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JPWO2013157539A1 - 車両用音発生装置および車両用音発生方法 - Google Patents

車両用音発生装置および車両用音発生方法 Download PDF

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Abstract

第1の圧力センサ21aと、第2の圧力センサ21bと、自動車10の運転状態に応じて、第1の圧力センサ21aと第2の圧力センサ21bとが出力する圧力信号を変化させる処理を行う信号処理部24と、信号処理部24によって処理された音圧信号をエンジン12の吸気音として出力するスピーカー28a,28bとで車両用音発生装置20を構成した。第1の圧力センサ21aは、エアクリーナ16とスロットルボディ17とを接続する吸気ダクト15における中央よりもエアクリーナ16側部分に設け、第2の圧力センサ21bは、エンジン12とスロットルボディ17との間に設けた。

Description

本発明は、車両のエンジンの吸気音を車内の乗員に伝えるための車両用音発生装置および車両用音発生方法に関する。
近年の自動車等の車両においては、乗員の快適性を増すためや、車外に騒音を放出しないために、エンジン音や車両の走行状態に関連して生じる音が極力小さくなるようにしている。しかしながら、これによると、実際の車速等の走行状態と乗員に聞こえる音との関連性が少なくなり自動車の操縦感覚が低下するという問題が生じる。このため、例えば、特開2008−13064号公報に示されているように、外部に対しては音を放出することなく、車室内に向かってのみエンジン音をスピーカーから発する車両用音発生装置が開発されている。
この車両用音発生装置(運転音伝達装置)は、エンジンの吸気取り入れ口や吸気管内に配置された音圧センサ、エンジンのイグニッションパルスを検出する回転パルスセンサ、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ、エンジンルームや車室内に配置されてエンジンの運転音を出力するスピーカーおよびコントローラを備えている。また、コントローラは、回転パルスセンサからの入力周波数に応じて通過させる音圧センサの音波信号を変化させる次数フィルタと、次数フィルタを通過した音波信号の音圧をアクセル開度センサからの開度信号に応じて増減させるレベル調整器とを備えている。そして、コントローラから出力される音波信号は、増幅器によって増幅されてスピーカーから出力される。
しかしながら、前述した従来の車両用音発生装置では、音圧センサをエアクリーナの外気取り入れ口およびエアクリーナの上流側に配置されたエアダクトの外気取り入れ口、または、吸気マニホールドに複数個取り付けている。このため、音圧センサをエアクリーナおよびエアクリーナの外気取り入れ口に取り付けた場合には、吸気音は小さくなり、吸気音の音圧を検出しにくくなる。この結果、吸気音を再生するための装置として高精度のものが要求される。また、音圧センサを吸気マニホールドに取り付けた場合には、爆発音を発生するエンジンに近くなるため脈動の変動が大きくなり、スピーカーが発生する音が荒々しい刺激のある音になるという問題がある。
さらに、音圧センサとしてマイクロフォンを用いて、エアクリーナおよびエアクリーナの外気取り入れ口に取り付けた場合には、外部からの音も検出するようになり好ましいエンジンの吸気音を得ることが難しいという問題も生じる。また、エンジンルーム内では熱や水や油や塵などに対する耐久性が要求されるが、マイクロフォンはこのような環境で長期にわたり性能を維持するのが難しいという問題もある。
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、吸気ダクトの上流側と、下流側とで吸気脈動の圧力を検出することにより、実際のエンジンの吸気音に近くノイズが低減された心地よい音を車内に発生できる車両用音発生装置および車両用音発生方法を提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
前述した目的を達成するため、本発明に係る車両用音発生装置の構成上の特徴は、車両(10,100)のエンジン(12,72,83,102)の吸気音を車内の乗員に伝えるための車両用音発生装置(20,40,50,60)において、外部の空気を取り込む吸気口側に設けられたエアクリーナ(16,86)と、エンジン側に設けられたスロットルボディ(17,77a,87)とを接続する吸気ダクト(15,85)におけるエアクリーナとスロットルボディに備わっているスロットルバルブ(77b)との間の中央よりもエアクリーナ側部分に設けられエンジンの吸気脈動の圧力を検出し圧力信号として出力する第1の圧力センサ(21a,61a,81a)と、エンジンとスロットルバルブとの間に設けられエンジンの吸気脈動の圧力を検出し圧力信号として出力する第2の圧力センサ(21b,61b,71b,81b)と、車両の運転状態に応じて、第1の圧力センサと第2の圧力センサとが出力する圧力信号を変化させる処理を行う信号処理部(24)と、車両内に設置され信号処理部によって処理された音圧信号をエンジンの吸気音として出力するスピーカー(28a,28b,108a,108b)とを備えたことにある。
本発明に係る車両用音発生装置によると、運転者の操作による運転状況に応じたエンジンの吸気音を、外部に対しては小さな音で放出しながら車内ではっきりと聞くことができる。また、本発明では、第1の圧力センサを、スロットルバルブとエアクリーナとを接続する吸気ダクトのエアクリーナ側部分に設けたため、走行風などの車外の音やエンジンの駆動音、爆発音の影響を受けることなく、吸気脈動の圧力変動を効果的に検出できるようになり、これによって、乗員が車内で聞く音が実際のエンジンの吸気音に近いものになる。
また、第2の圧力センサを、エンジンとスロットルバルブとの間に設け、その区間の吸気脈動も検出するため、スピーカーから再生される吸気音がスロットルバルブの開閉状態に係わらず、エンジンの吸気脈動に対応したものになる。例えば、スロットルバルブの上流側に第1の圧力センサを設けただけであれば、アイドリング時、減速時または軽負荷時のようなスロットルバルブが殆ど閉じるか若しくは小開度の状態では、吸気弁の開閉に伴って発生するエンジンの吸気脈動はスロットルバルブにより上流への伝播が制限されるため、スロットルバルブより上流側の吸気ダクト内では、エンジンの吸気脈動の圧力変化は極めて小さく、第1の圧力センサが吸気脈動を検出しにくくなる。
しかし、スロットルバルブより下流側であればエンジンの吸気脈動の圧力変化は上流側より大きいため、第2の圧力センサが検出する圧力によって、エンジンの吸気脈動による音を発生させることができる。これによって、アドリング時等にスピーカーから再生される音を増強することができ、常時、エンジンの作動に応じた音を車内で聞くことができる。
なお、車両の走行中に、実際に、聞こえるエンジン音は、エアクリーナの上流の外部側から聞こえる成分が支配的であり、本発明によると、スピーカーから再生される吸気音がその実際の吸気音に近いものになる。さらに、本発明では、スロットルバルブを挟んで上流側と下流側とに第1の圧力センサと第2の圧力センサとを設けているため、アクセルの踏込量が小さい軽負荷時でも吸気脈動を効果的に検出することができる。
本発明に係る車両用音発生装置の他の構成上の特徴は、信号処理部により処理される前の圧力信号にノイズゲート処理を行うノイズゲート処理部(42)を備えたことにある。この場合、圧力信号にノイズゲート処理を施したのちにA/D変換して信号処理部による処理を行ってもよい。本発明に係る車両用音発生装置によると、不要な領域の雑音を除去して自然な音を発生することができる。なお、A/D変換したのちの圧力信号にノイズゲート処理を行ってもよい。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、信号処理部により処理される前または後の圧力信号にノイズ抑制処理を行うノイズ抑制処理部(43)を備えたことにある。この場合、圧力信号に対してノイズ抑制処理を施して信号処理部による処理を行うことが好ましい。なお、本発明に係るノイズ抑制処理とは、例えば、スペクトルサブトラクションなどによるものであり、これによると、不要な領域の雑音を抑制して自然な音を発生することができる。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、周波数とゲインとの関係に基づいて作成したフィルタ(25)を備え、信号処理部が、フィルタを用いて音圧信号を変化させる処理を行うことにある。本発明によると、各周波数に応じてゲインを任意に変更することができる。また、フィルタは、複数種類準備して、その中から適宜選択することにより、スピーカーから発生される吸気音の音質をノーマルタイプの車のエンジン音にしたりスポーツタイプの車のエンジン音にしたりするなど種々の変更ができるようにすることが好ましい。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、エンジンの回転数を検出する回転センサ(31,103)と、スロットルバルブの開度を検出する開度センサ(32)と、回転センサが検出するエンジンの回転数と開度センサが検出するスロットル開度との関係に基づいて作成した音圧増幅マップ(25a)とを備え、信号処理部が、音圧増幅マップを用いて音圧信号に対して音圧増幅処理を行うことにある。
