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JP2006167253A - 発熱具 - Google Patents

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JP2006167253A
JP2006167253A JP2004365505A JP2004365505A JP2006167253A JP 2006167253 A JP2006167253 A JP 2006167253A JP 2004365505 A JP2004365505 A JP 2004365505A JP 2004365505 A JP2004365505 A JP 2004365505A JP 2006167253 A JP2006167253 A JP 2006167253A
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Shuji Ishikawa
修司 石川
Takeshi Oka
毅 岡
Hidetoshi Taima
秀利 對間
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Kao Corp
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Abstract

【課題】 発熱終了後に生ずる膨れを防止し得る発熱具を提供すること。
【解決手段】 発熱具1は、一部に200〜2000g/m2・24hrの透湿度を有する通気性部位 3aを備えた収容体3内に、被酸化性金属を含むシート状の発熱材料2が収容されて構成されている。発熱材料2は、発熱終了後の水分含量が10〜70重量%である。発熱材料2中に含まれる被酸化性金属の量は収容体の単位面積当たり10〜150mg/cm2である。収容体3とシート状の発熱材料2の互いに対向する面同士がそれぞれ部分的に接合されている。
【選択図】 図2

Description

本発明は、被酸化性金属の酸化による発熱を利用した発熱具に関し、更に詳しくは、発熱終了後に生じる膨れが防止された発熱具に関する。
本出願人は先に、被酸化性金属の酸化発熱を利用した水蒸気発生具を提案した(特許文献1参照)。この水蒸気発生具は、水蒸気によって毛穴を開かせて顔の肌を効果的に洗浄するための美顔具や、水蒸気の吸引によって喉や鼻の粘膜を潤すスチームマスクとして好適に用いられる。この水蒸気発生具は、通気性を有する透湿性シートと、通気性を有しない非透湿性シートとを袋状に貼り合せてなる発熱体収容部内に被酸化性金属を収容した構造の面状発熱体を備えている。発熱体収容部における透湿性シートの透湿度は、前記の用途に鑑みて7000〜15000g/m2・24hという高い値に設定されており、それによって1cm2当り15分間で30mg以上という多量の水蒸気が放出されるようになっている。また数分ないし1時間程度の比較的短時間で水蒸気の発生が終了するようになっている。水蒸気発生中の前記面状発熱体は、水蒸気の発生に起因する内圧増加によってやや膨らんだ状態になるが、水蒸気の発生終了後は元の扁平な形状に戻る。従って、前記面状発熱体の膨らみについて特別な注意を払う必要はない。
内圧増加による破裂を防止することを目的とした保温具として、特許文献2に記載のものが知られている。この保温具は、外袋の内部に、ゲル状の蓄熱物質が液密に封入された内袋を封入してなるものである。外袋のシール部には、非接着部を設けて外袋の内部と外部を連通する通気部を形成されている。これにより、内袋が破裂した場合に、蓄熱物質を外袋の内部に保持しつつ、膨張ガスのみが通気部を介して外部に排出されるようになっている。しかし、この保温具は水蒸気を発生するものではないので、水蒸気の発生に起因する内圧増加に関連するものではない。
国際公開WO03/103444パンフレット 特開2002−113032号公報
本発明の目的は、被酸化性金属の酸化による発熱を利用した発熱具において、発熱終了後に生ずる膨れを防止し得る発熱具を提供することにある。
本発明は、少なくとも一部に200〜2000g/m2・24hrの透湿度(JIS Z0208、40℃、90%RH)を有する通気性部位を備えた収容体内に、空気との接触により発熱可能な被酸化性金属を含む発熱材料が収容されており、
前記発熱材料は、発熱終了後の水分含量が10〜70重量%であって、該発熱材料中に含まれる前記被酸化性金属の量が収容体の単位面積当たり10〜150mg/cm2であるシート状の材料であり、
前記収容体とシート状の前記発熱材料の互いに対向する面同士がそれぞれ部分的に接合されている発熱具を提供することにより前記目的を達成したものである。
また本発明は、少なくとも一部に200〜2000g/m2・24hrの透湿度(JIS Z0208、40℃、90%RH)を有する通気性部位を備えた収容体内に、空気との接触により発熱可能な被酸化性金属を含む発熱材料が収容されており、
前記発熱材料は、発熱終了後の水分含量が10〜70重量%であって、該発熱材料中に含まれる前記被酸化性金属の量が収容体の単位面積当たり10〜150mg/cm2であるシート状の材料であり、
前記収容体は、その周縁部よりも内側の部位において、シート状の前記発熱材料が収容されている空間内の対向する面同士が部分的に接合されている発熱具を提供するものである。
更に本発明は、少なくとも一部に200〜2000g/m2・24hrの透湿度(JIS Z0208、40℃、90%RH)を有する通気性部位を備えた収容体内に、空気との接触により発熱可能な被酸化性金属を含む発熱材料が収容されており、
前記発熱材料は、発熱終了後の水分含量が10〜70重量%であって、該発熱材料中に含まれる前記被酸化性金属の量が収容体の単位面積当たり20〜300mg/cm2である粒状混合物であり、
前記収容体は扁平な袋状であり、該収容体は、その周縁部よりも内側の部位において、粉体が収容されている空間内の対向する面どうしが部分的に接合されている発熱具を提供するものである。
