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JP2005206808A - 軟質フィルム及びシート - Google Patents

軟質フィルム及びシート Download PDF

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JP2005206808A
JP2005206808A JP2004367447A JP2004367447A JP2005206808A JP 2005206808 A JP2005206808 A JP 2005206808A JP 2004367447 A JP2004367447 A JP 2004367447A JP 2004367447 A JP2004367447 A JP 2004367447A JP 2005206808 A JP2005206808 A JP 2005206808A
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vinyl aromatic
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diene copolymer
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Kazuhisa Kodama
和寿 小玉
Masafumi Shimakage
雅史 島影
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JSR Corp
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Abstract

【課題】優れた強度、耐擦過性、及び耐破れ性を有する軟質フィルム及びシートを提供する。
【解決手段】少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体を水素添加した所定の条件を満たす水添ジエン系共重合体、又は、必要に応じこの水添ジエン系共重合体以外の熱可塑性重合体とが、所定の割合で含まれる重合体組成物からなる軟質フィルム及びシート。
【選択図】なし

Description

本発明は、軟質フィルム及びシートに関し、更に詳しくは、優れた強度、耐擦過性、及び耐破れ性を有する軟質フィルム及びシートに関する。
ポリプロピレン製のフィルム及びシートは、安価であるうえに、耐熱性、機械的特性に優れることから、各種用途に好適に使用されている。しかしながら低温での耐衝撃性等が十分であるとはいえない場合もあり、更には、柔軟性やヒートシール性等の特性についても限界があるため、その用途には種々の制約があるという問題があった。
上記問題を解消すべく、ポリプロピレン系軟質フィルム・シートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1において開示されたポリプロピレン系軟質フィルム・シートは、優れた耐衝撃性、柔軟性、及びヒートシール性等の諸特性に優れている。しかし、近年の急速な技術開発の進展に伴って要求される耐擦過性や耐破れ性の特性については未だ十分なレベルであるとはいえず、更なる改良が求められている。
特開平9−25347号公報
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、優れた強度、耐擦過性、及び耐破れ性を有する軟質フィルム及びシートを提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ビニル芳香族化合物を特定割合及び特定ブロック構造で共重合させた水添ジエン系共重合体によって、強度、耐擦過性、及び耐破れ性を向上させることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下に示す軟質フィルム及びシートが提供される。
[1]少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体からなる軟質フィルム及びシート(以下、「第一の軟質フィルム及びシート」ともいう)。
(1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
(2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、前記(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜80%である。
(3):前記水添ジエン系共重合体中の、前記共役ジエン化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
[2]少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体(イ)、並びに、前記水添ジエン系共重合体(イ)以外の熱可塑性重合体(ロ)が、質量比で(イ)/(ロ)=99/1〜1/99の割合で含まれる(但し、(イ)+(ロ)=100である)重合体組成物からなる軟質フィルム及びシート(以下、「第二の軟質フィルム及びシート」ともいう)。
(1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
(2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、前記(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜80%である。
(3):前記水添ジエン系共重合体中の、前記共役ジエン化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
[3]少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体(イ)、並びに、前記水添ジエン系共重合体(イ)以外の熱可塑性重合体(ロ)が、質量比で(イ)/(ロ)=99/1〜1/99の割合で含まれる(但し、(イ)+(ロ)=100である)重合体組成物からなる軟質フィルム及びシート(以下、「第三の軟質フィルム及びシート」ともいう)。
(1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
(2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)が10〜80%である。
(3):前記水添ジエン系共重合体中の、前記共役ジエン化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
[4]少なくとも2つの、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、ビニル結合含量が20〜95%である少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(D)とを含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体(イ)、並びに、前記水添ジエン系共重合体(イ)以外の熱可塑性重合体(ロ)が、質量比で(イ)/(ロ)=99/1〜1/99の割合で含まれる(但し、(イ)+(ロ)=100である)重合体組成物からなる軟質フィルム及びシート(以下、「第四の軟質フィルム及びシート」ともいう)。
(1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が10〜70質量%である。
(2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、前記(D)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜100%である。
(3):前記水添ジエン系共重合体中に占める、前記(C)ブロックの割合が10〜80質量%である。
