JP2004190116A - ばね用鋼線 - Google Patents
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Abstract
【課題】強度と靭性との双方をバランスよく具えることで、疲労特性を向上することができるばね用鋼線を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.55〜0.75%、Si:1.80〜2.70%、Mn:0.1〜0.7%、Cr:0.70〜1.50%と、V:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、W:0.05〜0.15%、Nb:0.05〜0.15%及びTi:0.01〜0.20%よりなる群から選択される1種以上とを含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる。焼入れ焼戻しによって得られる焼戻しマルテンサイト組織を有する。焼入れ焼戻し後のオーステナイト結晶粒径が1.0〜18.0μm、残留オーステナイト量が10体積%以下である。そして、焼入れ焼戻し後に施す420〜480℃で2hr以上の熱処理後において、線中心から直径の1/4の位置における硬度が550Hv以上、絞り値が35%以上である。
【選択図】 なし
【解決手段】質量%で、C:0.55〜0.75%、Si:1.80〜2.70%、Mn:0.1〜0.7%、Cr:0.70〜1.50%と、V:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、W:0.05〜0.15%、Nb:0.05〜0.15%及びTi:0.01〜0.20%よりなる群から選択される1種以上とを含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる。焼入れ焼戻しによって得られる焼戻しマルテンサイト組織を有する。焼入れ焼戻し後のオーステナイト結晶粒径が1.0〜18.0μm、残留オーステナイト量が10体積%以下である。そして、焼入れ焼戻し後に施す420〜480℃で2hr以上の熱処理後において、線中心から直径の1/4の位置における硬度が550Hv以上、絞り値が35%以上である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼入れ焼戻しを行って焼戻しマルテンサイト組織を有するばね用鋼線及びこの鋼線により製造されたばねに関するものである。特に、自動車のエンジン弁ばねやトランスミッション内部に用いられるばねなどに適した高強度高靭性のばね用鋼線及びばねに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の低燃費化に対応して、近年、自動車のエンジンやトランスミッションの小型軽量化が進められている。それに伴って、エンジンの弁ばねやトランスミッション用のばねに負荷される応力は年々厳しくなっており、用いられるばね材料にも一層の疲労強度の向上が求められている。これらエンジンの弁ばねやトランスミッションのばねには、従来、シリコンクロム系のオイルテンパー線が用いられており、例えば、特許文献1〜5、非特許文献1に記載されるものが知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平2-247354号公報(特許請求の範囲、第1図参照)
【特許文献2】
特開2000-313938号公報(特許請求の範囲、図1参照)
【特許文献3】
特開平10-251760号公報(特許請求の範囲、実施例、表1、表2参照)
【特許文献4】
特開2002-194496号公報(特許請求の範囲、表1参照)
【特許文献5】
特開2002-180195号公報(特許請求の範囲、表1参照)
【非特許文献1】
ばね技術研究会、1994年度秋季講演会講演論文集、「8 高疲労強度ばねの疲労強度に及ぼす表面欠陥の影響」、1994年11月、29-32ページ
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにばねに要求される特性は、近年厳しくなっており、ばね用鋼線及びばねに対して更なる改善が求められており、特に、強度と靭性とをよりバランスよく具えることが望まれている。
【0005】
ここで、近年、オイルテンパー線を用いてばねを製造する際、ばね加工後に歪み取り焼鈍を施した後、表面処理として窒化処理やショットピーニングを行うことが知られている(特許文献2参照)。窒化処理は、通常、線表面を硬化させ、表面硬度を高くすることができるが、線内部の硬度を低下させる。また、ばね加工後の歪み取り焼鈍に加えて、窒化処理を施すことで、線内部の硬度がより低下し易くなる。そして、線内部が低硬度であることで、線内部を起点とする折損が生じる可能性がある。
