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雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪イギリス国制論(上)≫

今回はバジョット氏著の「イギリス国制論」の上巻を要約します。バジョットは19世紀のジャーナリストでビクトリア女王治世の大英帝国と呼ばれた時代のイギリスの政治システムを題材に、立憲君主制・議院内閣制の在り方を論じるという内容になっています。上巻は内閣・君主・貴族院庶民院に関する著者の論を取り扱います。

 

「イギリス国制論(上)」

イギリス国制論 上/バジョット/遠山隆淑 : bk-4003412222 : bookfanプレミアム - 通販 - Yahoo!ショッピング

■ジャンル:政治

■読破難易度:低(非常に平易な言葉で記述がされており、解説も豊富に記述されています。前知識不要で読むことが出来る内容となっています。)

■対象者:・議院内閣制・立憲君主制について理解を深めたい方

     ・19世紀のイギリス情勢について興味関心のある方

     ・政治・法の概念について体系的に学びたい方

 

≪参考文献≫

■代議制統治論

■要約≪代議制統治論≫ - 雑感

 

■職業としての政治

■要約≪職業としての政治≫ - 雑感

 

■完訳統治二論

■要約≪完訳統治二論 前編≫ - 雑感

■要約≪完訳統治二論 後編≫ - 雑感

 

■近代世界システム

■要約≪近代世界システムⅣ前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪近代世界システムⅣ後編≫ - 雑感

 

【要約】

■内閣

・イギリスは中世以来厳格に立法・行政・司法の三権が分立、相互不可侵の原則を守ってきたとされます。主権を行使するには三権全ての合意が必要として抑制と淘汰・吟味作用をかけるという合議を重視したシステムが議会制民主主義です。君主制・貴族制・民主制の3つの性質をブレンドした状態がイギリスの三権の状態とされます。イギリス国制には国民の崇敬の念を掻き立てる尊厳的部分と実際に統治をおこなう実効的部分の2つの性質を持ち合わせているとされます。国の政治は忠誠心や尊厳を勝ち取り、それをもって人々を動かしていくという性質を持ちます。実行・結果が大事だという論は立ちますが、その力の行使の正当性を決めるのは受け手であり、それ故に政治機構には尊厳が求められるのです。

・イギリスは立法権と行政権が内閣によりほぼ密接に結合した状態での統治をしているのが特徴であり、優位性であるとされます。貴族院と呼ばれる上院は少数の名目的なかつてのローマ帝国元老院議員のようなお飾り要素があり、実態は国民選出による庶民院(下院)にあり、下院優越の法則により統治されるという仕組みが機能を強めています。三権分立・相互不可侵は政治システムの前提でありますが、それでも立法と行政の綿密な連携が効果的に政治を機能させるためのエッセンスになると著者は主張します。政治的知性・基礎教育を充実させることと効果的な議論が出来るように要点を掻い摘むこと、演説のスピーチを政治家が磨くことなどのたゆまない努力により、建設的な議会制民主主義は機能するとされます。

 

■君主

・政治の実効的部分庶民院が担う中で、君主(国家元首)は政治の尊厳的部分を担います。特にイギリスにおいては血筋に由来する尊厳により人を魅了し、イギリス国教会がその尊厳を補完・促進するという形式を長らく採用しています。君主制はその統治の源泉のわかりやすさが特徴であり、想像力を必要としないという点も長らく政治のシステムとして有力視されてきました。

・議院内閣制において君主は道徳的指導者の役割を中心として、外交政策・法令承認などの一部の政治的な役割を担う限定的な役割に専念してもらうという形式が主流となります。具体的には君主は内閣が決める政治的な判断に対しての奨励・警告に範囲を限定し、実態的な責任・抑制力を持たないという具合です。政治的な力の範囲を限定するのは国王が抑制力を強めると議院内閣制は崩壊し、専制政治になるリスクがあるからです。また、君主がアドバイザリーとしてバリューを発揮できているケースはイギリス王朝においては少なく、せいぜいビクトリア女王くらいだろうというのが著者の評論です。

 

貴族院

・政治の実効的部分庶民院が担う場面において、貴族院は君主同様、政治の尊厳的部分を担い、かつじっくり論証するべき政治的テーマの対処庶民院の政治原案を吟味・修正・補完する役割が中心であったとされます。貴族院は旧ローマ帝国元老院のような家系による名誉や尊厳の影響力を尊重した中でもたらされた政治的な仕組とされます。貴族院存在することそのものが革命因子がないということの象徴であり、逆に革命を阻止したり、国民の意向を抑止・受けとめ出来る訳でもないともされます。完璧な下院(庶民院)が存在するのであれば上院(貴族院)は不要であるというのが本来の議院内閣制の本質であると著者は表現します。

・一方で、貴族院は生活や人生の課題意識や逼迫度が低い議員で構成されてしまう宿命にあるので、白熱した議論等の類にはマッチしないともされます。義務感の不足・政治的無関心などはこの時代においても貴族院の大きな問題として指摘されています。当代におけるイギリスの貴族院の構成員の大半は地主であり、同質的な視点からしか政治的意思決定・審議が出来ないことによる実効性の不確かさが一番の問題であると著者は痛烈に批判します。また、貴族院議員の生まれながらにある程度の生活と名誉が保証されているという出生故に、政治的な実務能力・知性のダウンサイドリスクは低いものの、卓越した問題解決能力・リーダーシップを開発する機会、必要性がないことによる凡庸さからは避けて通れないとも指摘をしています。

 

庶民院

庶民院は議院内閣制において下院とも評され、下院優越の法則が働く政治の実効的な役割を強く持つ院です。庶民院の役割は首相選出機能・国民の意思を表明する機能・教育機能・国王への報告機能・立法機能・財政機能の6つとされます。

・議会で特定のテーマについて議論・お披露目するプロセスそのものを通じて、議員と国民へ当該テーマについて思考を深めるきっかけをもたらします。思想と言論の自由により、様々な視点がもちこまれ、総合的に意思決定をするというプロセスを経る自由主義国家が政治的に強いと認識されるに至るのはこの頃からとされます。国民への課税・財政のマネジメントという特有の視点を持ってしか起案のインセンティブの働かな財務大臣金融庁長官のような立ち位置に政治の要職を置く、独立性を保つというのが政治のセオリーとされます。外交国防に関しても国の競争力にダイレクトにヒットするので重要ポストとして閣僚を任用されてきました。

・議院内閣制および庶民院(下院)の優れた点はいつでも議会を解散できるという緊張感のある状態と政治的な意思決定をある程度効果的に処理するために政党政治という思想の系統をわけて、どの思想にベットするかという形の選挙をとることで淘汰・選別をもたらす点にあるとされます。

・尚、本書記述の時代は自由主義資本主義が発展拡大している過渡期であり、制限選挙から普通選挙に移行していくべきかどうかが政治的にホットなテーマでした。選挙制度の論点は対象に女性を含むかどうか特権階級の影響力をどの程度織り込むかということにあったとされます。階級意識と階級間の生産性や能力の差が著しいという時代の中での妥当解がこの時代は採用されており、資本主義経済は地主などの中産階級の経済的・政治的な影響力を拡大させるという作用をもたらしたとされます。

 

【所感】

・時代背景故に、アメリカの大統領制・フランスの帝政との比較、J.S.ミルの政治観への言及、普通選挙制度・制限選挙の論点や資本主義経済拡大局面に伴う中産階級台頭の影響力などに関しての言及もあり、歴史書物としても非常に面白く読むことが出来ました。

・日本も議院内閣制を取り扱うということで本書の政治に関するエッセンスは日本人の自分にも役に立つだろうという軽い気持ちで読み始めましたが、近現代の古典勉強としての知的好奇心を刺激される面白さは勿論、ヨーロッパの政治システムの歴史についても理解が深まり非常に面白く読むことが出来ました。

 

以上となります!

■要約≪リーンエンタープライズ≫

今回はジェズ・ハンブル・ジョアンヌ・モレスキー・バリー・オライリー氏三名による共著「リーンエンタープライズを要約していきます。EricRiesシリーズエディタの1冊であり、既存企業にリーンスタートアップの手法を適応することで新規事業創出・事業のトランスフォーメーションをどのように行っていくことが出来るかについて体系化した本です。アジャイル開発やプロジェクトマネジメント・サービスデザインのエッセンスに言及しながら、どのように仮説検証型組織へ進化・適応していくかという点にフォーカスして記述がなされています。

 

「リーンエンタープライズ

リーンエンタープライズ ―イノベーションを実現する創発的な組織づくり (THE LEAN SERIES) | ジェズ・ハンブル, ジョアンヌ ...

