JP4248185B2 - 動架橋水添共重合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐磨耗性、耐傷付き性、耐油性を改良した動架橋水添共重合体組成物に関し、更に詳しくは、特定の水添共重合体と熱可塑性樹脂から構成される水添共重合体組成物を加硫剤の存在下に動的に加硫してなる動架橋水添共重合体組成物又は特定の水添共重合体を加硫剤の存在下に動的に加硫してなる動架橋水添共重合体と熱可塑性樹脂から構成される動架橋水添共重合体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゴム的な軟質材料であって加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様な成形加工性を有する熱可塑性エラストマーが自動車部品、家電部品、電線被覆材、医療部品、雑貨、履物等の分野で使用されている。このようななかで、熱可塑性エラストマーとしてビニル芳香族化合物の含有量が比較的少ない、例えばビニル芳香族化合物の含有量が約30重量%の共役ジエンとビニル芳香族化合物からなるブロック共重合体やその水添物が加硫ゴムに似た特性を示すため好適に利用されている。しかしながら、かかるブロック共重合体やその水添物は耐油性が十分でなかった。
かかる問題点を改良するため、かかるブロック共重合体やその水添物を部分架橋する方法が特開昭59−131613号公報等に開示されてるが、更にその改良が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐磨耗性、耐傷付き性、耐油性に優れた動架橋水添共重合体組成物を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは特定のビニル芳香族化合物含有量を有し、しかもビニル芳香族化合物重合体ブロックの含有量が特定の範囲にある共役ジエンとビニル芳香族化合物との共重合体の水素添加物である水添共重合体、又は該水添共重合体と熱可塑性樹脂から構成される水添共重合体組成物を加硫剤の存在下に動的に加硫することにより上記課題が効果的に解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち本発明は、
共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる共重合体の水素添加物である水添共重合体(1)10〜100重量部と、
熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体(2)90〜0重量部と、
から構成される水添共重合体組成物を、
加硫剤の存在下に動的に架橋してなる動架橋水添共重合体組成物
または、
共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる共重合体の水素添加物である水添共重合体(1)を加硫剤の存在下に動的に架橋してなる動架橋水添共重合体10〜100重量部と、
熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体(2)90〜0重量部と、
から構成される水添共重合体組成物であって、
前記水添共重合体(1)が、
下記(a)〜(h)を満たす水添共重合体である、動架橋水添共重合体組成物を提供するものである。
(a)ビニル芳香族化合物の含有量が60重量%を越え、90重量%以下、
(b)共重合体中のビニル芳香族化合物重合体ブロックAの量が3〜40重量%、
(c)重量平均分子量が5万〜100万、
(d)共重合体中の共役ジエン化合物に基づく二重結合の10%以上が水添されている、(f)示差走査熱量測定法(DSC法)において、−50〜100℃の温度範囲において結晶化ピークが実質的に存在しない、
(g)ビニル芳香族化合物のブロック率が50重量%未満、
(h)ビニル芳香族化合物重合体ブロックAと、共役ジエンとビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックBとを含む構造を有する。
【0006】
以下本発明を詳細に説明する。本発明において、水添共重合体中のビニル芳香族化合物の含有量は60重量%を越え、90重量%以下、好ましくは60重量%越え、88重量%以下、更に好ましくは62〜86重量%である。ビニル芳香族化合物の含有量が本発明で規定する範囲のものを使用することは、本発明が目的とする組成物を得るために必要である。なお本発明において、水添共重合体中のビニル芳香族化合物の含有量は、水素添加前の共重合体中のビニル芳香族化合物含有量で把握しても良い。
【0007】
本発明で使用する水添共重合体において、ビニル芳香族化合物重合体ブロックの含有量は3〜40重量%、更に好ましくは5〜35重量%である。本発明において、柔軟性の良好な組成物が得たい場合、ビニル芳香族化合物重合体ブロックの含有量は10重量%未満、好ましくは8重量%未満、更に好ましくは5重量%未満であることが推奨される。また本発明の組成物を得る上で、水添共重合体として耐ブロッキング性に優れたものが好ましい場合、ビニル芳香族化合物重合体ブロックの含有量は10〜40重量%、好ましくは13〜37重量%、更に好ましくは15〜35重量%であることが推奨される。ビニル芳香族化合物重合体ブロックの含有量の測定は、例えば四酸化オスミウムを触媒として水素添加前の共重合体をターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分の重量(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を用いて、次の式から求めることができる。
ビニル芳香族炭化水素のブロック重量(重量%)=(水素添加前の共重合体中のビニル芳香族炭化水素重合体ブロック重量/水素添加前の共重合体の重量)×100
【0008】