本発明によれば、水蒸気発生後における発熱具の膨れが効果的に防止され、外観の印象が低下することが防止される。また、使用者に無用な不安感を与えることが防止される。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明の発熱具の一実施形態の斜視図が示されている。図2は図1におけるII−II線断面図である。図1に示す発熱具1は扁平な矩形状であり、シート状の発熱材料としての発熱シート2及び該発熱シート2を収容する収容体3を備えている。後述するように、発熱シート2は繊維シートから構成されており、収容体3よりも一回り小さく形成されている。収容体3は扁平な袋状のものであり、複数のシート材の周縁を貼り合わせて、内部が空洞の袋状となされている。収容体3は少なくともその一部が透湿性を有する通気性部位となっている。
発熱シート2は、空気との接触により発熱可能なものである。この目的のために、発熱シート2は被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物、電解質及び水を含んでいる。発熱シート2が空気と接触すると、該シート2に含まれている被酸化性金属の酸化反応が起こり熱が発生する。この熱によって発熱シート2に含まれている水が加熱されて所定温度の水蒸気となり、収容体3を通じて外部へ放出される。水蒸気は、収容体3のうち通気性部位から外部へ放出される。
本実施形態の発熱具1は、水蒸気の発生を伴う熱を、対象物、例えば人体に与えるために用いられる(具体的な用途については後述する)。本実施形態の発熱具1は、水蒸気発生の持続時間が長いことによって特徴付けられるものである。このような特徴を有する発熱具1は、これを人体の腰部や肩等に適用してこれらの部位を温めることで、全身の血行が促進され、末梢温度が上昇することが判明した。また加温をやめた後も数十分に亘り温度の上昇が持続することが判明した。これとは対照的に、水蒸気の発生量の少ない一般の使い捨てカイロで同部位を同温度条件で温めても前記の効果は観察されない。この理由を本発明者らが検討したところ、水蒸気の発生を伴う熱は熱伝導性が高く、人体の深部の温度を高め得ることが判明した。人体の深部の温度が高くなることで、温熱中枢が刺激され、それによって血管が拡張して血流が増加し、また末梢温度が上昇すると推定される。従って発熱具1は、これを適用した人体の部位の温度上昇や血行の改善のみならず、体全体の血行の改善や、指先等の末梢温度の上昇、冷え性の改善に効果的である。
前述の特徴を有する発熱具、即ち水蒸気発生の持続時間が長い発熱具を得るためには、主として被酸化性金属の使用量、発熱前の発熱シート2における水分含量、収容体3の通気性部位における透湿度等の値をコントロールすることが重要である。これらの値が適切にコントロールされた発熱具1においては、これを人体の皮膚に適用した場合、皮膚表面温度が38℃以上となる水蒸気の放出が好ましくは3時間以上、更に好ましくは5時間以上維持される。また、発熱シート2が空気と接触してから90分後の水蒸気の積算放出量が好ましくは1.4〜7.0mg/cm2、更に好ましくは2.2〜7.0mg/cm2となる(以下これを水蒸気放出特性という)。なお皮膚表面温度とは、接触型温度計、例えば熱電対によって測定された皮膚表面の温度をいう。
水蒸気放出特性における水蒸気の積算放出量は次の方法で測定される。
温度20℃、湿度40%RHとした容積54000cm3(縦30cmx横50cmx奥行き36cm)の密閉系内に、その内部に水蒸気が蒸散可能なように発熱具1を静置して発熱させる。そして、前記密閉系内の空気の湿度を湿度計で測定し、発熱開始後に発生する水蒸気の量を求める。そして90分後の積算値を積算放出量とする。
以上のような水蒸気放出特性を有する発熱具を用いて水蒸気を発生させ所定時間が経過すると、発熱具の温度が徐々に低下し、水蒸気の発生量が減少してくる。更に時間が経過すると、発熱が終了し水蒸気の発生が停止する。発熱具1をそのまま放置すると、発熱具1が徐々に膨らむ現象が観察される。この現象は、先に従来技術の項で述べた特許文献1に記載の水蒸気発生具では観察されなかった現象である。この現象の発生の原因を本発明者らが検討したところ、この現象は、短時間に多量の水蒸気が放出されるタイプの水蒸気発生具では起こらず、本発明のように長時間に亘って水蒸気が徐放されるタイプのものに特有の現象であることが判明した。また、この現象の発生の原因は、水蒸気発生の持続時間が長い発熱具を得るための主要因として先に列挙した、被酸化性金属の使用量、発熱前の発熱シート2における水分含量、収容体3の通気性部位における透湿度等と密接に関係することも判明した。特に、発熱終了後に発熱シート2に残存している水分含量及び収容体3の通気性部位における透湿度に密接に関係していることが判明した。
具体的には、発熱終了後に発熱シート2に残存している水分含量が多いほど発熱具1の膨らみが顕著となる。特に、発熱終了後の発熱シート2の水分含量が10〜70重量%、特に20〜70重量%の場合に発熱具1の膨らみが顕著となる。発熱終了後の発熱シート2の水分含量が10重量%未満の場合には、収容体3内に滞留する水蒸気の量が少ないので、収容体3は膨らまないか、たとえ膨らんだとしても問題にならないレベルであり、また短時間で膨らみが萎える。発熱シート2の水分含量は、発熱シート2の加熱残量から求めることができる。詳細には、発熱終了後の発熱シート2の重量と加熱残量との差を発熱終了後の発熱シート2の重量で除し、それに100を乗じた値が発熱シート2の水分含量(%)となる。加熱条件は105℃、40分間とする。加熱雰囲気は窒素ガスである。試料の重量は3〜10gとする。また、発熱終了後とは、発熱シート2の表面温度が室温または30℃以下になった時点をいう。
また、収容体3における通気性部位の透湿度(JIS Z0208、40℃、90%RH)が200〜2000g/m2・24hr、特に300〜2000g/m2・24hr、とりわけ500〜1200g/m2・24hrである場合に発熱具1の膨らみが観察される。透湿度が2000g/m2・24hr以下である場合には、収容体3内に滞留する水蒸気が十分に収容体3外へ放出されないので膨らみが生じるが、所望の温度を十分に持続させることができる。透湿度が200g/m2・24hr以上である場合には、発熱具1が膨らむが、所望の水蒸気放出特性を得ることができる。
