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JP2005206669A - ビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

ビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物 Download PDF

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JP2005206669A
JP2005206669A JP2004013565A JP2004013565A JP2005206669A JP 2005206669 A JP2005206669 A JP 2005206669A JP 2004013565 A JP2004013565 A JP 2004013565A JP 2004013565 A JP2004013565 A JP 2004013565A JP 2005206669 A JP2005206669 A JP 2005206669A
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Japan
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weight
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thermoplastic elastomer
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JP2004013565A
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Gakuji Shin
学治 進
Tatsumi Tsuji
龍美 辻
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Mitsubishi Chemical Corp
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Mitsubishi Chemical Corp
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Publication date
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Abstract


【課題】 柔軟性、押出成形性、表面光沢、及び耐傷付き性の良好なビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】 下記成分(イ)〜(ハ)を含有し、(イ)/(ロ)の重量比が50/50〜95/5であり、かつ(イ)及び(ロ)の合計量100重量部に対して(ハ)が3重量部以上250重量部以下の割合で含まれるビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物。
(イ)原料として、下記一般式(1)
A(B−A)m及び/又は(A−B)n (1)
(式中、Aはビニル芳香族化合物の重合体ブロックを表し、Bはビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体ブロックを表し、mは1〜5、nは2〜5の整数を表す。)
で表されるブロック共重合体であり、全ビニル芳香族化合物単位含有量が50〜80重量%、Bブロックに含有されるビニル芳香族化合物の含有量が20〜60重量%、共役ジエン系化合物由来のビニル結合含量が30〜75%、であるビニル芳香族系ブロック共重合体を水素添加してなる水素添加ビニル芳香族系ブロック共重合体
(ロ)オレフィン系樹脂
(ハ)炭化水素系ゴム用軟化剤
【選択図】 なし

Description

本発明は、柔軟性、押出成形性、機械的強度に優れ、表面光沢が高く、耐傷付き性の良好なビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物に関するものである。
近年、ゴム的な軟質材料であって加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同程度の成形加工性を有する熱可塑性エラストマーが、自動車部品、家電部品、電線被覆、医療用部品、雑貨、履物等の分野で広く用いられている。このような熱可塑性エラストマーの一種として、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物(以下「水添ブロック共重合体」と略記することがある。)に炭化水素油及びオレフィン系重合体を配合したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、これらのビニル芳香族系熱可塑性エラストマーには、耐傷付き性が不十分であり、表面光沢に劣るという問題がある。
特開2002−173574号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、柔軟性、押出成形性、表面光沢、及び耐傷付き性の良好なビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物を提供することを課題とする。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造を有するビニル芳香族系熱可塑性エラストマーとオレフィン系樹脂と炭化水素系ゴム用軟化剤の混合物からなる組成物が前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は、下記成分(イ)〜(ハ)を含有し、(イ)/(ロ)の重量比が50/50〜95/5であり、かつ(イ)及び(ロ)の合計量100重量部に対して(ハ)が3重量部以上250重量部以下の割合で含まれていることを特徴とするビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物、に存する。
