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JP5236417B2 - 水添ブロック共重合体組成物 - Google Patents

水添ブロック共重合体組成物 Download PDF

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JP5236417B2 JP2008261308A JP2008261308A JP5236417B2 JP 5236417 B2 JP5236417 B2 JP 5236417B2 JP 2008261308 A JP2008261308 A JP 2008261308A JP 2008261308 A JP2008261308 A JP 2008261308A JP 5236417 B2 JP5236417 B2 JP 5236417B2
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Description

本発明は、水添ブロック共重合体とゴム用軟化剤とを組み合わせた、透明性に優れ、低硬度で低反発弾性の水添ブロック共重合体組成物に関する。
共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなるブロック共重合体は、比較的ビニル芳香族炭化水素が少ない場合、加硫をしなくても加硫された天然ゴムや合成ゴムと同様の弾性を常温にて有し、しかも高温では熱可塑性樹脂と同様の加工性を有することから、履物、プラスチック改質、アスファルト改質、粘接着材等の分野で広く利用されている。
しかしながら、比較的ビニル芳香族炭化水素が少ないブロック共重合体は、柔軟性は良好であるものの低反発性に劣るという欠点があり、衝撃緩衝性が必要な用途に使用する上で制約となっている。
特許文献1には、柔軟性を有する材料として、ビニル芳香族炭化水素含有量が3〜50質量%のランダム共重合体であって、分子量分布(Mw/Mn)が10以下であり、且つ、共重合体中のジエン部のビニル結合量が10〜90%である共重合体を水素添加した水添ジエン系共重合体とポリプロピレン樹脂との組成物が開示されている。
特許文献2には、ビニル芳香族炭化水素含有量が5〜60質量%のランダム共重合体であって、且つ、共重合体中のジエン部のビニル結合量が60%以上である共重合体を水素添加した水添ジエン系共重合体とポリプロピレン樹脂との組成物が開示されている。
特許文献3には、オイルブリードが少なく、且つ、優れた機械強度、透明性、柔軟性を有する熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。
特許文献4には、ビニル芳香族炭化水素含有量が比較的多いブロック共重合体において、柔軟性を有する材料を得る試みが行われており、スチレン主体のブロックとブタジエン/スチレンを主体とするブロックを含有する共重合体からなる水添ブロック共重合体をベースとする成形材料が開示されている。
特開平2−158643号公報 特開平6−287365号公報 特開2005−281489号広報 国際公開第98/012240パンフレット
しかしながら、特許文献1及び2に開示された組成物は、柔軟性が十分ではなく、また衝撃緩衝性の点でも不十分である。
また、特許文献3に開示された熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性、透明性に優れ、オイルブリードが少なく成形性にも優れているが、低反発性に劣り、衝撃緩衝性の点で不十分である。
更に、特許文献4に開示された水添共重合体は、低反発性に優れるものの、柔軟性に乏しく、やはり衝撃緩衝性は不十分である。また、柔軟性を付与する目的でゴム用軟化剤を添加すると柔軟性は向上するものの、オイルブリードが発生し、低反発性も損なわれるという問題がある。
我々は、柔軟性と低反発性を両立した、衝撃緩衝性に優れる材料として使用可能な、水添ブロック共重合体と該水添ブロック共重合体とゴム用軟化剤とを含む組成物を先に開発した(国際公開第06/088187パンフレット参照)。しかしながら、よりゴム用軟化剤のブリードが無く、低反発性に優れた、柔軟な材料の出現が望まれているのが現状である。
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、透明性、柔軟性、低反発弾性に優れ、衝撃緩衝性と外観性(発色性、透明性)を必要とする軟質材料として好適な水添ブロック共重合体組成物を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定の特性と構造を有する水添ブロック共重合体と、ゴム用軟化剤と、を特定の割合で含む組成物が、上記課題を効果的に解決することを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
(I)下記(a)、(b)及び(c)の重合体ブロックをそれぞれ少なくとも1個有し、
(a)ビニル芳香族化合物重合体ブロックA
(b)共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる水添共重合体ブロックB
(c)ビニル結合量が40%以上の共役ジエン重合体の水添重合体ブロックC
且つ、粘弾性測定チャートにおいて、tanδ(損失正接)のピークが10℃〜50℃、−70℃〜−20℃に各々少なくとも1つ存在する、水添ブロック共重合体100質量部と、
(II)ゴム用軟化剤100〜150質量部と、
を含む水添ブロック共重合体組成物であって、
硬度が5〜25、反発弾性が50%未満である、水添ブロック共重合体組成物。
[2]
前記水添ブロック共重合体が下記(1)〜(6)を満たす、上記[1]記載の水添ブロック共重合体組成物。
(1)下記(a)、(b)及び(c)の重合体ブロックをそれぞれ少なくとも1個有する
(a)ビニル芳香族化合物重合体ブロックA
(b)共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる水添共重合体ブロックB
(c)ビニル結合量が40%以上の共役ジエン重合体の水添重合体ブロックC
(2)前記水添ブロック共重合体中の前記ビニル芳香族化合物の含有量が40質量%を超え70質量%未満
(3)重量平均分子量が5万〜50万
(4)前記水添共重合体ブロックBの水添前共重合体を構成する共役ジエン単量体単位の ビニル結合量が10%以上20%未満
(5)前記共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率が50%以上
(6)前記水添ブロック共重合体中の前記ビニル芳香族化合物重合体ブロックAの含有量が5質量%以上30質量%以下、前記水添共重合体ブロックBの含有量が30質量%以上50質量%以下、前記水添重合体ブロックCの含有量が35質量%を超え50質量%以下。
[3]
前記水添ブロック共重合体は、前記ビニル芳香族化合物重合体ブロックAを少なくとも2個有する、上記[1]又は[2]記載の水添ブロック共重合体組成物。
[4]
前記水添ブロック共重合体は、重合体の両末端に前記ビニル芳香族化合物重合体ブロックAを有する、上記[1]〜[3]記載の水添ブロック共重合体組成物。
[5]
前記水添ブロック共重合体は、官能基を有する原子団と結合している、上記[1]〜[4]のいずれか記載の水添ブロック共重合体組成物。
[6]
粘弾性測定チャートにおいてtanδ(損失正接)のピークが0℃〜40℃に少なくとも1つ存在する、上記[1]〜[5]のいずれか記載の水添ブロック共重合体組成物。
[7]
上記[1]〜[6]のいずれか記載の水添ブロック共重合体組成物を架橋して得られる成形品。
[8]
前記成形品の表面にコーティングしたウレタン皮膜を更に備える、上記[7]記載の成形品。
本発明の水添ブロック共重合体組成物は、透明性、柔軟性、低反発性、表面感触(軟化剤のブリードが無い)に優れ、衝撃緩衝性と外観性(発色性、透明性)を有する材料として、各種用途に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物は、
(I)下記(a)、(b)及び(c)の重合体ブロックをそれぞれ少なくとも1個有し、
(a)ビニル芳香族化合物重合体ブロックA
(b)共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる水添共重合体ブロックB
(c)ビニル結合量が40%以上の共役ジエン重合体の水添重合体ブロックC