本発明によると、回転センサが検出するエンジンの回転数と開度センサが検出するスロットル開度との値に基づいて、第1の圧力センサと第2の圧力センサとが出力する圧力信号に対して音圧増幅処理を行ったり、第1の圧力センサと第2の圧力センサとが出力する圧力信号を加工するフィルタ特性のゲインを全体的に上げたりすることができる。この場合の音圧増幅マップは任意に作成することができるが、低回転低負荷時には、大きく増幅させ、高回転高負荷時には小さく増幅させることが好ましい。また、本発明によると、スピーカーから出力する吸気音を、実際のエンジンの吸気音に近い減衰特性や、透過損失を備えた吸気音として車室内に再生することができる。なお、開度センサとしては、直接スロットルバルブの回転角度を検出するセンサや、アクセルの踏込量をスロットル開度として検出するセンサを用いることができる。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、エンジンの回転数を検出する回転センサと、周波数とゲインとの関係に基づいて作成したゲイン調整マップ(25b)と備え、信号処理部が、回転センサが検出するエンジンの回転数とエンジンの気筒数から周波数を求め、求められた周波数の値とゲイン調整マップとを用いて音圧信号に対するゲインの調整を行うことにある。この場合、周波数は1/3オクターブ中心周波数であることが好ましいが、1/3より大きくても、小さくても効果の大小はあるが、効果としてはある。
本発明によると、エンジンの気筒数に応じたエンジンの爆発基本整数倍の次数の周波数成分を強調することができる。周波数は、エンジンの回転数と気筒数とから算出することができ、ゲイン調整マップを用いてエンジン回転数に応じた周波数の領域でゲインを上げることにより、エンジン回転数から次数成分に応じて音圧信号を強調することができる。例えば、4サイクルのエンジンでは、2回転で1回シリンダー内で爆発が発生するため、基本周波数はエンジン回転の半分の周波数となる。
そして、4気筒の場合は、等間隔で重複せずに爆発が発生すれば周波数はその4倍になる。このようにして算出される周波数から周波数を求めることができる。なお、人の耳は、周波数が僅かに異なっているときにはその違いを聞き取ることがむずかしい。しかし、1オクターブの1/3程度の周波数が異なっていればかなり明確にその違いを聞き取れる。したがって、ゲイン調整マップを、例えば、1/3オクターブ周波数とゲインとの関係に基づいて作成すれば、人の聴覚に合ったレベルで音圧信号の処理が行えるようになり、より効果的である。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、エンジンの回転数を検出する回転センサと、スロットルバルブの開度を検出する開度センサと、回転センサが検出するエンジンの回転数と開度センサが検出するスロットル開度との関係に基づいて作成したコンプレッサー処理領域とリバーブレータ処理領域とを有するエフェクター処理マップ(25c)とを備え、信号処理部が、エフェクター処理マップを用いて、音圧信号に対してコンプレッサー処理またはリバーブレータ処理を行うことにある。
この場合、回転センサが検出するエンジンの回転数および開度センサが検出するスロットル開度の双方の値が小さいときに、コンプレッサー処理が行われ、回転センサが検出するエンジンの回転数および開度センサが検出するスロットル開度の一方または双方の値が大きいときに、リバーブレータ処理が行われることが好ましい。
本発明では、第1の圧力センサと第2の圧力センサとから出力される圧力信号または第1の圧力センサと第2の圧力センサから出力されフィルタ特性に基づいて加工された音圧信号に、車両の運転状態に応じてコンプレッサー処理またはリバーブレータ処理を行うことにより、音圧を増強したり、スピーカーから発生する吸気音に残響効果を与えて伸び感を出したりすることができる。この場合、回転センサが検出するエンジンの回転数および開度センサが検出するスロットル開度の双方の値が小さい低回転低負荷時に音圧を増強するコンプレッサー処理が行われる。
また、回転センサが検出するエンジンの回転数の値が大きい高回転時、開度センサが検出するスロットル開度の値が大きい高負荷時および双方の値が大きい高回転高負荷時にリバーブレータ処理が行われる。これによって、スピーカーから発生する吸気音を心地よいものにすることができる。なお、高回転時や高負荷時にコンプレッサー処理を行うと、音圧レベルの高い部分を潰し、伸び感がなくなるため、この状態では、リバーブレータ処理を行うことで伸び感を演出するようにしている。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、車両の加速度を検出する加速度センサ(51)と、加速度センサが検出する車両の加速度に基づいて作成した音圧増幅マップ(25a)とを備え、信号処理部が、音圧増幅マップを用いて音圧信号に対して音圧増幅処理を行うことにある。
本発明によると、加速度センサが検出する加速度の値に基づいて圧力センサが出力する圧力信号に対して音圧増幅処理を行ったり、圧力センサが出力する圧力信号を加工するフィルタ特性のゲインを全体的に上げたりすることができる。この場合、加速度センサは、車両における任意の場所に取り付けることができるため、車両を改造したり配線が煩雑になったりすることがなくなり、設置が容易になる。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、吸気ダクトにおけるエアクリーナの下流側近傍に空気の流量を検出するエアフローメータ(18,89)を設置して、第1の圧力センサをエアフローメータからスロットルバルブに向かって20cm以内の部分に設けたことにある。本発明によると、吸気ダクト内で生じる吸気圧の脈動をノイズを少なくして第1の圧力センサで検出することができる。吸気ダクトとしては種々の長さのものがあるが、実験結果によると、短い吸気ダクトを用いた場合でも、第1の圧力センサをエアフローメータからスロットルボディに向かって20cm以内の部分に設けた場合に、良好な結果を得ることができた。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、吸気ダクトの外周部から外側に向かって延びる連通部(29a)を設けて連通部の先端に第1の圧力センサの感圧部(21c)を設置し、連通部における吸気ダクト側の基端部(15a)と、第1の圧力センサの感圧部(21c)との間の通路長を、共振が発生する長さ以下に設定したことにある。
第1の圧力センサが検出する周波数が、例えば、2kHZ以上の場合には、乗員にとって不快な音が再生されることがある。また、圧力センサは、一般には、圧力変化を検出した信号として直流成分を含む脈流を出力するが、この信号をそのまま音響信号として使用するには問題がある。音響信号は通常は交流成分のみからなるものであるからである。このため、本発明においては、不快な音の発生を防止し、通常の音響機器で扱うことができる信号を得るため、1HZなどのごく低い周波数以下の成分をカットするハイパスフィルタを施したり、2kHZ以上の周波数成分をカットするローパスフィルタを施したりする。また、第1の圧力センサとしての感度範囲が1HZから2kHZのものを用いてもよい。
そして、これらの場合、吸気ダクト側の基端部と第1の圧力センサの感圧部との間の連通部の長さを、例えば、4cm以内にすることにより、吸気ダクト側の基端部と第1の圧力センサの感圧部との間の連通部で生じる共振を防止できる。すなわち、吸気音の音速を340m/sとし、吸気音として必要な上限周波数を2kHZとしたとき、波長は音速/周波数で算出でき、170mmとなる。そして、吸気ダクトと第1の圧力センサを接続する連通部のように一方が開口して他方が閉塞された管体の場合、共振が発生するのは、長さが波長の1/4以上の場合であるため、42.5mm以上の場合となる。