【0006】
特許文献1及び4では、窒化処理について記載されておらず、窒化処理による線内部の硬度の低下が考慮されていない。特許文献2では、線表面の硬度のみを規定している。また、特許文献2及び非特許文献1では、窒化処理の温度を高くしている。後述する試験結果からわかるように、窒化処理の温度が高いほど、絞りなどの靭性が低下する傾向にある。
【0007】
更に、硬度のみでは十分な疲労特性が得られにくいため、靭性についても管理する必要があるが、いずれの文献も、高硬度であると共に、靭性をよりよくするための構成について言及されていない。特に、いずれの文献も、靭性の指標の一つである絞り値を規定していない。
【0008】
そこで、本発明の主目的は、強度と靭性とをバランスよく具えるばね用鋼線、及びこの鋼線から製造されたばねを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、化学成分、オーステナイト結晶粒径、残留オーステナイト量に加えて、ばね加工後に施す熱処理後の内部硬度及び絞り値を規定することで上記目的を達成する。
【0010】
即ち、本発明ばね用鋼線は、以下を特徴とする。
<化学成分>
質量%で、C:0.55〜0.75%、Si:1.80〜2.70%、Mn:0.1〜0.7%、Cr:0.70〜1.50%と、V:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、W:0.05〜0.15%、Nb:0.05〜0.15%及びTi:0.01〜0.20%よりなる群から選択される1種以上とを含有し、残部がFe及び不可避不純物
<組織>
焼入れ焼戻しによって得られる焼戻しマルテンサイト組織
<オーステナイト結晶粒径>
焼入れ焼戻し後のオーステナイト結晶粒径が1.0〜18.0μm
本発明においてオーステナイト結晶粒径とは、旧オーステナイト結晶粒径とする。
<残留オーステナイト量>
焼入れ焼戻し後の残留オーステナイト量が10体積%以下
<線内部の硬度>
焼入れ焼戻し後に施す420〜480℃で2hr以上の熱処理後において、
線中心から直径の1/4の位置における硬度:550Hv以上
<靭性>
焼入れ焼戻し後に施す420〜480℃で2hr以上の熱処理後において、
絞り値:35%以上
本発明では、靭性の指標として絞り値を用いる。
【0011】
本発明者らが種々の検討試験を行った結果、上記成分範囲のSiによる固溶強化と、V、Mo、W、Nb、Tiの炭化物の析出強化とにより耐熱性を向上させることで、焼入れ焼戻し後に歪み取り焼鈍(テンパー処理)や窒化処理などの熱処理を施しても、線内部の硬度の低下が少なく、高い硬度が得られるとの知見を得た。また、Mnの含有量を比較的少なくすることで、焼入れ焼戻し後だけでなく、その後に施す熱処理後においても、靭性を向上することができるとの知見を得た。この知見に基づき、上記化学成分を規定する。
【0012】
また、従来のように線表面や線表面よりもわずかに内側の線内部の硬度を規定するだけでは、熱処理後の内部硬度の評価を正当に行いにくい。そこで、本発明では、線表面や線表面付近といった表層部の硬度ではなく、線内部の硬度として、線中心から直径の1/4の位置における硬度を規定する。線中心から直径の1/4の位置は、表面脱炭や窒化処理などによる表面付近の硬度の上昇や中心偏析などの影響を最も受けにくいため、熱処理後の内部硬度を正当に評価し易い。
【0013】
線内部の硬度の低下を防止するべく、本発明では、上記のように化学成分を規定しているが、内部硬度は、熱処理によっても低下することがある。具体的には、熱処理温度が高く、かつ保持時間が長いほど低下し易い。そのため、熱処理による内部硬度の低下を抑制防止し、かつ耐熱性の向上と共に窒化処理などの熱処理による表面硬度の向上という効果を得るには、従来行われている温度よりも比較的高い温度域:420℃以上480℃以下で2時間以上の加熱が必要である。そこで、本発明では、焼入れ焼戻し後に施す熱処理条件を420〜480℃で2hr以上と規定する。
【0014】
更に、靭性の向上には、旧オーステナイトの結晶粒径、残留オーステナイト量が影響するとの知見を得た。この知見に基づき、本発明では、これらのパラメータを規定するものである。
【0015】
上記知見に基づき構成された本発明ばね用鋼線は、靭性を向上すると共に、焼入れ焼戻し後に施す熱処理後の内部硬度の低下を低減して、線内部を起点とするばねの折損を抑制することができる。
【0016】
以下、本発明ばね用鋼線の規定事項の限定理由をより詳しく説明する。
<化学成分>
C:0.55〜0.75質量%
Cは鋼の強度を決定する重要な元素であり、0.55質量%未満では十分な強度が得られず、0.75質量%を超えると靭性を損なうため、0.55質量%以上0.75%以下とする。
【0017】