更に、収容体3の膨らみは、発熱シート2中に含まれる被酸化性金属の量にも関係している。具体的には、30〜600cm2の収容体において被酸化性金属の量は収容体の単位面積当たり10〜150mg/cm2とし、好ましくは25〜85mg/cm2とする。収容体の形状はその具体的な用途にもよるが、扁平な袋状のもが一般的で、その最大面に対し正投影した形状の面積を収容体の面積とした。被酸化性金属の量が150mg/cm2超であると、必要以上所望の温度が持続し、使用上安全面の問題が生じる。一方、被酸化性金属の量が10mg/cm2未満では、発熱量が十分でなく、所望の温度を十分に持続させることができない。
発熱具1が膨らむ原理は以下の通りであると本発明者らは推測している。図3(a)に示すように、容器の少なくとも一面は透湿性シートになっている。この透湿性シートを介して、気体の分圧差によりその気体が内外を移動し、圧力差を緩和する。透湿度は先に述べた通りであり、この範囲ではその緩和時間が有限の時間を有するため、次に述べる現象が生じていると考えている。水蒸気の発生が終了し室温近傍まで温度が低下した発熱具1においては、発熱シート2中に、水蒸気として揮散されなかった水分が多量に残存している。従って、収容体3内の水蒸気分圧PaH2Oは飽和水蒸気圧にほぼ等しくなっている。一方、収容体3外の水蒸気分圧PbH2Oは飽和水蒸気圧よりも低いことが通常である。水蒸気分圧とは別に、空気分圧に関しては、収容体3内の空気分圧PaAIRとPbAIRとはほぼ一致している。つまり、PaH2O>PbH2O、PaAIR≒PbAIRの状態になっている。従って、収容体3の内外での圧力を比較すると、PaH2O−PbH2Oの分だけ収容体3内の圧力の方が高くなっている。その結果、収容体3内の水蒸気分圧PaH2Oを下げる作用が働き収容体3が膨らむ。特に、収容体3外の水蒸気分圧PaH2Oが低い環境、例えば冬場など空気が乾燥している環境では、収容体3の内外での水蒸気分圧に大きな差が生じることから、収容体3の膨らみが顕著となる。
図3(b)は、この作用によって収容体3が膨らんだ状態を示している。この状態では、収容体3が膨らんだ分だけ収容体3内の水蒸気分圧PaH2Oが低下し、収容体3外の水蒸気分圧PbH2Oとほぼ一致するようになる。一方、空気分圧に関しては、収容体3が膨らんだ分だけ収容体3内の空気分圧PaAIRは低下している。収容体3外の空気分圧PbAIRに変化はない。つまり、PaH2O≒PbH2O、PaAIR<PbAIRの状態になっている。従って、収容体3の内外での空気分圧が釣り合う作用が働き、収容体3外から収容体3内に空気が取り込まれる。
図3(c)は、収容体3外から収容体3内に空気が取り込まれた状態が示されている。この状態においては、PaH2O≒PbH2O、PaAIR≒PbAIRの状態になっている。この状態は一時的なものであり長時間は持続しない。その理由は、収容体3内の発熱シート2に依然として多量の水が残存しているからである。詳細には、残存した水から水蒸気が発生して収容体3内の水蒸気分圧PaH2Oが上昇し、収容体3外の水蒸気分圧PbH2Oよりも高くなる(図3(d))。その結果、PaH2O>PbH2O、PaAIR≒PbAIRの状態、即ち図3(a)に示す状態に戻る。この状態変化が繰り返して起こり、発熱具1が限界まで膨らんでいく。
なお、発熱シート2が発熱して水蒸気が発生している最中は、収容体3内の水蒸気分圧は上昇するものの、収容体3内の酸素が酸化によって消費されてその分圧が概ねゼロになるので、収容体3内の全圧は収容体3外の全圧、即ち大気圧よりも低くなり(つまり負圧になり)、発熱体3が膨らむことはない。
以上の説明から明らかなように、水蒸気発生後の発熱具1の膨らみは、収容体3内での水蒸気分圧の大小に起因するものなので、膨らみ自体が人体へ健康上の害を及ぼすことはない。しかし、使用後に発熱具1が膨らむことで、健康上の害を及ぼすようなガス等が発生したとの無用の不安感を使用者に抱かせるおそれがある。また、発熱具1が膨らむことで外観の印象が低下するという弊害もある。そこで、本実施形態の発熱具1においては、発熱具1がその使用後に膨らむことを防止する以下の工夫が施されている。
本実施形態の発熱具1においては、図1及び図2に示すように、収容体3における透湿性シート3aと発熱シート2とが部分的に接合している。また難透湿シート3bと発熱シート2とが部分的に接合している。詳細には、透湿性シート3aと発熱シート2とは、図1に示す縦中心線(長辺方向に沿う中心線)Lを概ね三等分する位置J1、J2において点接合している。同様に、難透湿シート3bと発熱シート2も、位置J1、J2において点接合している。図2中、接合点を符号7で示す。透湿性シート3a及び難透湿シート3bと発熱シート2とが接合点7で接合していることで、発熱終了後の発熱具1から水蒸気が発生しても、その膨らみが防止される。本発明者らの検討の結果、透湿性シート3a及び難透湿シート3bと発熱シート2とを、本実施形態のように僅か2カ所という極めて少ない接合面積で点接合するだけで、膨れ防止に十分であることが判明した。この理由は、水蒸気によって発熱具1が膨れ始めるときの水蒸気分圧が僅かだからである。
個々の接合部7の接合面積は少なくとも0.7mm2以上、特に1mm2以上であることが、発熱具1の膨れを確実に防止し得ることから好ましい。接合面積の上限に特に制限はないが、接合面積が大きすぎると発熱具1の柔軟さが失われる傾向にある。また発熱反応が阻害されることがある。更に接合のコストがかかり経済的でなくなる。これらの理由から、個々の接合部7の接合面積の上限は500mm2、特に100mm2であることが好ましい。また、接合部7の接合面積の総和は、周縁の接合部を除いた発熱具1の面積(平面視での面積)に対して0.005〜13%、特に0.008〜1.5%であることが好ましい。
発熱具1の膨らみを効果的に防止する観点から、接合部7における接着強度は60gf以上、特に100gf以上であることが好ましい。接着強度は、引張試験機を用いて測定される。引張速度は100mm/minとする。
透湿性シート3aと発熱シート2との接合手段に特に制限はなく、両者を確実に接合できるあらゆる手段を用いることができる。簡便な手段としては接着剤による接合が挙げられる。この場合、先に述べた通り、発熱シート2には多量の水分が含まれているので、使用する接着剤は耐水性の高いものであることが好ましい。そのような接着剤としては例えばホットメルト粘着剤を用いることができる。