[5]少なくとも2つの、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、ビニル結合含量が20〜95%である少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(D)とを含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体(イ)、並びに、前記水添ジエン系共重合体(イ)以外の熱可塑性重合体(ロ)が、質量比で(イ)/(ロ)=99/1〜1/99の割合で含まれる(但し、(イ)+(ロ)=100である)重合体組成物からなる軟質フィルム及びシート(以下、「第五の軟質フィルム及びシート」ともいう)。
(1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が10〜70質量%である。
(2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)が0〜80%である。
(3):前記水添ジエン系共重合体は、示差走査熱量測定法(DSC法)により50〜150℃の範囲に測定される融解ピークを有する。
[6]前記熱可塑性重合体(ロ)がプロピレン系重合体である前記[2]〜[5]のいずれかに記載の軟質フィルム及びシート。
[7]前記オレフィン系重合体がプロピレン系重合体である前記[6]に記載の軟質フィルム及びシート。
本発明の軟質フィルム及びシート(第一の軟質フィルム及びシート)は、少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体を水素添加した所定の条件を満たす水添ジエン系共重合体からなるものであるため、優れた強度、耐擦過性、及び耐破れ性を有するという効果を奏するものである。
本発明の軟質フィルム及びシート(第二及び第三の軟質フィルム及びシート)は、少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体を水素添加した所定の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、この水添ジエン系共重合体以外の熱可塑性重合体が、所定の割合で含まれる重合体組成物からなるものであるため、優れた強度、耐擦過性、及び耐破れ性を有するという効果を奏するものである。
また、本発明の軟質フィルム及びシート(第四及び第五の軟質フィルム及びシート)は、少なくとも2つの、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、ビニル結合含量が20〜95%である少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(D)とを含有するブロック共重合体を水素添加した所定の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、この水添ジエン系共重合体以外の熱可塑性重合体が、所定の割合で含まれる重合体組成物からなるものであるため、優れた強度、耐擦過性、及び耐破れ性を有するという効果を奏するものである。
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜、設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。なお、本明細書において、単に「本発明の軟質フィルム及びシート」というときは、第一〜第五の軟質フィルム及びシートのいずれをも指し示す。また、本明細書において「フィルム」とは、その厚みが10〜200μmの膜状の成形体をいい、「シート」とは、その厚みが200μmを超えて20mm以下の膜状の成形体をいう。
本発明の第一の軟質フィルム及びシートは、少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体からなるものである。
(1):水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
(2):水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜80%であるか、或いは水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)が10〜80%である。
(3):水添ジエン系共重合体中の、共役ジエン化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
本発明の第一の軟質フィルム及びシートを構成する水添ジエン系共重合体として、具体的には下記構造式(1)〜(3)で表されるブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。
(A−B)m …構造式(1)
(A−B)m−Y …構造式(2)
A−(B−A)n …構造式(3)
(上記構造式(1)〜(3)中、Aは、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(以下、「(A)ブロック」ともいう)であり、実質的にビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックであれば一部共役ジエン化合物が含まれていてもよい。好ましくは、ビニル芳香族化合物を90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上含有する重合体ブロックである。また、Bは、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロック(以下、「(B)ブロック」ともいう)であり、好ましくは、共役ジエン化合物が20質量%以上含有されるビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。また、Yはカップリング剤の残基であり、mは2〜5の整数、nは1〜5の整数をそれぞれ表す。)
ここで、上記構造式(1)〜(3)で表されるブロック共重合体中の2つ以上の「(A)ブロック」は、同一であってもよく、組成、又は分子量等が異なるものであってもよい。同様に「(B)ブロック」がブロック共重合体に2つ以上含有される場合は、2つ以上の「(B)ブロック」は同一であってもよく、組成、又は分子量等が異なるものであってもよい。更には、上記重合体ブロック、又は共重合体ブロック以外の、例えば、共役ジエン化合物が水添された重合体等の他の重合体ブロック(以下、「(E)ブロック」ともいう)が、ブロック共重合体末端、又はブロック共重合体鎖中に、1又は2以上共重合されていてもよい。
本発明の第二及び第三の軟質フィルム及びシートは、少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体(イ)、並びに、この水添ジエン系共重合体(イ)以外の熱可塑性重合体(ロ)が、質量比で(イ)/(ロ)=99/1〜1/99の割合で含まれる(但し、(イ)+(ロ)=100である)重合体組成物からなるものである。
(1):水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
(2):水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜80%であるか、或いは水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)が10〜80%である。
(3):水添ジエン系共重合体中の、共役ジエン化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
本発明の第二及び第三の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体として、具体的には下記構造式(1)〜(3)で表されるブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。
(A−B)m …構造式(1)
(A−B)m−Y …構造式(2)
A−(B−A)n …構造式(3)