Si:1.80〜2.70質量%
Siは溶解精錬時の脱酸剤として使用される。また、フェライト中に固溶して耐熱性を向上させ、ばね加工後の歪み取り焼鈍や窒化処理などの熱処理による線内部の硬度の低下を防ぐことができる。耐熱性を保持するためには1.8質量%以上が必要であり、2.7質量%を超えると靭性が低下するため、1.8質量%以上2.7%以下とする。
【0018】
Mn:0.1〜0.7質量%
MnはSiと同様に溶解精錬時の脱酸剤として使用され、鋼の焼入れ性を向上させる。そのため、脱酸剤に必要な添加量として下限を0.1質量%とする。一方、Mnは中心偏析を生じ易くする元素であり、過剰に添加すると、熱間圧延後のパテンチング処理時において中心偏析部分にマルテンサイトを生じ、その後の伸線加工の際、断線の原因となると共に、焼入れ焼戻し後の靭性を低下させる。本発明では、特に、靭性の向上を目指すため、添加量を従来と比べて比較的少なくする。具体的には、靭性の低下を防止する添加量として上限を0.7質量%とする。
【0019】
Cr:0.7〜1.5質量%
Crは鋼の焼入れ性を向上させ、焼入れ焼戻し後の軟化抵抗を増加させるため、ばね加工後のテンパー処理や窒化処理などの熱処理時の軟化防止に有効である。添加量が0.7質量%未満であると、上記熱処理時の軟化防止効果が少ないため、十分な効果が得られる添加量として下限を0.7質量%とする。一方、1.5質量%を超えて添加すると、パテンチング時にマルテンサイトを発生し易く、伸線時に断線の原因となると共に、オイルテンパー後の靭性を低下させる。そのため、Crの添加量は、1.5質量%以下とする。
【0020】
上記化学成分のうち、特に、Si及びCrは、炭化物を形成することで耐熱性を向上させる効果がある。そこで、本発明では、Si及びCrの含有量を比較的高めに設定して、耐熱性の向上を図る。但し、どの程度含有させるかは、靭性との兼ね合いによる。十分な耐熱性を得るためには、Siの原子%+Crの原子%を0.09以上とすることが好ましい。
【0021】
また、上記化学成分において硬度と靭性とのバランスをよりよくするためには、C:0.60質量%以上0.70質量%以下、Si:2.20質量%以上2.50質量%以下、Mn:0.2質量%以上0.5質量%以下、Cr:0.9質量%以上1.3質量%以下とすることが好ましい。
【0022】
Co:0.02〜1.00質量%
CoはMs点(マルテンサイト変態開始温度)を上昇させる元素であり、焼入れ後の残留オーステナイト量を減少させて、焼入れ焼戻し後の靭性を向上させる。従って、本発明では、靭性をより向上させるために添加する。靭性向上の効果を得るためには、0.02質量%以上添加することが好ましい。一方、一定量以上添加しても上記効果の向上が得られず、またCoは比較的高価であるため、上限を1.00質量%以下とする。靭性向上とコストの両面から考慮してより好ましい添加量は、0.05質量%以上0.20質量%以下である。
【0023】
Mo、V:0.05〜0.50質量%
W、Nb:0.05〜0.15質量%
これらの元素は、焼戻し時に炭化物を形成し、軟化抵抗を増加させる傾向がある。0.05質量%未満では軟化抵抗の増加効果が得られにくく、硬度を向上させにくい。一方、Mo、Vは0.50質量%を超えると、W、Nbは0.15質量%を超えると、靭性を低下させ易い。そのため、Mo、Vは、0.05質量%以上0.50質量%以下とする。また、W、Nbは、0.05質量%以上0.15質量%以下とする。
【0024】
Ti:0.01〜0.20質量%
Tiは焼戻し時に炭化物を形成し、軟化抵抗を増加させる効果がある。この効果を得るには、0.01質量%以上添加することが好ましい。しかし、過剰に添加すると高融点非金属介在物TiOが形成されて、靭性を低下させる恐れがある。この介在物の生成による靭性の低下を考慮して、0.20質量%以下とする。
【0025】
<線内部の硬度>
焼入れ焼戻し後、窒化処理により十分な表面硬度を得るためには、上記のように420〜480℃で2hr以上の加熱が必要であるが、一方で、線内部の硬度が低下したり、線内部を起点とした折損が生じる恐れがある。また、後述する実験結果から明らかなように、窒化処理の加熱温度が高くなるほど、内部硬度及び靭性が低下する傾向にある。そこで、本発明では、化学成分を規定することにより、耐熱性と靭性とを高める。具体的には、線内部の硬度550Hv以上を実現する。
【0026】
<オーステナイト結晶粒径>
旧オーステナイトの結晶粒径は耐疲労性に影響を与える。粒径が18.0μm以下の場合、結晶粒の微細化効果により、疲労特性が向上し、18.0μm超ではこの効果が得られにくい。また、1.0μm以下の場合、焼入れ焼戻し後の熱処理の際に十分に炭化物を固溶させることができず、かえって靭性の低下を招く。そこで、本発明では、旧オーステナイトの結晶粒径を1.0μm超18.0μm以下とする。旧オーステナイトの結晶粒径は、保持時間を一定とする場合、焼入れ時の加熱温度を変化させることで制御することができる。具体的には、加熱温度を低めにすると粒径を小さく、高めにすると粒径を大きくすることができる。
