JP2004146457A - 高圧処理方法および高圧処理装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】超臨界あるいは亜臨界状態の流体を用いて被処理体2に高圧処理をする高圧処理方法において、
前記流体を、高圧処理室9に配置された被処理体2の表面2aに衝突させた後、被処理体2の表面2aに沿って被処理体2の外方に向けて流通させる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウエハ、液晶基板等の現像、成膜、洗浄、エッチング、リンス、置換、乾燥、等の工程に使用される高圧処理方法、または高圧処理装置の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
良く知られているように、半導体チップの分野では、急速に微細化が進められている。チップ内部の配線サイズは10年前には1μm程度であったものが、現在では0.18μm程度まで微細化され、更に0.13μmのデバイスが実用化されようとしており、引続いて0.10μmから、0.07μm、0.05μmまでを具体的なターゲットとした技術開発がスタートしている。
このような微細化に伴なって、従来の技術では解決困難ないくつかの技術課題が出現しつつある。その一例として、近年大きな技術課題として懸念されているものの一つに毛管力による微細構造の倒壊あるいは崩壊がある。
【0003】
半導体チップの多くは、多数の湿式処理(液体を使用する処理)工程を経て製造されている。例えば、フォトレジストの現像にはアルカリ性の水溶液が使用され、アルカリ性水溶液の現像液を純水でリンスし、その後乾燥される。この乾燥の際に、水に浸されたウエハが乾燥の進展とともに水と気体との界面に晒されることになるが、この時に大きな表面張力が発生し、壁状に平行して立っている現像後のフォトレジストがお互いに引き寄せられて倒壊することが報告されている。
【0004】
同様のことが、MEMS(Micro Electro Mechanical System)と呼ばれる電子機械デバイスの製造においても問題となる。このデバイスは極めて微細なカンチレバーのような剛性の小さな構造を持っている。通常このデバイスは必要な部分の周りに存在する形を作るための犠牲層をフッ酸等の水溶液でエッチングして除去して形を作り、その後リンス液でリンスされてその後乾燥される。この場合にも、乾燥の際の毛管力により、カンチレバーが容易にお互いが固着したり、カンチレバーとベース面とが固着してしまうことが知られている。
【0005】
近年この課題を克服するための有力な手段として高圧の流体、特にいわゆる超臨界流体を利用した乾燥技術が注目されている。液体でも気体でもない超臨界状態を利用することにより、気液界面のない、即ち毛管力の働きにくい状態での乾燥が可能であり、微細構造を倒壊や崩壊させることなく乾燥することができるからである。通常、超臨界流体としては二酸化炭素が利用される。二酸化炭素の臨界点は約31℃、7.3MPaと扱い易く、また不燃性、無毒性で安価であるからである。
【0006】
また、超臨界二酸化炭素を半導体ウエハなどの洗浄に適用する可能性についても同様に高い注目を集めている。従来の洗浄工程においては湿式処理が用いられているが、0.1μm以下といった微細化や新材料の導入とともに深刻な問題が生じつつある。まず微細構造部に液が入りにくくなるため洗浄が困難になる。また一般に新世代の絶縁膜は誘電率を下げるためにポーラスな性状を持っているため、湿式処理の際に微細な孔に入り込んだ液を完全に除去することが極めて困難で、残存する微量の水分がデバイスの特性に重大な悪影響を及ぼす。ところが超臨界二酸化炭素は気体に近い浸透性を持つため、微細な構造に容易に浸透し、また湿式処理の場合のように液体が微細部に残存するということもない。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−232266号公報
【0008】
【発明の解決しようとする課題】