図2に示すように、収容体3は、透湿性シート3aと難透湿性ないし非透湿性シート(以下、両者を総称して難透湿性シートという)3bとの周縁が互いに接合されて扁平な袋状に形成されている。つまり収容体3の一方の側が透湿性シート3aを有しており、他方の側が難透湿性シート3bを有している。透湿性シート3aは、発熱シート2から発生した水蒸気を通過させる。しかし難透湿性シート3bは水蒸気を通過させにくいか又は通過させない。つまり水蒸気は収容体3の一方の側、即ち透湿性シート3aの側からのみ外部へ放出される。
周縁の接合部を除く透湿性シート3aの面積は、発熱具1の具体的な用途にもよるが、一般に30〜600cm2、特に40〜400cm2、とりわけ48〜250c■である
ことが好ましい。
透湿性シート3aとしては、水蒸気及び空気は透過させるが水は透過させにくいフィルムが用いられる。透湿性シートとしては、炭酸カルシウムを練り込み延伸して作る微細孔型、繊維を漉くことによる抄紙型等が挙げられる。緻密性、内容物の漏れ防止性、温度制御等の理由により、微細孔型が主に用いられる。微細孔型の透湿性シートとしては、例えば微細孔を有するポリオレフィン系フィルムなどが挙げられる。なお前述した通り水蒸気は透湿性シート3aを通じて外部へ放出されることから、本実施形態の発熱具1は、透湿性シート3aの側が人体と対向するように装着される。そこで装着感を高める観点から、図1及び図2に示すように、透湿性シート3aの外面には風合いの良好なシート材料である不織布3cが配されている。従って、発熱具1の使用時には不織布3cが身体に対向することになる。透湿性シート3aと不織布3cとは、それらの周縁で接合されていても良いし、シート面内で部分的に接着されていても良い。
一方、難透湿性シート3bとしては、水蒸気も水も透過させにくいフィルム、例えば微細孔を有しないポリオレフィン系フィルムやポリエステル系フィルムなどが用いられる。なお図2に示すように、難透湿シート3bの外面には、発熱具1の風合いを高めるために不織布3dがラミネートされている。不織布3dの外面に、必要に応じ粘着剤層(図示せず)が形成してもよい。その場合、粘着剤層は、発熱具1の使用時までは保護用の剥離紙(図示せず)によって保護しておく。
先に述べた通り、発熱シート2は、被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物及び電解質を含み且つ含水状態となっている。具体的には、本実施形態の発熱シート2は、被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物を含有する成形シートに、電解質水溶液を含有させて構成されている。本発明者らが検討したところ、これらの各種材料のうち、発熱具1の水蒸気放出特性に大きく影響する材料は、成形シートに含まれる被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物であることが判明した。詳細には、成形シートに含まれる被酸化性金属の量が好ましくは60〜90重量%、更に好ましくは70〜85重量%、反応促進剤の量が好ましくは5〜25重量%、更に好ましくは8〜15重量%、繊維状物の量が好ましくは5〜35重量%、更に好ましくは8〜20重量%であることが重要である。これらの材料の量が前述の範囲にあると、所望の水蒸気放出特性及び温度持続時間が期待できる。なお、後述するように、成形シートは好適には抄造によって得られるため、抄造工程における乾燥工程後の状態で5重量%以下の水分を含有する。
被酸化性金属に対する反応促進剤及び繊維状物それぞれの重量比も発熱具1の水蒸気放出特性に影響する。具体的には、発熱シート2において、被酸化性金属に対する反応促進剤の重量比は好ましくは0.08〜0.3であり、更に好ましくは0.11〜0.25である。また被酸化性金属に対する繊維状物の重量比は好ましくは0.08〜0.43であり、更に好ましくは0.09〜0.29である。これらの範囲内であれば、皮膚表面温度を38℃以上に向上させ且つ所望の水蒸気発生量を得ることが容易であり、発熱具1を収納したピロー袋を開封した後、目的とする温度への到達時間が短く、適度な温度の水蒸気を3時間以上提供することが容易となる。
発熱具1の水蒸気放出特性に影響する他の重要な要因としては、発熱シート2における電解質水溶液の濃度及び電解質水溶液の添加量が挙げられる。詳細には、発熱シート2における電解質水溶液の濃度は好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは2〜10重量%である。電解質水溶液の濃度がこの範囲であれば、経済的に所望とする温度を得ることができる。また電解質水溶液は、成形シート100重量部に対して好ましくは30〜80重量部、更に好ましくは40〜70重量部添加される。この範囲であれば、所望とする温度の持続が達成され且つ水蒸気発生量が得られる。
発熱シート2の発熱特性を所望のものとするために、複数枚の発熱シート2を重ね合わせて使用することも好ましい。この場合、発熱具1の使用中に発熱シート2間の位置ズレが起こることを防止するために、各発熱シート2をエンボス加工によって一体化することが好ましい。また発熱シート2に、前述の孔や切り込みを施すことによっても位置ズレが起こることを防止できる。
発熱シート2に含まれる各材料の詳細について説明すると、被酸化性金属としては例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の粉末や繊維が挙げられる。これらの中でも取り扱い性、安全性、製造コストの点から鉄粉が好ましく用いられる。被酸化性金属が粉末である場合その粒径は0.1〜300μmであることが、繊維状物への定着性、反応のコントロールが良好なことから好ましい。同様の理由により、粒径が0.1〜150μmものを50重量%以上含有するものを用いることも好ましい。
反応促進剤としては、水分保持剤として作用する他に、被酸化性金属への酸素保持/供給剤としての機能も有しているものを用いることが好ましい。例えば活性炭(椰子殻炭、木炭粉、暦青炭、泥炭、亜炭)、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、ゼオライト、パーライト、バーミキュライト、シリカ等が挙げられる。これらの中でも保水能、酸素供給能、触媒能を有する点から活性炭が好ましく用いられる。反応促進剤の粒径は0.1〜500μmであることが、被酸化性金属と効果的に接触し得る点から好ましい。同様の理由により、0.1〜200μmのものを50重量%以上含有するものを用いることも好ましい。
