広島への原爆投下後に降った「黒い雨」を浴びたと訴えた住民ら84人全員を被爆者と認め、被爆者健康手帳の交付を命じた広島地裁判決について、国と広島県、広島市は12日、控訴した。国は援護対象となる区域の拡大を視野に、再度の検証を始めると表明した。 控訴期限の同日、加藤勝信厚生労働相は、報道陣に「(判決は)過去の最高裁判断と異なり、十分な科学的知見に基づいていない」と控訴した理由を説明。同省担当者は「地裁判決は、黒い雨を浴びたと本人がいい、特定の疾病の二つの要素があれば被爆者と認定されかねない」と指摘。厚労省は判決が確定すれば救済対象が大きく膨らみかねないと懸念した。 黒い雨の援護行政を巡っては、降雨地域のうち「大雨地域」に限り援護対象とする。だが被爆者援護法上の被爆者とは認めず、特定疾病を発症すれば、被爆者と認めて手帳を交付。医療費の自己負担分をなくすなどしてきた。 他方、被告の広島市と広島県は