に、両チューブ架構間に介装されている鉛直方向ダンパーによって鉛直方向への振動エネルギーが減衰されることになる。
請求項7に係る発明は、請求項1から5の何れかのトリプルチューブ構造物を制振するためのトリプルチューブ構造物の制振システムであって、前記中間のチューブ架構と前記内側のチューブ架構との間を鉛直方向に分断し、この分断した部分に位置する中間のチューブ架構の鉛直方向の端面と内側のチューブ架構の鉛直方向の端面との間に、水平方向の制振を行うための水平方向ダンパーを介装したことを特徴とする。
本発明によるトリプルチューブ構造物の制振システムによれば、地震、風等の外力がトリプルチューブ構造物に入力して、内側のチューブ架構と中間のチューブ架構との間が水平方向に相対的に変位した場合に、両チューブ架構間に介装されている水平方向ダンパーによって水平方向への振動エネルギーが減衰されることになる。
請求項8に係る発明は、請求項1から5の何れかのトリプルチューブ構造物を制振するためのトリプルチューブ構造物の制振システムであって、前記中間のチューブ架構と前記内側のチューブ架構との間を鉛直方向に分断し、この分断した部分に位置する、中間のチューブ架構の水平方向の端面と内側のチューブ架構の水平方向の端面との間に、鉛直方向の制振を行うための鉛直方向ダンパーを介装するとともに、中間のチューブ架構の鉛直方向の端面と内側のチューブ架構の鉛直方向の端面との間に、水平方向の制振を行うための水平方向ダンパーを介装したことを特徴とする。
本発明によるトリプルチューブ構造物の制振システムによれば、地震、風等の外力がトリプルチューブ構造物に入力して、内側のチューブ架構と中間のチューブ架構との間が鉛直方向又は水平方向に相対的に変位した場合に、両チューブ架構間に介装されている鉛直方向ダンパー又は水平方向ダンパーによって鉛直方向又は水平方向への振動エネルギーが減衰されることになる。
請求項9に係る発明は、請求項6から8の何れかに記載のトリプルチューブ構造物の制振システムであって、前記内側のチューブ架構は、上下方向に少なくとも2つに分断され、この分断部に鉛直方向の制振を行うための鉛直方向ダンパーが介装されていることを特徴とする。
本発明によるトリプルチューブ構造物の制振システムによれば、内側のチューブ架構の分断部に介装されている鉛直方向ダンパーによっても、鉛直方向への振動エネルギーが減衰されることになる。
以上、説明したように、本発明の請求項1に記載のトリプルチューブ構造物によれば、集合住宅、オフィスビルディング等の超高層建物に適用した場合に、居住空間内に中間のチューブ架構の柱及び梁が配置されることがないので、居住空間内に設けられる各住戸の面積を広くすることができる。また、中間のチューブ架構と内側のチューブ架構との間に廊下空間を設けているので、外側チューブ架構の柱間の間隔を拡げることが可能になり、広い眺望を得ることができる。さらに、内側のチューブ架構は、柱と梁とからなるラーメン構造となっているので、建物の中心部からも採光を得ることができる。
また、本発明の請求項2に記載のトリプルチューブ構造物によれば、中間のチューブ架構と内側のチューブ架構との間に廊下空間を設けることによって両チューブ架構間の間隔が狭まることになるが、両チューブ架構の柱を支持する杭を基礎梁を介して柱の直下から偏心させているので、両チューブ架構の柱を支持する杭が重なるようなことはなく、両チューブ架構の柱からの荷重を十分に支持することができる。また、杭のない直接基礎にも適用することができる。
さらに、本発明の請求項3から5に記載のトリプルチューブ構造物によれば、中間のチューブ架構と内側のチューブ架構との間の廊下空間に設けられる床スラブを二重構造としているので、床スラブの曲げ剛性を高めることができる。また、床スラブの一部(増打部と中間のチューブ架構との間、内側のチューブ架構側の片持スラブと中間のチューブ架構との間)に形成される凹部に設けられる設備ダクト内に各住戸への配管、配線等を敷設することができるので、配管や配線等が露出するようなことはなく、見栄えをよくすることがきる。
さらに、本発明の請求項6から8に記載のトリプルチューブ構造物の制振システムによれば、地震、風等の外力がトリプルチューブ構造物に入力して、内側のチューブ架構と中間のチューブ架構との間が鉛直方向又は水平方向に相対的に変位した場合に、両チューブ架構間に介装されている鉛直方向ダンパー又は水平方向ダンパーによって鉛直方向又は水平方向への振動エネルギーを減衰することができる。この場合、内側のチューブ架構と中間のチューブ架構との間の床スラブを二重構造にして曲げ剛性を高めているので、両チューブ架構間に生じる鉛直方向又は水平方向への相対変位を鉛直方向ダンパー又は水平方向ダンパーへ確実に伝達させることができ、良好な減衰性が得られることになる。
