所得税制度の基本を知ろう!「申告所得税」と「源泉所得税」の違いは?
同じ所得税という言葉がつく「申告所得税」と「源泉所得税」ですが、その性質は全く異なるものだと言えます。
このページではこれら2つの所得税の違いと、所得税の基本を解説します。これらの違いを押さえておけば、実務における所得税の取り扱いについて理解が深まることと思います。
目次
「申告所得税」と「源泉所得税」
所得税とは名前の通りで、個人の「所得(給与所得や事業所得など)」に課せられる税金のことです。
この所得税は納付方法によって「申告所得税」と「源泉所得税」の2種類にわけられます。なお、いずれも所得税法に基づいて制度化されています。
- 申告所得税:個人の所得を「申告納税制度」に基づいて納める所得税
- 源泉所得税:個人の所得を「源泉徴収制度」に基づいて納める所得税
一般的に所得税と言うと「申告所得税」を指す場合が多く、それと区別する所得税として「源泉所得税」が使われる場合もあります。実際、国税庁の税目もこのとおりです。
「申告納税制度」が原則
申告納税制度とは、納税者(所得者)本人が1月1日から12月31日までに稼いだ「所得」を基に所得税額を計算し、それを税務署に申告・納税する手続きのことです。
所得税法上、所得は10種類に分類されています。このうち申告納税制度では原則として全ての所得が対象となっています。
「源泉徴収制度」は一部の所得
源泉徴収制度とは、所得を支払うもの(源泉徴収義務者)が支払時に源泉徴収を行っており、その源泉徴収分を納付する手続きのことです。この制度は給与や報酬、利子、配当といった特定の所得のみが対象となっています。
なお、必ずしもその所得者の所得税額と源泉徴収額が一致するとは限らないため、年末調整で差額を精算します。そして、この年末調整のみで源泉所得税を精算できる場合は、確定申告をしなくて済むようになっています。
所得税をより深く理解するためのポイント
「申告納税制度」と「源泉徴収制度」の相違点についてまとめるので、より深く制度を確認していきましょう。
税の負担者と納税義務者の関係
申告納税制度では、所得税の負担者と納税義務者は同一人物であることがほとんどだと言えます。一方で、源泉徴収制度では「負担者は所得を受け取るもの」ですが、「納税者は所得を支払うもの(納税徴収義務者)」となります。
ここに2つの制度の差があるのです。なお、納税徴収義務者は法人だけでなく、給与や報酬を支払う個人であっても該当します。
税務当局が源泉徴収制度を採用している理由はいくつか考えられ、たとえば、所得税を確実に徴収する、煩雑な税務手続きを解消するといったことが挙げられます。
また、多くの給与所得者にとっても、年末調整だけで納税が完結するので確定申告をしないで済むという利点も挙げられます。
所得税納付・還付までのプロセス
申告納税制度では基本的に、納税者が所得額や所得税額を計算し、申告書を作成して、税金を納付します。一方、源泉徴収制度では支払時に所定の方法で所得税額を計算し、その金額を天引きした上で支払いを行っています。また、天引きされた源泉所得税は原則として支払月の翌月10日までに税務署へ納付されます。
そして、前述したように給与所得者の場合は年末調整という形で、1年間の所得税額を調整して、勤め先から還付を受けたり、追加で徴収されたりします。
なお、給与所得者でも年収2000万円以上の人や、給与以外に所得が20万円以上ある人など、確定申告が必要になるケースもあります。
一方で個人事業主や年金受給者などは年末調整がないので、必要に応じて確定申告を行わなければなりません。
つまり、源泉徴収制度とは負担者は所得税を前払いしている状態だという訳です。
おわりに
「申告所得税」と「源泉所得税」の大きな違いは「誰が納付するのか?」というところにあります。前者の場合は納税者本人が、後者の場合は勤め先といった源泉徴収義務者が納付を行うことということです。
結局のところは所得額に対して税率を課し、所得税額を納めることにはなるのですが、こうした違いを理解しておきましょう。
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