以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による作業車両の遠隔制御システム(以下、単に遠隔制御システムという)の全体構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態の遠隔制御システムは、複数の作業車両100-1~100-4(以下の説明において、各々を特に区別しないときは単に作業車両100と記す)にそれぞれ搭載された車両制御装置10-1~10-4(以下の説明において、各々を特に区別しないときは単に車両制御装置10と記す)と、作業車両100-1~100-4の外部にある基地局200の中に存在する遠隔操作装置20とを備えて構成される。
作業車両100-1~100-4はそれぞれ作業機101-1~101-4(以下の説明において、各々を特に区別しないときは単に作業機101と記す)を備えている。作業機101は任意であるが、本実施形態では一例として、車両本体の後方に連結して使用される耕うん機であるとする。作業機101は、上下方向に昇降可能に構成されており、作業時には作業機101を下降させ、非作業時には作業機101を上昇させる。
車両制御装置10と遠隔操作装置20との間は、無線LANなどの無線通信手段を介して接続されており、相互に通信を行うことができるようになっている。本実施形態の遠隔制御システムでは、遠隔操作装置20から複数の車両制御装置10にそれぞれ与えられる指示によって、複数の作業車両100の走行および作業を制御する。また、複数の車両制御装置10から遠隔操作装置20に送信される状態情報(詳細は後述する)によって、複数の車両制御装置10の走行を監視するための監視画面を遠隔操作装置20に表示させるとともに、遠隔操作装置20が備えるステアリング31の動きを制御する(これらの動作についても詳細は後述する)。
なお、本実施形態では、1台から最大4台までの作業車両100を遠隔制御により同時に走行させることができるシステムの例について説明するが、最大4台というのは一例に過ぎず、2台以上であればよい。また、本実施形態の遠隔制御システムは、1台の作業車両100のみを遠隔制御により走行させるシステムであってもよい。または、遠隔操作装置20が複数存在する構成でも良い。
図2は、車両制御装置10および遠隔操作装置20の機能構成例(一部にハードウェア構成を含む)を示すブロック図である。図2に示すように、車両制御装置10は、機能構成として、無線通信部11、モード設定部12、走行制御部13および状態情報送信部14を備えている。また、車両制御装置10は、記憶媒体として経路データ記憶部111を備えている。また、車両制御装置10には、各種センサ112が電気的に接続されている。
各機能ブロック11~14は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11~14は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
また、遠隔操作装置20は、機能構成として、無線通信部21、モード制御部22、遠隔操縦指示部23、状態情報受信部24、監視画面表示制御部25、旋回曲率差分検出部26および差分制御部27を備えている。また、遠隔操作装置20は、ハードウェア構成として、操作部211およびディスプレイ212を備えている。また、遠隔操作装置20は、記憶媒体として経路データ記憶部213を備えている。
各機能ブロック21~27は、ハードウェア、DSP、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック21~27は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
車両制御装置10の無線通信部11および遠隔操作装置20の無線通信部21は、相互に無線通信を行うものである。無線通信部11,21は、複数の作業車両100の走行および作業を制御するための各種指示情報を遠隔操作装置20から車両制御装置10に送信する。また、無線通信部11,21は、車両制御装置10の各種センサ112において検出された各種状態情報を車両制御装置10から遠隔操作装置20に送信する。
車両制御装置10のモード設定部12は、作業車両100の走行に関するモードを設定する。本実施形態において設定可能なモードは、あらかじめ設定された走行経路に沿って自動操舵制御により自律走行する自律走行モード、遠隔操作装置20から受信する操舵制御を含む指示(以下、遠隔操縦指示という)に従って遠隔操縦走行する遠隔操縦走行モード、作業者が実際に作業車両100に搭乗し、作業車両100に設けられた各種の操作子を用いて作業車両100を操縦する手動走行モード、自律走行、遠隔操縦走行および手動走行の何れも行わずに作業車両100を待機状態とする待機モードの4つである。自律走行モード、手動走行モードおよび待機モードは、特許請求の範囲の「他走行モード」に相当する。
モード設定部12は、車両制御装置10に設けられた手動走行モードの設定スイッチに基づいて、手動走行モードの設定および解除を行う。モード設定部12は、手動走行モードを設定または解除した場合、そのことを遠隔操作装置20に通知する。以下、この通知を手動走行モード切替通知という。
例えば、モード設定部12は、設定スイッチがオンとされたときに、手動走行モードを設定する。また、モード設定部12は、設定スイッチがオフとされたときに、手動走行モードを解除し、例えば待機モードを設定する。手動走行モードについて作業車両100の設定スイッチでオン/オフを制御するのは、作業車両100の操縦席に作業者がいないときまたは作業者が関知していないときに、遠隔操作装置20での遠隔操作によって他のモードから手動走行モードへ、または手動走行モードから他のモードへと勝手に切り替わることがないようにするためである。