さらに、本発明の請求項9に記載のトリプルチューブ構造物の制振システムによれば、内側のチューブ架構の分断された分断架構体間の鉛直方向ダンパーによっても、鉛直方向への振動エネルギーを減衰することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図6には、本発明によるトリプルチューブ構造物の一実施の形態が示されていて、図1はトリプルチューブ構造物の全体を示す概略斜視図、図2は図1のトリプルチューブ構造物の平面図、図3は図1のトリプルチューブ構造物の中層部及び高層部の部分拡大平面図、図4は図3のA−A線断面図、図5は図1のトリプルチューブ構造物の低層部の部分拡大平面図、図6は図5のB−B線断面図である。
すなわち、このトリプルチューブ構造物1は、20〜70階程度の集合住宅、オフィスビルディング等の超高層建物(ボイド型、センターコア型、板状型等)に適用可能なS造、RC造、SRC造又はCFT造の構造物であって、図1及び図2に示すように、内側のチューブ架構2と、内側のチューブ架構2の外側に配置される中間のチューブ架構5と、中間のチューブ架構5の外側に配置される外側のチューブ架構8の三層チューブ構造に形成されている。
内側のチューブ架構2、中間のチューブ架構5、及び外側のチューブ架構8は、それぞれ複数の柱3、6、9と梁4、7、10とを格子状に組み合わせて構成したラーメン構造であって、内側のチューブ架構2の内側の部分に吹抜け空間20が設けられ、内側のチューブ架構2と中間のチューブ架構5との間に廊下空間21が設けられ、中間のチューブ架構5と外側のチューブ架構8との間に居住空間22が設けられ、中間のチューブ架構5と外側のチューブ架構8との間の一部(図2の上側の部分)にエレベータコア23が設けられている。
外側のチューブ架構8は、図1及び図2に示すように、隣接する柱9、9間の間隔が8〜10m程度のいわゆるワイドスパンに形成され、このワイドスパンにより居住空間22内に設けられる各住戸の眺望を広くすることができる。
中間のチューブ架構5と内側のチューブ架構2との間に廊下空間21を設けることにより、中間チューブ架構5の柱及び梁が居住空間22内に配置されるのを避けることができ、居住空間22内に設けられる各住戸の面積を広くすることができる。
中間のチューブ架構5と内側のチューブ架構2との間に廊下空間21を設けることにより、地震等による外力の60%以上を内側のチューブ架構2と中間のチューブ架構5とによって負担することができるので、外側のチューブ架構8をワイドスパンにしても、超高層建物としての所定の強度、耐震性が得られる。
中間のチューブ架構5と内側のチューブ架構2との間に廊下空間21を設けることにより、中間のチューブ架構5の柱6と内側のチューブ架構2の柱3とが接近し、両柱6、3の軸力を支持する杭が重なってしまうが、本実施の形態においては、両柱6、3の軸力を支持する杭を基礎梁を介して両柱6、3の直下から偏心させているので、両柱6、3の軸力を十分に支持することができる。また、杭のない直接基礎にも適用できる。
中間のチューブ架構5と内側のチューブ架構2との間の廊下空間21には、図3及び図4に示すように、二重構造の床スラブ11が設けられている。すなわち、この床スラブ11は、中間のチューブ架構5側から延出する中間のチューブ架構5と一体の片持ちスラブ12と、片持スラブ12の上部に打設される増打部15とからなるものであって、この二重構造によって床スラブ11の曲げ剛性が高められている。
片持ちスラブ12は、中間のチューブ架構5の柱6及び梁7と一体に形成されるスラブ本体13と、スラブ本体13の先端部に一体に設けられる上方に突出する逆梁14とからなる断面略L形状をなすものであって、逆梁14の先端面が内側のチューブ架構2の梁4の先端面と対向するように、中間のチューブ架構5側から内側のチューブ架構2の方向に延出している。
片持ちスラブ12の逆梁14の先端面と内側のチューブ架構2の梁4の先端面との間は、内側のチューブ架構2の全周に渡って鉛直方向に完全に分断され、この分断された部分に全周に渡って後述する鉛直方向ダンパー20が介装されている。
