JP3398552B2 - 疲労特性に優れたフラッパーバルブ用高強度オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents
疲労特性に優れたフラッパーバルブ用高強度オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法Info
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Description
強度および疲労特性が要求される圧縮機の弁(フラッパ
ーバルブ)用オーステナイト系ステンレス鋼板、および
その製造方法に関するものである。
する炭素鋼(焼入れ鋼)が一般的に使用されているが、
より高い耐熱性・耐食性が要求される環境ではステンレ
ス鋼を用いたフラッパーバルブも使用されている。この
ような用途に適用するステンレス鋼としては、これまで
高炭素マルテンサイト系ステンレス鋼が使用されてき
た。これは、焼入れ処理でほぼマルテンサイト単相とす
ることによって高い引張強さを得るとともに、焼戻し処
理でマルテンサイト中に大きさ1μm程度の炭化物を析出
させることによってフラッパーバルブが弁座に衝突する
際の耐磨耗性を確保しようとするものである。
50には、フラッパーバルブに適用できるステンレス鋼素
材として、Cを0.4%含有する高炭素マルテンサイト系
ステンレス鋼が紹介されている。その鋼は、炭素鋼より
も疲労特性に優れているという。
縮機の性能向上等に伴い、さらに高い疲労特性・耐食性
を有するフラッパーバルブ用素材が要求されるようにな
ってきた。しかし、上記のような高炭素マルテンサイト
系ステンレス鋼では、焼戻し過程で析出した炭化物は粗
大化し易く、そのサイズは通常2μm程度にまで達する。
このような比較的大きな炭化物は疲労破壊の起点となり
やすく、また、腐食発生の起点ともなりやすい。このた
め、高炭素マルテンサイト系ステンレス鋼において更な
る疲労特性・耐食性の向上を期待することは困難であ
る。
ト基地中での炭化物析出強化現象を利用せずに、別の強
化手段を採用することによって疲労特性・耐食性をさら
に改善し、フラッパーバルブ用途に一層適したステンレ
ス鋼板を提供することを目的とする。
いて、C:0.15%以下、Si:1.0〜4.0%、Mn:5.0
%以下、Ni:4.0〜10.0%、Cr:12.0〜18.0%、C
u:0〜3.5%(無添加を含む)、Mo:1.0〜5.0%、
N:0.15%以下を含み、C+N≧0.10%、Si+Mo≧
3.5%を満足し、かつ、 Md(N)=580−520×[%C]−2×[%Si]−16×[%Mn]−
16×[%Cr]−23×[%Ni]−300×[%N]−26×[%Cu]
−10×[%Mo] と定義されるMd(N)の値が20〜100の範囲にあり、残部
がFeおよび不可避的不純物元素からなる鋼板であっ
て、該鋼板中には析出物が存在し、その析出物の最大サ
イズが0.5μm以下であり、引張強さが1800N/mm2以上で
ある疲労特性に優れたフラッパーバルブ用高強度オース
テナイト系ステンレス鋼板によって達成される。
で30〜80体積%の加工誘起マルテンサイトを生成させた
素材に対して300〜650℃の温度範囲で0.5〜5分の短時間
時効処理を施すことによって、上記の疲労特性に優れた
フラッパーバルブ用高強度オーステナイト系ステンレス
鋼板を製造する方法を提供する。
耐え得るフラッパーバルブに特に適したステンレス鋼板
を得る手段を種々検討した結果、そのような鋼板はマル
テンサイト系ステンレス鋼ではなく、オーステナイト系
ステンレス鋼によって達成されることを見出した。ただ
し、単に鋼種をオーステナイト系に変更するだけでフラ
ッパーバルブ用途にそのまま適用できるわけではない。
それには工夫を要する。すなわち、溶体化処理後にオ
ーステナイト単相となり、冷間加工によって適量の加工
誘起マルテンサイトが生成し、かつ、フラッパーバルブ
として使用することによっても適量のマルテンサイトが
生成するようにオーステナイト安定度が調整された特定
組成のオーステナイト系ステンレス鋼を素材として用
い、「加工硬化」,「変態強化」および「時効硬化」
の現象を利用して強度上昇を図り、低温・短時間の時
効処理により粗大析出物の生成を防止して疲労特性およ
び耐食性の向上を図ることによってはじめて、本用途に
特に適したオーステナイト系ステンレス鋼板が得られる
のである。以下、本発明を特定する事項について説明す
る。なお、各元素の含有量を表す「%」は特に示さない
限り「質量%」を意味する。
温で生成するδフェライトの抑制,冷間加工で誘起され
たマルテンサイト相の強化に極めて有効であるが、本発