このため、多少の余裕を考慮して、吸気ダクト側の基端部と、第1の圧力センサの感圧部との間の距離を4cm以内に設定することにより、求めようとしている周波数の1/4波長よりも短くすることができ、これによって共振の発生を防止できる。本発明によると、連通部を介して第1の圧力センサを設けることによって、第1の圧力センサの検出に悪影響が生じることを防止できる。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、エンジンとスロットルバルブとの間における第2の圧力センサが取り付けられる部分(14,77d,84)に、外側に向かって延びる連通部(29b)を設けて連通部の先端に第2の圧力センサの感圧部を設置し、連通部における基端部と、第2の圧力センサの感圧部との間の通路長を、第1の圧力センサが設置された連通部における基端部と、第1の圧力センサの感圧部との間の通路長以上に設定したことにある。本発明に係る車両音響装置によると、第2の圧力センサを取り付けるための管状の連通部を長めに設定することで、荒々しいエンジンの脈動による音を減衰して緩和することができる。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、第1の圧力センサと第2の圧力センサとがそれぞれ正圧と負圧との双方を計測することにある。第1の圧力センサと第2の圧力センサとして負圧のみ計測できるものを用いた場合には、アクセルを急に踏み込んだときなどに、正圧の領域が発生すると、スピーカーが発生する音に歪みや割れが生じることがある。本発明に係る車両用音発生装置では、第1の圧力センサと第2の圧力センサとが正圧と負圧との双方を計測することにより、全負荷過渡期においても吸気脈動を消去することなく忠実に検出することで音に歪みや割れが生じることを防止できる。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、第1の圧力センサ(61a)の出力信号が、フィルタによって直流成分を除かれ、第2の圧力センサ(61b)が交流成分と直流成分とを含む脈流信号を出力することにある。
音響信号は、通常、交流成分のみからなっているため、直流成分を含む信号をそのまま音響信号として使用することは、好ましくない。本発明に係る車両用音発生装置によると、第1の圧力センサの出力信号が、フィルタによって直流成分を除かれることにより、不快な音の発生を防止し、好適な音響信号を得ることができる。一方、第2の圧力センサは交流成分と直流成分とを含む脈流信号を出力する。この場合、交流成分の出力信号には、ノイズを抑制する処理を施すことが好ましい。これによると、第2の圧力センサが出力する交流成分の信号によって、エンジンの回転数を認識することができ、直流成分の信号によってエンジンの負荷を認識できるようになり、これらの情報から運転状態を判断して適切な音圧増減を行うことができる。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、エンジン(72)が気筒ごとにスロットルボディ(77a)が配置された独立スロットル方式のものであり、各スロットルボディは、それぞれに設けられたスロットルバルブ(77b)より下流側においてバランスパイプ部(77d)で連通され、第2の圧力センサ(71d)はバランスパイプ部に設けられていることにある。
本発明に係る車両用音発生装置では、独立スロットル方式のエンジンを備えた車両においても、運転者の操作による運転状況に応じたエンジンの吸気音を、外部に対しては小さな音で放出しながら車内ではっきりと聞くことができる。また、第2の圧力センサをバランスパイプ部に設けることによって、エンジンに備わっている全ての気筒の吸気脈動成分を検出することができる(V型エンジンの場合は、片バンクの全ての気筒)。なお、本発明において、吸気ダクトとは、スロットルボディとエアクリーナとの間の部分であり、その間にサージタンクが位置している場合には、サージタンクも吸気ダクトに含まれるものとする。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、エンジン(83)に、コンプレッサー(82a)を吸気ダクト(85)の中間部に位置させたターボチャージャーが設けられ、第1の圧力センサ(81a)がコンプレッサーよりもエアクリーナ側部分に設けられていることにある。本発明に係る車両用音発生装置では、ターボチャージャーを備えた車両においても、運転者の操作による運転状況に応じたエンジンの吸気音を、外部に対しては小さな音で放出しながら車内ではっきりと聞くことができる。
本発明に係る車両用音発生方法の構成上の特徴は、車両のエンジンの吸気音を車内の乗員に伝えるための車両用音発生方法において、外部の空気を取り込む吸気口側に設けられたエアクリーナと、エンジン側に設けられたスロットルボディとを接続する吸気ダクトにおけるエアクリーナとスロットルボディに備わっているスロットルバルブとの間の中央よりもエアクリーナ側部分に設けられた第1の圧力センサと、エンジンとスロットルバルブとの間に設けられた第2の圧力センサとで、エンジンの吸気脈動の圧力を検出して圧力信号として出力する圧力信号出力工程と、車両の運転状態に応じて圧力信号を変化させる処理を信号処理部が行う信号処理工程と、車両内に設置されたスピーカーが、信号処理された音圧信号を、エンジンの吸気音として出力する吸気音出力工程とを備えたことにある。
本発明に係る車両用音発生方法によると、実際のエンジンの吸気音に近くノイズが低減された心地よい音を車内に発生できる。
本発明の第1実施形態に係る車両用音発生装置を備えた自動車の概略を示した平面図である。 第1実施形態に係る車両用音発生装置が備える圧力センサの取付位置を示した概略図である。 第1実施形態に係る車両用音発生装置の構成図である。 吸気ダクトと圧力センサとの位置関係を示しており、(a)は全体の概略断面図、(b)は吸気ダクトと圧力センサとの接続状態を示した断面図である。 圧力センサの圧力特性を示したグラフである。 圧力センサの出力波形を示したグラフである。 フィルタ特性を示したグラフである。 エンジン回転数とスロットル開度とによる音圧増減のマップである。 エンジン回転数と1/3オクターブ周波数との関係を示したグラフである。 1/3オクターブ周波数とゲインとの関係を示したゲイン調整マップである。 エンジン回転数とスロットル開度とによるエフェクター処理マップである。 本発明の第2実施形態に係る車両用音発生装置の構成図である。 本発明の第3実施形態に係る車両用音発生装置の構成図である。 本発明の第4実施形態に係る車両用音発生装置の構成図である。 本発明の第5実施形態に係る車両用音発生装置が備える圧力センサの取付位置を示した概略図である。 本発明の第6実施形態に係る車両用音発生装置が備える圧力センサの取付位置を示した概略図である。 後部にエンジンが配置された自動車の概略を示した平面図である。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る車両用音発生装置20(図3参照)を備えた自動車10の概略を示している。この自動車10は、車体11の前部中央にエンジン12が配置されたFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車、またはFR(フロントエンジン・リアドライブ)車で構成されており、車体11の前後の左右にそれぞれ設けられた一対の前輪と後輪(図示せず)およびハンドル13を備えている。また、図2に示したように、エンジン12には、サージタンク14および吸気ダクト15を介してエアクリーナ16が接続されており、サージタンク14と吸気ダクト15との連結部分にスロットルボディ17が設置され、吸気ダクト15におけるエアクリーナ16側の端部にはエアフローメータ18が設置されている。
外部の空気は外部側に設けられたエアダクトを介してエアクリーナ16内に取り込まれ、エアクリーナ16内で異物を除去されて吸気ダクト15に送られる。スロットルボディ17内には、軸を中心として回転することによりスロットルボディ17内の通気路を開閉するスロットルバルブが配置されており、吸気ダクト15内を通過する空気は、スロットルバルブの開度に応じてサージタンク14内に吸引される。サージタンク14は、空気を一時的に蓄えて流量を緩和し、エンジン12が備える複数の気筒に対する空気の供給量を均等化する。そして、エンジン12は、燃料系から供給される燃料にサージタンク14から供給される空気を混合させて爆発を生じさせることにより駆動力を発生する。エアフローメータ18は、エアクリーナ16から吸気ダクト15に流れる空気の流量を検出する。
車両用音発生装置20は、図3に示したように、第1の圧力センサ21a、第2の圧力センサ21b、ミキサー22、A/D変換器23、信号処理部24、D/A変換器26、増幅器27およびスピーカー28a,28bを備えており、信号処理部24には、制御部30が接続されている。さらに、車両用音発生装置20には、制御部30に接続された回転センサ31、開度センサ32、車速センサ33、操作部34およびメモリ部35も備わっている。第1の圧力センサ21aは、吸気ダクト15におけるエアフローメータ18の近傍部分(図2参照)の外周上部に、図4(a),(b)に示したようにして、管状の連通部29aに含まれる管29cによって接続されており、吸気ダクト15内の吸気脈動の圧力変動を電圧変動として出力する。