(上記構造式(1)〜(3)中、Aは、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(以下、「(A)ブロック」ともいう)であり、実質的にビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックであれば一部共役ジエン化合物が含まれていてもよい。好ましくは、ビニル芳香族化合物を90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上含有する重合体ブロックである。また、Bは、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロック(以下、「(B)ブロック」ともいう)であり、好ましくは、共役ジエン化合物が20質量%以上含有されるビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。また、Yはカップリング剤の残基であり、mは2〜5の整数、nは1〜5の整数をそれぞれ表す。)
ここで、上記構造式(1)〜(3)で表されるブロック共重合体中の2つ以上の「(A)ブロック」は、同一であってもよく、組成、又は分子量等が異なるものであってもよい。同様に「(B)ブロック」がブロック共重合体に2つ以上含有される場合は、2つ以上の「(B)ブロック」は同一であってもよく、組成、又は分子量等が異なるものであってもよい。更には、上記重合体ブロック、又は共重合体ブロック以外の、例えば、共役ジエン化合物が水添された重合体等の他の重合体ブロック(以下、「(E)ブロック」ともいう)が、ブロック共重合体末端、又はブロック共重合体鎖中に、1又は2以上共重合されていてもよい。
一方、本発明の第四の軟質フィルム及びシートは、少なくとも2つの、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、ビニル結合含量が20〜95%である少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(D)とを含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体(イ)、並びに、この水添ジエン系共重合体(イ)以外の熱可塑性重合体(ロ)が、質量比で(イ)/(ロ)=99/1〜1/99の割合で含まれる(但し、(イ)+(ロ)=100である)重合体組成物からなるものである。
(1):水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が10〜70質量%である。
(2):水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、(D)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜100%である。
(3):水添ジエン系共重合体中に占める、(C)ブロックの割合が10〜80質量%である。
また、本発明の第五の軟質フィルム及びシートは、少なくとも2つの、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、ビニル結合含量が20〜95%である少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(D)とを含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体(イ)、並びにこの水添ジエン系共重合体(イ)以外の熱可塑性重合体(ロ)が、質量比で(イ)/(ロ)=99/1〜1/99の割合で含まれる(但し、(イ)+(ロ)=100である)重合体組成物からなるものである。
(1):水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が10〜70質量%である。
(2):水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)が0〜80%である。
(3):水添ジエン系共重合体は、示差走査熱量測定法(DSC法)により50〜150℃の範囲に測定される融解ピークを有する。
本発明の第四及び第五の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体として、具体的には下記構造式(4)〜(6)で表されるブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。
(C−D)m …構造式(4)
(C−D)m−Y …構造式(5)
C−(D−C)n …構造式(6)
(上記構造式(4)〜(6)中、Cは、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(以下、「(C)ブロック」ともいう)であり、実質的に共役ジエン化合物からなる重合体ブロックであれば一部ビニル芳香族化合物等共役ジエン化合物と共重合可能な化合物が含まれていてもよい。好ましくは、共役ジエン化合物を95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上含有する重合体ブロックである。また、Dは、ビニル結合含量が20〜95%である、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体ブロック(以下、「(D)ブロック」ともいう)である。また、Yはカップリング剤の残基であり、mは1〜5の整数、nは1〜5の整数をそれぞれ表す。)
ここで、上記構造式(4)〜(6)で表されるブロック共重合体中の2つ以上の「(C)ブロック」は、同一であってもよく、組成、又は分子量等が異なるものであってもよい。同様に「(D)ブロック」がブロック共重合体に2つ以上含有される場合は、2つ以上の「(D)ブロック」は同一であってもよく、組成、又は分子量等が異なるものであってもよい。更には、上記重合体ブロック、又は共重合体ブロック以外の、例えば、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック等の他の重合体ブロック(以下、「(F)ブロック」ともいう)が、ブロック共重合体末端、又はブロック共重合体鎖中に、1又は2以上共重合されていてもよい。
上記構造式(1)〜(6)で表されるブロック共重合体は、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒、又はベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒等の不活性有機溶媒中、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物、又はビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とこれらと共重合可能な他の単量体を、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてリビングアニオン重合することにより得ることができる。なお、このブロック共重合体(以下、「水添前重合体」ともいう)を水素添加することにより、水添ジエン系共重合体を容易に得ることができる。
ビニル芳香族化合物としては、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができる。この中で、スチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセン、クロロプレン等を挙げることができる。この中で、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
重合開始剤である有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物等を挙げることができ、特にn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物が好ましい。有機アルカリ金属化合物の使用量については特に限定はなく、必要に応じて種々の量を使用できるが、通常はモノマー100質量部あたり0.02〜15質量部の量で、好ましくは0.03〜5質量部の量で用いられる。
また、重合温度は、一般に−10〜150℃、好ましくは0〜120℃である。更に、重合系の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガスをもって置換することが望ましい。重合圧力は、上記重合範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに十分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。
