JP2004043688A - 酸化防止機能性樹脂及びそのエマルション - Google Patents
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Abstract
【課題】酸化防止機能を有する樹脂およびそのエマルションを提供すること。
【解決手段】アルコール性水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)、必要に応じて使用されるポリオール化合物(B)、アルキルジアルカノールアミン化合物(C)及び有機ポリイソシアネート(D)とを有機溶媒中でウレタン化反応し、得られる樹脂溶液を中和剤(E)により中和した後、水に分散することにより酸化防止機能を有するエマルションが得られる。さらに、水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)、必要に応じて使用されるポリオール化合物(B)、アルキルジアルカノールアミン化合物(C)及び有機ポリイソシアネート(D)とのウレタン化反応により酸化防止機能性樹脂が得られる。
【選択図】 なし
【解決手段】アルコール性水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)、必要に応じて使用されるポリオール化合物(B)、アルキルジアルカノールアミン化合物(C)及び有機ポリイソシアネート(D)とを有機溶媒中でウレタン化反応し、得られる樹脂溶液を中和剤(E)により中和した後、水に分散することにより酸化防止機能を有するエマルションが得られる。さらに、水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)、必要に応じて使用されるポリオール化合物(B)、アルキルジアルカノールアミン化合物(C)及び有機ポリイソシアネート(D)とのウレタン化反応により酸化防止機能性樹脂が得られる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化防止機能性樹脂エマルション、それを含む耐光及び耐薬品性に優れるエマルション樹脂組成物、酸化防止機能性樹脂水性化エマルション、水性化エマルション樹脂組成物、及び酸化防止機能性樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境への配慮から、例えば自動車、電気・電子、建築等の広範な産業分野において使用されている合成樹脂エマルションの水性化が行われている。それらの水性化樹脂エマルションが日光等の紫外線を含む光や熱に晒されると、紫外線や熱によって劣化や変色を受け、分子量低下ひいては強度低下を起こすという欠点を有している。
水性化樹脂エマルションの紫外線や熱に対する耐久性(耐光性)を向上させるために、酸化防止剤を添加することが通常行われている(例えば、特開平7−138522等)。このような酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−ブチル−4’ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が知られている。
しかしながら、これら従来の酸化防止剤は粉末状で、かつ、エマルション中の樹脂や水との親和性に劣るため、これらを水性化エマルション樹脂に添加すると種々の不都合を生ずる。例えば酸化防止剤の分散性が悪く、経時的に酸化防止剤の沈降が起こる。それにより、水性化樹脂エマルションの均質性やそれから形成された塗膜またはフィルムの機械的強度を低下させることになる。
【0003】
上記のような欠点を解消するために、上記酸化防止剤を液状化したイソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが提案されている。これを使用することにより、水性化エマルション樹脂に対する分散性はかなり改良できるが、それでも、乳化分散には大量の乳化剤が必要となり、フィルム化したときの耐水性に悪影響を及ぼすことが容易に予測される。また、経時的なブリードアウトも懸念される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、水エマルション樹脂中への分散性に優れ、水エマルション樹脂の好ましい特性を損なうことなく優れた耐光性を付与するとともに、合成樹脂の水エマルション中への分散安定性を向上させることができ、エマルションから得られる塗膜表面への酸化防止機能性樹脂のブリードアウトが少なく、前記合成樹脂に長期に亘って安定な耐光性を付与し、更に耐アルカリ性や耐溶剤性に乏しい合成樹脂に優れた耐アルカリ性や耐溶剤性をも付与することができる酸化防止機能性樹脂エマルション及び酸化防止機能性樹脂並びに他の樹脂のエマルションを含むエマルション樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、公知の酸化防止剤を原料にして得られる重合体が、水エマルション樹脂中への分散性に優れ、耐光及び耐アルカリ性に優れることを見い出した。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
即ち、本発明は、「アルコール性水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)、必要に応じて使用されるポリオール化合物(B)、アルキルジアルカノールアミン化合物(C)及び有機ポリイソシアネート(D)とを有機溶媒中でウレタン化反応し、得られる樹脂溶液を中和剤(E)により中和した後、水に分散して得られる酸化防止機能性樹脂エマルション」、「他の樹脂エマルションと前記の酸化防止機能性樹脂エマルションからなるエマルション樹脂組成物」、「前記酸化防止機能性樹脂エマルションから有機溶媒を除去することにより得られる酸化防止機能性樹脂水性化エマルション」、「他の樹脂エマルションと前記酸化防止機能性樹脂水性化エマルションからなる水性化エマルション樹脂組成物」、および「水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)、必要に応じて使用されるポリオール化合物(B)、アルキルジアルカノールアミン化合物(C)及び有機ポリイソシアネート(D)とのウレタン化反応により得られる酸化防止機能性樹脂」