管29cは、内径が3mm、外径が6mm、長さが4cm以内の可撓性を備えた樹脂製の管やゴムホース管からなっており、内部を吸気ダクト15内に連通させて吸気ダクト15の外周上部から上方に向かって延びている。そして、管29cの上部側に第1の圧力センサ21aが取り付けられている。第1の圧力センサ21aは感圧部21cを連通部29aに向けて設置されている。感圧部21cは、管29cの上端を閉塞しているケース21d内に収容されており、ケース21dにおける管29cと反対側の内面に設けられた台座21eに設置されている。そして、吸気ダクト15と感圧部21cとの間の部分で連通部29aが構成されている。また、連通部29aにおける吸気ダクト15側の基端部15aの中心部は、エアフローメータ18から20cm以内の部分に位置している。
第2の圧力センサ21bは、スロットルボディ17の下流に配置されたサージタンク14の外壁面に取り付けられており、第1の圧力センサ21aと同じセンサからなっている。したがって、図4(b)の対応する部分に、サージタンク14および第2の圧力センサ21bの符号を記している。この第2の圧力センサ21bは、スロットルボディ17の下流側で生じる吸気脈動を電圧変動として出力するものであり、サージタンク14の外壁面に、連通部29bに含まれる管29d(図4(b)参照)によって接続されている。この管29dは、内径および外径が第1の圧力センサ21aで使用した管29cと同じで、長さが50cm以内の可撓性を備えた樹脂製の管やゴムホース管で構成されている。なお、連通部29bに絞りを設ければ、連通部29bの長さをもっと短くすることも可能であり、調整次第で両連通部29a,29bの長さを等しくすることも可能である。
図5は、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bの圧力特性を表しており、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bに負荷される圧力とそれによって生じる電圧とが比例することが示されている。また、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bは、正圧と負圧の双方を検出するセンサで構成されており、図6の実線は、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bで圧力を検出したときの圧力と時間との関係を示した出力波形の一例である。なお、図6の破線は、実線で示した圧力と同じ圧力を負圧のみを検出する圧力センサを用いて検出した場合の圧力と時間との関係を示した出力波形であり、これによると圧力が「0」以上の値はすべてカットされる。
また、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bの感度範囲は、1HZから2kHZの間である。なお、感度範囲が0HZ以上の圧力センサを用いてもよく、その際は、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bが出力する圧力信号は、直流成分をカットして交流成分だけを通すフィルタ(図示せず)によって直流成分が除去され交流成分だけがミキサー22に送られる。ミキサー22に送られた圧力信号は、合成されたのちに電気信号はA/D変換器23でデジタル信号に変換されて信号処理部24に送られる。
信号処理部24は、A/D変換器23から送られるデジタル信号をフィルタリングして周波数特性を変更させるものであり、フィルタ25、マップ25a,25b,25cを備えている。フィルタ25は、例えば、図7に示した複数のフィルタa,b等からなっている。図7に実線で示したフィルタaは、低周波数の領域と高周波数の領域とでそれぞれゲインを上げ、その間の領域ではゲインを下げている。また、図7に破線で示したフィルタbは、低周波数の領域と高周波数の領域とでそれぞれゲインを下げ、その間の領域ではゲインを上げている。図示は省略しているが、フィルタ25には、フィルタa,b以外のフィルタも含まれており、これらのフィルタの中の任意のフィルタを選択することができる。
そして、例えば、図7のフィルタa,bのうちの一方を選択することにより、音質をスポーツタイプの車のエンジン音にしたりするなど種々の変更ができる。マップ25aは、A/D変換器23から送られる音圧信号や、フィルタ25のフィルタ特性の全体のゲインを変更するもので、例えば、図8に示した音圧増幅マップで構成されている。この音圧増幅マップは、回転センサ31が検出するエンジン12の回転速度と、開度センサ32が検出するスロットルバルブの開度とに基づいて、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bの出力信号や、フィルタ25のゲインを全体的に上げる。
図8の音圧増幅マップでは、横軸に示されたエンジン回転数rpmの最小値(0)と最大値との間を4等分するとともに、縦軸に示されたスロットル開度の最小値(0)と最大値(100)との間を5等分して、各エンジン回転数の領域と各スロットル開度の領域との交差する領域に増加させるゲインが記載されている。そして、このマップ25aによって、エンジン回転数とスロットル開度から求められる数値をもとに補間して、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bの出力信号や、フィルタ25のゲインが全体的に増加される。
マップ25bは、A/D変換器23から送られる音圧信号や、フィルタ25のフィルタ特性の一部のゲインを変更するもので、図9に示した回転センサ31が検出するエンジンの回転数と1/3オクターブ中心周波数との関係を示した1/3オクターブ中心周波数グラフと、図10に示したゲイン調整グラフとで構成されている。図9の1/3オクターブ中心周波数グラフを用いて、回転センサ31が検出するエンジンの回転数から1/3オクターブ中心周波数が求められ、図10に示したゲイン調整グラフを用いて、その1/3オクターブ中心周波数におけるゲインの値が求められる。そして、その値分、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bの出力信号や、フィルタ特性マップにおける対応する周波数でゲインが上げられる。
マップ25cは、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bから出力される圧力信号や、フィルタ25のフィルタ特性に基づいて加工される音圧信号に、さらに、コンプレッサー処理やリバーブレータ処理を行うもので、図11に示したエフェクター処理マップで構成されている。図11のエフェクター処理マップでは、横軸に示されたエンジン回転数rpmの最小値(0)と最大値との間を4等分するとともに、縦軸に示されたスロットル開度の最小値(0)と最大値(100)との間を5等分して、各エンジン回転数の領域と各スロットル開度の領域との交差する領域が、それぞれコンプレッサー処理が行われる領域と、リバーブレータ処理が行われる領域とに区分されている。そして、このエフェクター処理マップによって、エンジン回転数とスロットル開度から求められる数値に応じて、音圧信号に対してエフェクター処理が行われる。
この場合、図11に領域cで示した、回転センサ31が検出するエンジンの回転数および開度センサ32が検出するスロットル開度の双方の値が小さい低回転低負荷時には、音圧を増強するコンプレッサー処理が行われる。また、図11に領域dで示した、回転センサ31が検出するエンジンの回転数の値が大きい高回転時、開度センサ32が検出するスロットル開度の値が大きい高負荷時および双方の値が大きい高回転高負荷時には、リバーブレータ処理が行われる。これによって、低回転低負荷時には音圧を増強し、その他の時にはスピーカーから発生する吸気音に残響効果を与えて伸び感が出るようにする。
信号処理部24で、処理されたデジタル信号は、D/A変換器26でアナログ信号に変換され、増幅器27で増幅されたのちに、スピーカー28a,28bから発音される。スピーカー28a,28bは車体11の前部の左右に設けられており、図1に示したように、スピーカー28aは、車体11の前部に設けられたダッシュボードの左側に設けられた小物入れの内部に設置され、スピーカー28bは、ダッシュボードの右側の壁面パネルの内部に設置されている。スピーカー28a,28bは、ともにエンジン12側から車内に向かって発音できる向きに設置されている。