また、ビニル芳香族化合物、及び共役ジエン化合物を含有する共重合体ブロックを重合させる過程において、これらの化合物の単量体を重合系に投入する方法としては特に限定されず、一括、連続的、間欠的、又はこれらを組み合わせた方法を挙げることができる。更には、ビニル芳香族化合物、及び共役ジエン化合物を含有する共重合体ブロックを重合させるときの、その他の共重合成分の添加量、極性物質の添加量、重合容器の個数と種類等、及び上記単量体の投入方法は、得られる水添ジエン系共重合体の物性が好ましくなるよう選べばよい。
前述の水添前重合体は、上記の方法でブロック共重合体を得た後、カップリング剤を使用して共重合体分子鎖がカップリング残基を介した共重合体であってもよい。使用されるカップリング剤として、例えばジビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジエチル、ピロメリット酸ジアンヒドリド、炭酸ジエチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、(ジクロロメチル)トリクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、テトラエトキシシラン、テトラクロロスズ、1,3−ジクロロ−2−プロパノン等を挙げることができる。この中で、ジビニルベンゼン、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシランが好ましい。
本発明の第一の軟質フィルム及びシートを構成する水添ジエン系共重合体、又は本発明の第二〜第五の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体は、上記のようにして得られたブロック共重合体を部分的又は選択的に水添して得られるものである。この水添の方法、反応条件については特に限定はなく、通常は、20〜150℃、0.1〜10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で行われる。
この場合、水添率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、又は反応時間等を変えることにより任意に選定することができる。水添触媒として通常は、元素周期表Ib、IVb、Vb、VIb、VIIb、VIII族金属のいずれかを含む化合物、例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を用いることができる。具体的には、例えば、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン系化合物、Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒、Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒、Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体、及び水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等を挙げることができる。この中で、Ti、Zr、Hf、Co、Niのいずれかを含むメタロセン化合物は、不活性有機溶媒中、均一系で水添反応できる点で好ましい。更に、Ti、Zr、Hfのいずれかを含むメタロセン化合物が好ましい。特に、チタノセン化合物とアルキルリチウムとを反応させた水添触媒は安価で工業的に特に有用な触媒であるので好ましい。なお、上記水添触媒は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。水添後は、必要に応じて触媒の残渣を除去し、又はフェノール系又はアミン系の老化防止剤を添加し、その後、水添ジエン系共重合体溶液から水添ジエン系共重合体を単離する。水添ジエン系共重合体の単離は、例えば、水添ジエン系共重合体溶液にアセトン又はアルコール等を加えて沈殿させる方法、水添ジエン系共重合体溶液を熱湯中に撹拌下投入し、溶媒を蒸留除去する方法等により行うことができる。
本発明の第一の軟質フィルム及びシートを構成する水添ジエン系共重合体、又は本発明の第二及び第三の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位の含有量(以下、「全ビニル芳香族化合物単位含有量」ともいう)は、20〜70質量%、好ましくは25〜65質量%の範囲内である。全ビニル芳香族化合物単位含有量が70質量%を超えると、得られるフィルム及びシートの柔軟性が不足する傾向にある。また、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20質量%未満であると、得られるフィルム及びシートの耐擦過性、及び耐破れ性が不足する傾向にある。
一方、本発明の第四及び第五の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体の全ビニル芳香族化合物単位含有量は、10〜70質量%、好ましくは15〜60質量%の範囲内である。全ビニル芳香族化合物単位含有量が70質量%を超えると、得られるフィルム及びシートの柔軟性が不足する傾向にある。また、全ビニル芳香族化合物単位含有量が10質量%未満であると、得られるフィルム及びシートの耐擦過性、及び耐破れ性が不足する傾向にある。
本発明の第一の軟質フィルム及びシートを構成する水添ジエン系共重合体、又は本発明の第二の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体中の、全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)(以下、単に「BS割合」ともいう)は10〜80%であり、25〜75%であることが好ましく、30〜70%であることが更に好ましい。BS割合が10%未満であると得られるフィルム及びシートの耐擦過性、及び耐破れ性が不足する傾向にあり、80%を超えると得られるフィルム及びシートの柔軟性が不足する傾向にある。
一方、本発明の第四の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体中のBS割合は10〜100%であり、20〜100%であることが好ましく、30〜100%であることが更に好ましい。BS割合が10%未満であると、得られるフィルム及びシートの耐擦過性、及び耐破れ性が不足する傾向にある。
なお、BS割合は、重合時のビニル芳香族化合物の仕込量から以下の式を用いて求められる。
BS割合(%)=(水添ジエン系共重合体のそれぞれの(B)ブロック、又は(D)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物の仕込合計量/水添ジエン系共重合体中に占める全ビニル芳香族化合物の仕込合計量)×100
また、本発明の第三の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体は、水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)(以下、単に「LS割合」ともいう)が10〜80%であり、20〜70%であることが好ましく、30〜50%であることが更に好ましい。LS割合が10%未満であると、得られるフィルム及びシートの柔軟性が不足する傾向にあり、80%を超えると、得られるフィルム及びシートの耐擦過性、及び耐破れ性が不足する傾向にある。
一方、本発明の第五の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体のLS割合は、0〜80%であり、0〜70%であることが好ましく、0〜50%であることが更に好ましい。LS割合が80%を超えると得られるフィルム及びシートの耐擦過性、及び耐破れ性が不足する傾向にある。