なお、本発明において水添共重合体におけるビニル芳香族化合物のブロック率(ブロック率とは、該共重合体中の全ビニル芳香族化合物量に対するビニル芳香族化合物重合体ブロックの含有量の割合をいう)は、50重量%未満であり、好ましくは20重量%以下、更に好ましくは18重量%以下であることが、より柔軟性の良好な組成物を得る上で推奨される。
【0009】
本発明で使用する水添共重合体の重量平均分子量は5〜100万、好ましくは10〜80万、更に好ましくは13〜50万である。ビニル芳香族化合物重合体ブロックの含有量が10〜40重量%の水添共重合体を使用する場合、その重量平均分子量は10万を越え50万未満、好ましくは13万〜40万、更に好ましくは15万〜30万であることが推奨される。重量平均分子量が5万未満の場合は機械的強度に劣り、また100万を超える場合は成形加工性に劣るため好ましくない。本発明において、水添共重合体の分子量分布は、成形加工性の点で,1.5〜5.0が好ましく、より好ましくは1.6〜4.5、更に好ましくは1.8〜4であることが推奨される。
【0010】
本発明で使用する水添共重合体等は共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる共重合体の水素添加物であり、共重合体中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合のトータル水素添加率は10%以上、好ましく20%以上、更に好ましくは30%以上である。特に耐候性に優れた組成物を得る場合は、水素添加率が75%以上、好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上であることが推奨される。また、加硫物特性の良好な加硫組成物を得る場合には、水素添加率は98%以下、好ましくは95%以下、更に好ましくは90%以下であることが推奨される。更に、本発明で使用する水添共重合体等において,特に熱安定性に優れた組成物を得る場合は、ビニル結合の水素添加率が85%以上、好ましくは90%以上更に好ましくは95%以上であることが推奨される。ここで、ビニル結合の水素添加率とは、水素添加前の共重合体中に組み込まれている共役ジエン中のビニル結合の内、水素添加されたビニル結合の割合を云う。なお、共重合体中のビニル芳香族炭化水素に基づく芳香族二重結合の水添率については特に制限はないが、水添率を50%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下にすることが好ましい。
【0011】
本発明で使用する水添共重合体等は、示差走査熱量測定法(DSC法)において、−50〜100℃の温度範囲において結晶化ピークが実質的に存在しない水素添加物である。ここで、−50〜100℃の温度範囲において結晶化ピークが実質的に存在しないとは、この温度範囲において結晶化に起因するピークが現れない、もしくは結晶化に起因するピークが認められる場合においてもその結晶化による結晶化ピーク熱量が3J/g未満、好ましくは2J/g未満、更に好ましくは1J/g未満であり、特に好ましくは結晶化ピーク熱量が無いものである。
【0012】
本発明において、水添共重合体の構造は特に制限はなく、いかなる構造のものでも使用できるが、特に推奨されるものは、下記1〜5の一般式から選ばれる少なくとも一つの構造を有する共重合体の水素添加物である。本発明で使用する水添共重合体は、下記一般式で表される構造を有する共重合体の水素添加物からなる任意の混合物でもよい。また、水添共重合体にビニル芳香族化合物重合体が混合されていても良い。
1 B
2 B−A
3 B−A−B
4 (B−A)m−X
5 (B−A)n−X−Ap
(ここで、Bは共役ジエンとビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックであり、Aはビニル芳香族化合物重合体ブロックである。mは2以上の整数であり、n及びpは1以上の整数である。Xはカップリング剤残基を示す。)
【0013】
一般式において、ランダム共重合体ブロックB中のビニル芳香族炭化水素は均一に分布していても、またはテーパー状に分布していてもよい。また該共重合体ブロックBには、ビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。また、mは2以上、好ましくは2〜10の整数であり、n及びpは1以上、好ましくは1〜10の整数である。
【0014】
また本発明において、水素添加前の共重合体鎖中におけるビニル結合含量の最大値と最小値との差が10%未満、好ましくは8%以下、更に好ましくは6%以下であることが推奨される。共重合体鎖中のビニル結合は、均一に分布していてもテーパー状に分布していても良い。ここで,ビニル結合含量の最大値と最小値との差とは,重合条件,すなわちビニル量調整剤の種類,量及び重合温度で決定されるビニル量の最大値と最小値である。
【0015】
共共役ジエン重合体鎖中のビニル結合含量の最大値と最小値との差は、例えば共役ジエンの重合時又は共役ジエンとビニル芳香族化合物の共重合時の重合温度によって制御することができる。第3級アミン化合物またはエーテル化合物のようなビニル量調整剤の種類と量が一定の場合,重合中のポリマ−鎖に組み込まれるビニル結合含量は,重合温度によって決まる。従って,等温で重合した重合体はビニル結合が均一に分布した重合体となる。これに対し,昇温で重合した重合体は,初期(低温で重合)が高ビニル結合含量,後半(高温で重合)が低ビニル結合含量といった具合にビニル結合含量に差のある重合体となる。
【0016】
本発明において、ビニル芳香族化合物の含有量は、紫外分光光度計,赤外分光光度計や核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて知ることができる。また,ビニル芳香族化合物重合体ブロックの量は,前述したKOLTHOFFの方法等で知ることができる。水素添加前の共重合体中の共役ジエンに基づくビニル結合含量は、赤外分光光度計(例えば、ハンプトン法)や核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて知ることができる。
【0017】
