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JP7405817B2 - 軟磁性粉末及び圧粉磁心 - Google Patents

軟磁性粉末及び圧粉磁心 Download PDF

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Description

本発明は、軟磁性粉末及び圧粉磁心に関する。
OA機器、太陽光発電システム、自動車など様々な用途にリアクトルといったコイル部品が用いられている。コイル部品は、コアにコイルが装着されている。そして、このコアとしては、圧粉磁心が用いられることが多い。
圧粉磁心は、例えば、軟磁性粉末の周囲に形成された絶縁層を形成させ、潤滑剤を添加したうえで、加圧成形することにより作製される。この加圧成形時の圧力は数ton~数十tonといったかなり高い圧力で、軟磁性粉末を押し固めている。
圧粉磁心は、エネルギー交換効率の向上や低発熱などの要求から、小さな印加磁界で大きな磁束密度を得ることができる磁気特性と、磁束密度変化におけるエネルギー損失が小さいという磁気特性が求められる。磁束密度に関する磁気特性としては例えば透磁率(μ)が挙げられる。エネルギー損失に関する磁気特性としてはコアロスとも呼ばれる鉄損(Pcv)が挙げられる。鉄損(Pcv)は、ヒステリシス損失(Ph)と、渦電流損失(Pe)の和で表される。
特許第5929819号公報 特開2009-088502号公報 特開第4586399号公報
従来から鉄損の低減に関する研究や透磁率の向上に関する研究が進められている。例えば、特許文献1のように、結晶粒が粗大な場合に、低いヒステリシス損失が得られるなどといった研究が進められている。また、特許文献2のように、軟磁性粉末に熱処理を施すことで、軟磁性粉末内の結晶構造の歪みを減らして透磁率を高めるという研究が進められている。さらに、特許文献3のように、軟磁性粉末として絶縁被膜が表面に形成された鉄粒子にセンダストを30質量%以下混合することで、飽和磁束密度の低下を抑えるという研究が進められている。しかし、近年では、コイル部品の多様化に伴い、コイル部品の小型化・高性能化の要求が高まっており、高い透磁率及び鉄損の低減がより一層求められている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、良好な直流重畳特性を維持しつつ、鉄損を低減させることができる軟磁性粉末及び圧粉磁心を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の軟磁性粉末は、純鉄粉末とFeSiAl合金粉末を混合して成る軟磁性粉末であって、前記純鉄粉末は、水アトマイズ粉末であり、平滑化された粉末であり、前記FeSiAl合金粉末は、ガスアトマイズ粉末であり、前記FeSiAl合金粉末の粒子径は、13.0μm以上31.8μm以下であり、前記軟磁性粉末に含まれる前記純鉄粉末の含有量は、80wt%以上95wt%以下であり、前記FeSiAl合金粉末の含有量は、5wt%以上20wt%以下であること、を特徴とする。
また、この軟磁性粉末を含む圧粉磁心も本発明の一態様である。
本発明によれば、良好な直流重畳特性を維持しつつ、鉄損を低減させることができる軟磁性粉末及び圧粉磁心を得ることができる。
FeSiAl合金粉末の添加量と鉄損、ヒステリシス損失及び渦電流損失の関係を示すグラフである。 FeSiAl合金粉末の添加量と直流重畳特性の関係を示すグラフである。
(実施形態)
本実施形態の軟磁性粉末及び圧粉磁心について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものでない。
圧粉磁心は、OA機器、太陽光発電システム、自動車などに搭載されるリアクトルといったコイル部品のコアに用いられる磁性体である。圧粉磁心は、軟磁性粉末の周囲に絶縁層を形成し、加圧成形して圧粉成形体を作製する。そして、この圧粉成形体を熱処理することで圧粉磁心は作製される。