(イ)原料として、下記一般式(1)
A(B−A)m及び/又は(A−B)n (1)
(式中、Aはビニル芳香族化合物の重合体ブロックを表し、Bはビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックを表し、mは1〜5、nは2〜5の整数を表す。)で表されるブロック共重合体であり、全ビニル芳香族化合物単位含有量が50〜80重量%、Bブロックに含有されるビニル芳香族化合物の含有量が20〜60重量%、かつ該ブロックの共役ジエン系化合物由来のビニル結合含量が30〜75%、であることを特徴とするビニル芳香族系ブロック共重合体を水素添加(以下「水添」と略記することがある)してなる水素添加ビニル芳香族系ブロック共重合体
(ロ)オレフィン系樹脂
(ハ)炭化水素系ゴム用軟化剤
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は柔軟性、押出成形性、表面光沢、及び耐傷付き性に優れているので、例えば、玩具・運動用具用途、食品包装用途、日用雑貨用途、デスクマット等の文具用途、自動車機能部品用途、自動車内外装用途、土木シートや防水シート等の土木・建築用途、制振用途、AV・家電機器用途、OA・事務機器用途、衣料
・履き物用途、テキスタイル用途、各種カテーテル等の医療用機器用途、紙オムツや生理用品等の衛生用品、化学・鉱工業用資材、包装輸送用資材、農・畜・水産資材等の分野において利用することができる。
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物に用いられる成分(イ)のブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物の重合体ブロックA、及びビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックBからなるものである。
重合体ブロックAに用いるビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、tert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。これらのうちスチレン系化合物、特にスチレンが好ましい。
共重合体ブロックBに用いるビニル芳香族化合物は、前記重合体ブロックAに用いるビニル芳香族化合物と同じものを用いることができる。これらのうちスチレン系化合物、特にスチレンが好ましい。
共重合体ブロックBに用いる共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセン、クロロプレン等が挙げられる。この中で、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
このようなブロック共重合体は、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒等の不活性有機溶媒中、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物、又はこれらと共重合可能な他の単量体とを、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてリビングアニオン重合し、ブロック共重合体(以下「水添前重合体」ともいう)を得た後、該共重合体を水素添加することにより得ることができる。
重合開始剤である有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物等が挙げられ、特にn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物が好ましい。
有機アルカリ金属化合物の使用量については特に限定はなく、必要に応じて種々の量を使用できるが、通常はモノマー100重量%あたり0.02〜15重量%の量で、好ましくは0.03〜5重量%の量で用いられる。
共役ジエン化合物のビニル結合含量の調節は、ルイス塩基、例えばエーテル、アミンなど、具体的にはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル、ブチルエーテル、高級エーテル、またはエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのポリエチレングリコールのエーテル誘導体、アミンとしてはテトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、トリブチルアミンなどの第3級アミンなどを前記有機溶媒と共に用いることにより調節される。
重合は一定温度にコントロールして実施するか、あるいは除熱をしないで上昇温度下に実施してもよい。また、重合温度は、一般に−10℃〜150℃、好ましくは0℃〜120℃である。更に、重合系の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガスをもって置換することが望ましい。重合圧力は、上記重合範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の
範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。