また,水添共重合体の水添率は、赤外分光光度計や核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて知ることができる。また、本発明において、水添共重合体の分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。
水添共重合体の分子量分布は、同様にGPCによる測定から求めることができる。かかる構造を有する共重合体に、水素を添加することにより特異構造の水添共重合体が得られる。
【0018】
本発明において共役ジエンは1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3ーヘキサジエンなどであるが、特に一般的なものとしては1,3ーブタジエン、イソプレンが挙げられる。これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。
また、ビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等があげられ、これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。
【0019】
本発明において、水素添加前の共重合体において共役ジエン部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する極性化合物等の使用により任意に変えることができ、特に制限はない。一般的に共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合は5〜80%、好ましくは10〜60%、共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合又は1,3−ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量は一般に3〜75%、好ましくは5〜60%であることが推奨される。なお、本発明においては、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量(但し、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量)を以後ビニル結合と呼ぶ。
【0020】
本発明において、水素添加前の共重合体は、例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の開始剤を用いてアニオンリビング重合により得られる。炭化水素溶媒としては、例えばn−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンの如き脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタンの如き脂環式炭化水素類、また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンの如き芳香族炭化水素である。
【0021】
また、開始剤としては、一般的に共役ジエン化合物及びビニル芳香族化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等が含まれ、アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等である。好適な有機アルカリ金属化合物としては、炭素数1から20の脂肪族および芳香族炭化水素リチウム化合物であり、1分子中に1個のリチウムを含む化合物、1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が含まれる。
【0022】
具体的にはn−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンの反応生成物等があげられる。
【0023】
さらに、米国特許5,708,092号明細書に開示されている1−(t−ブトキシ)プロピルリチウムおよびその溶解性改善のために1〜数分子のイソプレンモノマーを挿入したリチウム化合物、英国特許2,241,239号明細書に開示されている1−(t−ブチルジメチルシロキシ)ヘキシルリチウム等のシロキシ基含有アルキルリチウム、米国特許5,527,753号明細書に開示されているアミノ基含有アルキルリチウム、ジイソプロピルアミドリチウムおよびヘキサメチルジシラジドリチウム等のアミノリチウム類も使用することができる。
【0024】
本発明において有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物を共重合する際に、重合体に組み込まれる共役ジエン化合物に起因するビニル結合(1,2または3,4結合)の含有量の調整や共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合性を調整するために、調整剤として第3級アミン化合物またはエーテル化合物を添加することができる。第3級アミン化合物としては一般式R1R2R3N(ただしR1、R2、R3は炭素数1から20の炭化水素基または第3級アミノ基を有する炭化水素基である)の化合物である。
【0025】
たとえば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’−ジオクチル−p−フェニレンジアミン等である。
【0026】
また、エーテル化合物としては、直鎖状エーテル化合物および環状エーテル化合物から選ばれ、直鎖状エーテル化合物としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類が挙げられる。
【0027】
また、環状エーテル化合物としてはテトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5−ジメチルオキソラン、2,2,5,5−テトラメチルオキソラン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。