上記のような高圧処置方法、高圧処理装置の分野において、被処理体の微細化の要求、その微細化に起因する不具合の防止の要求ともに、処理の効率化、処理の均一化の要求も益々高まりつつある。本発明の目的は、上記のような数々の優れた性質を持つ超臨界流体のような高圧の流体を用いて半導体ウエハなどの高圧処理を行うに際して、効率が良く、均一性に優れた高圧処理方法および高圧処理装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この技術的課題を解決する本発明の技術的手段は、高圧流体を用いて被処理体2に高圧処理をする高圧処理方法において、
前記高圧流体を、高圧処理室9に配置された被処理体2の表面2aに衝突させた後、被処理体2の表面2aに沿って被処理体2の外方に向けて流通させる点にある。
本発明の他の技術的手段は、前記被処理体2の表面2aに衝突した高圧流体が被処理体2の表面2aに沿って外方に向けて流通するように、被処理体2を回転させる点にある。
【0010】
本発明の他の技術的手段は、前記高圧流体を複数に分散したうえ被処理体2の表面2aに衝突させる点にある。
本発明の他の技術的手段は、前記被処理体2をその表面2aが上方を向くように高圧処理室9に水平状態に配置し、前記高圧流体を被処理体2に対して上方から略垂直方向に導入する点にある。
本発明の他の技術的手段は、被処理体2を高圧処理室9に装入する工程と、高圧流体を高圧処理室9に導入して前記高圧処理室9内を予め決められた温度圧力状態にする工程と、高圧処理室9内の圧力を一定に保ちながら、前記高圧流体を被処理体2の表面2aに衝突させた後、被処理体2の表面2aに沿って被処理体2の外方に向けて流通させて、高圧処理室9外に排出させる工程と、高圧処理室9内の圧力を減じて大気圧に戻す工程と、高圧処理室9から被処理体2を取り出す工程、とを有してなる点にある。
【0011】
本発明の他の技術的手段は、高圧流体を被処理体2に供給して、前記被処理体2に高圧処理を行う高圧処理装置において、その内部に被処理体2を収納する高圧容器1と、前記高圧容器1内の前記被処理体2の表面2aに向けて前記高圧流体を供給する流体供給手段と、前記流体供給手段から前記被処理体2の表面2aに供給された前記高圧流体を、前記被処理体2の表面2aに沿って外方に流通し、前記高圧容器1外に排出する流体排出手段と、を有してなる点にある。
本発明の他の技術的手段は、前記流体供給手段は、前記被処理体2の前記表面2aに対向する前記高圧容器1の壁に設けられ、それを介して前記高圧流体が前記被処理体2に供給される流体導入通路20を有し、前記流体排出手段は、前記被処理体2の前記表面2aに沿った外方側の前記高圧容器1の壁に設けられ、それを介して前記高圧流体が前記高圧容器1外に排出される流体排出通路26を有してなる点にある。
【0012】
本発明の他の技術的手段は、前記被処理体2を回転するための回転手段16が設けられている点にある。
本発明の他の技術的手段は、前記流体供給手段は、前記被処理体2の前記表面2aに向けて供給する前記高圧流体の流れを分散させるための流体分散機構25を有してなる点にある。
本発明の他の技術的手段は、前記流体分散機構25は、前記被処理体2の前記表面2aに対向するように配置された閉塞板27と、この閉塞板27に形成された複数の流通孔28とから構成されている点にある。
【0013】
本発明の他の技術的手段は、前記複数の流通孔28を流れる前記高圧流体の流速がそれぞれ略同一となるように該複数の流通孔28の孔径がそれぞれ設定されているとともに、前記被処理体2の中央領域に対向する前記閉塞板27の領域において円周方向に沿って互いに隣接する前記複数の流通孔28間の間隔寸法が、前記被処理体2の周辺領域に対向する前記閉塞板27の領域において円周方向に沿って互いに隣接する前記複数の流通孔28間の間隔寸法よりも小さい点にある。
【0014】
本発明の他の技術的手段は、前記流体分散機構25は、前記被処理体2の前記表面2aに対向するように配置された多孔質体を有する点にある。
