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JP4822944B2 - 生理機能改善器具 - Google Patents

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JP4822944B2 JP2006165025A JP2006165025A JP4822944B2 JP 4822944 B2 JP4822944 B2 JP 4822944B2 JP 2006165025 A JP2006165025 A JP 2006165025A JP 2006165025 A JP2006165025 A JP 2006165025A JP 4822944 B2 JP4822944 B2 JP 4822944B2
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Description

本発明は、水蒸気を利用した生理機能改善具に関する。
ライフスタイルの変化に伴い、健康に対する社会全体の流れがセルフメディケーション化に傾いている。また それに伴ってデイリーヘルスケアの気運が高まっている。成人の共通した健康上の悩みとしては、腰痛、肩痛、冷え性、かすみ目、生理痛、関節痛などがある。今後、これらの症状を日々の家庭生活の中で緩和ないし治療すること、或いは予防することが一般的になると予想される。例えば腰痛等の緩和のために、被酸化性金属を含む発熱体(いわゆる使い捨てカイロ)を腰部等に装着して当該部位を温める温熱療法が知られているが、このような温熱療法は個人レベルでますます盛んになると予想される。
ところで本出願人は先に、目及び目の周囲に水蒸気を供給する、アイマスク様形状の視力改善治療具やマイボーム腺機能改善治療具を提案した(特許文献1及び2参照)。これらの治療具は、目及び目の周囲に、侵害刺激にならない温度以下の水蒸気を供給することで、調節筋の弛緩を回復、向上させ、視力を向上させたり、マイボーム腺の機能を改善させたりするものである。これらの治療具は、目及び目の周囲に適用することを目的としているので、水蒸気の適用時間は、侵害刺激にならない程度の短時間であり、高々数十分程度である。これらの治療具によれば、視力の改善やマイボーム腺機能の改善が図られる。しかし前記の各特許文献には、これらの治療具によって、その他の生理機能が改善されるか否かについては記載されていない。
これらの治療具とは別に、本出願人は、皮膚や粘膜に水蒸気を供給する水蒸気発生体を提案した(特許文献3参照)。この水蒸気発生体においては、該発生体と、皮膚や粘膜等の適用部位との距離を5mm以上となるようにしている。しかし、この適用方法では多量の蒸気を必要とするために、蒸気温熱を長時間発生することが容易でない。
特開2002−65714号公報 特開2002−78727号公報 特開2002−78728号公報
従って本発明の目的は、人体等の種々の生理機能を改善し得る生理機能改善器具を提供することにある。
本発明は、化学エネルギーを利用した発熱部を有し、該発熱部と体表との間にシートを介在させて当接させた状態下に該発熱部から発生する水蒸気を供給するようになされている人体等の生理機能改善器具であって、
室内温度20℃、湿度40%RHの測定環境下、前記器具が当接された部位の皮膚における角層の水分量が、当接開始から0.5時間後において0.25g/cm3以上となり、且つこの水分量が当接開始から5時間後まで持続する水蒸気の供給能を有する人体等の生理機能改善具を提供することにより前記目的を達成したものである。
本発明の生理機能改善器具を人体等に装着させると、水蒸気の凝縮熱が皮膚に深く且つ広く伝播されやすくなり、適用部位の表面温度のみならず、適用部位の周辺や適用部位の深部温度を高めることができる。その結果、筋肉が弛緩し、また血管が拡張して全身の血流量が増加する。それによって、発痛物質が血液によって除去され痛みが解消される。また血液による熱の伝播が活発になり、指先などの末梢温度も上昇する。従って、本発明の生理機能改善器具は、血行促進、筋肉の疲れを取る、筋肉の凝りや筋肉痛の緩和、冷え性の緩和、神経痛の緩和などの効能を有する。また、腰部に適用することで腰痛が緩和ないし解消され、腹部に適用することで腹痛が緩和ないし解消されるという効能もある。更に、腰部及び/又は腹部に適用することで胃腸の働きが改善され、また疲労が回復するという効能もある。更に生理痛を緩和する効能もある。
本発明の生理機能改善器具は、特に人体の体表に適用される。適用部位に特に制限はなく、腰部、腹部、頸部、肩部や、各所の関節など所望の部位に適用し得る。生理機能改善器具は、体表に当接して適用される。当接して適用とは、水蒸気の透過が可能なスペーサー機能を兼ねたシートや、固定具を兼ねたシートを介して生理機能改善器具を体表へ接触させ適用することをいう。
本発明の生理機能改善器具は、化学エネルギーを利用した発熱部を有しており、該発生部から生じた水蒸気(所定温度に加熱された蒸気)を体表に適用する点に特徴を有している。従って、発熱部は、水蒸気発生部ともいえる。特に、生理機能改善器具は、所定温度に加熱された水蒸気発生の持続時間が長いことによって特徴付けられるものである。以下の説明においては、体表に適用される水蒸気を伴う熱を湿熱という。また湿熱との対比で、体表に適用される水蒸気を伴わない熱、例えば市販の使い捨てカイロから発生する熱を乾熱という。
図1(a)には、本発明の生理機能改善器具を体表に適用した状態が模式的に示されている。生理機能改善器具から発生した水蒸気は、該器具と皮膚との間の空間を移動して(物質移動)、皮膚に到達し熱を伝える(接触伝熱)。皮膚に到達した水蒸気は凝縮水となり、そのときに発生する熱(凝縮熱)が皮膚に伝播される。このように、湿熱を利用した本発明の生理機能改善器具によれば、高い伝熱効率で皮膚に熱を伝えることができる。
図1(b)には、図1(a)との対比で、乾熱の場合の熱の伝わり方が模式的に示されている。乾熱、即ち市販の使い捨てカイロを用いた熱の伝わり方は、空気の分子への熱拡散による伝熱である。従って、乾熱では伝熱効率が低く、十分な熱が皮膚に伝播されない。
本発明において利用し得る化学エネルギーとしては、被酸化性金属の酸化反応により生じる酸化熱、酸とアルカリの中和熱、無機塩類(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ゼオライト等)の水和熱などが挙げられる。これらのうち、取り扱い性が良好であることや、発熱量が比較的大きいこと、携帯やコンパクト化が容易であることから、被酸化性金属の酸化反応により生じる酸化熱を用いることが好ましい。
化学エネルギーを利用した発熱部の具体的な構成は、化学エネルギーの種類に応じて適宜定められる。例えば被酸化性金属の酸化反応により生じる酸化熱を用いる場合には、金属粉(例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、銅等)、触媒となる塩類(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属の塩化物、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩化物等)、及び水を含有した水蒸気発生組成物から構成される。この組成物には、更に保水剤(例えば、バーミキュライト、ケイ酸カルシウム、シリカゲル、シリカ系多孔質物質、アルミナ、パルプ、木紛、吸水ポリマー等)、反応促進剤(例えば、活性炭、カーボンブラック、黒鉛等)等を含有させる。
