1週間に1日の「リセットデー」を いい流れを生み出す
順天堂大学医学部教授 小林弘幸(2)
リセットの習慣コーヒーをいれるとかでもいい。新しい習慣を始めてみよう(写真はイメージ=PIXTA)
「イヤなことが起こったり、ストレスのかかる瞬間に出会うことは原則として避けられません。大事なのは、その悪い流れに引きずり込まれないように流れを断ち切り、いい流れに変えること」。自律神経研究の第一人者で医師の小林弘幸氏によれば、これがリセットです。ライフプランを考え、リスキリングに向き合うときにも意識しておきたい行動習慣といえるでしょう。NIKKEIリスキリングでは、リセットの考え方やノウハウをまとめた同氏の著書『リセットの習慣』(日経ビジネス人文庫)から、その一部を紹介します。2回目は、第1章「アフターコロナの処方箋」から3つの習慣を紹介します。
第1回 リセットには自律神経が効果的 気持ちより体を整える
第2回 (今回)
第3回 リセットのカギ「減らす、片づける」 写真は処分する
第4回 マイルールでOK グズグズ悩まず「軸」を持って整える
第5回 自分との向き合い方を決めておく イライラしたら「ゆっくり」動く
第6回 迷ったら「傘」と「上着」は持っていく 自律神経を乱さない習慣
第7回 人との付き合い方をリセットする習慣 「ここまでやる」 を決めておく
第8回 ストレスが消える「日々のリセット術」 駅までの道を速めに歩く
第9回 疲れが消える「 体のリセット術」 指先で身体の一部をトントンと叩く
◇ ◇ ◇
「新しい朝の習慣」をひとつだけプラスする
コロナ禍の中で生活習慣が多少なりとも変化した人は多いと思います。
以前はほとんどなかったリモートワークが増えた人もいるでしょうし、飲み会や食事会が減少し、オンラインコミュニケーションの時間が増えた。そんな人も多いでしょう。
もっと些細なことでいうと、たとえばカフェで友だちとお茶を飲みながらおしゃべりしている場面。こんな当たり前の風景でも「コロナ禍前」と「コロナ禍後」では微妙な変化が生じています。イメージでいうなら、以前は水色のような明るいトーンだったのが、コロナ禍を経て、少し暗い紺色の風景になっているような感覚です。
同じ行為や同じ場面でも、私たちをとりまくトーンは少し暗く、くすんだ感じになっているのです。
こうした「知らず知らずのうちに起こっている変化」によっても自律神経は乱れていきます。疲れが抜けない、ダラダラ過ごす時間が増えた、睡眠の質が落ちているなどちょっとした不調が続いている人も多いはずです。血流が悪くなることで、肩や腰が痛くなったり、頭痛を覚える人の話もたくさん耳にします。
こんなふうに「知らず知らずのうちに乱れてしまっている生活」をリセットするのに効果的なのが「新しい朝の習慣」をひとつ加えることです。
朝、30分の散歩をするのは最高ですし、そこまで時間がとれない人はベランダに出て5分ストレッチするだけでも構いません。これまであまりしっかり朝食を食べていなかった人なら、自分でトーストを焼き、丁寧にコーヒーを淹れる。そんな習慣をプラスするのもいいでしょう。
もっと簡単に、音楽を聴きながら意識的に深呼吸をするだけでもOK。
大事なのはなんとなく「流れのままに1日を始める」のではなく、意図的に「いい流れを生み出す」ことです。
木曜日を「リセットデー」にする
1週間のうち1日を「リセットデー」と決める。
これもおすすめの習慣のひとつです。「リセットデー」だからといって大げさなことをするわけではなく、少しだけ特別なランチを食べる、仕事を早く切り上げてお気に入りのカフェでお茶を飲む。そんな習慣で十分です。
「リセットデー」を何曜日にするかは自由ですが、私は外科で仕事をしていた頃の習慣で、昔から木曜日を「リセットデー」と決めています。
そのとき外科では大きな手術は月曜日と水曜日に入れることが決まっていました。特に大きな手術は水曜日に行われます。朝から始まって夜まで(場合によっては翌日まで)かかる手術もありました。
それを終えた木曜日が私にとっての「リセットデー」。
じつは自律神経の調査でも「木曜日に一番数値が悪くなる」との結果が出ています。多くの人が月〜金で仕事をしているため、水曜日くらいまでは何とかがんばれるのですが、木曜日になると肉体的にも精神的にもコンディションが落ちてくる。
それが金曜日になると「明日から週末だ!」「今日で終わり」という感じで再び気分が盛り上がってくるわけです。
そんなサイクルから考えても「木曜日をリセットデーにする」のは理にかなった方法といえます。
ちなみに、私は木曜日にマンガ雑誌の『ヤングジャンプ』を読むことがリセットの習慣になっています。特に「キングダム」が大好きで毎週楽しみに読んでいます。
決まった曜日にマンガやテレビドラマを楽しみにしている人は多いと思いますが、それを「ただの習慣」と捉えるのではなく、一週間の「リセットデー」と位置づけて意識的に「一週間の区切り」を入れる。
それだけで日々の生活にリズムが出てきます。
気になったときは「行動するほう」を選ぶ
誰にでも「ちょっと気になる」瞬間があると思います。
道を歩いているとき、たまたま目についた神社があって「なんだかよさそうな神社だな」と思ったり、SNSで「こんな美術展に行ってきました」と誰かの投稿を見たら「なんとなくよさそう」「行ってみたいな」と感じることがあるはずです。
思い返せば、そんな場面はいくらでもあって、テレビでおしゃれなカフェを特集していて「職場の近くにこんなおしゃれなカフェがあったんだ。今度行ってみようかな」と思うこともあるでしょう。
どんな人にも日常的に起こる感覚です。
しかし、たいていの人は「そう思って終わり」。実際に行動しない人が多いのではないでしょうか。
でも、そんなときこそ、少しだけ意識を変えて「行動するほう」を選ぶようにしてみてください。
たしかに、行動するのは面倒です。つい「行動しないほう」に流されてしまうのもわかりますが、自律神経を整える上で大切なのは「自分からいい流れをつくる」こと。
ちょっと面倒でも「行動するほう」を選べば必ずいい気分になりますし、小さな達成感が得られます。
その瞬間、リセットでき、コンディションはよくなっています。
そしてもうひとつ追加するなら、一日の終わりに3行でいいので「今日、行動するほうを選んだこと」を日記や手帳に書いてみてください。
この振り返りと意識づけは大切です。
最初は「いかに自分が行動するほうを選んでいないか」に気づきますし、少しずつでも「行動するほう」を選べるようになってくると、その達成感がやみつきになって気持ちの充実度が格段に変わってきます。
第1回 リセットには自律神経が効果的 気持ちより体を整える
第2回 (今回)
第3回 リセットのカギ「減らす、片づける」 写真は処分する
第4回 マイルールでOK グズグズ悩まず「軸」を持って整える
第5回 自分との向き合い方を決めておく イライラしたら「ゆっくり」動く
第6回 迷ったら「傘」と「上着」は持っていく 自律神経を乱さない習慣
第7回 人との付き合い方をリセットする習慣 「ここまでやる」 を決めておく
第8回 ストレスが消える「日々のリセット術」 駅までの道を速めに歩く
第9回 疲れが消える「 体のリセット術」 指先で身体の一部をトントンと叩く