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JP7426862B2 - 端子付き電線及びその製造方法 - Google Patents

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JP7426862B2 JP2020046614A JP2020046614A JP7426862B2 JP 7426862 B2 JP7426862 B2 JP 7426862B2 JP 2020046614 A JP2020046614 A JP 2020046614A JP 2020046614 A JP2020046614 A JP 2020046614A JP 7426862 B2 JP7426862 B2 JP 7426862B2
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Description

本発明は自動車等に用いられる端子付き電線及びその製造方法に関するものである。
従来、自動車、OA機器、家電製品等の分野では、電力線や信号線として、電気導電性に優れた銅系材料からなる電線が使用されている。特に、自動車分野においては、車両の高性能化、高機能化が急速に進められており、車載される各種電気機器や制御機器が増加している。したがって、これに伴い、使用される端子付き電線も増加する傾向にある。
一方、環境問題が注目される中、自動車の軽量化が要求されている。したがって、ワイヤハーネスの使用量増加に伴う重量増加が問題となる。このため、従来使用されている銅線に代えて、軽量なアルミニウム電線が注目されている。
ここで、このような電線同士を接続する際や機器類等の接続部においては、接続用端子が用いられる。しかし、アルミニウム電線を用いた端子付き電線であっても、接続部の信頼性等のため、端子部には、電気特性に優れる銅が使用される場合がある。このような場合には、アルミニウム電線と銅製の端子とが接合されて使用される。
しかし、異種金属を接触させると、標準電極電位の違いから、いわゆる電食が発生する恐れがある。特に、アルミニウムと銅との標準電極電位差は大きいため、接触部への水の飛散や結露等の影響により、電気的に卑であるアルミニウム側の腐食が進行する。このため、接続部における電線と端子との接続状態が不安定となり、接触抵抗の増加や線径の減少による電気抵抗の増大、更には断線が生じて電装部品の誤動作、機能停止に至る恐れがある。
このような異種金属が接触するワイヤハーネスにおいて、例えば、一端閉塞型の筒状圧着部を有する端子を用い、この筒状圧着部内に電線の端部を挿入した後、該筒状圧着部をかしめ加工により圧着して、芯線端部を雨水や海水等の付着から保護する方法が提案されている(特許文献1)。
特許文献1のように、一端が封止された圧着部によって被覆導線を圧着し、圧着部と被覆導線の被覆部とを密着させることで水密性を確保することができる。このため、圧着部と被覆部との隙間から水が浸入し、内部で腐食が発生することを抑制することができる。
一方、太径の被覆導線に端部に端子を圧着する場合には、圧着後の被覆圧着部の高さが問題となる場合がある。被覆圧着部の高さが高くなると、これを収容するキャビティへの挿入が困難となる。
これに対し、被覆圧着部を扁平形状にした圧着方法が提案されている(特許文献2)。このように、被覆圧着部を扁平化することで、特に太径の被覆導線と端子とを圧着する場合においても全体の高さを低くすることができる。
国際公開公報2015/056672号 特開2016-46171号公報
しかし、前述したように、一端封止型の端子においては、圧着部の内面と被覆部の外面との間で止水性を確保しているため、両者を確実に密着させることが重要である。特に、扁平圧着を行った場合には、圧着部が上面から大きく潰されるため、このような部位の被覆部に力がかかりすぎないように、注意が必要である。このため、特に太径の被覆導線を圧着する場合において問題となる、被覆部にかかる力を緩和することが可能な端子付き電線が望まれる。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、被覆圧着部において、被覆部へかかる力を緩和することが可能な端子付き電線及びその製造方法を提供することを目的とする。
