登録日:2011/01/20 Thu 21:50:32
更新日:2024/10/22 Tue 14:26:46
所要時間:約 7 分で読めます
概要
本シリーズは、TVアニメ『
機動戦士Ζガンダム』(1985-1986年)を三部作に再編集したアニメ映画シリーズである。
監督は
富野由悠季。略称は「新訳Ζ」。
上映された順番は以下の通り。
- 2005年5月28日『機動戦士Ζガンダム A New Translation -星を継ぐ者-』
- 2005年10月29日『機動戦士ΖガンダムⅡ A New Translation -恋人たち-』
- 2006年3月 4日『機動戦士ΖガンダムⅢ A New Translation -星の鼓動は愛-』
TV版では悲劇しかなく殺伐としており、後味の悪い
バッドエンドで締めくくられていた本作を
『「新たな解釈と異なる視点」を加える事で「健やかな物語」に再構成する』というコンセプトで制作された。
また
百式のゴーグルの下のツインアイや、
ガルバルディβの
ビームサーベルの収納場所など、今回新規に明かされた設定もある。
人気の高いΖのリメイク作だが、
- 予算不足からか完全新規作画ではなく、一部(というかかなりの量)がTV版カットの流用
- 監督や音響監督による20名以上に及ぶキャストの変更(オーディションで選んだ事等から)
- 尺の都合故の一部人気エピソード(キリマンジャロ編、ダカール編、ロザミィ関係など)のカット
- 機動戦士ガンダムΖΖに繋がらない結末
前述の通りΖΖに繋がらない結末(カミーユの状態、アクシズの撤退)になっており新訳ΖΖの制作が期待されるが、肝心の富野監督は作る気が無いようである。製作費を10億貰えれば作るとは言っていたが…。
そのため今作はガンダムシリーズの正史から孤立してしまっているが、TV版とは別の形で
第一次ネオ・ジオン抗争があったと考える事もできる(どちらにせよ、
アーガマは補給の為にシャングリラに寄るだろうし)。
富野監督としては 劇場版ファースト3部作→劇場版Z3部作→
逆襲のシャア という流れにも出来る様にしたらしい。
TV版カットはクリンナップの上で
ビームの色や各種エフェクトなどを訂正するなど創意工夫が為されているため、完全な使い回しでは無いことにも留意したい。
ちなみに当時セル画であった旧絵を色だけ塗り替えるのはデジタルで1から描くよりもっと手間が掛かる様だ。
監督も結果論ではあるが『焼き直しよりイチから作った方が安上がりだった』と懐古している。
しかし富野コンテによる新規作画の迫力の殺陣や、緩和された人間関係は何だかんだ好評を集め、星を継ぐ者の時点で3部作分の製作費はペイしたらしい。
富野監督直々の依頼により、主題歌は三作全て
GACKTが手がけている。
【登場人物】
テレビ版との相違点を記載する。
主人公。
キレやすい性格や支離滅裂な言動が目立ったTV版と比べるとまともになっており、彼の結末も大きく変更されている。
隣人愛を示し、
ニュータイプ能力を前向きに受け入れ、ファという大事な女性との
肉体的な触れ合いを得た今作のカミーユはニュータイプの理想像と語られた。
また、エンディングクレジットはTV版では
シャアに続いて2番手だったが、今作では恋人たち以降はとうとう1番手になった。
飛田氏は富野監督から「不甲斐ない演技をしたらカミーユ役を下ろす(意訳)」と釘を刺されたが、安定した演技を見せたことで流石の富野も舌を巻いたらしい。
今作のヒロイン。前任の松岡ミユキ氏の
声優業引退の為、声優が変更された。
新井氏は富野監督のキツイ演技指導をモロに受け、一時期は本気で
自殺も考えたらしいが何とか無事に乗り越え、後に富野監督からの謝罪を受けた際には『今となってはいい思い出』と無事に和解したとの事。
TV版では軍人になって以降、勝手な行動をすることが多かったが、本作ではカットされ、
メタスに乗るのはレコアがいなくなってから。
また、TV版ではフォウに&小説版ではロザミィにヒロインの座を取られ気味だったが、今作では、フォウとロザミィの出番が少なめなことからヒロインポジションは安定している。
エゥーゴの
エースパイロットで
シャア・アズナブルその人。
今作ではカミーユに全く殴られないためヘタレ度が減った。
また人間くさい言動が増え、『クワトロ』という名前にもあまりこだわらなくなっている。
TV版で乱発していた名(迷)台詞「えぇい!」も僅か2回しか言わない。
全体的に前線に立つ指揮官らしい、頼もしい人物像に変化していると言える。
TV版よりはウジウジした面がなくなっている。