本発明の生理機能改善器具は化学エネルギーを利用した発熱部を有し、該発熱部と体表との間にシートを介在させて該器具を当接させた状態下に該発熱部から発生する水蒸気(所定温度に加熱された水蒸気)を供給するようになされている人体等の生理機能改善器具である。該器具は、その適用部位の皮膚における角層の水分量を通常の状態よりも高めるものである点に特徴を有する。本発明の生理機能改善器具は、室内温度20℃、湿度40%RHの測定環境下、該器具が当接された部位の皮膚における角層の水分量が、当接開始から0.5時間後において0.25g/cm3以上となり、且つこの水分量が当接開始から5時間後まで持続する水蒸気の供給能を有している。なお、以下の説明において角層の水分量というときには、室内温度20℃、湿度40%RHの測定環境下における値をいう。このような水蒸気の発生能を有する生理機能改善器具を体表に適用することで、人体の各種生理機能が顕著に改善される。
本発明の器具を適用することによる生理機能の改善効果としては、例えば血行促進、筋肉の疲れを取る、筋肉の凝りや筋肉痛の緩和、冷え性の緩和、神経痛の緩和などがある。また腹痛や腰痛の緩和ないし解消、胃腸の働きの改善、また疲労の回復などがある。更に、女性の場合、生理痛の緩和がある。特に生理痛の緩和に関しては、意外にも、本発明の生理機能改善器具を、生理開始日の少なくとも前日から腹部及び/又は腰部に、一日のうちの所定時間(例えば2〜10時間)適用すると、生理開始後に同器具を適用した場合に比較して、生理痛の緩和効果が顕著に高まることが、本発明者らによって見出された。
先に述べた角層の水分量は、角層の熱伝導度に影響を及ぼす。皮膚の断面構造において最も表面に位置する角層は、その下に位置する表皮や真皮に比較して水分量が少なく、その結果、熱伝導度が低いことが知られている。このような状態にある角層に対して、本発明の生理機能改善器具を用いて湿熱を付与することで、角層が湿潤状態になり、その水分量が増加する。その結果、角層の熱伝導度が高まる。このことと、先に述べた湿熱による水蒸気の接触伝熱(図1(a)参照)との相乗作用によって、本発明によれば熱が皮膚に深く且つ広く伝播される。
前記の特徴を有する本発明の生理機能改善器具によって人体の各部位、例えば腰部や肩を温めると、同温度の乾熱で温めた場合に比べて全身の血行が促進され、末梢温度が上昇することが確認されている。また加温をやめた後も数十分に亘り温度の上昇が持続することも確認されている。この理由は、先に述べた通り、湿熱は乾熱よりも熱の伝導が速いので、人体の深部の温度を一層高め得るからである。人体の深部の温度が高くなることで、自律神経を介して温熱中枢が刺激され、それによって血管が拡張して血流が増加し、また末梢温度が上昇する。従って本発明の生理機能改善器具は、これを適用した人体の部位の温度上昇や血行の改善のみならず、体全体の血行の改善や、指先等の末梢温度の上昇、冷え性の改善がみられる。また、湿熱は伝熱を効果的に行えるため、発熱部の温度が低い状態でも多くの熱を皮下深部に伝えることができる。よって市販のカイロで問題となっている低温やけどのリスクを低減させる効果がある。
本発明の生理機能改善器具を用いると伝熱効率が高まることは、熱伝導率を測定することで裏付けられる。しかし、本発明の生理機能改善器具を実際に人体に適用し、その状態下に熱伝導率を実測することは難しい。そこで本発明においてはモデル測定系を作製し、その測定系を用いて熱伝導率を測定する。
図2には、JIS S4100を参考にしたモデル測定系を用いた熱伝導率の測定方法が示されている。モデル測定系100は、熱浴101上にポリプロピレン製の板102(厚さ7mm)を載置し、その上を八枚重ねのネル織布104(綿100% テックス番手5.905双糸のネル)で覆ったものから構成される。熱浴101は人体に相当するものであり、その体表面温度すなわち熱浴の表面温度が、体温としての一般的な値である36.0℃に維持されている。生理機能改善器具1は、板102とネル織布104との間に配され、温度及び熱伝導率が測定される。ここでいう熱伝導率は、生理機能改善器具1の発熱部から、体表と定義した熱浴101の表面までの熱伝導率である。枠体105を、生理機能改善器具1を取り囲むようにネル織布104上に載置し、ネル織布104と板102との間に空隙が生じないように生理機能改善器具1を固定する。熱流板106を、生理機能改善器具1の真下の位置において、熱浴101と板102との間に配置する。熱流板106は熱流束を測定するためのセンサである。熱流板106とは別に、熱電対107を、生理機能改善器具1と板102との間に配置する。熱電対107は、生理機能改善器具1の発熱温度を測定するためのセンサである。
図2に示すモデル測定系100を用いた熱伝導率の測定においては、熱流板106及び熱電対107から得られた信号(電圧)をパーソナルコンピュータで処理し、生理機能改善器具1の熱流束及び発熱温度を測定・記録した。パーソナルコンピュータによる処理は、市販のソフトウエアを用いて行った。
生理機能改善器具1は、発熱部で発生する水蒸気の放出可能部位が体表に対向するように人体に装着されて使用される。したがってモデル測定系においても水蒸気放出可能部位が熱浴101に対向するように装着され計測される。
このモデル測定系において湿熱及び乾熱の熱浴101までの熱伝導率の比較を行った。生理機能改善器具1をモデル測定系の板102に当接させた状態下で、該器具1における発熱部から熱浴101への熱伝導率を測定した。適用1時間後の熱伝導率は、湿熱及び乾熱それぞれにおける発熱体の温度が同じであるのに対して、熱伝導率は以下の通りとなった。
・湿熱 0.046W/m・℃
・乾熱 0.039W/m・℃
更に、適用2時間後の熱伝導率は以下の通りとなった。
・湿熱 0.048W/m・℃
・乾熱 0.032W/m・℃
これらの結果から、湿熱の熱伝導率が乾熱に比べて有意に高いことが確認された。このモデル系の測定結果から、本発明の生理機能改善器具1から人体への伝熱率が水蒸気によって一層高まり、生理機能の改善が一層顕著なものとなると考察される。
以上の結果から、本発明の生理機能改善器具1は、これをモデル測定系の板102に当接させた状態下で、該生理機能改善器具1の発熱部から熱浴101への熱伝導度が0.04〜0.06W/m・℃、特に0.045〜0.055W/m・℃となる水蒸気の発生能を有していることも好ましい。
乾熱、即ち空気の熱伝導度が0.096kJ/m・hr・℃(40℃)であり、水の熱伝導度が2.40kJ/m・hr・℃(60℃)であることを考えると、湿熱を利用した本発明の生理機能改善器具の熱伝導率が極めて高いことが容易に理解される。
本発明において角層の水分量は、時間領域反射法(Time Domain Reflectometry、以下TDR法という)によって測定される。TDR法においては、プローブの先端を皮膚に接触させ、該プローブから10GHzのマイクロ波を皮膚に当てる。このマイクロ波の反射波をプローブで検知する。反射波は、皮膚内の誘電特性、つまり水分子の配向状態によって相違するので、反射波を検知することで皮膚の含水状態を調べることができる。TDR法においては、プローブの径に応じて測定深さが異なる。径が大きいほど皮膚深部の水分率を測定することができる。本発明においては東光電子株式会社製のTDRプローブA(外径0.7mm)を用いて表面から20μmまでの深さの水分量を測定する。プローブを接続する計測機器としては、HEWLETT PACKARD社製の54750A Digitizing oscilloscope(商品名)を用いた。
先に述べた通り、本発明の生理機能改善器具は、器具が当接された部位の皮膚における角層の水分量が、当接開始から0.5時間後において0.25g/cm3以上となり、且つこの水分量が当接開始から5時間後まで持続する水蒸気の供給能を有する。好ましくは当接開始から0.5時間後において0.25〜0.39g/cm3となり、且つこの水分量が当接開始から5時間後まで持続する水蒸気の供給能を有する。角層の水分量の上限値に特に制限はなく高いほど好ましいが、理論的には人体の皮下組織の水分量である約0.70g/cm3が上限値と考えられる。なお、本発明にいう「生理機能改善器具の当接開始」とは、該器具を発熱可能な状態下において直ちに皮膚に当接させた時点をいう。従って、該器具の発熱が始まってから所定時間経過後に該器具を皮膚に当接させて水分量を測定することは、本発明にいう「生理機能改善器具の当接開始」に該当しない。