【0027】
<残留オーステナイト量>
残留オーステナイトは、含有量が多いと、焼入れ焼戻し後の靭性を低下させると共に、その後のばね加工時に加工誘起マルテンサイトに変態してばね成形特性を低下させる。そのため、本発明では、10体積%以下とする。残留オーステナイト量は、上記のように化学成分を特定することで制御可能である。
【0028】
<靭性>
本発明では、疲労強度の向上とばね加工に必要な靭性を具えるために、焼入れ焼戻し後に行う熱処理後の絞り値を35%以上とする。絞り値は、上記のように化学成分、オーステナイト結晶粒径、残留オーステナイト量を特定することで制御可能である。
【0029】
本発明ばね用鋼線は、焼入れ焼戻しを行った後、ばね加工を施し、窒化処理、更に1回以上のショットピーニングを実施してばねを製造するの用いることが好適である。また、製造されたばねは、自動車のエンジン弁ばねやトランスミッション内部などに用いることが挙げられる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
表1に示す化学成分を有する鋼材を溶解した後、熱間圧延により直径6.3φmmの線材を作製した。この線材をパテンチングした後、皮剥ぎ、焼鈍、伸線加工を順次行い直径3.2φmmのワイヤを得た。このワイヤに焼入れ焼戻しを行った。
【0031】
【表1】
【0032】
焼入れ焼戻しを行ったサンプルA〜Oについて焼入れ焼戻し後の引張強度(TS)、旧オーステナイトの結晶粒径(γ粒径)、残留オーステナイト量(残留γ量)を表2に示す。また、各サンプルのワイヤを二つずつ用意し、焼入れ焼戻し後(OT後)、窒化処理を想定して420℃×2hrの熱処理、480℃×2hrの熱処理を各サンプルのそれぞれのワイヤに施した。これらワイヤの熱処理後の内部硬度及び絞り値を表2に示す。本例において内部硬度は、線中心より直径の1/4の位置(本例では、線表面から0.8mmの位置)において任意の4点の硬度をとり、その平均硬度とした。
【0033】
【表2】
【0034】
引張強度は、焼戻し温度を変化させることで制御した。γ粒径は、焼入れ温度を変化させることで制御した。具体的には、γ粒径が10μm未満の試料No.4〜6、14、15は、900℃、昇温速度500℃/s、保持時間2s、γ粒径が10〜15μm以下の試料No.2、3、7-13は、1000℃、昇温速度500℃/s、保持時間2s、γ粒径が20μm超の試料No.1は、1100℃、昇温速度500℃/s、保持時間2sとした。残留γ量及び線内部の硬度は、化学成分により変化させた。
【0035】
その結果、表2に示すように特定の化学成分、γ粒径、残留γ量を満たす試料No.8〜15は、焼入れ焼戻し後に熱処理を行っても、内部硬度が高く、優れた靭性を具えることがわかる。また、熱処理温度は比較的低い方が優れた内部硬度及び靭性を有することが分かる。
【0036】
一方、Cの含有量が低く、焼入れ温度が高い試料No.1は、熱処理後の内部硬度が低い。試料No.3、7は、それぞれCr、Siの含有量が低いことで耐熱性に乏しくなり、熱処理後の内部硬度が低く、絞り値も小さい。試料No.2は、Cの含有量が高いことで残留γ量が多くなり、靭性が低い。試料No.4〜6は、それぞれSi、Mn、Crの含有量が高いため、靭性に乏しくなり、絞り値が低くなっている。
【0037】
上記480℃×2hrの熱処理を行った各試料に対し、それぞれ中村式回転曲げ疲労試験機にかけて、疲れ強さを調べてみた。試験は、ひずみ速度を一定にして各試料に応力を加え、評価は、繰り返し回数:1×107回で折損がなかった振幅応力にて行った(n数=8)。結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
表3に示すように試料No.8〜15は、試料No.1〜7と比較して高い疲労限を有することがわかる。このことから、本発明は、硬度と靭性との両立により疲労強度の向上が図られていることが分かる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように本発明ばね用鋼線によれば、強度と靭性との双方をバランスよく具えることで、疲労特性を向上することができるという優れた効果を奏し得る。従って、本発明ばね用鋼線を用いれば、疲労特性に優れたばねを得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼入れ焼戻しを行って焼戻しマルテンサイト組織を有するばね用鋼線及びこの鋼線により製造されたばねに関するものである。