増打部15は、中間のチューブ架構5の柱6との間に所定の深さ、幅の凹部16が中間のチューブ架構5の全周に亘って形成されるように、片持ちスラブ12の上部に所定の厚み、幅で打設され、この凹部16に設備ダクト16が設けられ、この設備ダクト16内に居住空間22に形成される各住戸に引き込むガス、水道等の配管、電気、電話等の配線が敷設される。
上記のような片持ちスラブ12と増打部15とからなる二重構造の床スラブ11は、超高層建物の各階に対応する部分にそれぞれ設置してもよいし、超高層建物の曲げ変形が卓越する範囲内(例えば、中層部、高層部)のみに設置してもよい。
二重構造の床スラブ11は、図5及び図6に示すように、中間のチューブ架構5から延出する片持ちスラブ12と、内側のチューブ架構2から延出して中間のチューブ架構5側の片持ちスラブ12の上部に載置される片持ちスラブ17とによって構成してもよい。
この場合、中間のチューブ架構5側の片持ちスラブ12の水平方向の先端面と、この先端面に対向する内側のチューブ架構2の梁4の水平方向の先端面との間に所定の間隙18が形成され、この間隙18によって中間のチューブ架構5と内側のチューブ架構2との水平方向への相対的な変位が許容される。また、内側のチューブ架構2の片持ちスラブ17の水平方向の先端面と、中間のチューブ架構5の柱6との間には所定の間隙19が設けられ、この間隙19が居住空間22内に設けられる各住戸に引き込むガス、水道等の配管、電気、電話等の配線を敷設する凹部(設備ダクト)16として機能する。さらに、中間のチューブ架構5側の片持ちスラブ12の上面と、この上面に対向する内側のチューブ架構2側の片持ちスラブ17の下面との間には、内側のチューブ架構2の全周に亘って後述する水平方向ダンパー30が介装される。
上記のような2つの片持ちスラブ12、17からなる二重構造の床スラブ11は、超高層建物の各階に対応する部分にそれぞれ設置してもよいし、超高層建物のせん断変形が卓越する範囲内(例えば、低層部)のみに設置してもよい。
内側のチューブ架構2の内側部分は、超高層建物を鉛直方向に貫通する吹抜け空間20に形成され、この吹抜け空間20は内側のチューブ架構2の隣接する柱3、3間に形成される開口部29を介して廊下空間21に連通し、廊下空間21を介して中間のチューブ架構5と外側のチューブ架構8との間の居住空間22に連通している。従って、吹抜け空間20、内側のチューブ架構2の開口部29、及び廊下空間21を介して居住空間22内に採光を導くことができる。
次に、本発明によるトリプルチューブ構造物の制振システムについて説明する。
図7及び図8には、本発明によるトリプルチューブ構造物の制振システムの第1の実施の形態が示されていて、この制振システム31は、内側のチューブ架構2と中間のチューブ架構5との間の各階に対応する部分にそれぞれ鉛直方向ダンパー25を介装させたものである。この場合、内側のチューブ架構2と中間のチューブ架構5との間は鉛直方向に完全に分断され、中間のチューブ架構5と外側のチューブ架構8との間は一体に接合されているものとする。
鉛直方向ダンパー25は、図4に示すように、中間のチューブ架構5側から延出する片持ちスラブ12の逆梁14の先端面と内側のチューブ架構2の梁4の先端面との間に、内側のチューブ架構2の全周に亘って介装され、地震等による外力が超高層建物に入力した際に、この鉛直方向ダンパー25によって建物に生じる鉛直方向の振動が減衰される。
すなわち、地震等による外力が超高層建物に入力すると、中間のチューブ架構5と内側のチューブ架構2との間に鉛直方向への相対変位が生じ、この相対変位に応じて鉛直方向ダンパー25がせん断変形することにより、両チューブ架構2、5間に生じる鉛直方向の振動エネルギーが減衰される。
この場合、中間のチューブ架構5と内側のチューブ架構2との間に設けられる床スラブ11を二重構造にして曲げ剛性を高めているので、両チューブ架構5、2間に生じる鉛直方向の相対変位を鉛直方向ダンパー25に効率良く伝達させることができ、両チューブ架構5、2間に生じる鉛直方向の振動エネルギーを効率良く減衰することができる。
鉛直方向ダンパー25は、図9に示すように、一対の鋼板26、26と、両鋼板26、26間に介装されるアクリル等からなる粘弾性体27と、各鋼板26に一体に設けられるアンカーボルト28とからなるものであって、各鋼板26と粘弾性体27との間は接着剤を介して一体に接合されている。なお、粘弾性体27の代わりに粘性体を使用してもよい。