また、ビニル芳香族化合物および共役ジエン系化合物を含有する共重合ブロックを重合する過程において、それら化合物の単量体を重合系に投入する方法としては特に限定されず、一括、連続的、間欠的およびこれらの組み合わせの方法があげられる。更に、ビニル芳香族化合物および共役ジエン系化合物を含有する共重合ブロックを重合するときの、その他の共重合成分の添加量、極性物質の添加量、重合容器の種類等、および上記単量体の投入方法は、得られるビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物の物性が好ましくなるよう選べばよい。
本発明の水添前重合体は、上記の方法でブロック共重合体を得た後、カップリング剤を使用して共重合体分子鎖がカップリング残基を介した共重合体であってもよい。使用されるカップリング剤として、例えばジビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジエチル、ピロメリット酸ジアンヒドリド、炭酸ジエチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、(ジクロロメチル)トリクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、テトラエトキシシラン、テトラクロロスズ、1,3−ジクロロ−2−プロパノンなどが挙げられる。この中で、ジビニルベンゼン、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシランが好ましい。
本発明に用いられる成分(イ)は、上記のようにして得られたブロック共重合体を部分的あるいは選択的に水添を行う。この水添の方法、反応条件については特に限定はなく、通常は、20〜150℃、0.1〜10MPa(ゲージ圧)の水素加圧下、水添触媒の存在下で行うことができる。この場合、水添率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、又は反応時間等を変えることにより任意に選定することができる。水添触媒として通常は、元素周期表Ib、IVb、Vb、VIb、VIIb、VIII族金属のいずれかを含む化合物、例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を用いることができる。具体的には、例えば、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン系化合物、Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒、Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒、Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体、及び水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等が挙げられる。この中で、Ti、Zr、Hf、Co、Niのいずれかを含むメタロセン化合物は、不活性有機溶媒中、均一系で水添反応できる点で好ましい。中でも、Ti、Zr、Hfのいずれかを含むメタロセン化合物が好ましい。特にチタノセン化合物とアルキルリチウムとを反応させた水添触媒は安価で工業的に特に有用な触媒であるので好ましい。尚、上記水添触媒は一種のみを用いてもよく、又は二種以上を併用することもできる。
本発明の水添ブロック共重合体は、水添後、必要に応じて触媒の残渣を除去し、又はフェノール系又はアミン系の老化防止剤を添加した後、水添ブロック共重合体溶液から単離した共重合体を用いることができる。水添ブロック共重合体の単離は、例えば、水添ブロック共重合体溶液にアセトン又はアルコール等を加えて沈殿させる方法、水添ブロック共重合体溶液を熱湯中に撹拌下投入し、溶媒を蒸留除去する方法等により行うことができる。
本発明に用いられ得る成分(イ)中の全ビニル芳香族化合物単位の含有量は50〜70
重量%、好ましくは52〜67重量%、更に好ましくは55〜65重量%である。全ビニル芳香族化合物単位の含有量が70重量%を超えると、該重合体組成物を成形してなる成形体の硬度が高くなる。また、ビニル芳香族化合物単位の含有量が20重量%未満であると、得られた成形体の機械的強度が低下する。
成分(イ)のBブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位の含有量は20〜60重量%、好ましくは30〜50重量%、更に好ましくは35〜40重量%である。ビニル芳香族化合物単位の含有量が20重量%未満であると、得られた成形体の機械的強度が低下するとともに耐傷つき性が劣る。また、60重量%を超えると、成形体の柔軟性が低下するとともに低温性に劣る。
また、重合体ブロックBは、得られるエラストマー組成物に柔軟性を与え、反発弾性を低くするため、ランダム共重合体であるのが好ましい。
成分(イ)における水添前の共役ジエン化合物由来のビニル結合(1,2−及び3,4−ビニル結合)含量は30〜75%、好ましくは40〜75%、更に好ましくは50〜70%である。この割合が30%未満であると、得られた組成物が硬くなるとともに耐傷付き性が劣る。一方、75%を超えると成形体の耐熱性、機械的強度が悪くなる。
成分(イ)のブロック共重合体に占める重合体ブロックAの含有量は、通常、3重量%以上70重量%以下である。重合体ブロックAの含有量が少ないと組成物としての機械的強度や耐熱性が劣る傾向がみられるので、重合体ブロックAの含有量の下限としては、4重量%以上、特に5重量%以上が好ましい。逆に、重合体ブロックAの含有量が多すぎると柔軟性が失われると共に、炭化水素系ゴム用軟化剤がブリードしやすくなるので、重合体ブロックAの含有量の上限としては、50重量%以下、特に30重量%以下が好ましい。