特に、自動車のエンジン弁ばねやトランスミッション内部に用いられるばねなどに適した高強度高靭性のばね用鋼線及びばねに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の低燃費化に対応して、近年、自動車のエンジンやトランスミッションの小型軽量化が進められている。それに伴って、エンジンの弁ばねやトランスミッション用のばねに負荷される応力は年々厳しくなっており、用いられるばね材料にも一層の疲労強度の向上が求められている。これらエンジンの弁ばねやトランスミッションのばねには、従来、シリコンクロム系のオイルテンパー線が用いられており、例えば、特許文献1〜5、非特許文献1に記載されるものが知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平2-247354号公報(特許請求の範囲、第1図参照)
【特許文献2】
特開2000-313938号公報(特許請求の範囲、図1参照)
【特許文献3】
特開平10-251760号公報(特許請求の範囲、実施例、表1、表2参照)
【特許文献4】
特開2002-194496号公報(特許請求の範囲、表1参照)
【特許文献5】
特開2002-180195号公報(特許請求の範囲、表1参照)
【非特許文献1】
ばね技術研究会、1994年度秋季講演会講演論文集、「8 高疲労強度ばねの疲労強度に及ぼす表面欠陥の影響」、1994年11月、29-32ページ
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにばねに要求される特性は、近年厳しくなっており、ばね用鋼線及びばねに対して更なる改善が求められており、特に、強度と靭性とをよりバランスよく具えることが望まれている。
【0005】
ここで、近年、オイルテンパー線を用いてばねを製造する際、ばね加工後に歪み取り焼鈍を施した後、表面処理として窒化処理やショットピーニングを行うことが知られている(特許文献2参照)。窒化処理は、通常、線表面を硬化させ、表面硬度を高くすることができるが、線内部の硬度を低下させる。また、ばね加工後の歪み取り焼鈍に加えて、窒化処理を施すことで、線内部の硬度がより低下し易くなる。そして、線内部が低硬度であることで、線内部を起点とする折損が生じる可能性がある。
【0006】
特許文献1及び4では、窒化処理について記載されておらず、窒化処理による線内部の硬度の低下が考慮されていない。特許文献2では、線表面の硬度のみを規定している。また、特許文献2及び非特許文献1では、窒化処理の温度を高くしている。後述する試験結果からわかるように、窒化処理の温度が高いほど、絞りなどの靭性が低下する傾向にある。
【0007】
更に、硬度のみでは十分な疲労特性が得られにくいため、靭性についても管理する必要があるが、いずれの文献も、高硬度であると共に、靭性をよりよくするための構成について言及されていない。特に、いずれの文献も、靭性の指標の一つである絞り値を規定していない。
【0008】
そこで、本発明の主目的は、強度と靭性とをバランスよく具えるばね用鋼線、及びこの鋼線から製造されたばねを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、化学成分、オーステナイト結晶粒径、残留オーステナイト量に加えて、ばね加工後に施す熱処理後の内部硬度及び絞り値を規定することで上記目的を達成する。
【0010】
即ち、本発明ばね用鋼線は、以下を特徴とする。
<化学成分>
質量%で、C:0.55〜0.75%、Si:1.80〜2.70%、Mn:0.1〜0.7%、Cr:0.70〜1.50%と、V:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、W:0.05〜0.15%、Nb:0.05〜0.15%及びTi:0.01〜0.20%よりなる群から選択される1種以上とを含有し、残部がFe及び不可避不純物
<組織>
焼入れ焼戻しによって得られる焼戻しマルテンサイト組織
<オーステナイト結晶粒径>
焼入れ焼戻し後のオーステナイト結晶粒径が1.0〜18.0μm
本発明においてオーステナイト結晶粒径とは、旧オーステナイト結晶粒径とする。
<残留オーステナイト量>
焼入れ焼戻し後の残留オーステナイト量が10体積%以下
<線内部の硬度>
焼入れ焼戻し後に施す420〜480℃で2hr以上の熱処理後において、
線中心から直径の1/4の位置における硬度:550Hv以上
<靭性>
焼入れ焼戻し後に施す420〜480℃で2hr以上の熱処理後において、
絞り値:35%以上
本発明では、靭性の指標として絞り値を用いる。
【0011】