明で対象とする鋼はSi含有量が高いためCの固溶限が
低下している。このためC量を高くすると時効処理で粗
大なCr炭化物が析出し、耐粒界腐食や疲労特性低下の
原因となるので、Cは0.15%以下とした。なお、好まし
いC含有量範囲は0.05〜0.1%である。
目的を達成するには市販の加工硬化型ステンレス鋼(SU
S301,SUS304等)にみられるように、1.0%未満の添加
量で十分である。しかし本発明ではSi含有量をより高
め、それによって生じるSiの種々の作用を利用する。
すなわち、冷間加工の際、加工誘起マルテンサイトの
生成を促進させる作用,その加工誘起マルテンサイト
相を硬くするとともに、オーステナイト相にも固溶して
これを硬化させ、冷間加工後の強度を大きくする作用,
時効処理においてはCuとの相互作用により時効硬化
能を高める作用等を利用するのである。このようなSi
の作用は、通常の1.0%未満の含有量では十分に発揮さ
れない。ただしSi含有量が高くなりすぎると高温割れ
を誘発しやすくなる等、製造上の問題が顕在化するよう
になるのでその上限は4.0%とするのが適当である。そ
こで本発明ではSi含有量を1.0〜4.0%に規定した。な
お、好ましいSi含有量の範囲は1.0〜3.5%である。
するうえで有効な元素であり、その含有量は他の元素と
のバランスによって決定される。Mnの含有量が高いと
冷間加工の際にマルテンサイトが誘起されにくくなるの
で、本発明では5.0%以下にする必要がある。なお、好
ましいMn含有量の範囲は0.2〜4.5%である。
相を得るために必須の元素であるが、本発明に適用する
鋼ではさらに、溶体化処理後に室温で準安定オーステナ
イト単相組織となり、かつ冷間圧延により適量のマルテ
ンサイト相が生成するように成分調整されてなくてはな
らない。Ni含有量が4.0%未満では溶体化処理温度で
多量のδフェライト相が生成し、しかも冷却過程でマル
テンサイト変態が起きて、室温でオーステナイトが単相
として存在できなくなる。一方10.0%を越えると冷間加
工でマルテンサイト相が誘起されにくくなる。そこで、
Ni含有量を4.0〜10.0%に規定した。なお、好ましい
Ni含有量の範囲は5.0〜9.5%である。
与するうえで必須の元素であり、そのためには少なくと
も12.0%以上の含有を要する。しかし、Crはフェライ
ト形成元素でもあるので、含有量が多くなるほど高温で
δフェライト相が多量に生成するようになる。このため
δフェライト相の生成を抑制するためにオーステナイト
形成元素(C,N,Ni,Mn,Cu等)を添加しなけ
ればならないが、これらの元素の過度の添加は室温での
オーステナイト相の過度の安定化をもたらし、冷間圧延
によるマルテンサイト相の誘起を妨げる原因となる。こ
のため、本発明ではCrの含有量の上限を18.0%とし
た。なお、好ましいCr含有量の範囲は12.0〜16.5%で
ある。
との相互作用により鋼の硬化に寄与する元素であるか
ら、積極的に添加することが望ましい。ただし、Cuの
過剰添加は熱間加工性を劣化させ、割れ発生の原因とも
なるので、本発明では3.5%以下の含有量に制限した。
なお、好ましいCu含有量の範囲は1.0〜3.0%である。
とともに、時効処理で炭窒化物を微細に分布させる効果
をもたらす元素であるが、本発明においてはさらに次の
ような重要な役割を担う。すなわち、本発明では疲労特
性に悪影響を及ぼす「過度の」冷間加工歪を低減するた
めに時効温度を高くするが、Moは高温時効での急激な
歪の開放を抑制するうえで非常に有効であるとともに、
Mo自体が強度に寄与する析出物を形成する。つまり、
高温時効を行ったときに「適度の」冷間加工歪を残すこ
とが可能となり、しかもMo自体の析出強化作用も利用
できるので、高温時効での強度低下を防止しつつ疲労特
性の改善が図られるのである。このようなMoの効果は
1.0%以上の添加で有効に発揮される。ただし、Moを
多量に添加すると高温でδフェライトが生成するように
なるので、本発明では5.0%以下の含有量に抑える必要
がある。なお、Mo含有量が高くなると高温での変形抵
抗が高くなり熱間加工性が低下するようになるので、こ
の点を考慮すると好ましいMo含有量の範囲は1.0〜4.5
%である。
もに、オーステナイト相およびマルテンサイト相を硬化
させるうえで極めて有効な元素であるが、多量の含有は
鋳造時のブローホールの原因となるので0.15%以下とし
た。
その効果を十分に発揮させるためにはC+Nの合計量を
0.10%以上にする必要がある。
物を形成させるが、Siの添加によりその析出物が微細
に分散し、それにより析出物の大きさも微細になる。し
たがって、本発明では対象鋼のSi+Moの合計量を3.
