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2018年2月16日金曜日

ゲーム理論で考える、じゃんけんの拡張

試験の時期には奇問・難問がSNSに投稿される。一昨日は早稲田大学の入試問題で、じゃんけんの選択肢グー、チョキ、パーに、キューという選択肢も加えた新しいゲームを提案し、そのゲームの魅力や難点といった特性を説明せよと言う論述問題が出たのが注目されていた。採点基準は分からないが、難しい気がする。分析に用いる均衡概念を明示するように付け加えれば、大学のゲーム理論のレポートに丁度よさそうである。解答例を考えてみた*1

1. 分析方法

どのようなルールにするにしろ、キューがゼロではない頻度で使われるようにすべきであろう。ナッシュ混合均衡で、全ての戦略{グー, チョキ, パー, キュー}をとる確率が0より大である必要がある。魅力や難点と言った評価軸は難しいが、決着が早くなるか遅くなるかの影響で評価しよう。じゃんけんは意見調整に使われる事が多いので、決着は早い方が望ましいとする。

2. キューの定義

3人以上の参加者でのじゃんけんを拡張する。拡張方法は自由なので、キューを出した人以外の勝敗がつかない場合、キューを出した人の勝ちとする。また、1人を除いて全員キューの場合は、その1人の勝利としよう。3人がそれぞれグー、グー、キューを出した場合は、キューの人の勝ち。グー、キュー、キューを出した場合は、グーの人の勝ちとなる。

3. 通常じゃんけんのあいこの確率

通常のじゃんけんの場合、参加人数が多ければ多いほど、あいこの可能性が高くなる。「じゃんけんであいこになる確率の求め方と値」を参照するが、3人だと確率1/3だが、5人だと約0.63、10人だと約0.95だ。通常のじゃんけんでは、この長さが決着までの時間を長くするわけだが、キューを上述のように定義した拡張じゃんけんでは、キューを取ることで通常じゃんけんでの意味のあいこでの勝利を掴む事ができる。

4. ナッシュ混合均衡の計算

一回のじゃんけんにおける、じゃんけん参加者(以下、プレイヤー)の数は一定なので、戦略キューを取るプレイヤーが増えると、その他の戦略{グー, チョキ, パー}を取るプレイヤーは減って、あいこの確率は減る。他のプレイヤーとの関係でキューの期待勝率(以下、利得)が変化し、他のプレイヤーがキューのときはその他の戦略、他のプレイヤーがその他の戦略のときはキューを取るべきとなる。

ナッシュ混合均衡が具体的にどのようになるかを考えよう。勝つ確率を最大化する行動を最適とする。その他の戦略{グー, チョキ, パー}の間には優劣はないので、グー、チョキ、パーの利得は等しくなる。プレイヤーの数をnとして、プレイヤーがキューをとる確率pを長さnのベクトルとし、0から1までの一様乱数で初期値を与えた上で、1からn番まで順番にiをとり、他のプレイヤーのp-iを一定とした上で、プレイヤーiの最適値を計算しベクトルpを更新する操作を繰り返し行なって、収束値をナッシュ均衡とする。

5. 計算結果

pの要素それぞれの計算結果が非対称になってしまい分かりづらい*2のだが、全プレイヤーは対称で、どの順番になるかは等しい確率で定まるはずなので、要素の平均値mean(p)をナッシュ均衡値とする。n=3では、p=0である。n=4ではp=0.25、n=5ではp=0.4、n=6ではp=0.5・・・n=10ではp=0.7となり、じゃんけん参加者数が多ければ多いほど、戦略キューが有利となる事が分かる。また、拡張じゃんけんの引き分けは、全員がキューを選択したときか、全員がキュー以外を選択したときしか生じないので、決着は早くなる。例えばn=10のときの負ける人数の期待値は、通常じゃんけんが0.26に対し、拡張じゃんけんは6.67である。

6. 魅力と難点

決着は早くなることが期待されるが、理論計算どおりには皆さん振舞う事がないのが予想される。実験経済学で振る舞いを観察してみたい。

7. 試験問題の論評

計算するのがつらい。通常じゃんけんのあいこの確率ぐらいならば紙と鉛筆で何とかなるかも知れないが、キューをとる確率ベクトルpを所与としたときの、キューを選択する人数の確率質量関数の計算が総当りになるので、紙と鉛筆では無理と言う感じである。さらに、数式もコードも省略したが、指定字数1000文字以内に収まらなかった。

さすがに、早稲田大学は難関である(;´Д`)ハァハァ

*1正しい話になっているかは、均衡計算の部分に不安がある('-' )\(--;)BAKI

*2通常、ゲーム理論の数値演算で扱われる計算手順に習っていないので、何か勘違いがあるかも知れない。ソースコードはこちら

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