本発明者らが種々の検討試験を行った結果、上記成分範囲のSiによる固溶強化と、V、Mo、W、Nb、Tiの炭化物の析出強化とにより耐熱性を向上させることで、焼入れ焼戻し後に歪み取り焼鈍(テンパー処理)や窒化処理などの熱処理を施しても、線内部の硬度の低下が少なく、高い硬度が得られるとの知見を得た。また、Mnの含有量を比較的少なくすることで、焼入れ焼戻し後だけでなく、その後に施す熱処理後においても、靭性を向上することができるとの知見を得た。この知見に基づき、上記化学成分を規定する。
【0012】
また、従来のように線表面や線表面よりもわずかに内側の線内部の硬度を規定するだけでは、熱処理後の内部硬度の評価を正当に行いにくい。そこで、本発明では、線表面や線表面付近といった表層部の硬度ではなく、線内部の硬度として、線中心から直径の1/4の位置における硬度を規定する。線中心から直径の1/4の位置は、表面脱炭や窒化処理などによる表面付近の硬度の上昇や中心偏析などの影響を最も受けにくいため、熱処理後の内部硬度を正当に評価し易い。
【0013】
線内部の硬度の低下を防止するべく、本発明では、上記のように化学成分を規定しているが、内部硬度は、熱処理によっても低下することがある。具体的には、熱処理温度が高く、かつ保持時間が長いほど低下し易い。そのため、熱処理による内部硬度の低下を抑制防止し、かつ耐熱性の向上と共に窒化処理などの熱処理による表面硬度の向上という効果を得るには、従来行われている温度よりも比較的高い温度域:420℃以上480℃以下で2時間以上の加熱が必要である。そこで、本発明では、焼入れ焼戻し後に施す熱処理条件を420〜480℃で2hr以上と規定する。
【0014】
更に、靭性の向上には、旧オーステナイトの結晶粒径、残留オーステナイト量が影響するとの知見を得た。この知見に基づき、本発明では、これらのパラメータを規定するものである。
【0015】
上記知見に基づき構成された本発明ばね用鋼線は、靭性を向上すると共に、焼入れ焼戻し後に施す熱処理後の内部硬度の低下を低減して、線内部を起点とするばねの折損を抑制することができる。
【0016】
以下、本発明ばね用鋼線の規定事項の限定理由をより詳しく説明する。
<化学成分>
C:0.55〜0.75質量%
Cは鋼の強度を決定する重要な元素であり、0.55質量%未満では十分な強度が得られず、0.75質量%を超えると靭性を損なうため、0.55質量%以上0.75%以下とする。
【0017】
Si:1.80〜2.70質量%
Siは溶解精錬時の脱酸剤として使用される。また、フェライト中に固溶して耐熱性を向上させ、ばね加工後の歪み取り焼鈍や窒化処理などの熱処理による線内部の硬度の低下を防ぐことができる。耐熱性を保持するためには1.8質量%以上が必要であり、2.7質量%を超えると靭性が低下するため、1.8質量%以上2.7%以下とする。
【0018】
Mn:0.1〜0.7質量%
MnはSiと同様に溶解精錬時の脱酸剤として使用され、鋼の焼入れ性を向上させる。そのため、脱酸剤に必要な添加量として下限を0.1質量%とする。一方、Mnは中心偏析を生じ易くする元素であり、過剰に添加すると、熱間圧延後のパテンチング処理時において中心偏析部分にマルテンサイトを生じ、その後の伸線加工の際、断線の原因となると共に、焼入れ焼戻し後の靭性を低下させる。本発明では、特に、靭性の向上を目指すため、添加量を従来と比べて比較的少なくする。具体的には、靭性の低下を防止する添加量として上限を0.7質量%とする。
【0019】
Cr:0.7〜1.5質量%
Crは鋼の焼入れ性を向上させ、焼入れ焼戻し後の軟化抵抗を増加させるため、ばね加工後のテンパー処理や窒化処理などの熱処理時の軟化防止に有効である。添加量が0.7質量%未満であると、上記熱処理時の軟化防止効果が少ないため、十分な効果が得られる添加量として下限を0.7質量%とする。一方、1.5質量%を超えて添加すると、パテンチング時にマルテンサイトを発生し易く、伸線時に断線の原因となると共に、オイルテンパー後の靭性を低下させる。そのため、Crの添加量は、1.5質量%以下とする。
【0020】
上記化学成分のうち、特に、Si及びCrは、炭化物を形成することで耐熱性を向上させる効果がある。そこで、本発明では、Si及びCrの含有量を比較的高めに設定して、耐熱性の向上を図る。但し、どの程度含有させるかは、靭性との兼ね合いによる。十分な耐熱性を得るためには、Siの原子%+Crの原子%を0.09以上とすることが好ましい。
【0021】
また、上記化学成分において硬度と靭性とのバランスをよりよくするためには、C:0.60質量%以上0.70質量%以下、Si:2.20質量%以上2.50質量%以下、Mn:0.2質量%以上0.5質量%以下、Cr:0.9質量%以上1.3質量%以下とすることが好ましい。
【0022】
Co:0.02〜1.00質量%
