JPH036824Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、ピストン頂面に開口するキヤビテイ
の側壁に沿つて燃料噴射ノズルから燃料を噴射す
る形式の直噴式デイーゼルエンジンの改良に関す
るものである。

（従来技術） ピストンの頂面に開口するキヤビテイ内に燃料
噴射ノズルから燃料を噴射するようにした直噴式
のデイーゼルエンジンにおいては、燃料をキヤビ
テイ内壁にぶつけるように噴射する場合と、キヤ
ビテイ内の側壁に沿うように噴射する場合とがあ
る。この内、前者は騒音が高くなる反面、燃料と
空気とのミキシング性に優れて高出力が得られる
という特長があり、これに対して後者は出力的に
は劣るものの、燃焼が穏やかに行われて騒音が低
くなるという特長がある。

然して後者のように、燃料噴射ノズルからキヤ
ビテイ内の側壁に沿つて燃料を噴射する形式（例
えば特開昭49−58205号公報参照）においては、
燃料はキヤビテイの側壁に付着した後、ピストン
の熱により気化されて、キヤビテイ内に導入され
た空気とミキシングされるのであるが、この種の
形式においては、始動時のようなエンジンの低負
荷時であつてピストンの温度が低い時に燃料の気
化性が悪くなり、空気とのミキシングが良好に行
われないことになる。そのため、着火性ないし始
動性が低下し、また排気ガス中のHC，CO等の未
燃焼成分が増大するといつた問題が生じる。

（考案の目的） 本考案は、ピストンの頂面に開口するキヤビテ
イの側壁に沿つて燃料を噴射する形式の直噴式デ
イーゼルエンジンにおける上記のような問題を解
消するもので、キヤビテイ内に形成されるスキツ
シユとスワールとを有効に利用して該キヤビテイ
内での燃料と空気とのミキシングを促進すること
により、低負荷時においても良好な着火性ないし
燃焼性が得られるようにし、これにより始動性を
向上させると共に、排気ガス中の未燃焼成分の低
減を図ることを目的とするものである。

（考案の構成） 本考案に係る直噴式デイーゼルエンジンは、上
記目的達成のため次のように構成したことを特徴
とする。

即ち、ピストン頂面に開口するキヤビテイ内に
吸気のスワールを形成し、且つシリンダヘツドに
配設した燃料噴射ノズルから上記キヤビテイの側
壁に沿つて燃料を噴射するように構成した直噴式
デイーゼルエンジンにおいて、上記キヤビテイの
内壁における底部近傍の周方向所定範囲内に、底
面からなだらかに連続すると共に、上方に向つて
段落ちする段部を形成すると共に、上記燃料噴射
ノズルをこの段部に向けて燃料を噴射するように
配置する。そして、該段部におけるスワール方向
下流側の端部をキヤビテイの側壁からスワールと
略直交する方向に立上る端面によつて構成する。

このような構成によれば、ピストンの上昇移動
に伴つてキヤビテイ内に発生したスキツシユ流が
キヤビテイ底面から壁面に沿つて上昇する際に上
記段部で壁面から剥離されることになるが、この
時、該段部の上方に微小空気流（マイクロスキツ
シユ）が発生し、この微小空気流により段部に向
けて噴射された燃料がミキシングされることにな
る。そして、この微小空気流と燃料とはミキシン
グされながら段部の上方をスワール方向へ流れる
が、該段部のスワール方向下流側の端部に設けら
れた端面を越えた時点で、該端面の前方の側壁に
沿つてキヤビテイの底部から上方に流れているス
キツシユ流と衝突し、この衝突により燃料と空気
とが更にミキシングされることになる。

（考案の効果） このように本考案によれば、キヤビテイの内面
に形成した段部によつて発生される微小空気流に
よつて燃料と空気とがミキシングされると共に、
この燃料と空気とがスワール方向に流れて、段部
端部の端面前方でキヤビテイ内のスキツシユ流に
衝突して更にミキシングされることになる。これ
により、エンジンの低負荷時におけるピストンの
温度が低い場合にも燃料と吸気とのミキシングが
良好に行われると共に、これに伴つて着火性ない
し燃焼性が向上し、もつてこの種の直噴式デイー
ゼルエンジンにおける始動性が改善され、また低
負荷時におけるHC，CO等の未燃焼成分の排出が
低減されることになる。