制御部30は、メモリ部35に接続されており、メモリ部35には、車両用音発生装置20を制御するための制御プログラムや、各種のデータなどが記憶されている。そして、制御部30は、後述する各センサからの信号に基づいてメモリ部35に記憶された制御プログラムを実行する。回転センサ31は、エンジン12に設置されてエンジン12の回転速度を検出し、その検出値を信号として制御部30に送る。開度センサ32はスロットルバルブの軸に設置されて、軸の回転角をスロットルバルブの開度として検出し、その検出値を信号として制御部30に送る。
車速センサ33は、変速機の前部に設置されて、自動車10の走行速度を検出し、その検出値を信号として制御部30に送る。また、操作部34は、ダッシュボードの表面に設置されており、切替スイッチ、3個の押圧スイッチおよびその他の操作子を備えている。切替スイッチは、操作されることによりフィルタ25の中の任意のフィルタを選択する。なお、この切替スイッチでは、どのフィルタも選択しないことを設定することもできる。3個の押圧スイッチは、それぞれマップ25a,25b,25cに対応するもので、オンオフ操作することにより、各マップ25a,25b,25cによる処理を行うか否かの設定ができる。
他の操作子は、車両用音発生装置20をオンオフするためのメインスイッチ、スピーカー28a,28bの全体的な音量を調節するための操作子、スピーカー28a,28bから発音される音の音量バランスを変更して音の定位を調整する定位操作子などで構成されている。また、操作部34の切替スイッチ等は、無線を用いた遠隔操作をすることができ、例えば携帯電話を用いて各種の切替操作ができる。信号処理部24は、携帯電話等の通信手段を介して書き換えることができる。
つぎに、以上のように構成された自動車10の走行時に、車両用音発生装置20を作動させてスピーカー28a,28bからエンジン12の吸気音を発音させるときの操作および制御部30が行う制御について説明する。まず、操作部34の切替スイッチを操作して、フィルタ25の中の任意のフィルタを選択するとともに、3個の押圧スイッチをそれぞれ操作して、各マップ25a,25b,25cによる処理を行うか否かを設定する。また、第2の圧力センサ21bが出力する圧力信号のレベルが、第1の圧力センサ21aが出力する圧力信号のレベルよりも低くなるように設定しておく。
つぎに、始動スイッチをオン状態にしてエンジン12を作動させるとともに、車両用音発生装置20のメインスイッチをオン状態にする。そして、アクセルを踏んで自動車10を走行させる。これによって、制御部30は、回転センサ31と開度センサ32から送られてくる検出値に基づいて、各マップ25a,25b,25cから所定の値を決定して、その値をフィルタ25の中の選択したフィルタに加える。これによって、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bが出力した圧力信号は、信号処理部24によって処理され、スピーカー28a,28bは信号処理部24によって処理されたフィルタ特性に応じて発音する。
このスピーカー28a,28bから発音される吸気音は、第1の圧力センサ21a、第2の圧力センサ21b、回転センサ31および開度センサ32の検出値の変化にしたがって変化していく。なお、操作部34が、フィルタ25の中のすべてのフィルタを選択しない設定になり、3個の押圧スイッチがすべてオフ状態に設定されている場合は、音圧信号は加工されることなく、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bが出力した圧力信号に基づいてスピーカー28a,28bから発音される。また、このスピーカー28a,28bから発音される吸気音は、自動車10の窓を閉めた状態では、車外に対しては殆ど漏れることなく車内の乗員にのみ聞こえる。
以上のように、本実施形態に係る車両用音発生装置20では、第1の圧力センサ21aを、吸気ダクト15におけるエアフローメータ18の近傍部分に設け、第2の圧力センサ21bをサージタンク14の外壁面に設けている。このため、スロットルボディ17の上流側だけでなく、下流側の吸気脈動も検出できるようになり、これによって、スピーカー28a,28bから再生される吸気音がエアクリーナ16を通過する空気量だけでなく、エンジン12の駆動による脈動にも対応したものになる。
この場合、通常の運転時には、第1の圧力センサ21aが出力する圧力信号に、第2の圧力センサ21bが出力する圧力信号が加味された圧力信号に基づいた音がスピーカー28a,28bから発生され、減速時、アイドリング時または軽負荷時には、主として第2の圧力センサ21bが出力する圧力信号に基づいた音がスピーカー28a,28bから発生されるようになる。これによって、スピーカー28a,28bから発生される吸気音が実際のエンジン12の吸気音に近いものになる。このように、アイドリング時、減速時または軽負荷時等、スロットルボディ17のスロットルバルブが閉じているときにも、エンジン12の脈動による音を発生させることができる。
なお、前述した第1の圧力センサ21aを吸気ダクト15に接続する連通部29aの基端部15aの中心部とエアフローメータ18との間の長さは実験から求めたものであり、この長さは20cm以内にすることが好ましい。この実験では、吸気ダクト15の長さを、最短長さとして40cmに設定した場合に、連通部29aの基端部15aの中心部とエアフローメータ18との間の長さを20cm以内にしたときに良好な結果を得ることができた。また、吸気ダクト15の長さが40cm以上である場合には、連通部29aの基端部15aの中心部とエアフローメータ18との間の長さを20cm以上にすることもできるが、その場合でも吸気ダクト15の中央よりもエアフローメータ18側に連通部29aを接続することによって良好な結果を得ることができた。
また、本実施形態では、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bとして、感度範囲が1HZから2kHZのものを用いている。そして、第1の圧力センサ21aを管29cで吸気ダクト15の外周部に接続して連通部29aの長さを4cm以内にし、第2の圧力センサ21bを管29dでサージタンク14の外壁面に接続して連通部29bの長さを50cm以内にしている。このように、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bの感度範囲を1HZから2kHZにすることにより、乗員にとって不快な音を除いて快適な音だけをスピーカー28a,28bに発生させることができる。
また、連通部29aの長さを4cm以内に設定することにより、連通部29a内で共振が生じることを防止できる。すなわち、連通部29aのように吸気ダクト15側の基端部15aが開口して先端部が第1の圧力センサ21aによって閉塞された管体の場合、共振が発生するのは、長さが波長の1/4以上の場合であるため、連通部29aの長さを4cm以内に設定することにより、求めようとしている周波数の1/4波長よりも短くすることができる。これによって共振の発生を防止でき、第1の圧力センサ21aを連通部29aを介して設けることによって、第1の圧力センサ21aの検出に悪影響が生じることを防止できる。
一方、第2の圧力センサ21bは、エンジン12の近傍に位置しているため、エンジン12の脈動による荒々しい音を拾いやすくなる。このため、サージタンク14の外壁面と第2の圧力センサ21bの感圧部との間の連通部29bの長さを50cmと長くして、エンジン12の脈動による荒々しい音を緩和するようにしている。実験によると、連通部29bの長さを、4cm以上50cm以下にしたときに良好な結果を得ることができた。また、連通部29aを吸気ダクト15の外周面上部から上方に向けて延ばしたため、吸気ダクト15の内部にオイルが溜まっても、そのオイルが第1の圧力センサ21a側に流れることを防止できる。さらに、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bが正圧と負圧との双方を計測できるため、すべての吸気脈動を消去することなく忠実に取り出すことができる。
また、本実施形態では、フィルタ25のフィルタ特性を用いて信号処理が行えるため、各周波数に応じてゲインを任意に変更することができる。そして、フィルタ25には、複数のフィルタ特性が備わっているため、スピーカー28a,28bが出力する吸気音の音質を種々のものにすることができる。また、信号処理部24によって行われる信号処理に、マップ25aの音圧増幅マップを用いることにより、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bが出力する圧力信号や、フィルタ特性のゲインを全体的に上げることができる。これによると、スピーカー28a,28bが出力する吸気音を、実際のエンジン12の吸気音に近い減衰特性や、透過損失を備えた吸気音として車室内に再生することができる。