前述した目的を達するために第1の発明は、被覆導線と端子とが接続された端子付き電線であって、前記端子は、前記被覆導線が圧着される圧着部と、端子本体とを有し、前記圧着部は、前記被覆導線の被覆部を圧着する被覆圧着部と、前記被覆導線の先端部において前記被覆部から露出する導線を圧着する導線圧着部とを有し、前記被覆導線が挿入される部位を除き、他の部位が封止されており、前記被覆圧着部の後端部において、平面視における幅方向の略中央の前記被覆圧着部の長さが短く、幅方向の両側方に向かうにつれて徐々に前記被覆圧着部の長さが長くなり、前記被覆圧着部の後端部において、幅方向の両端部の前記被覆圧着部の長さと幅方向の略中央の前記被覆圧着部の長さの差が、前記被覆部の厚さよりも大きいことを特徴とする端子付き電線である。
前記被覆導線の長手方向に垂直な前記被覆圧着部の断面形状が、高さよりも幅が広い扁平形状であってもよい。
前記被覆圧着部の後端部において、幅方向の両端部の前記被覆圧着部の長さと幅方向の略中央の前記被覆圧着部の長さの差が、前記被覆圧着部の肉厚よりも大きいことが望ましい。
前記圧着部の上面には、長手方向に沿って接合部が形成され、前記被覆圧着部の後端部において、平面視における幅方向の略中央の前記被覆圧着部の長さが短い部位が、前記接合部の端部の位置と略一致してもよい。
第1の発明によれば、被覆圧着部の後端部において、平面視における幅方向の略中央の被覆圧着部の長さを短くし、幅方向の両側方に向かうにつれて徐々に被覆圧着部の長さが長くなるようにすることで、被覆圧着部の後端部の形状の一部において、被覆導線の長手方向に対する傾斜部を形成することができる。すなわち、被覆圧着部の後端部の形状が、被覆導線の長手方向に垂直な方向に対して略直線状ではなく、屈曲又は湾曲した形状とすることができる。このため、被覆圧着部の後端部と被覆部との接触長が長くなり、せん断力や曲げ力等が加わった際に、被覆部へかかる力を緩和することができる。
特に、被覆圧着部の断面形状を扁平形状とした場合において、上記の効果をより効果的に得ることができる。
また、被覆圧着部の後端部における長さの差が、被覆圧着部の肉厚よりも大きい場合や、被覆部の厚さよりも大きい場合に、上記の効果をより効果的に得ることができる。
また、平面視における幅方向の略中央において、圧着部の上面に長手方向に沿って溶接部が形成される場合に、上記の効果をより効果的に得ることができる。
第2の発明は、被覆導線と端子とが接続された端子付き電線の製造方法であって、前記端子は、前記被覆導線が圧着される圧着部と、端子本体とを有し、前記圧着部は、前記被覆導線の被覆部を圧着する被覆圧着部と、前記被覆導線の先端部において前記被覆部から露出する導線を圧着する導線圧着部とを有し、前記被覆導線が挿入される部位を除き、他の部位が封止されており、前記圧着部の上面には、長手方向に沿って接合部が形成され、前記圧着部に前記被覆導線を挿入し、前記導線圧着部と前記導線を圧着するとともに、前記被覆圧着部と前記被覆部を仮圧着する第1圧着工程と、前記第1圧着工程の後、前記被覆圧着部と、前記被覆部を強圧着する第2圧着工程と、を具備し、前記第2圧着工程における金型の長さが、前記被覆圧着部よりも長く、前記被覆圧着部の後方に前記金型がはみ出した状態で前記第2圧着工程を行い、前記第2圧着工程において、前記接合部の前記被覆圧着部の後方への伸び量を、前記接合部以外の前記被覆圧着部の後方への伸び量より小さくすることを特徴とする端子付き電線の製造方法である。