を提供する。アルコール性水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)としては、下記一般式(1)で表されるものが例示される。
【0006】
【化3】
(式中、R1は炭素数1〜10までのアルキレン基又は/及び−(CH2−CO)m−、R2、R3、R4は各々炭素数1〜10までのアルキレン基又は/及び−(CH2−O)n−、R5は炭素数1〜10までのアルキレン基または水素原子、m及びnは各々1〜10の整数である。)
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明において、アルコール性水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)(以下、成分(A)と略称することもある。)としては、それ自体が酸化防止剤としての性能を有するものであり、ウレタン化反応に寄与できる水酸基を2個以上有するものであり、前記のように一般式(1)で表されるものが例示される。一般式(1)において、R1、R2、R3、R4が表わす炭素数(C数)1〜10のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、デカメチレン等が挙げられる。R5が表わす炭素数(C数)1〜10のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、アミル、tert−アミル、ヘキシル、1−エチルペンチル、ヘプチル、イソヘプチル、tert−ヘプチル、1−エチルヘプチル、オクチル、ノニル、イソノニル、デシル等が挙げられる。一般式(1)で表されるものとしては、下記式(2)で示される化合物が取扱い易さおよび入手のし易すさの点で好ましい。
【0008】
【化4】
【0009】
この化合物は、CHINOX528(CHITEC CHEMICAL製)として入手することができる。
【0010】
本発明に係るウレタン化反応においては任意成分として、ポリオール化合物(B)(以下、化合物(B)と略称することもある。)を随意に用いることができる。化合物(B)としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール、ポリアルキルポリオール、ポリアルキレンポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、単独あるいは2種以上の併用系で用いられる。化合物(B)は、成分(A)100重量部に対して0〜200重量部、更には0〜100重量部用いることが好ましい。化合物(B)は特に皮膜に弾性が必要とされる場合に使用される。
また、本発明に係るウレタン化反応成分の一つである化合物(C)(以下、化合物(C)と略称することもある。)としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミンを開始剤としたラクトン付加物等が挙げられる。化合物(C)は、成分(A)100重量部に対して1〜15重量部、更には3〜10重量部用いることが好ましい。化合物(C)の量が1重量部未満では、水分散したときの分散安定性が低下することがあり、逆に、15重量部を越えると皮膜化したときの耐水性が低下することがあるので、いずれも好ましくない。
【0011】
本発明において使用される有機ポリイソシアネート(D)(以下、PIC(D)と略称することもある。)としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートがある。これらの有機ポリイソシアネートは、単独であるいは2種以上の併用系で用いられる。さらに、これらのアダクト変性体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体等の変性体も使用できる。これらのポリイソシアネートは、得られるポリウレタンの耐光性を考慮するとヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
有機ポリイソシアネート(D)の使用量は(成分(A)+化合物(B)+化合物(C))100部に対して35〜100、好ましくは35〜80、さらに好ましくは40〜60である。有機ポリイソシアネート(D)の使用量が35より少ないとエマルションの分子量が低くなり皮膜強度の低下が起こる。逆に100より多いと残存するイソシアネート基が水と反応し、保存中に増粘などの経時変化を起こす可能性があり、いずれの場合も好ましくない。
【0012】
中和剤(E)としては、中和剤(E)としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機酸、塩化メチル、臭化メチル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、塩化ベンジル、p−ニトロベンジルクロライド、臭化ベンジル、エチレンクロルヒドリン、エチレンブロムヒドリン、エピクロルヒドリン、ブロムブタン等の4級化剤が挙げられる。これらの中和剤は、単独であるいは2種以上の併用系で用いられる。
また、これらの中和剤は、単独であるいは2種以上の併用系で用いられる。中和剤(E)の使用量は化合物(C)の種類および使用量に応じて変動するが、モル比で化合物(C)/中和剤(E)=1/0.5〜1/1.5程度使用される。