且つ、粘弾性測定チャートにおいて、tanδ(損失正接)のピークが10℃〜50℃、−70℃〜−20℃に各々少なくとも1つ存在する、水添ブロック共重合体100質量部と、
(II)ゴム用軟化剤100〜150質量部と、
を含む水添ブロック共重合体組成物であって、
硬度が5〜25、反発弾性が50%未満である。
[(I)水添ブロック共重合体]
本実施の形態の(I)水添ブロック共重合体は、
下記(a)、(b)及び(c)の重合体ブロックをそれぞれ少なくとも1個有し、
(a)ビニル芳香族化合物重合体ブロックA
(b)共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる水添共重合体ブロックB
(c)ビニル結合量が40%以上の共役ジエン重合体の水添重合体ブロックC
且つ、粘弾性測定チャートにおいて、tanδ(損失正接)のピークが10℃〜50℃、−70℃〜−20℃に各々少なくとも1つ存在する。
水添ブロック共重合体は、得られた粘弾性測定チャートにおいて、tanδ(損失正接)ピークが10℃〜50℃、−70℃〜−20℃に各々少なくとも1つ存在する。更に、0℃〜40℃、好ましくは5℃〜35℃、より好ましくは10℃〜30℃に少なくとも1つ存在することが推奨される。
tanδの10℃〜50℃に存在するピークは、水添ブロック共重合体中の共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる水添重合体ブロックBに起因するピークである。このピークが10℃〜50℃の範囲に少なくとも1つ存在することで、水添ブロック共重合体組成物の低反発性と柔軟性とのバランスが良好となる。
また、tanδの−70℃〜−20℃に存在するピークは、水添ブロック共重合体中のビニル結合量が40%以上の共役ジエン重合体の水添重合体ブロックCに起因するピークである。このピークが−70℃〜−20℃の範囲に少なくとも1つ存在することで、水添ブロック共重合体組成物のゴム用軟化剤吸収性が良好となる。ここで、ゴム用軟化剤吸収性とは、水添ブロック共重合体組成物のゴム用軟化剤の保持力のことを意味する。これが劣ると、ゴム用軟化剤のブリードアウトが発生する。
なお、本実施の形態において、水添ブロック共重合体中に結合しているビニル芳香族化合物重合体ブロックAに起因するtanδのピークの存在位置としては、特に制限はないが、通常80℃を超え150℃の温度範囲内に存在する。
本実施の形態の(I)水添ブロック共重合体は、(a)ビニル芳香族化合物重合体ブロックA(以下、「重合体ブロックA」という場合もある。)を少なくとも1個、好ましくは2個以上有し、(b)共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる水添共重合体ブロックB(以下、「重合体ブロックB」という場合もある。)、及び(c)ビニル結合量が40%以上の共役ジエン重合体の水添重合体ブロックC(以下、「重合体ブロックC」という場合もある。)を、それぞれ少なくとも1個有する。
本実施の形態における共役ジエンは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、特に一般的なものとしては、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
また、本実施の形態におけるビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられ、好ましくは、スチレンである。これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
本実施の形態の水添ブロック共重合体は、(a)ビニル芳香族化合物重合体ブロックAを少なくとも1個、好ましくは2個有する。
本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物において、水添ブロック共重合体の重合体ブロックAは、機械強度と表面感触(粘着感が無い)の観点から重要な成分である。水添ブロック共重合中の重合体ブロックAの含有量は、機械強度と表面感触の観点から5質量%以上であり、柔軟性の観点から30質量%以下であることが好ましい。特に機械強度の良好な水添ブロック共重合体組成物を得る場合には、重合体ブロックAの含有量は15質量%以上30質量%以下であることが好ましい。また、特に柔軟性の良好な水添ブロック共重合体組成物を得る場合には、重合体ブロックAの含有量は5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
重合体ブロックAの含有量は、四酸化オスミウムを触媒として水素添加前の共重合体をターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF、etal.、J.Polym.Sci.1、429(1946)に記載の方法。以後、四酸化オスミウム酸法と呼ぶ。)で測定することができる。また、重合体ブロックAの含有量は、水素添加前の共重合体や水素添加後の共重合体を検体として、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて(Y.Tanaka、et al.、RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54、685(1981)に記載の方法。以後、NMR法と呼ぶ。)測定してもよい。
なお、この場合、四酸化オスミウム酸法により水素添加前の共重合体を用いて測定した重合体ブロックAの含有量(Osとする)と、NMR法により水添後の共重合体を用いて測定した重合体ブロックAの含有量(Nsとする)には、下記式(F)に示される相関関係がある。
(Os)=−0.012(Ns)2+1.8(Ns)−13.0 ・・・式(F)
従って、NMR法で水添後のブロック共重合体における重合体ブロックAの含有量を求める場合、上式(F)で求められた(Os)の値を本実施の形態で規定する重合体ブロックAの含有量とする。
本実施の形態の(I)水添ブロック共重合体は、(b)共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる水添共重合体ブロックBを少なくとも1個有する。
本実施の形態の水添ブロック共重合体は、示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、−20℃〜80℃の範囲に水添共重合体ブロックBに起因する結晶化ピークが実質的に存在しない水素添加物であることが好ましい。ここで、「−20℃〜80℃の範囲に水添重合体ブロックBに起因する結晶化ピークが実質的に存在しない」とは、この温度範囲において水添共重合体ブロックB部分の結晶化に起因するピークが現れない、もしくは結晶化に起因するピークが認められる場合においても、その結晶化による結晶化ピーク熱量が3J/g未満、好ましくは2J/g未満、更に好ましくは1J/g未満であり、特に好ましくは結晶化ピーク熱量が無いことを意味する。
−20℃〜80℃の範囲に水添共重合体ブロックBに起因する結晶化ピークが存在しない水添ブロック共重合体は、その組成物の柔軟性が良好となる傾向にある。上記のような−20℃〜80℃の範囲に水添共重合体ブロックBに起因する結晶化ピークが実質的に存在しない水添ブロック共重合体を得るためには、後述するビニル結合量の調整や、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合性を調整する調整剤を用いて、後述する条件下で重合反応を行うことによって得られる非水添共重合体を用いて水素添加反応を行えばよい。
水添ブロック共重合中の水添共重合体ブロックBの含有量は、低反発弾性の観点から、好ましくは30質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは35質量%以上50質量%以下、更に好ましくは40質量%以上50質量%以下である。
水添共重合体ブロックBを構成するランダム共重合体における共役ジエンとビニル芳香族化合物の質量割合(共役ジエン/ビニル芳香族化合物)は、好ましくは50/50〜10/90、より好ましくは40/60〜15/85、更に好ましくは35/65〜20/80である。
水添共重合体ブロックBの水添前重合体を構成する共役ジエン単量体単位のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する極性化合物等の使用により任意に変えることができる。共役ジエン単量体単位のビニル結合量は、好ましくは10%以上20%未満、より好ましくは10%以上15%以下である。ビニル結合量が上記範囲内であると、低反発性が良好となる傾向にある。