第2の発明によれば、被覆圧着部を2回に分けて圧着し、被覆圧着部を強圧着する際に、被覆圧着部の後方に金型がはみ出すように配置することで、圧着の際に、被覆圧着部の後方への伸びを摩擦によって軽減することができる。この際、特に幅方向中央の上面に設けられた溶接部は、表面に微小な凹凸が形成されているため、金型との摩擦が大きく、この部位の後方への伸びを、他の部位と比較して抑制することができる。この結果、幅方向の略中央部における被覆圧着部の長さを短くすることができる。
本発明によれば、被覆圧着部において、被覆部へかかる力を緩和することが可能な端子付き電線及びその製造方法を提供することができる。
端子付き電線10の斜視図。 端子付き電線10の平面図。 (a)は、図2のX-X線断面図、(b)は、図2のY-Y線断面図。 (a)、(b)は、端子付き電線10の被覆導線23に力が加わった際の、被覆部27へかかる力を示す概念図。 端子付き電線の分解斜視図。 金型31a、31bの間に、圧着部5を配置した状態を示す断面図であり、(a)は圧着前を示す図、(b)は圧着した状態を示す図。 金型33a、33bの間に、圧着部5を配置した状態を示す断面図であり、(a)は圧着前を示す図、(b)は圧着した状態を示す図。
図1は、本発明にかかる端子付き電線10を示す斜視図であり、図2は、端子付き電線10の平面図である。また、図3(a)は、図2のX-X線断面図であり、図3(b)は、図2のY-Y線断面図である。端子付き電線10は、端子1と被覆導線23とが圧着されて構成される。
被覆導線23は、導線25が絶縁性の被覆部27によって被覆されて構成される。導線25は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金製である。被覆導線23を端子1の圧着部5に挿入する際には、被覆導線23の先端の一部の被覆部27が剥離され、導線25が露出される。なお、被覆部27としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン等、この技術の分野において通常用いられるものを選択することができる。
端子1は、例えば銅または銅合金製であり、端子本体3と、被覆導線23が圧着される圧着部5とからなる。端子本体3は、所定の形状の板材を、断面が矩形の筒体に形成したものである。端子本体3は、前端部17に、板材を矩形の筒体内に折り込んで形成される弾性接触片15を有する。端子本体3は、前端部17から雄型端子などが挿入されて接続される。
なお、以下の説明では、端子本体3が、雄型端子等の挿入タブ(図示省略)の挿入を許容する雌型端子である例を示すが、本発明において、この端子本体3の細部の形状は特に限定されない。例えば、雌型の端子本体3に代えて雄型端子の挿入タブを設けてもよいし、丸型端子のようなボルト締結部を設けても良い。
圧着部5は、断面が円形の筒体となるように丸められ、側縁部同士を突き合わせて接合部21で接合して一体化することにより形成される。また、圧着部5の前端側(端子本体3側)には封止部11が設けられる。被覆導線23は、筒状に形成された圧着部5の開口端部側から挿入される。すなわち、圧着部5は、一方が閉じた略筒状で、被覆導線23が挿入される後端部19以外の他の部位は封止される。なお、接合部21および封止部11は、例えばレーザ溶接やろう付け等によって接合および封止される。
圧着部5は、被覆導線23の被覆部27を圧着する被覆圧着部9と、被覆導線23の先端部分において、被覆部が除去されて導線25が露出した部位を圧着する導線圧着部7とからなる。すなわち、被覆部27が剥離されて露出する導線25は、導線圧着部7により圧着され、導線25と端子1とが電気的に接続される。
なお、圧着部5の被覆導線23が挿入される側の端部を後端部19とする。すなわち、被覆導線23は、被覆圧着部9の後端部19から挿入される。また、側縁部同士を突き合せて接合された接合部21が形成される側を上面とする。すなわち、接合部21は、圧着部5の上面において、長手方向に沿って形成される。
なお、導線圧着部7の内面の一部には、周方向に、図示を省略したセレーションが設けられる。このようにセレーションを形成することで、導線25を圧着した際に、導線25の表面の酸化膜を破壊しやすく、また、導線25との接触面積を増加させることができる。