また、モード設定部12は、遠隔操作装置20から受信する指示(以下、モード設定指示という)に従って、自律走行モード、遠隔操縦走行モードまたは待機モードの何れかを設定する。なお、車両制御装置10の電源がオンとされた直後の初期状態では、モード設定部12は手動走行モードを設定する。モード設定部12はその後、遠隔操作装置20から受信するモード設定指示に従って、自律走行モード、遠隔操縦走行モードまたは待機モードの何れかを設定する。ここで、モード設定部12は、車両制御装置10に設けられた設定スイッチにより手動走行モードが解除されてはじめて待機モード、遠隔操縦走行モード、自律走行モードを選択できる状態となる。これは、電源投入直後の安全性を考慮したものである。
走行制御部13は、モード設定部12により設定されたモードに従って作業車両100の操舵を含む走行制御を実行する。モード設定部12により自律走行モードが設定された場合、走行制御部13は、経路データ記憶部111に記憶された走行経路のデータと、各種センサ112に含まれる位置・方位センサにより検出される作業車両100の現在位置および現在方位(以下、車両位置・方位という)とに基づいて、走行経路に対する車両位置・方位の偏差を逐次検出しながら、その偏差が少なくなるように作業車両100の操舵を自動制御する。また、自律走行モードの設定時に走行制御部13は、作業車両100の走行速度や変速など、操舵以外の走行に関する制御も自動実行する。すなわち、走行制御部13は、自律走行を開始した後は、遠隔操作装置20からの指示を受けることなく、一切の走行を自動制御する。
経路データ記憶部111には、作業車両100が走行する圃場内にあらかじめ設定された走行経路を表す経路データが記憶されている。この経路データは、例えば、作業車両100が走行を開始する前に遠隔操作装置20から車両制御装置10に送信され、経路データ記憶部111に記憶される。なお、経路データ記憶部111に経路データを記憶させる方法は、上記のような無線送信によるものに限定されない。例えば、経路データを記憶したリムーバブル記憶媒体を車両制御装置10に接続し、当該リムーバブル記憶媒体から経路データ記憶部111にデータを転送するようにしてもよい。なお、経路データ記憶部111は、後述する監視画面に圃場の俯瞰画像を表示させるために使用するデータ(以下、圃場データという)をさらに記憶してもよい。また、経路データ記憶部111は、圃場の地図データをさらに記憶してもよい。圃場の地図データは、例えば、作業車両100が圃場から逸脱したか否かを監視するためのデータとして利用することが可能である。
モード設定部12により遠隔操縦走行モードが設定された場合、走行制御部13は、遠隔操作装置20から送信されてくる遠隔操縦指示に従って、作業車両100の走行制御を実行する。この場合における遠隔操縦指示は、エンジンの起動・停止に関する指示、走行の開始・停止に関する指示、操舵の制御に関する指示、走行速度の制御に関する指示、変速の制御に関する指示などを含む。
走行制御部13は、モード設定部12により自律走行モードまたは遠隔操縦走行モードが設定された場合、作業車両100が備える作業機101の昇降および駆動も制御する。自律走行モードの設定時には、走行制御部13は、経路データ記憶部111に経路データと共に記憶された作業データに従って、設定されたタイミングで作業機101の昇降および駆動を自動制御する。一方、遠隔操縦走行モードの設定時には、走行制御部13は、遠隔操作装置20から送信されてくる遠隔操縦指示に従って、作業機101の昇降および駆動を制御する。
走行制御部13は、モード設定部12により手動走行モードが設定された場合、作業車両100に搭乗した作業者による作業車両100のステアリング、ペダル、変速レバーその他の操作子の操作に従って、作業車両100の走行制御を実行するとともに、作業車両100が備える作業機101の昇降および駆動を制御する。
モード設定部12により待機モードが設定された場合、走行制御部13は、エンジンは動作させつつ変速をニュートラルにしてアイドリング状態とし、作業車両100を停止させる。また、PTO軸の動力をPTOクラッチによって停止させ、上方のホームポジションに作業機101を上昇させた状態で待機させる。後述するように、待機モードの設定時には、遠隔操作装置20から車両制御装置10に遠隔操縦指示は送信されない。従って、車両制御装置10が遠隔操縦指示に従って作業車両100を走行させたり作業機101を作動させたりすることはない。
状態情報送信部14は、各種センサ112により検出される作業車両100の走行状態を示す走行状態情報、および、各種センサ112により検出される作業機101の作業状態を示す作業状態情報を遠隔操作装置20に逐次送信する。走行状態情報は、例えば、作業車両100の車両位置・方位、操舵角(特許請求の範囲の操舵関連値に相当)、走行速度、変速段、エンジン回転数、エンジン負荷率、車体の傾き角度(ロール角度およびピッチ角度)、燃料残量、冷却水温度、バッテリ電圧、車両周囲画像などの情報を含む。また、作業状態情報は、例えば、作業機101の高さ、PTO回転数などの情報を含む。
各種センサ112は、上述の走行状態情報および作業状態情報を取得するために必要な複数のセンサを含む。ここで、複数の作業車両100はそれぞれ、各種センサ112の1つとして、作業車両100の周囲を撮影するカメラを備えている。本実施形態では一例として、作業車両100の前方、後方、左方、右方、左斜め後方および右斜め後方を撮影するための6つのカメラを搭載している。作業車両100の前方を撮影するフロントカメラは、車体の一部が写り込むような撮影範囲となるように、設置位置および設置角度が調整されている。作業車両100の後方を撮影するリアカメラは、作業機101が写り込むような撮影範囲となるように、設置位置および設置角度が調整されている。