【0028】
本発明において有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物を共重合する方法は、バッチ重合であっても連続重合であっても、或いはそれらの組み合わせであってもよい。特に分子量分布を好ましい適正範囲に調整する上で連続重合方法が推奨される。重合温度は、一般に0℃乃至180℃、好ましくは30℃乃至150℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、特に好適には0.1乃至10時間である。
【0029】
また、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。更に、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガスなどが混入しないように留意する必要がある。
本発明において、前記重合終了時に2官能以上のカップリング剤を必要量添加してカップリング反応を行うことができる。2官能カップリング剤としては公知のものいずれでも良く、特に限定されない。例えば、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。また、3官能以上の多官能カップリング剤としては公知のものいずれでも良く、特に限定されない。
【0030】
例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物、一般式R4-nSiXn(ただし、Rは炭素数1から20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3または4)で示されるハロゲン化珪素化合物、例えばメチルシリルトリクロリド、tーブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素およびこれらの臭素化物等、一般式R4-nSnXn(ただし、Rは炭素数1から20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3または4)で示されるハロゲン化錫化合物、例えばメチル錫トリクロリド、tーブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物が挙げられる。炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も使用できる。
【0031】
本発明において、共重合体として重合体の少なくとも1つの重合体鎖に極性基含有原子団が結合した変性共重合体を使用することができる。極性基含有原子団としては、例えば水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基が挙げられる。
【0032】
また、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等から選ばれる極性基を少なくとも1種含有する原子団が挙げられる。
変性共重合体は、共重合体の重合終了時にこれらの極性基含有原子団を有する化合物を反応させることにより得られる。極性基含有原子団を有する化合物としては、具体的には、特公平4-39495号公報に記載された変性処理剤を使用できる。
【0033】
上記で得られた共重合体を水素添加することにより、本発明で使用する水添共重合体が得られる。水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。
【0034】
具体的な水添触媒としては、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特公昭63-4841号公報、特公平1-37970号公報、特公平1-53851号公報、特公平2-9041 号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物および/または還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
【0035】
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物がしようできるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物があげられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。
【0036】
本発明において、水添反応は一般的に0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は0.1から15MPa、好ましくは0.2から10MPa、更に好ましくは0.3から5MPaが推奨される。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0037】
上記のようにして得られた水添共重合体の溶液は、必要に応じて触媒残査を除去し、水添共重合体を溶液から分離することができる。溶媒の分離の方法としては、例えば水添後の反応液にアセトンまたはアルコール等の水添共重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、反応液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、または直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。尚、本発明の水添共重合体には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
【0038】