Ⅰでは輸送機特攻→クワトロと再会がラストシーンであり、気合の入った新作カットで存在感を示したが、キリマンジャロ〜ダカール戦が丸々カットされたため、後半はほぼ空気。ⅢではED部分に登場する。
CV:岡本麻弥
TV版のような
真面目で堅物というイメージはなく、頼れるお姉さんといった感じ。
また、今作はヘンケン艦長ともちょっとだけいい感じである。
カツ・コバヤシ
相変わらずクソ生意気な問題児だが、TV版よりはおとなしめ。今回も前方不注意で死亡。
が、ヤザンに駄目押しされなかっただけ、まだマシか。
彼もキャストが変更されており、今作の担当声優は
ポケ戦のアルであり、後の
UCの
リディである。
後述のカイレポではコバヤシ家の仏壇に写真が立てられていた。
本来の鈴木氏がスケジュールの関係で出演出来ずまさかのキャスト変更。でも叫ばない。
アウドムラ内でのカイとの会話シーンが追加されている。
ウォン・リー
CV:田中和実
カミーユに対する修正シーンがカットされ、逆に会議中に家族の安否を気にしてビデオレターをこっそり見ていたブライトに「せっかくクワトロ大尉が持ってきてくれたんだし消すことはないだろう。」ととがめない発言をするなどアナハイムのパイプ役をこなしつつ現場にも一定の理解を示す粋な人物として描かれている。
劇場版ではステファニーがルオ商会に嫁入りした自身の娘という設定のため、家族を敵のホームグラウンドである地球に置いているブライトの心境を理解していたのかもしれない。
カミーユの
ライバルキャラだが、なぜか今回は
モブキャラからの評判が良くない。
「口は災いの元」な人生を今回も送るが、実は今作では「災いの元」となった台詞を直接言うシーンはない。
「駄目な大人」の代表として描きたかったのか、TV版に比べてライバルというよりは完全な
噛ませ犬状態。
「新進気鋭のエリート」というよりは「口だけのヒヨッ子」といった扱い。
ジャマイカンからの態度が特に心に刺さる。
挙げ句、
断末魔の台詞さえ取り上げられた。
ジェリド好きなファンはあまりの扱いに涙したとかしてないとか……。
漫画版では散り際に亡き仲間たちの名を呟きながら涙を流すという、TV版とはまた違った悲哀を見せた。
ティターンズ所属のパイロット。
今回もカミーユと激戦を繰り広げる。今作では意外な事に政治的駆け引きに優れている面も見られる。
ロザミア・バタム
CV:浅川悠
ティターンズの
強化人間。
声優が変更されており、声を担当した浅川女史はアフレコで富野監督に何度も怒鳴り散らされ、しまいには泣き出してしまったらしい。
今作では
地球でエゥーゴと戦った後は出番が一切無くなり『ロザミィ』にならないため
トラウマクリエイターでは無くなった。
また地味に名前も一文字変更されている。
ブラン・ブルターク
CV:中村秀利
二人目のティターンズ所属の強化人間。
彼女も声優が変更されたキャラの1人だが、当初の発表ではTV版でCVを担当した島津冴子氏のままだった事や、島津氏がそもそも本作のオファーを受けていない事が判明し、この変更によって新たに声を担当したゆかなが旧来のファンから嫌がらせを受ける事態が起きた(詳しくは項目にて)。
今作はキリマンジャロ戦がなく、その後は登場しないためホンコン・シティ編で明確な死亡シーンがある。
木星帰りの男。
TV版での階級は大尉だが、映画版では大佐。
今作ではTV版よりもジュピトリス組はティターンズとは別組織であるという描写が強い。
女を口説きまくるが最後はカミーユによって"女たちの所へ戻された"。
結末が違うため、最期のセリフもカミーユ共々変更されている。
本作でも好物は
スイカバー。
サラ・ザビアロフ
CV:Ⅱ 池脇千鶴/Ⅲ 島村香織
ティターンズの女性パイロットだが、実はスペースノイド。
TV版からキャストが変更されているが、劇場版でもⅡとⅢで再度キャスト変更が行われているため、立ち回りはTV版とさほど変わらないにもかかわらず、印象が違って見える。
◆アクシズ
ミネバ・ザビの摂政を勤めるアクシズの実質的リーダー。
本作では新たに専用の白い
ガザCが登場する。また、
グリプス戦役終了後にアクシズを地球圏から撤退させる指示を出すため、
地球には侵攻せずミネバが地球に留学するという展開になっており、ΖΖには繋がらない。
ただでさえ言動が達観しているのに、担当声優の年齢の経過から
20歳とは思えない声に。
ゲーム作品で慣れている人からすれば違和感ないだろうけど。
ΖΖのあの人っぽい動きをする
ガザCがいる。
自分の目で確かめて真偽を見極めよう。
