さいきん「結局なんだったんだろう」と思えるようになったことがある。コロナ(禍)のことだ。もちろんその影響はまだ進行形であり、終わったものとして完了形で語られる存在ではない。それは頭でわかっている。しかしようやく、私たちにとってあの年月はなんだったのかを、個人的に振り返ることができる程度には、閉塞と生活が切り離されて、しばらくの時間が経過したのではないか。 ■スマホひとつでマスクを求める「社会」と向き合うことに… 私はあの時、押し寄せる課題の対処に奔走した当事者でもないし、ましてや医療に携わる人間でもなかった。だから「結局なんだったんだろう」という疑問をいま実感できること自体が、あの時の科学や倫理によってもたらされた、人類の奮闘の賜物だとやっとわかる。同時に私たちはあの時、幸運とか奇跡としか言いようがないギリギリの分岐をたどったのであろうことも、なんとなく想像がつく。 あの時われわれは、あれ