なお、本実施の形態において「ビニル結合量」とは、1,2−ビニル結合と3、4−ビニル結合の合計量を意味する(但し、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量、共役ジエンとしてイソプレンを用いた場合には、3,4−ビニル結合量を意味する)。ビニル結合量は、水素添加前の共重合体を検体とした赤外分光光度計による測定(例えば、ハンプトン法)により測定することができる。
本実施の形態の(I)水添ブロック共重合体は、(c)ビニル結合量が40%以上の共役ジエン重合体の水添重合体ブロックCを少なくとも1個有する。
水添重合体ブロックCの水添前の共役ジエンのビニル結合量は、柔軟性と表面感触(軟化剤ブリード等が無い)の観点から、好ましくは40%以上であり、より好ましくは45%〜80%、更に好ましくは45%〜75%、特に好ましくは45%〜70%である。
本実施の形態の水添ブロック共重合体中の水添重合体ブロックCの含有量は、ゴム用軟化剤吸収性の観点から、35質量%を超え50質量%以下であり、より好ましくは40以上50質量%以下である。
本実施の形態の水添ブロック共重合体中のビニル芳香族化合物の含有量は、水添ブロック共重合体組成物の柔軟性、表面感触等の観点から、40質量%を超え70質量%未満であり、好ましくは40質量%以上60質量%未満、更に好ましくは40質量%以上50質量%である。ここで、水添ブロック共重合体中のビニル芳香族化合物の含有量は、水素添加前のブロック共重合体や水素添加後のブロック共重合体を検体として、紫外分光光度計を用いて測定することができる。
本実施の形態の水添ブロック共重合体の重量平均分子量は、耐熱性、機械的強度及び成形加工性とのバランスの観点から、5万〜50万であり、好ましくは10万〜15万、より好ましくは10万〜13万である。ここで、水添ブロック共重合体の重量平均分子量とは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めたクロマトグラムの分子量を言う。
本実施の形態の水添ブロック共重合体の分子量分布は、好ましくは10以下、より好ましくは1〜8、更に好ましくは1.01〜5である。ここで、水添ブロック共重合体の分子量分布は、上記と同様にGPCによる測定から求めることができ、重量平均分子量と数平均分子量の比率(重量平均分子量/数平均分子量)により算出される。
本実施の形態の水添ブロック共重合体は、共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる共重合体の水素添加物であり、耐熱性及び耐候性と、その組成物の成形性とのバランスの観点から、共重合体中の共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率が50%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上である。また、水添ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素単量体単位の芳香族二重結合の水添率については、特に制限はないが、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。水添ブロック共重合体の水添率は、核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて測定することができる。
本実施の形態における水添ブロック共重合体の構造としては、特に制限はなく、いかなる構造のものでも使用できる。重合体ブロックAが少なくとも1個、好ましくは2個、水添共重合体ブロックBが少なくとも1個、及び水添重合体ブロックCが少なくとも1個からなる水添ブロック共重合体の構造としては、例えば、下記一般式で表されるような構造を有するものが挙げられる。
C−(B−A)n、C−(A−B)n、C−(A−B−A)l
C−(B−A−B)n、A−C−(B−A)l、A−C−(A−B)l
A−C−(B−A)l−B、[(A−B−C)lm−X、[A−(B−C)lm−X、
[(A−B)l−C]m−X、[(A−B−A)l−C]m−X、
[(B−A−B)l−C]m−X、[(C−B−A)lm−X、
[C−(B−A)lm−X、[C−(A−B−A)lm−X、
[C−(B−A−B)lm−X
上記一般式において、A、B及びCは、それぞれ本実施の形態における重合体ブロックA,B及びCを示す。ここで、各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。重合体ブロックB中のビニル芳香族炭化水素は均一に分布していても、テーパー状に分布していてもよい。重合体ブロックBには、ビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。重合体ブロックBには、ビニル芳香族炭化水素含有量が異なるセグメントが複数個共存していてもよい。
また、上記一般式において、lは1以上、好ましくは1〜5の整数、nは2以上、好ましくは2〜5の整数である。mは2以上、好ましくは2〜11の整数である。Xはカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基を示す。
水添ブロック共重合体中に重合体ブロックA、重合体ブロックB及び重合体ブロックCがそれぞれ複数存在する場合には、それらの分子量や組成等の構造は同一でも、異なっていてもよい。また、Xに結合しているポリマー鎖の構造は同一でも、異なっていてもよい。
上記一般式で表される構造の中でも、表面感触と機械的強度の観点から、両末端にブロックAを有する構造の共重合体が好ましく、A−C−(B−A)l構造が特に好ましい。
本実施の形態の水添ブロック共重合体は、上記一般式で表される構造を有する共重合体の任意の混合物であってもよい。また、水添ブロック共重合体にビニル芳香族化合物重合体や、A−B構造、B−A−B構造を有する共重合体が混合されていてもよい。
本実施の形態の水添ブロック共重合体の水素添加前の共重合体は、例えば、炭化水素溶媒中で、有機アルカリ金属化合物等の開始剤を用いてアニオンリビング重合を行うことにより得ることができる。
重合に用いる炭化水素溶媒としては、例えば、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類;及び、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
また、重合に用いる開始剤としては、一般的に、共役ジエン化合物及びビニル芳香族化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等が挙げられ、それに含まれるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
好適な有機アルカリ金属化合物としては、炭素数1から20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物が挙げられ、例えば、1分子中に1個のリチウムを含む化合物、1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物等が挙げられる。より具体的には、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、ジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1、3−ブタジエンの反応生成物等が挙げられる。
更に、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。
また、上述した有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物を共重合する際に、重合体に組み込まれる共役ジエン化合物に起因するビニル結合(1,2−又は3,4−結合)量の調整や、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合性を調整することを目的として、第3級アミン化合物又はエーテル化合物等の調整剤を添加することができる。
第3級アミン化合物とは、一般式R123N(ここで、R1、R2、R3は炭素数1から20の炭化水素基又は第3級アミノ基を有する炭化水素基である)で表される化合物である。第3級アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N',N",N"−ペンタメチルエチレントリアミン、N,N'−ジオクチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