さらに、信号処理部24によって行われる信号処理に、マップ25bのゲイン調整マップを用いることにより、エンジン回転数から次数成分に応じて音圧信号を強調することができる。また、信号処理部24によって行われる信号処理に、マップ25cのエフェクター処理マップを用いることにより、エンジンの回転数およびスロットル開度の双方の値が小さい低回転低負荷時のときにコンプレッサー処理を行い、エンジンの回転数の値が大きい高回転時、スロットル開度の値が大きい高負荷時および双方の値が大きい高回転高負荷時にリバーブレータ処理を行うことができる。
このように、自動車10の運転状態に応じてコンプレッサー処理またはリバーブレータ処理を行うことにより、音圧を増強したり、スピーカー28a,28bから発生する吸気音に残響効果を与えて伸び感を出したりすることができる。さらに、スピーカー28a,28bを、車体11の前部のダッシュボードの左右両側に配置して、エンジン12側から車内に向かって発音できるようにしたため、スピーカー28a,28bから出力される吸気音が、エンジン12の方向から聞こえるようになり、実際のエンジン12の吸気音が聞こえるように感じることができる。
(第2実施形態)
図12は、本発明の第2実施形態に係る車両用音発生装置40を示している。この車両用音発生装置40には、ノイズゲート処理部42とノイズ抑制処理部43とが備わっている。この車両用音発生装置40のそれ以外の部分の構成については、前述した車両用音発生装置20と同一である。したがって、図12において、同一部分に同一符号を記している。ノイズゲート処理部42は、ミキサー22で合成された音圧信号に対してノイズゲート処理を行う。このノイズゲート処理は、雑音の軽減を目的として行うものであり、入力信号の値が所定のしきい値以下の場合に、周波数スペクトルのゲインを下げることによりゲートを閉じ、所定のしきい値以上の場合にゲートを開いてA/D変換器23に送る。すなわち、ノイズゲート処理部42によって、ある音量以下の音をノイズとみなして除去する処理が行われる。そして、A/D変換器23に送られた電気信号はデジタル信号に変換されてノイズ抑制処理部43に送られる。なお、このノイズゲート処理は、デジタル信号に変換された信号に対して行ってもよい。
ノイズ抑制処理部43は、A/D変換器23でデジタル信号に変換された電気信号に対してノイズ抑制処理を行う。このノイズ抑制処理は、電気信号に対してFFT(高速フーリエ変換)を活用した処理を行うもので、A/D変換器23から送られる信号のデータと、所定の周期で現れるノイズのデータとにフーリエ変換を行ってそれぞれの変換値を求め、信号データの変換値からノイズの変換値を引いたのちに元の信号データに戻すことで、ノイズを除去する。この場合、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換して、この信号に含まれるノイズを推定し、周波数領域の信号からノイズを除去したのちに、周波数領域の信号を時間領域の信号に逆変換することが行われる。このような、いわゆるスペクトルサブトラクション処理によって、ノイズのない電気信号が得られ、この電気信号は、信号処理部24に送られる。この場合、スペクトルサブトラクション処理以外のノイズ抑制処理用いてもよいことは言うまでもない。
この車両用音発生装置40が備えるノイズゲート処理部42とノイズ抑制処理部43以外の部分は、前述した車両用音発生装置20の対応する部分と同様の機能を有している。以上のように、車両用音発生装置40を構成したため、スピーカー28a,28bから出力される吸気音に含まれる不要な領域の雑音を除去したり抑制したりして自然な音を発生することができる。この車両用音発生装置40のそれ以外の作用効果は、前述した車両用音発生装置20の作用効果と同様である。なお、前述した第2実施形態においては、ノイズゲート処理部42とノイズ抑制処理部43との双方が備わっているが、これらの一方は省略してもよい。また、これらの処理は、アナログ信号に対して行ってもよいし、デジタル信号に対して行ってもよい。
(第3実施形態)
図13は、本発明の第3実施形態に係る車両用音発生装置50を示している。この車両用音発生装置50は、前述した車両用音発生装置40に備わっている回転センサ31、開度センサ32および車速センサ33に代えて加速度センサ51を設けた構成をしている。この加速度センサ51は、例えば、図1に示した自動車10の車体11における中央底部に設置することができる。この車両用音発生装置50のそれ以外の部分の構成は、前述した車両用音発生装置40と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
以上のように、車両用音発生装置50には加速度センサ51が備わっているため、加速度センサ51が検出する加速度の値に基づいて第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bが出力する圧力信号に対して音圧増幅処理を行ったり、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bが出力する圧力信号を加工するフィルタ特性のゲインを全体的に上げたりすることができる。この場合、フィルタ25やマップ25a等は、自動車10の加速度に応じて、ゲインを上げたり下げたりする周波数領域を決定したり、第1の圧力センサ21aおよび第2の圧力センサ21bの出力信号や、フィルタ25のゲインを全体的に上げたりする。また、加速度センサ51は、車両における任意の場所に取り付けることができるため、自動車10を加工したり煩雑な配線をしたりする必要がなくなり、設置が容易になる。この車両用音発生装置50のそれ以外の作用効果は、前述した車両用音発生装置40の作用効果と同様である。
(第4実施形態)
図14は、本発明の第4実施形態に係る車両用音発生装置60を示している。この車両用音発生装置60には、第1の圧力センサ61aおよび第2の圧力センサ61bが備わっており、前述した第2実施形態に係る車両用音発生装置40に備わっている回転センサ31、開度センサ32および車速センサ33は備わっていない。そして、第2の圧力センサ61bは、ミキサー22だけでなく制御部30にも接続されている。この車両用音発生装置60のそれ以外の部分の構成については、前述した車両用音発生装置40と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
本実施形態によると、第2の圧力センサ61bをノイズゲート処理部42、A/D変換器23およびノイズ抑制処理部43等を介して制御部30に接続することによって、制御部30に交流成分の信号が送られてエンジン12の回転数を認識でき、第2の圧力センサ61bを直接制御部30に接続することによって、制御部30に直流成分の信号が送られエンジン12の負荷を認識することができる。この場合、第2の圧力センサ61bが出力する圧力信号の一部は、直流成分をカットして交流成分だけを通すフィルタ(図示せず)によって直流成分が除去され交流成分だけがミキサー22に送られる。また、第2の圧力センサ61bが出力する他の圧力信号は、交流成分をカットして直流成分だけを通すフィルタ(図示せず)によって交流成分が除去され直流成分だけが制御部30に送られる。
交流成分の信号は、ノイズ抑制処理部43によってノイズ抑制処理を施されることによってエンジン12の回転数を認識できる信号になる。この場合、ノイズが存在する周波数帯域が除去され、吸気音が存在する周波数帯域だけが残るため、エンジン12の回転数をより確実に認識できるようになる。また、直流成分の信号は、直接制御部30に送られることにより、エンジン12の負荷を認識できる信号となる。これらの情報から運転状態を判断して適切な音圧増減を行うことができるようになる。この場合、フィルタ25やマップ25a等は、第1の圧力センサ61aおよび第2の圧力センサ61bの出力信号に応じて、ゲインを上げたり下げたりする周波数領域を決定したり、フィルタ25のゲインを全体的に上げたりする。
この車両用音発生装置60によると、センサの数を少なくすることができ、構成が簡単になるとともに安価になる。この車両用音発生装置60のそれ以外の作用効果については、前述した第2実施形態と同様である。なお、第4実施形態の変形例として、車両用音発生装置60に、第2実施形態に係る車両用音発生装置40に備わっている回転センサ31、開度センサ32および車速センサ33を設けたり、第3実施形態に係る車両用音発生装置50に備わっている加速度センサ51を設けたりすることもできる。
(第5実施形態)
図15は、本発明の第5実施形態に係る車両用音発生装置が備える第2の圧力センサ71bの取付位置を示した概略図である。本実施形態では、エンジン72とサージタンク74との間に、本発明に係るスロットルバルブを構成する複数のスロットルボディ77aが設けられ、サージタンク74の上流側にスロットルボディは設けられていない。このスロットルボディは、4個のスロットルボディ77aをユニット化した独立スロットル方式のもので、各スロットルボディ77aは内部にスロットルバルブ77bを備えており、それらは1個のモータ(図示せず)と一本のスロットル軸77cによって同期して操作される。各スロットルボディ77aは、それぞれに設けられたスロットルバルブ77bより下流側においてバランスパイプ部77dで連通され、第2の圧力センサ71dはバランスパイプ部77dに設けられている。