鉛直方向ダンパー25は、一方の鋼板26が中間のチューブ架構5側の片持ちスラブ12の逆梁14の先端面にアンカーボルト28を介して一体に固定され、他方の鋼板26が内側のチューブ架構2側の梁4の先端面にアンカーボルト28を介して一体に固定され、これにより、鉛直方向ダンパー25が中間のチューブ架構5と内側のチューブ架構2との間に介装される。
鉛直方向ダンパー25は、工場において、内側のチューブ架構2の梁部分と中間のチューブ架構5のスラブ部分とを製作する際に、それらの間に予め組み込んでおいてもよい。このような方法を採ることにより、鉛直方向ダンパー25を現場で取り付ける作業が不要になるので、全体の工期を短縮することができる。
そして、上記のような構成の鉛直方向ダンパー25を各階の廊下部分を利用して配置することにより、地震や風等の外力がトリプルチューブ構造物1に入力し、その外力によってトリプルチューブ構造物1の内側のチューブ架構2と中間のチューブ架構5との間が鉛直方向に相対的に変位した場合に、その変位が鉛直方向ダンパー25の粘弾性体27に入力され、粘弾性体27がせん断変形することにより、鉛直方向の振動エネルギーが減衰される。
なお、鉛直方向ダンパー25としては、上記のような構成のものに限らず、周知の油圧ダンパー、摩擦ダンパー等を使用してもよいし、それらを組み合わせて使用してもよい。
図10には、トリプルチューブ構造物の制振システムの第2の実施の形態が示されていて、この制振システム31は、内側のチューブ架構2と中間のチューブ架構5との間の各階に対応する部分にそれぞれ水平方向ダンパー30を介装させたものである。この場合、内側のチューブ架構2と中間のチューブ架構5との間は完全に分断され、中間のチューブ架構5と外側のチューブ架構8との間は一体に接合されているものとする。
水平方向ダンパー30は、前述した鉛直方向ダンパー25と同様の構成を有するものであって、図6に示すように、中間のチューブ架構5側から延出する片持スラブ12の上面と、この上面に対向する内側のチューブ架構2側から延出する片持スラブ17の下面との間に内側のチューブ架構2の全周に亘って介装され、地震等の外力が超高層建物に入力した際に、この水平方向ダンパー30によって建物に生じる水平方向の振動が減衰される。
すなわち、地震等による外力が超高層建物に入力すると、中間のチューブ架構5と内側のチューブ架構2との間に水平方向への相対変位が生じ、この相対変位に応じて水平方向ダンパー30がせん断変形することにより、両チューブ架構5、2間に生じる水平方向の振動エネルギーが減衰される。
水平方向ダンパー30は、一方の鋼板26が中間のチューブ架構5側の片持ちスラブ12の上面にアンカーボルト28を介して固定され、他方の鋼板26が内側のチューブ架構2側の片持ちスラブ17の下面にアンカーボルト28を介して固定され、これにより、水平方向ダンパー30が中間のチューブ架構5と内側のチューブ架構2との間に介装される。
そして、上記のような構成の水平方向ダンパー30を各階の廊下部分を利用して配置することにより、地震や風等の外力がトリプルチューブ構造物1に入力し、その外力によってトリプルチューブ構造物1の内側のチューブ架構2と中間のチューブ架構5との間が水平方向に相対的に変位した場合に、その変位が水平方向ダンパー30の粘弾性体37に入力され、粘弾性体37がせん断変形することにより、水平方向の振動エネルギーが減衰される。
この場合、中間のチューブ架構5と内側のチューブ架構2との間に設けられる床スラブ11を二重構造にして曲げ剛性を高めているので、両チューブ架構5、2間に生じる水平方向の相対変位を水平方向ダンパー30に効率良く伝達させることができ、両チューブ架構5、2間に生じる水平方向の振動エネルギーを効率良く減衰することができる。また、粘弾性体27の作用面積を、中間のチューブ架構5側の片持ちスラブ12の上面及び内側チューブ架構2側の片持ちスラブ17の下面に相当する面積とすることができるので、制振効果を高めることができる。
水平方向ダンパー30は、工場において、内側のチューブ架構2の片持ちスラブ17と中間のチューブ架構5の片持ちスラブ12とを製作する際に、それらの間に予め組み込んでおいてもよい。このような方法を採ることにより、現場で水平方向ダンパー30を取り付ける作業が不要になるので、全体の工期を短縮することができる。