また、エーテル化合物としては、直鎖状エーテル化合物及び環状エーテル化合物から選択され、直鎖状エーテル化合物としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類が挙げられる。また、環状エーテル化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5−ジメチルオキソラン、2,2,5,5−テトラメチルオキソラン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。
本実施の形態において、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物を共重合する方法は、バッチ重合であっても連続重合であっても、又はそれらの組み合わせであってもよい。特に耐熱性に優れた共重合体を得るには、バッチ重合方法が好ましい。
重合温度は、通常0℃〜180℃、好ましくは30℃〜150℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常48時間以内であり、好ましくは0.1時間〜10時間である。
また、重合系の雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。更に、重合系内は、触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば、水、酸素、炭酸ガス等が混入しないように留意する必要がある。
本実施の形態においては、重合終了時に2官能以上のカップリング剤を必要量添加してカップリング反応を行うことができる。2官能カップリング剤としては、公知のものを用いることができ、特に限定されない。具体的には、例えば、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。
また、3官能以上の多官能カップリング剤としては公知のものを用いることができ、特に限定されない。具体的には、例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物、一般式R4-nSiXn(ここで、Rは炭素数1から20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3から4の整数を示す)で表されるハロゲン化珪素化合物、例えば、メチルシリルトリクロリド、tーブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素及びこれらの臭素化物等、一般式R4-nSnXn(ここで、Rは炭素数1から20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3から4の整数を示す)で表されるハロゲン化錫化合物、例えば、メチル錫トリクロリド、t−ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も使用することができる。
本実施の形態の水添ブロック共重合体は、上記で得られたブロック共重合体を水素添加することにより得ることができる。
水素添加の際に用いる水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒等が用いられる。
具体的な水添触媒としては、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報等に記載された水添触媒を用いることができる。
好ましい水添触媒としては、チタノセン化合物及び/又は還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。チタノセン化合物としては、例えば、特開平8−109219号公報に記載された化合物を用いることができ、具体的には、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上有する化合物が挙げられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等が挙げられる。
本実施の形態において、水添反応は、通常0℃〜200℃、好ましくは30℃〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は、通常0.1MPa〜15MPa、好ましくは0.2MPa〜10MPa、より好ましくは0.3MPa〜5MPaが推奨される。また、水添反応時間は、通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
上記のようにして得られた水添ブロック共重合体の溶液は、必要に応じて触媒残査を除去して、水添ブロック共重合体を溶液から分離することができる。水添ブロック共重合体を溶液から分離する方法としては、例えば、水添反応後の反応液に、アセトン又はアルコール等の水添ブロック共重合体に対して貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、反応液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、又は、直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。
本実施の形態の水添ブロック共重合体には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
また、本実施の形態の水添ブロック共重合体には、上述した水添共重合体に、官能基を有する原子団が結合した変性水添共重合体も含まれる。官能基を有する原子団としては、例えば、水酸基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボキシル基、チオカルボキシル酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等から選ばれる官能基を少なくとも1種含有する原子団が挙げられる。中でも、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性水添ブロック共重合体が好ましい。
水添ブロック共重合体に官能基を有する原子団を結合するための変性剤としては、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、4−メトキシベンゾフェノン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
官能基を有する原子団が結合した変性水添ブロック共重合体は、例えば、有機リチウム化合物を重合触媒として上述のような方法で得たブロック共重合体のリビング末端に、官能基含有原子団を生成する変性剤を付加反応させて変性ブロック共重合体を得、更に上述した水素添加反応を行うことにより得ることができる。
変性剤を反応させる際の反応温度は、好ましくは0℃〜150℃、より好ましくは20℃〜120℃である。変性剤を反応させる際の反応時間は、他の条件によって異なるが、好ましくは24時間以内であり、より好ましくは0.1時間〜10時間である。
また、本実施の形態の水添ブロック共重合体は、α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、例えば、その無水物、エステル化物、アミド化物、イミド化物でグラフト変性させることにより、官能基を有する原子団と結合させてもよい。
α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の具体例としては、無水マレイン酸、無水マレイン酸イミド、アクリル酸又はそのエステル、メタアクリル酸又はそのエステル、エンド−シス−ビシクロ〔2,2,1〕−5−ヘプテン−2、3−ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の付加量は、水添ブロック共重合体100質量部に対して、通常0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部である。
グラフト変性する際の反応温度は、好ましくは100〜300℃、より好ましくは120〜280℃である。
グラフト変性する方法の詳細については、例えば、特開昭62−79211号公報を参照できる。
