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「103万円の壁」撤廃が招く財政破綻…財源は未来の子どもたちに押し付けか。国債依存の限界迫る=斎藤満

日本の財政は危機的状況に直面しています。国債依存に対する市場の無関心や、安易な税収減少政策が進む中で、国債増発の圧力が高まっています。持続可能な財政運営のためには、現役世代が負担を共有し、無益な歳出削減や税制度の見直しを進める必要があります。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

【関連】「貯蓄から投資へ」の残酷さ。政府は国民を切り捨てる意図で投資を奨めている=鈴木傾城

※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2024年12月2日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

「103万円の壁」撤廃は茨の道

日本の債券市場はあまりに危機感が欠如しています。

政府は過半数割れの「少数与党」の弱みから、国民民主の「『103万円の壁』引き上げ」を飲まざるを得なくなりました。これを178万円に引き上げれば、地方税を含めて8兆円近い税収の穴が開きます。

さらにガソリン価格のトリガー条項を復活させれば追加で1.5兆円の税収減となり、その分、赤字国債の増発が避けられなくなります。

それでも市場は国債の消化は問題ない、日銀の緩和持続期待などをよりどころに、10年国債利回りは依然として1%強の低い水準にとどまっています。それだけ安心して国債を買う投資家が多いことになります。

しかし、制度を変更して毎年10兆円近い税収の穴が開き、国債の増発を余儀なくされれば、国債の発行、消化に圧力がかかります。日銀も国債の買い入れを減じ、政策金利を上げてゆきます。

そうであれば、米国流に、政策プロジェクトごとに財源を確保するやり方が必要で、なんでもどんぶり勘定で最後は国債発行、というやり方は限界が来ています。

壁を見直すには、その財源手当てがセットで論じられる必要があります。

国債の前倒し発行の余力は一時的

国債市場が増発にも楽観的な背景に、今年度までの国債発行をかなり前倒ししてきたため、今後国債の追加発行となっても消化に問題はないとみていることがあります。

国債増発に対する危機感が市場にないことに財務省は苛立ちを感じています。前倒し発行による余力は一時的なもので、1年の増発で使い果たされます。その後、毎年国債が増発されれば、国債の需給はそれだけ悪化します。

それにもかかわらず、楽観的な市場は国債の増発になる税収の恒常的な減少策に無頓着で、壁の引き上げを求めています。

財務省は市場に警告を発するために、前倒し枠を使わずに、いきなり国債の増発で市場を驚かせ、危機感を持たせようとの考えもあるようです。

日銀の国債買い上げに期待できない

巨大な財政赤字や今後の税収減少が予想される中でも長期金利が1%前後で収まっている背景には、日銀が依然として600兆円近い国債を保有し、その残高圧縮にも市場に配慮して、緩やかなペースにしていることがあります。

しかし、日銀は3か月ごとに買い入れ額を減らし、保有国債残高を次第に減らすペースを速めてゆきます。市場での売却はしないまでも、期落ちする分の再投資を抑制し、残高を減らします。その分、民間保有の国債が増える形になります。

つまり市場での国債需給の悪化のみならず、民間部門での国債保有における価格リスクが高まります。

Next: もう先延ばしはできない。未来の子どもでなく、現役世代が負担する必要

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