余談
『劇場版銀魂 新訳紅桜編』は本作を参考に制作されており、
『
ヱヴァンゲリヲン新劇場版』も本作を一部ヒントにして作られたのではないかという噂がある。
制作発表会においては、富野は出演声優たちに対して「決して気を抜かずに、常に緊張感を持ってアフレコに臨むようにと釘を刺した」と語っている。
前述の飛田氏や新井女史、浅川女史に対しての厳しい態度もそうだが、相当緊迫した状況下でアフレコが行われたようだ。
なお、劇場版に出なかった要素+αは、ことぶきつかさ氏による
ガンダムエースの
漫画『デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのレポートより―』にて補完されている。
出番の少なかった人たち(コバヤシ家、ノア家、
セイラさんなど)も結構出ているので、是非とも読んでみよう。
主な例
他にもラコックやナナイ、劇場版にも出たロザミアが登場している。
また、最終話ではアーガマがシャングリラに寄る描写がある。
対談やTwitterによると、本作は
古川登志夫氏もお気に入りのようで、繰り返し読んでいるという。
そしてジャーナリストになってからのカイは、カイレポ、カイメモのイメージ強く定着していると語った。
アニヲタwikiだけは、幻覚でもなければ意識だけの存在でもない…こうして追記・修正することができるんだから…!
- 賛否はあるけど俺はカミーユが無事で本当に良かったと思ってる。TV版の結末より、ハッピーエンドなこっちの方が好きだったり…。自分のNT能力と向き合って、色んな人達と絡み合う中、それを受け流す術を身に付けたのが良かったよ。 -- 名無しさん (2013-11-05 00:48:28)
- フォウとロザミィのエピソードすっ飛ばしたのがなぁ…TV版でカミーユの精神に大きな影響を与えた出来事を無かった事にしたのは納得がいかない。 -- 名無しさん (2013-11-05 06:37:59)
- てっきりキリマンジャロやってHGUCでディジェでると思ったのに… -- 名無しさん (2013-11-05 11:22:22)
- フォウとロザミィのエピソードはカミーユが崩壊するフラグを建てるしねぇ。 自分はTV版よりはこっちの方が好きかな? でも浅川悠のロザミィもちょっと興味ある。 -- 名無しさん (2013-11-06 22:22:26)
- 「星の鼓動は愛」で様々なキャラがグワダンから脱出するとき、「敵対人物が乗り捨ててる機体を破壊して行動不能にしないのか?」について言い訳させまくってたのが説明的過ぎるけどちょっと面白かった。 -- 名無しさん (2013-11-13 23:53:49)
- ↑シロッコ「ガンダムがジ・Oを見逃してくれたのなら、百式を壊すわけにはいかんな」 -- 名無しさん (2013-12-20 22:55:38)
- ジェリドって実力的にTV版より劇場版みたいな扱いがピッタリな気がした。 -- 名無し (2014-01-11 22:32:49)
- ↑逆襲のシャアwithカミーユ・ビダンって動画があるけど、あれはこの劇場版の続きって感じでよかった。 -- 名無しさん (2014-01-11 23:15:24)
- カミーユが救われて本当に良かった。 -- 名無しさん (2014-03-14 03:57:34)
- 第3次Zで逆襲のシャアやUCのキャラ達とシンの時のような良クロスを展開するカミーユ……未参戦の○○涙目だ。 -- 名無し (2014-04-26 00:11:55)
- ↑発売前に店頭のPVでアムロ対シャアの一方でカミーユ対ハマーンが展開されてたけど、新訳Zの後にシャアが逆襲するとあんな感じになるのかな? -- 名無し (2014-05-19 21:27:39)
- カミーユやシャア、アムロの声優も改めてオーディションしたそうだけど、もし変更されてたらどうなっていたのだろうか -- 名無しさん (2014-05-19 21:37:58)
- そういえば、劇場版Zから繋がる逆シャアはベルトーチカチルドレンっていう可能性はないの?(まあ、カミーユが精神崩壊していないけど。) -- 名無しさん (2014-05-19 21:53:29)
- ↑ダムAでベルチル連載決定だがそれの続編の……閃光のハサウェイ……ブライトさんが気の毒だが怖いもの見たさはあるんだよな -- 名無し (2014-05-21 12:09:55)
- もう別の歴史になるって事で良いんじゃないか?、あの結末から逆シャアに繋げるのは至難の技過ぎると思う -- 名無しさん (2014-09-30 11:49:59)
