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コラム

ついつい食べ過ぎてしまう人の特徴って?医師がメカニズムと対処法を解説

山田周平

エンタメ記事や育児コラムなどを書いています。

お腹いっぱい食べた後なのに、最後に甘い物を食べたくなってしまう。いわゆる“デザートは別腹”現象。甘い物を食べすぎると太ってしまうからやめたいけどやめられないと悩んでいる人も多いはずです。そもそも満腹なのに、なぜついつい食べてしまうのか。YouTubeチャンネルの登録者数が37万人を誇る、医師でヘルスコーチの石黒成治先生に教えてもらいました。

満腹でも食べてしまうのは脳のせい?

お腹がいっぱいになったらピタッと止められる人止められない人の違いはどこなのかということについて、1つの研究結果が報告されています。

ノースウェスタン大学の医学部の研究で、食事を取るという行動をコントロールしているのがどこなのかを見た際、2つの脳の領域の間に新しく見つかった構造的なつながりがあり、それが摂食行動に影響を与えていることが発見されました。

その2つの領域の1つは嗅結節。嗅覚系の情報処理を行う脳の裏側にある領域です。もう1つは中脳後頭葉周囲灰白質(PAG)で、脳幹の真ん中にあります。

嗅結節は嗅覚に関する脳の報酬系で、「これを摂ればいいことが起こるよ」といったことを刺激する場所です。

PAGは逆に、脅威や痛みなどのネガティブな感情への反応を元にして行動を起こす部分に影響を与えます。潜在的には食べることを抑制してくれたりするので、そこが微妙につながり合ってバランスを取っています。

空腹のときに食べ物の匂いを嗅ぐと食欲が増して食べたい欲求が出てきます。満腹になってくると同じ匂いを嗅いでもそれほど魅力的に感じなくなってきます。

匂いは食べるという行動の動機づけを起こすのに重要なのです。

匂いに対する感度は空腹の程度によって左右されますが、嗅結節とPGAのつながりが弱い人はどうしても食べすぎてしまう傾向にあります。

このつながりが弱い人は、BMI測定でも体重が重いということも発見されています。

“脳のつながり”を意識しておくことが重要

この2つの間の脳の回路が壊れていて信号が混乱していると、満腹であっても食べ物の匂いが報酬のように感じて食べたくなる

報酬という食べることの利益と行動を抑制する部分の健全なネットワークがちゃんとつながっていることがすごく重要なのです。

満腹になれば、通常は食べることはあまり気持ちいいことではないと脳が働きかけます。そのメッセージを受け取ることで食べるという行動を止められますが、脳のつながりが弱いと止められないので食べすぎてしまいます。

例えば、「アイスクリームは別腹」と言って、満腹だけどアイスクリームは食べたい人。そういった人が満腹の刺激に対して摂食の行動を止められなくなっている可能性もあります。

人によっては、デザートの見た目や香りが、満腹の刺激の信号よりもより強い刺激に感じてしまい、満腹であっても食べてしまう。通常は満腹だったら止めるところが抑えが効かなくなることも起こり得るのです。

だから、最初から脳のつながりを意識しておくと過食が起こりにくくなるので、脳の機能をいかに正常に保っていくかがすごく重要でしょう。

脳の出すシグナルにきちんと反応すること

ただ、脳は学習するので、たくさん食べているのにさらにたくさん食べてしまうと、満腹の刺激をあまり意味のないものと感じ、うまく反応しなくなってしまいます。

そして、次第に脳のつながりが壊れていくことで行動をコントロールできなくなってくる。

脳のつながりをいかに再構築するか、より強いつながりを作るようにしていくかは、脳を鍛えるしかないです。

食べ物が必要というシグナルが出ているときはちゃんと食べて脳を安心させる。逆に、食べたい欲求が強く出ていないときはあえて食べない。

たとえ昼ごはんの時間が来ても、空腹のサインが出ていないから食べないという風にして、血糖値が下がってきて、食べろという刺激が出て、そこで食べれば安心してくれる。

脳の出すシグナルに対して、体がちゃんと反応することがわかれば、脳はずっと適切な刺激を出し続けてくれます

空腹なのにずっと食べるのを我慢すると、脳はもっと刺激を出しますが、それに対して適切な血糖値の上昇がないとさらに無駄な刺激を出してしまう。

それをくり返すと刺激が意味のないものになり、結果的に刺激に対する反応が壊れて、適切な満腹と空腹のサインが出せなくなるので、お腹がすいたと思ったらちゃんと食べることも大事です。

空腹時にたくさん食べる必要はない

なんとなく時間が来たから食べるのではなく、空腹感があるときに何かを食べたほうがいいですが、そのときにたくさん食べる必要はないです。

血糖値を少し上げて脳を安心させればいいので、そういったフィードバックを脳に与えて体を安心させてあげることで、脳のつながりも安定すると思います。

一旦壊れてしまった後は作り直すのが難しいですが、お腹いっぱいになるまで食べるのではなく血糖値を少し上げるだけで十分そしてそこで止めてあげるということをくり返せば、摂食の回路を鍛え直して正常に戻していくことができます。

食べすぎるのは意思が弱いのではなく、脳が壊れている場合もあるので、普段から適切な脳の回路に対する反応を意識してコントロールしてください。

(TEXT:山田周平)

▼動画でもっと詳しく知る

画像提供:Adobe Stock

石黒成治先生

消化器外科医、ヘルスコーチ。
1973年、名古屋市生まれ。1997年、名古屋大学医学部卒。国立がん研究センター中央病院で大腸癌外科治療のトレーニングを受ける。その後、名古屋大学医学部附属病院、愛知県がんセンター中央病院、愛知医科大学病院に勤務する。2018年から予防医療を行うヘルスコーチとしての活動を開始。腸内環境の改善法、薬に頼らない健康法の普及を目的に、メールマガジン、YouTube、Instagram、Facebookなどで知識、情報を分かりやすく発信している。Dr Ishiguro YouTubeチャンネル登録者数は37万人超(2024年1月時点)。

執筆者情報

山田周平

ライター。さまざまなWEBサイトでエンタメ記事や育児コラムなどを書いています。著書に『ひとのパパ見て わがパパ直せ』。
Instagramアカウント:@damepapa31

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