■ジャンル:開発管理・組織マネジメント

■読破難易度:中(当該分野の一冊目として読むことはオススメしないです。横文字や翻訳書独特の記述に少し抵抗が起こるかもしれません。アジャイル開発もしくはプロダクトマネジメントの本を1冊読んだ上で読むことをオススメします。)

■対象者:・仮説検証型の組織・プロジェクトをリードする方全般

     ・リーンスタートアップ・DXのエッセンスについて理解を深めたい方

     ・組織変革の力学に興味関心のある方

 

≪参考文献≫

■リーン顧客開発

■要約≪リーン顧客開発≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

■LEAN UX

■要約≪LEAN UX アジャイルなチームによるプロダクト開発≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

■LEAN ANALYTICS

■要約≪LEAN ANALYTICS前編≫ - 雑感

■要約≪LEAN ANALYTICS後編≫ - 雑感

 

■TRANSFORMED

■要約≪TRANSFORMED 前編≫ - 雑感

■要約≪TRANSFORMED 後編≫ - 雑感

 

■サービスデザインの実践

■要約≪サービスデザインの実践 前編≫ - 雑感

■要約≪サービスデザインの実践 後編≫ - 雑感

 

アジャイルサムライ

■要約≪アジャイルサムライ≫ - 雑感

 

【要約】

■指向

・企業は株式会社であるので、企業価値向上と継続的な収益はコミットメントですが、その為の道筋として顧客を開発して価値を高めていく継続的な営みは絶対条件となり、その為のプロダクトマネジメント変革リーダーシップはつきものです。具体的には戦略と文化をマネジメントして、不確実性を解き、組織のアジリティを高め、アウトカム最大化を目指していくというものであり、両輪を回すバランスが欠かせないとされます。

・システムが業務を規定するという前提はあれども、戦略や組織文化を健全なものにしないことには仮説検証型組織の構築や高い顧客価値の追求はなしえないと本書では主張されます。テイラーの科学的管理法は機械のように分業して安定化することで高い生産性を発揮するというものであり、トヨタ生産方式は信頼ある相互連携の組織文化構築をミソとしています。アジャイル開発・リーン思考は製造業由来のトヨタ生産方式の改善・継続的な学習サイクルをソフトウェアの世界に適応した原理となります。

・テック企業にはライフサイクルに応じてビジネスモデルの探索活用を行き来する柔軟性が求められ、マネジメント手法・価値基準の異なるものを並列で走らせる必要が出てきます。オペレーショナルエクセレンス追求の型化・スケーラビリティを目指す局面と仮説検証・自己組織化・エフェクチュアルな態度を推奨する局面といった具合に、価値基準やケイパビリティが全然異なるものを運用していく必要があります。

・探索フェーズでは価値仮説成長仮説を探索していくことになります。価値仮説は「顧客は誰で何に価値を見いだすか?」という問いに対する解像度UPに力点を置くことになり、成長仮説は「顧客はどこにたくさんいて、どのような所でマネタイズポイントがあるか?」という問いに対する解像度およびソリューションの磨きこみが重点項目となります。顧客インサイトに共感すること・計測要件の定義・大きな市場およびジョブを抑えることなどが実行上のポイントとなります。重要仮説を確かめるにはMVPを作り、仮説検証・探索データの収集をしていくことが大切になり、構築-計測-学習ループを回していくことが推奨されます。

 

■探索

不確実性を減らす学習を進めること・リスク回避の仕組みを整備すること・財務リスクを最小化しながら学習、探索できる意思決定をし続けることなどがリーン形式でのディスカバリープロセスにおける望ましい倫理観です。仮説検証は開発投資コストがつきものであるので、オプションの期待収益や戦略整合性を示して承認をステークホルダーから勝ち取るというシナリオとセットでやられるものです。

・探索フェーズにおいてはPMF成立を見据えた価値定義顧客開発プロダクトマーケティングなどを並列でアジェンダ管理していくことが必要です。リーンキャンバスは様々な観点を網羅した可視化ツールとして探索フェーズに適していると本書では推奨されます。具体的な項目は市場規模・顧客セグメント・価値・解決策のコア・コスト・競合などで、これらを言語化・可視化していく営みが組織学習・探索のカギになります。

・ユーザーインサイトを得ることに時間を割くことが探索フェーズにおいて大切な営みであり、顧客に直接会う観察するデータから起きていることを計測、推察するなども並列で行うことが必要になります。また、大前提のビジネスとしての顧客価値開発、探索なので、市場規模の選定・ビジネスとしての収益性・成長性・競合優位性なども定量的に推定しておかないと極論仮説検証の費用対効果が合わないということにもなりかねないので要注意とされます。適切な問題を解くことに執着せよと本書では何度も言及されます。

 

■活用

・運用と開発を連動させ、顧客フィードバック・高速軌道修正し続けることでUXとビジネス指標を高め続ける・コラボレーション文化を形成するなどが事業開発の成功のカギを握ります。顧客価値を正しく定義・計測・費用対効果を見積もる、優先順位付けするということを通じてのみ継続的改善は出来て、これは大きな組織文化と評価制度の変革とセットになります。その実行プロセスにおいて、テストの自動化・成功失敗要件の定義・定量的かつ継続的な分析、LT短縮に価値を置く・OKR・KPIツリーの活用を通じた横断型組織によるコトマネジメントなどのソリューションが有効になります。

・学習による不確実性の削減と戦略のアップデートはフォーキャストですが、一定の期間や状態をバックキャストな形で進めていくこととの視点の行き来、両立がディスカバリーとデリバリーの効果を高めます。学習と改善における価値基準を決めて効果的に振り返り、アウトカムに繋げていくということに拘る・横断型組織のリーダーシップが大切になります。その為、バックログマネジメント・ユーザーストーリーマッピングのような手法およびリーンキャンバスの問いに対する言語化・可視化といったプロセス・お作法遵守が大事になります。

 

【所感】

・2016年出版ということもあり、以後急速に体系化・整備が進んだプロダクトマネジメントの技法やベストプラクティスに通じる内容が非常に多く、これまで局所的に学んできた知識の整理になるような読書体験でした。コトマネジメントをどのようにしていくか・組織文化の変容、そこに付随する評価制度・指標設計を如何に変えるかという点に力点を割くことが大事ということがよくわかります。だからこそ、経営層を始めとしたリーダー主導の変革・オーナーシップを刺激する・リーダーシップ開発・継続的なメンタリングなどの地道な活動が成功のカギを握るということなのだろうと再認識させられる内容でした。

・また本書を通じて、イノベーションサイクルの高速化・ビジネス環境の複雑化により、企業の寿命と新陳代謝が劇的に変化する局面を2010年代から世界的にむかえており、継続的なイノベーション・変化適応できる組織を作ることができるかどうかが企業の命運を分ける時代になったということを強く感じさせられる内容でした。エフェクチュエーションOODAループリーンアジャイルシステム思考などは全て連動した思想であるという理解が深まりました。顧客を開発する・価値を高めるということが中心であり、UXデザインやソフトウェア・マルチプロダクトデザインなどでビジネス成果を高めていく思想が重要性を増していくという時代の潮流が形成された背景についても深く考えるきっかけになった自分にとってタイムリーな内容の本でした。

 

以上となります!

■要約≪貧困のない世界を創る≫

 

今回はムハマド・ユヌス氏著の「貧困のない世界を創る」を要約します。ムハマド・ユヌスは2006年度ノーベル平和賞受賞者であり、バングラデシュグラミン銀行の総裁としてソーシャル・ビジネスのスキーム・概念を体系化したパイオニアです。自分自身が大学のゼミの専攻テーマが「震災復興とソーシャル・ビジネス」であったこともあり、かつてからエッセンスは理解していましたが改めて企業の社会的な意義を考えるきっかけにしたいと思いこのタイミングで本書を読んでみました。

 

「貧困のない世界を創る」

貧困のない世界を創る ムハマド・ユヌス 単行本 B:良好 G0460B :9784152089441:創育の森 - 通販 - Yahoo!ショッピング

■ジャンル:国際開発・経済学

■読破難易度:低(資本主義経済・ビジネスの仕組みといった一般教養レベルがわかれば十分理解できるような構成となっております。国際協力国際開発もしくはビジネスの社会的意義に興味関心があれば面白く読みこめる内容です。)

■対象者:・ソーシャル・ビジネスに興味関心のある方

     ・貧困の構造について理解を深めたい方

     ・ビジネスの社会的な意義・持続性について理解を深めたい方

 

≪参考文献≫

■途上国の人々との話し方 国際協力メタファシリテーションの手法

■要約≪途上国の人々との話し方 国際協力メタファシリテーションの手法≫ - 雑感

 

【要約】

■本書のスタンス・課題設定の範囲

グラミン銀行バングラデシュマイクロクレジットと呼ばれる担保不要の少額の借り入れの仕組みをさし、これを活用して自立的にビジネスを起こしていく支援をするというものです。貧困を解決するには自ら営むビジネス機会・雇用創出が大切であるということがムハマド・ユヌスの考えであり、寄付金依存のNPOや公共セクターでは抜本的に問題を解決できず、資本主義経済・市場競争原理を効果的に活用するのが望ましいとされます。外的な供給支援依存では抜本的な問題解決にはならず、自律自走の支援をしていくということを仕組みで提供して資本主義市場の原理にのっけていくのが良いというのがソーシャル・ビジネスおよびムハマド・ユヌス氏の根幹を為す考え方となります。

・資本主義経済は物質的に豊かな社会を形成し、国際分業や雇用創出などのメリットをもたらした一方で、富は社会の一部分に集約しており貧困の問題は抜本的には解決していないという状態なのは間違いないとされます。社会問題は複雑化している中で、政府だけで問題解決できない場合、自由市場の原理を活用して民間セクターが解決を試みる必要性が増すという具合です。NPONGO・財団などはその資金制約や影響度合いの問題から出来ることには限りがあるというのがムハマド・ユヌスの主張です。資金調達工数と持続性という問題を抱えるからです。また、国際機関や世界銀行も指標達成の為の行動や官僚的な振る舞いが出てしまう側面は否めないと指摘します。

・本書分野のパイオニア1850年代にイギリスで協同組合という概念を構築して社会保障を資本主義市場原理を通じて成しえたロバート・オーウェンとされます。貧困問題を解決するには搾取状態ではない権利や資源を持てる状態になるための移行支援をしていく、自律化をゴールとしていくということになり、ビジネスサイドは貸し倒れにならないようにすることが基本の考え方となるとされます。