ここで、本発明にいう「LS割合」について説明する。一般に、スチレン−ブタジエン共重合体の1H−NMRスペクトルでは、スチレンのフェニルプロトンは、そのケミカルシフトが7ppm付近、及び6.5ppm付近の2つのピークを示し、6.5ppm付近のピークは長連鎖を形成したスチレンのオルト位のフェニルプロトンであるとされている(Boveyら、J.Polym.Sci.Vol38,1959,p73〜90)。そこで、本発明では、これらのピークのうち、高磁場側の6.5ppm付近のピークを「長連鎖のビニル芳香族化合物」として、270MHzの1H−NMRで測定される7.6〜6.0ppm部分の面積強度を全ビニル芳香族化合物単位含有量、6.8〜6.0ppm部分の面積強度を長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量とし、LS割合を、以下の式を用いて求める。
LS割合(%)=〔(6.8〜6.0ppm部分の面積強度×2.5)/(7.6〜6.0ppm部分の面積強度)〕×100
本発明の第一の軟質フィルム及びシートを構成する水添ジエン系共重合体、又は本発明の第二及び第三の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体における、水添前の共役ジエン化合物由来のビニル結合(1,2−及び3,4−ビニル結合)含量は、30〜75%であり、40〜75%であることが好ましく、50〜75%であることが更に好ましく、60〜75%であることが特に好ましい。かかる含量が30%未満であると、得られるフィルム及びシートの柔軟性が不足する傾向にあり、75%を超えると、生産速度が極めて遅くなる場合があるため好ましくない。
一方、本発明の第四の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体に占める(C)ブロックの含有量は、10〜80質量%であり、12〜60質量%であることが好ましく、15〜40質量%であることが最も好ましい。(C)ブロックの含有量が80質量%を超えると、得られるフィルム及びシートの柔軟性が不足する傾向にある。また、(C)ブロックの含有量が10質量%未満であると、得られるフィルム及びシートの強度が不足する傾向にある。
また、本発明の第五の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体は、50〜150℃の範囲に少なくとも1つの融解ピーク(結晶融解ピーク)を有するものである。この融解ピーク温度は、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される。具体的には、示差走査熱量計(DSC)を使用し、サンプルとなる水添ジエン系共重合体を200℃で10分保持した後、−80℃まで10℃/分の速度で冷却し、次いで−80℃で10分間保持した後、10℃/分の速度で昇温したときの熱流量(結晶融解熱量)のピーク温度である。なお、その融解ピークの結晶融解熱量は5〜70J/g、好ましくは10〜50J/gの範囲である。
また、本発明の第四及び第五の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体の、(C)ブロックにおける水添前の共役ジエン化合物由来のビニル結合(1,2−及び3,4−ビニル結合)含量は20%未満である。かかる含量が20%以上であると、得られるフィルム及びシートの強度が不足するとともに耐熱性が不足する傾向にある。なお、(C)ブロックにおける水添前の共役ジエン化合物由来のビニル結合(1,2−及び3,4−ビニル結合)含量の下限値は特に限定されないが、製造上の観点から5%以上であることが好ましい。また、本発明の第四及び第五の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体の、(D)ブロックにおける水添前の共役ジエン化合物由来のビニル結合(1,2−及び3,4−ビニル結合)含量は30〜75%であり、40〜75%であることが好ましく、50〜75%であることが更に好ましく、60〜75%であることが特に好ましい。かかる含量が30%未満であると、得られるフィルム及びシートの柔軟性が不足する傾向にあり、75%を超えると、生産速度が極めて遅くなる場合があるため好ましくない。
本発明の第二〜第五の軟質フィルム及びシートは、水添ジエン系共重合体(イ)と、この水添ジエン系共重合体(イ)以外の熱可塑性重合体(ロ)とが、質量比で(イ)/(ロ)=99/1〜1/99の割合、好ましくは95/5〜5/95の割合、更に好ましくは90/10〜10/90の割合で含まれる重合体組成物により構成されている。水添ジエン系共重合体(イ)に対して、所定の割合で熱可塑性重合体(ロ)を配合した重合体組成物を用いることにより、得られるフィルム及びシートの耐熱性、加工性、及び更なる強度の向上を図ることができる。
この熱可塑性重合体(ロ)は、水添ジエン系共重合体(イ)を除くものであり、非極性重合体、又は極性重合体のいずれであってもよい。非極性重合体としては、後述するオレフィン系重合体、スチレン系重合体等が挙げられる。スチレン系重合体の例としては、スチレン単独重合体(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、エチレン・スチレン共重合体(ESI)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン共重合体(AES)、アクリロニトリル・塩素化ポリスチレン・スチレン共重合体(ACS)、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体(MS)、ブタジエン・スチレン・メタクリル酸メチル共重合体(MBS)、スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA)等が挙げられる。
極性重合体としては、アクリル系重合体等が挙げられる。アクリル系重合体の例としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。これらのアクリル系重合体の他には、芳香族ポリカーボネート、ポリメタクリロニトリル、ポリアセタール、ポリオキシメチレン、イオノマー、塩素化ポリエチレン、クマロン・インデン樹脂、再生セルロース、石油樹脂、セルロース誘導体、アルカリセルロース、セルロースエステル、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースザンテート、セルロースニトレート、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテルエステル、フッ素樹脂、FEP、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン6,6、ナイロン4,6等の脂肪族ポリアミド、ポリフェニレンイソフタルアミド、ポリフェニレンテレフタルアミド、メタキシリレンジアミン等の芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリイソブチルビニルエーテル、ポリメチルビニルエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステルが挙げられる。これらのうち、好ましい熱可塑性重合体は下記のオレフィン系重合体である。
オレフィン系重合体の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・1−ブテン共重合体(EBM)、エチレン・1−ブテン・非共役ジエン共重合体(EBDM)等のエチレン・α−オレフィン・(非共役ジエン)共重合体、極性基含有エチレン・α−オレフィン共重合体、及びその金属架橋体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられ、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、特に、得られる組成物の耐熱性が優れるためにポリプロピレンが好ましい。熱可塑性重合体(ロ)としてポリプロピレンを用いることにより、得られるフィルム及びシートの耐熱性、加工性、及び強度のバランスがより向上する。