本発明の他の技術的手段は、前記流体供給手段は、前記被処理体2の前記表面2aに向けて供給する前記高圧流体の流れを分散するための流体分散機構25を有し、前記流体分散機構は、前記被処理体2の前記表面2aに対向するように配置された閉塞板27と、この閉塞板27に形成された複数の流通孔28とから構成されるとともに、前記流通孔28は、前記被処理体2の前記表面2aと直交する方向に対して、前記回転手段16による前記被処理体2の回転方向とは反対向きに傾斜している点にある。
【0015】
本発明の他の技術的手段は、前記流体排出通路26は、前記被処理体2の前記表面2aに沿った外方側であり、かつ、前記被処理体2の端部に対向する前記高圧容器1の壁に設けられている点にある。
本発明の他の技術的手段は、前記流体導入通路20が前記被処理体2の前記表面2aの中心に対向するように前記高圧容器1の壁に設けられるとともに、前記被処理体2の前記表面2aに対向する前記高圧容器1の壁内面が被処理体の中心から外方に向かうに連れて前記表面2aに接近するようなラッパ形状である点にある。
【0016】
本発明の他の技術的手段は、前記高圧容器1の前記壁内面の前記ラッパ形状が双曲線の形状を含むよう構成されている点にある。
本発明の他の技術的手段は、前記被処理体2の前記表面2a上における前記中心からの距離と、前記表面2aと前記壁内面との間隔とが略反比例の関係となるように構成されている点にある。
なお、本発明における高圧流体とは、1MPa以上の圧力の流体である。好ましく用いることのできる高圧流体は、高密度、高溶解性、低粘度、高拡散性の性質が認められる流体であり、さらに好ましいものは超臨界状態または亜臨界状態の流体である。二酸化炭素を超臨界流体とするには31℃、7.1MPa以上とすればよい。洗浄並びに洗浄後のリンス工程や乾燥・現象工程等は、5〜30MPaの亜臨界(高圧流体)または超臨界流体を用いることが好ましく、7.1〜20MPa下でこれらの処理を行うことがより好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明に係る高圧処理方法および高圧処理装置の実施の形態について説明する。
図1には、本発明による高圧処理装置の一例を示す。図1において、1は高圧容器で、側壁4a及び天壁4bを一体に有する円筒状の上部体4と、高圧容器1の底壁を構成する下部体5とを有し、上部体4と下部体5とがシール材7を介して密着して互いを保持し、また、上部体4と下部体5とは互いに接離して上下方向に相対移動しうるよう構成されている。これにより、高圧容器1は開閉自在に構成されており、閉じられた際にその内部に被処理体である半導体ウエハ、液晶基板等(以下、単にウエハという)のウエハ2を収容する高圧処理室9が形成されるように構成されている。なお、図例では、ウエハ(被処理体)2は円板形状である。
【0018】
高圧処理室9にはウエハ2を載置する載置台11が設けられている。載置台11の外周部に支持爪12が環状に上方突出され、載置台11の中央に支持軸13が下方突設されている。ウエハ2の外周部が載置台11の支持爪12上に載置されている。これにより、ウエハ2はその表面2aが上方を向くように高圧処理室9に水平状態に配置されている。
載置台11の支持軸13は、高圧容器1の下部体5に高圧シール回転導入機構15を介して挿通され、高圧シール回転導入機構15の回転軸は高圧容器1外方の回転機構16に接続されている。回転機構16により、ウエハ2は載置台11とともに支持軸13廻りに任意の回転数で回転可能に構成されている。
【0019】
高圧容器1の上部には流体導入通路20が設けられている。流体導入通路20の上流の流路にはボンベ21、ポンプ22、加熱器23、高圧弁24が順に配設されている。
ボンベ21に貯蔵されている液体二酸化炭素はポンプ22によって加圧され、加熱器23によって加熱されたうえで、流体導入通路20を通って高圧処理室9に導入される。流体導入通路20の高圧処理室9への出口の先には流体分散機構25が設けられている。流体分散機構25は、高圧容器1に内嵌した円板状の閉塞板27に上下に貫通する多数の流通孔28を有し、流体が流体分散機構25を経由することにより、高圧処理室9に導入された超臨界二酸化炭素はウエハ2の表面2aに略垂直方向に均一に供給される。