 

グラミン銀行マイクロクレジット革命

・貧困問題を解決するには搾取状態の脱却、被支援状態の脱却、資本主義経済にて自立的に活動していくプロセスに参画させるようオンボーディング支援していくというのが基本の出口戦略となります。グラミン銀行少額の資金を融資、チーム連帯責任にて返済責任を促す、チームの定例実施による可視化・修正作用促進などをしていくという形で貸し倒れリスクを最小化した形での金融ビジネスを展開しました。資金調達の目的とプランを明確にして定期レポート・改善を促す・他者責任を伴うという形で問題を解いていく(参画段階で選別する)ということがソーシャル・ビジネスのミソです。従来型の銀行はビジネスモデル上、低信用のセグメントの市場参画を受け付けないということをしており、それ故の経済的な自立が出来ない超貧困層があるということをムハマド・ユヌスは課題設定しています。

・公共セクターで補足できないセグメントやアジェンダに対してソーシャル・ビジネスが価値を発揮できることもあります。ムハマド・ユヌスのスタンスは必要性の深刻度合いや本人が改善する気力をお持ちかどうかなどにおいて優先順位付け・判断をしているということがわかります。グラミングループは銀行に加えて、超貧困層の雇用創出と製品・サービス供給を目的とした完全自立型の運営をするビジネスを複数展開しています。教育やインフラなどの生活水準の向上・労働生産性向上への投資、出口は労働参画による自立自走支援です。

 

■合弁ソーシャル・ビジネスの社会的なインパク

グラミン・ダノンはダノングループとの合弁ソーシャル・ビジネスであり、貧困層向けに栄養を供給するために現地の雇用を創出して市場からお金をもらうことで自律的に事業を運営、事業そのものが社会課題解決になり雇用創出という形で貧困層の雇用創出・栄養供給・生産人口参画支援にも寄与するというからくりです。物流・販売コストを狭めた超近接生産~流通という形式をとることで(現地にて工場および販売人材の雇用を副次的に生み出した)栄養価が高く、低単価というヨーグルトビジネスが可能になりました。

・グラミン・ダノンは物流冷却設備などの国の制約条件を前提においてヨーグルトビジネスを行う必要があり、牛の供給・販売網などに現地のビジネスを取り込むことで持続性と雇用貢献を狙うようにビジネスプランを描いたとされます。ソーシャル・ビジネスはその事業の性質上、マネタイズと供給制約条件の壁を乗り越える必要があるとされており、それを織り込んだ青写真を描く・戦略を形成する・資金調達、雇用創出を怠らないということが大切です。ロマンとそろばんの視点を行き来すること・利害関係や専門性の異なる関係者と合意形成をするリーダーシップなどが実現には欠かせないです。

 

【所感】

・均衡是正や貧困セグメントの雇用や資金の創出ということにフォーカスすることで経済活動を活性化することでビジネスとして成立させる、社会的な貢献をする(本質的な貧困問題解決は市場の競争原理を用いた自律・淘汰作用なので)というのがソーシャル・ビジネスの具体的な活用方法になるということがよく理解出来ました。ソーシャル・ビジネスは自己持続型であり、営利ではなく問題解決し続けることそのものに重きを置くという考え方であり、寄付金頼り資金調達に奔走するNPO/NGOや官僚型組織、目的に縛られる国際機関とは異なるやり方になります。

・企業の社会的な意義・顧客価値などが叫ばれる中で、それをビジネスとして問題解決することに時間を割くか?・持続性があるか?ということは倫理観として持ち合わせることが非常に大切であるというのが個人的な心情です。そのため、本書で展開されるムハマド・ユヌス氏の主張は極めて納得感がありました。供給業者が我々の営みは価値があるよね・社会的に意味がありそう・手触り感があるといった想い先行・偏重の状態でのビジネスやNPO/NGOは軽率な判断やその影響力を度外視した振る舞いを招きかねず、それはむしろ何もしないことよりも無神経であると感じており、だからこそシビアに資本主義市場経済の原理を用いて問題解決と持続性の両立を描くということに真剣に対峙する、強いエネルギーを割くということが求められるよなと考えさせられた次第でした。

 

以上となります!

■要約≪ローマ人の物語20≫

 

今回は塩野七生氏のローマ人の物語を要約していきます。20は「悪名高き皇帝たち」の四巻です。五代目ローマ皇帝ネロ(紀元54~68年)の14年間の統治をまとめた内容となっております。ユリウス・クラウディウス朝最後の皇帝であり、歴史上ではローマ皇帝至上トップクラスの愚かな皇帝と評されるネロの政治に関して描写されています。

 

ローマ人の物語20」

ローマ人の物語 (20) 悪名高き皇帝たち(4) (新潮文庫) | 塩野 七生 |本 | 通販 | Amazon

■ジャンル:世界史・歴史小説

■読破難易度:低(非常によみやすい文体で書かれており、一部物語調なのでサクサク読めます。世界史の教科書や地図を手元に置いて読むとわかりやすくなります。)

■対象者:・ヨーロッパの歴史について興味関心のある方

     ・ローマの栄枯盛衰の変遷を詳しく理解したい方

 

ローマ人の物語17・18・19(悪名高き皇帝たち)は下記≫

■要約≪ローマ人の物語17≫ - 雑感

■要約≪ローマ人の物語18≫ - 雑感

■要約≪ローマ人の物語19≫ - 雑感

 

ローマ人の物語14・15・16(パクス・ロマーナ)は下記≫

■要約≪ローマ人の物語14≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪ローマ人の物語15≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪ローマ人の物語16≫ - 雑感

 

≪参考文献≫

■ローマ人盛衰原因論

■要約≪ローマ人盛衰原因論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■皇帝ネロの統治体制

・四代目ローマ皇帝クラウディウスによりローマ帝国の統治システムの基盤が再構築され、クラウディウス暗殺以後に16歳でローマ皇帝の座についたネロは近衛軍団長官ブルス・演説や政治思想担当としての哲学者セネカが支えるという形で統治が進みます。元老院中心の統治体制に回帰するような所信表明演説を展開し、司法権の独立ティベリウスクラウディウスは積極的に裁判に参加した)・立法の権利を元老院に戻すなどを宣言しました。

・また、クラウディウス時代に肥大化した解放奴隷問題・秘書官システムの廃止などを手掛け、経済面では元老院属州・皇帝属州と分けていた国庫を一本化するなどのシステムの再編を手がけました。

 

外交問題

・ネロ統治の時代にはパルティア・アルメニア王国問題ブリタニア戦線の2つが軍事・外交の重要論点となりました。

ローマ帝国の同盟関係にあるアルメニア王国(ペルシア系)に対してパルティアが侵略・王家にパルティアの血筋を据えるなどの対応の処理の必要に迫られました。ネロはシリア総督コルブロに問題解決を委ねる裁量権を渡し、コルブロはパルティアの息の根のかかった王家をアルメニアに据える代わりに堂々と進軍して周辺領土を荒し、ローマ皇帝に戴冠を直接受けるという形式にて現路線の統治を継続するという方策を採用しました。アルメニア王はローマに直接赴いて陸路で旅をしたうえで戴冠を受けるというプロセスを経ることで、パルティア王家の息の根がかかったアルメニア王国も実質的にはローマに主従関係にあるという大義名分を形成することに成功しました。これまでの外交方針を180度転換することで、以後トラヤヌスローマ皇帝を務める50年後までローマ帝国のパルティア戦線は平穏を迎えることとなります。

・一方、クラウディウス時代からじっくり推し進めていたブリタニア遠征においては現地での反乱が発生してしまい、(そもそものブリタニア遠征がカエサルガリア遠征のように、スピード感をもって進めて制圧した後に現地統合を漸進的に行うという王道に反したプロセス)7万のローマ人が虐殺される惨劇が発生しました。総督スヴェトニウスの見事な兵裁きにより、反乱兵8万を1万の兵力で制圧することに成功し、結果的に統治体制を改め、イングランドスコットランドローマ帝国の内部に組み込まれ、現地の司祭などはアイルランドに逃亡する形で帝国領土が拡大することとなりました。尚、イギリス・アイルランドの対比はカトリックプロテスタントの対比以前に、ローマ帝国・非ローマ帝国という差分が発生していたと著者は評します。

 

■ネロの愚行・失脚

・母親のアグリッピーナ・小アグリッピーナの実の息子ブリタニクス・政略結婚の妻オクタヴィアを死に至らしめ、首都ローマを襲った火災の責の濡れ衣が自分にもたらされると当時少数派であったキリスト教に責任転嫁し集団虐殺を命じ、ネロ暗殺未遂計画首謀者としてかつての自分を支えた哲学者セネカシリア総督コルブロ自死を命じるなど支離滅裂さがネロにあったのは事実です。また、水道インフラを整備したローマの池に水から飛び込み泳いで体調不良になる・ギリシア文化に傾倒し、自ら詞を書き歌を歌う、建築をギリシア仕様に変更しようとする、歌や詩の修行としてギリシア旅行に長期間赴くなど若さと自己制御の乏しさ故の謎の行動もたくさんありました。

・結果的に、軍団長ガルバがスペインで軍を率いて蜂起したことを受け、ネロの近衛軍団を率いるティゲリヌスは逃亡してしまい、元老院によりネロは国家の敵であると認める宣告が可決されてしまいます。ローマ帝政は軍団が忠誠宣誓をするかどうかという紙一重の統治体制です。紀元68年、統治14年にして30歳のネロは自死する形で五代目ローマ皇帝の役目を終えます。ユリウス・クラウディウス朝の血筋が途絶えた後に、以後約1年半の混乱期にローマ帝国は突入します。

 

【所感】

・ネロは歴史的な通説通り愚行や寄行が多い皇帝ではありますが、非常に人間味があり特に一部の政治的な意思決定(インフラ整備・軍事)においては歴代ローマ皇帝の中でもトップクラスの偉業も無しえている皇帝であるという印象を持ちました。本書で度々引用される当代を扱ったタキトゥス年代記と著者の解釈・主張の差分が非常に面白くこちらも読んでみようと思った次第でした。

・君主政・民主政・共和政・専制など様々な政治形態・統治システムの善し悪しを比較検討、考察するということに歴史を学ぶ意味があると感じており、議院内閣制や立憲君主制大統領制古代ローマギリシア等の試行錯誤の故に結論解として現代の政治システムとして残ったのだろうということを考えさせられる内容でした。

 

以上となります!