CoはMs点(マルテンサイト変態開始温度)を上昇させる元素であり、焼入れ後の残留オーステナイト量を減少させて、焼入れ焼戻し後の靭性を向上させる。従って、本発明では、靭性をより向上させるために添加する。靭性向上の効果を得るためには、0.02質量%以上添加することが好ましい。一方、一定量以上添加しても上記効果の向上が得られず、またCoは比較的高価であるため、上限を1.00質量%以下とする。靭性向上とコストの両面から考慮してより好ましい添加量は、0.05質量%以上0.20質量%以下である。
【0023】
Mo、V:0.05〜0.50質量%
W、Nb:0.05〜0.15質量%
これらの元素は、焼戻し時に炭化物を形成し、軟化抵抗を増加させる傾向がある。0.05質量%未満では軟化抵抗の増加効果が得られにくく、硬度を向上させにくい。一方、Mo、Vは0.50質量%を超えると、W、Nbは0.15質量%を超えると、靭性を低下させ易い。そのため、Mo、Vは、0.05質量%以上0.50質量%以下とする。また、W、Nbは、0.05質量%以上0.15質量%以下とする。
【0024】
Ti:0.01〜0.20質量%
Tiは焼戻し時に炭化物を形成し、軟化抵抗を増加させる効果がある。この効果を得るには、0.01質量%以上添加することが好ましい。しかし、過剰に添加すると高融点非金属介在物TiOが形成されて、靭性を低下させる恐れがある。この介在物の生成による靭性の低下を考慮して、0.20質量%以下とする。
【0025】
<線内部の硬度>
焼入れ焼戻し後、窒化処理により十分な表面硬度を得るためには、上記のように420〜480℃で2hr以上の加熱が必要であるが、一方で、線内部の硬度が低下したり、線内部を起点とした折損が生じる恐れがある。また、後述する実験結果から明らかなように、窒化処理の加熱温度が高くなるほど、内部硬度及び靭性が低下する傾向にある。そこで、本発明では、化学成分を規定することにより、耐熱性と靭性とを高める。具体的には、線内部の硬度550Hv以上を実現する。
【0026】
<オーステナイト結晶粒径>
旧オーステナイトの結晶粒径は耐疲労性に影響を与える。粒径が18.0μm以下の場合、結晶粒の微細化効果により、疲労特性が向上し、18.0μm超ではこの効果が得られにくい。また、1.0μm以下の場合、焼入れ焼戻し後の熱処理の際に十分に炭化物を固溶させることができず、かえって靭性の低下を招く。そこで、本発明では、旧オーステナイトの結晶粒径を1.0μm超18.0μm以下とする。旧オーステナイトの結晶粒径は、保持時間を一定とする場合、焼入れ時の加熱温度を変化させることで制御することができる。具体的には、加熱温度を低めにすると粒径を小さく、高めにすると粒径を大きくすることができる。
【0027】
<残留オーステナイト量>
残留オーステナイトは、含有量が多いと、焼入れ焼戻し後の靭性を低下させると共に、その後のばね加工時に加工誘起マルテンサイトに変態してばね成形特性を低下させる。そのため、本発明では、10体積%以下とする。残留オーステナイト量は、上記のように化学成分を特定することで制御可能である。
【0028】
<靭性>
本発明では、疲労強度の向上とばね加工に必要な靭性を具えるために、焼入れ焼戻し後に行う熱処理後の絞り値を35%以上とする。絞り値は、上記のように化学成分、オーステナイト結晶粒径、残留オーステナイト量を特定することで制御可能である。
【0029】
本発明ばね用鋼線は、焼入れ焼戻しを行った後、ばね加工を施し、窒化処理、更に1回以上のショットピーニングを実施してばねを製造するの用いることが好適である。また、製造されたばねは、自動車のエンジン弁ばねやトランスミッション内部などに用いることが挙げられる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
表1に示す化学成分を有する鋼材を溶解した後、熱間圧延により直径6.3φmmの線材を作製した。この線材をパテンチングした後、皮剥ぎ、焼鈍、伸線加工を順次行い直径3.2φmmのワイヤを得た。このワイヤに焼入れ焼戻しを行った。
【0031】
【表1】
【0032】
焼入れ焼戻しを行ったサンプルA〜Oについて焼入れ焼戻し後の引張強度(TS)、旧オーステナイトの結晶粒径(γ粒径)、残留オーステナイト量(残留γ量)を表2に示す。また、各サンプルのワイヤを二つずつ用意し、焼入れ焼戻し後(OT後)、窒化処理を想定して420℃×2hrの熱処理、480℃×2hrの熱処理を各サンプルのそれぞれのワイヤに施した。これらワイヤの熱処理後の内部硬度及び絞り値を表2に示す。本例において内部硬度は、線中心より直径の1/4の位置(本例では、線表面から0.8mmの位置)において任意の4点の硬度をとり、その平均硬度とした。
【0033】
【表2】
【0034】