【0020】
即ち、上述した流体導入通路20と、またその上流の流路とその流路に介設されたボンベ21,ポンプ22、過熱器23,高圧弁24と、この流体分散機構25とによって、高圧処理室8に収容されたウエハ2の表面2aに高圧流体の超臨界二酸化炭素を供給するための流体供給手段が構成されている。
高圧容器1には温度調整手段(図示しない)が設けられており、高圧処理室9内の温度を予め決められた温度に制御することができる。また、高圧容器1には、高圧容器1が閉じた際に形成される高圧処理室9の圧力を検出する圧力計(図示しない)も設けられている。
【0021】
高圧容器1の側方(上部体4の側壁4a)には流体排出通路26が設けられている。この流体排出通路26は複数個あって、高圧容器1に放射状に配置されている。流体導入通路20から高圧処理室9内に導入された流体は流体分散機構25を通りウエハ2の表面2aに垂直方向に均一に供給され、ウエハ2の表面2aに衝突した後、ウエハ2の表面2aに沿って周方向に流通し、ウエハ2の周囲から更に側方に流通して流体排出通路26を通って高圧処理室9の外に排出される。
【0022】
高圧処理室9から排出された流体は圧力調整弁31を通って減圧され、分離槽32を経由して高圧弁33から排出される。即ち、上述した流体排出通路26と、またその下流の流路とその流路に介設された圧力調整弁31,分離槽32,高圧弁33とによって、ウエハ2に高圧処理を施した後の高圧流体の超臨界二酸化炭素を高圧処理室8から排出するための流体排出手段が構成されている。なお、図1では流体を高圧弁33から大気に放出する例が示されているが、高圧弁33を出た流体を必要な機器を経由して再液化しボンベ21に戻してリサイクルするようにしてもよい。
【0023】
また高圧処理の用途によっては、ウエハ2に対し、主たる高圧処理を施す流体(ここでは超臨界二酸化炭素)に、その流体とは別の薬液、すなわち、洗浄剤や相溶剤が添加されることがある。この図1に示した高圧処理装置には、加熱器23と高圧弁24の間の流路から分岐し、更に高圧弁24をバイパスして、その高圧弁24と流体導入通路20の間の流路に合流するバイパス流路が設けられている。そのバイパス流路には高圧弁35と混合器34と高圧弁36が介設されている。また、高圧弁35と混合器34との間のバイパス流路から分岐して、薬液の貯蔵されたタンク41に連通可能に構成された分岐流路が設けられ、その分岐流路には高圧弁43、ポンプ42が介設されている。
【0024】
流体に薬液を添加する場合には、高圧弁24が閉じられ、高圧弁35、36、43が開けられる。タンク41に貯蔵された薬液はポンプ42で加圧され、高圧弁43を通って流体の流れに注入される。注入後、混合器34にて流体と薬液とは均一に混合され、薬液が溶け込んだ超臨界流体は流体導入通路20を通って高圧処理室9内に導入される。
本発明によれば、高圧処理室9に導入された流体はウエハ2の表面2aに垂直に衝突しウエハ2の表面2aで流れの乱れを生ぜしめ急速に置換する。したがって、洗浄や乾燥処理において、新鮮な流体が次々と供給されることになり、これらの処理を効率よく行うことができる。
【0025】
また、ウエハ2の表面2aに触れ不純物を含んだ処理後の流体はそのまま側方に流通し流体排出通路26を通って高圧処理室9から排出されるため、ウエハ2の裏面に回り込んで裏面を汚染することがない。またウエハ2を回転させることにより、ウエハ2の面内均一性を向上させたり、洗浄や乾燥の処理効率を更に向上させたりすることが可能である。面内均一性を向上させる目的であればウエハ2の回転数は100rpm程度で充分であり、処理効率向上を目的とする場合には300〜1000rpm程度とすることが好ましい。
【0026】
次に本発明を絶縁膜の乾燥に使用する場合の例を説明する。