■要約≪プロフェッショナルプロダクトオーナー≫

 

今回はDON・MCGREAL/RALPH・JOCHAM氏共著の「プロフェッショナルプロダクトオーナー」を要約していきます。プロダクトマネージャーの主にリーダー層を想定した必要な能力・経験・望ましい振る舞いについて体系的に論じた本であり、プロダクトデリバリーとディスカバリーの両立、特に開発工程におけるスクラムをどのように扱うかということに関して重点を置いて記述されております。

 

「プロフェッショナルプロダクトオーナー」

プロフェッショナルプロダクトオーナー - 丸善出版 理工・医学・人文社会科学の専門書出版社

■ジャンル:開発管理・組織マネジメント

■読破難易度:中(アジャイル開発・プロダクトマネジメント・プロジェクトマネジメントの基礎知識がある前提に論が展開されます。前知識さえあれば既知の内容になり、平易な言葉で記述されているため読みやすいです)

■対象者:・プロダクトマネジメント・エンジニアリングマネジメントに従事する方

     ・スクラム/アジャイル開発型の開発、仮説検証に従事する方

     ・プロダクト領域におけるキャリアラダーに興味関心のある方

 

※参考文献※

■プロダクトマネージャーのしごと

■要約≪プロダクトマネージャーのしごと≫ - 雑感

 

■INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント

■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 前編≫ - 雑感

■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 後編≫ - 雑感

 

アジャイルサムライ

■要約≪アジャイルサムライ≫ - 雑感

 

【要約】

■プロダクトオーナーの役割について

・本書ではVision・Vale・Validation(検証)の3つに関して責任を持ち成果をあげるのがプロダクトオーナーの役割と定義されます。プロダクトライフサイクルに即した適切な戦略・顧客価値を推進していくためには高いオーナーシップの発揮とスクラムによるマネジメントが欠かせないとされます。本書はプロダクトマネジメントフレームワークを用いて顧客価値最大化とコトマネジメント・プロダクト戦略を遂行していくにあたってのスクラムによるマネジメントの手法を体系化した内容となっており、特にプロダクトリーダーを想定した内容になります。

 

■戦略

・予算・期間制約がある中でスコープを区切り予定調和に収束させることが期待されるプロジェクトマネジメントと対比的にアウトカムを高め、不確実性を解いていく営みを絶やさないことがポイントになるのがプロダクトマネジメントです。加えて、プロダクトオーナーはデザインやプロダクト戦略・マーケティング・エンジニアリングなどにも染み出し、ステークホルダーと共通目線で会話をする・合意形成する役割を持ちます。

・エンジニアリングは顧客価値を満たす手段ですが、誰のどんな価値を満たすのか・満たしているとどのように判断できるかという要求・要件定義、仮説検証を高速に回して適切な方向に拡張・改善していくことをリードするのがプロダクトマネージャーの重要な役割になります。仮説検証型の開発におけるスクラムの基本思想は経験主義と呼ばれるエフェクチュエーションのような不確実性を解いていくプロセスに重きを置く価値観と自己組織化(分散型オーナーシップ)の2つが思想の根幹を成します。プロダクトマネージャーはエンジニアリング組織とビジネスサイドの折衝をしながら戦略推進をしていく役割になります。時に投資を仰いだり、リーダーシップを発揮して優先順位付けする起業家や事業責任者のような振る舞いも必要になります。

・プロダクトオーナーは開発マネジメントとしてはスプリントの期間を定め、リリース・スプリントレトロスペクティブによりフィードバックを起点とした改善・顧客への共感をプロダクト開発チームに浸透させ、素早く正確に学習・修正していくことをリードすることが大切になります。プロダクト戦略やプロダクトビジョンを明確に言語化・アップデートし続けて、ステークホルダーと合意形成・同じ目線で会話、要求コントロールし続けることを保つために能動的に外界、環境に働きかけるというオーナーシップがプロダクトリーダーシップを遂行するための基本要件となります。

・開発と仮説検証・顧客価値探索の視点を行き来、コト・コミュニケーションマネジメントしていくことがバリューを発揮する為に大切になります。顧客の満足度×ニーズの充足度という二軸で品質を規定し、MVPを作る狩野モデルアジャイル開発の大切な概念です。狩野モデルでは当たり前品質・顧客我慢・顧客満足などの状態に基づいた判断を推奨します。具体的にはMINラインを定め、顧客価値をどの方向に拡張するかを探索するためのABテストやジャーニーマップを用いたイメージの言語化・検証設計をしていくということを通じてプロダクト価値やライフサイクル・PLに責任を持つロールを担うことがプロダクトリーダーのコアバリューとなります。構築計測学習の3つの観点でコトマネジメントをしていきプロダクトグロースを目指すリーン・スタートアップのフレームにて思考を整理、コトを進めることが本書では推奨されます。

 

スクラム

要件定義・要求明確化・経営者、エンドユーザーの深いコミットメント・顧客への継続的な共感アジャイル開発の成功のカギを握るとされます。リスクと不確実性の当たりをつけて、コントロール出来る範囲でコミットメント・軌道修正していくという態度をもってスコープ定義・品質交渉する・コントロールするなどを判断していくことが欠かせなく、マネジメントの生産性が成功のカギを握ります。

スクラムアジャイル開発はあくまで組織文化・フレームワークであり、自己組織化と仮説検証の精度を高く保つための工夫の妙でしかないのです。スクラム透明性・検査・適応の3つを基本原理として何を学んだかということを起点に仮説や結論をアップデートしていく経験主義を採用します。タスクをユーザーストーリーバックログで分解し、スプリント(期間)を設けて遂行、定期レビュー(スプリントレトロスペクティブ・顧客フィードバック)を経て改善していくというオーナーシップに重きを置く開発体制になります。スクラムのミソは可視化・共有化・構造化にあるとされます。

ファシリテーションコーチング・関係各所との交渉・協業リーダーシップ・戦略的思考・ドキュメンテーションスキルなどがプロダクトオーナーの具体的なスキルセットとなります。タスク間の因果関係・階層関係・完了の定義などを記述、整理、対話していくことが欠かせません。また、分散型組織マネジメントをするにはスプリント毎に扱うバックログの細分化・優先順位付け完了基準を明確にして合意形成・運用し続けることにあるとされ、手順書や論点・納期設定などを自ら書き出してもらい、見積もりの差分を埋める・自立してもらうなどの工夫がスクラムマスターには必要になります。経験主義的に素早く効果的に学習することで、不確実性を下げていくというスタンスで物事を成しえていくことがスクラムの成功要件に寄与するとされます。

 

■戦術

・完成要件の定義は技術的な側面とドメインの側面の二方向から判断されるべきであり、ビジネスサイドの折衝はプロダクトオーナースクラムマスターテックリードなどが担うことが多いです。成果指標やVoCで判断することに加えて、費用対効果や納期などのQCD観点でも現在の営みを点検するというシビアな意思決定を遂行していくことが組織のケイパビリティとアウトカムを最大化するのです。プロダクトオーナーとしては対話・共通認識を揃え続けることなどのコミュニケーション設計コトの戦略的な意思決定を組織に宿し続けることメンバーのメンタリング自己組織化を促す問いと振り返りの設計がポイントとされます。また、在庫の無駄や手戻りの無駄などが起きないように予見することや不確実性、論点のあたりをつけるように先回りする営みが欠かせないです。

・プロダクトはリリースして顧客に価値訴求・フィードバック獲得・ビジネス成果計測してなんぼであり、小さくとも確実に完了させていくことがミソになります。スプリント毎に開発可能なインクリメント・組織ケーパの指標たるベロシティの可視化およびユーザーストーリーマッピングの参照ということをしながらコトを進めていくことも必要になります。優先順位付け・部分の戦略やロードマップにおける位置づけの把握、仮説検証していくということをコミュニケーションすることで開発生産性をマネジメントすることはプロダクトオーナーの絶対感覚とされます。スプリント毎のベロシティを高めるためにスプリントレトロスペクティブを行い、メンタリングをすることで正しい方向にエンジニアリングフォースを割くことやプランニングポーカーによる工数・不確実性見立ての精度を高める、ペアプロによる技術支援なども具体的な打ち手になります。ペルソナ・ジャーニーマップ・ワークフローの可視化・図示化することは何を目指して開発しているのか?ということを見失わないためのコミュニケーションツールとしても大切になります。

 

【所感】

アジャイル開発とプロダクトマネジメントの基礎理論をまとめ、リーダーシップを発揮するためにどのようなスキルスタンス獲得をすれば良いか?プロダクトデリバリーとプロダクトディスカバリーの両立・橋渡しの為にはどのようにコトを組み立てれば良いか?という視点におけるエッセンスの詰まった内容でこれまで学んできた理論・知識が有機的に結合していく感覚を得る読書体験でした。

・継続的な組織のメンタリングとコトの優先順位付け、顧客価値とビジネス成果の連動を意識しながらエンジニアリングをリードするという感覚・オーナーシップとベースの凄まじい処理能力・知的好奇心を必要とするというプロダクトリーダーシップのロールの解像度が深まった感覚でした。ホリスティックな視点を如何なる時も絶やさず、専門領域や視座視界を飛び越えていくコミュニケーション・アウトプット・アウトカムをどれだけ日々意識して実践していけるかということの積み重ねだよなということを再認識させられる内容でした。

 

以上となります!