- ↑富野がインタビューでZZには繋がらないが逆シャアには繋がると言ってた -- 名無しさん (2015-04-29 16:21:52)
- その辺の話と、「Gアーマー込みのガンダム」というZZガンダムの設定を組み合わせると、テレビ版初代→テレビ版Zの組み合わせじゃないとZZに繋がらなくなっちゃうんだよね。 -- 名無しさん (2015-08-04 17:53:14)
- 劇場版のカミーユはこのままハマーンと決着をつけてほしい気もするんだよな。zzでは決着をつけないまま終わったし -- 名無しさん (2016-04-14 11:13:58)
- この作品のおかげでハマーン様がスパロボで味方になってくれるんだよな~。サルファでも仲間になったけど・・・ -- 名無しさん (2016-04-14 18:37:33)
- ↑ハマーン様が仲間になるのはニルファ。ただし正史扱いにはならずにサルファでは死亡してる -- 名無しさん (2016-04-14 23:07:03)
- ロザミィの中の人が巡音ルカ -- 名無しさん (2016-04-21 12:09:05)
- ストーリーの改変は個人的にあんまし気にならん(TV版の方が好きだがこれはこれでok)けど、新旧作画のパッチワークぶりは擁護できんなぁ。新規作画の出来が言い分だけ余計に旧作画との温度差が気になってもやもやする。 -- 名無しさん (2016-08-10 00:09:06)
- 新作画部分は今でもガンダムシリーズ屈指のカッコよさだしねぇ TV版も当時は高水準だったけど 20年の差は大きすぎたね -- 名無しさん (2016-08-10 00:54:10)
- ロザミィって人気エピソードなん? -- 名無しさん (2016-08-10 22:55:18)
- 今にして思うと、近藤先生は劇場版の展開を予知していたのかもしれないと思うくらい、近藤版と劇場版の展開(キリマンジャロに行かないのでフォウが香港で死ぬ・アムロの出番も香港で終わり・ロザミィ出番なし)が似通ってる件 -- 名無しさん (2017-11-07 23:20:39)
- タグにもある通り、旧訳→新訳におけるストーリーの変化って1stからVまでで完全に磨り減った禿の精神状態(いわゆる黒富野)がブレン→∀→キンゲという悲劇的ではない作品群(白富野三部作)でリハビリされて、最終的に「困難を乗り越え隣人を愛する物語」たる新訳の作者=聖富野として完成されたもんだから、そういう意味では禿の人生における到達点的な作品なのよね。これ以降の作品(Evolve、リングオブガンダム、Gレコ)もそういう路線で全体的に希望を感じさせる内容になってるし、宇宙世紀ガンダムの作品としてというよりは「富野由悠季というクリエイターが辿り着いた境地」を確かめる為の作品であると思ってる。 -- 名無しさん (2017-11-12 02:16:33)
- カミーユとファが宇宙で抱擁するシーンは、F91のシーブックとセシリーの姿を彷彿とさせるシーンでしたね。もしこのシーンでF91の主題歌が流れたら、ファンは感涙していたでしょうね。 -- 名無しさん (2019-09-14 15:31:30)
- ↑ 確かにそれはいいかもと思うが個人的にETERNALWINDも君を見つめてもシーブックとセシリーのための曲って感じがするんだよな。 -- 名無しさん (2019-09-16 00:06:43)
- 逆シャアには繋がるというが、カミーユが健やかに生還したのを知ってもなおシャアの絶望は埋まらなかったのだろうか、新訳ZZに相当する部分が逆にもっと酷くなってたとか? -- 名無しさん (2021-01-29 00:00:59)
- ↑7 終盤の、コロニーレーザー内の戦闘での、テカテカしたジ・Oはとてもよかった。 -- 名無しさん (2021-07-17 13:34:03)
- なんなら今からでも種リマスター版みたいに旧作画を描き直したバージョン作ってもいい気がする。なんか逆転現象起きそうな気がしないでもないけど -- 名無しさん (2023-11-20 21:47:48)
- 新旧作画が入り混じってムラがあるのは確かなんだが、完全新規じゃないおかげでものすごくZを見てる感じがするのも事実なんだよね。こうじゃなきゃ出ない味があるし、エヴァの新劇が同じ方法から始めて作品にケリをつけようとしたのは分かるなぁと思う -- 名無しさん (2024-08-28 17:00:07)
最終更新:2024年10月22日 14:26