熱可塑性重合体(ロ)としてポリプロピレンを用いる場合における、水添ジエン系共重合体(イ)と、熱可塑性重合体(ロ)(ポリプロピレン)との質量比は、(イ)/(ロ)=95/5〜5/95であることが好ましく、50/50〜10/90であることが更に好ましい。(イ)/(ロ)の値をこの範囲とすることにより、物性のみならず、製造面、経済性の面においても優れた軟質シート・フィルムを得ることができる。
上記のオレフィン系重合体の中でも、押出成形性等を考慮するとプロピレン単独重合体、プロピレンと20モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンと30モル%以下の他のα−オレフィンとのブロック共重合体等のプロピレン系重合体が好ましい。特に、結晶化度が50%以上、密度が0.89g/cm3以上、エチレン単位の含有量が20モル%以下、かつ融点が100℃以上であるポリプロピレン及び/又はプロピレンと、エチレンとの共重合体を用いることが特に好ましい。また、エチレン・プロピレン共重合体(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・1−ブテン共重合体(EBM)、エチレン・1−ブテン・非共役ジエン共重合体(EBDM)、極性基含有エチレン・α−オレフィン共重合体、及びその金属架橋体等のオレフィン系ゴムとのブレンド、更にはこれらブレンドを架橋剤の存在下で動的架橋した熱可塑性エラストマーであってもよい。
本発明の第二〜第五の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる熱可塑性重合体(ロ)の、230℃、21.2N荷重で測定したメルトフローレート(MFR)は、押出成形性等を考慮すると、0.01〜100g/10分であることが好ましく、0.01〜50g/10分であることが更に好ましく、0.05〜15g/10分であることが特に好ましい。
本発明の第二〜第五の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体における、共役ジエン化合物由来の二重結合は、その90%以上が水添されていることが好ましく、95%以上が水添されていることが更に好ましい。水添率が90%未満である場合、得られるフィルム及びシートの耐熱性、強度が不足する傾向がある。なお、共役ジエン化合物由来の二重結合は、側鎖二重結合としての1,2−及び3,4−ビニル結合、並びに主鎖二重結合としての1,4−結合があるが、これらのうちの少なくとも1,2−及び3,4−ビニル結合は、その90%以上が水添されていることが好ましい。
例えば、本発明の軟質フィルム及びシートを、Tダイ成形、インフレーション成形、又はカレンダー成形等の成形方法によって製造するに際しては、水添ジエン系共重合体の、230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)は、0.1〜100g/10分であることが好ましく、1.0〜50g/10分であることが更に好ましく、2.0〜30g/10分であることが特に好ましい。MFRが0.1g/10分未満であると、十分な押出し速度が得られず生産性が低くなる場合がある。一方、MFRが100g/10分を超えると、インフレーション成形を採用した場合にはバブルを形成し難くなることがあり、Tダイ成形を採用した場合にはドローダウンが激しくなることがあり、いずれの場合であっても生産性が低くなる傾向にある。
本発明の第一の軟質フィルム及びシートを構成する水添ジエン系共重合体、又は本発明の第二〜第五の軟質フィルム及びシートを構成する重合体組成物に含まれる水添ジエン系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、5万〜70万であることが、物性、生産性の面でより優れた軟質フィルム及びシートを提供することができるために好ましく、8万〜35万であることが更に好ましい。このMwが5万未満であると、インフレーション成形を採用した場合にはバブルを形成し難くなることがあり、Tダイ成形を採用した場合にはドローダウンが激しくなることがあり、いずれの場合であっても生産性が低くなる傾向にある。一方、Mwが70万を超えると、十分な押出し速度が得られず生産性が低くなる場合がある。
なお、水添ジエン系共重合体に代えて、又は水添ジエン系共重合体とともに、これまで述べてきた水添ジエン系共重合体にアミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、エポキシ基等の官能基を導入してなる変性水添ジエン系共重合体を用いることも可能である。かかる変性水添ジエン系共重合体としては、例えば下記の共重合体((a)〜(f))を挙げることができる。
(a)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、アミノ基を有する有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた共重合体を水素添加した共重合体。
(b)ビニル芳香族化合物と、共役ジエン化合物と、アミノ基を有する不飽和単量体とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた共重合体を水素添加した共重合体。
(c)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた共重合体の活性点に、アルコキシシラン化合物を反応させた共重合体とし、その共重合体を水素添加した共重合体。
(d)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた共重合体の活性点に、エポキシ化合物又はケトン化合物を反応させた共重合体とし、その共重合体を水素添加した共重合体。
(e)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた重合体に水素添加した共重合体に、(メタ)アクリロイル基含有化合物、エポキシ基含有化合物、及び無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種を溶液中又は押出機等の混練機中で反応させて得られる共重合体。
(f)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、カップリング剤として、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジエチル、無水ピロメリット酸等を用いることにより、分子鎖の中央に−OH基、−NH−CO−基、−NH−基、−NH2基等の官能基を導入した共重合体。
変性水添ジエン系共重合体中に占める官能基の割合は、通常、水添ジエン系共重合体を構成する分子に対して、0.001〜10モル%であることが好ましく、0.005〜8モル%であることが更に好ましく、0.01〜5モル%であることが特に好ましい。
本発明の軟質フィルム及びシートには、通常の熱可塑性材料に用いられる添加剤を必要に応じて添加することができる。例えば、フタル酸エステル等の可塑剤又は補強剤、パラフィン系オイル等のゴム用充填材、シリカ、タルク、炭酸カルシウム等のフィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、発泡剤、着色剤、顔料、炭素繊維、金属繊維、ガラスビーズ、架橋剤、架橋助剤等、又はこれらの混合物を添加することができる。
また、本発明の軟質フィルム及びシートを構成する成分として、上述してきた水添ジエン系共重合体以外の熱可塑性材料やゴム状重合体を配合してもよい。具体的には、ポリブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等のポリメチルペンテン類、水添テルペン樹脂、石油樹脂、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリブタジエン重合体及び/又はその水添物、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体及び/又はこれらの水添物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アクリルゴム、エチレン系アイオノマー等を配合することができる。また、本発明の軟質フィルム及びシートの特性を損なうことのない配合量であれば、熱硬化性重合体、具体的にはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂等を配合することも可能である。