5%以上とした。
ブの強度・疲労特性を向上させる手段の一つとして、冷
間加工時および製品(フラッパーバルブ)使用時におけ
るマルテンサイト誘起変態を利用する。このため、本発
明に適用される鋼は、溶体化処理後の冷間圧延によって
付与される歪、およびフラッパーバルブとして使用され
る際の変形によって付与される歪に対して最適にマルテ
ンサイト相が生成するよう、オーステナイト安定度が調
整されたものでなくてはならない。その指標として本発
明では次式で定義されるMd(N)値を採用する。 Md(N)=580−520×[%C]−2×[%Si]−16×[%Mn]−
16×[%Cr]−23×[%Ni]−300×[%N]−26×[%Cu]
−10×[%Mo] ここで、[%C],[%Si],・・・,[%Mo]は、それぞ
れ当該鋼のC含有量,Si含有量,・・・,Mo含有量
(いずれも質量%で表される値)を意味する。
非常に誘起され難いため、素材製造過程でフラッパーバ
ルブの強度に寄与できる量のマルテンサイト相を誘起さ
せるためには、工業的に非常に困難な低温での冷間圧延
を余儀なくされる。加えて、時効後の製品(フラッパー
バルブ)の使用時においても疲労特性の向上に有効に働
くマルテンサイトが十分に誘起されない。一方、Md(N)
値が100を越えた鋼ではフラッパーバルブ使用中の変形
に対してマルテンサイト相がはやく生成してしまい、フ
ラッパーバルブの疲労特性は逆に劣化する。したがっ
て、本発明ではMd(N)値が20〜100の範囲にある鋼を採
用する必要がある。
段として時効処理による析出強化も利用する。強化に寄
与する析出物は主として(Cr・Mo)23C6である。
本発明対象鋼はオーステナイト系ステンレス鋼だから、
従来の高炭素マルテンサイト系ステンレス鋼焼戻処理材
のような粗大炭化物は生成しない。ただし、本発明で利
用する時効析出物も、その大きさがあまり大きくなると
疲労破壊や腐食の起点になり得る。本発明者らの実験の
結果、析出物の最大サイズを0.5μm以下にしたとき、フ
ラッパーバルブは良好な疲労特性を示し、なおかつ耐食
性も十分に確保できることがわかった。そこで本発明で
は、析出物の最大サイズを0.5μm以下に規定した。
通常次のような工程で製造される。溶製→熱間圧延→
(冷間圧延)→溶体化処理→冷間圧延→時効処理。ここ
で、溶体化処理後の組織は準安定オーステナイト相であ
り、続く冷間圧延で導入された加工歪みによってオース
テナイト相の一部はマルテンサイト相に変態する。時効
処理後に高強度を得るには時効前の段階である程度のマ
ルテンサイト量が必要であり、しかも冷間圧延で付与さ
れた加工歪も強化に寄与する。このため、溶体化処理後
の冷間圧延率を高めることは時効後の強度を向上させる
ことに直接つながる。しかしそれは、同時に靭性を低下
させることにもつながる。本発明者らの検討の結果、お
およそ30〜70%の冷間圧延率によって30〜80体積%の加
工誘起マルテンサイト相を生成させるのが、フラッパー
バルブの強度・靭性のバランスを確保するうえで望まし
いことがわかった。時効処理前の冷間圧延で生成させる
マルテンサイトの量が30体積%未満では材料自体の強度
が低すぎるとともに、時効析出物生成のための核サイト
の数が不足して時効による強度上昇が不十分となる。一
方、疲労特性の面からは未変態オーステナイト相をある
程度残しておくことも必要であり、そのためには冷間圧
延で生成させる加工誘起マルテンサイトの量を80体積%
以下に抑える必要がある。
鋼帯を熱処理炉に連続的に通板することによって実施す
ることができる。時効温度が300℃未満では析出強化現
象が十分に現れないため必要な強度が得られないだけで
なく、過剰な加工歪を除去できないので靭性を確保する
ことも難しい。一方、650℃を越えて加熱すると加工誘
起マルテンサイト相の一部がオーステナイト相に逆変態
して強度低下をもたらす恐れがある。また、時効処理時
間(均熱時間)が0.5分未満では十分な時効硬化が期待
できない。一方、5分を越える長時間の時効処理では析