■要約≪ローマ人の物語19≫

今回は塩野七生氏のローマ人の物語を要約していきます。19は「悪名高き皇帝たち」の三巻です。四代目ローマ皇帝クラウディウス(紀元41~54年)の13年間の統治をまとめた内容となっております。ローマ帝国の統治基盤を確固たるものにしたティベリウス亡き後を継いだ皇帝カリグラの治世により滅茶苦茶になったシステムを基のものに編み直そうと腐心する地道な取り組みが光ります。

 

ローマ人の物語19」

塩野七生 『ローマ人の物語 19―悪名高き皇帝たち〔三〕―』 | 新潮社

■ジャンル:世界史・歴史小説

■読破難易度:低(非常によみやすい文体で書かれており、一部物語調なのでサクサク読めます。世界史の教科書や地図を手元に置いて読むとわかりやすくなります。)

■対象者:・ヨーロッパの歴史について興味関心のある方

     ・ローマの栄枯盛衰の変遷を詳しく理解したい方

 

ローマ人の物語17・18(悪名高き皇帝たち)は下記≫

■要約≪ローマ人の物語17≫ - 雑感

■要約≪ローマ人の物語18≫ - 雑感

 

ローマ人の物語14・15・16(パクス・ロマーナ)は下記≫

■要約≪ローマ人の物語14≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪ローマ人の物語15≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪ローマ人の物語16≫ - 雑感

 

≪参考文献≫

■ローマ人盛衰原因論

■要約≪ローマ人盛衰原因論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■皇帝クラウディウスについて

ティベリウスの甥・ゲルマニクスの弟でありカリグラの伯父であった、歴史家であったクラウディスは50歳の年齢で急遽四代目ローマ皇帝になります。クラウディウスガリアで生まれ育ち、父はマルクス・アントニウス・母はアウグストゥスの姉オクタヴィアです。クラウディウスローマ皇帝の血筋にあたるユリウス家でありながら、昔ながらの名門貴族のクラウディウス一門でもありました。この血筋による統治の正当性を維持しないと帝政は終わり、共和政に回帰するということでなんとしても避けねばならないという周囲の見解があり、これまで度外視されていた歴史家のクラウディウスに白羽の矢が立ったという訳です。

クラウディウスは歴史家としてエトルリアカルタゴの歴史・キケロの伝記・カエサル暗殺前後の内乱記などを好んで記述しました。こうした歴史知識の蓄積が政治経験が全くない中でいきなり皇帝になったクラウディウスの判断を助けたとされます。

 

クラウディウスの統治方針・実施政策

クラウディウスの統治方針は三代目ローマ皇帝カリグラが乱した帝国統治システムをアウグストゥスティベリウス仕様に戻すことでした。まず、ティベリウス・カリグラ時代に脅威となった国家反逆罪法を廃止し、執政官選出の場を市民議会から元老院に戻すなど元老院議員懐柔策を採用しました。国家財政を安定化するために税制をティベリウス時代の仕様に戻し、カリグラが起案したインフラ整備事業を推し進めることで雇用創出を推奨しました。続いて外交面では関係性が悪化した北アフリカマウリタニア王国問題・ユダヤ人問題・ブリタニア問題を対処することとなります。マウリタニア王国問題は反乱を平定し、分割して属州として統治する道を選び、旧ヌミディア王国・旧カルタゴなども属州化してローマ帝国の内部に組み込む動きを加速させました。ユダヤ問題に関してはユダヤ地域とアレクサンドリア地域とで問題解決の方法を分け、現地の王による間接統治・シリア属州総督による統治などを通じてギリシアユダヤの絶妙な力関係が崩壊しないようにマネジメントしました。

クラウディウス治世の外国上の特質点としてはブリタニア諸部族の争いに乗じて平定するという大義名分でブリタニア侵攻(現イギリス・アイルランド)を仕掛け、二十年掛りでブリタニアローマ帝国の内部に組み込む変化のきっかけをもたらしました。ブリタニアの属州化はローマ帝国鉄板のやり方を採用し、満期除隊のローマ兵を入植させて植民市を形成させ、原住民の町に地方自治体権を付与し、核とローマ式街道網で繋がるインフラを整備するというやり方で進めました。これはガリアや南仏などを属州化していくにあたり原住民をうまくローマ化していくやり方そのものです。クラウディウス統治の時代にローマ帝国ブリタニアの南半分を制圧することに成功しましたが、現地の司祭勢力をアイルランドに追い出し統治基盤を完璧にするのは五代目ローマ皇帝ネロの時代まで待つこととなります。

・一方、この時代のローマ帝国は広大になっており、執政官経験者が属州総督を務めるという間接マネジメントの仕組みは確立されていたものの、皇帝の意思決定する事項は膨大になっていました。秘書官システムと呼ばれる現代の行政官僚のような仕組みがクラウディウスの時代に構築されました。クラウディウスは50歳まで歴史家であり、いきなり元老院議員経験もなしに皇帝になったので人脈に乏しく、クラウディウス一門の奴隷を秘書官にするというやり方を採用しました。歴史や財政など役割分担をする秘書官システムを構築してクラウディウスは皇帝業を全うしようと腐心しました。

クラウディウスは家庭に恵まれず、皇帝即位直後の皇紀メッサリーナは若くして地位についたことにより、思慮が浅く性に溺れたり、自己顕示欲が強かったりととんでもない行為を地位に甘んじて行う蛮行が災いし死罪に至ります。その後の妻、アグリッピーナは息子ドミティウス哲学者セネカによる英才教育により育成し、解放奴隷と手を組んでクラウディウスの養子にすることでローマ皇帝直径に据えることに成功し、後の皇帝ネロが誕生します。政略結婚に成功したということで不要になったクラウディウスは最終的に小アグリッピーナにより、毒殺されて急死するという形で四代目ローマ皇帝の治世は終了してしまいます。

 

【所感】

歴史に興味を持つというのは人間性・観察力・分析力の現れであるクラウディウスを評する著者の考察が光る節が多い内容でした。一部の意思決定にいい加減である点や軍務経験が皆無でそもそもの政治経験も乏しいという短所がある中で何とか仕組みを構築・強化して致命的な意思決定上のミスなく13年の統治をやり遂げた皇帝クラウディウスは凄みがあったのではないかと感じた次第でした。軍事・行政などの華々しいアジェンダのみならず、インフラ・物流・食糧・財政など地道な政策意思決定をこなしかつローマ皇帝の主たる役目である法務も全うし続けるという真っ当であろうとし続けた真面目さが光る皇帝であったと感心しました。

・歴史から普遍的な法則を導き出す、洞察力を磨くとはよく言うことですがクラウディウス自身の生き様はその最たるものであり、本書記載の内容も非常に人間としての振る舞いについて考えさせられる内容が多かったと感じました。当代前後の歴史書籍についても読み漁り理解を深めることで、人間とは・システムとはといった根源的な問いについて内省を深めるのは面白いことであるかもしれないと感じた次第です。

 

以上となります!

■要約≪CHANGE 組織はなぜ変われないのか≫

今回はジョン・P・コッター氏著の「CHANGE 組織はなぜ変われないのか」について要約していきます。「リーダーシップ論」・「実行する組織」等の著作で有名なハーバード・ビジネス・スクール名誉教授が組織変革の成否を左右する人間の性質について考察・対策提言をする内容となっております。

 

「CHANGE 組織はなぜ変われないのか」

■ジャンル:組織論

■読破難易度:低(前提知識不要でサクサク読むことが出来ます。経営組織論の基礎が理解出来ていると著者の主張の説得力が増して読めるかもしれません。)

■対象者:・変革のメカニズムに興味関心のある方

     ・組織力学の仕組を深く理解したい方

     ・リーダーシップを発揮するロールに従事する方全般

 

≪参考文献≫

■多様性の科学

■要約≪多様性の科学≫ - 雑感

■システムの科学

■要約≪システムの科学≫ - 雑感

■エフェクチュエーション

■要約≪エフェクチュエーション 前編≫ - 雑感

■要約≪エフェクチュエーション 後編≫ - 雑感

 

【要約】

■序論

・人間の脳みその構造・組織選好性故に変化は生存チャネルを刺激し、繁栄チャネルと呼ばれる生産的で創造性に満ちた状態を阻害します。上記を所与の条件として組織変革をリードしていくことが大切であり、考慮しないといけない要素・手順は多岐に渡るとされます。企業戦略論のトレンドは21世紀を迎え、国際戦略M&A多角化などにシフトする中で多様化の道を辿り、不確実性と変化スピードは増加し続けています。そんな中で、変化適応・変革推進が企業競争の成否をわけるようになり、アジリティ創発戦略エフェクチュエーションDX・アジャイル開発・デザイン思考・両利きの経営といったキーワード・テーマが組織論の潮流を占めるようになりました。