本発明の成分(イ)の水添率は、水添前の共役ジエン化合物由来の二重結合の90%以上、特に95%以上が水添されていることが好ましい。水添率が90%未満の場合、得られた成形体の耐候性が低下する傾向にある。尚、共役ジエン化合物由来の二重結合は側鎖二重結合として1,2−及び3,4−ビニル結合と、主鎖二重結合として1,4−結合とがあるが、それらのうち、少なくとも1,2−及び3,4−ビニル結合は90%以上水添されていることが好ましい。
なお、このブロック共重合体のブロック共重合体における共役ジエンのミクロ構造は、NMRスペクトルを測定し、J.C.Randall,J.Polym.Sci.Polym.Phs.Ed.,Vol.13,901(1975)を参考にして、得られた信号を帰属することにより求めることができる。
成分(イ)の230℃、21.2N荷重で測定したメルトフローレート(以下「MFR」と略記することがある)は、使用する用途に応じて選択されるが、押出成形用途に使用する場合は、0.01〜100g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.05〜50g/10分、特に好ましくは0.05〜15g/10分である。MFRが0.01g/10分未満では、押出成形時の成形機への負荷が過大となり作業性が悪くなる場合があり、また押出成形品の表面が荒れる場合がある。一方、MFRが100g/10分を越えると、押出成型時にドローダウンする等、押出し成形性が劣る場合があり好ましくない。
成分(イ)の重量平均分子量(Mw)は、外観、強度に優れる成形体を得るためには、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量として、3万〜40万であることが好ましく、特に5万〜30万であることが好ましい。重量平均分子量が3万未満では、耐熱性及び耐候性が不十分となる場合がある。また
、該重量平均分子量が40万を超えると、流動性が劣り、外観及び機械的強度が低下する場合がある。
なお、本発明の成分(イ)は、ヒドロキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基等の官能基を該水添ブロック共重合体に導入して、変性水添ビニル芳香族系共重合体として用いることも可能である。
成分(ロ)のオレフィン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンを主成分とするプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体等のプロピレン系樹脂;エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと他のオレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系樹脂;結晶性ポリブテン−1樹脂などが挙げられ、これらのうちプロピレン系樹脂が好ましい。
また、プロピレン系樹脂のメルトフローレート(JIS K7210、230℃、21.2N荷重)は、通常、0.05〜200g/10分であり、好ましくは0.1〜100g/10分である。メルトフローレートが上記範囲外のときには、射出成形性や押出成形性に不具合が生ずるおそれがある。
成分(ハ)の炭化水素系ゴム用軟化剤としては、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系の鉱物油系炭化水素;ポリブテン系、ポリブタジエン系等の低分子量物等の合成樹脂系炭化水素などが挙げられる。鉱物油系炭化水素、特にパラフィン系炭化水素の炭素数が全炭素数の50%を占めるパラフィン系オイルが好ましい。また、鉱物油系炭化水素の重量平均分子量は300〜2,000、特に500〜1,500のものが好ましく、40℃の動粘度は20〜800cSt、特に50〜600cStであるのが好ましく、更に流動点(JIS K2269)は−40〜0℃、特に−30〜0℃であるのが好ましく、引火点(COC法)は200〜400℃、特に250〜350℃であるのが好ましい。
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、上記成分(イ)〜(ハ)を混合することにより製造することができる。成分(イ)/(ロ)の配合割合は、50/50〜95/5である。成分(イ)の割合が上記範囲未満では、ビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物の耐傷付き性及び柔軟性に劣り、逆に成分(イ)の割合が上記範囲超過では耐熱性や射出成形加工性及び押出成形加工性が劣る。(イ)/(ロ)の配合割合としては好ましくは55/45〜90/10、特に好ましくは60/40〜85/15である。
成分(ハ)の組成割合は、成分(イ)及び(ロ)の合計100重量部に対して3〜250重量部である。成分(ハ)の割合が上記範囲未満ではエラストマー組成物としての柔軟性に劣り、上記範囲超過では成分(ハ)がブリードアウトすることがある。成分(ハ)の組成割合は、好ましくは5〜200重量部であり、特に好ましくは7〜150重量部である。
なお、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、架橋剤の存在下で動的熱処理を施したものであってもよい。この処理によりエラストマー組成物の耐熱性や耐油性を向上させることができる。動的熱処理は、成分(イ)をヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等の混合装置を用いて均一に混合した後、ミキシングロール、ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダープラストグラフ、一軸又は二軸押出機等の混練装置を用いて溶融混練することにより行うことができる。