湿式洗浄後スピン乾燥したウエハ2を高圧容器1内の載置台11に載置してその高圧容器1を閉じる。高圧弁35、36、圧力調整弁31を閉じ、高圧弁24を開けてポンプ22を起動する。ボンベ21に貯蔵された液体二酸化炭素はポンプ21で加圧され加熱器23で加熱されて超臨界状態となり、流体導入通路20を経て高圧処理室9内に導入される。高圧処理室9の温度は80℃に保持されており、図示しない圧力計で高圧処理室9内の圧力を監視しながら、高圧処理室9内の圧力が12MPaに達するまで加圧操作が続けられる。高圧処理室9内の圧力が12MPaに達した時点で圧力調整弁31を開く。この時ポンプ22により供給される二酸化炭素の量と圧力調整弁31を通じて排出される二酸化炭素の量が略同一となるように圧力調整弁31の開度が調整される。したがって、高圧処理室9内の圧力が略一定の状態で超臨界二酸化炭素が高圧処理室9内を流通することになる。この時回転機構16を起動しウエハ2を100rpmで回転させ、この状態を10分間継続する。流体導入通路20を通じて導入される超臨界二酸化炭素はウエハ2の表面2aに垂直方向に均一分散された状態で衝突し、ウエハ2の表面2aで乱れを作って急速に置換しながら流通するので、効率よくウエハ2の微細構造に残存する湿気を取り込みウエハ2の表面2aを径方向外方に流通する。
【0027】
ここで、乾燥の対象となる絶縁膜の厚みは数μm以下の薄膜であり、流体に乱流を起こしてウエハ2の表面2aでの流体の置換の効率を高くすることによって、絶縁薄膜の乾燥処理時間を大幅に短くすることができる。
湿気を取り込んだ超臨界二酸化炭素は、その後、高圧容器1の側方に設けられた流体排出経路26を通って高圧処理室9の外部に排出される。10分間経過後、ポンプ22を停止し高圧弁24を閉じる。この結果、高圧処理室9内に残存する超臨界二酸化炭素は圧力調整弁31を通じて高圧処理室9外に排出され、所定時間経過すると高圧処理室9内の圧力は大気圧に復帰する。高圧処理室9内の圧力が大気圧に復帰した後、高圧容器1を開きウエハ2を取り出す。取り出したウエハ2の残存水分をFTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)で測定したところ、水分は検知下限以下であった。
【0028】
続いて本発明をウエハの洗浄に使用する場合の例を説明する。
エッチングおよびアッシング後のウエハ2を高圧容器1内の載置台11に載置してその高圧容器1を閉じる。高圧弁35、36、圧力調整弁31を閉じ、高圧弁24を開けてポンプ22を起動する。ボンベ21に貯蔵された液体二酸化炭素はポンプ22で加圧され加熱器23で加熱されて超臨界状態となり、流体導入通路20を経て高圧処理室9内に導入される。高圧処理室9の温度は45℃に保持されており、図示しない圧力計で高圧処理室9内の圧力を監視しながら、高圧処理室9内の圧力が14MPaに達するまで加圧操作が続けられる。
【0029】
高圧処理室9内の圧力が14MPaに達した時点で、高圧弁24を閉じ、高圧弁35、36、43、圧力調整弁31を開き、更にポンプ42を起動する。この時ポンプ22により供給される二酸化炭素の量と圧力調整弁31を通じて排出される二酸化炭素の量が略同一となるように圧力調整弁31の開度が調整される。タンク41に貯蔵された洗浄剤等の薬液はポンプ42で加圧されて超臨界二酸化炭素の流れに注入される。薬液と超臨界二酸化炭素は混合器34で均一に混合されたうえで流体導入通路20を通じて高圧処理室9内に導入される。したがって、薬液が溶け込んだ超臨界二酸化炭素が高圧処理室9内の圧力が略一定の状態で高圧処理室9内を流通することになる。この時回転機構16を起動しウエハ2を100rpmで回転させ、この状態を10分間継続する。流体導入通路20を通じて導入される薬液が溶け込んだ超臨界二酸化炭素はウエハ2の表面2aに垂直方向に均一分散された状態で衝突し、ウエハ2の表面2aで乱れを作って急速に置換しながら流通するので、効率よくウエハ2に残存するレジストやポリマーと反応しウエハ2の表面2aを周方向外方に流通する。流体に乱流を起こしてウエハ2の表面2aでの流体の置換の効率を高くすることによって、洗浄処理時間を大幅に短くすることができる。