【0013】
酸化防止剤(A)、随意に用いられるポリオール化合物(B)、アルキルジアルカノールアミン化合物(C)及び有機ポリイソシアネート(D)とのウレタン化反応は、各成分を一括して反応させてもよいし、酸化防止剤(A)(又はポリオール化合物(B)と共に)と有機ポリイソシアネート(D)を反応させ、次いで化合物アルキルジアルカノールアミン(C)と反応させてもよいし、アルキルジアルカノールアミン化合物(C)と有機ポリイソシアネート(D)を反応させ、次いで酸化防止剤(A)(又はポリオール化合物(B)と共に)と反応させてもよい。反応は、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等の比較的低い沸点を有する有機溶剤の存在下、通常は使用される溶剤の沸点以下の温度、具体的には20℃〜溶媒の沸点、好ましくは、(溶媒の沸点−10℃)〜溶媒の沸点、反応時間は1〜24時間、好ましくは、3〜12時間という条件で、ガスクロマトグラフィー等で有機ポリイソシアネート(D)の残存濃度を追跡しながら行われる。比較的低い沸点を有する有機溶剤を使用するのは、エマルション化した後、蒸発により除去しやすいからである。得られた反応生成物を含む樹脂溶液を前記中和剤(E)で中和し、必要に応じてドデシルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の乳化剤により水に分散させて、エマルション化する(酸化防止性樹脂エマルション)。さらに、エマルション化した後、有機溶剤を、例えば、エバポレーター、真空蒸留等により除去することにより、実質的に有機溶剤の無い酸化防止性樹脂水性化エマルションが得られる。更にこれから樹脂を乾燥して酸化防止性樹脂を得ることもできる。得られた酸化防止性樹脂エマルションまたは酸化防止性樹脂水性化エマルションは、固形分濃度5〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは30〜45重量%として用いることができる。固形分濃度が5重量%未満では、優れた性能を有する樹脂被膜を形成させにくく、逆に、60重量%を越える場合には粘度が高すぎて塗布する際の作業性に支障を来すので、好ましくない。
上記のように、本発明は、成分(A)、随意に用いられる化合物(B)、化合物(C)及び有機ポリイソシアネート(D)とのウレタン化反応により得られる酸化防止機能性樹脂を含むが、成分(A)が式(1)で表されるものを用いた酸化防止機能性樹脂が特に好ましい。この実質的に有機溶剤や水を含まない酸化防止機能性樹脂は高分子型高分子添加剤として各種熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂に添加することにより、優れた酸化防止機能を付与することができる。この場合の酸化防止機能性樹脂の形態は特に限定されずにペレット状、顆粒状、粉体状などが挙げられる。
本発明において、前記のようにウレタン化した樹脂は、水分散能を持たせるために、親水基として4級アンモニウム塩を分子中に導入しているが、分子中に導入しているが、必要に応じて、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基等のカルボキシル基以外のアニオン性極性基、第4級アンモニウム塩等のカチオン性極性基、エーテル基等のノニオン性極性基を導入してもよい。
【0014】
本発明のエマルション樹脂組成物または水性化エマルション樹脂組成物を構成するその他の樹脂のエマルションとしては、特に制限がなく従来公知のものを広く使用することができるが、酸化防止機能性樹脂エマルションの添加し易さ等を考慮すると、熱可塑性樹脂のエマルションがより好適に使用できる。エマルション化する熱可塑性樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリエステル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶プラスチック等を挙げることができる。この中でも、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂等を好ましく使用できる。更にこれらの中でもポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン樹脂等の耐アルカリ性に乏しい熱可塑性樹脂やポリアミド等の耐溶剤性に乏しい熱可塑性樹脂を特に好ましく使用できる。本発明ではこれらの樹脂のエマルションを1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。これらの樹脂のエマルションは、市販品を入手して使用することができる。
【0015】
本発明のエマルション樹脂組成物または水性化エマルション樹脂組成物を構成する前記その他の樹脂及び成分(A)を構成単位として含有する酸化防止機能性樹脂エマルションの配合割合としては、特に制限がなく広い範囲内から適宜選択できるが、好ましくは、その他の樹脂/酸化防止機能性樹脂(固形分)を重量比で80〜99.995/20〜0.005、更に好ましくは90〜99.9/10〜0.1(両者の合計は100となる。)となるように配合する。
【0016】