本発明で使用する水添共重合体は、α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、例えばその無水物、エステル化物、アミド化物、イミド化物で変性されていても良い。α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の具体例としては、無水マレイン酸、無水マレイン酸イミド、アクリル酸又はそのエステル、メタアクリル酸又はそのエステル、エンド−シス−ビシクロ〔2,2,1〕−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の付加量は、水添重合体100重量部当たり、一般に0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0039】
本発明においては、水添共重合体に熱可塑性樹脂を組み合わせて使用することができる。成分(2)として使用される熱可塑性樹脂は、特に制限はないが、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等の芳香族系樹脂、6・6ナイロン、6ナイロン等のポリアミド、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等を挙げることができる。
【0040】
スチレン系樹脂としてはポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン(ハイインパクトポリエステル)、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合樹脂及びその水素添加物、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、スチレン ・メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)等のスチレン・メタクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル ・ブタジエン・スチレン三元共重合体(ABS樹脂)、 ゴム強化MS樹脂、無水マレイン酸・スチレン三元共重合体、無水マレイン酸・アクリロニトリル・スチレン三元共重合体、アクリロニトリル・α-メチルスチレン三 元共重合体、メタクリロニトリル・スチレン共重合体、メタクリル酸メチル・アクリロニトリル・スチレン三元 共重合体等を挙げることができる。
【0041】
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のホモポリマー、及びブテン、ヘキセン、オクテンと等のブロック、ランダム共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン-1、プロピレン・ブテン-1共重合体、塩素化ポリオレフィン、エチレン・メタクリル酸およびそのエステル共重合体、スチレン・アクリル酸およびそのエステル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)等を挙げることができる。
【0042】
メタクリル樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体等を例示することができる。これらの熱可塑性樹脂は2種類以上混合して使用しても良い。
また本発明においては、水添共重合体にゴム状重合体を組み合わせて使用することができる。成分(2)として使用されるゴム状重合体は、特に制限はないが、ブタジエンゴム及びその水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム及びその水素添加物(但し本発明の水添共重合体とは異なる)、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びその水素添加物、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチエン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマ−が挙げられる。
【0043】
また、ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、スチレンーブタジエンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体及びその水素添加物等のスチレン系エラストマ−、天然ゴムなどが挙げられる。これらのゴム状重合体は、官能基を付与した変性ゴムであっても良い。これらは単独または複数を組み合わせて使用することができる。
【0044】
成分(2)として特に好ましいものは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS、PMMA、スチレン-ブタジエン-メチルメタクリレート三元共重合体 (MBS)、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBS),スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIS)、及びこれらの水素添加物、例えばスチレン-エチレン-ブチレンブロックポリマー(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレンブロックポリマー(SEPS)、スチレン-ブタジエンラバ-(SBR)、EPDM、ブチルゴム等を例示することができる。
【0045】
成分(2)の熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体の使用量は、成分(1)/成分(2)の重量比率で、10/90〜100/0、好ましくは20/80〜90/10、更に好ましくは30/70〜80/20である。成分(2)の使用量が90重量部を超えると動架橋水添共重合体組成物の柔軟性が劣るため好ましくない。成分(2)の熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体は水添共重合体と共に加硫剤の存在下に動的に加硫させても良いし、 予め水添共重合体を動架橋させた後に成分(2)を配合して用いても良い。
【0046】
