闇労働、偽造旅券、低賃金の仕事、警察への恐れ。これが違法滞在者の日常だ。スイスでも違法滞在し、社会の隅に生きる中国人の数が増加している。1人の若い中国人移民に話を聞いた。 胡先(フーシャン、仮名)さんはポルトガル国籍保有者だ。1981年、当時まだポルトガルの支配下にあったマカオに生まれた。胡さんのワインレッドの欧州連合(EU)旅券は、2007年に発効された。 と、ここまでは公式なバージョンだが、現実は全く異なっている。元々は、中国南東に位置する福建省出身。年も30歳未満で、ポルトガル語は一言もしゃべれない。マカオにはたった一度行ったことがあるだけだ。「旅券に記載されているデータはすべて登録されているが、別人のものだ」とこの若い男性は言う。 ジーンズとシャツ、白いテニスシューズといういでたちの胡先さんは、仕事を終えたところだった。きれいな格好をし、髪にジェルを少し付けて待ち合わせ場所にやって