本実施の形態においては、上述した(I)水添ブロック共重合体(以下、成分(I)とも呼ぶ)と、(II)ゴム用軟化剤(以下、成分(II)とも呼ぶ)と、を特定の割合で組み合わせて、各種成形材料に適した水添ブロック共重合体組成物を得ることができる。
水添ブロック共重合体にゴム用軟化剤を特定の割合で組み合わせることで、組成物を柔軟化させると共に、良好な加工性を付与することができる。ゴム用軟化材としては、鉱物油や、液状もしくは低分子量の合成軟化剤が挙げられ、中でも、ナフテン系及び/又はパラフィン系のプロセスオイル又はエクステンダーオイルが好ましい。
鉱物油系ゴム用軟化剤とは、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素の50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環の炭素数が30〜45%のものがナフテン系、また芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれる。
水添ブロック共重合体組成物には、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、流動パラフィン等の合成軟化剤を用いてもよいが、上述した鉱物油系ゴム用軟化剤を用いることがより好ましい。
本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物中のゴム用軟化剤の配合量は、水添ブロック共重合体100質量部に対して100〜150質量部、好ましくは100〜130質量部である。ゴム用軟化剤の量が150質量部を超えるとゴム用軟化剤のブリードアウトを生じやすく、表面感触を悪化させる。また、ゴム用軟化剤が100質量部未満であると、水添ブロック重合体組成物の硬度が高くなるため好ましくない。
本実施の形態における水添ブロック共重合体とゴム用軟化剤とを含む水添ブロック共重合体組成物は、得られた粘弾性測定チャートにおいて、tanδ(損失正接)のピークが0℃〜40℃、好ましくは5℃〜35℃、より好ましくは10℃〜30℃に少なくとも1つ存在することが望ましい。該tanδのピークは、水添ブロック共重合体中の、共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる水添重合体ブロックBとゴム用軟化剤に起因するピークである。このピークが0℃〜40℃の範囲に少なくとも1つ存在することで、水添ブロック共重合体組成物の低反発性と柔軟性とのバランスが良好となる。なお、水添ブロック共重合体中のビニル芳香族化合物重合体ブロックAに起因するtanδのピークの存在位置としては、特に制限はないが、通常80℃を超え150℃以下の温度範囲内に存在する。
本実施の形態の水添ブロック共重合体(成分(I))は、ゴム用軟化剤(成分(II))に加えて、熱可塑性樹脂及びゴム状重合体からなる群から選択される少なくとも1種の成分(以下、これらを成分(III)とも呼ぶ)を更に組み合わせて、各種成形材料に適した水添ブロック共重合体組成物とすることもできる。
成分(III)の配合量は、成分(I)100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは10〜80質量部、更に好ましくは20〜60質量部である。成分(III)の配合量が上記範囲よりも多くなると、組成物の柔軟性を低下させたり、透明性を悪化させるおそれがある。
本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物中にポリプロピレン等の熱可塑性樹脂をブレンドすると、機械特性や耐熱性等に優れた組成物を得ることができる。
熱可塑性樹脂としては、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合樹脂及びその水素添加物(但し、本実施の形態の水添ブロック共重合体とは異なる)、上述したビニル芳香族化合物の重合体、上述したビニル芳香族化合物と他のビニルモノマー、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリル酸及びアクリルメチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等との共重合樹脂、ゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(MBS)等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、エチレンを50質量%以上含有するエチレンとこれと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びその加水分解物、エチレン−アクリル酸アイオノマーや塩素化ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレンを50質量%以上含有するプロピレンとこれと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−アクリル酸エチル共重合体や塩素化ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、エチレン−ノルボルネン樹脂等の環状オレフィン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂及びその加水分解物等を用いてもよい。
更に、熱可塑性樹脂として、アクリル酸及びそのエステルやアミドの重合体、ポリアクリレート系樹脂、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルの重合体、これらのアクリロニトリル系モノマーを50質量%以上含有する他の共重合可能なモノマーとの共重合体であるニトリル樹脂、ナイロン−46、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン−6ナイロン−12共重合体等のポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリ−4,4'−ジオキシジフェニル−2,2'−プロパンカーボネート等のポリカーボネート系重合体、ポリエーテルスルホンやポリアリルスルホン等の熱可塑性ポリスルホン、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリ4,4'−ジフェニレンスルフィド等のポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルケトン重合体又は共重合体、ポリケトン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオキシベンゾイル系重合体、ポリイミド系樹脂、1,2−ポリブタジエン、トランスポリブタジエン等のポリブタジエン系樹脂等を用いてもよい。
上述した熱可塑性樹脂(成分(III))の中でも、特に好ましいのは、ポリスチレン、ゴム変性スチレン系樹脂等のスチレン系樹脂、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブチレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−アクリル酸エステル系共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル系共重合体等のポリエチレン系重合体、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂である。これらの熱可塑性樹脂の数平均分子量は一般に1000以上、好ましくは5000〜500万、更に好ましくは1万〜100万である。
また、本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物中にゴム状重合体をブレンドすると、伸び特性等に優れた組成物を得ることができる。
ゴム状重合体としては、ブタジエンゴム及びその水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム及びその水素添加物(但し、本実施の形態の水添ブロック共重合体とは異なる)、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びその水素添加物、1,2−ポリブタジエン、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチエン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム等が挙げられる。