被洗浄物質を取り込んだ流体は、その後、高圧容器1の側方に設けられた流体排出経路26を通って高圧処理室9の外部に排出される。10分間保持後、高圧弁35,36,43を閉じ、高圧弁24を開きポンプ42を停止する。この操作により、超臨界二酸化炭素(薬液を含まない)が同様の経路で流通しウエハ2の表面2aをリンスする。リンス工程を10分間継続後、ポンプ22を停止し高圧弁24を閉じる。この結果高圧処理室9内に残存する超臨界二酸化炭素は圧力調整弁31を通じて高圧処理室9外に排出され、所定時間経過すると高圧処理室9内の圧力は大気圧に復帰する。高圧処理室9内の圧力が大気圧に復帰した後、高圧容器1を開きウエハ2を取り出す。
【0030】
上記ではリンス工程が1回の例を示したが、必要に応じて、第二の薬液を用いた第二のリンス工程を、第一の薬液を用いた洗浄工程と(薬液を含まない)超臨界二酸化炭素によるリンス工程との問に加えてもよい。さらには、第三の薬液を用いた工程を加えてもよい。これらは洗浄すべき対象の性質に応じて適宜選択される。
図2は他の実施形態を示し、高圧弁35と混合器34との間のバイパス流路から分岐して、薬液の貯蔵されたタンク41、タンク41Aにそれぞれ連通可能に構成された2つの分岐流路が設けられ、その一方の分岐流路には高圧弁43、ポンプ42が介設されている。他方の分岐流路には高圧弁43A、ポンプ42Aが介設されている。
【0031】
図3及び図4は他の実施形態を示すものである。ここでは、前記流体分散機構の閉塞板27の複数の流通孔28の孔径は、それを流れる高圧流体の流速がそれぞれ略同一となるようにそれぞれ設定されている。またウエハ2の中央領域に対向する閉塞板27の領域において円周方向に沿って互いに隣接する複数の流通孔28間の間隔寸法が、ウエハ2の周辺領域に対向する閉塞板27の領域において円周方向に沿って互いに隣接する複数の流通孔28間の間隔寸法よりも小さいように構成されている。なお、その他の点は前記実施の形態の場合と同様の構成である。
【0032】
閉塞板27の複数の流通孔28の孔径が、それを流れる高圧流体の流速がそれぞれ略同一となるようにそれぞれ設定されているということは即ち、各々同一の流速が得られる程度に小径の流通孔とされているということとほぼ同義である。この流通孔の径がこれより大きくなると、通常は、流体導入通路20から遠ざかるにつれて流通孔からの高圧流体の流速が大きくなる。また、複数の流通孔を閉塞板27上において、同一間隔で配置すると、ウエハ2の外方の位置の流通孔28では、その位置の流通孔28を通じて流れる高圧流体とウエハ2の中央側からの高圧流体とが混合したり、尚且つその位置より更に外方からの高圧流体と混合する状態が生じやすい。すなわち、ウエハ2の中央部で充分な処理を行う流体を供給するとその外周部では不必要に多くの流体が流れ、均一の高圧処理が困難となったり、流体の消費量が過大となってしまう。しかしながら、この実施形態による高圧処理装置によれば、ウエハ2上での流体の流速をほぼ均一とすることができ、流体の消費量も抑制しながら、ウエハ2の均一な高圧処理を実現することができる。
【0033】
図5及び図6は他の実施形態を示し、前記流体分散機構25の閉塞板27に設けた各流通孔28を、上下方向に対して、ウエハ2の回転方向とは反対向きに傾斜させている。その他の点は前記実施の形態の場合と同様の構成である。
この場合、流通孔28から閉塞部材に向けて送出される流体は、ウエハ2の回転による運動方向とは逆向き傾斜する方向に流し出すことができ、流体分散は乱流を発生し易くなり、より効率よく高圧処理をなし得る。
図7は他の実施形態を示すものである。ここでは、前記の実施形態において、ウエハ2の表面2aに対向する位置に、複数の流通孔28を有する閉塞板27を設けていたのに替えて、多孔質体の板状部材40を設けている。なお、多孔質体としては焼結セラミックス等が採用されうる。これによれば、高圧流体が多孔質体の内部をじぐざぐに流通していき、適度な分散が促進されるので、被処理体であるウエハ2の表面2aにおいては、より均一な状態の高圧流体の供給が可能となる。