（実施例） 以下、図面により本考案の実施例を説明する。

第１図に示すように、直噴式デイーゼルエンジ
ン１の燃焼室はシリンダブロツク２に形成された
シリンダボア２ａと、上記シリンダブロツク２に
取付けられたシリンダヘツド３と、上記シリンダ
ボア２ａに摺動自在に嵌挿されたピストン４とで
構成されていると共に、このピストン４の上部に
はキヤビテイ５が形成され、該キヤビテイ５がピ
ストン４の頂面４ａに開口されている。ここで、
ピストン４の上死点時には該ピストン４の頂面４
ａとシリンダヘツド３の下面３ａとの間の間隙が
著しく狭くなつて、圧縮行程の終了時に、第２図
に示すようにキヤビテイ５内に底面５ａの中央部
に向けて流入して該キヤビテイ底面５ａから周囲
の内壁面５ｂに沿つて上昇するスキツシユ流Ａが
形成されるようになつている。

一方、上記シリンダヘツド３にはピストン４に
おけるキヤビテイ５の外周部に対応する位置（第
３図参照）に燃料噴射ノズル６が配設され、ピス
トン４が圧縮行程から燃焼行程に移行する際の上
死点付近に位置した時に該ノズル６から燃料が噴
射されるようになつている。尚、第１図におい
て、７は吸気通路、８は吸気弁を示しており、こ
の吸気弁８が開くことにより吸気通路７から空気
がキヤビテイ５に吸入され、この時キヤビテイ５
内に第３，４図に示すようなスワールＢが発生す
るようになつている。

然して、上記ピストン４に形成されたキヤビテ
イ５は第２〜４図に示すように略球形状とされて
いると共に、このキヤビテイ５の底部近傍におけ
る内壁面５ｂの周方向所定範囲内には、底面５ａ
からなだらかに連続し且つ上方に向つて内径が拡
大するように段落ちした段部９が形成されている
る。そして、この段部９は、前方端、即ち前記ス
ワールＢ方向の下流側端部がキヤビテイ５の内壁
面５ｂからスワールＢと直交する方向に立上る端
面９ａとされていると共に、上記燃料噴射ノズル
６は、該段部９の上面９ｂないし該段部９の直上
方の上部壁面５b´に向けて燃料Ｃを噴射するよう
に指向されている。

本考案に係る直噴式デイーゼルエンジンにおい
ては、圧縮行程の終了時にキヤビテイ５内に形成
されるスキツシユ流Ａは段部９が設けられている
部分で該キヤビテイ５の内壁面５ｂから剥離さ
れ、この時、該段部９の上面９ｂないしその直上
方の上部内壁面５b´の近傍に微小空気流ａが生成
される。

そして、この段部９の上方近傍に燃料噴射ノズ
ル６から燃料Ｃが噴射されることにより、この部
分に発生している上記の微小空気流ａによつて段
部上面９ｂや上部内壁面５b´に一旦付着した燃料
の気化ないし空気とのミキシングが促進されるこ
とになる。また、このようにしてミキシングされ
つつある燃料はキヤビテイ５内に形成されている
スワールＢによつて段部９の上面９ｂに沿つて流
され、該段部９のスワール方向下流側端部の端面
９ａを越えた時点で、その前方におけるスキツシ
ユ流Ａに衝突し、ここで燃料と空気とが更にミキ
シングされる。

このようにして、キヤビテイ５の内壁面５ｂに
沿つて噴射された燃料の気化ないし空気とのミキ
シングが促進されることになり、ピストン４の温
度が低い低負荷時においても燃料の着火性や始動
性が改善され、また排気ガス中の未燃焼成分が低
減されることになる。

尚、以上の実施々においては、段部９がスワー
ル方向上流側の端部９´から該方向に沿つて次第
に幅が広くなるように形成されて、該段部９の上
方にスワールＢをスムーズに導くように図られて
いる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示すもので、第１図は
直噴式デイーゼルエンジンの要部縦断面図、第２
図はピストンに形成されたキヤビテイの形状を示
す拡大断面図、第３図は第２図−線で切断し
た横断面図、第４図は第３図の斜視図である。 １……エンジン、４……ピストン、４ａ……頂
面、５……キヤビテイ、５ａ……底面、６……燃
料噴射ノズル、９……段部、９ａ……端面。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ピストン頂面に開口するキヤビテイ内に吸気の
   スワールを形成し、且つシリンダヘツドに配設し
   た燃料噴射ノズルから上記キヤビテイの側壁に沿
   つて燃料を噴射するように構成した直噴式デイー
   ゼルエンジンであつて、上記キヤビテイの内壁に
   おける底部近傍の周方向所定範囲内に、底面から
   なだらかに連続すると共に上方に向つて段落ちし
   た段部が形成されていると共に、上記燃料噴射ノ
   ズルがこの段部に向けて燃料を噴射するように配
   置されており、且つ該段部におけるスワール方向
   下流側の端部がキヤビテイの側壁からスワールと
   略直交する方向に立上る端面によつて構成されて
   いることを特徴とする直噴式デイーゼルエンジ
   ン。