繊維状物としては、天然又は合成の繊維状物を特に制限無く用いることができる。天然繊維状物としては、例えばコットン、カボック、木材パルプ、非木材パルプ、落花生たんぱく繊維、とうもろこしたんぱく繊維、大豆たんぱく繊維、マンナン繊維、ゴム繊維、麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻、椰子、いぐさ、麦わら等の植物繊維が挙げられる。また羊毛、やぎ毛、モヘア、カシミア、アルカパ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ、シルク、羽毛、ダウン、フェザー、アルギン繊維、キチン繊維、ガゼイン繊維等の動物繊維が挙げられる。更に、石綿等の鉱物繊維が挙げられる。一方、合成繊維状物としては、例えばレーヨン、ビスコースレーヨン、キュプラ、アセテート、トリアセテート、酸化アセテート、プロミックス、塩化ゴム、塩酸ゴム等の半合成繊維が挙げられる。またナイロン、アラミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアクリロニトリル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン等の合成高分子繊維が挙げられる。更に金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維等を用いることもできる。また、これらの繊維の回収再利用品を用いることもできる。これらの中でも、被酸化性金属や反応促進剤との定着性、発熱シート2の柔軟性、酸素透過性、製造コスト等の点から、木材パルプ、コットン、ポリエステルが好ましく用いられる。繊維状物はその平均繊維長が0.1〜50mm、特に0.2〜20mmであることが、発熱シート2の強度確保及び繊維状物の水分散性の点から好ましい。
繊維状物は、そのCSF(カナダ標準濾水試験方法 JIS P8121)が、600ml以下であることが好ましく、450ml以下であることがより好ましい。これによって、繊維状物と被酸化性金属との定着性が良好になり、発熱シート2の発熱性を良好にすることができる。また、後述する裂断長を後述する範囲内に調整することが容易となり、その結果、発熱シート2からの被酸化性金属の脱落や、発熱シート2の機械的強度を適度に維持することができる。繊維状物のCSFは低い程好ましい。しかし通常のパルプ繊維のみを繊維状物として用い、これを原料として抄造を行うと、繊維状物以外の成分比率が低い場合、CSFが100ml未満であると濾水性が悪くなる傾向にあり、脱水が困難となって均一な厚みの発熱シートが得られないことがある。また、乾燥時にブリスター破れが生じたりする等の成形不良が生じることがある。これに対して発熱シート2においては、繊維状物以外の成分比率が比較的高いことから、濾水性も良好で均一な厚みの発熱シート2を得ることができる。また、CSFが低い程フィブリルが多くなるため、繊維状物と該繊維状物以外の成分との定着性が良好となり、高いシート強度を得ることができる。繊維状物のCSFの調整は、叩解処理などによって行うことができる。CSFの低い繊維と高い繊維とを混ぜ合わせ、CSFの調整を行っても良い。
電解質としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の硫酸塩、又はハロゲン化物等が挙げられる。これらの中でも、化学的安定性、生産コストに優れる点からアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の塩化物が好ましく用いられ、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄が好ましく用いられる。
発熱シート2には、必要に応じ凝集剤、サイズ剤、着色剤、紙力増強剤、歩留向上剤、填料、増粘剤、pHコントロール剤、嵩高剤等、抄紙の際に通常用いられる添加物を特に制限無く添加することもできる。
発熱シート2の製造方法に特に制限はない。発熱シートは、被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物を含有する成形シートに、電解質水溶液を含有させてなるものであるから、先ず被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物を含む成形シートを形成し、この成形シートに電解質水溶液を添加することで発熱シートが得られる。成形シートの製造には例えば本出願人の先の出願に係る特開2003−102761号公報に記載の湿式抄造法や、ダイコーターを用いたエクストルージョン法を用いることができる。特に、製造コストや生産性の点から湿式抄造法を用いることが好ましい。湿式抄造法を行う場合には、円網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などを用いることができる。抄造に用いられるスラリーは、被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物及び水を含むものであり、その濃度は、0.05〜10重量%、特に0.1〜2重量%であることが好ましい。
抄造によって得られた成形シートは、抄造後における形態を保つ点や、機械的強度を維持する点から、含水率(重量含水率、以下同じ。)が70%以下、特に60%以下となるまで脱水させることが好ましい。抄造後の成形シートの脱水方法は、例えば吸引による脱水のほか、加圧空気を吹き付けて脱水する方法、加圧ロールや加圧板で加圧して脱水する方法等が挙げられる。
脱水後の成形シートは加熱乾燥によって乾燥されることが好ましい。加熱乾燥温度は、60〜300℃、特に80〜250℃であることが好ましい。乾燥後における成形シートの含水率は、20%以下、特に10%以下であることがより好ましい。成形シートの脱水及び/又は乾燥は、被酸化性金属の酸化抑制の観点から不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。尤も成形シートは酸化助剤となる電解質を含有していないので、必要に応じて通常の空気雰囲気下で成形を行うこともできる。このことは製造設備を簡略化し得る点から有利である。乾燥後の成形シートは被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物を含むものであり、被酸化性金属を好ましくは60〜90重量%、更に好ましくは70〜85重量%含み、反応促進剤を好ましくは5〜25重量%、更に好ましくは8〜15重量%含み、繊維状物を5〜35重量%、更に好ましくは8〜20重量%含む。