また、ゴム状重合体として、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体及びその水素添加物等のスチレン系エラストマー、天然ゴム等を用いてもよい。
上述したゴム状重合体(成分(III))の中でも、特に好ましいのは、スチレン−ブタジエンブロック共重合体及びその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体及びその水素添加物等のスチレン系エラストマー、1、2−ポリブタジエン、エチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴムである。また、これらのゴム状重合体は、官能基を付与した変性ゴムであってもよい。
ゴム状重合体の数平均分子量は、好ましくは1万以上であり、より好ましくは2万〜100万、更に好ましくは3万〜80万である。
また、これらの熱可塑性樹脂及びゴム状重合体は、必要に応じて2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には、熱可塑性樹脂成分同志でも、ゴム状重合体成分同志でも、あるいは熱可塑性樹脂とゴム状重合体の併用でもかまわない。
本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物には、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類としては、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限されない。
添加剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料や着色剤、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤、離型剤、フタル酸エステル系やアジピン酸エステル化合物、アゼライン酸エステル化合物等の脂肪酸エステル系、ミネラルオイル等の可塑剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、その他添加剤或いはこれらの混合物等が挙げられる。
本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物には、必要に応じて、任意の充填材及び難燃剤を配合することができる。充填材及び難燃剤としては、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられる物であれば特に制限されない。
充填剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、グラファイト、酸化チタン、チタン酸カリウムウイスカー、カーボンファイバー、アルミナ、カオリンクレー、ケイ酸、ケイ酸カルシウム、石英、マイカ、タルク、クレー、ジルコニア、チタン酸カリウム、アルミナ、金属粒子等の無機充填剤、木製チップ、木製パウダー、パルプ等の有機充填剤が挙げられる。充填剤の形状としては、特に限定されず、鱗片状、球状、粒状、粉体、不定形状等のものを用いることができる。これらの充填剤は、単独又は複数を組み合わせて使用することが可能である。
難燃剤としては、臭素化合物が主なハロゲン系、芳香族化合物が主なリン系、金属水酸化物が主な無機系等の難燃剤が挙げられるが、近年環境問題等により無機難燃剤が主流となっており好ましい。無機難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、硼酸亜鉛、硼酸バリウム等の金属酸化物、その他炭酸カルシウム、クレー、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の主に含水金属化合物等が挙げられる。なお、上記難燃剤の中でも、難燃性向上の観点から、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物が好ましい。なお、上記難燃剤の中には、それ自身の難燃性発現効果は低いが、他の難燃剤と併用することで相乗的により優れた効果を発揮する、いわゆる難燃助剤も含まれる。
充填剤、難燃剤としては、シランカップリング剤等の表面処理剤であらかじめ表面処理を行ったタイプを使用することもできる。
また、これらの充填剤、難燃剤は、必要に応じ2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、充填剤成分同志でも、難燃剤成分同志でも、あるいは充填剤と難燃剤の併用でもかまわない。
本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物には、必要に応じて、その他「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)等に記載された添加剤或いはこれらの混合物等を添加してもよい。
本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物は、必要に応じて架橋することができる。架橋の方法としては、過酸化物、イオウ等の架橋剤及び必要に応じて共架橋剤等の添加による化学的方法、放射線架橋等を用いることができる。架橋プロセスとしては、静的な方法、動的加硫法等を用いることができる。
架橋剤としては、有機過酸化物、硫黄、フェノール系、イソシアネート系、チウラム系、モルフォリンジスルフィド等を挙げることができ、これらはステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛等の架橋助剤、共架橋剤、加硫促進剤等と併用することができる。
有機過酸化物架橋剤としては、ヒドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド等を挙げることができる。また、電子線、放射線等による物理的架橋法も使用可能である。
本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物の製造方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等を用いることができる。本実施の形態においては、押出機による溶融混合法が、生産性、良混練性の観点から好ましい。得られる水添共重合体組成物の形状としては、特に限定されないが、ペレット状、シート状、ストランド状、チップ状等が挙げられる。また、溶融混練後、直接成形品とすることもできる。
本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物の発泡成形体を得る場合に適用可能な方法としては、化学的方法、物理的方法等が挙げられ、各々、無機系発泡剤、有機系発泡剤等の化学的発泡剤、物理発泡剤等の発泡剤の添加等により材料内部に気泡を分布させることができる。水添ブロック共重合体組成物を発泡材料とすることにより、軽量化、 柔軟性向上、意匠性向上等を図ることができる。
ここで、無機系発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウム、金属粉等が挙げられる。
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N、N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N、N'−ジニトロソ−N、N'−ジメチルテレフタルアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p、p'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。
物理的発泡剤としては、ペンタン、ブタン、ヘキサン等の炭化水素、塩化メチル、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、窒素、空気等のガス、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ハイドロフルオロカーボン等のフッ素化炭化水素等が挙げられる。
本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物の成形品は、成形品の表面に、必要に応じて、外観性向上、耐候性、耐傷つき性等向上等を目的として、印刷、塗装、コーティング、シボ等の加飾等を行うことができる。