角層の水分量を高めるためには、本発明の生理機能改善器具を皮膚に当接させた状態において両者間に形成される空間が十分に湿潤していることが有利である。この観点から、本発明の生理機能改善器具は、測定室内環境20℃にて、該器具が当接された部位において、該器具と皮膚表面との間の湿度が、当接開始から0.5時間において50%RH以上となり、且つこの湿度が当接開始から5時間後まで持続する水蒸気発生能を有していることが好ましい。更に好ましくは前記の湿度は60%RH以上であり、一層好ましくは70%RH以上である。この湿度の値は高ければ高いほど好ましい(従って湿度の上限値は理想的には100%RHとなる)。なお、以下の説明において生理機能改善器具と皮膚表面との間の湿度というときには、室内温度20℃、湿度40%RHの測定環境下における値をいう。
更に、生理機能の改善効果と人体への安全性及び使用時の心地よさを考慮すると、本発明の生理機能改善器具は、該器具が当接された部位の皮膚表面温度が、該器具の当接開始から1時間以内に38℃以上42℃未満となる水蒸気の発生能と発熱能を有していることが好ましい。
生理機能を効果的に改善させる観点から、本発明の生理機能改善器具は、水蒸気発生の持続時間が長いことが好ましい。具体的には、生理機能改善器具は、自律神経を副交感神経優位にすることで生理機能を改善する観点から、水蒸気の発生能を好ましくは2時間以上、更に好ましくは2〜12時間、一層好ましくは3〜6時間有する。これに加えて、本発明の生理機能改善器具を体表に当接させた状態下で2〜12時間、特に3〜6時間にわたり、皮膚表面温度を38℃以上42℃未満、特に38℃以上41℃未満に維持し得る水蒸気の発生能と発熱能を有していることが好ましい。
皮膚表面温度の測定は、以下の方法にて行った。測定環境は、20℃40%RHとした。この環境下に、被験者に測定機器を装着し30分間安静にさせた。皮膚表面温度は、被験者の腰部に装着した生理機能改善器具における発熱体直下の位置で測定した。皮膚表面温度(発熱体直下)は体温モニター(コアテンプCM−210:テルモ株式会社製、体表温度プローブ:PDK161、深部温度プローブ:PD1)を用いて測定した。
次に、本発明の生理機能改善器具の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。図3には本発明の生理機能改善器具の一実施形態としての蒸気温熱シート1が示されている。図4は図3におけるIII−III線断面図である。図3に示す蒸気温熱シート1は扁平な矩形状であり、発熱部2及び該発熱部2を収容する収容体3を備えている。収容体3は扁平な袋状のものであり、複数のシート材の周縁を貼り合わせて、内部が空洞の袋状となされている。収容体3は少なくともその一部が透湿性を有する通気性部位となっている。
発熱部2が被酸化性金属の酸化反応を利用したものである場合、該発熱部2は、被酸化性金属、反応促進剤、電解質及び水を含む発熱粉体又は発熱シートからなる。尚、発熱シートは温度分布を均一化する事が容易であり、また、粉体担持能力が優れているため、人体が動いても発熱体が移動せず、低温やけどを防止出来るため、発熱粉体よりも好ましい。発熱部2が空気と接触すると、該発熱部2に含まれている被酸化性金属の酸化反応が起こり、熱が発生する。この熱によって発熱部2に含まれている水が加熱されて所定温度の水蒸気となり、収容体3を通じて外部へ放出される。ここで、発熱シートは、抄紙からなるものや、発熱粉体を紙等で挟持してなる積層体等が挙げられる。体への密着性、水蒸気を均一に発生させる観点から抄紙がより好ましい。
発熱部2が発熱粉体からなる場合には、発熱粉体は被酸化性金属、反応促進剤、保水剤、電解質及び水を含んで構成されていることが好ましい。本発明者らが検討したところ、これらの各種材料のうち、前述した蒸気温熱シート1の水蒸気発生能に大きく影響する材料は、被酸化性金属、反応促進剤及び保水剤であることが判明した。詳細には、発熱粉体に含まれる被酸化性金属の量が好ましくは20〜50重量%、更に好ましくは25〜40重量%、反応促進剤の量が好ましくは3〜25重量%、更に好ましくは5〜20重量%、保水剤の量が3〜25重量%、更に好ましくは5〜20重量%であることが重要である。これらの材料の量が前述の範囲にあると、所望の水蒸気発生能が期待できる。更に、発熱粉体に含まれる電解質の量が0.3〜10重量%、更に好ましくは0.5〜5重量%で、水の量が20〜70重量%、更に好ましくは30〜60重量%であることも、所望の水蒸気発生能を発言させるために重要である。
一方、発熱部2が発熱シートからなる場合には、発熱シートは被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物、電解質及び水を含む繊維シートから構成されていることが好ましい。つまり、発熱シートは、被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物及び電解質を含む繊維シートが含水状態となっているものであることが好ましい。特に、発熱シートは、被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物を含有する成形シートに、電解質水溶液を含有させて構成されていることが好ましい。
本発明者らが検討したところ、発熱部2が発熱シートからなる場合には、蒸気温熱シート1の水蒸気発生能に大きく影響する材料は、成形シートに含まれる被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物であることが判明した。詳細には、成形シートに含まれる被酸化性金属の量が好ましくは60〜90重量%、更に好ましくは70〜85重量%、反応促進剤の量が好ましくは5〜25重量%、更に好ましくは8〜15重量%、繊維状物の量が好ましくは5〜35重量%、更に好ましくは8〜20重量%であることが重要である。これらの材料の量が前述の範囲にあると、所望の水蒸気発生能が期待できる。
蒸気温熱シート1の水蒸気発生能に影響する他の重要な要因としては、発熱シートにおける電解質水溶液の濃度及び電解質水溶液の添加量が挙げられる。詳細には、発熱シートにおける電解質水溶液の濃度は好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは2〜10重量%である。電解質水溶液の濃度が1重量%未満であると所望とする温度が得られない場合がある。15重量%超となると顕著な効果の向上は期待できない。また電解質水溶液は、成形シート100重量部に対して好ましくは40〜80重量部、更に好ましくは45〜65重量部添加される。添加量が40重量部未満では所望とする温度の持続が達成されない場合がある。また所望とする蒸気発生量が得られない場合もある。80重量部超では、所望とする温度が得られない場合がある。
発熱部2が発熱粉体からなるか、或いは発熱シートからなるかを問わず、蒸気温熱シート1の水蒸気発生能に影響する他の大きな要因として、収容体3の透湿度(JIS Z0208、40℃、90%RH、以下透湿度というときにはこの方法で測定された値をいう)が挙げられる。発熱部2として前述の各成分を前述の配合量で含有したものを用い、且つ収容体3として以下に述べる透湿度を有するものを用いることで、蒸気温熱シート1の水蒸気発生能を所望のものとすることができる。詳細には、収容体3のうち、通気性を有する部分の透湿度を好ましくは300〜2000g/(m2・24hr)、更に好ましくは600〜1000g/(m2・24hr)とする。通気性を有する部分の透湿度が300g/(m2・24hr)未満であると、所望とする蒸気放出量が達成されない場合がある。2000g/(m2・24hr)超であると、所望とする温度の持続時間が達成できない場合がある。
