ビッグウエストカンファレンス9位でシーズン終了 全米大学体育協会1部(NCAA DI)に属するハワイ大学のジェイコブス晶の2年…
ビッグウエストカンファレンス9位でシーズン終了
全米大学体育協会1部(NCAA DI)に属するハワイ大学のジェイコブス晶の2年目のシーズンが終了した。3月9日(現地時間8日)、カリフォルニア州立大ノースリッジ校で行われたレギュラーシーズン最終試合で、それまでビッグウエストカンファレンス3位だった同大に73-82で敗戦。8位で並んでいたチームが勝ったために順位が9位に下がり、上位8位までしか枠がないビッグウエストカンファレンス・トーナメントの出場を逃した。
ノンカンファレンスゲームは8勝3敗と好スタートを切った。だが、カンファレンスゲームでは7勝13敗。「自分たちにできるだけの力を見せられなかった。自分たちが行けるところにいけなかったまま終わってしまったっていうのが一番悔しい」とジェイコブス。試合が終わり、自チームの応援に来てくれた観客にチームで挨拶を終えると、すでに真っ赤になっていた目から涙がこぼれた。
「負けるのも嫌いだし、このグループは卒業する選手も多い。これから(転校などで、メンバーも)変わると思うし、こういうグループって1シーズンしかないので」
試合開始直前には、1人ベンチから出て、スターター1人ひとりと握手を交わし、励ましていた。ハワイ大は、遠征のたびに約5時間半かけて飛行機でハワイからカリフォルニアへ移動。カリフォルニアに入ったあとも、時には数時間バス移動ということもあり、チームで一緒にいる時間は長い。
昨シーズンは同カンファレンス第3シードでカンファレンストーナメントに臨んだチームも、今シーズンはなかなか勝利を得ることができず、暗いムードのときもあっただろう。その悔しさを背後にチームで明るさを取り戻すことができたことが、何よりも救いになったのだろう。「みんなと練習したり、バスの中でふざけあったりとかを、もうできないというのは、やっぱり悲しい」とジェイコブスは、ぽつりと言った。
パリオリンピックの日本代表メンバーに選ばれ、3試合すべてに出場した。だが、限られたプレー時間だったことで、「代表のために活躍できるところまではいきませんでした。まだ僕はそこまで役には立っていないというのもすごく感じました」と、逆に向上心に燃えていた。
その後、大学に戻って始まったハワイ大での2年生のシーズンは、ハワイ大はもちろん、日本代表を勝ちに導ける選手になること、また将来プロを目指す本人にとって、大学生の間に多くのことを経験し、成功や失敗を繰り返しながら成長していくことが目標だった。
控えからの出場が多かったとはいえ、ローテーション選手としてまとまった出場時間を得ており、将来を期待されて起用されていた1年生のときから、2年生では、勝つために必要な選手としてコートを任された。
「(昨シーズンと今シーズンの違いは)自分の自信がもっとあるというところが一番。ドライブ(からの攻めを向上させたこと)で、今シーズン、よりフリースローも奪えた。そういうところは良くなってると思います」と言う。
だが一方で、「チームと同じで、自分も波がすごく多くて、最大のポテンシャルを見せられないまま終わってしまいました。今シーズン、シュートの確率が良くなかったというのはもちろんあるんですけど、それよりは、ディフェンスをもっと強くするとか、シーズン最後の方は、もう少しドライブとかできましたが、そういうのをもっと前からやったりとか…。今、ちょっと、いろいろごちゃごちゃなってちゃんと言えないんですけど、やっぱり自分が思ったようなシーズンにはならなかったですね」
30分ほど前まで、カンファレンス・トーナメント進出を掛けて、必死にプレーしていただけに、まだ心の整理がついていない様子だったが、ジェイコブスの言葉からも、表情からも悔しさが伝わってきた。
3年生となる来シーズンはチームを引っ張る存在に
ただ、ジェイコブスには失敗をネガティブにとらえず、成長の糧にしようという姿勢があり、それゆえにチャレンジ精神旺盛だ。「いいところをいっぱいつなげられるのがトップの選手なので、それが次のステップだと思います」と気を取り直して言った。
大学3年目の来シーズンに向けて、「体を鍛えて強くなって、もう少しアグレッシブにプレーしていきたい。あと3年生ということで大学のキャリアの後半に差し掛かるので、ポテンシャルというところだけではない活躍を見せなきゃいけない時期になる。そこの準備をします」とジェイコブス。
これまでは、“年少”という立場のことが多かったが、いよいよ上級生になることで、リーダーシップを発揮することも期待される。
ジェイコブスはすでに試合前の練習のときも試合中もよく声を出し、コミュニケーションを取っているが、「コミュニケーションは大事なので、リーダーと呼ばれなくても、何かに気づいたら自分はいつでもチームメートに教えたいし、チームメートにも僕にそうしてほしい。そういうのはリーダーシップというよりもチームメートとのコミュニケーション。すごく大事なので、できるだけやろうとします」と、今やっていることは、特にリーダーシップを意識したものではないとした。
そんなジェイコブスにリーダーとしてお手本となる選手を尋ねると、「やっぱり渡邊雄太選手(千葉ジェッツ)」と即返ってきた。
「代表で、すごくリーダーシップとっているのを見て、こんなリーダーになりたいなってすごく思いました。声もすごく出すし、頭がいい選手なので、いろいろ明確に指示したり、ハドル(円陣)のときにも気合の入った言葉をすごく言っていたので、それぐらいの声を持ちたいです」
そして、こう続けた。
「でも、まずは活躍し、それが言えるような選手になりたいです」
“年少”を脱皮したジェイコブスが、来シーズンまでにどれほど頼もしくなって帰ってくるのか。「自分は周りの期待より自分の期待をもっと高くしたい」。その言葉に、ジェイコブスの意志が感じられた。
文=山脇明子