図3(b)に示すように、被覆導線23の長手方向に垂直な方向の、被覆圧着部9の断面形状は、高さHよりも幅Wが広い扁平形状である。なお、前述したように、接合部21が形成される側を上面とした図3(b)において、上下方向を高さ方向とし、これと直交する左右方向を幅方向とする。
なお、扁平形状としては、略楕円形状や略長円形状などが適用可能であるが、略全周にわたって曲線で構成される略楕円形状であることが望ましい。このように、断面が略楕円形状の場合には、縦横比=幅W/高さHは165%以下であることが望ましい。縦横比が165%を超えると、圧着後において、被覆部27が被覆圧着部9の内面を押返す応力の周方向のバラつきが大きくなる。特に被覆圧着部9の幅方向の両端において、被覆部27の反発力による止水性を得ることが難しくなる。
なお、扁平形状の縦横比は115%以上であることが望ましい。縦横比が115%未満では、前述したような、圧着部5の全高を低くする効果が小さくなる。なお、圧着部5の全高を低くする必要がなければ、被覆圧着部9の断面形状を扁平形状とせずに、略円形としてもよい。
図2に示すように、端子付き電線10の平面視において、圧着部5(被覆圧着部9)の後端部19の一部は、被覆導線23の長手方向に対して斜めに形成される。すなわち、端子付き電線10の平面視において、被覆圧着部9の後端部19は、被覆導線23の長手方向に直交する方向に略直線状に形成されずに、部位によって被覆圧着部9の長さが異なる。より詳細には、被覆圧着部9の後端部19において、平面視における幅方向の略中央の被覆圧着部9の長さが短く、幅方向の両側方に向かうにつれて徐々に被覆圧着部9の長さが長くなる。
図4(a)は、被覆圧着部9の後端部近傍の平面拡大図である。ここで、被覆圧着部9の幅方向の略中央部において、被覆圧着部9の長さが最も短くなる部位を谷部20とする。すなわち、被覆圧着部9の後端部19において、谷部20の部位と接合部21の端部の位置とが略一致する。また、谷部20から、幅方向の両端部に向かう被覆圧着部9の長さの変化部を傾斜部22とする。
図4(a)に示すように、端子付き電線10の被覆導線23にせん断力(図中矢印G)が加わる場合を想定する。この場合、被覆圧着部9の後端部19に傾斜部22及び谷部20がなく、幅方向に対して直線(力の向きと略同一方向に直線)の場合には、被覆圧着部9から露出する被覆部27に略直線状のせん断力が付与される。これに対し、本実施形態では、被覆圧着部9の後端部19に傾斜部22及び谷部20が形成されるため、せん断力が傾斜部22の方向へも分散されるとともに、被覆圧着部9から露出する被覆部27の線長も長くなるため、力が分散されて、被覆部27へかかる力を緩和することができる。
なお、端子付き電線10の被覆導線23に曲げ力(図中矢印G)が加わる場合も同様である。例えば、被覆圧着部9の後端部19に傾斜部22及び谷部20がなく、幅方向に対して直線の場合には、曲げの内側となる部位の被覆圧着部9から露出する被覆部27に力が集中するが、本実施形態では、曲げ力を傾斜部22が受けることができるため(図中矢印I)、力が分散されて、被覆部27へかかる局所的な力を緩和することができる。
また、図4(b)に示すように、端子付き電線10の被覆導線23に引張力(図中矢印K)が加わる場合も同様である。この場合、被覆圧着部9の後端部19に傾斜部22及び谷部20がなく、幅方向に対して直線の場合には、被覆圧着部9から露出する被覆部27に略直線状の力が付与される。これに対し、本実施形態では、被覆圧着部9の後端部19に傾斜部22及び谷部20が形成され、被覆圧着部9から露出する被覆部27の線長が長くなるため、引張力への対抗力が傾斜部22の方向に分散されて(図中矢印J)、被覆部27へかかる力を緩和することができる。
なお、このような谷部20及び傾斜部22は、被覆圧着部9の上面にのみ形成されればよい。すなわち、被覆圧着部9の幅方向の両側部から下面側に対しては、被覆圧着部9の長さ変化がなく(又は小さく)、後端部19の形状が、被覆導線23の長手方向に略垂直な略直線状であってもよい。このように、谷部20及び傾斜部22を被覆圧着部9の上面のみに形成することの理由は以下の通りである。