本発明で云う動的加硫とは、各種配合物を溶融状態で加硫剤が反応する温度条件下で混練させることにより分散と架橋を同時に起こさせる手法であり、 A.Y.Coranらの文献(Rub.Chem.an d Technol.vol.53.141〜(1980))に詳細に記されている。動的加硫時の混練機は通常バンバリーミキサー、加圧式ニーダーのような密閉式混練機、一軸や二軸押出機等を用いて行われる。混練温度は通常130〜300℃、好ましくは150〜250℃である。 混練時間は通常1〜30分である。動的加硫の際の加硫剤としては通常有機過酸化物やフェノール樹脂架橋剤が良く用いられる。
【0047】
有機過酸化物としては、具体的には ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキ シド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブ チルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5 -ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、 1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピ ル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオ キシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n- ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ) バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベン ゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペル オキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、 tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチル ペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペル オキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチル クミルペルオキシドなどがあげられる。
【0048】
これらの中では、臭気性、スコーチ安定性 の点で、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert- ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2, 5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン- 3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプ ロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペ ルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、 n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキ シ)バレレート、ジ-ter-ブチ ルパーオキサイド等が好ましい。
【0049】
上記有機過酸化物を使用して架橋するに際しては、硫黄、p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N-4-ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-N,N’-m-フェニレンジマレイミド等のペルオキシ架橋用助剤、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ト リメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー、ビニ ルブチラート、ビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマーなどを併用することができる。
【0050】
本発明において加硫剤の使用量は、通常は、水添共重合体或いは水添共重合体と熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体から構成される水添共重合体組成物100重量部に対し0.01〜15重量部、好ましくは0.04〜10重量部の割合で用いられる。
本発明の組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、軟化剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、滑剤等の添加物を配合することが出来る。製品の硬さや流動性の調節の為に、必要に応じて配合することが出来る軟化剤としては、具体的にはパラフィン系、ナフテン系、アロマ系プロセスオイル、流動パラフィン等の鉱物油系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油等種々のものが使われる。これらの軟化剤は混練時に添加しても、水添共重合体の製造時に予め該共重合体の中に含ませておいても良い(いわゆる油展ゴム)。軟化剤の添加量は、水添共重合体100重量部に対し通常0〜200重量部、好ましくは10〜150重量部、更に好ましくは20〜100重量部が好ましい。
【0051】
また、充填剤としては、具体的には炭酸カルシウム、タルク、 クレー、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、これらの充填剤の添加量は、水添共重合体100重量部に対し通常0〜200重量部、好ましくは10〜150重量部、更に好ましくは20〜100重量部が好ましい。