また、スロットル軸77cの端部には、スロットルバルブ77bの開度を検出するための開度センサ78が設けられている。この第5実施形態に係る車両用音発生装置および車両用音発生装置が取り付けられる自動車のそれ以外の部分の構成は、前述した第1実施形態と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
本実施形態によると、独立スロットルボディ77を備えた自動車においても、運転者の操作による運転状況に応じたエンジン72の吸気音を、外部に対しては小さな音で放出しながら車内ではっきりと聞くことができる。また、第2の圧力センサ71bをバランスパイプ部77cに設けることによって、エンジン72に備わっているバランスパイプ部77dによってつながる全ての気筒の脈動成分を検出することができる。この第5実施形態に係る車両用音発生装置のそれ以外の作用効果については、前述した第1実施形態と同様である。
なお、第5実施形態の変形例として、第2実施形態に備わっているノイズゲート処理部42とノイズ抑制処理部43とを含ませることができる。また、他の変形例として、回転センサ31、開度センサ32および車速センサ33に代えて、第3実施形態に係る車両用音発生装置50に備わっている加速度センサ51を設けたり、第4実施形態のように、回転センサ31、開度センサ32および車速センサ33は設けず、第2の圧力センサ71bを、ミキサー22と制御部30とに接続したりすることもできる。これらの変形例によると、第5実施形態が奏する作用効果に、第2実施形態、第3実施形態または第4実施形態が奏する作用効果が加わるようになる。
(第6実施形態)
図16は、本発明の第6実施形態に係る車両用音発生装置が備える第1の圧力センサ81aおよび第2の圧力センサ81bの取付位置を示した概略図である。本実施形態に係る車両用音発生装置が取り付けられる車両には、コンプレッサー82aとタービン82bとを備えたターボチャージャー82が備わっている。そして、エンジン83に、インテークマニホールド84および吸気ダクト85を介してエアクリーナ86が接続されており、インテークマニホールド84と吸気ダクト85との連結部分にスロットルボディ87が設置されている。また、吸気ダクト85の中間部にはインタークーラー88およびコンプレッサー82aが設置され、吸気ダクト85におけるエアクリーナ86側の端部にはエアフローメータ89が設置されている。
また、エンジン83の排気側には、エグゾーストマニホールド91を介して排気ダクト92が接続されており、この排気ダクト92の上流側にタービン82bが設置され、排気ダクト92の下流側に触媒93が設置されている。また、排気ダクト92におけるタービン82bの上流側部分と下流側部分とがバイパス92aによって接続されており、このバイパス92aにウエイストゲート94が設けられている。吸気ダクト85に設けられたコンプレッサー82aと、排気ダクト92に設けられたタービン82bとは連結軸82cで連結されてターボチャージャー82を構成している。
コンプレッサー82aは、エアクリーナ86を通過した空気を圧縮してインタークーラー88に送り、インタークーラー88は、コンプレッサー82aを通過して熱くなった空気を冷却して空気の密度を高める。インタークーラー88を通過した空気は、スロットルボディ87およびインテークマニホールド84を通ってエンジン83に送られる。また、エンジン83で燃料と空気との混合ガスが燃焼されることにより発生する排気ガスは、エグゾーストマニホールド91を通ってタービン82bに送られる。この排気ガスがタービン82bを回転させることで、コンプレッサー82aがより多くの空気をエンジン83に取り込む。
ウエイストゲート94は、タービン82bの回転を制御するためのもので、必要に応じて排気ガスの一部をバイパス92aに逃がし、一定以上の排気ガスがタービン82bに送られることを抑制する。触媒93は、排気ガス中の有害成分を還元、酸化によって浄化する装置で、浄化された排気ガスが排気ダクト92の下流端から外部に放出される。この第6実施形態に係る車両用音発生装置および車両用音発生装置が取り付けられる自動車のそれ以外の部分の構成は、前述した第1実施形態と同一である。
本実施形態によると、ターボチャージャー82を備えた自動車においても、運転者の操作による運転状況に応じたエンジン83の吸気音を、外部に対しては小さな音で放出しながら車内ではっきりと聞くことができる。また、第1の圧力センサ81aは、吸気ダクト85におけるコンプレッサー82a側に設けてもよいが、その場合でもエアクリーナ86とスロットルボディ87との中間部よりもエアクリーナ86側に設けておく。
これによって、第1の圧力センサ81aは、車外の音やエンジンの運転音の影響を受けることなく、吸気脈動の圧力変動を効果的に検出できるようになる。また、エンジンの駆動音は第2の圧力センサ81bによって検出される。これによって、乗員が車内で聞く音が実際のエンジンの吸気音に近いものになる。この場合、ターボチャージャー82を設けたことによって、発生されるエンジンの吸気音はより迫力のあるものになる。この第6実施形態に係る車両用音発生装置のそれ以外の作用効果については、前述した第1実施形態と同様である。
なお、第6実施形態の変形例として、第2実施形態に備わっているノイズゲート処理部42とノイズ抑制処理部43とを含ませることができる。また、他の変形例として、回転センサ31、開度センサ32および車速センサ33に代えて、第3実施形態に係る車両用音発生装置50に備わっている加速度センサ51を設けたり、第4実施形態のように、回転センサ31、開度センサ32および車速センサ33は設けず、第2の圧力センサ71bを、ミキサー22と制御部30とに接続したりすることもできる。これらの変形例によると、第6実施形態が奏する作用効果に、第2実施形態、第3実施形態または第4実施形態が奏する作用効果が加わるようになる。
また、本発明に係る車両用音発生装置は、前述した各実施形態に限定するものでなく、適宜変更して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、車両として、FF車またはFR車からなる自動車10を用いているが、この自動車10に代えて、図17に示したMR(ミッドシップエンジン・リアドライブ)車、またはRR(リアエンジン・リアドライブ)車からなる自動車100を用いることができる。この自動車100では、一対のスピーカー108a,108bが、車体101の後部座席の後方の左右に設けられている。スピーカー108a,108bは、ともにエンジン102側から車内に向かって発音できる向きに設置されている。
また、回転センサ103はエンジン102に設けられている。この自動車100に備わっている車両用音発生装置のそれ以外の部分の構成については、前述した車両用音発生装置20と同一である。この自動車100では、スピーカー108a,108bを、車体101の後部座席の後方の左右両側に配置して、車体101の後部に設置されたエンジン102側から車内に向かって発音できるようにしたため、スピーカー108a,108bから発生される吸気音が、エンジン102の方向から聞こえるようになり、実際のエンジン102の吸気音が聞こえるように感じることができる。
さらに、本発明に備わっているスピーカーの数は奇数でも偶数でもよいが、奇数にする場合には、一つのスピーカーを車両の幅方向の中央に配置することが好ましい。これによって、吸気音が車両の幅方向の一方から聞こえてくることがなくなり吸気音が聞こえてくる方向のバランスがよくなる。また、スピーカーは、車両の車室前部に位置するダッシュボード内などの見えない部分や車室内の見える部分などに配置することができるが、ダッシュボードの壁面等、車体側の部分に直接固定することが好ましい。これによると、車体の奥側から吸気音が聞こえるようになり、吸気音の変動感が自然になる。また、車体の振動伝播を利用して車体全体から吸気音を感じることができる。
さらに、前述した各スピーカー28a,28b等は、車両用音発生装置20等の専用スピーカーとして設けてもよいし、自動車10等に備わっているオーディオ用のスピーカーと併用してもよい。また、前述した第1および第2実施形態では、信号処理部24が、回転センサ31が検出するエンジン回転数および開度センサ32が検出するスロットル開度を用いて音圧信号を変化させる処理を行っているが、この処理には、車速センサ33が検出する車速をパラメータとして加えることもできる。