本発明の酸化防止機能性樹脂エマルション、酸化防止機能性樹脂エマルション樹脂組成物、および酸化防止機能性樹脂水性化エマルションには、更に必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、加工安定剤、老化防止剤、相溶化剤等の公知の添加剤の少なくとも1種を配合することができる。紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。光安定剤としては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系光安定剤、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のニッケル塩系光安定剤等を挙げることができる。加工安定剤としては、例えばトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート等のリン系加工安定剤等を挙げることができる。老化防止剤としては、例えば1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等を挙げることができる。これら添加剤の配合量は特に制限されないが、通常、他の樹脂の水エマルションの樹脂分に対して0.01〜20重量%程度用いることが好ましい。
【0017】
本発明の酸化防止機能性樹脂エマルション、エマルション樹脂組成物、酸化防止機能性樹脂水性化エマルション、および水性化エマルション樹脂組成物は、樹脂の水性化エマルションが使用される全ての用途に使用可能であるが、特に日光又は紫外線を含む光及び熱に晒される可能性のある用途に特に好適に使用できる。
具体例としては、例えばガラス代替品とその表面コーティング材、住居、施設、輸送機器等の窓ガラス、採光ガラス及び光源保護ガラス用のコーティング材、住居、施設、輸送機器等の内外装材及び内外装用塗料、蛍光灯、水銀灯等の紫外線を発する光源用部材、精密機械、電子電気機器用部材、各種ディスプレーから発生する電磁波等の遮断用材、食品、化学品、薬品等の容器又は包装材、農工業用シート又はフィルム材、印刷物、染色物、染顔料等の退色防止剤、日焼け止めクリーム、シャンプー、リンス、整髪料等の化粧品、スポーツウェア、ストッキング、帽子等の衣料用繊維製品及び繊維、カーテン、絨毯、壁紙等の家庭用内装品、プラスチックレンズ、コンタクトレンズ、義眼等の医療用器具、光学フィルター、プリズム、鏡、写真材料等の光学用品、テープ、インク等の文房具、標示板、標示器等とその表面コーティング材等を挙げることができる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
冷却管、窒素導入管、滴下ロート、温度計及び撹拌器を備えたガラス製フラスコにアセトン250重量部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)262.2重量部を入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら、前記式(2)で表されるアルコール性水酸基を2個以上有する化合物である酸化防止剤(A)[CHINOX528(CHITEC CHEMICAL製)]344.89重量部を滴下した。フラスコの温度を65℃に昇温し、2時間反応を行い、N−メチルジエタノールアミン48.02重量部を仕込み、さらに、ジブチルスズジラウレート0.30重量部を仕込んで、10時間反応を継続してプレポリマーを合成した。反応終了時のNCO濃度は、0.452mmol/g(理論NCO濃度0.44mmol/g)で、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によるプレポリマーの数平均分子量は、3900、重量平均分子量は7800であった。次に、酢酸24.18重量部を加えて、アミンを中和し、水1600重量部中に中和後のプレポリマーのアセトン溶液を攪拌しながら滴下してエマルション化した。その後、溶媒のアセトンを減圧で除去し、目的の酸化防止機能性樹脂水性化エマルション(A−1)を得た。この酸化防止機能性樹脂水性化エマルションの不揮発分濃度は40重量%で、光散乱粒子径測定装置(大塚電子製、ELS−800)による平均粒子径は84nmであった。
【0020】
(実施例2及び比較例1)
カチオン性水系ポリウレタンエマルションF−8559D(第一工業製薬株式会社製)100重量部(固形分)に対し、前記実施例1で得た酸化防止性樹脂水性化エマルション(不揮発分濃度40重量%エマルション中の固形分重量)を、比較例1では従来の酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を表1に示す割合で混合し、これらを各々テフロンコートしたガラス板上に乾燥後のフィルム厚みが100μmになるように流延し、室温で14日間キュア乾燥し、フィルムを得た。
それぞれの配合品7日間放置後、配合液の安定性を調べた。
安定:〇、分離あり:△、沈降有り:×
フィルムをサンシャインウェザーメーターによる暴露試験に供し、1000時間暴露後引張り強度試験を行ない、それぞれの引張り破壊伸び率を調べた。試験条件を以下に示し、試験結果を表1に併せて示す。表1から、本発明品が従来品に比し優れた耐光性(酸化防止機能)を有していることが判る。
【0021】
【表1】
【0022】
(1)暴露試験使用機種:デューサイクルサンシャインウェザーメーターWEL−SUN−DC、スガ試験機(株)製、光源:カーボンアーク、降雨サイクル:120分毎に18分間降雨、温度:ブラックパネル80℃
(2)引張り強度試験使用機種:島津オートグラフDSC、(株)島津製作所製、条件:200kg/FS、クロスヘッドスピード50mm/分、GL=30mm