このようにして得られた成形シート(つまり含水前の状態の発熱シート2)はその1枚の厚みが0.1mm〜2mm、特に0.15〜1.5mmであることが、成形シートの機械的強度を維持しつつ成形シートが柔軟になり、発熱具1が身体の適用部位へフィットしやすくなる点から好ましい。同様の理由により成形シートは、その坪量が10〜1000g/m2であることが好ましく、50〜600g/m2であることがより好ましく、100〜500g/m2であることが更に好ましい。
成形シートは、そのままの状態で複数枚を重ねて使用してもよく、或いは1枚のシートを折りたたみ、折り畳まれた複数枚の成形シートを重ねて使用してもよい。発熱具1の面積に対する成形シートの重量比は、所望の温度持続が達成でき、フィット性が良好で、また製造上の問題が起こりにくい点から、好ましくは0.03g/cm2〜0.17g/cm2であり、更に好ましくは0.06g/cm2〜0.14g/cm2である。同様の理由により、被酸化性金属の単位面積あたりの重量の比は好ましくは0.02g/cm2〜0.14g/cm2であり、更に好ましくは0.04g/cm2〜0.12g/cm2である。
また成形シートはその裂断長(JIS P8113、以下裂断長というときにはこの方法により測定された値をいう)が200〜4000m、特に200〜3000mであることが、発熱具1の使用時における成形シートからの被酸化性金属の脱落の防止や、成形シートの柔軟性の維持の点から好ましい。このような裂断長を有する成形シートは、先に述べたCSFを有する繊維状物を用いることで容易に得ることができる。
このようにして得られた成形シートに電解質水溶液を含有させて発熱シート2を得る。この工程は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。電解質水溶液を含有させるには例えば、ノズルから直接吐き出しによる方法やスプレー塗工法、刷毛等で塗工する方法、電解質水溶液に浸漬する方法、グラビアコート法、リバースコート法、ドクターブレード法等が挙げられる。電解質水溶液における電解質の濃度及び電解質の水溶液の付与量は、得られる発熱シート2における電解質の量及び水の含有量が、先に述べた範囲となるように調整される。
得られた発熱シート2を収容体3内に収納して発熱具1となす。発熱具1は酸素バリア性の材料からなる包装袋内に密封されて、最終製品である発熱具入り包装袋となされることが好ましい。発熱具1の使用に際しては、包装袋から該発熱具1を取り出すことで、該発熱具1に含まれる被酸化性金属が空気中の酸素と反応し、発熱が始まると共に水蒸気が発生する。酸素バリア性の材料としては、例えばその酸素透過係数(ASTM D3985)が10cm3・mm/(m2・d・MPa)以下、特に2cm3・mm/(m2・d・MPa)以下であるようなものが好ましい。具体的にはエチレン−ビニルアルコール共重合体やポリアクリロニトリル等が挙げられる。
本実施形態の発熱具1は例えば人体の腰部や肩に装着されて使用されることで、体全体の血行が改善されたり、指先等の末梢温度が上昇する。発熱具1の使用形態の一例を図4に示す。発熱具1は身体装着用のベルト状フィッター5に固定されて使用される。フィッター5はその中央部が幅広であり、各先端部へ向かうに連れてやや幅狭になっている。フィッター5の中央部には、発熱具1を収容するためのポケット(図示せず)が形成されている。一方の先端部には面ファスナなどの止着部が設けられている。止着部は他方の先端部へ止着するようになされている。フィッター5は、使用者の身体へのフィット性を考慮して伸縮性の素材から形成されている。
発熱具1の使用に際しては、先ず発熱具1をフィッター5のポケット内に収容する。このとき、発熱具1における透湿性フィルム側、即ち通気性・透湿性を有する側が使用者の身体に向くようにする。そして図5に示すように発熱具1が使用者の腰部に当接するようにフィッター5を腰部に巻き付ける。フィッター5の両先端部を使用者の腹部において重ね合わせ、一方の先端部に取り付けられている止着具を他方の先端部へ止着してフィッター5を固定する。発熱具1における使用者への当接面は、風合いの良好なシート材料である不織布3c(図2参照)から構成されているので、装着中に使用者に不快感を与えることはない。このようにして使用者に所定温度の水蒸気を所定時間(例えば3〜5時間程度)施すことで、所望の効能が発揮される。
具体的には、発熱具1を人体に装着させると、適用部位の表面温度のみならず、人体の深部温度を高めることができる。その結果、全身の血流量が増加し、適用部位の温度が上昇するのみならず、指先などの末梢温度も上昇する。また末梢温度の保温効果もある。従って発熱具1は、血行促進、筋肉の疲れを取る、筋肉の凝りや筋肉痛の緩和、冷え性の緩和、神経痛の緩和などの効能を有する。更に発熱具1は柔らかく身体の適用部位にフィットし、また違和感がない。
深部温度とは、表皮から深さ10mmの組織温度に相当する温度と考えられる。深部温度の上昇が0.2℃以下では、指先の表面温度上昇が顕著に確認されないのに対し、深部温度の上昇が0.3℃以上となると、指先の表面温度上昇または維持が確認される。また、指先温まりと全身の温まり実感に関しても、深部温度の上昇が0.2℃以下では実感されないが、深部温度の上昇が0.3℃以上となると顕著に実感される。
次に、本発明の第2〜第4の実施形態について図6〜図8を参照して説明する。これらの実施形態に関し特に説明しない点については、先に説明した実施形態に関する説明が適宜適用される。また図6〜図8において図1及び図2と同じ部材には同じ符号を付してある。
図6に示す実施形態の発熱具1は、先に説明した実施形態の発熱具と異なり、透湿性シート3a及び難透湿性シート3bと発熱シート2とが接合されていない。これに代えて、本実施形態においては、収容体3における周縁部よりも内側の部位において、発熱シート2が収容されている空間内の対向する面同士が部分的に接合されている。具体的には、発熱シート2の中央部がくり抜かれて円形の孔2aが形成されており、当該孔2aを通じて対向している透湿性シート3aと難透湿性シート3bとが接合点7において互いに点接合されている。本実施形態によれば、発熱具1の膨れが防止されることに加えて、発熱シート2の位置ずれが、先に説明した実施形態よりも一層起こりづらくなる。
