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写真はイメージ=PIXTA

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「イヤなことが起こったり、ストレスのかかる瞬間に出会うことは原則として避けられません。大事なのは、その悪い流れに引きずり込まれないように流れを断ち切り、いい流れに変えること」。自律神経研究の第一人者で医師の小林弘幸氏によれば、これがリセットです。ライフプランを考え、リスキリングに向き合うときにも意識しておきたい行動習慣といえるでしょう。NIKKEIリスキリングでは、リセットの考え方やノウハウをまとめた同氏の著書『リセットの習慣』(日経ビジネス人文庫)から、その一部を紹介します。4回目は、第3章「決める、軸を持つ、ブレをなくす」から3つの習慣を紹介します。

連載リセットの習慣」 
第1回 リセットには自律神経が効果的 気持ちより体を整える
第2回 1週間に1日の「リセットデー」を いい流れを生み出す
第3回 リセットのカギ「減らす、片づける」 写真は処分する
第4回 (今回)
第5回 自分との向き合い方を決めておく イライラしたら「ゆっくり」動く
第6回 迷ったら「傘」と「上着」は持っていく 自律神経を乱さない習慣
第7回 人との付き合い方をリセットする習慣 「ここまでやる」 を決めておく
第8回 ストレスが消える「日々のリセット術」 駅までの道を速めに歩く
第9回 疲れが消える「 体のリセット術」 指先で身体の一部をトントンと叩く

◇   ◇   ◇

軸を持てば自律神経は整う

今回のテーマは「軸」です。

「あなたの軸は何ですか」と問われたとき、大小さまざまな軸(マイルールでも行動指針でも構いません)を答えられる人は比較的安定した精神状態でいられるものです。

職場でランチへ行く場面でも「自分ひとりで食べる」という軸を持っている人は淡々と自分のペースで食事をしたり、リラックスすることができるので、それだけ自律神経を整えることができます。

もちろん「ランチはひとりで食べたほうがいい」といっているのではありません。

ただし、本当はひとりで食べたいのに同僚や先輩に誘われると断れなくて一緒にランチをするけれど、いつも後悔する。そんな人もいるはずです。

こういう人は往々にして「なんで断れなかったんだろう」「お昼の休憩時間が一番ストレスだ」などと思い、結果として自律神経を乱してしまいます。

一事が万事そういうことで、人とのつき合いでも、着る服の選び方でも、仕事の進め方などあらゆる場面で「自分なりの軸」が大切になってきます。

軸が定まっていれば、自分の判断や行動に納得感が出ます。どんな結果になるにせよ、納得感のある意思決定をできている人は自律神経があまり乱れません。

面倒なランチだったとしても「私は誘われたら、行くと決めている」と自分なりの軸がしっかりしていれば、やることは同じでも納得感が違ってきます。

自分の軸に従っていれば、仮にイヤなことがあったとしても、納得して気持ちを切り替えることができます。「自分の意思でそうしたのだから、仕方がない」と割り切ることができるのです。それだけリセットもしやすくなります。

一番よくないのは「どうしようかな」とグズグズ悩むこと。そして、結果として納得感の低い意思決定をして、さらに後悔することです。

自分なりの軸を持つだけでも、あなたの自律神経は圧倒的に整ってきます。

ストレス・メンタルケアまとめて学ぼう

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「修正ポイント」は1点だけを意識する

私はスポーツのコンディショニングアドバイザーをすることも多く、たくさんのアスリートがトレーニングしている現場に立ち会います。

その際コーチがいろいろとアドバイスしているのですが、一流のコーチほどたくさんのことはいいません。

修正ポイントは1点だけ。そんな指導をしている人は「さすがだ」と思います。

自律神経の側面から見ても、トレーニング効果を高めるのに必要なのは集中力。その集中力をもっとも妨げるのが「迷い」です。

迷いがあると、どうしても思考や意識が引っ張られて集中することができません。

つまり、たくさんのことを一度にいわれると、集中してトレーニングできないのです。ゴルフのスイングが典型的で、頭の位置、クラブの握り、腕の動かし方、腰の回し方などいろいろいわれたら、確実に前よりスイングは悪くなります。