遠隔操作装置20のモード制御部22は、遠隔操作装置20の操作者(遠隔操作者)による操作部211に対する操作に従って、複数の車両制御装置10に対するモード(自律走行モード、遠隔操縦走行モード、待機モード)の設定を制御する。本実施形態において、モード制御部22は、どの作業車両100に対してどのモードを設定しているかの情報を記憶している。また、モード制御部22は、無線通信部21が車両制御装置10から手動走行モード切替通知を受信した場合、その通知の内容に従って、手動走行モードまたは待機モードの何れかの情報を記憶する。そして、モード制御部22は、記憶されるモード情報が他走行モードから遠隔操縦走行モードに切り替えられたときに、そのことを旋回曲率差分検出部26に通知する。
モード制御部22は、複数の作業車両100が何れかのモードで走行中に、遠隔操縦走行モードが設定される車両制御装置10が同時に2つ以上とならないように、複数の車両制御装置10に対するモードの設定を制御する。具体的には、モード制御部22は、一の作業車両100-i(i=1~4の何れか)の車両制御装置10-iに対して遠隔操縦走行モードが設定されているときに、他の作業車両100-j(j=1~4の何れか。j≠i)の車両制御装置10-jに対して遠隔操縦走行モードを設定する操作を行うことができないようにし、他の作業車両100-jの車両制御装置10-jに対して遠隔操縦走行モードを設定するためのモード設定指示を送信することがないようにする。このとき、複数の作業車両100-1~100-4の車両制御装置10-1~10-4が備える走行制御部13は、モード設定部12により既に設定中のモードに従って、作業車両100-1~100-4の操舵を含む走行制御を続行する。
遠隔操縦指示部23は、遠隔操作者による操作部211に対する操作に従って、遠隔操縦走行モードが設定されている作業車両100-iの車両制御装置10-iに対して各種の遠隔操縦指示を送信する。上述したように、遠隔操縦指示は、作業車両100のエンジンの起動・停止に関する指示、走行の開始・停止に関する指示、操舵の制御に関する指示、走行速度の制御に関する指示、変速の制御に関する指示、作業機101の昇降に関する指示、作業機101の駆動に関する指示などを含む。
図3は、操作部211のハードウェア構成例を示す図である。図3に示すように、本実施形態の操作部211は、ステアリング31、ペダル32、スイッチ群33および変速レバー34を備えている。ステアリング31、ペダル32および変速レバー34については、作業車両100が実際に備えるものに模して構成されている。これにより、遠隔操作者は、実機の作業車両100を実際に操作しているのに近い感覚で操作部211を操作することができる。ステアリング31は、特許請求の範囲の「模擬ステアリング」に相当する。
スイッチ群33は、複数の作業車両100-1~100-4の何れかを選択するための車両選択スイッチ331と、自律走行モード、遠隔操縦走行モードまたは待機モードの何れかを選択するためのモード選択スイッチ332とを備える。このモード選択スイッチ332は、手動走行モードを選択するためのスイッチは含まない。作業車両100に対して手動走行モード以外の何れかのモードを設定する際は、まず車両選択スイッチ331を操作して作業車両100-1~100-4の何れかを選択し、次にモード選択スイッチ332を操作して所望のモードを選択する。このような操作が行われると、モード制御部22は、モード選択スイッチ332により選択された作業車両100の車両制御装置10に対して、モード選択スイッチ332により選択されたモードを設定するためのモード設定指示を送信する。
ただし、一の作業車両100-iの車両制御装置10-iに対して遠隔操縦走行モードが設定されているときに、車両選択スイッチ331により他の作業車両100-jを選択する操作を行っても、モード制御部22はその操作を無効とし、当該他の作業車両100-jを選択するモード選択スイッチ332の操作を受け付けないようにする。この場合、モード制御部22が他の作業車両100-jの車両制御装置10-jに対して遠隔操縦走行モードを設定するためのモード設定指示を送信することはない。
なお、一の作業車両100-iの車両制御装置10-iに対して遠隔操縦走行モードが設定されているときに、車両選択スイッチ331により他の作業車両100-jを選択した後、モード選択スイッチ332により遠隔操縦走行モードを選択する操作が行われたときに、モード制御部22が遠隔操縦走行モードの選択操作を無効とするようにしてもよい。
例えば、第1の作業車両100-1の車両制御装置10-1に対して遠隔操縦走行モードが設定されているときに、第2の作業車両100-2の車両制御装置10-2に対して遠隔操縦走行モードを設定する操作が行われた場合、モード制御部22は当該操作を無効とし、第2の作業車両100-2の車両制御装置10-2に対して遠隔操縦走行モードを設定するためのモード設定指示を送信しないようにする。このとき、第1の作業車両100-1の走行制御部13は、モード設定部12により既に設定中の遠隔操縦走行モードに従って、第1の作業車両100-1の走行制御を続行する。また、第2~第4の作業車両100-2~100-4の走行制御部13は、モード設定部12により既に設定中の自律走行モード、手動走行モードまたは待機モードに従って、各作業車両100-2~100-4の走行制御を続行する。
スイッチ群33は、作業車両100のエンジンの起動・停止、走行の開始・停止、作業機101の昇降、作業機101の駆動を指示するため各種スイッチ333を更に備える。遠隔操縦走行モードが設定されている作業車両100が車両選択スイッチ331の操作により選択されている状態で、遠隔操作者が各種スイッチ333を操作すると、操作されたスイッチに応じた内容の指示情報が遠隔操縦指示部23により生成される。遠隔操縦指示部23は、この指示情報を含む遠隔操縦指示を、車両選択スイッチ331により選択されている作業車両100(遠隔操縦走行モードが設定されている作業車両100)に送信する。