本発明において、水添共重合体又は水添共重合体組成物を加硫剤の存在下に動的に加硫してなる動架橋水添共重合体又は動架橋水添共重合体組成物は、ゲル含量(ただし、無機充填材等の不溶物等の不溶成分はこれに含まない)が5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは20〜60重量%になるように加硫することが推奨される。
【0052】
ここで、ゲル含量とは、動架橋水添共重合体又は動架橋水添共重合体組成物(試料)1gを、沸騰キシレンを用いてソックスレー抽出器で10時間リフラックスし、残留物を80メッシュの金網でろ過し、メッシュ上に残留した不溶物乾燥重量(g)の試料1gに対する割合(重量%)で表したものである。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
尚、以下の実施例において、重合体の特性や物性の測定は、次のようにして行った。
1.共重合体の特性
1)スチレン含有量
紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)を用いて測定した。
2)ポリスチレンブロック含量
水添前の重合体を用い、I.M.Kolthoff,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法で測定した。
3)ビニル結合量及び水添率
核磁気共鳴装置(BRUKER社製、DPX−400)を用いて測定した。
【0054】
4)分子量及び分子量分布
GPC〔装置は、ウォーターズ製〕で測定し、溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は、温度35℃で行った。分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。尚、クロマトグラム中にピークが複数有る場合の分子量は、各ピークの分子量と各ピークの組成比(クロマトグラムのそれぞれのピークの面積比より求める)から求めた平均分子量をいう。また,分子量分布は,得られた重量平均分子量と数平均分子量の比である。
【0055】
5)結晶化ピーク及び結晶化ピーク熱量
DSC[マックサイエンス社製、DSC3200S]で測定した。室温から30℃/分の昇温速度で150℃まで昇温し、その後10℃/分の降温速度で−100℃まで降温して結晶化カーブを測定して結晶化ピークの有無を確認した。また、結晶化ピークがある場合、そのピークが出る温度を結晶化ピーク温度とし、結晶化ピーク熱量を測定した。
【0056】
2.水添共重合体の調製
水添共重合体は以下の方法で調製した。なお、下記の実施例において、水添反応に用いた水添触媒は、下記の方法で調製した。
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
【0057】
内容積が10L、L/D4の攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を2基使用して連続重合を行った。1基目の反応器の底部から、ブタジエン濃度が24重量%のシクロヘキサン溶液を4.51L/hrの供給速度で、スチレン濃度が24重量%のシクロヘキサン溶液を5.97L/hrの供給速度で,またn−ブチルリチウムをモノマ−100gに対して0.077gになるような濃度に調整したシクロヘキサン溶液を2.0L/hrの供給速度で、更にN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのシクロヘキサン溶液をn−ブチルリチウム1モルに対して0.44モルになるような供給速度でそれぞれ供給し、90℃で連続重合した。
【0058】
反応温度はジャケット温度で調整し、反応器の底部付近の温度は約88℃、反応器の上部付近の温度は約90℃であった。重合反応器における平均滞留時間は、約45分であり、ブタジエンの転化率はほぼ100%,スチレンの転化率は99%であった。
1基目から出たポリマ−溶液を2基目の底部から供給,また同時に,スチレン濃度が24重量%のシクロヘキサン溶液を2.38L/hrの供給速度で2基目の底部に供給し,90℃で連続重合した。2基目出口でのスチレンの転化率は98%であった。
【0059】
連続重合で得られたポリマーを分析したところ,スチレン含有量は67重量%,ブロックスチレン量が20重量%,ブタジエン部のビニル結合含量は、14重量%であった。スチレン含有量とブロックスチレン量の分析値より、スチレンのブロック率は30%であった。
次に、連続重合で得られたポリマーに、上記水添触媒をポリマー100重量部当たりTiとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
【0060】
得られた水添共重合体(ポリマー1)は、分子量220,000万,分子量分布1.9,スチレン含有量67重量%,ブロックスチレン量20重量%,ブタジエン部のビニル結合含量14重量%,水素添加率80%であった。スチレン含有量とブロックスチレン量の分析値より、スチレンのブロック率は30%であった。また、DSC法による結晶化温度及び結晶化ピーク熱量の測定において、ポリマー1は−50〜100℃の温度範囲において結晶化ピークが現れず、結晶化ピーク熱量もゼロであった。
【0061】
3.動架橋水添共重合体組成物の調製に使用した成分
水添共重合体以外の各成分を下記に示す。
・ポリプロピレン樹脂: サンアロマーPC600S (モンテルエスデイ―イサンライズ社製)
・ パラフィン系オイル: ダイアナプロセスオイルPW−380(出光興産社製)
・ 炭酸カルシュウム:高級脂肪酸エステルで表面処理した炭酸カルシュウム
・ 有機過酸化物:パーヘキサ2,5B(日本油脂社製)
・ 加硫促進剤:ジビニルベンゼン
・ 酸化防止剤:イルガノックス1010(チバスペシャルティーケミカルズ社製)
【0062】
4.動架橋水添共重合体、動架橋水添共重合体組成物の物性
1)硬さ
JIS K6253に従い、デュロメータタイプAで10秒後の値を測定した。