図7に示す実施形態の発熱具1は、図6に示す実施形態の発熱具と同様に透湿性シート3aと難透湿性シート3bとが互いに点接合されている。本実施形態が図6に示す実施形態と異なる点は、本実施形態で用いる発熱シートは、図6に示す実施形態の発熱シートを4分割した大きさのものであり、それを4個用いている点である。図7に示すように、本実施形態では符号2aないし2dで表される4個の小発熱シートを用いている。そして、互いに隣り合う小発熱シート間において、透湿性シート3aと難透湿性シート3bとが互いに点接合されている。
具体的には、隣り合う小発熱シート2a,2c間の位置における接合点7a、小発熱シート2b,2d間の位置における接合点7b、小発熱シート2a,2b間の位置における接合点7c、小発熱シート2c,2d間の位置における接合点7dの4カ所において透湿性シート3aと難透湿性シート3bとが点接合されている。各接合点は、小発熱シートの長さ又は幅の中央部に位置している。各接合点がこのように配置されていることで、各小発熱シートの位置ずれを防止している。更に、本実施形態の発熱具1では、接合点の数がこれまでに説明した発熱具に比較して多くなっているので、発熱具の膨れを一層効果的に防止できる。
図8に示す実施形態の発熱具1は、これまでに説明した各実施形態の発熱具と発熱材料が異なっている。これまでに説明した各実施形態の発熱具においては、被酸化性金属を含む発熱材料として湿式抄造法やエクストルージョン法により成形された発熱シート2を用いたが、これに代えて、本実施形態の発熱具1においては、被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物もしくは保水剤、電解質及び水を含む粒状混合物を発熱材料として用いている。本実施形態においては、図8に示すように、扁平な袋状の収容体3における周縁部よりも内側の部位において、粒状混合物からなる発熱材料が収容されている空間内の対向する面どうしを部分的に点接合している。具体的には、透湿性シート3aと難透湿性シート3bとを接合している。接合の手段としては、先に述べた接着剤による接合や、熱融着を用いることができる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されるものではない。例えば図1及び図2に示す実施形態においては、透湿性シート3a及び難透湿性シート3bと発熱シート2とが接合されていたが、膨れを防止できる限度において、透湿性シート3a及び難透湿性シート3bの何れか一方のみと発熱シート2とを接合してもよい。また図1及び図2に示す実施形態においては、透湿性シート3a及び難透湿性シート3bが発熱シート2と接合する位置は同位置であったが、これに代えて、透湿性シート3aと発熱シート2との接合位置を、難透湿性シート3bと発熱シート2との接合位置とずらしてもよい。
また前記の各実施形態においては、点接合によってシートどうしを接合していたが、接合はこれに限られず、線状(例えば直線状、曲線状)でもよく、点接合と線状接合の組み合わせ等であってもよい。
また前記の各実施形態においては、収容体3が透湿性シート3aと、難透湿性シート3bとを袋状に貼り合せたものから構成されていたが、これに代えて2枚の透湿性シートの周縁を接合して袋状に形成した収容体を用いてもよい。この場合には、収容体の各面から水蒸気が発生する。
前記の各実施形態の発熱具は、人体の腰部や肩に装着されて使用されることが深部温度の上昇の点から好ましいが、人体におけるこれら以外の部位、例えば首、肩、背中、腹部、肘、膝等に適用してもよい。更に、顔、身体の洗浄、除菌、メイク落とし等のスキンケア用途に適用してもよい。また人体に装着させる以外に、洗浄・除菌、ワックス徐放、芳香、消臭等の諸機能剤と組み合わせ、フローリング、畳み、レンジ周り、換気扇等のハウスケア用途、車等の洗浄、ワックスかけ等のカーケア用途にも適用することができる。
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
<スラリーの配合>
・被酸化性金属:鉄粉、同和鉄粉鉱業(株)製、商品名「RKH」、150g
・繊維状物:パルプ繊維(NBKP、スキーナ(株)製、商品名「スキーナ」、平均繊維長さ=2.1mm)、30g
・反応促進剤:活性炭、日本エンバイロケミカルズ(株)製、商品名「カルボラフィン」)、20g
・凝集剤:カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業薬品(株)製、商品名「セロゲン」WS−C)0.5g、及びポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC(株)製、商品名「WS4020」)0.5g
・水:工業用水、99800g
<抄紙条件>
前記スラリーを用い、傾斜型短網小型抄紙機によって、ライン速度7m/分で抄紙して湿潤状態の成形シートを作製した。
<脱水・乾燥条件>
フェルトで挟持して加圧脱水し、そのまま120℃の加熱ロール間にライン速度7m/分で通し、含水率が5重量%以下になるまで乾燥して成形シートを得た。
<電解質水溶液添加条件>
得られた成形シートを4枚重ね合わせてから、下記電解質水溶液を所定量含浸させて発熱シートを作製した。発熱シートの水分含量及び発熱シートにおける各成分の配合割合を表1に示す。
<電解液>
電解質:精製塩(NaCl)
水:工業用水
電解液濃度:5重量%
<収容体への収容>
炭酸カルシウムを含有するポリエチレン製の透湿性フィルム(透湿度800g/m2・24hr、通気度10000s/100cm3)、線状低密度ポリエチレン製の難透湿性フィルム及びエアスルー不織布を用いて図1及び図2に示す矩形の袋状の収容体(120mm×100mm)を作製した。この中に発熱シートを収容した。収容に際して、透湿性フィルム及び難透湿性フィルムと発熱シートとをホットメルト粘着剤によって2カ所で点接合した。接合位置は図1に示す通りであった。個々の接合部の接合面積は4.9cm2であった。接合部の接着強度は100gfであった。
〔実施例2〕