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、高いレベルでしかも長期的に安定した耐光性を有する酸化防止性樹脂の水性化エマルション等を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化防止機能性樹脂エマルション、それを含む耐光及び耐薬品性に優れるエマルション樹脂組成物、酸化防止機能性樹脂水性化エマルション、水性化エマルション樹脂組成物、及び酸化防止機能性樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境への配慮から、例えば自動車、電気・電子、建築等の広範な産業分野において使用されている合成樹脂エマルションの水性化が行われている。それらの水性化樹脂エマルションが日光等の紫外線を含む光や熱に晒されると、紫外線や熱によって劣化や変色を受け、分子量低下ひいては強度低下を起こすという欠点を有している。
水性化樹脂エマルションの紫外線や熱に対する耐久性(耐光性)を向上させるために、酸化防止剤を添加することが通常行われている(例えば、特開平7−138522等)。このような酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−ブチル−4’ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が知られている。
しかしながら、これら従来の酸化防止剤は粉末状で、かつ、エマルション中の樹脂や水との親和性に劣るため、これらを水性化エマルション樹脂に添加すると種々の不都合を生ずる。例えば酸化防止剤の分散性が悪く、経時的に酸化防止剤の沈降が起こる。それにより、水性化樹脂エマルションの均質性やそれから形成された塗膜またはフィルムの機械的強度を低下させることになる。
【0003】
上記のような欠点を解消するために、上記酸化防止剤を液状化したイソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが提案されている。これを使用することにより、水性化エマルション樹脂に対する分散性はかなり改良できるが、それでも、乳化分散には大量の乳化剤が必要となり、フィルム化したときの耐水性に悪影響を及ぼすことが容易に予測される。また、経時的なブリードアウトも懸念される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、水エマルション樹脂中への分散性に優れ、水エマルション樹脂の好ましい特性を損なうことなく優れた耐光性を付与するとともに、合成樹脂の水エマルション中への分散安定性を向上させることができ、エマルションから得られる塗膜表面への酸化防止機能性樹脂のブリードアウトが少なく、前記合成樹脂に長期に亘って安定な耐光性を付与し、更に耐アルカリ性や耐溶剤性に乏しい合成樹脂に優れた耐アルカリ性や耐溶剤性をも付与することができる酸化防止機能性樹脂エマルション及び酸化防止機能性樹脂並びに他の樹脂のエマルションを含むエマルション樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、公知の酸化防止剤を原料にして得られる重合体が、水エマルション樹脂中への分散性に優れ、耐光及び耐アルカリ性に優れることを見い出した。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
即ち、本発明は、「アルコール性水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)、必要に応じて使用されるポリオール化合物(B)、アルキルジアルカノールアミン化合物(C)及び有機ポリイソシアネート(D)とを有機溶媒中でウレタン化反応し、得られる樹脂溶液を中和剤(E)により中和した後、水に分散して得られる酸化防止機能性樹脂エマルション」、「他の樹脂エマルションと前記の酸化防止機能性樹脂エマルションからなるエマルション樹脂組成物」、「前記酸化防止機能性樹脂エマルションから有機溶媒を除去することにより得られる酸化防止機能性樹脂水性化エマルション」、「他の樹脂エマルションと前記酸化防止機能性樹脂水性化エマルションからなる水性化エマルション樹脂組成物」、および「水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)、必要に応じて使用されるポリオール化合物(B)、アルキルジアルカノールアミン化合物(C)及び有機ポリイソシアネート(D)とのウレタン化反応により得られる酸化防止機能性樹脂」
を提供する。アルコール性水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)としては、下記一般式(1)で表されるものが例示される。
【0006】
【化3】
(式中、R1は炭素数1〜10までのアルキレン基又は/及び−(CH2−CO)m−、R2、R3、R4は各々炭素数1〜10までのアルキレン基又は/及び−(CH2−O)n−、R5は炭素数1〜10までのアルキレン基または水素原子、m及びnは各々1〜10の整数である。)
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明において、アルコール性水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)(以下、成分(A)と略称することもある。)としては、それ自体が酸化防止剤としての性能を有するものであり、ウレタン化反応に寄与できる水酸基を2個以上有するものであり、前記のように一般式(1)で表されるものが例示される。一般式(1)において、R1、R2、R3、R4が表わす炭素数(C数)1〜10のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、デカメチレン等が挙げられる。R5が表わす炭素数(C数)1〜10のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、アミル、tert−アミル、ヘキシル、1−エチルペンチル、ヘプチル、イソヘプチル、tert−ヘプチル、1−エチルヘプチル、オクチル、ノニル、イソノニル、デシル等が挙げられる。一般式(1)で表されるものとしては、下記式(2)で示される化合物が取扱い易さおよび入手のし易すさの点で好ましい。
