ソロツーリングへ出掛ければ、バイクの調子が良い悪いは、即判断することができる。しかし、スピード感は感覚的なものになってしまいがち。果たしてそのスピード感が、本当に速いのか否か?は、比較対照できる同行者がいないので、知るすべもない。一方、バイク仲間とツーリングへ出掛けると、信号発進時や長い直線走行などで、自分のバイクのコンディションや速さやライディングテクニックが、どのレベルにあるのか?知ることができる。発信加速時にギヤのつながりが良く、同じ排気量なのに圧倒的な加速力の友人。何故、これほどまでに違うのか!?仲間からお話を聞くと「クロスミッションを組み込んだ!!」とのお話。えっ!?クロスミッションって、いったい何なの………?
パワーアップの近道は「ボアアップ」
エンジン排気量は、市販のボアアップキットを組み込み、52×41.4mmのボア(ピストン径)×ストロークで排気量は88cc。通称「ハチハチ」にしてある。今回は鍛造削り出しΦ52mmピストンとアルミメッキシリンダーの組み合わせで、シフトアップ製を利用。レースユースからストリートまで、信頼できるパーツだ。様々なメーカーからボルトオンのボアアップキットが発売されている。
圧倒的トルクアップを得られるクランク交換
6Vバッテリー時代の通称「Sクランク仕様」のままでエンジンチューニングしたかったので(バイクは6V時代のダックススポーツ)、手持ちのスペシャルパーツタケガワ製の旧型クランクシャフトを組み込んだ(絶版部品)。Sクランクを採用したダックス、モンキー、ゴリラ用として発売されたものでストロークは50mm。各社から様々なクランクシャフトが発売されていて、12Vエンジンの通称Rクランクなら、様々なストロークのクランクを選び、排気量を設定することができる。いずれにしても中古クランクシャフトを利用するので、内燃機のプロショップでベアリング交換をお願いした。
モデルや年式で部品が異なる。間違えない!!
完全分解後に徹底洗浄を済ませたクランクケース。ミッションの軸受けベアリングも新品部品に交換した。ベアリングの入れ替え時には専用特殊工具を使ってクランクケースや新品ベアリングにダメージを与えないようにしよう。同じ横型エンジンでも、カブ系とモンキー/ダックス系ではミッションベアリングが異なり、ミッション部品もそれぞれ専用パーツとなっているため、同じようなエンジンでも、簡単には互換性を得られない。油アカを落としたクランクケースは美しい!!
クロスレシオの5速仕様をチョイス
この作業を行った時にはスペシャルパーツタケガワ製ストリート5速クロスミッションを新規導入した。ノーマルと比べてギヤレシオがロング仕様。数値的にはローギヤの比率がタイカブ100などと同じで、その他は往年の名車、ベンリースーパースポーツSS50シリーズと同じレシオだった。その作りは大変美しく、ノーマルのホンダ純正クラッチはもちろん、ハイパフォーマンス対応のアフターパーツ系二次クラッチキットも取り付け可能な設計となっていた。購入時にはモデルやエンジン番号を参考に適合パーツを購入しなくてはいけない。例えば、モンキーにスーパーカブ用エンジンが搭載されていて、モンキー用クロスミッションキットを購入しても、組み込み不可となってしまうからだ。要注意!!
- ポイント1・エンジンパワーを無駄なく効率良く駆動力に変換できるのがクロスミッション
- ポイント2・サーキット走行ではラップタイムに直結するのがクロスミッション
- ポイント3・ エンジンを完全分解=クランクケースを分解しないと部品交換できないので、その他の部分も含めてプランを練ろう
バイク仲間とツーリングへ出掛け、6V仕様の50ccノーマルヘッド+88ccエンジンでも、やっぱりチカラ不足、パワー不足なことを実感した。ツーリングから数日後、通勤渋滞の中で悶々と考えた結果、さらなる「パワーアップしかない!!」との結論に達した。
早速、スペアエンジン探しを開始。当然ながら中古エンジンだが、それでもガタガタになるまで走り込まれた過走行エンジンではなく、できる限りコンディションが良いエンジンを探したい。それが本音である。現状エンジンに手を入れると、すぐに走ることができないが、スペアエンジンをベースにチューンドコンプリートエンジンを作れば、完成後に乗せ換えれば済む。そして今回は、ノーマルの3速や4速ミッションではなく、クロス5速ミッションを組みたいと考えた。
正式には、クローズドレシオの5速ミッションだが、それを通称「クロス5速」と呼んでいる。「ギヤレシオが狭い=クローズド」の語源になるが、チューニングパーツが豊富なホンダ横型エンジンでは、5速よりも1段多い6速クロスギヤが発売されるほど、チューニングパーツが豊富なのだ。
エンジンパワーが同じだとしても、3速よりは4速。4速よりは5速。5速よりは……、というのは確かにその通りで、その走りは間違いなく変わる。スポーツ走行やサーキット走行を経験すれば理解できるが、同じエンジンパワーでも、そのパワーを駆動力に換えるトランスミッションが細かく分割=クローズドレシオならば、気持ち良く、小気味良く走れるようになる。ノーマルミッションを例にすると、低いローギヤ(1速)は、すぐに吹け切ってしまい、即、2速にギヤチェンジすることが多い。ノーマルエンジンはパワーが少ないのと、ユーザーの最大公約数をカバーできるようなギヤ比設定にしてある。スポーツ走行の場合は、使い方を絞り込むことができるので、エンジンパフォーマンスを如何なく発揮できるようになるのだ。
とは言え、あまりに細か過ぎるギヤレシオになると、忙しなくギヤチェンジしなくてはいけない必要性もある。しかし、ホンダ横型チューニングパーツのミッションキットの中には、ハイストリート用、スポーツツーリング用、レーシング用などなど、ライダーの走り方に合わせたギヤレシオ設定があるため、ライダー個々の好みに合わせたギヤ設定が可能なので、奥が深いのだ。エンジンチューニングをプランニングするときには、ライダーここの走り方に合わせた「ミッションキット」をチョイスすることで、さらに楽しめるエンジンに仕上がるのは間違いない。
この記事にいいねする
正式には「クロースレシオ(close-ratio)」ではありませんか?
ギアレシオが"狭い"のは「クロース」であり、「クローズド(closed)」は"閉じている"なので意味が違うと思いますが。
以前50ミリクランク組んだモンキーRに乗っていましたがストリートクロスだと1速のギアがキックの負荷に耐えられなくてすぐに壊れました。
歯数の多いレーシングクロスに1速は変えたほうが良いと思います。
あまり手を入れるとクランクケースが消耗品になるので72ccキャブ交換あたりがオススメです。