水蒸気の適切な温度制御及び所望とする温度での水蒸気の発生持続時間を得る観点から、収容体3はその通気性を有する部分の通気度(JIS P8117、以下通気度というときにはこの方法で測定された値をいう)が8000〜15000s/100cm3であることが好ましく、9000〜12000s/100cm3であることが更に好ましい。
図3及び図4に示すように、本実施形態の蒸気温熱シート1においては、収容体3は、透湿性フィルム3aと難透湿性フィルム3bとの周縁が互いに接合されて扁平な袋状に形成されている。つまり収容体3の一方の側が透湿性フィルム3aを有しており、他方の側が難透湿性フィルム3bを有している。透湿性フィルム3aは、発熱シート2から発生した水蒸気を通過させる。しかし難透湿性フィルム3bは水蒸気を通過させにくい。つまり水蒸気は収容体3の一方の側、即ち透湿性フィルム3aの側から多量の水蒸気が外部へ放出される。透湿性フィルム3aの透湿度及び通気度は、前述した範囲となっている。これによって蒸気温熱シート1はその水蒸気発生能が前述した所望のものとなる。
透湿性フィルム3aとしては、水蒸気は透過させるが水は透過させにくいフィルムが用いられる。そのようなフィルムとしては、例えば微細孔を有するポリオレフィン系フィルムなどが挙げられる。このようなフィルムは例えば使い捨ておむつや生理用ナプキンなどのサニタリー製品における透湿性バックシートとして良く知られたものである。なお前述した通り水蒸気は透湿性フィルム3aを通じて外部へ放出されることから、本実施形態の蒸気温熱シート1は、透湿性フィルム3aの側が人体と対向するように装着される。そこで装着感を高める観点から、図3及び図4に示すように、透湿性フィルム3aの外面には風合いの良好なシート材料であるエアスルー不織布等の不織布3cが配されている。従って、蒸気温熱シート1の使用時には不織布3cが身体に対向することになる。
先に述べた通り、本実施形態の蒸気温熱シート1は、発熱部2と体表との間にシートを介在させて、該蒸気温熱シート1を体表に当接させた状態下に水蒸気を供給する。本実施形態において、このシートに相当する部材は、透湿性フィルム3a及び不織布3cである。これらの部材は、蒸気温熱シート1の発熱部2への空気の供給量を制御する機能と、蒸気温熱シート1で発生した熱及び水蒸気を体表に伝達する機能を有している。本実施形態においては、透湿性フィルム3a及び不織布3cの総厚みを0.05〜1.5mmとすることが、空気の安定供給及び熱の皮膚(体表)への効率的な伝播の点から好ましい。総厚みがこの範囲内に入ることを条件として、透湿性フィルム3aの厚みは0.01〜0.1mmであることが好ましく、不織布3cの厚みは0.03〜0.5mmであることが好ましい。
一方、難透湿性フィルム3bとしては、水蒸気も水も透過させにくいフィルム、例えば微細孔を有しないポリオレフィン系フィルムやポリエステル系フィルムなどが用いられる。なお図4に示すように、難透湿フィルム3bの外面には、蒸気温熱シート1の風合いを向上させる目的で、エアスルー不織布等の不織布3dがラミネートされている。
発熱部2が発熱粉体からなる場合には、該発熱粉体に含まれる各材料の詳細について説明すると、被酸化性金属としては例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の粉末や繊維が挙げられる。これらの中でも取り扱い性、安全性、製造コストの点から鉄粉が好ましく用いられる。被酸化性金属が粉末である場合その粒径は0.1〜300μmであることが、繊維状物への定着性、反応のコントロールが良好なことから好ましい。同様の理由により、粒径が0.1〜150μmものを50重量%以上含有するものを用いることも好ましい。
反応促進剤としては、水分保持剤として作用する他に、被酸化性金属への酸素保持/供給剤としての機能も有しているものを用いることが好ましい。例えば活性炭(椰子殻炭、木炭粉、暦青炭、泥炭、亜炭)、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、ゼオライト、パーライト、シリカ等が挙げられる。これらの中でも保水能、酸素供給能、触媒能を有する点から活性炭が好ましく用いられる。反応促進剤の粒径は0.1〜500μmであることが、被酸化性金属と効果的に接触し得る点から好ましい。同様の理由により、0.1〜200μmのものを50重量%以上含有するものを用いることも好ましい。
保水剤としては、繊維状物質、吸水性ポリマー、バーミキュライト、ケイ酸カルシウム、シリカゲル、アルミナ等が挙げられる。これらの中でも、保持性が高く、また生産性に優れる点から吸水性ポリマーを用いることが好ましい。
前記繊維状物としては、天然又は合成の繊維状物を特に制限無く用いることができる。天然繊維状物としては、例えばコットン、カボック、木材パルプ、非木材パルプ、落花生たんぱく繊維、とうもろこしたんぱく繊維、大豆たんぱく繊維、マンナン繊維、ゴム繊維、麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻、椰子、いぐさ、麦わら等の植物繊維が挙げられる。また羊毛、やぎ毛、モヘア、カシミア、アルカパ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ、シルク、羽毛、ダウン、フェザー、アルギン繊維、キチン繊維、ガゼイン繊維等の動物繊維が挙げられる。更に、石綿等の鉱物繊維が挙げられる。一方、合成繊維状物としては、例えばレーヨン、ビスコースレーヨン、キュプラ、ビスコースレーヨン、キュプラ、アセテート、トリアセテート、酸化アセテート、プロミックス、塩化ゴム、等の半合成繊維が挙げられる。またナイロン、アラミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアクリロニトリル、アクリル、ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン等の合成高分子繊維が挙げられる。これらの中でも、被酸化性金属や反応促進剤との定着性、発熱シート2の柔軟性、酸素透過性、製造コスト等の点から、木材パルプ、コットン、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維が好ましく用いられる。繊維状物はその平均繊維長が0.1〜50mm、特に0.2〜20mmであることが、発熱シートの強度確保及び繊維状物の水分散性の点から好ましい。
電解質としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物又は水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点からアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の塩化物が好ましく用いられ、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄が好ましく用いられる。