【0034】
図8は他の実施形態を示すものであり、高圧容器1の天壁4b内面4cをラッパ形状に加工することにより、流体分散機構25を構成している。流体導入通路20から高圧処理室9内に導入された流体は、流体分散機構25によってウエハ2の表面2a全域に亘るように広がりながら供給され、ウエハ2の表面2aに衝突した後、ウエハ2の表面2aに沿って周方向に流通し、ウエハ2の周囲から更に側方に流通して流体排出通路26を通って高圧処理室9の外に排出される。なお、高圧容器1の天壁4b内面のラッパ形状は、ウエハ2の表面2aの全域に均一に流体が分散して供給されるよう設計されている。その他の点は前記実施の形態の場合と同様の構成である。
【0035】
また、高圧容器1の天壁4b内面4cのラッパ形状が双曲線の形状を含むよう構成すると、表面2a上の流体の流速を均一に整えることができる。更に、ウエハ2の表面2a上におけるウエハ2の中心からの距離と、その表面2aと高圧処理容器1の天壁4b内面4cとの間隔とが略反比例の関係となるように構成することも、表面2a上の流体の流速を均一にするのに好ましい。
以上、高圧流体として超臨界二酸化炭素を用いた実施形態を示したが、これに替え、亜臨界状態の二酸化炭素を用いてもよい。上述したように、1MPa以上の圧力の流体であれば、それを高圧流体として採用してもよい。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、半導体ウエハ、液晶基板等の製造(生産)における高圧処理において、効率が良く均一性や安定性の高い高圧処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す高圧処理装置の構成図である。
【図2】他の実施形態を示す高圧処理装置の構成図である。
【図3】他の実施形態を示す高圧容器の断面図である。
【図4】同高圧容器内に設けられる流体分散機構の上面図である。
【図5】他の実施形態を示す流体分散機構の斜視図である。
【図6】同流体分散機構の断面図である。
【図7】他の実施形態を示す高圧容器の断面図である。
【図8】他の実施形態を示す高圧容器の断面図である。
【符号の説明】
1 高圧容器
2 ウエハ(被処理体)
9 高圧処理室
20 流体導入通路
25 流体分散機構
26 流体排出通路
Claims (17)
- 高圧流体を用いて被処理体(2)に高圧処理をする高圧処理方法において、
前記高圧流体を、高圧処理室(9)に配置された被処理体(2)の表面(2a)に衝突させた後、被処理体(2)の表面(2a)に沿って被処理体(2)の外方に向けて流通させることを特徴とする高圧処理方法。 - 前記被処理体(2)の表面(2a)に衝突した高圧流体が被処理体(2)の表面(2a)に沿って外方に向けて流通するように、被処理体(2)を回転させることを特徴とする請求項1に記載の高圧処理方法。
- 前記高圧流体を複数に分散したうえ被処理体(2)の表面(2a)に衝突させることを特徴とする請求項1に記載の高圧処理方法。
- 前記被処理体(2)をその表面(2a)が上方を向くように高圧処理室(9)に水平状態に配置し、前記高圧流体を被処理体(2)に対して上方から略垂直方向に導入することを特徴とする請求項1に記載の高圧処理方法。
- 被処理体(2)を高圧処理室(9)に装入する工程と、高圧流体を高圧処理室(9)に導入して前記高圧処理室(9)内を予め決められた温度圧力状態にする工程と、高圧処理室(9)内の圧力を一定に保ちながら、前記高圧流体を被処理体(2)の表面(2a)に衝突させた後、被処理体(2)の表面(2a)に沿って被処理体(2)の外方に向けて流通させて、高圧処理室(9)外に排出させる工程と、高圧処理室(9)内の圧力を減じて大気圧に戻す工程と、高圧処理室(9)から被処理体(2)を取り出す工程、とを有してなる高圧処理方法。
- 高圧流体を被処理体(2)に供給して、前記被処理体(2)に高圧処理を行う高圧処理装置において、
その内部に被処理体(2)を収納する高圧容器(1)と、