コーティング剤としては、2液硬化型、湿気硬化型、溶剤揮発硬化型のウレタン系コーティング剤が好ましく、それらのコーティング剤を用いて成形品の表面にウレタン皮膜を設けることができる。印刷性、塗装性、コーティング性等を向上させる目的で表面処理を行う場合、表面処理の方法としては、特に制限されず、物理的方法、化学的方法等を用いることができ、例えば、コロナ放電処理、オゾン処 理、プラズマ処理、火炎処理、酸・アルカリ処理等を挙げることができる。これらの中でも、コロナ放電処理が、実施の容易さ、コスト、連続処理が可能である等の観点から好ましい。
本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物は、必要に応じて各種添加剤を配合して、様々な用途に用いることができる。本実施の形態の水添共重合体組成物の具体的態様に関しては、(i)補強性充填剤配合物、(ii)架橋物、(iii)発泡体、(iv)多層フィルム及び多層シート等の成形品、(v)建築材料、(vi)制振・防音材料、(vii)電線被覆材料、(viii)高周波融着性組成物、(ix)スラッシュ成形材料、(x)粘接着性組成物、(xi)アスファルト組成物、(xii)医療用具材料、(xiii)自動車材料等に好適に用いることができる。
本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物は、上記のように様々な用途に使用できるが、成形品として使用する場合の成形方法としては、押出成形、射出成形、中空成形、圧空成形、真空成形、発泡成形、複層押出成形、複層射出成形、高周波融着成形、スラッシュ成形及びカレンダー成形等を用いることができる。成形品の具体例としては、シート、フィルム、チューブや、不織布や繊維状の成形品、合成皮革等が挙げられる。
以下、実施例により本実施の形態を具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
以下の実施例における、重合体の特性や物性の測定方法は以下の通りである。
(1)水添ブロック共重合体の特性
(1−1)水添ブロック共重合体中のスチレン含有量
水添前の共重合体を用い、紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)を用いて測定した。
(1−2)水添ブロック共重合体中のビニル芳香族化合物重合体Aの含有量
水添前の共重合体を用い、I.M.Kolthoff、etal.、J.Polym.Sci.1、429(1946)に記載の四酸化オスミウム酸法で測定した。共重合体の分解には、オスミウム酸0.1g/125ml第3級ブタノール溶液を用いた。
(1−3)水添ブロック共重合体のビニル結合量
水添前の共重合体を使用し、赤外分光光度計(日本分光社製、FT/IR−230)を用いて測定した。共重合体のビニル結合量はハンプトン法により算出した。
(1−4)水添ブロック共重合体の重量平均分子量及び分子量分布
GPC〔装置は東ソー株式会社製、HLC−8120GPC〕により測定した。溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は温度35℃で行った。
重量平均分子量と数平均分子量が既知の市販の標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を使用し、重量平均分子量を求めた。
また、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比から算出した。
(1−5)水添ブロック共重合体の共役ジエン単量単位の二重結合の水素添加率(水添率)
水添後の水添共重合体を用い、核磁気共鳴装置(装置名:DPX−400;ドイツ国、BRUKER社製)で測定した。
(1−6)変性率
変性した水添ブロック共重合体は、シリカ系ゲルカラムには吸着するが、ポリスチレン系ゲルカラムには吸着しない。この特性を利用して測定を行った。即ち、試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液に関して、上記(1―5)と同様に行った標準ポリスチレン系ゲルカラムのGPCと、シリカ系ゲルカラム(米国、デュポン社製Zorbax)のGPCの両クロマトグラムを測定し、それらの差分よりシリカ系ゲルカラムへの変性水添ブロック共重合体の吸着量を測定し、変性率を求めた。
(2)水添ブロック共重合体組成物の特性
(2−1)加工性:流動性<メルトフローレート(MFR)>
JIS K6758に従い、130℃、荷重2.16kgのMFRを測定した。
(2−2)柔軟性:硬度
JIS K6253に従い、デュロメータタイプAで10秒後の値を測定した。
(2−3)機械強度:破断強度、破断伸び
JIS K6251に従い、3号ダンベル、クロスヘッドスピード500mm/分で測定した。破断強度が10kg/cm2未満では、強度が不足して、実用上問題となる。
(2−4)透明性
2mm厚のプレスシートを作成し、5枚重ねて新聞の上に置き、活字の読み取れる程度を目視で確認し、以下の基準で判定した。
○:鮮明に活字が読み取れる。
△:不鮮明であるが、活字が読み取れる。
×:活字が読み取れない。
(2−5)反発弾性:ダンロップ反撥
BS903に従い、23℃で測定した。50%以上では、反発弾性が高すぎて実用上問題となる。
(2−6)表面感触
2mm厚のプレスシートを作成し、以下の方法で評価した。
・粘着感:シート表面を指で触り、ベタツキの有無を確認した。
・オイルブリード:シート間に紙を挟み、24時間後、紙へのオイルの移行の有無を確認した。ベタツキ、オイルブリードのいずれかがある場合は、実用上問題となる。
(2−7)tanδ(損失正接)のピーク温度
粘弾性測定解析装置((株)レオロジ社製、型式DVE−V4)を用い、粘弾性スペクトルを測定して求めた。測定周波数は10Hzとした。
(2−8)接着性
T型剥離試験による接着強さの測定から接着性を評価した。(接着強さが大きいほど、接着性が優れる。)接着条件と剥離試験条件は以下の通りである。
[接着条件]
水添ブロック共重合体組成物を、2mm厚のシートに200℃でプレス成形後、シート表面を次亜塩素酸を含むトリアリルイソシアヌレートの酢酸エチル3%溶液で表面処理し、更に湿気硬化型のポリウレタンの酢酸ブチル溶液に浸漬して、表面をウレタンコーティングしたサンプルシートを作製し、ウレタンエラストマーからなる2mm厚のシートと、2液硬化型ウレタン接着剤で接着した。2cm幅の短冊状にシートを切断し、測定を行った。
[剥離試験]
剥離速度:200mm/分。剥離強度は、kg/2cmの単位で測定した。
剥離強度は強いほど望ましい。接着性が十分でない場合の剥離は、ウレタンコーティング層と水添ブロック共重合体組成物の接着面で起こるが、接着性に優れる場合は、水添ブロック共重合体組成物からなるシート内部の破断が起こり、剥離強度が向上する。
<水添触媒の調製>
以下の実施例及び比較例において、共重合体の水添反応に用いた水添触媒は、以下の方法により調製した。
窒素置換した反応容器に、乾燥、精製したシクロヘキサン1Lを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
<水添ブロック共重合体の調製>
(ポリマー1)
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用してバッチ重合を行った。はじめに、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。次いで、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.06質量部とN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAと略す)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.85モル添加し、70℃で1時間重合した。その後、ブタジエン40質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で1時間重合した。この時点でサンプリングしたポリマーのポリブタジエン部のビニル結合量を測定したところ、60%であった。
次に、ブタジエン14質量部とスチレン28質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で1時間重合した。この時点でサンプリングしたポリマーのビニル結合量を測定したところ、48%であった。
