決算申告のみを税理士に依頼することはできる?相場や費用実例を紹介
(監修:佐藤全弘税理士事務所 佐藤 全弘 税理士)
決算から税務申告までの「決算申告」の業務は、その複雑さや時間的なコストを考えると税理士にお願いしたいところです。
日々の記帳や税務処理は自分でできているのであれば、「決算申告のみ」を税理士に依頼することが可能ですが、決算申告だけではなく、顧問として契約したほうが多くのメリットを得られるケースもあります。
そこで「決算申告のみを依頼する場合」と「顧問契約と合わせて依頼する場合」のそれぞれにおける費用の相場と、メリット・デメリットについて解説します。
目次
「決算申告のみ」の依頼は可能!顧問契約との違いは?
決算を税理士に依頼する際によくある相談のひとつが「決算申告だけを税理士に依頼するのは損か得か」というものです。確かに決算申告のみ依頼したほうが費用は安くて済むのが一般的です。ただし会社によっては、決算のみの依頼ではなく、顧問契約を結んだほうがいいケースもあります。
それぞれにかかる費用やメリット・デメリットを考慮した上で、適した方法を選択することが重要になります。
決算申告のみを依頼する場合の費用相場
会社の売上規模などにもよりますが、決算申告だけを税理士に依頼した場合の費用は15万円~25万円が相場となります。
流れとしては決算期を迎え、会社で作成した1年分の帳簿や会計ソフトのデータを税理士に渡して、決算申告書を作成してもらうというのが一般的です。
また、帳簿の作成や会計ソフトへの入力、経費の計算のほか、年末調整、法定調書、償却資産申告書の対応も合わせて依頼することもできます。このように、決算申告以外の業務も合わせて依頼する場合は、追加で10~20万円ほどがかかるでしょう。
つまり、依頼する業務が多く煩雑になるほど金額は高くなります。
【費用実例】兵庫県で不動産賃貸業を営むA社のケース
決算申告料:25万円(過年度分込み)でご成約
不動産賃貸業を営むA社より、税理士ドットコムの「税理士紹介サービス」にお申し込みいただきました。過年度分と合わせて、決算申告のみを対応できる税理士をお探しとのことで、自社の所在地と近場にある税理士事務所をご紹介。ご予算内でご成約となりました。
決算申告のみの依頼に適したケースは?
前述したメリット・デメリットを踏まえて、「売上が少ない小規模な会社」「申告書作成以外は全て社内でできる会社」は、スポットでの決算申告の依頼に適しているといえるでしょう。
売上が少ない場合
まだ起業したばかりで売上が不安定だったり、事業が小規模で売上も少ない企業の場合、顧問契約をしたことによって、経営が圧迫されてしまうということもあります。
事業が小規模なうちは、決算申告の内容もそれほど複雑ではないため、決算申告のみ税理士に依頼しても、さほど問題がない可能性があります。
申告書作成以外はすべて自身でできる場合
経営者も含め、経理ができる人がいれば、決算申告のみの依頼でも良いといえるでしょう。
最近は、会計ソフトの普及により、簿記の知識があまりない人でも簡単に記帳などの会計業務を行うことができます。
そのため、日頃の会計・経理業務は自社で行うことができるなら、税理士には決算申告に絞って依頼してもいいでしょう。
決算申告のみを依頼するメリット・デメリット
決算申告のみを税理士に依頼する場合のメリット・デメリットは、次の点が挙げられます。
【メリット】顧問契約より報酬が安い
決算申告のみ単発で依頼することで、顧問料などの固定費がかからないため、費用を安く抑えられることがいちばんのメリットといえます。
起業したばかりで売上げが不安定な会社からすれば、税理士への報酬を月に数万円~年間数十万円も支払うことは大きな負担となります。
決算申告だけを契約する場合は、この固定費を大きく削減できることが最大の魅力です。
【メリット】定期的なやり取りが不要
決算申告だけなら、税理士と定期的なやり取りを行う必要はありません。やり取りに時間を割けない場合や、税務的な相談を頻繁に行う必要がない場合などは、決算申告だけを依頼する方法もあるでしょう。
ただし、決算申告を税理士に依頼し、決算処理を行う過程で仕訳や帳簿に不明点がある場合は、税理士とのやり取りが発生しますので、注意しましょう。
【メリット】税理士の署名で信頼度が増す
顧問税理士も同様ですが、税理士に決算申告を依頼すると、申請書類の税理士欄に署名・押印がされます。税理士が決算処理を行ったことが証明されるため、自社で作成した決算書よりも、決算書自体の信頼性が高くなります。
ただし税理士が決算申告を行った場合でも、税務調査の対象となる可能性はゼロではありません。
【デメリット】効果的な節税対策ができない
決算業務のみを依頼する場合は、決算が終わったあとの1年分の帳簿をもとに決算処理を行います。そのため、利益が出ていても決算日を過ぎてしまっているため、節税対策を充分に行うことは難しくなります。
また、決算申告後に税務調査が行われたとしても、顧問契約がないと対応できない可能性もあるので、こちらもデメリットとなり得るでしょう。
「顧問税理士」として契約した方がいいケースは?