出物が0.5μmより大きくなる恐れがあり、その場合には
前述のように析出物が疲労破壊・腐食の起点となり得
る。したがって、本発明に係るフラッパーバルブ用鋼板
は、300〜650℃の温度範囲で0.5〜5分の短時間時効処理
を施して製造することが望ましい。
びMd(N)値を示す。表中のT1〜T9は化学組成が本発
明規定範囲内の鋼、a〜jはそれ以外の鋼(比較鋼)で
ある。このうちiおよびjは従来の高炭素マルテンサイ
ト系ステンレス鋼である。
造,熱延,中間焼鈍,冷延を経たのち、1050℃×1分間
保持の溶体化処理→水冷を行い、その後、種々の圧延率
で板厚0.30mmまで冷延して加工誘起マルテンサイトを生
成させた。さらにこの冷延材に570℃×1分の時効処理を
施した。ただし、高炭素マルテンサイト系ステンレス鋼
であるiおよびjについては0.30mmまで冷延したのち焼
入処理を施した。
存在するマルテンサイト量,時効材(i,jでは焼入
材)における析出物の最大サイズ,引張強さ,曲げ−疲
労特性,耐食性を調査した。
飽和磁化を求め、マルテンサイト量と飽和磁化量が比例
することを利用して、その比率より算出した。析出物の
最大サイズは電子顕微鏡で100個以上の析出物を観察
し、そのうち最もサイズの大きいもので評価した。な
お、個々の析出物のサイズは最大部分の長さをその析出
物のサイズとした。引張強さは、JIS Z 2201に規定され
ている13B号試験片を用い、JIS Z 2241に規定されてい
る引張試験方法によって求めた。曲げ−疲労特性は、平
行部の長さが100mm,幅が3mmの試験片を直径40,42.5,
45mmのプーリーに掛け、3水準の最大応力(最小応力50
N)を付与して500rpmでの曲げ−引張変形を1000×104サ
イクルまで繰り返す試験を実施し、破断に至ったときの
サイクル数を求めて評価した。この疲労試験はフラッパ
ーバルブの使用条件に非常に近い試験方法である。耐食
性は、JIS H 8502に規定されている方法に基づいて720
時間のキャス試験を行い、発銹の有無で評価した。表2
には、各供試材に施した冷間圧延率、および上記試験結
果を示す。
囲の化学組成を有する鋼では、いずれも30〜70%の冷間
圧延によって30〜80体積%のマルテンサイト相が誘起さ
れており、570℃×1分の時効によって析出物の最大サイ
ズは0.5μm以下に抑えられていた。その時効材は1800N/
mm2以上の引張強さおよび400×104回以上の曲げ−引張
疲労特性を示し、なおかつ発銹も見られなかったので、
これらはフラッパーバルブとしての使用に十分耐え得る
ものであった。これに対し比較鋼では、曲げ−引張疲労
試験の破断回数がいずれも400×104回未満であり、引張
強さもほとんどが1800N/mm2未満であった。
相の加工に対する安定度の指標であり、この値が小さけ
れば変形時に加工誘起マルテンサイトが形成され難い
し、逆に値が大きくなれば形成されやすいことを意味す
る。本発明範囲のT1〜T9鋼はいずれもMd(N)値が20
〜100の範囲にあり、疲労試験での変形中にオーステナ
イト→マルテンサイトの変態が起こり、その適度な変態
の起こりやすさが材料の疲労特性を支配していると言え
る。これに対し、Md(N)値が20未満の比較鋼a,bでは
疲労試験での変形中にマルテンサイト変態が起こらない
ために、またMd(N)値が100を越えた比較鋼c,dでは
逆にマルテンサイトの形成がはやいために、それぞれ十
分な疲労特性が得られなかったものと考えられる。
時効処理で軟化がはやく開始し、その結果引張強さが低
かったと考えられる。比較鋼g,hはSi含有量が低い
ために時効による強化の寄与が少なく、その結果引張強
さが低かったと考えられる。また、高炭素マルテンサイ
ト系ステンレス鋼であるi,jでは焼入処理で完全に固
溶できない炭化物あるいは焼戻し処理で析出する炭化物
の存在によって、疲労特性および耐食性が劣化したもの
と考えられる。
理を施したのち55%の冷間圧延を施したT9鋼につい
て、種々の条件で時効処理を行ったときの析出物最大サ