本発明の軟質フィルム及びシートは、Tダイ成形、インフレーション成形、カレンダー成形等の従来公知の成形方法で容易に製造することができる。また、本発明の軟質フィルム及びシートに対して、延伸処理を施すことも可能である。延伸処理を施す方法として、例えば、ロール延伸、ロール圧延、テンター横1軸延伸等の公知の1軸延伸方法、及びテンター2軸延伸、チューブラー2軸延伸等の公知の2軸延伸方法を採用することができる。延伸処理を施す場合の延伸温度は、常温〜ポリプロピレンの融点以下とすることが好ましい。また、延伸倍率は2〜10倍が好ましい。但し、MD(Machine Direction(引き取り方向に平行))、TD(Traverse Direction(引き取り方向に垂直))の延伸倍率については、必ずしもバランスさせる必要はなく、それぞれの用途に応じて任意に選択することができる。
本発明の軟質フィルム及びシートは、透明性、柔軟性、耐衝撃性、ヒートシール性に優れたものである。従って、例えばシャツ、ストッキング等の各種衣類の包装、布団、枕等の寝具の包装、各種食品の包装、日用雑貨包装、工業資材包装、各種ゴム製品、樹脂製品、皮革製品等のラミネート、紙おむつ等に用いられる伸縮テープ、ダイシングフィルム等の工業用品、建材や鋼板の保護に用いられるプロテクトフィルム、粘着フィルム基材、食肉鮮魚用トレー、青果物パック、冷菓食品容器等のシート用途、テレビ、ステレオ、掃除機等の家電用品用途、バンパー部品、ボディーパネル、サイドシール等の自動車内外装部品用途、道路舗装材、防水・遮水シート、土木パッキン、日用品、レジャー用品、玩具、工業用品、ファニチャー用品、筆記用具、透明ポケット、ホルダー、ファイル背表紙入等の文具用フィルム及びシート、医療用具等の幅広い用途に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び評価方法を以下に示す。
(1)水添ジエン系共重合体の物性値測定方法
水添ジエン系共重合体の物性値を以下の方法で測定した。
[水添率]:共役ジエンの水添率は、四塩化炭素溶液を用い、270MHz、1H−NMRスペクトルから算出した。
[メルトフローレート(MFR)]:JIS K7210に準拠して、230℃、21.2N荷重で測定した。
[全スチレン単位含有量(「全結合スチレン含有量」ともいう)]:四塩化炭素溶液を用い、270MHz、1H−NMRスペクトルから算出した。
[ビニル結合含量(V)]:ビニル結合(1,2−結合及び3,4−結合)含量は、赤外分析法を用い、ハンプトン法により算出した。
[BS割合]:以下の式を用いて仕込量から算出した。
BS割合(%)=(水添ジエン系共重合体のそれぞれの(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物の仕込合計量/水添ジエン系共重合体中に占める全ビニル芳香族化合物の仕込合計量)×100
[LS割合]:試料30mgを0.6mlの四塩化炭素に溶解した溶液を、テトラメチルシランを標準物質とし、1H−NMR(270MHz)を用いて、23℃で50回積算し、以下の式を用いて算出した。
LS割合(%)=〔(6.8〜6.0ppm部分の面積強度×2.5)/(7.6〜6.0ppm部分の面積強度)〕×100
[結晶融解ピーク温度/結晶融解熱量]:示差走査熱量計(DSC)を用いてサンプルを200℃で10分保持した後、−80℃まで10℃/分の速度で冷却し、次いで−80℃で10分間保持した後、10℃/分の速度で昇温したときの熱流量(結晶融解熱量(J/g))におけるピーク温度を、結晶融解ピーク温度(℃)とした。
[水添ジエン系共重合体の重量平均分子量(Mw)]:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(室温GPC、カラム:東ソー社製、GMH−XL)を用いて、ポリスチレン換算で求めた。なお、(C)ブロックを有するポリマーについては水添前のジエン系共重合体の重量平均分子量を同様の方法で求めた。
(2)水添ジエン系共重合体の製造例
(製造例1:水添ジエン系共重合体(H−1)の製造)
内容積50リットルのオートクレーブに、脱気・脱水したシクロヘキサン25kg、スチレン200gを仕込んだ後、テトラヒドロフラン500g、及びn−ブチルリチウム3.2gを加え、50℃からの断熱重合を20分行った。反応液を20℃とした後、1,3−ブタジエン3700g、及びスチレン1000gを加え断熱重合を行った。転化率がほぼ100%になった後、更にスチレン100gを加え重合を行った。
重合が完結したのち、水素ガスを0.4MPa−Gの圧力で供給し、20分間撹拌し、リビングアニオンとして生きているポリマー末端リチウムと反応させ、水素化リチウムとした。反応溶液を90℃にし、テトラクロロシラン(1.5g)を添加し、約20分間撹拌した後、特開2000−37632号公報記載のチタノセン化合物を使用して水添反応を行った。
得られた水添ジエン系共重合体(H−1)の水添率は98%、重量平均分子量は26万、結合スチレン含量は26質量%、BS割合は77%、LS割合は21%、(B)ブロックのビニル結合含量は73%、MFRは10g/10分であった。なお、物性値の測定結果を表1に示す。
以下、同様の方法により、モノマー量、テトラヒドロフラン添加量、触媒量、重合温度、重合時間等を変量することにより、表1に示すH−2〜H−4、R−1〜R−2の水添ジエン系共重合体を製造した。また、これらの水添ジエン系共重合体の物性値の測定結果を表1に示す。
(製造例2:水添ジエン系共重合体(H−5)の製造)
窒素置換された内容積50リットルの反応容器に、シクロヘキサン28000g、テトラヒドロフラン1.3g、1,3−ブタジエン800g、及びn−ブチルリチウム4.2gを加え、重合開始温度70℃にて重合し、反応完結後、温度を40℃としてテトラヒドロフラン560gを添加し、次いで1,3−ブタジエン2400g及びスチレン800gを逐次添加しながら断熱重合した。その後、系内にメチルジクロロシラン3.1gを添加して30分間反応させることによりポリマーを得た。得られたポリマーは1段目にブタジエンブロックのビニル結合を14%含有し、2段目にブタジエンブロックのビニル結合を70%含有するものであり、GPCで測定した重量平均分子量は24万、カップリング率は78%であった。また、水添ジエン系共重合体(H−5)のDSCチャートを図1に示す。なお、このDSCチャートから、この水添ジエン系共重合体(H−5)の結晶融解ピーク温度は92.7℃と測定することができる。
引き続いて反応溶液を80℃にし、チタノセン化合物を主体とする水添触媒を添加し、水素圧1.0MPaを保つように2時間反応させた。反応後、反応液を常温、常圧に戻して反応容器より抜き出し、水中に撹拌投入して溶媒を水蒸気蒸留除去することによって目的とする水添ジエン系共重合体(H−5)を得た。この水添ジエン系共重合体(H−5)の水添率は98%、結合スチレン含量は20質量%、BS割合は100%、LS割合は11%、(D)ブロックのビニル結合含量は70%、MFRは10g/10分であった。物性値の測定結果を表1に示す。
Figure 2005206808
(実施例1〜7、比較例1、2)
口径50mm、L/D=36の押出機を使用して、上述したH−1〜H−5、R−1、又はR−2の水添ジエン系共重合体と、ポリプロピレン(チッソ石油化学社製F8577、MFR=8)を表2に示す配合比率でペレットブレンドしたものを180〜240℃で混練した後、Tダイに供給し、ダイ温度210〜230℃で押し出す(冷却ロール:40℃設定)ことにより、厚み100μmのフィルム(実施例1〜7、比較例1、2)を作製した。
(実施例8、9、比較例3)
口径50mm、L/D=36の押出機を使用して、上述したH−2、又はR−1の水添ジエン系共重合体とポリプロピレン(チッソ石油化学社製F8577、MFR=8)を表2に示す配合比率で180〜240℃で混練した後、Tダイに供給し、ダイ温度210〜230℃で押し出す(冷却ロール:40℃設定)ことにより、厚み2mmのシート(実施例8、9、比較例3)を作製した。