2)引張強度、切断時伸び
JIS K6251に従い、3号ダンベル、クロスヘッドスピード500mm/分で測定した。
【0063】
3)耐傷つき性
学振型摩擦試験器(テスター産業株式会社製、AB−301型)を用い、成形シート表面(光沢鏡面)を、摩擦布カナキン3号綿、荷重500gで100回摩擦し、摩擦前後の光沢度変化を、光沢度計にて測定し、以下の基準で判定した。
◎;光沢度変化が0〜−5以内
○; 〃 −5を越し−10以内
△; 〃 −10を越し−50以内
×; 〃 −50を越したもの
【0064】
4)耐磨耗性
学振型摩擦試験器(テスター産業株式会社製、AB−301型)を用い、成形シート表面(皮シボ加工面)を、摩擦布カナキン3号綿、荷重500gで摩擦し、摩擦後の体積減少量によって、以下の基準で判定した。
◎;摩擦回数10,000回後に、体積減少量が0.01ml以下
○; 〃 0.01を越し0.05ml以下
△; 〃 0.05を越し0.10ml以下
×; 〃 0.1mlを越したもの
【0065】
5)耐油性
JIS K6301規定のNo.3試験油(潤滑油)を使用し、70℃で2時間、50mm×50mm×2mm厚さの試験片を浸漬し、浸漬前後の重量変化(%)を求めた。
【0066】
【実施例】
原料ゴムとしてポリマー1を使用し、表1に示した配合処方に従って各成分をヘンシェルミキサーで混合し、30mm径の二軸押出機にて190〜230℃の条件で溶融混練して動架橋する前の配合物を得る(第一段目)。この配合物に加硫剤を添加し、30mm径の二軸押出機にて190〜230℃の条件で溶融混練して動加硫した動架橋水添共重合体組成物を得る(第二段目)。得られた組成物を射出成形して諸物性を測定する。
得られた組成物は、耐磨耗性、耐傷付き性、耐油性に優れた組成物である。
【0067】
【表1】
【0068】
【発明の効果】
本発明の動架橋水添共重合体組成物は、耐磨耗性、耐傷付き性、耐油性に優れる。本発明の動架橋水添共重合体又は動架橋水添共重合体組成物は、一般に使用される熱可塑性樹脂用成形機で成形することが可能であり、シート、フィルム、各種形状の射出成形品、中空成形品、圧空成形品、真空成形品、押出成形品等の多様な成形品として活用できる。これらの成形品は、食品包装材料、医療用器具材料、家電製品及びその部品、自動車部品・工業用品・日用雑貨・玩具等の素材、履物用素材等に利用できる。
Claims (5)
- 共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる共重合体の水素添加物である水添共重合体(1)10〜100重量部と、
熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体(2)90〜0重量部と、
から構成される水添共重合体組成物を、
加硫剤の存在下に動的に架橋してなる動架橋水添共重合体組成物であって、
前記水添共重合体(1)が、
下記(a)〜(h)を満たす水添共重合体である、動架橋水添共重合体組成物:
(a)ビニル芳香族化合物の含有量が60重量%を越え、90重量%以下、
(b)共重合体中のビニル芳香族化合物重合体ブロックAの量が3〜40重量%、
(c)重量平均分子量が5万〜100万、
(d)共重合体中の共役ジエン化合物に基づく二重結合の10%以上が水添されている、(f)示差走査熱量測定法(DSC法)において、−50〜100℃の温度範囲において結晶化ピークが実質的に存在しない、
(g)ビニル芳香族化合物のブロック率が50重量%未満、
(h)ビニル芳香族化合物重合体ブロックAと、共役ジエンとビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックBとを含む構造を有する。 - 共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる共重合体の水素添加物である水添共重合体(1)を加硫剤の存在下に動的に架橋してなる動架橋水添共重合体10〜100重量部と、
熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体(2)90〜0重量部と、
から構成される水添共重合体組成物であって、
前記水添共重合体(1)が、
下記(a)〜(h)を満たす水添共重合体である、動架橋水添共重合体組成物:
(a)ビニル芳香族化合物の含有量が60重量%を越え、90重量%以下、
(b)共重合体中のビニル芳香族化合物重合体ブロックAの量が3〜40重量%、
(c)重量平均分子量が5万〜100万、
(d)共重合体中の共役ジエン化合物に基づく二重結合の10%以上が水添されている、(f)示差走査熱量測定法(DSC法)において、−50〜100℃の温度範囲において結晶化ピークが実質的に存在しない、
(g)ビニル芳香族化合物のブロック率が50重量%未満、
(h)ビニル芳香族化合物重合体ブロックAと、共役ジエンとビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックBとを含む構造を有する。 - 前記水添共重合体(1)中のビニル芳香族化合物重合体ブロックAの量が、3重量%以上10重量%未満である請求項1又は2に記載の動架橋水添共重合体組成物。
- 前記水添共重合体(1)中のビニル芳香族化合物重合体ブロックAの量が、10〜40重量%である請求項1又は2に記載の動架橋水添共重合体組成物。
- 前記水添共重合体(1)が、下記一般式から選ばれる少なくとも一つの構造を有する共重合体の水素添加物である請求項1〜4のいずれかに記載の動架橋水添共重合体組成物。
1 B−A
2 B−A−B
3 (B−A)m−X
4 (B−A)n−X−Ap
(ここで、Bは共役ジエンとビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックであり、Aはビニル芳香族化合物重合体ブロックである。mは2以上の整数であり、n及びpは1以上の整数である。Xはカップリング剤残基を示す。)
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