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JP2003213372A - ばね用鋼線およびばね - Google Patents

ばね用鋼線およびばね

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Publication number
JP2003213372A
JP2003213372A JP2002017472A JP2002017472A JP2003213372A JP 2003213372 A JP2003213372 A JP 2003213372A JP 2002017472 A JP2002017472 A JP 2002017472A JP 2002017472 A JP2002017472 A JP 2002017472A JP 2003213372 A JP2003213372 A JP 2003213372A
Authority
JP
Japan
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spring
steel wire
grain size
mass
steel
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Pending
Application number
JP2002017472A
Other languages
English (en)
Inventor
Toru Ishihara
亨 石原
Hiroshi Izumida
寛 泉田
Norito Yamao
憲人 山尾
Teruyuki Murai
照幸 村井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo SEI Steel Wire Corp
Original Assignee
Sumitomo SEI Steel Wire Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高価な元素の添加および高価な処理を施すこ
と無く、材料自身の耐疲労特性を向上できるばね用鋼線
とその製造方法ならびにばねを提供する。 【解決手段】 質量%でC:0.50〜0.90、Si:1.0〜3.
0、Mn:0.5〜1.5、Cr:0.1〜5.0を含み、主として金属
組織が焼戻しマルテンサイトからなるばね用鋼線であ
る。焼戻しマルテンサイトの旧オーステナイト結晶粒度
番号(JIS G O551)が#11〜#15で、最大の結晶粒径
を8μm以下とする。結晶粒径を微細化によって結晶粒界
の密度を増加させて材料自身の強度向上を図り、耐疲労
特性を向上させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等に用いら
れる高強度ばねと、その製造に適用されるばね用鋼線に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車のエンジンに使用される弁ばね
は、高応力、高回転で用いられており、最も厳しい使用
環境にあるばねの一つである。そして、近年、自動車の
軽量化に伴い、ばね用鋼線として更なる高強度化、長寿
命化、つまり高耐疲労特性が要求されている。一般的に
弁ばね用材料は、弁ばね用クロムバナジウム鋼オイルテ
ンパー線や弁ばね用シリコンクロム鋼オイルテンパー線
が用いられており、これらの高耐疲労化が進んでいる。
【0003】特開昭62-177152号公報(特許第2650225
号)においては、Moなどの元素を添加し、さらに窒化処
理を行うことによって高強度化を図っている。また、特
開平5-320827号公報(特許第2898472号)では、Mo、Nb
などの元素を添加し、介在物の大きさ、組成を制御する
ことによって高強度化を図っている。さらに、特開平02
-247354号公報では旧オーステナイト結晶粒径を、特開
平11-6033号公報では旧オーステナイト結晶粒径と未固
溶炭化物を、特開平9-71843号公報では残留γ量を制限
することによって疲労特性の改善を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の技術で
は、近年コスト低減の要望が強い中、高価な処理や添加
元素を加えている点で問題である。伸線を行うためには
組織をパーライト組織にする必要があるが、Mo添加によ
ってパーライト組織に変態させるための冷却速度を、従
来材に比べ緩冷却側に制御しなければならず、工業的に
も適さない。
【0005】また、未固溶炭化物、残留γ量、介在物な
どの疲労破壊の起点となり得る部分を制御、低減するこ
とは重要であるが、さらなる耐疲労特性の向上が望まれ
ている。
【0006】従って、本発明の主目的は、高価な元素の
添加および高価な処理を極力行うことなく、材料自身の
耐疲労特性を向上できるばね用鋼線とばねを提供するこ
とにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の特徴とす
るところは、質量%でC:0.50〜0.90、Si:1.0〜3.0、M
n:0.5〜1.5、Cr:0.1〜5.0を含み、主として金属組織
が焼戻しマルテンサイトからなるばね用鋼線であって、
焼戻しマルテンサイトの旧オーステナイト結晶粒度番号
(JIS G O551)が#11〜#15で、最大の結晶粒径を8
μm以下としたことにある。
【0008】ここで、「主として金属組織が焼戻しマル
テンサイトからなる」とは、焼戻しマルテンサイトが90
%以上含まれていることを指す。化学成分として、さら
に質量%でMo:0.05〜0.50、V:0.05〜0.50、W:0.05〜
0.15、Nb:0.05〜0.15、Ti:0.01〜0.20、Ni:0.02〜1.
