菅政権は福島汚染水の海洋放出を強行しようとしています。他国の環境を害すれば国際法違反となり、国連も日本に先延ばしを求める始末。強行すれば、世界の信用を一気に失いかねません。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2020年10月20日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
2年以内に海洋放出か
菅政権はここへ来ていきなり、福島汚染水の海洋放出を強行しようとしています。
さすがに準備から実施まではまだ2年近い時間がかかりそうですが、問題となっている汚染水は多核種除去設備で除去・浄化しても中途半端な処理しかできず、約70%は政府が決めた基準値以上の放射性汚染物を含んだままだとか。
その汚染水を500倍から600倍に薄めて海に流してしまおうというのですから、そのやり口は乱暴かつ唐突で、事故から10年を経てほとぼりも冷めたので、どさくさに紛れて海に捨ててしまおうという意向が強く感じられるものがあります。
しかしこの問題、そんなに簡単ではなく、国際社会が衆人環視でその状況を見守りつつあり、一歩間違えば、この国は国際的な信用を著しく落としかねない、かなりクリティカルな時間帯にさしかかっているのです。
「処理水」と言えるのか?
もともとこの福島第一原発の汚染水は、アルプス(ALPS)という名称の多核種除去設備をつかって確かに汚染水の淡水化に取り組んだことは事実ですが、処理能力が低いのに加え、トリチウムについては処理を繰り返しても除去に至らないもの。
正確な言い回しをすれば、「処理は試みたが、完全処理できない状態の汚染水」というのが正しい表現だと言えます。
朝日新聞の系列誌であるAERA dot.では、どこぞの芸人が昨年からこの処理水はほとんどトリチウムだけが残った浄化された水で、そもそも原発を動かすとトリチウムは出るから、世界ではトリチウムをガンガン海洋に流している。韓国も流しているし、フランスも流している。日本海にも流れているし、玄海原発でも流れている。原発が稼働しているときは、トリチウムが海に流れ出ていて、そこで捕れる魚を私たちは食べていると実にもっともらしいことを言って、ほとんど政権・政府と東電のやり方を全面的に肯定。トリチウムは水素の仲間で水に近いから被害はない、との素人見解を持ち出しています。
たしかにトリチウム自体は自然界に広く存在し、セシウムに比べれば毒性は弱いものですが、原発で生成される放射性物質の中でもっとも多量に海洋へ放出された場合に、海洋生物への被ばく被害は確実に発生し、人間の致死性にも確実につながるもので、手放しで喜べるようなものではないことはしっかり理解する必要があります。