実施例1において用いた発熱シートの原料を用い、該原料を抄造せずに粒状混合物からなる発熱材料を得た。これとは別に実施例1で用いた収容体と同様の収容体を用い、透湿性フィルムと難透湿性フィルムとをホットメルト粘着剤によって1カ所で点接合した。接合位置はシート中央であった。接合部の接合面積は7.5cm2であった。接合部の接着強度は200gfであった。次いで収容体内に粒状混合物を充填し密封した。このようにして発熱具を得た。
〔比較例1〕
実施例1において透湿性フィルムと発熱シートとを全面接合した以外は実施例1と同様にして発熱具を得た。
〔性能評価〕
各実施例及び各比較例で得られた発熱具について、発熱終了後の発熱シートの水分含量を先に述べた方法で測定した。その結果を表1に示す。また発熱終了後の発熱具の膨らみ及び発熱中の状態を観察した。更に、発熱具の最高到達温度、空気との接触から180分経過後までの水蒸気の積算放出量を測定した。その結果を表2に示す。ここでの最高到達温度は、JIS S4100にて測定した。最高到達温度とは、JIS法にて測定し、最高点に到達した温度の値を言う。最高到達温度が、38℃未満であるような低い温度では深部温度が上昇せず、体全体の温まりもない。一方60℃以上であると熱すぎて使用できない。また、発熱具を図4に示すフィッターに取り付けてパネラーに装着させ、腰部の深部温度を以下の方法で測定した。
〔深部温度の測定〕
20℃、40%RHの環境下にて、実施例及び比較例で得られた発熱具を装着する部分の腰部付近(発熱具適用部位の上部)に深部温度計(コアテンプCM−210、深部温プローブPD1、テルモ株式会社製)を装着した。あらかじめ、発熱具装着前に深部温度計を装着し、深部温度が安定になることを確認した後、発熱具を60分間適用し、深部温度測定を実施した。深部温プローブPD1を用いて測定される深部温度とは、表皮から深さ10mmの組織温度に相当する温度と考えられる。発熱具適用前の深部温度をA、測定中の深部最高温度をBとして、B―Aを深部上昇温度と定義した。
表2に示す結果から明らかなように、各実施例の発熱具は、発熱終了後に膨らまず、また発熱中に異常発熱が起こらなかった。また最高到達温度が40℃以上であり、水蒸気の3時間の積算放出量は400mg/cm2以上であることが判る。一方、比較例1では透湿性シートと発熱シートとが全面接合されているので、発熱反応が阻害されてしまった。
本発明の発熱具1の一実施形態を示す斜視図である。 図1におけるII−II線断面図である。 本実施形態の発熱具が発熱終了後に膨らむ原理を説明する説明図である。 図1に示す発熱具の使用形態の一例を示す図である。 図1に示す発熱具の使用状態を示す図である。 本発明の発熱具の第2の実施形態を示す図である。 本発明の発熱具の第3の実施形態を示す図である。 本発明の発熱具の第4の実施形態を示す断面図(図2相当図)である。
符号の説明
1 発熱具
2 発熱シート
3 収容体
5 ベルト状フィッター
7 接合部

Claims (8)

  1. 少なくとも一部に200〜2000g/m2・24hrの透湿度(JIS Z0208、40℃、90%RH)を有する通気性部位を備えた収容体内に、空気との接触により発熱可能な被酸化性金属を含む発熱材料が収容されており、
    前記発熱材料は、発熱終了後の水分含量が10〜70重量%であって、該発熱材料中に含まれる前記被酸化性金属の量が収容体の単位面積当たり10〜150mg/cm2であるシート状の材料であり、
    前記収容体とシート状の前記発熱材料の互いに対向する面同士がそれぞれ部分的に接合されている発熱具。
  2. 少なくとも一部に200〜2000g/m2・24hrの透湿度(JIS Z0208、40℃、90%RH)を有する通気性部位を備えた収容体内に、空気との接触により発熱可能な被酸化性金属を含む発熱材料が収容されており、
    前記発熱材料は、発熱終了後の水分含量が10〜70重量%であって、該発熱材料中に含まれる前記被酸化性金属の量が収容体の単位面積当たり10〜150mg/cm2であるシート状の材料であり、
    前記収容体は、その周縁部よりも内側の部位において、シート状の前記発熱材料が収容されている空間内の対向する面同士が部分的に接合されている発熱具。
  3. 少なくとも一部に200〜2000g/m2・24hrの透湿度(JIS Z0208、40℃、90%RH)を有する通気性部位を備えた収容体内に、空気との接触により発熱可能な被酸化性金属を含む発熱材料が収容されており、
    前記発熱材料は、発熱終了後の水分含量が10〜70重量%であって、該発熱材料中に含まれる前記被酸化性金属の量が収容体の単位面積当たり20〜300mg/cm2である粒状混合物であり、
    前記収容体は扁平な袋状であり、該収容体は、その周縁部よりも内側の部位において、粉体が収容されている空間内の対向する面どうしが部分的に接合されている発熱具。
  4. 前記発熱材料から発生した水蒸気が前記通気性部位を通じて前記収容体の外部へ放出するようになされており、該発熱材料が空気と接触してから90分後の水蒸気の積算放出量が1.4〜7.0mg/cm2である請求項1ないし3の何れかに記載の発熱具。
  5. 前記発熱材料が、被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物、電解質及び水を含む発熱シートからなる請求項1又は2記載の発熱具。
  6. 前記発熱シートが、60〜90重量%の被酸化性金属、5〜25重量%の反応促進剤及び5〜35重量%の繊維状物を含む成形シートに、該成形シート100重量部に対して、1〜15重量%の電解質を含む電解質水溶液が30〜80重量部含有されて構成されている請求項5記載の発熱具。
  7. 前記収容体が、前記の透湿度を有する透湿性シート及び難透湿性ないし非透湿性シートを互いに重ね合わせ、両シートの周縁を互いに接合させて袋状に形成されたものであり、シート状の前記発熱材料と、透湿性シート又は難透湿性ないし非透湿性シートとが部分的に接合されている請求項1記載の発熱具。
  8. 前記収容体が、前記の透湿度を有する透湿性シート及び難透湿性ないし非透湿性シートを互いに重ね合わせ、両シートの周縁を互いに接合させて袋状に形成されたものであり、透湿性シートと難透湿性ないし非透湿性シートとが部分的に接合されている請求項2又は3記載の発熱具。
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