・人間は社会的な生き物であり、本来的な性質としては安定性や効率性を維持することを好む傾向が強く、変化適応とは根本的に相性が悪いとされます。そんな中で、リストラ・M&A・リエンジニアリングなどの戦略オプションを採用する局面が増える中で環境変化著しい場面にさらされる人間が増え、生存チャネルが刺激され本来変化しないといけない局面でイノベーションが全く生まれない・創造性と実行力に欠ける組織が誕生するということが多くの場面で発生しています。少数の組織が繁栄チャネルと呼ばれる機会を捉える・イノベーションやコラボレーションを中心に据えたメンタリティで溢れる組織コンディション形成に成功し、変革推進・高いケイパビリティに到達するようにもなっています。環境変化の中で複雑な問題を素早く解くことが組織に求められる局面において、強烈なカリスマ型のリーダーシップは不要であり、繁栄チャネルを刺激するエンパワーメントに満ちた戦略思考・組織学習型のマネジメント・リーダーシップが今の時代に求められるに至ったということが言えます。

 

■本論

・戦略はマネジメント中心の世界の道具であり、リーダーシップ中心の創発型とは異なるものであるとされます。変革は生存チャネルを刺激して、エンゲージメントを下げるリスクがあり、アンラーニングと構造理解・方針を立てるオーナーシップが不可欠になります。経営管理は予定調和で変数が少ない、時間軸の変化と共に学習・進化・外部環境も変わるということを前提としていないという現実に適していないコントロール手法になりつつあると指摘されます。

・プランニング・階層型のコントロールではなく、リーダーシップの民主化により、オーナーシップをチームの集合知を結集して発揮、問題解決していく、学習をリードしていく組織が変革を牽引するとされます。マネジメント中心で高速トップダウンで物をなせるほどに変数が少ない時代は終わり、リーダーシップ主導の内発的動機付け・アジリティの高い仮説検証型の繁栄チャネルを刺激された組織によりコトを成していくという風に問題解決プロセスの軸足が変化しているとされます。

トランスフォーメーションはアンラーニングと新たな情報・パラダイムを取り込み既存の業務フローや顧客価値を再定義する営みであり、テクノロジーの造詣は勿論、顧客や業務へ明るいことがセットで推進される内発的なものであるべきとされます。コンサルやシステム導入の外部の変革では抜本的なトランスフォーメーションは起こりえないとされ、プロダクトモデルチーム・トポロジーなどのソリューションはあれども基本的にはトランスフォーメーションの可否はプロセスや組織文化の問題であるとされます。

・マネジメントとコントロールに重きを置いたピラミッド型組織と異なる形のイノベーションを探索するネットワーク型組織を形成するのがセオリーとされ、新規と既存の組織を並列で走らせるデュアルシステムは多くのテック企業が問題解決のために採用している組織形態です。機動性の高いネットワーク型組織を組成して変革や仮説検証をする特区のような位置づけで運営していくのは多くの先進的な企業の定石となっております。探索型組織で合意形成をしたり、高い成果を上げる戦略的思考やリーダーシップ・構造化スキルが重要度を増していく社会になると著者は主張します。

 

■結論

・リーダーシップとは未来に向けた方向とビジョンを打ち出し、その方向に人を結集・リードしていく存在です。生存チャネルを鎮静化しながら繁栄チャネルを活性化する振る舞い、周囲を鼓舞して不確実性を解いていく役割が現代の不確実性と変化著しい局面では欠かせないとされます。その為、リーダーシップが発露していくためにはどのようにしていけば良いのかというコミュニケーションとコトの設計がマネジメントの腕の見せ所になる。

・可能性や戦略・ビジョンを明確な言葉で言語化し、周囲を鼓舞しエネルギーが発揮されている人材を刺激していくということが変革リーダーシップを醸成する意味において大切になります。恐怖と不安は生存チャネルを刺激するものであり、繁栄チャネルに至るようなコトの意味づけと成果の明確化という綿密かつ継続的なコミュニケーションが組織文化を形成するために大事担います。

 

【所感】

・組織構造・人間の性質故に変化適応・変革推進・リーダーシップ発揮が非常に相性が悪いという構造が深く理解出来た点が一番勉強になりました。また、この変化に適応するための学び直し・構造俯瞰・デリバリースキルの3点がそろって初めて果実を得る・恩恵を感じるということでもあり、相当な当事者意識や執着心がないとうまく問題を解決する、処理することができないということは多くの人に起こり得ることであり、だからこそ、リーダーシップやマネジメントがコトやコミュニケーションの設計を通じて底上げ・加速していくようにすることが大切なのだろうと自分の中で整理が出来ました。

・個人的にチェンジマネジメントはその必要性を痛感する環境に飛び込むことに加えて、関連分野に関して体系的に学ぶ・フレームワークを活用して思考やコトの実践をして自分のものにしていくということをどれだけ早くできるかということであると認識していて、体系立てて論が発達したプロダクト分野(エンジニアリング・デザイン・プロダクトマネジメント)や事業開発分野の知識・理論を学びまくり実践するという荒療治はバカにならないのではないかなと思った次第です。自分自身が必要に迫られる局面に辿りついたことに加え、1年弱当該分野のインプット・アウトプットを続けてきて思考や価値観の基礎が身に付いた実感が物凄くあり、土地勘がわかればうまくできる後天的に身につくマインドセットであるなと感じました。

 

以上となります!

■要約≪OODALOOP(ウーダループ)≫

今回はチェット・リチャーズ氏著の「OODALOOP(ウーダループ)」を要約していきます。軍事戦略論由来の意思決定フレームワークであり、不確実性と変化著しい現代においてビジネスの局面でも有効ではないかと評価されるに至ったOODAループについて体系的に論じた本です。OODAループはPDCAサイクルと似たような位置づけのフレームワークであり、時に補完関係・代替関係にあるとされます。環境変化に適応していく創発戦略システム思考のブームに伴い、注目を浴びて現代ではエフェクチュエーションと並んで一定の市民権を得た考え方になり、このタイミングで概略を理解しようと考え本書を読むに至りました。

 

「OODAループ(ウーダループ)」

楽天ブックス: OODA LOOP(ウーダループ) - 次世代の最強組織に進化する意思決定スキル - チェット リチャーズ ...

■ジャンル:経営戦略・組織論

■読破難易度:中(豊富な事例があり、前提知識不要の為読むこと自体はそこまで難しくないとされます。戦略論やビジネスフレームに一定明るいほうがOODAループの凄みが対比的にわかるのでオススメです。)

■対象者:・環境変化適応していく組織をリードしていく立場にある方全般

     ・意思決定熟達・学習プロセスの解明に興味関心のある方

     ・戦略・組織論のトレンドを抑えたい方

 

≪参考文献≫

■戦略サファリ

■要約≪戦略サファリ≫ - 雑感

■エフェクチュエーション

■要約≪エフェクチュエーション 前編≫ - 雑感

■要約≪エフェクチュエーション 後編≫ - 雑感

■OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法

■要約≪OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法≫ - 雑感

 

【要約】

■OODAループとは

OODAループ観察(Observe)→情勢判断(Orient)→意思決定(Decide)→行動(Action)の頭文字をとった概念です。OODAループは軍事由来の理論であり、第二次世界大戦湾岸戦争でその理論の有効性に関して日の目を浴びて、2010年代テックビジネスや国際化の波でビジネスの分野でも市民権を得るに至る考え方になったとされています。従来型の計画・統制に重きを置く戦略論(ポーターの5フォース分析やアンゾフの経営戦略論など)では動的に変化する不確実性の高いビジネス環境の変化に適応できないという中で既存の戦略論の有効性の低下が叫ばれるようになります。そんな中、現場主導で現実を直視、現状把握・判断を起点に計画と行動を組み立て素早く適応・学習して新たなサイクルを回すというOODAループの考え方が重視されるようになりました。

・OODAループを効果的に成しえるためには相互信頼・皮膚感覚・リーダーシップ契約・焦点と方向性の4つを兼ね備えることが強い軍事組織の文化的な特徴から明らかとされます。リーダーシップとモニタリングのバランスが強い軍事組織を作る要員であり、指示命令系統が採れていることに加えて戦略やゴールが明確であること、現実を直視して微修正・相互フィードバックし続けるシステムを構築・機能させるという具合になります。OODAループ起点にビジネス分野において大きく成果を上げた・変革を促した事例からフレームワーク化・理論化したものとして、リーン生産方式・カンバン・トヨタ生産方式があるとされます。

 

PDCAサイクルとOODAループの関係性

PDCAサイクル演繹的であり、OODAループは観察を起点にするので帰納法な営みであるとされます。一般的な企業との投資承認プロセスや事業計画は不確実性をある程度軽視したものにならざるを得ず、観察を起点にした動的な学習による変化を織り込まないことが多いとされます。一方で、これを実際に学習して高い成果を出す(プランニングベースよりも)というのは相当に難しいことが多く、内発的動機付けや自由演技による生産性低下との天秤にかける必要があるとされます。予定調和を遂行していく秩序を形成する従来型の戦略論やマネジメントコントロールが大事な場面・領域もたくさんあり、それと同じくらい創発戦略・リーダーシップ・相互学習が大切な場面も増えてきたということが現代のPDCAサイクル・OODAループが併存するビジネス環境の特徴と言えるでしょう。