スイッチ群33は、緊急スイッチ334を更に備える。遠隔操作者により緊急スイッチ334が操作された場合、モード制御部22は、待機モードに設定するためのモード設定指示を全ての作業車両100の車両制御装置10に対して一斉送信する。例えば、作業車両100の周囲に人や動物などの障害物が現れて緊急停止する必要が生じた場合に緊急スイッチ334を操作することにより、全ての作業車両100の走行と作業を即座に停止させることが可能である。周囲に障害物が現れた作業車両100を車両選択スイッチ331により選択した後にモード選択スイッチ332の操作によって待機モードを設定することにより、障害物が現れた作業車両100だけを停車させることも可能であるが、緊急性が高い事態が発生している場合には、1つの緊急スイッチ334の操作のみによって作業車両100を緊急停車させることができる。
ここでは、緊急スイッチ334が操作された場合に全ての作業車両100の車両制御装置10を待機モードに設定する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、緊急スイッチ334が操作された場合に遷移する緊急停止モードを別に設け、作業車両100のエンジンを停止し、パーキングブレーキを作動させるようにしてもよい。
なお、手動走行モードが設定されている作業車両100については、遠隔操作装置20において緊急スイッチ334が操作された場合でも待機モードまたは緊急停止モードに切り替わらないようにするのが好ましい。作業者(手動操縦者)の意思に関係なく作業車両100を突然停止させることは却って危険だからである。
ステアリング31は、遠隔操作者が手で把持して使用するものである。遠隔操縦走行モードが設定されている作業車両100が車両選択スイッチ331の操作により選択されている状態で、遠隔操作者がステアリング31を左方向または右方向に回転させると、操舵方向および操舵量を示す操舵情報が遠隔操縦指示部23により生成される。遠隔操縦指示部23は、この操舵情報を含む遠隔操縦指示を、車両選択スイッチ331により選択されている作業車両100(隔操縦走行モードが設定されている作業車両100)に送信する。
なお、ステアリング31の左ロック(限界まで左回転させた状態)から右ロック(限界まで右回転させた状態)までの回転角(以下、左右回転角という)と、作業車両100が備える実際のステアリングの左右回転角とは、必ずしも一致していなくてもよい。
ステアリング31の左右回転角と作業車両100が備える実際のステアリングの左右回転角とが一致していない場合、ステアリング31の操舵量を作業車両100の実際のステアリングの操舵量に換算した上で、換算後の操舵量を示す操舵情報を送信するようにしてもよい。あるいは、ステアリング31の操舵量を操舵情報として送信し、これを受信した作業車両100において実際のステアリングの操舵量に換算するようにしてもよい。この換算は、例えば、ステアリング31の左右回転角に対応する作業車両100の旋回曲率と、作業車両100の実際のステアリングの左右回転角に対応する作業車両100の旋回曲率とが一致するような関係となる関数またはテーブル情報に従って行う。
図3に示すように、ステアリング31は、遠隔操作者が左方向または右方向にどの程度回転させているのかを視覚的に分かりやすくなるような構造を有している。すなわち、ステアリング31は、中央のホーンパッド31aから左右方向に延びる2本のスポーク31bを備え、図3のようにスポーク31bが水平状態となっているときに、ステアリング31の操舵角が0度であることが直感的に分かるようになっている。
ペダル32は、遠隔操作者が足で踏んで使用するものであり、左右で独立したブレーキペダルおよびアクセルペダルを含む。遠隔操縦走行モードが設定されている作業車両100が車両選択スイッチ331の操作により選択されている状態で、遠隔操作者がペダル32を踏むと、左車輪に対する減速操作、右車輪に対する減速操作または左右両輪に対する加速操作の何れかを示すペダル操作情報が遠隔操縦指示部23により生成される。遠隔操縦指示部23は、このペダル操作情報を含む遠隔操縦指示を、車両選択スイッチ331により選択されている作業車両100(隔操縦走行モードが設定されている作業車両100)に送信する。
変速レバー34は、遠隔操作者が手で把持して使用するものである。遠隔操縦走行モードが設定されている作業車両100が車両選択スイッチ331の操作により選択されている状態で、遠隔操作者が変速レバー34を操作すると、当該操作により指定された変速段を示す変速情報が遠隔操縦指示部23により生成される。遠隔操縦指示部23は、この変速情報を含む遠隔操縦指示を、車両選択スイッチ331により選択されている作業車両100(隔操縦走行モードが設定されている作業車両100)に送信する。
なお、遠隔操縦走行モードが設定されていない作業車両100が車両選択スイッチ331の操作により選択されているときに、ステアリング31、ペダル32、各種スイッチ333および変速レバー34を操作しても、遠隔操縦指示部23による遠隔操縦指示の送信は行われない。
状態情報受信部24は、複数の作業車両100の状態情報送信部14から送信された状態情報(走行状態情報および作業状態情報)をそれぞれ逐次受信する。状態情報受信部24は、受信した状態情報を監視画面表示制御部25に供給する。また、状態情報受信部24は、受信した状態情報のうち、作業車両100の実際の操舵角を示す情報(以下、実際操舵角情報という)を旋回曲率差分検出部26に供給する。