引張強度は、焼戻し温度を変化させることで制御した。γ粒径は、焼入れ温度を変化させることで制御した。具体的には、γ粒径が10μm未満の試料No.4〜6、14、15は、900℃、昇温速度500℃/s、保持時間2s、γ粒径が10〜15μm以下の試料No.2、3、7-13は、1000℃、昇温速度500℃/s、保持時間2s、γ粒径が20μm超の試料No.1は、1100℃、昇温速度500℃/s、保持時間2sとした。残留γ量及び線内部の硬度は、化学成分により変化させた。
【0035】
その結果、表2に示すように特定の化学成分、γ粒径、残留γ量を満たす試料No.8〜15は、焼入れ焼戻し後に熱処理を行っても、内部硬度が高く、優れた靭性を具えることがわかる。また、熱処理温度は比較的低い方が優れた内部硬度及び靭性を有することが分かる。
【0036】
一方、Cの含有量が低く、焼入れ温度が高い試料No.1は、熱処理後の内部硬度が低い。試料No.3、7は、それぞれCr、Siの含有量が低いことで耐熱性に乏しくなり、熱処理後の内部硬度が低く、絞り値も小さい。試料No.2は、Cの含有量が高いことで残留γ量が多くなり、靭性が低い。試料No.4〜6は、それぞれSi、Mn、Crの含有量が高いため、靭性に乏しくなり、絞り値が低くなっている。
【0037】
上記480℃×2hrの熱処理を行った各試料に対し、それぞれ中村式回転曲げ疲労試験機にかけて、疲れ強さを調べてみた。試験は、ひずみ速度を一定にして各試料に応力を加え、評価は、繰り返し回数:1×107回で折損がなかった振幅応力にて行った(n数=8)。結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
表3に示すように試料No.8〜15は、試料No.1〜7と比較して高い疲労限を有することがわかる。このことから、本発明は、硬度と靭性との両立により疲労強度の向上が図られていることが分かる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように本発明ばね用鋼線によれば、強度と靭性との双方をバランスよく具えることで、疲労特性を向上することができるという優れた効果を奏し得る。従って、本発明ばね用鋼線を用いれば、疲労特性に優れたばねを得ることができる。
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.55〜0.75%、Si:1.80〜2.70%、Mn:0.1〜0.7%、Cr:0.70〜1.50%と、
V:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、W:0.05〜0.15%、Nb:0.05〜0.15%及びTi:0.01〜0.20%よりなる群から選択される1種以上とを含有し、
残部がFe及び不可避不純物からなり、
焼入れ焼戻しによって得られる焼戻しマルテンサイト組織を有し、
焼入れ焼戻し後において、
オーステナイト結晶粒径が1.0〜18.0μmであり、
残留オーステナイト量が10体積%以下であり、
焼入れ焼戻し後に施す420〜480℃で2hr以上の熱処理後において、
線中心から直径の1/4の位置における硬度が550Hv以上であり、
絞り値が35%以上であることを特徴とするばね用鋼線。 - 質量%で、
C:0.55〜0.75%、Si:1.80〜2.70%、Mn:0.1〜0.7%、Cr:0.70〜1.50%、Co:0.02〜1.00%と、
V:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、W:0.05〜0.15%、Nb:0.05〜0.15%及びTi:0.01〜0.20%よりなる群から選択される1種以上とを含有し、
残部がFe及び不可避不純物からなり、
焼入れ焼戻しによって得られる焼戻しマルテンサイト組織を有し、
焼入れ焼戻し後において、
オーステナイト結晶粒径が1.0〜18.0μmであり、
残留オーステナイト量が10体積%以下であり、
焼入れ焼戻し後に施す420〜480℃で2hr以上の熱処理後において、
線中心から直径の1/4の位置における硬度が550Hv以上であることを特徴とするばね用鋼線。 - 更に、焼入れ焼戻し後に施す420〜480℃で2hr以上の熱処理後において、絞り値が35%以上であることを特徴とする請求項2記載のばね用鋼線。
- 質量%でC:0.60〜0.70%、Si:2.20〜2.50%、Mn:0.2〜0.5%、Cr:0.9〜1.3%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のばね用鋼線。
- 質量%でCo:0.05〜0.20%を含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のばね用鋼線。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のばね用鋼線を用いて製造されたことを特徴とするばね。
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