税務調査が来る前に!準備すべき資料や確認すべきポイントとは?【税務調査ガイド】
税務調査とは、税務申告が正しく行われているかどうかを確認するために行われるものです。調査を受ける側としては、どのような質問をされるのか、どんな資料を準備しておけばいいのかなど、疑問もたくさんあるでしょう。そこでこの記事では、税務調査において準備しておくべき資料や改めて確認しておくべきポイントを解説します。
目次
税務調査が来るタイミング
ひと口に税務調査といっても、大きく「強制調査」と「任意調査」の2種類に分かれます。
強制調査は、国税局査察部が行うもので、脱税の疑いのある納税者に対して、裁判所の令状をもとに強制的に実施するものです。国税局査察部は一般的には「マルサ」として知られており、扱う内容も“強制”という名にふさわしく、巨額で悪質な事案が多くなります。
一方、任意調査は申告の内容について確認をするために行われるものとなり、原則として納税者の同意を得て実施されます。この点が裁判所の令状を基にする強制調査とは大きく異なります。任意調査の中にも、事前通知が行われるものとそうでないものがありますが、法的にはいずれも納税者の同意が必要です。とはいえ、税務署職員には「質問検査権」があり、正当な理由なく断ることはできません。
一般的に最も多く実施されているのは、事前通知がある任意調査となり、単純に「税務調査」というとこのケースを指すことがほとんどでしょう。
なお、この事前通知については、原則として納税者に行われますが、申告書の作成に税理士が関与しており、税務代理権限証書という書類が提出されている場合には合わせてその税理士に対しても調査の事前通知があります。このとき、納税義務者が税理士に対して事前通知が行われることに同意していた場合、税理士に対してのみ事前通知が行くこととなります。
税務調査の流れ
先述のとおり、税務調査のほとんどは事前通知ありの一般調査といわれるものです。その調査の流れは以下のようになります。
- 税務署等からの事前連絡
事前通知は原則、調査担当者から電話連絡の形で実施されます。このとき、電話をしてきた税務署等の調査担当者の氏名、所属部署は記録しておくとよいでしょう。 - 日程調整
事前通知があったその場で調査日時を決定する必要はありません。税務署側から日時、場所の指定があるかもしれませんが、都合が悪ければ変更が可能です。また、都合を調整して、後日改めて連絡することも可能です。 - 資料準備
調査当日は申告内容について説明を求められます。税目を問わず、提出した申告書の控えおよび、申告書を作成した際の基礎となった資料を準備しておきます。 - 調査当日
調査担当者はまず世間話から始めることが多いです。雑談をしながらその後の書類や現物を調査する際のヒントを掴んでいきます。現場での調査は1〜2日で終わることがほとんどです。 - 税務署等における検討
現場での調査が終わっても、そこで税務調査終了ではありません。調査官は現場で確認した内容をもとに、税務署等で詳細に検討を重ねます。 - 調査終了
税務調査の結果として、申告内容に問題がない場合には申告是認となり、そこで調査は終了します。しかしながら、調査の結果、申告内容に問題が認められた場合には税務署から「修正申告」や「期限後申告」をするよう勧告されます。一方で修正申告や期限後申告をしない場合、税務署から「更正」という処分を受けることになります。
これらの違いとしては、修正申告や期限後申告は納税者の自主的な行動であるため、指摘内容に不服があった場合にも申し立てすることができませんが、更正は税務署側からの処分であるため不服を申し立てることが可能となっています。
準備しておくべき資料
事前通知を受けたら、基本的には申告書作成の基となった資料を用意することとなりますが、調査対象となる税目によって必要な資料も異なります。
「所得税」「法人税」などが調査対象の場合
法人や個人事業主が税務調査の対象となった場合、事業の状況を示す帳簿関係を中心として、以下のような資料が必要となります。
- 帳簿関係
総勘定元帳、現金出納帳・預金出納帳、売掛金台帳・買掛金台帳、固定資産台帳 - 売上関連
納品書控、請求書控、領収書控 - 仕入関連
納品書、請求書、領収書 - 経費関連
請求書、領収書 - 在庫関連
棚卸表 - 現預金関連
預金通帳等 - 人件費関連
従業員名簿、組織図、社会保険関連の書類 - 過去の申告書の控え
このような帳簿や資料は日頃からこまめに管理・保管し、少なくとも3年分は揃えておきましょう。
また、用意した資料についてきちんと説明できるかということも、同じくらい重要です。資料は揃っていても内容についてはさっぱりわからないという状態では、調査官の印象は悪くなってしまいます。