監視画面表示制御部25は、経路データ記憶部213に記憶されている圃場データおよび経路データと、作業車両100から送られてくる状態情報(走行状態情報および作業状態情報)とに基づいて、複数の作業車両100の走行状態および作業状態を監視する監視画面を生成し、ディスプレイ212に表示させる。経路データ記憶部213に記憶されている圃場データおよび経路データは、複数の作業車両100-1~100-4がそれぞれ走行する圃場の圃場データと、複数の作業車両100-1~100-4に対してそれぞれ設定される走行経路を表す経路データである。
図4は、ディスプレイ212に表示される監視画面の一例を示す図である。図4に示すように、本実施形態では3つのディスプレイ212-1~27-3を有し、それぞれに対して異なる監視画面を表示するようにしている。これら3つのディスプレイ212-1~27-3は、遠隔操作者が操作する操作部211の前方に横方向に並べて配置され、各ディスプレイ212-1~27-3に表示された監視画面を確認しながら操作部211を操作することができるようになっている。
図4(a)に示す第1のディスプレイ212-1は、圃場における複数の作業車両100-1~100-4の走行位置を示す俯瞰画像を表示するためのものである。第1のディスプレイ212-1の半分から左側の画面401には、複数の作業車両100-1~100-4が走行する複数の圃場を含む全体地図の画像が表示される。第1のディスプレイ212-1の半分から右側の4分割画面402~405には、複数の作業車両100-1~100-4が走行する複数の圃場(特に、作業車両100から所定範囲内のエリア)の画像がそれぞれ拡大して個別に表示される。
監視画面表示制御部25は、経路データ記憶部213に記憶された圃場データを用いて圃場画像を表示するとともに、状態情報受信部24により取得される作業車両100-1~100-4の車両位置・方位情報に基づいて、圃場画像上に車両画像を重畳して表示する。作業車両100-1~100-4の実際の走行に伴って、圃場画像上における車両画像の表示位置が逐次更新されるので、遠隔操作者は第1のディスプレイ212-1の表示を見ることにより、それぞれの作業車両100-1~100-4が圃場のどの位置をどの方向に向かって走行中であるかを俯瞰的に確認することができる。
図4(b)に示す第2のディスプレイ212-2は、複数の作業車両100-1~100-4の車両周囲画像と走行状態情報と設定中のモード情報とを集約的に表示するためのものである。図4(b)に示すように、第2のディスプレイ212-2は4つの画面411~414に分割されており、それぞれの分割画面411~414に対して複数の作業車両100-1~100-4に関する情報が個別に表示される。ただし、1つのディスプレイ212-2に対して複数の作業車両100-1~100-4に関する情報を表示するため、車両周囲画像および走行状態情報については、状態情報受信部24が受信するもののうち一部のみを表示する。
例えば、左上の分割画面411について説明すると、分割画面411の半分から左側の画面411-1に、フロントカメラで撮影された車両前方の車両周囲画像が表示され、右側の上半分の画面411-2に、リアカメラで撮影された車両後方の車両周囲画像が表示される。また、右側の下半分の画面411-3には、走行状態情報の一部と設定中のモード情報とが簡略的に表示される。ここに表示される走行状態情報は、例えば、変速段、エンジン負荷率、燃料残量、冷却水温度、バッテリ電圧などである。
上述したように、作業車両100の前方を撮影するフロントカメラは、車体の一部が写り込むような撮影範囲となるように設置位置および設置角度が調整されている。また、図4(b)に示すように、複数の作業車両100-1~100-4の筐体には、フロントカメラの撮影範囲内に、それぞれの作業車両100-1~100-4を識別するための識別情報(図4(b)の例では“1”~“4”の番号)が付されている。監視画面表示制御部25は、この識別情報の画像が含まれる態様で監視画面を生成し、第2のディスプレイ212-2に表示させる。これにより、遠隔操作者は、4つの分割画面411~414のどれに対して、複数の作業車両100-1~100-4のどれに関する情報が表示されているのかを直感的に把握することができる。
図4(c)に示す第3のディスプレイ212-3は、複数の作業車両100-1~100-4の中から車両選択スイッチ331により選択された1つの作業車両100の車両周囲画像と状態情報と設定中のモード情報とを詳細に表示するためのものである。図4(c)に示すように、第3のディスプレイ212-3は7つの画面421~427に分割されており、上側の6つの分割画面421~426に6方向の車両周囲画像がそれぞれ表示される。また、下側の横に細長い分割画面427に各種の状態情報と設定中のモード情報とが表示される。ここに表示される状態情報は、状態情報受信部24が受信する走行状態情報および作業状態情報の一部または全てである。一部を表示する場合、どの走行状態情報または作業状態情報を表示するかは任意に設計してよい。
なお、車両制御装置10と遠隔操作装置20との間の通信量を減らすために、車両選択スイッチ331により選択された1つの作業車両100に関してのみ全方向の車両周囲画像と状態情報の全てを車両制御装置10から遠隔操作装置20に送信するようにする一方、選択されていない3つの作業車両100に関しては、図4(b)に示す第2のディスプレイ212-2に表示させる一部の車両周囲画像と一部の走行状態情報(実際操舵角情報を含む)だけを車両制御装置10から遠隔操作装置20に送信するようにしてもよい。
図4(c)に示す第3のディスプレイ212-3においても、監視画面表示制御部25は、車両選択スイッチ331により選択された1つの作業車両100の識別情報の画像が含まれる態様で監視画面を生成して表示させる。これにより、遠隔操作者は、第3のディスプレイ212-3に表示されている情報が、複数の作業車両100-1~100-4のどれに関するものであるかを直感的に把握することができる。