・観察→情勢判断→意思決定→行動のサイクルにより高い成果を上げるにはスピード・機動性(アジリティ)の担保正しい判断をするための構造的な思考、理解・それに足る情報収集量と仮説検証設計~実行が大切とされます。エフェクチュアルな態度(起業家の意思決定熟達プロセス、我々は何者で誰と何を知っているかという前提をベースに意思決定する、学習することを想定に低い財務リスクでの仮説検証・探索を好む)で現在地を見定め判断し、改善・行動していくことで意思決定の精度を高める・戦略フレームを用いることで組織の統制を図る、正しい選択と集中を目指すといった細かな努力の積み上げもOODAループを用いて高い組織成果の実現には欠かせないとされます。

ポジショニング理論リソース・ベーストビューなどの経営戦略の理論は静的な環境を前提とした戦略論であり、創発的戦略やエフェクチュエーションなど動的な環境適応を前提とした、現代の経営学の態度を組織に導入していく・学習・変化し続けることが持続的な競争優位・連続的な勝利に寄与すると言えます。

 

■OODAループを高速で回すための組織文化

・文化と習慣化された行動は切っても切り離せない関係であり、OODAループを実践するには組織文化の構築・運用がセットとされます。相互信頼は自律性と調和をもたらし、その前提には高い組織成果の追求と適切な淘汰作用・新陳代謝もセットとされます。仲良しこよしだけではOODAループは実現出来ないということになります。管理型と自由放任型のバランス・意思決定基準をうまく組み合わせることは真の創造力と高い組織ケイパビリティに寄与しますが、それを適切に運用して組織の成果を上げることは難しいものです。

・外界から学び改善して高い成果を上げた人材を評価するということを続けることで組織文化を変容させ続け、アジリティの高い組織を構築することが不確実性の高い時代において連続的に成果をあげるための必須条件となります。主要な焦点と方向性を定めて、基本的には即応判断・環境適応していくことで高速改善をしていきなさいという組織文化を形成することが具体的な目指す姿となります。システムに仕事や文化は規定され、人間は長い時間軸の中でシステム最適化をしていく生き物であり、これを継続的に環境やゴールを見据えて定期チェック・時に壊し再編するということをしていく胆力・ラーニングアビリティというのが連続的な問題解決に必要であり、それを組織で体現していくフレームOODAループなのです。

トヨタ生産方式はOODAループの最たる例であり、現場主導で改善をしていく・動的に修正をしていくという動きは軍由来の組織構造に似ているのです。生産工程におけるJIT方式の導入と、早期アラート検知の仕組こそが生産性を高めるためのカギであり、ウォーターフォール型のPDCA形式ではないOODAループの強みと言えます。OODAループは計画をしなくていいということを言っているのではなく、戦略による焦点と方向性を定めた上での現状把握による軌道修正を行う相互作用の仕組みになるのです。変化適応をしていくには計画をしないということではなく、戦略や焦点が定まっているからこその仮説検証や学習の解釈の仕方の方向性をすり合わせる・権限移譲できるということを意味しているのです。

 

【所感】

・久々に正統派の戦略論・組織論の本を読みましたが、歴史的な変遷・論点の変化などが掴めて面白いなと再認識する内容が多かったです。OODAループはアジャイル開発やリーンスタートアップなどに通じる考え方であり、理論の正当性や価値観に対しての一段の理解が深まる感覚を得る読書体験でした。一見、非常に高尚で難しく見えるOODAループですがプロダクトマネジメントデザイン思考システム思考の原理原則を忠実に実践するとほぼイコールの関係にOODAループがあるということであり、その意味において適切な観点・手順を踏んで実践していく、言語化・文書化を怠らないという態度がこの手の分野の実践においては肝であるということを再認識させられました。

・知っているかどうか・実践して実践知として体得して積み上げているかという些細な差分が当該分野の成果を左右するということに思え、インプットとアウトプットの実践を通じて自由自在に活用すること・組織をリードしていきアジリティを高め組織ケーパを上げるということをロールとして果たせるようになっていきたいなと考えさせられる内容でした。東洋思想や戦略論は根幹をなす考え方として変わらず有用であるということも思い知らされ、当該分野の古典を読み漁る行為も再開したいなと思う次第でした。

 

以上となります!

■要約≪経理・財務・経営企画部門のためのFP&A入門≫

今回は石橋善一郎氏著の経理・財務・経営企画部門のためのFP&A入門」を要約していきます。FP&A入門書となっており、戦略論と管理会計ファイナンスの理論をどのように実務活用していくかを著者がCFO・FP&Aを務めたインテル日本トイザらスでの経験や他社事例を引き合いに解説していく内容となっております。ファイナンス・アカウンティングについて、実務では直接活用しませんが視点の拡大を意図して、定期的にインプットを積み重ねている中でFP&Aの解像度を高めたくこのタイミングで読むに至りました。

 

経理・財務・経営企画部門のためのFP&A入門」

経理・財務・経営企画部門のためのFP&A入門 - 書籍販売 | 公認会計士協同組合

■ジャンル:アカウンティング・ファイナンス

■読破難易度:低~中(半分経営戦略論・半分管理会計財務会計ファイナンスという構成になっており、当該分野の入門書で理論を抑えておく必要があります。内容自体は非常に平易な記載がされており、サクサク読むことができます。)

■対象者:・FP&Aの解像度を高めたい方全般

     ・経理・財務・経営企画部門に従事し、経営意思決定に参与する役割を務めたい方

     ・事業部門でPLに関与する方全般

 

≪参考文献≫

■コーポレート・ファイナンス 戦略と実践

■要約≪コーポレートファイナンス 戦略と実践≫ - 雑感

管理会計・入門

■要約≪管理会計・入門≫ - 雑感

■戦略サファリ

■要約≪戦略サファリ≫ - 雑感

■市場と企業組織

■要約≪市場と企業組織≫ - 雑感

 

【要約】

■FP&Aとは

・FP&Aとは(Financia Planning&Analysis)の略称であり、グローバル企業においてFP&A部門はCFP組織の中で経理部門・財務部門と並ぶ主要部門でCFOの下で事業管理を担当します。日本企業において経営管理を担当しているのは本社経営企画部門・事業部企画部門・経理部門および財務部門が一般的とされ、近年日本でもプライム上場企業を筆頭に(特にグローバル展開する企業において)、FP&Aを設定するケースが増えています。

・FP&Aの役割は事業計画の進捗のモニタリングと事業への提言の2点であり、事業部と本社それぞれにコントローラーが存在するのが一般的とされます。経営者のパートナーとして、株主価値の維持と最大化に関して財務と管理会計の面から関与するというたてつけになります。マネジメントコントロールを効果的に機能する為に定期レポートし、改善策の議論と助言・投資計画反映をするというのがポイントであり、短期のそろばんと中長期投資テーマのROIやポテンシャル証明などが事業企画から持ち込まれることを精査する役割になります。経営計画を提出してもらい、進捗のレポート・計画と実績の乖離の分析統制による修正示唆出しなどを通じて経営者・株主の変わりに投資収益が出るようにコントロールすることがFP&Aの本質的なバリューになります。尚、BSCは財務と事業計画、戦略を連動させる優れたツールであり、KPIツリーのようなプロダクトマネジメントに近しい思想の管理会計のフレームになります。

・日本企業では約三年単位の中期経営計画を立てて、進捗をレポート・管理するという統制のされ方をしていることが多く、中計は経営企画部門が主導で作成することが多いです。財務経理がその定量面の監査をするという構図が一般的です。残念ながら日本企業の現実には利益計画のコミットメントを果たすのが精一杯で中期経営計画を完遂する・開示するということをやり切れている企業は多くないとされます。経営企画と経理に分離していること・経営企画が事業部にレポートラインを設けていないことなどが日本のちぐはぐな経営管理体制の所以とされるようです。経営企画の大半は庶務・調整業務が多く、組織風土など定性面の内容も多いという中で、グローバル企業のFP&Aのような生産性や専門性の高さはない状態に位置すると著者は痛烈に非難します。

 

■FP&Aプロフェッショナルのスキルセット・マインドセット

・FP&Aは管理会計戦略のスキルに加えて、ビジネスドメインそのものへの造詣による示唆出しなどが具体的な要件になります。意思決定のオプションの善し悪しを定量的に現在価値や期待収益などの指標で横並びにして判断し、投資意思決定の精度を高めていくことで事業マネジメント・企業価値向上に組みするという具合です。具体的な業務知識としては原価計算リスク管理損益分岐点分析・バランススコアカード・現在価値理論・リアルオプション分析などを用いることが本書では例示されています。

・FP&Aは財務管理・経営管理が専門職としてのロールですが、戦略に明るく経営・事業の意思決定に示唆出しをする圧倒的な当事者意識・プロフェッショナリズムが前提に求められる役割となります。共通の物差しをもって改善要望する・原因分析をするというのは部分最適からすると監査のようですが、全社視点では適切な統制・資源配分をもたらすという意味を持つのであり、その視点に沿い(変化・環境適応する前提)で目の前の仕事に従事していくという姿勢が欠かせないのです。本社と事業部それぞれにコントローラーを置き、国内では経営企画と事業企画が担うような役割で財務と戦略を推進・レポーティングしていく役割が大切になるということであり、FP&Aが機能するかどうかは担い手のマインドセットにも依存するとされます。

 