発熱体2が発熱シートである場合、該発熱シートの製造方法に特に制限はない。先に述べた通り、発熱シートは、被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物を含有する成形シートに、電解質水溶液を含有させてなるものであるから、先ず被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物を含む成形シートを形成し、この成形シートに電解質水溶液を添加することで発熱シートが得られる。成形シートの製造には例えば本出願人の先の出願に係る特開2003−102761号公報に記載の湿式抄造法や、ダイコーターを用いたエクストルージョン法を用いることができる。特に、製造コストや生産性の点から湿式抄造法を用いることが好ましい。湿式抄造法を行う場合には、円網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などを用いることができる。抄造に用いられるスラリーは、被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物及び水を含むものであり、その濃度は、0.05〜15重量%、特に5〜12重量%であることが好ましい。
成形シート(つまり含水前の状態の発熱シート)はその1枚の厚みが0.1mm〜2mm、特に0.15〜1.5mmであることが、成形シートの機械的強度を維持しつつ成形シートが柔軟になり、蒸気温熱シート1が身体の適用部位へフィットしやすくなる点から好ましい。また、発熱分布が均一になることから好ましい。更に、この範囲の厚みとすることで、蒸気温熱シート1を身体に適用した場合に、着衣の外側から該蒸気温熱シート1が目立たちにくくなる。同様の理由により成形シートは、その坪量が10〜1000g/m2であることが好ましく、50〜600g/m2であることがより好ましく、100〜500g/m2であることが更に好ましい。
成形シートは、そのままの状態で複数枚を重ねて使用してもよく、或いは1枚のシートを折りたたみ、折り畳まれた複数枚の成形シートを重ねて使用してもよい。湿熱シート1の面積に対する成形シートの重量比は、所望の温度持続が達成でき、フィット性が良好で、また製造上の問題が起こりにくい点から、好ましくは0.03g/cm2〜0.17g/cm2であり、更に好ましくは0.06g/cm2〜0.14g/cm2である。同様の理由により、被酸化性金属の単位面積あたりの重量の比は好ましくは0.02g/cm2〜0.14g/cm2であり、更に好ましくは0.04g/cm2〜0.12g/cm2である。
成形シートに電解質水溶液を含有させて発熱シートを得る。この工程は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。電解質水溶液を含有させるには例えば、スプレー塗工法、刷毛等で塗工する方法、電解質水溶液に浸漬する方法、グラビアコート法、リバースコート法、ドクターブレード法等が挙げられる。電解質水溶液における電解質の濃度及び電解質の水溶液の付与量は、得られる発熱シートにおける電解質の量及び水の含有量が、先に述べた範囲となるように調整される。
発熱部2が発熱粉体であるか、或いは発熱シートであるかを問わず、発熱部2は、収容体3内に収納される。これによって蒸気温熱シート1が得られる。蒸気温熱シート1は酸素バリア性の材料からなる包装袋内に密封されて、最終製品である湿熱シート入り包装袋となされることが好ましい。蒸気温熱シート1の使用に際しては、包装袋から該蒸気温熱シート1を取り出すことで、該蒸気温熱シート1に含まれる被酸化性金属が空気中の酸素と反応し、発熱が始まると共に水蒸気が発生する。酸素バリア性の材料としては、例えばその酸素透過係数(ASTM D3985)が10cm3・mm/(m2・d・MPa)以下、特に2cm3・mm/(m2・d・MPa)以下であるようなものが好ましい。具体的にはエチレン−ビニルアルコール共重合体やポリアクリロニトリル等が挙げられる。
蒸気温熱シート1を包装する包装袋には、該蒸気温熱シート1が、人体の生理機能の改善のために用いられるものである旨の表示が付されていることが好ましい。例えば、身体の任意の部位に適用することにより、当該部位の深部温度が上昇し血流量が増加して血行が促進される旨の表示や、末梢温度が上昇して冷え性や神経痛の緩和が緩和される旨の表示を付すことができる。更に、生理開始日の少なくとも前日から腹部及び/又は腰部に適用することで、生理開始日以降の生理痛が緩和される旨の表示を付すこともできる。これによって、消費者に対して、従来知られていた一般の使い捨てカイロでは達成し得なかった生理機能の改善効果が、本発明によって達成されることを知らせることができる。従って消費者は、本発明の改良された性能の十分な価値を容易に認識することになる。前記の表示には、文字はもちろんのこと、記号や図形等、本発明の改良された性能を消費者に伝え得るあらゆる情報手段が含まれる。また前記の表示には、本発明が、他の製品に比して優れている旨の情報を含めることができる。更に、前記の表示を包装袋に付すことに加えて、又はそれに代えて、当該表示を含む指示書を、蒸気温熱シート1と共に包装袋の中に入れてもよい。或いは、蒸気温熱シート1そのものに、当該表示を付してもよい。
本実施形態の蒸気温熱シート1は、これを例えば図5(a)及び(b)に示すようなベルト状の保持具に保持させ、該保持具を人体に固定することによって、該蒸気温熱シート1を人体に適用することができる。図5(a)及び(b)に示す保持具10は、蒸気温熱シート1の収容保持が可能な矩形状の収容部12を中央に有し、その両側からそれぞれ延出した一対の腕部である第1腕部13a及び第2腕部13bを備えている。第1腕部13aと第2腕部13bとは対称形になっている。第1及び第2腕部13a,13bは、保持具10の長手方向に延びる水平線Hに対して、角度θの方向に向けて傾斜して延びている。
第1腕部13aの肌面側(図5(a)における紙面側)の先端部には、面ファスナのフック部材のような止着手段15が取り付けられている。一方、第2腕部13bの外面側(図5(a)における紙面と反対側)には、止着手段15の止着が可能な被着手段(図示せず)、例えば面ファスナのループ部材が取り付けられている。
第1及び第2腕部13a,13bは、収容部12寄りに位置する基部14aと先端部寄りに位置する自由端部14bとから構成されている。基部14aは、収容部12から自由端部14bに向けてその幅が漸減している。基部14aの幅が変化しなくなった箇所において、基部14aと自由端部14bとが連接している。基部14aは、腕部13a,13bの延びる方向とそれに直交する方向の双方(図5(a)中、矢印で示す方向)に伸縮性を有していることが好ましい。この観点から、基部14aは、いわゆるツーウエイの伸縮布地から構成されていることが好ましい。
外面側シート材21は、風合いの良好な布地から構成されていることが好ましい。また外面側シート材21は、十分な通気性を有することが好ましい。外面側シート材21は、例えばトリコット編みの編地から構成することができる。同様に、第1及び第2肌面側シート材22,23も、風合いの良好な布地から構成されていることが好ましい。また第1及び第2肌面側シート材22,23は十分な水蒸気透過性を有する素材から構成されていることが好ましい。そのような素材としては、例えばメッシュ状の編地が好ましく用いられる。
収容部12は、3枚のシート材21,22,23を縫製して袋状に形成されている。外面側シート材21は保持具10の外面側に位置しており、矩形状をしている。第1肌面側シート材22及び第2肌面側シート材23は、保持具10の肌面側に位置しており、それぞれ矩形状をしている。両肌面側シート材22,23の横幅は、外面側シート材21と同じになっている。両肌面側シート材22,23の縦の長さは、外面側シート材21の縦の長さよりも短くなっている。第1肌面側シート材22は、その上辺及び両側辺が、外面側シート材21の上辺及び両側辺と縫合されている。第2肌面側シート材23は、その下辺及び両側辺が、外面側シート材21の下辺及び両側辺と縫合されている。第1肌面側シート材22の下部と、第2肌面側シート材23の上部とは重ね合わせの状態になっており、且つ第1肌面側シート材22の下辺22a及び第2肌面側シート材23の上辺23aがそれぞれ自由縁部になっている。これによって収容部12には、その肌面側に、収容部2の幅方向に延びる蒸気温熱シート1の挿入部24が形成される。蒸気温熱シート1は、該挿入部24を通じて収容部12内に収容される。上述した通り、第1肌面側シート材22の下部と、第2肌面側シート材23の上部とは重ね合わせの状態になっているので、収容部12内に一旦収容された状態の蒸気温熱シート1は収容部12の外へ飛び出しづらくなり、収容部12内に安定に保持される。また、挿入部24の間口が大きく且つ開けやすいので、蒸気温熱シート1の出し入れが容易である。