また、下側の横に細長い分割画面427には、所定のメッセージを表示するためのメッセージ画面428が存在する。監視画面表示制御部25は、一の作業車両100-iの車両制御装置10-iに対して遠隔操縦走行モードが設定されているときに、車両選択スイッチ331により他の作業車両100-jを選択する操作が行われた場合、所定の警告メッセージをメッセージ画面428に表示させる。なお、ここでは警告メッセージを表示させる例を説明したが、警告音声をスピーカから出力するようにしてもよい。
これにより、遠隔操作者は、車両選択スイッチ331により選択した作業車両100-jに対して遠隔操縦走行モードを設定することができないことを把握することができる。この場合、遠隔操作者は、例えば、選択中の一の作業車両100-iについてモード選択スイッチ332により自律走行モードを設定した後、車両選択スイッチ331により他の作業車両100-jを選択してモード選択スイッチ332により遠隔操縦走行モードを設定することにより、一の作業車両100-iの走行を継続しつつ、他の作業車両100-jに対して遠隔操縦走行モードを設定することができる。なお、一の作業車両100-iに関しては、いったん待機モードに設定した後に、待機モードから自律走行モードに変更するようにしてもよい。
このように、本実施形態によれば、複数の作業車両100に対して同時に遠隔操縦走行モードが設定されることがないので、遠隔操作者が複数の作業車両100を同時に遠隔操縦する状況が発生しないようにしつつ、複数の作業車両100-1~100-4の走行を継続しながら、所望の作業車両100に対して遠隔操縦走行モードの設定を行うことができる。これにより、自律走行モードで走行中の作業車両100-jにおいて自律走行が困難な状況が発生した場合に、複数の作業車両100-1~100-4の走行を継続しながら、かつ安全性を確保しながら、当該作業車両100-jについて自律走行モードから遠隔操縦走行モードへの切り替えを行うことができる。
旋回曲率差分検出部26は、他走行モードから遠隔操縦走行モードに切り替えられたことがモード制御部22から通知されたときに、遠隔操縦走行モードに切り替えられた作業車両100に関して、状態情報受信部24により受信された走行状態情報に含まれる実際操舵角情報から特定される作業車両100の実際の旋回曲率と、そのときの操作部211のステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率との差分を検出する。
すなわち、旋回曲率差分検出部26は、作業車両100が備える実際のステアリングの操舵角と、当該操舵角に対する作業車両100の旋回曲率との対応関係を示す情報(テーブル情報または関数情報)を有しており、この情報を用いて、実際操舵角情報で示される実際の操舵角から作業車両100の実際の旋回曲率を特定する。また、旋回曲率差分検出部26は、ステアリング31の操舵角と、当該操舵角に対する旋回曲率との対応関係を示す情報(テーブル情報または関数情報)を有しており、この情報を用いて、遠隔操縦走行モードに切り替えられたときにおけるステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率を特定する。そして、このようにして特定した作業車両100の実際の旋回曲率とステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率との差分を検出する。
例えば、自律走行モードで走行中の作業車両100-jの走行モードを遠隔操縦走行モードに切り替えた場合、あるいは、手動走行モードで走行中の作業車両100-jの走行モードを待機モードを介して遠隔操縦走行モードに切り替えた場合、当該作業車両100-jの操舵角(自律走行モードまたは手動操作モードから遠隔操縦走行モードに切り替えられた時点での実際の操舵角)に対応する旋回曲率と、操作部211が備えるステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率とが一致していないことがある。旋回曲率差分検出部26は、このような不一致に係る旋回曲率の差分(左右どちらの方向にどの大きさの曲率差があるか)を検出する。
差分制御部27は、旋回曲率差分検出部26により所定値を超える旋回曲率の差分が検出された場合、当該所定値を超える旋回曲率の差分が解消された状態で遠隔操縦指示部23が操舵制御の指示を送信することとなるように制御する。具体的には、差分制御部27は、ステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率を作業車両100の実際の旋回曲率に近づけて所定値を超える旋回曲率の差分が解消されるように、ステアリング31を物理的に自動回転させる。このとき差分制御部27は、ステアリング31の回転が完了するまでは、操舵制御の指示を送信しないように遠隔操縦指示部23を制御する。ここで、所定値は、旋回曲率の差分がほぼないと言える程度の値であり、例えばゼロ、またはそれに近い小さな値である。
図5は、差分制御部27の動作例を模式的に示す図である。図5(a1)は、一の作業車両100-iの走行モードを他走行モードから遠隔操縦走行モードに切り替えたときのステアリング31の状態を示している。このときのステアリング31の操舵角は、例えば、当該一の作業車両100-iの走行モードを遠隔操縦走行モードから自律走行モードまたは手動走行モードに切り替えた後、再び遠隔操縦走行モードに戻して作業車両100-iが動作した場合において、遠隔操縦走行モードから自律走行モードまたは手動走行モードに切り替えた際の操舵角がそのまま維持された状態のものである(当該一の作業車両100-iが自律走行モードまたは手動走行モードのときに遠隔操作者はステアリング31を操作しない)。あるいは、図5(a1)に示すステアリング31の操舵角は、他の作業車両100-jの走行モードを遠隔操縦走行モードから他走行モードに切り替えるとともに、一の作業車両100-iの走行モードを他走行モードから遠隔操縦走行モードに切り替えた場合において、他の作業車両100-jを遠隔操縦していたときの操舵角となっている場合もある。