前述したメリット・デメリットを踏まえて、次の2つに当てはまる会社は、顧問契約も合わせて依頼することがおすすめだといえます。
利益が大きい場合
利益が大きくなればなるほど、税理士報酬の負担割合は小さくなっていきます。そう考えると、損益計算書による必要経費の可視化や見直し、節税対策による資金繰りの改善は、税理士への報酬とは比べ物にならないほど重要な意味を持ってきます。
税理士と顧問契約を結ぶことは、毎月、会社が健康診断を受けることと同じ意味を持ちます。専門家の目で経営や財務状況の悪い部分を見つけ出すことで、早期の改善が可能となります。
経理を担当できる人員がいない場合
決算申告だけの契約にして、社内で経理をするつもりが、時間に追われて結局丸投げになってしまい、最終的な報酬金額が高くなってしまったというケースもあります。
もし経営者も含め、経理を任せられる人材がいない場合は、顧問契約をするのが有効です。顧問契約をしていれば、経営者や社員が指導を受けて経理業務をスキルアップすることも可能です。社内の人員が経理業務に慣れてから、決算申告だけの契約へ変更を検討する方法もあります。
税理士事務所によっては、経理支援でしばらくの間、スタッフを派遣してくれる場合もあります。このように顧問契約の方がコストはかかりますが、コスト以上のパフォーマンスと明確な経営ビジョンを会社にもたらしてくれます。
また、経理自体を社内で行っていても、顧問税理士が第三者となり、内容を毎月確認することで、横領などの不正を抑止する効果もあります。
顧問として契約した場合の費用
次は、顧問契約を結んだうえで決算申告業務をしてもらう場合について説明しましょう。
この場合の報酬相場は、月額顧問料の4~6か月分となります。年間売上が1000万円未満の法人であれば10万円~が相場です。
年間の売上と決算申告の税理士報酬の相場をまとめると、およそ次のとおりとなります。
年間売上 | 税理士報酬(決算料) |
---|---|
1000万円未満 | 10万円〜15万円 |
1000万円以上3000万円未満 | 12万円〜18万円 |
3000万円以上5000万円未満 | 14万円〜21万円 |
5000万円以上1億円未満 | 16万円〜24万円 |
1億円以上5億円未満 | 24万円〜36万円 |
5億円以上 | 要相談 |
決算申告までの流れとしては、毎月もしくは数か月に一度、税理士に帳簿をチェックしてもらう、または税理士に帳簿を作成してもらい、事業年度終了後に税理士が決算申告書を作成するというのが一般的です。
ただし上記の料金表はあくまで相場で、会社の業種や状況、ニーズによっても報酬は変動します。「このくらいの料金にしてほしい」という希望があればその旨を税理士に伝え、その料金で提供できるサービスを提案してもらうという方法もあります。
顧問税理士をつけるメリット・デメリット
税理士に税金の申告を委任する際には、経営状況や財務状況に加え、自身や家族の資産状況にも踏み込んで話す場面が多々あります。そうした情報を得ることで、税理士はさまざまな提案をすることができるのです。
もちろん守秘義務は税理士法にも明確に定められているため、プライベートが漏れることはありませんが、心情として他人に全てを話すことは、抵抗がある方もいるでしょう。
そこで顧問契約を結び、定期的にコミュニケーションを取ることにより、人となりを知ることもでき、深い信頼関係が築けます。この信頼関係がより良い税務業務に繋がり、税理士の能力を最大限に発揮することができるのです。
加えて、税理士と顧問契約を結ぶメリット・デメリットは、次の点が挙げられます。
【メリット】節税対策や経営相談ができる
顧問契約を結んでいれば、税理士が会社の数字や状況をあらかじめ把握しているので、効果的な節税対策を行いやすいというメリットがあります。
また、経営相談についても応じることが可能です。例えば新事業への進出や次世代への事業承継など、中長期での経営相談や課題について、経営者と一緒に考え、アドバイスを受けることができます。
【メリット】融資対策に有利
銀行や各金融機関は決算書と法人税の確定申告書を見て、融資をするかどうかを判断します。つまり、決算書が正確であるかどうか、その裏づけが何かを金融機関側は探ります。
税理士は、融資の際に有利な決算書の条件を熟知しているので、節税とのバランスを考慮しつつ、決算書の方向性を経営者と一緒に考えてくれます。
また、顧問税理士であれば、銀行員が求める書類の提示も素早く対応することが可能です。
【デメリット】費用負担が大きい
顧問契約を結べば、毎月の顧問料が発生します。毎月、毎年、固定の費用が発生するため、負担が大きいと感じれば、この点がデメリットとなり得るでしょう。
しかし、企業にとって最適な顧問税理士であれば、節税効果などのメリットが費用負担を上回る可能性が高くなります。
依頼内容で迷ったときは
このように税理士に決算申告を依頼する場合、「決算申告のみ」か「顧問契約」か、どちらが得かは一概に答えが出るものではありません。
会社も税理士も千差万別であり、それぞれに有効な契約形態も異なります。判断に悩んだときは、複数の税理士に相談しどのような契約にするか決めることをおすすめします。
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※ゼネラルリサーチ調べ