【0008】
【化4】
【0009】
この化合物は、CHINOX528(CHITEC CHEMICAL製)として入手することができる。
【0010】
本発明に係るウレタン化反応においては任意成分として、ポリオール化合物(B)(以下、化合物(B)と略称することもある。)を随意に用いることができる。化合物(B)としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール、ポリアルキルポリオール、ポリアルキレンポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、単独あるいは2種以上の併用系で用いられる。化合物(B)は、成分(A)100重量部に対して0〜200重量部、更には0〜100重量部用いることが好ましい。化合物(B)は特に皮膜に弾性が必要とされる場合に使用される。
また、本発明に係るウレタン化反応成分の一つである化合物(C)(以下、化合物(C)と略称することもある。)としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミンを開始剤としたラクトン付加物等が挙げられる。化合物(C)は、成分(A)100重量部に対して1〜15重量部、更には3〜10重量部用いることが好ましい。化合物(C)の量が1重量部未満では、水分散したときの分散安定性が低下することがあり、逆に、15重量部を越えると皮膜化したときの耐水性が低下することがあるので、いずれも好ましくない。
【0011】
本発明において使用される有機ポリイソシアネート(D)(以下、PIC(D)と略称することもある。)としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートがある。これらの有機ポリイソシアネートは、単独であるいは2種以上の併用系で用いられる。さらに、これらのアダクト変性体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体等の変性体も使用できる。これらのポリイソシアネートは、得られるポリウレタンの耐光性を考慮するとヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
有機ポリイソシアネート(D)の使用量は(成分(A)+化合物(B)+化合物(C))100部に対して35〜100、好ましくは35〜80、さらに好ましくは40〜60である。有機ポリイソシアネート(D)の使用量が35より少ないとエマルションの分子量が低くなり皮膜強度の低下が起こる。逆に100より多いと残存するイソシアネート基が水と反応し、保存中に増粘などの経時変化を起こす可能性があり、いずれの場合も好ましくない。
【0012】
中和剤(E)としては、中和剤(E)としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機酸、塩化メチル、臭化メチル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、塩化ベンジル、p−ニトロベンジルクロライド、臭化ベンジル、エチレンクロルヒドリン、エチレンブロムヒドリン、エピクロルヒドリン、ブロムブタン等の4級化剤が挙げられる。これらの中和剤は、単独であるいは2種以上の併用系で用いられる。
また、これらの中和剤は、単独であるいは2種以上の併用系で用いられる。中和剤(E)の使用量は化合物(C)の種類および使用量に応じて変動するが、モル比で化合物(C)/中和剤(E)=1/0.5〜1/1.5程度使用される。
【0013】
酸化防止剤(A)、随意に用いられるポリオール化合物(B)、アルキルジアルカノールアミン化合物(C)及び有機ポリイソシアネート(D)とのウレタン化反応は、各成分を一括して反応させてもよいし、酸化防止剤(A)(又はポリオール化合物(B)と共に)と有機ポリイソシアネート(D)を反応させ、次いで化合物アルキルジアルカノールアミン(C)と反応させてもよいし、アルキルジアルカノールアミン化合物(C)と有機ポリイソシアネート(D)を反応させ、次いで酸化防止剤(A)(又はポリオール化合物(B)と共に)と反応させてもよい。反応は、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等の比較的低い沸点を有する有機溶剤の存在下、通常は使用される溶剤の沸点以下の温度、具体的には20℃〜溶媒の沸点、好ましくは、(溶媒の沸点−10℃)〜溶媒の沸点、反応時間は1〜24時間、好ましくは、3〜12時間という条件で、ガスクロマトグラフィー等で有機ポリイソシアネート(D)の残存濃度を追跡しながら行われる。比較的低い沸点を有する有機溶剤を使用するのは、エマルション化した後、蒸発により除去しやすいからである。得られた反応生成物を含む樹脂溶液を前記中和剤(E)で中和し、必要に応じてドデシルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の乳化剤により水に分散させて、エマルション化する(酸化防止性樹脂エマルション)。さらに、エマルション化した後、有機溶剤を、例えば、エバポレーター、真空蒸留等により除去することにより、実質的に有機溶剤の無い酸化防止性樹脂水性化エマルションが得られる。更にこれから樹脂を乾燥して酸化防止性樹脂を得ることもできる。得られた酸化防止性樹脂エマルションまたは酸化防止性樹脂水性化エマルションは、固形分濃度5〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは30〜45重量%として用いることができる。固形分濃度が5重量%未満では、優れた性能を有する樹脂被膜を形成させにくく、逆に、60重量%を越える場合には粘度が高すぎて塗布する際の作業性に支障を来すので、好ましくない。