イズ,引張強さ,最大応力1450N/mm2での曲げ−引張疲
労特性を示す。
ものでは析出物の最大サイズが0.5μm以下になり、引張
強さ:1800N/m2以上,疲労破断回数:700×104回以上と
フラッパーバルブに適した特性を示した。これに対し時
効条件が本発明で規定する範囲を外れる場合には、析出
物が生成しないか、あるいはその最大サイズが0.5μmを
越えるため、疲労特性は著しく劣化した。
物最大サイズと曲げ−引張疲労特性の関係をプロットし
たものである。ここで示している疲労特性は前述のとお
り、フラッパーバルブの使用状態を想定した試験方法に
よるものである。したがって図1から、析出物最大サイ
ズを0.5μm以下にすることによって、フラッパーバルブ
の疲労特性を飛躍的に向上させることができることがわ
かる。
の時効処理材について、前述の曲げ−引張疲労試験での
最大負荷応力を種々の段階に設定した場合の疲労試験結
果を示したものである。T7鋼はほとんどが107回(=1
000×104回)まで破断せず、良好な疲労特性を示した。
これに対し、c鋼は疲労試験中の変形に対するオーステ
ナイト安定度が不安定すぎるために、またi鋼は350℃
×1時間の焼戻し処理で生成する粗大炭化物が疲労破壊
のクラックになるために、それぞれT7鋼に比較して疲
労特性は大きく劣っていた。なお、図2中には曲げ−引
張疲労試験方法を表す概念図およびその応力付与サイク
ルを表す概念図を併せて示している。
ト安定度を適度に調整したオーステナイト系ステンレス
鋼において、冷延時のマルテンサイト変態,加工硬化,
時効硬化,さらにはフラッパーバルブ使用時におけるマ
ルテンサイト変態の各々の作用を有効に引き出すことに
よって、高性能圧縮機等のフラッパーバルブに要求され
る優れた強度,疲労特性,耐食性をともに兼ね備えたフ
ラッパーバルブ用鋼板の提供を可能にした。このような
諸特性を同時に満足する材料は、通常のオーステナイト
系ステンレス鋼はもとより、フラッパーバルブ用途を特
に想定した従来の高炭素マルテンサイト系ステンレス鋼
によっても得られなかったものである。
−引張疲労試験における破断までの振幅回数の関係を表
すグラフ。
までの振幅回数の関係を表すグラフ,その曲げ−引張疲
労試験方法を表す概念図,およびその応力付与サイクル
を表す概念図。
Claims (2)
- 【請求項1】 質量%において、C :0.15%以下、S
i:1.0〜4.0%、Mn:5.0%以下、Ni:4.0〜10.0
%、Cr:12.0〜18.0%、Cu:0〜3.5%(無添加を含
む)、Mo:1.0〜5.0%、N :0.15%以下を含み、C
+N≧0.10%、Si+Mo≧3.5%を満足し、かつ、 Md(N)=580−520×[%C]−2×[%Si]−16×[%Mn]−
16×[%Cr]−23×[%Ni]−300×[%N]−26×[%Cu]
−10×[%Mo] と定義されるMd(N)の値が20〜100の範囲にあり、残部
がFeおよび不可避的不純物元素からなる鋼板であっ
て、該鋼板中には析出物が存在し、その析出物の最大サ
イズが0.5μm以下であり、引張強さが1800N/mm2以上で
ある疲労特性に優れたフラッパーバルブ用高強度オース
テナイト系ステンレス鋼板。 - 【請求項2】 溶体化処理後の冷間圧延で30〜80体積%
の加工誘起マルテンサイトを生成させた素材に対して30
0〜650℃の温度範囲で0.5〜5分の短時間時効処理を施す
請求項1に記載の疲労特性に優れたフラッパーバルブ用
高強度オーステナイト系ステンレス鋼板の製造方法。
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JP30751596A JP3398552B2 (ja) | 1996-11-05 | 1996-11-05 | 疲労特性に優れたフラッパーバルブ用高強度オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法 |
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