00、Co:0.02〜1.00、Cu:0.02〜1.00のうち1種以上を
含有してもよい。これらの化学成分の他は、Feと不可避
不純物から構成されるものが好適である。
【0009】材料自身の耐疲労特性を向上させるために
は、結晶粒径を微細化することによって可能である。と
いうのも、結晶の粒界は粒内に比べて強度が強いため、
微細化によって結晶粒界の密度を増加すれば強度向上を
図れるからである。
【0010】つまり、結晶粒度を粗大化すると靭性が劣
化し、十分な靭性を得るためには#11以上にすることが
必要である。また、微細化するためには焼入時の加熱温
度を低くする、もしくは短時間で加熱する必要があり、
この場合未固溶炭化物が生じ、靭性を低下させるため#
15以下に特定した。
【0011】粒度番号に加えてさらに最大結晶粒径を8
μm以下と特定した理由は、大きな結晶が一つでも存在
すると、その大きな結晶粒に応力が集中して疲労破壊の
起点となるためである。粒度番号が#11〜#15というの
は、結晶粒径にして6.2μm〜1.6μmであるが、これは平
均粒径であり、最大粒径を規定するものではないため、
本発明では最大粒径についても規定している。
【0012】このような結晶粒度の微細化は、焼入時の
加熱温度を800〜1100℃、加熱時間を1〜10sの条件で作
製することができる。加熱時間は焼入時の加熱温度に保
持する時間のことである。局所的に大きな結晶が存在し
ない組織を得るためには、加熱温度を低くして短時間で
均一に加熱することによって作製することができる。ま
た、本発ばね用鋼線は、高価な窒化処理を行わなくても
耐疲労特性を向上できるが、窒化処理などの表面硬化法
を施せば、さらに耐疲労特性は向上すると考えられる。
【0013】本発明の第2の特徴とするところは、上記
結晶粒度や最大結晶粒径の特定と共に、マルテンサイト
中におけるブロックの厚みの最大値を600nm以下に特定
したことにある。
【0014】本発明の第3の特徴とするところは、さら
に降伏比を0.97以上、引張強さを1800〜2300N/mm2、線
表面の硬度をHmV600以上の何れか1つ以上を特定したこ
とである。
【0015】次に、本発明における構成要件の限定理由
を説明する。
【0016】<C:0.50〜0.90質量%>Cは鋼の強度を高
めるのに必須の元素であるが、0.50%未満では十分な強
度を得ることができず、0.90%を超えると結晶粒界にセ
メンタイトが析出し靭性が低下する。
【0017】<Si:1.0〜3.0質量%>Siはフェライト中
に固溶することによって、フェライトの強度を向上さ
せ、耐へたり性を向上させるのに有効な元素である。1.
0%未満では十分な耐へたり性を得ることができず、逆
に3.0%を超える場合は固溶しきれずに靭性を低下さ
せ、ばね加工性を低下させる。
【0018】<Mn:0.5〜1.5質量%>Mnは鋼の焼入れ性
を向上させるのに有効な元素であり、0.5%未満ではそ
の効果が少なく、逆に1.5%を超えると靭性を低下させ
る。
【0019】<Cr:0.1〜5.0質量%>CrはMn同様、鋼の
焼入れ性を向上させるとともに焼戻し時の軟化抵抗を高
め、高強度化するのに効果的な元素である。0.1%未満
ではその効果が少なく、逆に5.0%を超えると焼入れ性
の過度の増大となって靭性を低下させる。
【0020】<Mo:0.05〜0.50質量%>Moは焼戻し時に
炭化物を形成し、軟化抵抗を増大させる元素である。0.