上記のように、本発明は、成分(A)、随意に用いられる化合物(B)、化合物(C)及び有機ポリイソシアネート(D)とのウレタン化反応により得られる酸化防止機能性樹脂を含むが、成分(A)が式(1)で表されるものを用いた酸化防止機能性樹脂が特に好ましい。この実質的に有機溶剤や水を含まない酸化防止機能性樹脂は高分子型高分子添加剤として各種熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂に添加することにより、優れた酸化防止機能を付与することができる。この場合の酸化防止機能性樹脂の形態は特に限定されずにペレット状、顆粒状、粉体状などが挙げられる。
本発明において、前記のようにウレタン化した樹脂は、水分散能を持たせるために、親水基として4級アンモニウム塩を分子中に導入しているが、分子中に導入しているが、必要に応じて、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基等のカルボキシル基以外のアニオン性極性基、第4級アンモニウム塩等のカチオン性極性基、エーテル基等のノニオン性極性基を導入してもよい。
【0014】
本発明のエマルション樹脂組成物または水性化エマルション樹脂組成物を構成するその他の樹脂のエマルションとしては、特に制限がなく従来公知のものを広く使用することができるが、酸化防止機能性樹脂エマルションの添加し易さ等を考慮すると、熱可塑性樹脂のエマルションがより好適に使用できる。エマルション化する熱可塑性樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリエステル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶プラスチック等を挙げることができる。この中でも、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂等を好ましく使用できる。更にこれらの中でもポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン樹脂等の耐アルカリ性に乏しい熱可塑性樹脂やポリアミド等の耐溶剤性に乏しい熱可塑性樹脂を特に好ましく使用できる。本発明ではこれらの樹脂のエマルションを1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。これらの樹脂のエマルションは、市販品を入手して使用することができる。
【0015】
本発明のエマルション樹脂組成物または水性化エマルション樹脂組成物を構成する前記その他の樹脂及び成分(A)を構成単位として含有する酸化防止機能性樹脂エマルションの配合割合としては、特に制限がなく広い範囲内から適宜選択できるが、好ましくは、その他の樹脂/酸化防止機能性樹脂(固形分)を重量比で80〜99.995/20〜0.005、更に好ましくは90〜99.9/10〜0.1(両者の合計は100となる。)となるように配合する。
【0016】
本発明の酸化防止機能性樹脂エマルション、酸化防止機能性樹脂エマルション樹脂組成物、および酸化防止機能性樹脂水性化エマルションには、更に必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、加工安定剤、老化防止剤、相溶化剤等の公知の添加剤の少なくとも1種を配合することができる。紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。光安定剤としては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系光安定剤、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のニッケル塩系光安定剤等を挙げることができる。加工安定剤としては、例えばトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート等のリン系加工安定剤等を挙げることができる。老化防止剤としては、例えば1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等を挙げることができる。これら添加剤の配合量は特に制限されないが、通常、他の樹脂の水エマルションの樹脂分に対して0.01〜20重量%程度用いることが好ましい。
【0017】
本発明の酸化防止機能性樹脂エマルション、エマルション樹脂組成物、酸化防止機能性樹脂水性化エマルション、および水性化エマルション樹脂組成物は、樹脂の水性化エマルションが使用される全ての用途に使用可能であるが、特に日光又は紫外線を含む光及び熱に晒される可能性のある用途に特に好適に使用できる。
具体例としては、例えばガラス代替品とその表面コーティング材、住居、施設、輸送機器等の窓ガラス、採光ガラス及び光源保護ガラス用のコーティング材、住居、施設、輸送機器等の内外装材及び内外装用塗料、蛍光灯、水銀灯等の紫外線を発する光源用部材、精密機械、電子電気機器用部材、各種ディスプレーから発生する電磁波等の遮断用材、食品、化学品、薬品等の容器又は包装材、農工業用シート又はフィルム材、印刷物、染色物、染顔料等の退色防止剤、日焼け止めクリーム、シャンプー、リンス、整髪料等の化粧品、スポーツウェア、ストッキング、帽子等の衣料用繊維製品及び繊維、カーテン、絨毯、壁紙等の家庭用内装品、プラスチックレンズ、コンタクトレンズ、義眼等の医療用器具、光学フィルター、プリズム、鏡、写真材料等の光学用品、テープ、インク等の文房具、標示板、標示器等とその表面コーティング材等を挙げることができる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