前述したように、被覆圧着部9の上面側には接合部21が形成される。この接合部21は、内面側に凸形状が形成される場合がある。このような内面に凸形状を有する部位においては、被覆部27には特に力が集中しやすくなる。しかし、被覆圧着部9の上面側に谷部20及び傾斜部22を形成することで、当該部位近傍の被覆部27へかかる力を効率良く分散させることができる。
なお、谷部20及び傾斜部22を、被覆圧着部9の下面側にも形成してもよい。すなわち、被覆圧着部9の上下面において、幅方向の略中央部に谷部20及び傾斜部22を形成してもよい。
ここで、被覆圧着部9の後端部19において、幅方向の両端部の被覆圧着部9の長さと幅方向の略中央の被覆圧着部9の長さ(谷部20における被覆圧着部9の長さ)の差(図2中L)は、被覆圧着部9の肉厚よりも大きいことが望ましい。また、被覆圧着部9の後端部19において、上述した長さの差Lは、被覆部27の厚さよりも大きいことが望ましい。このようにすることで、上述したような、力の分散効果を効率良く得ることができる。
なお、長さの差Lをさらに大きくし、谷部20における被覆圧着部9の長さを短くしすぎると、被覆圧着部9における止水性を確保することが困難となる。このため、谷部20における被覆圧着部9の長さは、止水性を確保することができる範囲で設定される。
また、図示した例では、傾斜部22は直線状であり、平面視における被覆圧着部9の後端部19の形態が略V字状であるが、本発明はこれには限られない。例えば、傾斜部22は、幅方向外側に膨らんだ曲線形状(すなわち略U字状)であってもよく、逆に幅方向の中心側に膨らんだ曲線形状であってもよい。
次に、端子付き電線10の製造方法について説明する。図5は、端子1へ被覆導線23を挿入する前の状態を示す分解斜視図である。なお、圧着前の端子1の導線圧着部7は、被覆圧着部9に対して外径および内径が小さい。このように、導線圧着部7と被覆圧着部9の径をあらかじめ変えておき、より径の大きな被覆部27を圧着する被覆圧着部9の内径を、より径の小さな導線25を圧着する導線圧着部7の内径よりも大きくしておくことで、端子1の圧縮量を少なくすることができる。
まず、被覆導線23の先端の所定長さの被覆部27を剥離して、内部の導線25を露出させる。次に、筒状の圧着部5に、後端部19側から被覆導線23の先端部を挿入する。この際、導線圧着部7の内部には導線25の露出部が位置し、被覆圧着部9の内部には被覆部27が位置する。すなわち、被覆部27の端面は、被覆圧着部9と導線圧着部7の間に位置する。
図6(a)は、圧着前における金型31a、31b等を示す断面図、図6(b)は、圧着中の圧着部5を示す断面図である。金型31aは、長手方向に延びる略半円柱状の空洞を有し、被覆圧着部9に対応するとともに被覆圧着部9の半径よりも僅かに小さい径の被覆圧着刃型34と、導線圧着部7に対応するとともに被覆圧着刃型34よりも径の小さい導線圧着刃型32とを備える。
図6(b)に示すように、金型31a、31bを噛み合わせて、圧着部5を圧縮すると、導線圧着部7が導線25に圧着され(図中B)、被覆圧着部9は、仮圧縮される(図中C)(第1圧着工程)。すなわち、金型31a、31bを用いた第1圧着工程は、導線圧着部7と導線25を完全に圧着するとともに、被覆圧着部9と被覆部27を仮圧縮するものである。
ここで、仮圧縮とは、被覆圧着部9をわずかに圧縮するものである。すなわち、被覆圧着部9の圧縮率は、100%に近い数値であってもよい。ここで、被覆圧着部9の圧縮率とは、第1圧着工程前の被覆部27における断面積(被覆部27の外周面に対する内側の全断面積。以下同様。)をA0とし、金型31a、31bによって圧縮された後の被覆圧着部9の内部の断面積をA1とすると、圧縮率=A1/A0(%)である。なお、仮圧縮工程では、被覆圧着部9の断面形状は扁平形状でなくてもよく、例えば略円形であってもよい。