前記高圧容器(1)内の前記被処理体(2)の表面(2a)に向けて前記高圧流体を供給する流体供給手段と、
前記流体供給手段から前記被処理体(2)の表面(2a)に供給された前記高圧流体を、前記被処理体(2)の表面(2a)に沿って外方に流通し、前記高圧容器(1)外に排出する流体排出手段と、を有することを特徴とする高圧処理装置。 - 前記流体供給手段は、前記被処理体(2)の前記表面(2a)に対向する前記高圧容器(1)の壁に設けられ、それを介して前記高圧流体が前記被処理体(2)に供給される流体導入通路(20)を有し、前記流体排出手段は、前記被処理体(2)の前記表面(2a)に沿った外方側の前記高圧容器(1)の壁に設けられ、それを介して前記高圧流体が前記高圧容器(1)外に排出される流体排出通路(26)を有することを特徴とする請求項6に記載の高圧処理装置。
- 前記被処理体(2)を回転するための回転手段(16)が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の高圧処理装置。
- 前記流体供給手段は、前記被処理体(2)の前記表面(2a)に向けて供給する前記高圧流体の流れを分散させるための流体分散機構(25)を有することを特徴とする請求項6に記載の高圧処理装置。
- 前記流体分散機構(25)は、前記被処理体(2)の前記表面(2a)に対向するように配置された閉塞板(27)と、この閉塞板(27)に形成された複数の流通孔(28)とから構成されていることを特徴とする請求項9に記載の高圧処理装置。
- 前記複数の流通孔(28)を流れる前記高圧流体の流速がそれぞれ略同一となるように該複数の流通孔(28)の孔径がそれぞれ設定されているとともに、
前記被処理体(2)の中央領域に対向する前記閉塞板(27)の領域において円周方向に沿って互いに隣接する前記複数の流通孔(28)間の間隔寸法が、前記被処理体(2)の周辺領域に対向する前記閉塞板(27)の領域において円周方向に沿って互いに隣接する前記複数の流通孔(28)間の間隔寸法よりも小さいことを特徴とする請求項10に記載の高圧処理装置。 - 前記流体分散機構(25)は、前記被処理体(2)の前記表面(2a)に対向するように配置された多孔質体を有することを特徴とする請求項9に記載の高圧処理装置。
- 前記流体供給手段は、前記被処理体(2)の前記表面(2a)に向けて供給する前記高圧流体の流れを分散するための流体分散機構(25)を有し、
前記流体分散機構は、前記被処理体(2)の前記表面(2a)に対向するように配置された閉塞板(27)と、この閉塞板(27)に形成された複数の流通孔(28)とから構成されるとともに、前記流通孔(28)は、前記被処理体(2)の前記表面(2a)と直交する方向に対して、前記回転手段(16)による前記被処理体(2)の回転方向とは反対向きに傾斜していることを特徴とする請求項8に記載の高圧処理装置。 - 前記流体排出通路(26)は、前記被処理体(2)の前記表面(2a)に沿った外方側であり、かつ、前記被処理体(2)の端部に対向する前記高圧容器(1)の壁に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の高圧処理装置。
- 前記流体導入通路(20)が前記被処理体(2)の前記表面(2a)の中心に対向するように前記高圧容器(1)の壁に設けられるとともに、
前記被処理体(2)の前記表面(2a)に対向する前記高圧容器(1)の壁内面が前記被処理体(2)の中心から外方に向かうに連れて前記表面(2a)に接近するようなラッパ形状であることを特徴とする請求項7に記載の高圧処理装置。 - 前記高圧容器(1)の前記壁内面の前記ラッパ形状が双曲線の形状を含むよう構成されていることを特徴とする請求項15に記載の高圧処理装置。
- 前記被処理体(2)の前記表面(2a)上における前記中心からの距離と、前記表面(2a)と前記壁内面との間隔とが略反比例の関係となるように構成されていることを特徴とする請求項16に記載の高圧処理装置。
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