「住宅の三世代同居改修工事等に係る特例」とは?適用条件や注意点のまとめ
近年の日本では、出産や子育てへの不安や負担が大きいことが少子化が深刻化している要因のひとつになっているともいわれています。安心して子供を育てられるように、世代間の助け合いによる子育てを支援する観点から、祖父母・父母・子世代の三世代等の同居を後押しするため、住宅の三世代同居改修工事等に係る特例という制度が創設されました。
これによって、利用者が所有する家屋に対して三世代同居に対応したリフォーム工事を行った場合に、一定の金額が所得税から控除されます。このページでは、この制度を利用するには、どのような条件が必要なのかをお話していきます。
目次
住宅の三世代同居改修工事等に係る特例とは
住宅の三世代同居改修工事等に係る特例とは、世代間の助け合いにより、出産や子育ての不安の軽減を目的とした新たに導入された制度です。平成28年4月1日から平成31年6月30日の間に、個人が所有する家屋を三世代同居のためにリフォームを行い、居住開始した場合に税額控除を受けることができます。
三世代同居とは、祖父母・父母・子が世帯を共にすることをいいます。近年、同居率は年々減少している傾向にあると言われています。
子育て世代である30~40歳代の約20%が三世代同居を理想の住まいと考えているという統計もありますが、現状の三世代同居世帯は274万世帯(全世帯の5.2%)にとどまるとされています。
これは高度経済成長にともない、子供世代が資金的に自立してきたことや、親世代も一緒に生活を送る同居よりも適度な距離を保ち、もう少し軽い付き合いを好む傾向に変化したことであったり、長寿化からくる介護問題に対して、介護保険制度が導入されたことなどの、様々な意識や制度の変化を背景に、同居率が減少していると考えられています。
所得税控除の内容と対象条件
現在、借入金を利用して、一定のバリアフリー改修工事や省エネ改修工事などを含むリフォーム等をした場合には、一定の要件のもと「特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例」の適用が認められています。
この特例の対象に、三世代同居改修工事等に係る一定の住宅借入金等が追加されました。
個人が、自己所有の家屋に一定の三世代同居改修工事等をして、平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に居住の用に供した(実際に住んでいる)場合に、特例を適用できます。
一定の三世代同居改修工事とは
調理室・浴室・トイレ・玄関のいずれかを増設する工事で、費用の額が50万円を超えるもののことです。ただし、補助金等の交付がある場合には、その額を控除した後の金額で判断されます。また、改修後は、調理室・浴室・トイレ・玄関のいずれかが2つ以上が複数となることが必要です。
所得税控除の内容としては、借入金を利用した場合(ローン型)と自己資金で工事を行った場合と(投資型)で控除額の計算が異なりますので、以下でご説明いたします。
ローン型
所有する家屋について、一定の三世代同居改修工事を含む増改築等を借入金(償還期間が5年以上)の年末残高1000万円までを上限とし、下記の表の額が所得税額から控除されます。
対象 | 上限額 | 割合 | 控除期間 |
---|---|---|---|
一定の三世代同居改修工事に係る工事費に相当する住宅借入金等の年末残高(A) | 最高250万円 | 2% | 5年間 |
上記以外の住宅借入金等の年末残高(B) | 1000万円-(A) | 1% |
したがって1年あたりの最大所得税控除額は、250万円×2%+(1000万円-250万円)×1%=125,000円です。
投資型
ローンなどを活用せずに一定の三世代同居改修工事を行った場合、標準的な工事費用相当額の10%に相当する金額が所得税額から控除されます。
※標準的な工事費用相当額については、実際には建築士等が発行する証明書により確認することができます。
対象 | 上限額 | 割合 | 控除期間 |
---|---|---|---|
一定の三世代同居改修工事に係る 標準的な工事費用相当額 | 最高250万円 | 10% | その年 |
したがって最大所得税控除額は、250万円×10%=250,000円です。
税額控除を受けるためには、確定申告が必要になりますが、住宅特定改修特別税額控除額の計算明細書、家屋の登記事項証明書、登録住宅性能評価期間・指定確認検査機関又は建築士の増改築等工事証明書が必要になります。
また、その年より3年以前の各年において本税額控除の適用を受けている場合や、その年の合計所得が3000万円を超えている場合には対象となりません。
そして、住宅借入金等特別控除又は特定増改築住宅借入金等特別控除との併用は不可なので、三世代同居改修工事等に係る特例の税額控除か、どちらかの制度を選択する必要があります。
おわりに
所得税控除の面だけではなく、子供の幼少期の育児について親世代の協力が得られる点や、食費や光熱費なども三世代が一緒に住むことで節約効果を得られたりとたくさんのメリットがあります。これを機に是非、ご家族との同居をご検討されてはいかがでしょうか。
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