図5(b)は、一の作業車両100-iの走行モードを他走行モードから遠隔操縦走行モードに切り替えたときにおける当該一の作業車両100-iの実際のステアリングの状態を示している。図5(a1)に示すように、操作部211のステアリング31は左方向に回転された状態となっている。一方、図5(b)に示すように、一の作業車両100-iの実際のステアリングは右方向に回転された状態となっている。そのため、所定値を超える旋回曲率の差分が旋回曲率差分検出部26により検出される。
この場合、差分制御部27は、図5(a2)に示すように、ステアリング31を右方向に自動回転させることにより、ステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率を一の作業車両100-iの実際の旋回曲率に近づけて、所定値を超える旋回曲率の差分が解消されるようにする。所定値を超える旋回曲率の差分が解消された状態とは、例えば、差分が所定値以下となった状態である。あるいは、差分がゼロとなった状態としてもよい。
なお、図5(a2)と図5(b)では、遠隔操作装置20のステアリング31の操舵角と作業車両100-iの実際のステアリングの操舵角とがほぼ一致するような状態を図示している。しかし、ステアリング31の左右回転角と実際のステアリングの左右回転角とが一致していない場合には、所定値を超える旋回曲率の差分が解消されたときに、ステアリング31の操舵角と実際のステアリングの操舵角とが必ずしも一致するとは限らない。
このように差分制御部27は、図5(a1)の状態から図5(a2)の状態までステアリング31を自動回転させている間、操舵制御の遠隔操縦指示を遠隔操縦指示部23が車両制御装置10に送信しないように制御する。すなわち、差分制御部27は、図5(a2)に示す状態でステアリング31の回転が完了したときから操舵制御の遠隔操縦指示を車両制御装置10に送信するように、遠隔操縦指示部23を制御する。
図6は、以上のように構成した遠隔制御システムの遠隔操作装置20の動作例を示すフローチャートであり、作業車両100のモードを他走行モードから遠隔操縦走行モードに切り替える際の動作例を主に示している。
旋回曲率差分検出部26は、何れかの作業車両100について、他走行モードから遠隔操縦走行モードに切り替えられたことがモード制御部22から通知されたか否かを判定する(ステップS1)。旋回曲率差分検出部26がこの通知をモード制御部22から受けていない場合、遠隔操作装置20は、このモード切替に係る処理以外の他の処理を行う(ステップS2)。そして、処理はステップS1に戻る。
一方、何れかの作業車両100について、他走行モードから遠隔操縦走行モードに切り替えられたことがモード制御部22から通知された場合、旋回曲率差分検出部26は、その作業車両100に関して状態情報受信部24が受信している直近の走行状態情報に含まれる実際操舵角情報に基づいて、当該作業車両100の実際の旋回曲率を特定するとともに、そのときの操作部211のステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率を特定し、両者の差分を検出する(ステップS3)。
そして、差分制御部27は、旋回曲率差分検出部26により検出された旋回曲率の差分が所定値を超えているか否かを判定する(ステップS4)。旋回曲率の差分が所定値を超えている場合、差分制御部27は、ステアリング31を自動回転させることにより、ステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率を作業車両100の実際の旋回曲率に近づけて、所定値を超える旋回曲率の差分が解消されるようにする(ステップS5)。
ステップS5の処理を実行後、処理はステップS6に進む。また、ステップS4において旋回曲率の差分が所定値を超えていないと判定された場合は、ステップS5の処理を実行せずにステップS6の処理に進む。ステップS6では、遠隔操作装置20の電源がオフにされたか否かを判定する。遠隔操作装置20の電源がオフにされた場合は、図6に示すフローチャートの処理を終了する。一方、遠隔操作装置20の電源がオフにされていない場合、処理はステップS1に戻る。
ステップS5において差分制御部27の処理が行われている間、遠隔操縦指示部23は、操舵制御の遠隔操縦指示を車両制御装置10に送信しない。そして、ステップS5における差分制御部27の処理が完了した後は、操作部211の操作に応じてステップS1からステップS2に進み、遠隔操縦指示部23は操舵制御の指示を含めて各種の遠隔操縦指示を車両制御装置10に送信する。
以上詳しく説明したように、本実施形態では、ある作業車両100の走行モードが他走行モードから遠隔操縦走行モードに切り替えられたときに、当該作業車両100の実際の旋回曲率と遠隔操作装置20のステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率との差分を検出し、所定値を超える旋回曲率の差分が検出された場合、当該所定値を超える旋回曲率の差分が解消されるようにステアリング31を自動回転させるようにしている。
このように構成した本実施形態によれば、他走行モードから遠隔操縦走行モードに切り替えられたときに、その切り替え時における作業車両100の実際の旋回曲率と、ステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率とが一致していないことがあっても、その不一致が解消された状態で遠隔操縦指示部23から車両制御装置10に対して操舵制御の指示が送信されることとなる。このため、遠隔操作者がステアリング31を操作しながら意識している旋回曲率と、作業車両100の実際の旋回曲率とが一致した状態となるので、遠隔操作者が意図している通りの正しい操舵制御を行うことができる。