保持具10に収容保持された蒸気温熱シート1は、図6(a)及び図6(b)に示すように、例えば人体の腰部や腹部に適用される。保持具10を人体に固定するには、保持具10を胴部に巻き付け、第1腕部13aに取り付けられた止着手段(図示せず)を、第2腕部13bに取り付けられた被着手段(図示せず)へ止着する。この場合には、蒸気温熱シート1は、保持具10における水蒸気の透過材料である第1肌面側シート材22及び第2肌面側シート材23を介して体表へ接触する。このような使用形態の場合には、蒸気温熱シート1における発熱部2と体表との間に介在するシートは、先に述べた透湿性フィルム3a及び不織布3c、並びに保持具における第1及び第2肌面側シート材22,23である。従って、これらの部材の総厚みを0.05〜1.5mmとすることが、先に述べた理由により好ましい。総厚みがこの範囲内に入ることを条件として、第1及び第2肌面側シート材22,23の厚みは1.4mm以下であることが好ましい。
蒸気温熱シート1を人体に装着させるための別法として、蒸気温熱シート1を体表へ直接接触させることもできる。その場合には、図7に示すように、蒸気温熱シート1における難透湿性フィルム3bの側の表面に粘着剤Nを塗布しておき、該蒸気温熱シート1を保持具10における収容部12の肌面に粘着させる。つまり、蒸気温熱シート1を収容部12内に収容させないでおく。そして蒸気温熱シート1が粘着した保持具10を身体に巻き付け固定する。或いは、保持具10に粘着させることに代えて、蒸気温熱シート1における粘着剤Nを使用者の下着に粘着させてもよい。
粘着剤によって蒸気温熱シートを着用者の肌に直接貼り付けることもできる。その場合には、例えば図8に示す構成の蒸気温熱シート1を用いることができる。同図に示す蒸気温熱シート1は、発熱部2及び該発熱部2を収容する収容体3を備えている。収容体3は扁平であり、閉じた形状の接合部4が形成されるように複数のシート材を貼り合わせ、該接合部4の内部に閉じた空間を形成した袋状のものである。この閉じた空間が発熱部2の収容部5になっている。
図9に示すように、収容体3においては、第1の透湿性シート3aと第2の透湿性シート3bとが接合部4において互いに接合されている。第2の透湿性シート3bの外面には風合いの良好なシート材料である不織布3cが配されている。第1の透湿シート3aの外面には、不織布3dが配されている。第2の透湿性シート3bと不織布3cとはほぼ同寸である。第1の透湿シート3aと不織布3d、第2の透湿性シート3bと不織布3cは、それらの周縁でのみ接合されていても良いし、シート面内で部分的に接合されていても良い。第1の透湿性シート3a及び不織布3dは、発熱具1の使用時に、使用者の肌から遠い側に位置する第1の通気層10aとして作用するものである。一方、第2の透湿性シート3b及び不織布3cは、使用者の肌に近い側に位置する第2の通気層10bとして作用するものである。つまり本実施形態の蒸気温熱シート1は、両面通気性のものであり、第2の透湿性シート3b及び不織布3dの側が肌と対向するように使用者の身体に固定される。なお、本実施形態においては、第1の通気層10aは第1の透湿性シート3a及び不織布3dからなり、第2の通気層10bは第2の透湿性シート3b及び不織布3cからなるが、第1及び2の通気層10a,10bはそれぞれ透湿性シート3a、3bのみで構成されていてもよい。
収容体3は、長手方向に延びる側縁S1及びS2を有している。また幅方向に延びる端縁E1及びE2を有している。一方の側縁S1は、収容体3の縦中心線Lに対して外向きの凸状となるような曲線形状をしている。他方の側縁S2は、縦中心線Lに向かう内向きの凸状となるような曲線形状をしている。端縁E1,E2はそれぞれ外向きの凸状となるような曲線形状をしている。これら側縁S1,S2及び端縁E1,E2は滑らかに連接しており、収容体全体としてみると湾曲した長円形となっている。
第1の透湿性シート3a及び不織布3dは、収容体3の長手方向において、収容部5を囲繞する接合部4から外方に延出しており一対の耳部6,6を形成している。耳部6は、接合部4寄りに位置する基部6aと、先端寄りに位置し且つ基部6aと連接する先端部6bとから構成されている。
各先端部6bにおける第2の透湿性シート側の面上、即ち肌に近い側の面上には、蒸気温熱シート1を使用者の身体に固定するための固定部7が設けられている。固定部7は、発熱材料2の収容部5よりも外方の位置(周縁部)に設けられている。固定部7は2カ所設けられており、各固定部7は、収容体3の縦中心線L上にそれぞれ設けられている。
固定部7としては、蒸気温熱シート1を使用者の身体に固定可能な様々な手段を用いることができる。典型的には、先端部6bに粘着剤を施すことによって固定部7を形成することができる。粘着剤としては、当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを用いることができる。例えばゴム系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は非転着性であることが好ましい。
発熱部2の収容部5と固定部7との間の位置、即ち耳部7の基部6aは伸長可能になっている。基部6aは、2つの固定部7,7を結ぶ方向、つまり縦中心線Lの方向に伸長可能になっている。本実施形態においては、基部6aに多数のスリット8を形成することによって基部6aを伸長可能にしてある。基部6aにおいて、各スリット8は縦中心線Lと交差する方向に延びている。これによって、蒸気温熱シート1をその長手方向に引っ張ると、スリット8が開口して基部6aが伸長する。その結果、蒸気温熱シート1を使用者の身体に取り付けた場合、使用者の動作に基部6aが追従して伸長し、使用者につっぱり感を与えにくくなる。また固定部7が身体から外れにくくなる。図18においては、スリット8は縦中心線Lと直交する方向に延びているが、スリット8が縦中心線Lと交差していれば直交する必要はない。尤も、基部6aの伸長性を考慮すると、スリット8と縦中心線Lとのなす角度は直角に近いほど好ましい。
〔実施例1〕
図3及び図4に示す実施形態の生理機能改善器具(蒸気温熱シート)を、以下の手順で作製した。
<シート状発熱部の調製>
原料組成物配合
・繊維状物:パルプ繊維(NBKP、製造者:フレッチャー チャレンジ カナダ、商品名「Mackenzie」、CSF140ml)8重量%
・被酸化性金属:鉄粉(同和鉄粉鉱業(株)製、商品名「RKH」)84重量%
・反応促進剤:活性炭(日本エンバイロケミカル(株)製、商品名「カルボラフィン」)8重量%
前記原料組成物の固形分(繊維状物、被酸化性金属及び反応促進剤の合計)100重量部に対し、カチオン系凝集剤であるポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC(株)製、商品名「WS4020」)0.7重量部およびアニオン系凝集剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製、商品名「HE1500F」0.18重量部を添加した。更に、水(工業用水)を、固形分濃度が12重量%となるまで添加し、スラリーを得た。
<抄造条件>
前記スラリーを用い、これを抄紙ヘッドの直前で0.3重量%に水希釈し、傾斜型短網抄紙機によって、ライン速度15m/分にて抄紙して湿潤状態の成形シートを作製した。
<乾燥条件>