冷却管、窒素導入管、滴下ロート、温度計及び撹拌器を備えたガラス製フラスコにアセトン250重量部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)262.2重量部を入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながら、前記式(2)で表されるアルコール性水酸基を2個以上有する化合物である酸化防止剤(A)[CHINOX528(CHITEC CHEMICAL製)]344.89重量部を滴下した。フラスコの温度を65℃に昇温し、2時間反応を行い、N−メチルジエタノールアミン48.02重量部を仕込み、さらに、ジブチルスズジラウレート0.30重量部を仕込んで、10時間反応を継続してプレポリマーを合成した。反応終了時のNCO濃度は、0.452mmol/g(理論NCO濃度0.44mmol/g)で、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によるプレポリマーの数平均分子量は、3900、重量平均分子量は7800であった。次に、酢酸24.18重量部を加えて、アミンを中和し、水1600重量部中に中和後のプレポリマーのアセトン溶液を攪拌しながら滴下してエマルション化した。その後、溶媒のアセトンを減圧で除去し、目的の酸化防止機能性樹脂水性化エマルション(A−1)を得た。この酸化防止機能性樹脂水性化エマルションの不揮発分濃度は40重量%で、光散乱粒子径測定装置(大塚電子製、ELS−800)による平均粒子径は84nmであった。
【0020】
(実施例2及び比較例1)
カチオン性水系ポリウレタンエマルションF−8559D(第一工業製薬株式会社製)100重量部(固形分)に対し、前記実施例1で得た酸化防止性樹脂水性化エマルション(不揮発分濃度40重量%エマルション中の固形分重量)を、比較例1では従来の酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を表1に示す割合で混合し、これらを各々テフロンコートしたガラス板上に乾燥後のフィルム厚みが100μmになるように流延し、室温で14日間キュア乾燥し、フィルムを得た。
それぞれの配合品7日間放置後、配合液の安定性を調べた。
安定:〇、分離あり:△、沈降有り:×
フィルムをサンシャインウェザーメーターによる暴露試験に供し、1000時間暴露後引張り強度試験を行ない、それぞれの引張り破壊伸び率を調べた。試験条件を以下に示し、試験結果を表1に併せて示す。表1から、本発明品が従来品に比し優れた耐光性(酸化防止機能)を有していることが判る。
【0021】
【表1】
【0022】
(1)暴露試験使用機種:デューサイクルサンシャインウェザーメーターWEL−SUN−DC、スガ試験機(株)製、光源:カーボンアーク、降雨サイクル:120分毎に18分間降雨、温度:ブラックパネル80℃
(2)引張り強度試験使用機種:島津オートグラフDSC、(株)島津製作所製、条件:200kg/FS、クロスヘッドスピード50mm/分、GL=30mm
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、高いレベルでしかも長期的に安定した耐光性を有する酸化防止性樹脂の水性化エマルション等を提供することができる。
Claims (9)
- アルコール性水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)、必要に応じて使用されるポリオール化合物(B)、アルキルジアルカノールアミン化合物(C)及び有機ポリイソシアネート(D)とを有機溶媒中でウレタン化反応し、得られる樹脂溶液を中和剤(E)により中和した後、水に分散して得られる酸化防止機能性樹脂エマルション。
- アルコール性水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)の構成単位を、樹脂中10重量%以上含有する請求項1または2に記載の酸化防止機能性樹脂エマルション。
- アルキルジアルカノールアミン化合物(C)がN−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、およびN−エチルジエタノールアミンを開始剤としたラクトン付加物の群から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜3のいずれかに記載の酸化防止機能性樹脂エマルション。
- 他の樹脂エマルションと請求項1〜4のいずれかに記載の酸化防止機能性樹脂エマルションからなるエマルション樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の酸化防止機能性樹脂エマルションから有機溶媒を除去することにより得られる酸化防止機能性樹脂水性化エマルション。
- 他の樹脂エマルションと請求項6に記載の酸化防止機能性樹脂水性化エマルションからなる水性化エマルション樹脂組成物。
- 水酸基を2個以上有する酸化防止剤(A)、必要に応じて使用されるポリオール化合物(B)、アルキルジアルカノールアミン化合物(C)及び有機ポリイソシアネート(D)とのウレタン化反応により得られる酸化防止機能性樹脂。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2016047392A1 (ja) * | 2014-09-26 | 2016-03-31 | 富士フイルム株式会社 | 感光性樹脂組成物、平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、高分子化合物 |
-
2002
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