次に、図7(a)に示すように、第1圧着工程後の端子付き電線を、金型33a、33bの間に配置する。金型33a、33bは、金型31a、31bとほぼ同様の構造であるが、被覆圧着刃型34の径が異なる。金型33a、33bの被覆圧着刃型34の内径は、金型31a、31bの被覆圧着刃型34の内径よりも小さい。なお、金型33a、33bには、導線圧着刃型32は不要である。
次に、図7(b)に示すように、金型33a、33bを噛み合わせて、圧着部5を圧縮すると、被覆圧着部9が強圧着される(図中D)(第2圧着工程)。すなわち、被覆圧着部9が本圧着される。圧着後の被覆圧着部9の内部(被覆部27)の断面積をA2とすると、A2/A0が、最終的な被覆部27の圧縮率となる。最終的な圧縮率は、被覆が破れるのを抑制するため、50%以上であるのが好ましく、圧着部の密着性を確保するため、85%以下であるのが好ましい。
このように、金型33a、33bによる圧着後には、被覆圧着部9の内面と被覆部27の外面との密着によって圧着部5を封止することができる。この際、圧着部5の後端部19以外の他の部位は、接合部21および封止部11によって水密に封止されるため、圧着部5への水分の浸入を防止することができる。
ここで、金型33a、33bの長さ(被覆導線23の長手方向に対応する長さ)は、被覆圧着部9よりも長い。すなわち、被覆圧着部9の後方に金型33a、33bがはみ出した状態で第2圧着工程が行われる。このように、被覆圧着部9の後方に金型33a、33bがはみ出した状態で第2圧着工程を行う理由は以下の通りである。
被覆圧着部9を強圧着すると、被覆圧着部9の金属は、後方へ伸びようとする。この際、被覆圧着部9の後方に金型33a、33bがあると、金型33a、33bとの摩擦力によって、この伸びが抑制される。この際、金型33a、33bとの摩擦抵抗が大きな部位は、相対的に伸びが強く抑制され、金型33a、33bとの摩擦抵抗が小さい部位は、相対的に伸び量が多くなる。
本実施形態では、被覆圧着部9の上面には接合部21が形成される。接合部21は、例えば溶接によって形成されるが、この部位の表面には細かな凹凸が形成されるため、金型33a、33bとの摩擦抵抗が他の部位と比較して大きくなる。また、金型33a、33bからの圧縮力を最も強く受けるのは、被覆圧着部9の上面側となるため、接合部21近傍では、より大きな摩擦抵抗を受けることとなる。このため、接合部21における後方への伸び量が他の部位における後方への伸び量よりも小さくなる。すなわち、第2圧着工程においては、接合部21近傍の被覆圧着部9の後方への伸び量を、接合部21以外の部位の被覆圧着部9の後方への伸び量より小さくすることができる。このため、接合部21において谷部20を形成することができる。
なお、導線圧着部7を圧着する際には、端子1の導体が被覆圧着部9側に伸びる。このため、2段階圧着を行わないと、被覆圧着部9の内部の被覆部27が、被覆圧着部9の伸びに追従しながら強圧着される。この結果、被覆部27は、被覆圧着部9による断面中心方向に向けた圧縮だけでなく、軸方向にずれながら圧縮される。このため、被覆部27に対する管軸方向に垂直な方向への圧縮力が軸方向に逃げてしまい、十分な圧縮力を得られない恐れがある。
これに対し、本実施形態では、導線圧着部7を圧着する際には、被覆圧着部9は仮圧着されるのみであり、被覆圧着部9に対して被覆部27の多少の移動が許容される。このため、導線圧着部7を圧着する際に、被覆部27の軸方向へのずれ等を吸収可能である。したがって、被覆部27が安定した状態で、被覆部27を強圧着することができる。特に、本実施形態のように、被覆圧着部9の後方において、伸び量が部位よって異なる場合でも、被覆部27の切れ等を抑制することができる。
なお、上述した例では、2段階圧着を行ったが、被覆部27に損傷なく1回の圧着により谷部20を形成可能であれば1回の圧着でも良い。また、谷部20の形成は、被覆圧着工程と同時でなくてもよい。例えば、端子1を形成する際に、予め谷部形状を形成しておけば、被覆圧着部9の後方にはみ出すような金型を用いなくても、谷部20を形成することができる。