成形シートをフェルトで挟持して加圧脱水し、そのまま140℃の加熱ロール間に通し、含水率が5重量%以下になるまで乾燥した。乾燥後の坪量は450g/m2、厚さは0.45mmであった。このようにして得られた成形シートの組成を熱重量測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6200)を用いて測定した結果、鉄84重量%、活性炭8重量%、パルプ8重量%であった。
<発熱シートの作製>
得られた成形シートを80mm×100mmに切り取り、2枚を重ね合わせ、成形シート100重量部に対し電解液量が50重量部となるように、下記電解液を注入した。毛管現象を利用して成形シート全体に電解液を浸透させて発熱シート(シート状の発熱部)を得た。
<電解液>
電解質:精製塩(NaCl)
水:工業用水
電解液濃度:5重量%
<収容体への収容>
炭酸カルシウムを含有するポリエチレン製の透湿性フィルム(透湿度800〜1200g/(m2・24hr)、通気度10000±2000s/100cm3)、線状低密度ポリエチレン製の難透湿性フィルム及びエアスルー不織布を用いて図3及び図4に示す袋状の収容体を作製した。この中に2枚重ねにした発熱シートを収容して、図3及び図4に示す蒸気温熱シートを得た。水蒸気放出面積は0.016m2であった。
〔比較例1〕
収容体として、炭酸カルシウムを含有するポリエチレン製の透湿性フィルム(透湿度800〜1200g/(m2・24hr)、通気度10000±2000s/100cm3)を2枚重ねたものと、線状低密度ポリエチレン製の難透湿性フィルム及びエアスルー不織布を重ねたものの四辺を接合して袋状の収容体を作製した。収容体内には、実施例で用いた発熱シート(2枚重ね)と同様のものを収容した。このようにして乾熱タイプの発熱シートを得た。
実施例1で得られた蒸気温熱シートを被験者(30歳代の男性)の左腰部に5時間適用した。また比較例1で得られた乾熱タイプの発熱シートを同被験者の右腰部に5時間適用した。実施例1で得られた蒸気温熱シートについては、透湿性フィルムの側が、皮膚に対向するように適用した。比較例1で得られた乾熱タイプの発熱シートについては、難透湿性フィルム及びエアスルー不織布の側が、皮膚に対向するように適用した。適用環境温度は20±1℃とした。この間における被験者の角層水分量、シートと皮膚表面との間の湿度、及び皮膚表面温度を以下の方法で測定した。
その結果、実施例1で得られた蒸気温熱シートについては、適用して約15−20分後に蒸気温熱シートと皮膚表面間の湿度は80%RHとなり、この値が5時間継続した。また、角層の水分量は、適用前が約0.16−0.17g/cm3であったが、適用から30分後に0.25g/cm3以上となり、以後5時間まで0.26−0.32g/cm3の値を示した。適用部の皮膚表面温度は、適用から30分後より5時間まで、38−39℃であった。
一方、比較例1で得られた乾熱タイプの発熱シートについては、適用して約15−20分後に発熱シートと皮膚表面間の湿度は40%RHとなり、この値が5時間継続した。また、角層の水分量は、適用前が約0.16−0.17g/cm3であったが、適用から10分後に約0.20g/cm3となり、以後5時間まで0.20−0.24g/cm3の値を示した。適用部の皮膚表面温度は、適用から30分後より5時間まで、38−39℃であり、実施例1と同程度の温度であった。
測定結果のグラフを図10ないし図12に示す。
<角層の水分量の測定>
皮膚の角層部分(深さ約20μm)の水分含有量をTDR法で測定した。本測定方法は、「A method of measuring surface permittivity by microwave dielectric analysis」 S.Natio and M.Hoshi;Rev.Sci.Instrum.Vol.67,No.10,3633-3641(1996) によるものである。測定環境は、室内温度20℃、湿度40%RHとした。各測定時間(適用5分後、10分後、30分後、60分後、120分後、180分後、240分後、300分後)の測定20分前に、被験者を上述の環境に調整された環境室に入室させた。角層の水分量測定の際には、被験者の皮膚からシートを剥がし、測定プローブを皮膚表面に当てて素早く操作を行った。測定位置はシート中心部から上方に10mm離れた位置及び下方に10mm離れた位置とした。各位置において7回の測定を行った。得られた14点の測定結果の平均値を求め、これを角層の水分量とした。測定後には、直ちにシートを皮膚に当接させた。
<シートと皮膚表面との間の湿度の測定>
湿度センサー(Thermo Recorder TR-72U、温湿度センサTR-3110、T&D社製)をシート適用中心部の皮膚表面にテープで固定した後、シートを皮膚に適用し、適用5時間までの湿度を測定した。
<皮膚表面温度の測定>
温度センサー(データ収集型ハンディタイプ温度計LT−8、皮膚温用センサLT−ST08−12、グラム社製)を、シート適用中心部の皮膚表面にテープで固定した後、シートを皮膚に適用し、適用5時間までの温度を測定した。
〔比較例2〕
サロンシップ温熱用具直貼(商品名、久光製薬社製)を被験者の左腰部に5時間適用した。適用環境温度は20±1℃とした。角層の水分量は、適用前が約0.16−0.17g/cm3であったが、適用30分後に約0.23g/cm3となり、以後5時間まで0.20−0.25g/cm3の値を示した。適用部の皮膚表面温度は、適用から30分後より5時間まで、40−42℃であった。角層の水分量及び皮膚表面温度のグラフを図13(a)及び(b)に示す。
〔比較例3〕
サロンシップ温熱用具直貼(商品名、久光製薬社製)を被験者の左腰部に5時間適用した。但し、通常使用では皮膚非対向面となる側が皮膚に対向するように適用した。つまり、通常使用とは表裏を反対にして適用した。適用環境温度は20±1℃とした。角層の水分量は、適用前が約0.16−0.17g/cm3であったが、適用30分後に約0.20g/cm3となり、以後5時間まで0.16−0.24g/cm3の値を示した。適用部の皮膚表面温度は、適用から30分後より5時間まで、34−38℃であった。角層の水分量及び皮膚表面温度のグラフを図13(a)及び(b)に示す。
〔比較例4〕
ThermaCare Therapeutic Heat Wraps腰用(商品名、P&G社製)を被験者の左腰部に5時間適用した。適用環境温度は20±1℃とした。角層の水分量は、適用前が約0.15−0.16g/cm3であったが、適用30分後に約0.19g/cm3となり、以後5時間まで0.16−0.29g/cm3の値を示した。適用部の皮膚表面温度は、適用から30分後より5時間まで、37−41℃であった。角層の水分量及び皮膚表面温度のグラフを図14(a)及び(b)に示す。
〔比較例5〕
ThermaCare Therapeutic Heat Wraps腰用(商品名、P&G社製)を被験者の左腰部に5時間適用した。但し、通常使用では皮膚非対向面となる側が皮膚に対向するように適用した。つまり、通常使用とは表裏を反対にして適用した。適用環境温度は20±1℃とした。皮膚角層の水分量は、適用前が約0.14−0.15g/cm3であったが、適用30分後に約0.19g/cm3となり、以後5時間まで0.19−0.26g/cm3の値を示した。適用部の皮膚表面温度は、適用から30分後より5時間まで、35−40℃であった。角層の水分量及び皮膚表面温度のグラフを図14(a)及び(b)に示す。
〔実施例2〕
図8及び図9に示す実施形態の生理機能改善器具(蒸気温熱シート)を、以下の手順で作製した。
<発熱シートの調製>
実施例1と同様にして製造した成形シートを54mm×100mmに切り取り、3枚を重ね合わせ、成形シート100重量部に対し電解液量が45重量部となるように、実施例1と同様の電解液を注入した。毛管現象を利用して成形シート全体に電解液を浸透させて発熱シート(シート状の発熱部)を得た。