最後に、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入して、70℃で1時間重合した。
得られたポリマーは、スチレン含有量46質量%、ポリスチレンブロック含有量18質量%、ポリブタジエンブロック部のビニル結合量48質量%、分子量12.1万、分子量分布1.1であった。
次に、得られたポリマーに、上記水添触媒をポリマー100質量部に対してチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られた水添ブロック共重合体(ポリマー1)の水素添加率は70%であった。
(ポリマー2)
ポリマー1と同様にポリマー2を調製した。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.06質量部と、TMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して0.85モル添加し、70℃で1時間重合した。その後、ブタジエン27質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で1時間重合した。この時点でサンプリングしたポリマーのポリブタジエン部のビニル結合量を測定したところ、59%であった。
次に、ブタジエン14質量部とスチレン33質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で1時間重合した。
最後に、スチレン16質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入して、70℃で1時間重合した。
得られたポリマーは、スチレン含有量59質量%、ポリスチレンブロック含有量26質量%、ポリブタジエンブロック部のビニル結合量47質量%、分子量11.9万、分子量分布1.1であった。
次に、得られたポリマーをポリマー1と同様の方法により水添反応に供し、水添ブロック共重合体(ポリマー2)を得た。
得られた水添ブロック共重合体(ポリマー2)の水素添加率は68%であった。
(ポリマー3)
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用してバッチ重合を行った。はじめに、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。次いで、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.06質量部とTMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して0.85モル添加し、70℃で1時間重合した。
その後、ブタジエン40質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で1時間重合した。この時点でサンプリングしたポリマーのポリブタジエン部のビニル結合量を測定したところ、60%であった。
次に、ブタジエン14質量部とスチレン28質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で1時間重合した。この時点でサンプリングしたポリマーのビニル結合量を測定したところ、48%であった。
次に、スチレン8質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入して、70℃で1時間重合した。
更に、変性剤として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを、重合に使用したn−ブチルリチウムと当モル添加して、70℃で20分反応させ、変性ブロック共重合体を得た。
得られたポリマーは、スチレン含有量46質量%、ポリスチレンブロック含有量18質量%、ポリブタジエンブロック部のビニル結合量48質量%、分子量12.1万、分子量分布1.1であった。
次に、得られたポリマーに、上記水添触媒をポリマー100質量部に対してチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られた水添共重合体(ポリマー3)の水素添加率は70%であった。また、得られた水添共重合体のDSCを測定したところ、結晶化ピークは存在しなかった。
得られた水添ブロック共重合体(ポリマー1〜3)の特性を表1にまとめた。
Figure 0005236417
[実施例1〜4]
得られた水添ブロック共重合体(ポリマー1〜3)をペレットにした後、表2の組成でゴム用軟化剤(オイル)を添加して二軸押出機(PCM30)で混練し、ペレット化することにより水添ブロック共重合体組成物を得た。
押出条件は、シリンダー温度130℃、スクリュー回転数300rpmであった。
得られた組成物を160℃で圧縮成形して2mm厚のシートを作成し、物性測定片を得た。ゴム用軟化剤は、パラフィンオイル(PW−90:出光興産社製)を使用した。
[比較例1〜4]
ポリマー1を用い、実施例と同様に組成物を得、成形シートを作成し、物性を測定した。
各試験片の物性を測定し、その結果を表2にまとめた。
Figure 0005236417
表2の結果から明らかなように、本実施の形態の水添ブロック共重合体組成物は、透明性、柔軟性、低反発性、表面感触(軟化剤のブリードが無い)に優れ、衝撃緩衝性と外観性(発色性、透明性)を必要とされる材料として好適なものであった。
本発明の水添ブロック共重合体を含む組成物は、透明性、柔軟性、低反発性、表面感触(軟化剤のブリードがない)に優れ、外観性(発色性、透明性)を有する衝撃緩衝性材料として、各種用途に好適に用いることができる。
これらの特徴を生かして、射出成形、押出成形等によって各種形状の成形品に加工でき、医療用具材料、家電用品、工業部品、スポーツ用具、玩具等への産業上利用可能性を有する。

Claims (7)

  1. (I)下記(1)〜(6)を満たし、
    )下記(a)、(b)及び(c)の重合体ブロックをそれぞれ少なくとも1個有する
    (a)ビニル芳香族化合物重合体ブロックA
    (b)共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる水添共重合体ブロックB
    (c)ビニル結合量が40%以上の共役ジエン重合体の水添重合体ブロックC
    (2)前記水添ブロック共重合体中の前記ビニル芳香族化合物の含有量が40質量%を超え70質量%未満
    (3)重量平均分子量が5万〜50万
    (4)前記水添共重合体ブロックBの水添前共重合体を構成する共役ジエン単量体単位のビニル結合量が10%以上20%未満
    (5)前記共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率が50%以上
    (6)前記水添ブロック共重合体中の前記ビニル芳香族化合物重合体ブロックAの含有量が5質量%以上30質量%以下、前記水添共重合体ブロックBの含有量が30質量%以上50質量%以下、前記水添重合体ブロックCの含有量が35質量%を超え50質量%以下
    且つ、粘弾性測定チャートにおいて、tanδ(損失正接)のピークが10℃〜50℃、−70℃〜−20℃に各々少なくとも1つ存在する、水添ブロック共重合体100質量部と、
    (II)ゴム用軟化剤100〜150質量部と、
    を含む水添ブロック共重合体組成物であって、
    JIS K6253に従いデュロメータタイプAで測定した硬度が5〜25、BS903に従い23℃で測定した反発弾性が50%未満である、水添ブロック共重合体組成物。
  2. 前記水添ブロック共重合体は、前記ビニル芳香族化合物重合体ブロックAを少なくとも2個有する、請求項1記載の水添ブロック共重合体組成物。
  3. 前記水添ブロック共重合体は、重合体の両末端に前記ビニル芳香族化合物重合体ブロックAを有する、請求項1又は2記載の水添ブロック共重合体組成物。
  4. 前記水添ブロック共重合体は、官能基を有する原子団と結合している、請求項1〜のいずれか1項記載の水添ブロック共重合体組成物。
  5. 粘弾性測定チャートにおいてtanδ(損失正接)のピークが0℃〜40℃に少なくとも1つ存在する、請求項1〜のいずれか1項記載の水添ブロック共重合体組成物。
  6. 請求項1〜のいずれか1項記載の水添ブロック共重合体組成物を架橋して得られる成形品。
  7. 前記成形品の表面にコーティングしたウレタン皮膜を更に備える、請求項記載の成形品。
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