経営管理の計画・統制プロセス

・FP&Aは中期経営計画をベースとした予算と実績の差異を可視化・分析・改善要望するということを通じて、内部資源の配分の最適化ガバナンス強化という意味合いを持ちます。財務やFP&Aの人事権や指示命令系統に関してはその役割の性質上、独立裁量・不可侵であるようにすることが求められるものです。

・プロジェクトや事業部の現在地および未来予測などを並列で並べて投資意思決定を正確にするために、BSCや予測PL・現在価値・キャッシュフロー損益分岐点分析などの管理ツールが用いられ、事業やプロジェクトの善し悪しを見定めるということが経営管理のミソになります。事業部制や機能性組織のマネジメントにおいては分権化と並列で予実管理が必要であり、定性的な戦略テーマの探索に合わせて定量の収支をしっかり収める・その要因分析と今後の見通しをレポーティング・評価するという管理の仕組みが必要になります。

 

■投資意思決定

企業内部のプロジェクト投資意思決定についてはファイナンスの理論が適応され、期待収益リスクの度合い戦略整合性などを含めて総合的に判断されるプロセスでこの理論を用いることがあり、主に事業企画とFP&Aが実務に関わり、意思決定の参照者として事業部長や経営者がいるという具合になります。企業内部の投資意思決定というのは必ず外部資本投資との比較において優れる意味や成果を示す必要が伴い、なぜなら企業の存在条件のほとんどを株主や債券所有者などステークホルダーありきになるからです。

利益計画損益計算書をベースに部門や事業部別に年度予算が組まれ、月次モニタリング・PDSを経ながら投資意思決定・配分・間接支援をしていくというのが経営管理の実際的な動きになります。事業部制もあくまで経営者のように投資意思決定の承認を得る必要があるので、EBITDAキャッシュフローを評価指標として判断されることは避けて通れないです。その上で歩留まりや量などのビジネス戦略に関わる戦略やチャレンジテーマが入ってくるという具合になるのです。

 

【所感】

・自身の仕事の関係者として事業企画・FP&Aなどがいる中で間接的に役割や価値基準を体感することがありましたが、本書にて期待役割・国際基準を理解することができ非常にイメージがわきました。FP&Aは専門スキル・知識は勿論のこと、事業・部門・経営に関するオーナーシップをもって示唆出し・提言をできるかどうかに大きくパフォーマンスが左右されるロールであると感じました。また、FP&Aは事業部長・CFO・経営者の代理人であり、内部資本投資・資源分配の最適化、ひいては株主の代理人としての投資収益・企業価値向上に対してバリューを発揮することが求められるとした時に、様々なレイヤー・観点の見解を持ち合わせその中でも真っ当に判断を下していく・コトを進めていくという精神的なタフさの求められるダイナミックさがあるように感じたのが印象的でした。専門性・希少性があるからこそ事業や各部門への解像度・想像力をどれだけ持つことができるかがクリティカルになる場面もあるのだろうと感じ、様々な活躍人材パターンがあるのだろうと感じた次第です。

・個人的にはFP&Aの役割・職業倫理を最大限理解、尊重した上で自分は事業サイドとしてPL責任を果たしていくロールを推進していきたいなと改めて考えることができて非常に学びになる内容でした。プロダクト分野のインプットも然りですが、自分の本業・専門性の近接領域に関して継続的にインプットして思考を深めるということを積み重ねていくことが大切と改めて考えさせられました。

 

以上となります!

■要約≪ローマ人の物語18≫

今回は塩野七生氏のローマ人の物語を要約していきます。18は「悪名高き皇帝たち」の二巻です。初代ローマ皇帝亡き後の治世を牽引した二代目ローマ皇帝ティベリウスの治世(紀元14年~37年)の晩年と三代目ローマ皇帝カリグラ(紀元37~41年)の動きをまとめた内容となっております。

 

ローマ人の物語18」

『ローマ人の物語 (18) 悪名高き皇帝たち(2) (新潮文庫)』(塩野七生)の感想(91レビュー) - ブクログ

■ジャンル:世界史・歴史小説

■読破難易度:低(非常によみやすい文体で書かれており、一部物語調なのでサクサク読めます。世界史の教科書や地図を手元に置いて読むとわかりやすくなります。)

■対象者:・ヨーロッパの歴史について興味関心のある方

     ・ローマの栄枯盛衰の変遷を詳しく理解したい方

 

ローマ人の物語17(悪名高き皇帝たち)は下記≫

■要約≪ローマ人の物語17≫ - 雑感

 

ローマ人の物語14・15・16(パクス・ロマーナ)は下記≫

■要約≪ローマ人の物語14≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪ローマ人の物語15≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪ローマ人の物語16≫ - 雑感

 

≪参考文献≫

■ローマ人盛衰原因論

■要約≪ローマ人盛衰原因論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■皇帝ティベリウス晩年の統治体制

ティベリウスは60代にしてカプリ島に隠居してローマ帝国を遠隔統治する生活に移行しました。ティベリウスは30代にもロードス島にて学問に勤しみ隠居生活をした経験があるなどカプリ島隠居は彼の癖とも言える行動です。ティベリウスは極めて真面目で、成果を上げていればどこで政治をしてもいいだろうというマインドからカプリ島に隠居したとされますが、その影響力や力関係を度外視した振る舞いは官僚的な思考であったと後世に痛烈批判をされることとなります。情報収集の鮮度・量と意思決定による間接的な影響力発揮による交渉・人材育成が政治の本質であるとした時に、このティベリウスの意思決定はあまりに軽率と呼べます。

カプリ島隠居後のティベリウスアグリッピーナ・ネロ・カエサルなどのゲルマニクス一門殲滅を実行することとなります。二名を国家反逆罪として島流しにし、その後も国家反逆罪を適応して合計63名もの元老院議員・元側近セイアヌス関連の親族などを皆殺しにして国家の治安を保とうとします。ティベリウスは77歳の高齢になっても元気であった中で使命感と惰性が入り混じる形で帝国を統治しました。後継者にカリグラを使命してティベリウスは死去しました。

 

■皇帝カリグラ

・三代目ローマ皇帝カリグラアウグストゥスの血をひいており、24歳の若さで皇帝に即位したということもあり、当初は大きな話題を集めました。カリグラの亡き父ゲルマニクスは民衆に人気のあるカリスマ軍人であったことも追い風となりました。元老院としてもカリグラは若くコントロールしやすいだろうと好評でした。カリグラは即位後すぐにティベリウス治世の時に追放していた人を解放し、税制も緩和するなどの政策を実行し、民衆対策としてはパンとサーカスと呼ばれた積極的な闘技場・戦車競走などの遊戯施策に多額の資金を投下するなどの政治を繰り広げました。人気取り政策の数々でカリグラ時代にティベリウスまでに作り上げた資産をすりつぶし、あっという間に国家財政は破綻の道を歩むことになります。

・カリグラは自らをと評し、あがめるように元老院議員や民衆に対して強いるなどの暴君ぶりを早々に見せ始め、元老院議員には国家反逆罪を適応して抑制するなどのひどいさまを展開します。財政破綻に加え、外交上でもローマ帝国の完璧な統治システムに綻びを見せるしくじりを見せます。この時代のローマ帝国多神教国家であり、ギリシア人・ユダヤなどの多民族国家の様相を呈していました。そんな中でも唯一神を熱狂的に信仰するユダヤ人についてはカエサル以後、配慮ある対応がなされてきましたが、カリグラ治世の時代にエジプトのアレクサンドリア多神教を受け入れ同化の道を進むギリシア唯一神を信仰する独自路線のユダヤとの間での均衡が崩れ、対立が激化、カリグラ自身が自分を神としてあがめよという態度を強いるということも拍車をかけ暴動が発生しました。

・また、皇帝カリグラ統治時代にはユダヤ人の問題に加え、東方同盟(アルメニア王国・パルティアとの関係性)などの問題が水面下で発生しかけており、加えて北アフリカマウリタニア王国(現モロッコにおいても緩やかな同盟関係であったのに急遽属州化をしたために関係にひびが入るなどの散々な様に至ります。こうした統治にて緩やかに崩壊の道を辿る中で、カリグラは28歳の若さで近衛兵に暗殺されて皇帝統治を終えてしまいます。カリグラ暗殺後は血筋を引き合いにクラウディウスを引っ張りだし、皇帝であると軍隊が宣言することで既成事実化しクラウディウスが四代目ローマ皇帝を務めることになります。

 

【所感】

カエサルアウグストゥスと気付き上げてきたローマ帝国の統治システムを高度に仕組として大成させたティベリウスの真面目さと人際の淡白さの目立つ晩年の振る舞いは非常に印象的でした。「ティベリウスの振る舞いは政治ではなく、官僚としては優秀である」という塩野七生氏の票はなるほどと考えさせられる内容でした。

・カリグラは血筋や財産など何もかも苦労せず持ち合わせた状態で統治を初めてしまったが故に、政治的な力量や経験がないまま皇帝の座について役割を遂行しようとして暴君と化したという評があり、それは徳川幕府における数代の将軍の奇妙な行動に通じるものに感じました。国家反逆罪を濫用する皇帝という小説や映画・ゲームなどの典型的な皇帝像の最たる例としてカリグラが君臨したことが印象的でした。また、ローマ帝国の広大さや統治・統合の歴史・各地域や民族の歴史故の難しさや絶妙な均衡・力関係があるということがよくわかる内容になっており世界史は様々な角度から学び直し続けることで都度新しい発見と理解が深まる面白さを再認識しました。

 

以上となります!