05%未満ではその効果が少なく、0.50%を超えると伸線
加工性を低下させる。
【0021】<V:0.05〜0.50、W:0.05〜0.15、Nb:0.
05〜0.15質量%>W、Nb、Vも焼戻し時に鋼中に炭化物を
形成し、軟化抵抗を増大させる効果がある。但しいずれ
も0.05%未満では、その効果を発揮し得ない。逆に、V
では0.50%超、W、Nbでは0.15%超でいずれも焼入れ加
熱時に炭化物を多く形成し、靭性を低下させる。
【0022】<Ti:0.01〜0.20質量%>Tiも焼戻し時に
鋼中に炭化物を形成し、軟化抵抗を増大させる効果があ
る。但しTiは高融点非金属介在物であるTiOを生成す
る。故に精錬時の条件設定などが重要である。軟化抵抗
向上効果が期待できる量として0.01%以上、炭化物、介
在物の過度の増加による靭性劣化を考慮して0.20%以下
とした。
【0023】<Ni:0.02〜1.00、Co:0.02〜1.00、Cu:
0.02〜1.00質量%>Ni、Co、Cuはオーステナイト生成元
素であり、Ni、Co、Cu添加によってMs点を大きく低下さ
せ、残留オーステナイトを生じ易くする材料である。残
留オーステナイトの増加は、鋼線の硬度を低下させる作
用を持つが、逆にSiによる固溶強化やMo、W、Nb、V、Ti
といった炭化物析出元素で強化された鋼線に靭性を持た
せる効果を持つ。また、Niは塩水腐食環境において、Cl
元素の侵入を阻止する役割も持つ。靭性向上効果を持つ
最低限度として0.02%、硬度低下を招かない上限として
1.00%とした。
【0024】<マルテンサイト中のブロックの厚みの最
大値:600nm以下>焼戻しマルテンサイトの旧オーステ
ナイト粒度番号は、マルテンサイト組織の有効な評価方
法ではある。ただし、焼戻しマルテンサイトの組織は旧
オーステナイト、パケット、ブロック、ラスで構成され
ており、厳密的には同一の結晶方位を持つラスで構成さ
れたブロックの厚みが強度や靭性に大きく影響する。そ
こで、十分な靭性を得るためには、ブロックの最大厚み
を600nm以下と特定した。
【0025】<降伏比:0.97以上>材料自身の耐疲労特
性をさらに向上させるためには、粒内を強化することが
必要である。一般的に高強度材の疲労破壊は、すべり帯
の集中によって亀裂が発生し破壊が起こる。そこで、す
べり帯の発生を低減するためには高弾性限である必要が
あり、降伏比を0.97以上と特定した。
【0026】<引張強さ:1800〜2300N/mm2>引張強さ
が1800N/mm2未満であると、ばねとして十分な強度を得
ることができず、耐へたり性も低下する。一方で2300N/
mm2を超えると靭性が低下し、ばねの加工性を低下させ
る。
【0027】<線表面の硬度:HmV600以上>本発明鋼線
の表面を硬化させると更に耐疲労性の向上が期待でき
る。硬化させる手法として、窒化処理、浸炭処理などが
あるが、これらの表面処理は母材の機械的特性の影響を
受けやすい。即ち、本発明鋼線を用いて作製したばね
を、これら従来の表面硬化法と組み合わせることで著し
い疲労限の向上が期待できる。本発明では疲労限向上の
期待できる表面硬度の下限としてHmV600とした。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。 (実施例1)表1に示す化学成分を有する供試鋼を溶解、
圧延、熱処理(パテンティング)し、伸線によって線径
8.0mmから3.5mmの線材とした。この線材を表2、3に示す
加熱温度、加熱時間で焼入れしてから焼戻しして試料を
作製し、その後に旧オーステナイト結晶粒度番号、最大
結晶粒径、最大ブロック厚みの測定および引張試験に基
づく降伏比の算出を行った。供試鋼は表1に記載の元素
の他、残部はFeと不可避不純物からなる。パテンティン
グ条件は、保持温度600℃、保持時間40秒とした。焼戻
し条件は、加熱温度480℃、保持時間1秒とした。結晶粒
度番号はJISG O551に基づいて求めた。最大結晶粒径、
最大ブロック厚みは試料を顕微鏡で拡大して求めた。
【0029】また、作製した試料を表4に示すばね諸元
でばねに加工し、ショットピーニングを施した後、ばね
疲労試験機で疲労試験を行い、振幅回数1×107回で未折
損である振幅応力を測定した。疲労試験における平均応
力は700MPaである。これらの試験結果を表2、表3に示