<収容体への収容>
図8及び図9に示す透湿性シート3a,3bとして、ポリエチレン製の多孔質透湿性フィルムを用いた。透湿性シート3aの透湿度は150g/(m2・24hr)であった。透湿性シート3bの透湿度は300g/(m2・24hr)であった。第1の透湿性シート3aの外面には、坪量40g/m2のナイロン系不織布3dをラミネートした。第2の透湿性シート3bの外面にも、坪量40g/m2のナイロン系不織布3cを配した。この収容体の中に発熱シートを収容した。
得られた蒸気温熱シートについて、実施例1と同様にして被験者の角層水分量、シートと皮膚表面との間の湿度、及び皮膚表面温度を測定した。その結果、適用して約15−20分後に蒸気温熱シートと皮膚表面間の湿度は80%RHとなり、この値が5時間継続した。また、角層の水分量は、適用前が約0.16〜0.17g/cm3であったが、適用から30分後に0.25g/cm3以上となり、以後5時間まで0.26〜0.32g/cm3の値を示した。適用部の皮膚表面温度は、適用から30分後より5時間まで、38〜39℃であった。
更に、得られた蒸気温熱シートについて、生理痛の緩和効果を次の手順で評価した。
(1)評価1
女子大学生(平均年齢20.2才)を被験者として、生理開始直後の腹痛及び腰痛の程度を、0:痛み無し、1:やや痛い、2:痛い、3:非常に痛いの4段階の中から選択させるアンケートを行った。スコア0の被験者を除外し、スコア1〜3の被験者に対して、アンケート後ただちに蒸気温熱シートを直接肌に適用させた。このとき、腹部に適用させる群(N=12、以下腹部群という)と、腰部に適用させる群(N=15、以下腰部群という)とに分けた。8時間連続して蒸気温熱シートを適用させた後に、腹部群については、腹痛の程度を前記の4段階の中から選択させた。腰部群については、腰痛の程度を前記の4段階の中から選択させた。その結果を、図15に示す。
図15から明らかなように、腹部群及び腰部群の何れにおいても、痛みの緩和の改善が見られた者が、改善の見られない者を大きく上回ることが判る。
(2)評価2
評価1の被験者を二つの群に分けた。第1の群(N=6)では、生理開始日の前日に、蒸気温熱シートを直接腹部の肌に8時間連続して適用させた。翌日、生理開始直後に、腹痛の程度を、評価(1)と同様に4段階のスコアの中から選択させるアンケートを行った。アンケート後ただちに蒸気温熱シートを直接腹部の肌に8時間連続して適用させた。8時間経過後に、腹痛の程度を前記の4段階の中から再び選択させるアンケートを行った。
第2の群(N=6)では、生理開始日の前日には蒸気温熱シートを腹部に適用させなかった。これ以外は第1の群と同様にして、生理開始直後及び蒸気温熱シートを腹部に8時間適用後、前記のアンケートを行った。その結果を図16に示す。
図16に示す結果から明らかなように、生理開始日の前日から蒸気温熱シートを適用すると、生理開始後の蒸気温熱シートを適用した場合に比較して、痛みの緩和の改善の程度が大きくなることが判る。この結果から、生理開始前の少なくとも前日から蒸気温熱シートを適用することで、生理開始日以降の生理痛が効果的に緩和されると言うことができる。
図1(a)は湿熱の熱伝導のモデル図であり、図1(b)は乾熱の熱伝導のモデル図である。 図2は、熱伝導率を測定するためのモデル測定系を示す模式図である。 図3は、本発明の生理機能改善器具の一実施形態としての蒸気温熱シートを示す斜視図である。 図4は、図3におけるIII−III線断面図である。 図5(a)は、図2に示す蒸気温熱シートを収容保持する保持具を示す平面図であり、図5(b)は図5(a)におけるb−b線断面図である。 図6(a)は、図2に示す蒸気温熱シートを腰部に適用した状態を示す図であり、図6(b)は腹部に適用した状態を示す図である。 図7は、本発明の生理機能改善器具の他の実施形態を示す断面図(図4相当図)である。 図8は、本発明の生理機能改善器具の他の実施形態を示す平面図である。 図9は、図8におけるII−II線断面図である。 図10は、実施例1及び比較例1における角層の水分量を示すグラフである。 図11は、実施例1及び比較例1における湿度を示すグラフである。 図12は、実施例1及び比較例1における皮膚表面温度を示すグラフである。 図13(a)は比較例2及び3における角層の水分量を示すグラフであり、図13(b)は比較例2及び3における皮膚表面温度を示すグラフである。 図14(a)は比較例4及び5における角層の水分量を示すグラフであり、図14(b)は比較例4及び5における皮膚表面温度を示すグラフである。 図15は、本発明の生理機能改善器具による生理痛の緩和の効果を示すグラフである。 図16は、本発明の生理機能改善器具による生理痛の緩和の効果を示すグラフである。
符号の説明
1 蒸気温熱シート(生理機能改善器具)
2 発熱部
3 収容体
10 保持具

Claims (7)

  1. 被酸化性金属の酸化反応を利用した発熱部を有し、該発熱部と体表との間にシートを介在させて当接させた状態下に該発熱部から発生する水蒸気を供給するようになされており、生理痛の緩和に用いられる生理機能改善器具であって、
    使用時に使用者の肌から遠い側に位置する第1の通気層と、使用者の肌に近い側に位置し、かつ前記シートとして用いられる第2の通気層とを有する両面通気性の収容体内に前記発熱部が収容されており、
    前記被酸化性金属を前記発熱部の単位面積あたり0.11〜0.14g/cm 2 用い、
    室内温度20℃、湿度40%RHの測定環境下、前記器具が当接された部位の皮膚における角層の水分量が、当接開始から0.5時間後において0.25g/cm3以上となり、且つこの水分量が当接開始から5時間後まで持続する水蒸気の供給能を有し、
    生理開始日の少なくとも前日から、一日のうちの2〜10時間にわたり、腹部及び/又は腰部に適用されて使用されるものである生理機能改善器具。
  2. 室内温度20℃、湿度40%RHの測定環境下、前記器具が当接された部位において、該器具と皮膚表面との間の湿度が、当接開始から0.5時間において50%RH以上となり、且つこの湿度が当接開始から5時間後まで持続し、更に
    室内温度20℃、湿度40%RHの測定環境下、前記器具が当接された部位の皮膚における角層の水分量が、当接開始から0.5時間後において0.25〜0.39g/cm3となり、且つこの水分量が当接開始から5時間後まで持続する水蒸気の供給能を有する請求項1記載の生理機能改善器具。
  3. 前記器具が当接された部位の皮膚表面温度が、当接開始から1時間以内に38℃以上42℃未満となる水蒸気の供給能を有する請求項1又は2記載の生理機能改善器具。
  4. 前記器具の発熱部と体表との間に介在させる前記シートは、該器具の発熱部への空気の供給量を制御する機能と、該器具から発生する熱及び水蒸気を体表に伝達する機能とを有し、該シートの総厚みが0.05〜1.5mmである請求項1ないし3の何れかに記載の生理機能改善器具。
  5. 生理開始日の少なくとも前日から腹部及び/又は腰部に適用することで、生理開始日以降の生理痛が緩和される旨の表示が記載された指示書と共に包装の中に入れられている請求項1ないし4の何れかに記載の生理機能改善器具。
  6. 生理開始日の少なくとも前日から腹部及び/又は腰部に適用することで、生理開始日以降の生理痛が緩和される旨の表示が記載された包装の中にいられている請求項1ないし4の何れかに記載の生理機能改善器具。
  7. 生理開始日の少なくとも前日から腹部及び/又は腰部に適用することで、生理開始日以降の生理痛が緩和される旨の表示が記載されている請求項1ないし4の何れかに記載の人体等の生理機能改善器具。
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