軟磁性粉末は、純鉄粉末とFeSiAl合金粉末を含み、これらの粉末を混合して成る。純鉄粉末とは、Feを99%以上含むものである。純鉄粉末は、水アトマイズ粉末から成る。即ち、純鉄粉末は、高温で溶融したFe粉末に水を吹き付けて粉末化し、その後、冷却して凝固させることで生成される。軟磁性粉末に含まれる純鉄粉末の含有量は、80wt%以上95wt%以下である。
純鉄粉末は、平滑化処理が施されており、平滑化された状態の粉末である。平滑化された状態とは、純鉄粉末の表面の凹凸を均した状態を指し、純鉄粉末の表面の突起と滑らかになっている状態や全体として丸みを帯びている状態、球形化された状態を含む。平滑化処理が施された純鉄粉末の円形度は、0.95以上であることが好ましい。
純鉄粉末は、平滑化処理を施した後で、FeSiAl合金粉末と混合する前に、熱処理を行う方が好ましい。この粉末熱処理を行うことで、平滑化処理を施した時に生じた純鉄粉末内の加工歪を熱処理することで除去することができる。この粉末熱処理は、非酸化雰囲気中、望ましくは水素ガス、又は窒素と水素の混合ガス等の還元雰囲気において、温度は900℃以上1100℃以下、望ましくは950℃以上1050℃以下で行う。
FeSiAl合金粉末は、鉄と珪素とアルミニウムを含む粉末である。FeSiAl系合金粉末は、例えば、Feに対して、7wt%から11wt%程度のSiと、4wt%から8wt%程度のAlとを含有させている。FeSiAl系合金粉末には、例えば、Feに対して1wt%から3wt%程度のNiが含まれていてもよい。さらに、FeSiAl系合金粉末にはCo、Cr又はMnが含まれていてもよい。
FeSiAl合金粉末は、ガスアトマイズ粉末から成る。即ち、FeSiAl合金粉末は、高温で溶融したFeSiAl合金粉末にガスを吹き付けて粉末化し、その後、冷却して凝固させることで生成される。軟磁性粉末に含まれるFeSiAl合金粉末の含有量は、5wt%以上20wt%以下である。
FeSiAl合金粉末の粒子径は、13.0μm以上31.8μm以下であることが好ましく、13.0μm以上19.5μm以下であることが更に好ましい。粒子径とは、メジアン径D50のことを指す。FeSiAl合金粉末の粒子径をこの範囲にすることで、ヒステリシス損の低減、ひいては鉄損を低減させつつ、良好な直流重畳特性を維持することができる。
純鉄粉末とFeSiAl合金粉末が混合して成る軟磁性粉末の周囲には、絶縁層が形成されている。絶縁層は、絶縁材料から成り、この絶縁材料が軟磁性粉末の周囲に付着している。絶縁層が軟磁性粉末の周囲に付着されていれば、絶縁材料の付着の態様については問わない。即ち、絶縁材料は、軟磁性粉末の周囲を全て覆うように付着していてもよいし、一部を覆うように付着し、軟磁性粉末の表面の一部が露出していてもよい。また、絶縁材料は、軟磁性粉末の各粒子の表面に付着していてもよいし、軟磁性粉末の凝集体の表面に付着していてもよいし、これらの付着の態様が混在するように付着していてもよい。
絶縁材料としては、シランカップリング剤、シリコーンオリゴマー、シリコーンレジン、又はこれらの混合物を用いることができる。即ち、シランカップリング剤、シリコーンオリゴマー、シリコーンレジンをそれぞれ単体で用いてもよいし、例えば、シランカップリング剤とシリコーンオリゴマー、又は、シランカップリング剤とシリコーンレジンを混合させて用いてもよい。
また、絶縁層は、単層であってもよいし、複数層であってもよい。例えば、絶縁層は、種類ごとに各層に分けた複数層で構成してもよいし、1種類又は2種類以上を混合した絶縁材料の単層で構成してもよい。本実施形態では、シランカップリング剤、シリコーンレジンを含んだ絶縁層が軟磁性粉末の周囲に形成されている。
シランカップリング剤としては、アミノシラン系、エポキシシラン系、イソシアヌレート系のシランカップリング剤を使用することができ、特に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが好ましい。