以上、本実施の形態によれば、被覆圧着部9の後端部19に谷部20と傾斜部22が設けられるため、端子付き電線10の被覆導線23に力が加わった場合において、被覆部27に局所的にかかる力を緩和することができる。
このような効果は、被覆圧着部9の断面形状を扁平形状とした場合に特に顕著に得ることができる。また、このような効果は、圧着部5の上面に、長手方向に沿って接合部21が形成される場合に特に顕著に得ることができる。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1………端子
3………端子本体
5………圧着部
7………導線圧着部
9………被覆圧着部
10………端子付き電線
11………封止部
15………弾性接触片
17………前端部
19………後端部
20………谷部
21………接合部
22………傾斜部
23………被覆導線
25………導線
27………被覆部
31a、31b、33a、33b………金型
32………導線圧着刃型
34………被覆圧着刃型

Claims (5)

  1. 被覆導線と端子とが接続された端子付き電線であって、
    前記端子は、前記被覆導線が圧着される圧着部と、端子本体とを有し、
    前記圧着部は、前記被覆導線の被覆部を圧着する被覆圧着部と、前記被覆導線の先端部において前記被覆部から露出する導線を圧着する導線圧着部とを有し、前記被覆導線が挿入される部位を除き、他の部位が封止されており、
    前記被覆圧着部の後端部において、平面視における幅方向の略中央の前記被覆圧着部の長さが短く、幅方向の両側方に向かうにつれて徐々に前記被覆圧着部の長さが長くなり、
    前記被覆圧着部の後端部において、幅方向の両端部の前記被覆圧着部の長さと幅方向の略中央の前記被覆圧着部の長さの差が、前記被覆部の厚さよりも大きいことを特徴とする端子付き電線。
  2. 前記被覆導線の長手方向に垂直な前記被覆圧着部の断面形状が、高さよりも幅が広い扁平形状であることを特徴とする請求項1記載の端子付き電線。
  3. 前記被覆圧着部の後端部において、幅方向の両端部の前記被覆圧着部の長さと幅方向の略中央の前記被覆圧着部の長さの差が、前記被覆圧着部の肉厚よりも大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の端子付き電線。
  4. 前記圧着部の上面には、長手方向に沿って接合部が形成され、
    前記被覆圧着部の後端部において、平面視における幅方向の略中央の前記被覆圧着部の長さが短い部位が、前記接合部の端部の位置と略一致することを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の端子付き電線。
  5. 被覆導線と端子とが接続された端子付き電線の製造方法であって、
    前記端子は、前記被覆導線が圧着される圧着部と、端子本体とを有し、
    前記圧着部は、前記被覆導線の被覆部を圧着する被覆圧着部と、前記被覆導線の先端部において前記被覆部から露出する導線を圧着する導線圧着部とを有し、前記被覆導線が挿入される部位を除き、他の部位が封止されており、
    前記圧着部の上面には、長手方向に沿って接合部が形成され、
    前記圧着部に前記被覆導線を挿入し、
    前記導線圧着部と前記導線を圧着するとともに、前記被覆圧着部と前記被覆部を仮圧着する第1圧着工程と、
    前記第1圧着工程の後、前記被覆圧着部と、前記被覆部を強圧着する第2圧着工程と、
    を具備し、
    前記第2圧着工程における金型の長さが、前記被覆圧着部よりも長く、前記被覆圧着部の後方に前記金型がはみ出した状態で前記第2圧着工程を行い、
    前記第2圧着工程において、前記接合部の前記被覆圧着部の後方への伸び量を、前記接合部以外の前記被覆圧着部の後方への伸び量より小さくすることを特徴とする端子付き電線の製造方法。
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