動的熱処理に際しては、架橋剤、架橋助剤を添加してもよい。架橋剤としては、有機過酸化物、硫黄、マレイミド系架橋剤、フェノール系架橋剤、オキシム類及びポリアミン等が挙げられ、これらのうち有機過酸化物、マレイミド系又はフェノール系架橋剤、特に有
機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパーオキシド類;t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類;アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類;ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド類などが挙げられる。
これらのうち、1分間の半減期温度が140℃以上のもの、例えば、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン又は2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が好ましい。
架橋助剤としては、例えば、硫黄、p−キノンジオキシム、p−ジニトロソベンゼン、1,3−ジフェニルグアニジン、m−フェニレンビスマレイミド等の過酸化物架橋用助剤;ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
動的熱処理は、通常、100〜300℃、好ましくは110〜280℃の温度で、通常、10秒〜30分、好ましくは20秒〜20分間加熱混練することにより行う。有機過酸化物は、成分(イ)100重量部に対して、通常、0.1〜3重量部、好ましくは0.1〜1重量部用いる。架橋助剤は、成分(イ)100重量部に対して、通常、5重量部以下、好ましくは0.1〜3重量部用いる。なお、用いる成分(イ)の種類や動的熱処理の温度によって、反応混合物は半溶融状態又は溶融状態となるが、本発明において反応混合物の性状はそれらのいずれでもよい。また、混練に際して、各成分を一括して混練する方法を用いても、また任意の成分を混練した後、他の残りの成分を添加して混練する多段分割混練法を用いてもよい。
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、充填材、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤等の各種添加物;他の熱可塑性樹脂;他のエラストマーなどが挙げられる。これらは、単独で用いても、複数を併用してもよい。
充填材としては、例えば、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、金属石鹸、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂などが挙げ
られる。
他のエラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム等のオレフィン系ゴム;(イ)以外のビニル芳香族系ゴム;ポリブタジエンなどが挙げられる。
他の成分は、成分(イ)に予め含有させておくか、各成分の混合時又は動的熱処理時のいずれかで混合すればよい。
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、例えば射出成形(インサート成型法、二色成型法、サンドイッチ成型法、ガスインジェクション成型法等)、押出成形法、インフレーション成型法、Tダイフィルム成型法、ラミネート成型法、ブロー成型法、中空成型法、圧縮成型法、カレンダー成形法等の成型法により成形、又はその後の積層成形、熱成形等の二次加工によって、単独で又は他の材料との積層体として成形体とすることができる。特に本発明の組成物は耐傷付き性に優れ、傷付き性や成形性や柔軟性が要求される分野で極めて有効なものである。
以下、本発明を実施例を用いて更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で用いた(イ)成分、(ロ)成分、及び(ハ)成分を以下に示す。
<原材料>
成分(イ)
イ−1(実施例で使用);内容積50リットルのオートクレーブに、脱気、脱水したシクロヘキサン25kg、スチレン500gを仕込んだ後、テトラヒドロフラン500g及びn−ブチルリチウム3.5gを加え、50℃から120℃の間で、20分重合反応を行った。反応液の温度を20℃とした後、1,3−ブタジエン2000g及びスチレン2000gを加え除熱をしないで上昇温度下に重合を行った。転化率がほぼ100%になり、重合熱の発生が見られなくなった後、さらにスチレン500gを加え重合を行った。
重合が完結したのち、水素ガスを0.4MPa(ゲージ圧)の圧力で供給し、20分間撹拌し、リビングアニオンとして生きているポリマー末端の対イオンであるリチウムと反応させ、水素化リチウムとして、ポリマーを不活性化した。その後、反応溶液を90℃にし、テトラクロロシラン(1.7g)を添加し、約20分間撹拌した後、チタノセン化合物を主体とした水添触媒を加え、水素圧1.0MPaで2時間水添反応を行った。
得られた水添前重合体、及び水添ブロック共重合体を、1H−NMR、GPC、IRで分析し以下の値を得た。
全ビニル芳香族化合物単位含有量:58重量%
Bブロックに含有されるビニル芳香族化合物の含有量:40重量%
共役ジエン系化合物由来のビニル結合含量:56%
水素添加率:99%
重量平均分子量:118,000
イ−2(比較例);クレイトンポリマー社製「クレイトンG1651」分析値を以下に記す。
全ビニル芳香族化合物単位含有量:33重量%
Bブロックに含有されるビニル芳香族化合物の含有量:0重量%