実施例1〜9、比較例1〜3のフィルム又はシートについて、引張り破断強度(MPa)を測定した。測定結果を表2に示す。また、これらのフィルム又はシートの耐擦過性、及び耐破れ性を評価した。結果を表2に示す。なお、引張り破断強度の測定方法、並びに耐擦過性、及び耐破れ性の評価方法を以下に示す。
[引張り破断強度]:JIS K7127記載の5号ダンベル打ち抜き刃を使用してMD(引き取り方向)にサンプルを打ち抜き、500mm/minにて測定した。
[耐擦過性]:JIS L0801記載の学振型摩擦堅牢試験機(安田精機製作所社製)を用いて、フィルム又はシートの表面をカナキン3号布で100往復(荷重500g)し、その後のフィルム又はシートの表面を目視観察により下記の基準に従って3段階に評価した。
○:傷付かない。
△:殆ど傷付かない。
×:傷が付く。
[耐破れ性]:コルク穴開け器(外径=8mm、内径=6mm)を使用して手動でシートに穴を開ける際の開け易さを、下記の基準に従って評価した。
○:コルク穴開け器がシートに容易に喰い込み、かつ容易に穴が開く。
×:コルク穴開け器がシートに喰い込みにくく、穴が開きにくい。
Figure 2005206808
表2に示すように、実施例1〜7のフィルムは、比較例1、2のフィルムに比して優れた耐擦過性を示すものであることが明らかである。また、実施例8、9のシートは、比較例3のシートに比して優れた耐擦過性、及び耐破れ性を示すものであることが明らかである。以上の結果から、本発明の軟質フィルム及びシートの優れた特性を確認することができた。
本発明の軟質フィルム及びシートは、優れた強度、耐擦過性、及び耐破れ性を有するものであるため、例えばシャツ、ストッキング等の各種衣類の包装、布団、枕等の寝具の包装、各種食品の包装、日用雑貨包装、工業資材包装、各種ゴム製品、樹脂製品、皮革製品等のラミネート、紙おむつ等に用いられる伸縮テープ、ダイシングフィルム等の工業用品、建材や鋼板の保護に用いられるプロテクトフィルム、粘着フィルム基材、食肉鮮魚用トレー、青果物パック、冷菓食品容器等のシート用途、テレビ、ステレオ、掃除機等の家電用品用途、バンパー部品、ボディーパネル、サイドシール等の自動車内外装部品用途、道路舗装材、防水・遮水シート、土木パッキン、日用品、レジャー用品、玩具、工業用品、ファニチャー用品、筆記用具、透明ポケット、ホルダー、ファイル背表紙入等の文具用フィルム及びシート、医療用具等の幅広い用途に好適に用いることができる。
水添ジエン系共重合体(H−5)のDSCチャートである。

Claims (7)

  1. 少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体からなる軟質フィルム及びシート。
    (1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
    (2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、前記(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜80%である。
    (3):前記水添ジエン系共重合体中の、前記共役ジエン化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
  2. 少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体(イ)、並びに、
    前記水添ジエン系共重合体(イ)以外の熱可塑性重合体(ロ)が、質量比で(イ)/(ロ)=99/1〜1/99の割合で含まれる(但し、(イ)+(ロ)=100である)重合体組成物からなる軟質フィルム及びシート。
    (1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
    (2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、前記(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜80%である。
    (3):前記水添ジエン系共重合体中の、前記共役ジエン化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
  3. 少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)とを含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体(イ)、並びに、
    前記水添ジエン系共重合体(イ)以外の熱可塑性重合体(ロ)が、質量比で(イ)/(ロ)=99/1〜1/99の割合で含まれる(但し、(イ)+(ロ)=100である)重合体組成物からなる軟質フィルム及びシート。
    (1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
    (2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)が10〜80%である。
    (3):前記水添ジエン系共重合体中の、前記共役ジエン化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
  4. 少なくとも2つの、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、ビニル結合含量が20〜95%である少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(D)とを含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体(イ)、並びに、
    前記水添ジエン系共重合体(イ)以外の熱可塑性重合体(ロ)が、質量比で(イ)/(ロ)=99/1〜1/99の割合で含まれる(但し、(イ)+(ロ)=100である)重合体組成物からなる軟質フィルム及びシート。
    (1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が10〜70質量%である。
    (2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、前記(D)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜100%である。
    (3):前記水添ジエン系共重合体中に占める、前記(C)ブロックの割合が10〜80質量%である。
  5. 少なくとも2つの、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、ビニル結合含量が20〜95%である少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(D)とを含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体(イ)、並びに、
    前記水添ジエン系共重合体(イ)以外の熱可塑性重合体(ロ)が、質量比で(イ)/(ロ)=99/1〜1/99の割合で含まれる(但し、(イ)+(ロ)=100である)重合体組成物からなる軟質フィルム及びシート。
    (1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が10〜70質量%である。
    (2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)が0〜80%である。
    (3):前記水添ジエン系共重合体は、示差走査熱量測定法(DSC法)により50〜150℃の範囲に測定される融解ピークを有する。
  6. 前記熱可塑性重合体(ロ)がオレフィン系重合体である請求項2〜5のいずれか一項に記載の軟質フィルム及びシート。
  7. 前記オレフィン系重合体がプロピレン系重合体である請求項6に記載の軟質フィルム及びシート。
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