分子古生物学最大のレースで大逆転した男 「ジュラシック・パーク」はありえない 『ネアンデルタール人は私たちと交配した』スヴァンテ・ペーボ(文藝春秋) 1990年に出版され、ハリウッド映画にもなった『ジュラシック・パーク』には、実にわくわくしたものだ。 植物の樹液が固まった琥珀の中に閉じこめられた古代の蚊。この蚊が、たまたま恐竜の血を吸っていたことから、科学者は蚊から恐竜のDNAを抽出し、生きた恐竜を現代によみがえらせることに成功する。 ばかげた夢物語と一笑に付されるどころか、現実味のある科学小説として大成功をおさめたのは、当時、ヒトゲノム解読作業が加速しており、92年には実際に、琥珀の中のシロアリから古代のDNAが抽出されたという論文が発表されたからだ。 その後も、『ジュラシック・パーク』の世界的ヒットと呼応するかのように、琥珀の中の昆虫からDNAを抽出したという報告が相次いだ。なかには、