なお、水平方向ダンパー30としては、上記のような構成のものに限らず、周知の油圧ダンパー、摩擦ダンパー等を使用してもよいし、それらを組み合わせて使用してもよい。
図11には、本発明によるトリプルチューブ構造物の制振システムの第3の実施の形態が示されていて、この制振システム31は、内側のチューブ架構2の低層部を中間のチューブ架構5から分断し、内側のチューブ架構2の中層部及び上層部を中間のチューブ架構5と一体に形成し、内側のチューブ架構2の分断した低層部の各階に対応する廊下の部分に、中間のチューブ架構5側の片持ちスラブ12の上面と内側のチューブ架構2側の片持ちスラブ17の下面との間を利用して、それぞれ水平方向ダンパー30を介装させたものである。
そして、この実施の形態による制振システム31にあっては、内側のチューブ架構2の低層部を内側のチューブ架構2の中層部及び高層部から分離するとともに、中間のチューブ架構5及び外側のチューブ架構8からも分離しているので、内側のチューブ架構2の低層部の水平方向の剛性を高めることができるとともに、内側のチューブ架構2の低層部とその他の部分(内側のチューブ架構2の中層部及び高層部、中間のチューブ架構5及び外側のチューブ架構8)との重量差を大きくすることができる。従って、内側のチューブ架構2の低層部とその他の部分との水平方向の変位差を大きくすることができるので、地震等の外力が入力した際の水平方向の制振効果を高めることができる。
図12には、本発明によるトリプルチューブ構造物の制振システムの第4の実施の形態が示されていて、この制振システム31は、内側のチューブ架構2を鉛直方向に低層部と中層部及び高層部との2つに分断し、それらの間に免震ゴム等からなる鉛直方向ダンパー35を介装し、さらに、内側のチューブ架構2の低層部と中間のチューブ架構5との間の各階に対応する部分に、廊下部分を利用してそれぞれ水平方向ダンパー30を介装させ、そして、内側のチューブ架構2の中層部及び高層部と中間のチューブ架構5との間の各階に対応する部分に、廊下部分を利用してそれぞれ鉛直方向ダンパー25を介装させたものである。
そして、この実施の形態による制振システム31にあっては、内側のチューブ架構2の低層部には、鉛直方向ダンパー35を介して中層部及び高層部から軸力しか伝わらないので、低層部の水平方向の剛性を前述した第3の実施の形態に示すものと同程度とすることができる。従って、内側のチューブ架構2とその他の部分との固有周期の差を大きくすることができるので、地震等の外力が入力した際の水平方向の制振効果を高めることができる。
また、内側のチューブ架構2の低層部と中層部及び高層部との間の鉛直方向ダンパー35に引抜き力が生じても、内側のチューブ架構2の中層部及び高層部は鉛直方向ダンパー25を介して中間のチューブ架構5に支持されているので、内側のチューブ架構2の中層部及び高層部が転倒する虞はなく、安全性を高めることができる。
さらに、内側のチューブ架構2の中層部及び高層部と中間のチューブ架構5との間の鉛直方向ダンパー25により、両チューブ架構2、5間を鉛直方向に制振することができる。従って、超高層建物全高に亘って、優れた制振効果が得られる。
なお、制振システムを構成する場合に、第1の実施の形態による鉛直方向ダンパー25と第2の実施の形態による水平方向ダンパー30とを、各階にそれぞれ設けてもよいし、階層に応じて第1の実施の形態の鉛直ダンパー25又は第2の実施の形態の水平方向ダンパー30を使い分けてもよい。
本発明によるトリプルチューブ構造物の一実施の形態を示す概略斜視図である。 図1に示すトリプルチューブ構造物の平面図である。 図1に示すトリプルチューブ構造物の中層部及び高層部の部分拡大平面図である。 図3のA−A線断面図である。 図1に示すトリプルチューブ構造物の低層部の部分拡大平面図である。 図5のB−B線断面図である。 本発明によるトリプルチューブ構造物の制振システムの第1の実施の形態を示す概略平面図である。 図7のC−C線に沿って見た概略図である。 鉛直方向ダンパーの概略図である。 本発明によるトリプルチューブ構造物の制振システムの第2の実施の形態を示す概略図であって、図7のC−C線に沿って見た概略図である。 本発明によるトリプルチューブ構造物の制振システムの第3の実施の形態を示す概略図であって、図7のC−C線に沿って見た概略図である。 本発明によるトリプルチューブ構造物の制振システムの第4の実施の形態を示す概略図であって、図7のC−C線に沿って見た概略図である。