共役ジエン系化合物由来のビニル結合含量:39%
水素添加率:99%
重量平均分子量:245,000
成分(ロ);プロピレン重合体樹脂(メルトフローレート:0.9g/10分)
成分(ハ);パラフィン系オイル(重量平均分子量:540、出光興産社製「PW90」)。
<評価方法>
熱可塑性エラストマー組成物の評価は、以下の(1)〜(7)の方法により実施した。(1)MFR:JIS K7210準拠(230℃、荷重5kg)
(2)硬度:JIS K6253準拠(JIS−A)
得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを、200℃、9.8MPaにてプレス成形して得られたシート(横200mm、縦200mm、肉厚2mm)を使用した(以下(6)まで同じ)。
(3)光沢:JIS Z8741準拠
(4)引張破壊強さ:JIS K6251準拠(3号ダンベル、テストスピード500mm/min)
(5)耐傷付き性:
(株)東洋精機社製(テーバースクラッチテスタ)を用いて、シート表面をタングステンカーバイド製のカッターで、荷重700gにて引っ掻いた後、目視にて表面を観察し下記の3段階で評価した。
○…傷付かない
△…殆ど傷付かない
×…傷が付く
(6)耐摩耗性:
(株)YASUDA社製のNO.0428学振型摩耗堅牢度試験機を用いて、シート表面を約5cm×5cmの大きさの白綿布(カナキン3号)にて、荷重500gにて、100往復させた後、目視にて表面を観察し下記の3段階で評価した。
○…傷付かない
△…殆ど傷付かない
×…傷が付く
(7)押出成形性:
アイ・ケー・ジー株式会社製の40mmφパイプ成形機(フルフライトタイプスクリュウ、L/D=28)のパイプダイから、シリンダー温度190℃、ダイス温度190℃、スクリュウ回転数20rpmの条件下、外径8mm、内径5mmのエラストマー管状体を製造し、下記の2段階で評価した。
良好:押出成形時、押出機に異常が発生せず連続して生産が可能であり、得られ
た管状体に著しい外観不良がない
不良:連続生産が不可能である及び/又は、管状体に著しい外観不良がある
<実施例1、2および比較例1、2>
表1に示す配合量(重量部)にて配合したエラストマー組成物の(イ)〜(ハ)成分の合計量100重量部に対して、テトラキス[メチレン−3−(3‘,5’−ジ−t−ブチル−4‘−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(商品名「イルガノックス1010」チバスペシャリティケミカルズ社製)0.1重量部を添加し、圧縮比L/Dが33、シリンダー径45mmの二軸押出機(池貝社製 PCM45)を用いて200℃の温度に設定して溶融混練させ、これをダイよりストランド状に押し出し、カッティングして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られたペレットを上記方法にて評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 2005206669
本発明により、柔軟性、機械的強度、押出成形性に優れ、表面光沢の高い、耐傷付き性の良好なビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物を提供することができ、このような特性を有する組成物は、玩具・運動用具用途、食品用途、日用雑貨用途、デスクマットなどの文具用途、自動車機能部品用途、自動社内外装用途、土木シート、防水シートなどの土木・建築用途、制振用途、AV・家電機器用途、OA・事務機器用途、衣料・履き物用途、テキスタイル用途、各種カテーテル等の医療用機器用途、紙オムツ、生理用品等の衛生用品、化学・鉱工業用資材、包装輸送用資材、農・畜・水産資材等で耐傷付き性の要求される用途として有利に使用することができる。

Claims (4)

  1. 下記成分(イ)〜(ハ)を含有し、(イ)/(ロ)の重量比が50/50〜95/5であり、かつ(イ)及び(ロ)の合計量100重量部に対して(ハ)が3重量部以上250重量部以下の割合で含まれていることを特徴とするビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物。
    (イ)原料として、下記一般式(1)
    A(B−A)m及び/又は(A−B)n (1)
    (式中、Aはビニル芳香族化合物の重合体ブロックを表し、Bはビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックを表し、mは1〜5、nは2〜5の整数を表す。)で表されるブロック共重合体であり、全ビニル芳香族化合物単位含有量が50〜80重量%、Bブロックに含有されるビニル芳香族化合物の含有量が20〜60重量%、かつ該ブロックの共役ジエン系化合物由来のビニル結合含量が30〜75%であることを特徴とするビニル芳香族系ブロック共重合体を、水素添加してなる水素添加ビニル芳香族系ブロック共重合体
    (ロ)オレフィン系樹脂
    (ハ)炭化水素系ゴム用軟化剤
  2. A及びBのビニル芳香族化合物が、いずれもスチレンであることを特徴とする請求項1に記載のビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物。
  3. Bの共役ジエンが、ブタジエンおよび/またはイソプレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物。
  4. オレフィン系樹脂が、プロピレン系重合体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物。
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