野球でも、ゴルフでも、どんなスポーツでも一流のコーチは「ここを直せば、よくなる」というポイントを見つけ、その点だけを修正させます。1点だけの修正ポイントを見極める力がとてつもなくすばらしいのです。

これは私たちの日常にも応用できます。何かを修正したり、スキルアップしようとしたりするとき「ポイントをひとつ選ぶとしたら、何をするか」。そんな視点で考えてみてください。

たとえば、後輩のプレゼン指導をするとき「目線を変えたほうがいい」「話すスピードに気をつけて」「姿勢を意識して」「強調したいフレーズでは間を取って」などあれこれいう人がいますが、いわれたほうは混乱して、かえってペースを乱します。

優秀な指導者は「ここを直すのが一番効果的」という部分を見つけ、ひとつのことを伝えます。医学的な観点で見ても、このアプローチのほうが成果が出やすいことはあきらかです。

上手に孤独になる

飲み会や食事会に関して「参加するもの」と「しないもの」をどのように分けているのか。そんな質問を受けることがあります。

私の場合は基本的に「相手と話していることで発展的な進歩があるかどうか」を大切な軸としています。

やはり、それぞれの分野で活躍している人と話すと、そこに魅力を感じたり、話している中でさまざまな気づきを得られたりします。

私はややドライなところがあるのか「何か得られるものがなければ、会食しても仕方がない」と考えています。

そんな言い方をしたところ「小林先生には、遊びに行く友だちはいるんですか?」と聞かれたことがあるのですが、はっきりいってその種の友だちはいません。

もちろん、ゴルフに行ったり、古くからつき合いのある人と飲みに行ったりすることもありますが、定期的に遊ぶとか、何かを語り合う、いわゆる親友のような存在はいません。職場の人と飲みに行くことも、コロナ禍の中ではもちろんですが、それ以前からほとんどありません。

こんなふうにいうと「友だちがいないなんて……」と思う人もいるかもしれませんが、世の中には「親しい友人と呼べる人はひとりもいない」というタイプも決してめずらしくありません。

それが自分の軸であれば、無理して友だちをつくったり、何かしらのコミュニティに参加したりする必要はないと私は思っています。

友人と楽しく過ごす。それももちろんいいことですが、一方で「上手に孤独になる」という発想も大切だと考えています。もし「私には友だちがいない」といっている人がいても、心配する必要は全然ありません。それで楽しく、コンディションよく生きられているなら「上手に孤独になれている」証拠です。

※書籍の『リセットの習慣』(日経ビジネス人文庫)では、「軸を持つ大切さ」「自分や人との向き合い方」「日々の生活で取り入れたいヒント」など99個の「リセット術」をご紹介しています。一つひとつは簡単で、すぐにでも取り入れられるものばかり。連載では、その一部をご紹介していきます。リセットの習慣の基本となる自律神経の基礎知識は第1回をご参照ください。
連載リセットの習慣」 
第1回 リセットには自律神経が効果的 気持ちより体を整える
第2回 1週間に1日の「リセットデー」を いい流れを生み出す
第3回 リセットのカギ「減らす、片づける」 写真は処分する
第4回 (今回)
第5回 自分との向き合い方を決めておく イライラしたら「ゆっくり」動く
第6回 迷ったら「傘」と「上着」は持っていく 自律神経を乱さない習慣
第7回 人との付き合い方をリセットする習慣 「ここまでやる」 を決めておく
第8回 ストレスが消える「日々のリセット術」 駅までの道を速めに歩く
第9回 疲れが消える「 体のリセット術」 指先で身体の一部をトントンと叩く
小林弘幸(こばやし・ひろゆき)
 順天堂大学医学部教授。1960年埼玉県生まれ。順天堂大学大学院医学研究科修了後、ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任。自律神経研究の第一人者としてプロスポーツ選手、アスリート、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に携わる。

リセットの習慣 (日経ビジネス人文庫)

著者 : 小林弘幸
出版 : 日経BP 日本経済新聞出版
価格 : 880 円(税込み)

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