取引ひとつひとつについて説明する必要はありませんが、たとえば、売上関連であればどのような顧客から受注がくるのか、確定取引として伝票が起こされるのはどのタイミングなのか、といった大まかな流れは調査官に説明できるようにしておきましょう。
もし、以前にも税務調査を受けたことがある場合、過去の申告書の控えと調査を受けた際の記録を確認しておいてください。過去の調査対応状況もしっかりとフォローしておきましょう。
「相続税」が調査対象の場合
被相続人の関連資料のみならず、相続人の財産状況を確認していく場合もあります。
保有する財産によって用意すべき資料もそれぞれですが、相続人の通帳に加え相続人所有の土地の権利証、不動産購入時の資料など、税務調査の際に調査官のリクエストに都度対応していくことになりますので、重要な資産に関する資料はすべて揃えておきましょう。
なお、自宅の金庫や銀行の貸金庫、それに準ずる重要なものを保管している場所があれば、相続人が立ち合いのもと、調査官が現物を確認することもあります。そうした可能性も事前に想定し、対応できるようにしておきましょう。
確認しておくべきポイント
調査当日に向けて、税目ごとに資料を揃えるだけでなく、改めて税務署からチェックされやすいポイントを確認しておきましょう。
「所得税」「法人税」などが調査対象の場合
事業ごとの業務の流れは簡潔に説明できるようにしておきましょう。調査官といっても、事業概況や普段の業務の流れを熟知しているわけではありません。事業の中身や進め方、取引の流れやそれに伴う伝票の動きについて調査官に理解してもらうことは、円滑な税務調査の進行には欠かせないのです。いつもと違った処理や、あまり一般的ではない方法を使用している取引については慎重に説明し、調査官の理解を求めましょう。
また、以下3つの関連項目についても改めて確認しておきましょう。
- 売上
売上において最も注意すべきは売上除外がないか、ということです。本来売上として申告すべきであるのに、計上が漏れていたことが税務調査で発覚すれば、ペナルティの対象となる可能性があります。値引きなどが発生するのであれば、根拠も合わせて説明 できるようにしておきましょう。
- 仕入・在庫
仕入と在庫との関係がきちんと整合しているか確認しましょう。棚卸についても、期末近くの仕入で売上になっていないものをきちんと在庫として計上されているか、と言った点や、外注先の預け在庫は適正に計上されているかといった点に気を付ける必要があります。
在庫については、現場の棚卸報告がベースとなりますが、たとえば経費のように取引ごとに契約書や領収書が存在しないため経理担当者や税理士の目が届きにくく、税務調査において不備が指摘されやすい項目となります。
- 人件費
税務調査においては、役員報酬や使用人兼務役員の取り扱いが適正であるか、または架空の人件費がないか、といった観点で確認されます。そのため、従業員名簿や組織図、扶養控除申請書などの資料の用意も必要です。
上記に加え、パソコン内のデータも整理しておくとよいでしょう。調査官が勝手にパソコンを確認することはありませんが、調査に関係のないプライベートなデータなどは前もって整理しておくことをおすすめします。
「相続税」が調査対象の場合
相続税の税務調査の場合、実地調査がされたもののうち、約8割程度で申告漏れなどが指摘されています。つまり、税務署はある程度、根拠をもって調査に臨んでいるというわけです。
そこでまずは相続開始前後の預貯金の入出金状況を確認しておきましょう。たとえば葬儀にかかった費用であったり、被相続人が亡くなる前の医療費のほか、相続人が相続税の納税資金をどのようにして取得したかがポイントとなります。
また、家族名義の預金であっても、実質的な所有者が被相続人であると判定されると、相続財産として扱う必要がありますし、あわせて、被相続人が海外駐在・単身赴任の経験があった場合、現地での預金口座開設や不動産に関する取引がなかったかどうかも改めて確認しておきましょう。
土地および家屋についても、被相続人の先代名義の不動産がないかどうか、申告漏れとなっている不動産がないかどうか、利用状況も合わせて確認しておきましょう。
おわりに
事前通知後、関係資料の準備や確認をする上で、申告内容の誤りに自ら気付くこともあるでしょう。その場合、調査実施前に修正申告あるいは期限後申告を行うことで、ペナルティとなる延滞税や加算税などを軽減することができます。
もし税務調査の事前通知を受け、申告した内容に不安があるときは、改めて税理士などの専門家に相談してみましょう。
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