なお、上記実施形態では、所定値を超える旋回曲率の差分が解消された状態で遠隔操縦指示部23が操舵制御の指示を送信することとなるように制御する差分制御部27の処理例として、所定値を超える旋回曲率の差分が解消されるようにステアリング31を自動回転させる処理について説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、差分制御部27は、旋回曲率差分検出部26により所定値を超える旋回曲率の差分が検出された後、遠隔操作者による操作によって変動するステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率と作業車両100の実際の旋回曲率との差分が所定値を超えた状態でなくなるまで、遠隔操縦指示部23から操舵制御の指示を送信しないようにしてもよい。
例えば、旋回曲率差分検出部26により所定値を超える旋回曲率の差分が検出された場合に、監視画面表示制御部25が、第3のディスプレイ212-3の分割画面427に対し、作業車両100のステアリングの実際の旋回曲率に対応する操舵角が分かるような態様でステアリング画像を表示させる。あるいは、作業車両100の実際の旋回曲率とステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率とを比較して視認できるような画像を表示させるようにしてもよい。遠隔操作者は、この画像を参考にしながらステアリング31を手動で回転させる。このとき遠隔操縦指示部23は、差分制御部27による制御に従って、手動操作されたステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率と作業車両100の実際の旋回曲率との差分が所定値を超えた状態でなくなるまで、操舵制御の指示を車両制御装置10に送信しないようにする。
ここで、ステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率と作業車両100の実際の旋回曲率との差分が所定値を超える状態でなくなったことを遠隔操作者に報知するようにしてもよい。報知の方法は任意である。例えば、差分が所定値以下またはゼロとなったときに、分割画面427に表示していたステアリング画像を消去するようにすることが可能である。このとき同時に、所定の報知音を出力するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、車両制御装置10の状態情報送信部14が遠隔操作装置20に送信する操舵関連値として、作業車両100の操舵角を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、作業車両100の操舵角に対応する旋回曲率を操舵関連値として遠隔操作装置20に送信するようにしてもよい。この場合、旋回曲率差分検出部26は、状態情報受信部24が受信した状態情報に含まれる作業車両100の実際の旋回曲率と、ステアリング31の操舵角に対応する旋回曲率との差分を検出する。
また、上記実施形態では、遠隔操作装置20が車両制御装置10に対してステアリング31の操舵量またはこれから換算した作業車両100の実際のステアリングの操舵量を操舵情報として送信する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステアリング31の操舵量を作業車両100の旋回曲率に換算し、当該旋回曲率を操舵情報として送信するようにしてもよい。この場合、車両制御装置10では、遠隔操作装置20から受信した旋回曲率を実際のステアリングの操舵角に変換するが、車両制御装置10または遠隔操作装置20においてステアリング31の操舵量を作業車両100の実際のステアリングの操舵量に換算する必要はない。
また、上記実施形態において、操舵角と旋回曲率との対応関係を示す情報を作業車両100の種類ごとまたは操舵機構の種類ごとに有することにより、1つの遠隔操作装置20で異なる種類の作業車両100や操舵機構の操作に対応できるようにしてもよい。作業車両100の種類としては、例えば、トラクタのような前輪操舵式の車両、一部の乗用管理機やスピードスプレーヤのような4輪操舵式の車両、ホイルローダ(タイヤショベル)のようなアーティキュレート(中折れ)式の車両、コンバインのようにクローラの差動により旋回する方式の車両などが挙げられる。遠隔操作装置20は、前輪の切れ角、全輪の切れ角、中折れ角度、クローラの差動からそれぞれ特定される旋回曲率と、それぞれの種類の作業車両が備えるステアリングの操舵角との対応関係を示す情報を記憶し、何れかの情報を選択して用いることにより、1つの遠隔操作装置20で異なる種類の作業車両100を制御対象とすることが可能である。
また、上記実施形態において、特定の種類の作業車両100に合わせてステアリング31を構成するようにしてもよい。すなわち、特定の種類の作業車両100が備えるステアリングの左右回転角および当該ステアリングの操舵角と作業車両100の旋回曲率との関係性と一致するように、ステアリング31を含む遠隔操作装置20を構成するようにしてもよい。このようにすれば、所定値を超える旋回曲率の差分が解消されるように制御することは、所定値を超える操舵角の差分が解消されるように制御することと等価となり、差分が解消された時点で、実際のステアリングの操舵角と遠隔操作装置20のステアリング31の操舵角とが一致するので、操作感をよくすることができる。
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。