さらに、前述した各実施形態では、第1の圧力センサと第2の圧力センサとをそれぞれ1個設けているが、これらの一方または双方を複数個設けてもよい。この場合、第1の圧力センサは、吸気ダクトの外周面の周方向に沿って配置してもよいし、吸気ダクトの長手方向に沿って配置してもよい。また、第2の圧力センサは、サージタンク等の外壁面に互いに間隔を保って設けることが好ましい。これによると、圧力信号を増幅できるとともに種々の部分に対応した音を発生することができる。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、エンジンとスロットルバルブとの間における第2の圧力センサが取り付けられる部分(14,77d,84)に、外側に向かって延びる連通部(29b)を設けて連通部の先端に第2の圧力センサの感圧部を設置し、連通部における基端部と、第2の圧力センサの感圧部との間の通路長を、第1の圧力センサが設置された連通部における基端部と、第1の圧力センサの感圧部との間の通路長以上に設定したことにある。この場合、第2の圧力センサが設置された連通部に おける基端部と、第2の圧力センサの感圧部との間の通路長を4cm以上に設定すること が好ましい。本発明に係る車両音響装置によると、第2の圧力センサを取り付けるための管状の連通部を長めに設定することで、荒々しいエンジンの脈動による音を減衰して緩和することができる。
本発明に係る車両用音発生装置のさらに他の構成上の特徴は、第1の圧力センサ(61a)の出力信号が、フィルタによって直流成分を除かれることにあり、さらに他の構成上 の特徴は、第2の圧力センサ(61b)が交流成分と直流成分とを含む脈流信号を出力することにある。

Claims (17)

  1. 車両のエンジンの吸気音を車内の乗員に伝えるための車両用音発生装置において、
    外部の空気を取り込む吸気口側に設けられたエアクリーナと、前記エンジン側に設けられたスロットルボディとを接続する吸気ダクトにおける前記エアクリーナと前記スロットルボディに備わっているスロットルバルブとの間の中央よりも前記エアクリーナ側部分に設けられ前記エンジンの吸気脈動の圧力を検出し圧力信号として出力する第1の圧力センサと、
    前記エンジンと前記スロットルバルブとの間に設けられ前記エンジンの吸気脈動の圧力を検出し圧力信号として出力する第2の圧力センサと、
    前記車両の運転状態に応じて、前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとが出力する圧力信号を変化させる処理を行う信号処理部と、
    前記車両内に設置され前記信号処理部によって処理された音圧信号を前記エンジンの吸気音として出力するスピーカーと
    を備えたことを特徴とする車両用音発生装置。
  2. 前記信号処理部により処理される前の前記圧力信号にノイズゲート処理を行うノイズゲート処理部を備えた請求項1に記載の車両用音発生装置。
  3. 前記信号処理部により処理される前または後の前記圧力信号にノイズ抑制処理を行うノイズ抑制処理部を備えた請求項1または2に記載の車両用音発生装置。
  4. 周波数とゲインとの関係に基づいて作成したフィルタを備え、前記信号処理部が、前記フィルタを用いて前記音圧信号を変化させる処理を行う請求項1ないし3のうちのいずれか一つに記載の車両用音発生装置。
  5. 前記エンジンの回転数を検出する回転センサと、前記スロットルバルブの開度を検出する開度センサと、前記回転センサが検出するエンジンの回転数と前記開度センサが検出するスロットル開度との関係に基づいて作成した音圧増幅マップとを備え、前記信号処理部が、前記音圧増幅マップを用いて前記音圧信号に対して音圧増幅処理を行う請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載の車両用音発生装置。
  6. 前記エンジンの回転数を検出する回転センサと、周波数とゲインとの関係に基づいて作成したゲイン調整マップと備え、前記信号処理部が、前記回転センサが検出するエンジンの回転数と前記エンジンの気筒数から周波数を求め、求められた周波数の値と前記ゲイン調整マップとを用いて前記音圧信号に対するゲインの調整を行う請求項1ないし5のうちのいずれか一つに記載の車両用音発生装置。
  7. 前記エンジンの回転数を検出する回転センサと、前記スロットルバルブの開度を検出する開度センサと、前記回転センサが検出するエンジンの回転数と前記開度センサが検出するスロットル開度との関係に基づいて作成したコンプレッサー処理領域とリバーブレータ処理領域とを有するエフェクター処理マップとを備え、前記信号処理部が、前記エフェクター処理マップを用いて、前記音圧信号に対してコンプレッサー処理またはリバーブレータ処理を行う請求項1ないし6のうちのいずれか一つに記載の車両用音発生装置。
  8. 前記回転センサが検出するエンジンの回転数および前記開度センサが検出するスロットル開度の双方の値が小さいときに、コンプレッサー処理が行われ、前記回転センサが検出するエンジンの回転数および前記開度センサが検出するスロットル開度の一方または双方の値が大きいときに、リバーブレータ処理が行われる請求項7に記載の車両用音発生装置。
  9. 前記車両の加速度を検出する加速度センサと、前記加速度センサが検出する前記車両の加速度に基づいて作成した音圧増幅マップとを備え、前記信号処理部が、前記音圧増幅マップを用いて前記音圧信号に対して音圧増幅処理を行う請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載の車両用音発生装置。
  10. 前記吸気ダクトにおける前記エアクリーナの下流側近傍に空気の流量を検出するエアフローメータを設置して、前記第1の圧力センサを前記エアフローメータから前記スロットルバルブに向かって20cm以内の部分に設けた請求項1ないし9のうちのいずれか一つに記載の車両用音発生装置。
  11. 前記吸気ダクトの外周部から外側に向かって延びる連通部を設けて前記連通部の先端に前記第1の圧力センサの感圧部を設置し、前記連通部における前記吸気ダクト側の基端部と、前記第1の圧力センサの感圧部との間の通路長を、共振が発生する長さ以下に設定した請求項1ないし10のうちのいずれか一つに記載の車両用音発生装置。
  12. 前記エンジンと前記スロットルバルブとの間における前記第2の圧力センサが取り付けられる部分に、外側に向かって延びる連通部を設けて前記連通部の先端に前記第2の圧力センサの感圧部を設置し、前記連通部における基端部と、前記第2の圧力センサの感圧部との間の通路長を、前記第1の圧力センサが設置された連通部における基端部と、前記第1の圧力センサの感圧部との間の通路長以上に設定した請求項11に記載の車両用音発生装置。
  13. 前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサとがそれぞれ正圧と負圧との双方を計測する請求項1ないし12のうちのいずれか一つに記載の車両用音発生装置。
  14. 前記第1の圧力センサの出力信号が、フィルタによって直流成分を除かれ、前記第2の圧力センサが交流成分と直流成分とを含む脈流信号を出力する請求項1ないし13のうちのいずれか一つに記載の車両用音発生装置。
  15. 前記エンジンが気筒ごとにスロットルボディが配置された独立スロットル方式のものであり、各スロットルボディは、それぞれに設けられた前記スロットルバルブより下流側においてバランスパイプ部で連通され、第2の圧力センサは前記バランスパイプ部に設けられている請求項1ないし14のうちのいずれか一つに記載の車両用音発生装置。
  16. 前記エンジンに、コンプレッサーを前記吸気ダクトの中間部に位置させたターボチャージャーが設けられ、前記第1の圧力センサが前記コンプレッサーよりも前記エアクリーナ側部分に設けられている請求項1ないし14のうちのいずれか一つに記載の車両用音発生装置。
  17. 車両のエンジンの吸気音を車内の乗員に伝えるための車両用音発生方法において、
    外部の空気を取り込む吸気口側に設けられたエアクリーナと、前記エンジン側に設けられたスロットルボディとを接続する吸気ダクトにおける前記エアクリーナと前記スロットルボディに備わっているスロットルバルブとの間の中央よりも前記エアクリーナ側部分に設けられた第1の圧力センサと、前記エンジンと前記スロットルバルブとの間に設けられた第2の圧力センサとで、前記エンジンの吸気脈動の圧力を検出して圧力信号として出力する圧力信号出力工程と、
    前記車両の運転状態に応じて前記圧力信号を変化させる処理を信号処理部が行う信号処理工程と、
    前記車両内に設置されたスピーカーが、前記信号処理された音圧信号を、前記エンジンの吸気音として出力する吸気音出力工程と
    を備えたことを特徴とする車両用音発生方法。
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