す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】以上のように、それぞれA1とa1、B1とb1、
C1とc1を比較した結果から、本発明鋼は振幅応力が大き
く約60MPaも上昇していることがわかる。また、B1とC1
の結果から、MoやNi添加によって振幅応力の向上は認め
られないことが分かる。
【0035】b3、B1、B6、B7の結果から結晶粒度番号が
大きくなると振幅応力が高くなっていることが分かる。
b2、B1、B8の結果から最大結晶粒径が小さくなると振幅
応力が高くなっていることが分かる。B1、B2、B9の結果
からブロックの最大厚みが薄くなると振幅応力が高くな
っていることが分かる。B1、B3、B10の結果から降伏比
が大きくなると振幅応力が高くなっていることが分か
る。
【0036】さらに、引張強さが1800MPa、2250MPaであ
るばね用鋼線についても、同様な結果を得た。
【0037】(実施例2)前記表3における発明鋼B1と
比較鋼b1のばねについて、窒化処理等によって表面硬度
を高め、実施例1と同様にばね疲労試験を実施した。窒
化処理条件と表面硬度および疲労試験結果を表5に示
す。
【0038】
【表5】
【0039】以上のように、本発明鋼では比較鋼に比べ
て表面硬度が高くなると著しく振幅応力が向上している
ことが分かる。
【0040】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば特
別な処理を施すこと無しに、耐疲労特性の向上を得るこ
とができる。これによって、ばねの細径化が可能にな
り、自動車エンジンの小型軽量化が可能になる。
【0041】また、細径化による原料費低減および表面
硬化法の省略による加工費低減など工業的にも有効であ
る。
【0042】さらに、従来の表面硬化法を組み合わせる
ことによって、さらなる耐疲労特性の向上を得ることが
できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山尾 憲人 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 村井 照幸 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友 電気工業株式会社伊丹製作所内 Fターム(参考) 3J059 AB11 BA01 BA31 BC02 EA09 GA08

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学成分が質量%で、C:0.50〜0.90、S
    i:1.0〜3.0、Mn:0.5〜1.5、Cr:0.1〜5.0を含み、主
    として金属組織が焼戻しマルテンサイトからなるばね用
    鋼線であって、 焼戻しマルテンサイトの旧オーステナイト結晶粒度番号
    (JIS G O551)が#11〜#15で、その最大結晶粒径が
    8μm以下であることを特徴とするばね用鋼線。
  2. 【請求項2】 さらに質量%でMo:0.05〜0.50、V:0.0
    5〜0.50、W:0.05〜0.15、Nb:0.05〜0.15、Ti:0.01〜
    0.20、Ni:0.02〜1.00、Co:0.02〜1.00、Cu:0.02〜1.
    00のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1
    に記載のばね用鋼線。
  3. 【請求項3】 マルテンサイト中におけるブロックの厚
    みの最大値が600nm以下であることを特徴とする請求項1
    または2に記載のばね用鋼線。
  4. 【請求項4】 降伏比が0.97以上であることを特徴とす
    る請求項1または2に記載のばね用鋼線。
  5. 【請求項5】 引張強さが1800〜2300N/mm2であること
    を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のばね用鋼
    線。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載のばね用鋼
    線を用いて作製したことを特徴とするばね。
  7. 【請求項7】 表面の硬度がHmV600以上であることを特
    徴とする請求項6に記載のばね。
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