井端ジャパンが2026年に開催される「WBC」へ大きな教訓を得た。国際大会「プレミア12」決勝は24日に東京ドームで行われ、日本代表は台湾に0―4で完敗。全勝優勝を目前に大会連覇を逃し、無念の2位に終わった。その舞台裏では温厚で冷静沈着な井端弘和監督(49)が怒りの感情をむき出しにする場面もあった。

 まさかの結末だった。先発した戸郷(巨人)が5回7安打4失点で降板させられ、打線はわずか4安打。最後は一死一塁の場面で栗原(ソフトバンク)の打球が一直となって走者の帰塁が間に合わず、併殺でゲームセットとなった。

 侍ジャパンの連勝は「27」でストップ。指揮官就任後、初黒星を喫した井端監督は選手の健闘をたたえ「最後のところで勝たせられなかったのは私の責任だと思っています」と背負い込んだ。

 敗れはしたが、井端監督が勝負にかける「鬼」の一面ものぞかせていた。決勝前日の23日の同戦だ。台湾側は同日に米国がベネズエラを下したことで決勝進出が決まり、エースの林昱珉(リン・ユーミン)から陳柏清(チェン・ブォチーン)に先発を変更した。林はダイヤモンドバックス傘下3Aに所属。招集にあたり、連投禁止や球数制限の細かな条件が付随していたとみられる。

 ただ、マナーに反する決定だったことは言うまでもない。「決めるのは大会側」。温厚な井端監督は公式会見で短い言葉に疑義を込め、深く言及することを避けた。何が起こるか分からない国際大会。表立って多くを語らなかったが、運営側には「仏の井端」を脱ぎ捨て、感情を静めながら言うべきことはハッキリと伝えていたという。

 投手を変更するにしても左投手から左投手が筋――。侍指揮官の反発の強さに、台湾サイドが事の重大さに気づくまでに時間はかからなかった。毅然とした態度で正当に抗議した〝物申す将〟の姿はナインの結束を深めた。選手の間から「そこまでして台湾は勝ちたいのか」という声まで漏れた不測の事態で、マネジメント能力を発揮した格好だ。

 今大会は投球間隔を制限する「ピッチクロック」への対応にも各国が頭を悩ませた。始動のタイミングがあいまいで混乱を招くシーンも散見された。23日の同戦では早川(楽天)も違反を取られ、投球リズムを大きく崩した。井端監督は公式会見で早川を擁護した上で、ここでも堂々とあいまいさを指摘した。

 1年4か月後には、井端ジャパンの総決算となるWBCが控える。運営は今大会と異なるが、国際大会では有事が付き物。最後は悔しい結末を迎えたが、今後の糧となるに違いない。