符号の説明
1 トリプルチューブ構造物 2 内側のチューブ架構
3、6、9 柱 4、7、10 梁
5 中間のチューブ架構 8 外側のチューブ架構
11 床スラブ 12、17 片持ちスラブ
13 スラブ本体 14 逆梁
15 増打部 16 凹部(設備ダクト)
18、19 間隙 20 吹抜け空間
21 廊下空間 22 居住空間
23 エレベータコア 25、35 鉛直方向ダンパー
26 鋼板 27 粘弾性体
28 アンカーボルト 29 開口部
30 水平方向ダンパー 31 制振システム

Claims (9)

  1. 柱と梁とを組み合わせてなるラーメン構造のチューブ架構を三層に設けたトリプルチューブ構造物であって、
    最も内側のチューブ架構と中間のチューブ架構との間に廊下空間を設け、中間のチューブ架構と最も外側のチューブ架構との間に居住空間を設けたことを特徴とするトリプルチューブ構造物。
  2. 前記中間のチューブ架構の柱を支持する杭と前記内側のチューブ架構の柱を支持する杭とを、基礎梁及び厚盤の基礎スラブを介して各柱の直下から偏心させたことを特徴とする請求項1に記載のトリプルチューブ構造物。
  3. 前記中間のチューブ架構と前記内側のチューブ架構との間の廊下空間には二重構造の床スラブが設けられ、該二重構造の床スラブには凹部が形成され、該凹部に設備ダクトが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のトリプルチューブ構造物。
  4. 前記床スラブは、前記中間のチューブ架構から前記内側のチューブ架構の方向に延出する片持スラブと、該片持スラブの上部に打設される増打部とからなり、該増打部と前記中間のチューブ架構との間に前記凹部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のトリプルチューブ構造物。
  5. 前記床スラブは、前記中間のチューブ架構から前記内側のチューブ架構の方向に延出する片持スラブと、前記内側のチューブ架構から前記中間のチューブ架構の方向に延出して、前記片持スラブの上部に載置される片持スラブとからなり、前記内側のチューブ架構側の片持スラブと前記中間のチューブ架構との間に前記凹部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のトリプルチューブ構造物。
  6. 請求項1から5の何れかのトリプルチューブ構造物を制振するためのトリプルチューブ構造物の制振システムであって、
    前記中間のチューブ架構と前記内側のチューブ架構との間を鉛直方向に分断し、この分断した部分に位置する中間のチューブ架構の水平方向の端面と内側のチューブ架構の水平方向の端面との間に、鉛直方向の制振を行うための鉛直方向ダンパーを介装したことを特徴とするトリプルチューブ構造物の制振システム。
  7. 請求項1から5の何れかのトリプルチューブ構造物を制振するためのトリプルチューブ構造物の制振システムであって、
    前記中間のチューブ架構と前記内側のチューブ架構との間を鉛直方向に分断し、この分断した部分に位置する中間のチューブ架構の鉛直方向の端面と内側のチューブ架構の鉛直方向の端面との間に、水平方向の制振を行うための水平方向ダンパーを介装したことを特徴とするトリプルチューブ構造物の制振システム。
  8. 請求項1から5の何れかのトリプルチューブ構造物を制振するためのトリプルチューブ構造物の制振システムであって、
    前記中間のチューブ架構と前記内側のチューブ架構との間を鉛直方向に分断し、この分断した部分に位置する、中間のチューブ架構の水平方向の端面と内側のチューブ架構の水平方向の端面との間に、鉛直方向の制振を行うための鉛直方向ダンパーを介装するとともに、
    中間のチューブ架構の鉛直方向の端面と内側のチューブ架構の鉛直方向の端面との間に、水平方向の制振を行うための水平方向ダンパーを介装したことを特徴とするトリプルチューブ構造物の制振システム。
  9. 前記内側のチューブ架構は、上下方向に少なくとも2つに分断され、この分断部に鉛直方向の制振を行うための鉛直方向ダンパーが介装されていることを特徴とする請求項6から8の何れかに記載のトリプルチューブ構造物の制振システム。

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