シランカップリング剤の添加量としては、軟磁性粉末に対して、0.05wt%以上1.0wt%以下が好ましい。シランカップリング剤の添加量をこの範囲にすることで、軟磁性粉末の流動性を向上させるとともに、成形された圧粉磁心の密度、磁気特性、強度特性を向上させることができる。
絶縁材料としてシランカップリング剤を添加した場合、軟磁性粉末とシランカップリング剤の混合物を加熱乾燥する。乾燥温度は、25℃以上200℃以下が好ましい。乾燥温度が25℃より低いと、溶剤が残留し絶縁被膜が不完全となる場合があるためである。一方、乾燥温度が200℃より高いと、分解が進み絶縁被膜として形成されなくなる場合があるためである。乾燥時間は、2時間程度である。
シリコーンレジンは、シロキサン結合(Si-O-Si)を主骨格に持つ樹脂である。シリコーンレジンを用いることで可撓性に優れた被膜を形成することができる。シリコーンレジンは、メチル系、メチルフェニル系、プロピルフェニル系、エポキシ樹脂変性系、アルキッド樹脂変性系、ポリエステル樹脂変性系、ゴム系等を用いることができる。この中でも特に、メチルフェニル系のシリコーンレジンを用いた場合、加熱減量が少なく、耐熱性に優れた絶縁層を形成することができる。
シリコーンレジンの添加量は、軟磁性粉末に対して、0.4wt%以上3.0wt%以下である。より好ましくは、0.6wt%以上2.0wt%以下である。シリコーンレジンの添加量が少ないと、成形体を熱処理する際に軟磁性粉末間を引き寄せる収縮作用が弱く、高い密度が確保できず、透磁率を上げることができない。一方で、添加量が多いと、軟磁性粉末の周囲に形成される絶縁層が厚くなり過ぎ、高い密度が確保できず、透磁率を上げることができない。
シリコーンレジンを添加した後、軟磁性粉末とシリコーンレジンの混合物を加熱乾燥する。乾燥温度は、100℃以上250℃以下が好ましい。乾燥温度が100℃より小さいと絶縁被膜の形成が不完全となり、渦電流損失が高くなる場合があるためである。一方、乾燥温度が250℃より大きいと粉末が無機物となりバインダーとしての役割を果たさず、保形成が悪くなり、成形体の密度及び透磁率が低下する場合があるためである。乾燥時間は、2時間程度である。
シリコーンオリゴマーとしては、アルコキシシリル基を有し、反応性官能基を有さないメチル系、メチルフェニル系のものや、アルコキシシリル基及び反応性官能基を有するエポキシ系、エポキシメチル系、メルカプト系、メルカプトメチル系、アクリルメチル系、メタクリルメチル系、ビニルフェニル系のもの、又はアルコキシシリル基ではなく、反応性官能基を有する脂環式エポキシ系のもの等を用いることができる。特に、メチル系またはメチルフェニル系のシリコーンオリゴマーを用いることで厚く硬い絶縁層を形成することができる。また、絶縁層の形成のしやすさを考慮して、粘度の比較的低いメチル系、メチルフェニル系を用いてもよい。
シリコーンオリゴマーの添加量は、軟磁性粉末に対して0.1wt%以上2.0wt%以下が好ましい。添加量が0.1wt%より少ないと絶縁被膜として機能せず、渦電流損失が増加することにより磁気特性が低下する。添加量が2.0wt%より多いと、圧粉磁心の密度低下を招く。
シリコーンオリゴマーを添加した後、軟磁性粉末とシリコーンオリゴマーの混合物を加熱乾燥する。乾燥温度は、25℃~350℃が好ましい。乾燥温度が25℃未満であると膜の形成が不完全となり、渦電流損失が高くなり、損失が増大する。一方、乾燥温度350℃より大きいと粉末が酸化することによりヒステリシス損失が高くなり、損失が増大する。乾燥時間は、2時間程度である。
絶縁層が周囲に形成された軟磁性粉末に対して、潤滑剤を添加し、混合する。潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸及びその金属塩並びにエチレンビスステアルアミド、エチレンビスステアロアマイド、エチレンビスステアレートアミドなどが挙げられる。
潤滑剤を添加した後、所望の金型に軟磁性粉末を充填し、加圧成形して、圧粉成形体が作製される。成形時の圧力は10~20ton/cmである。
その後、作製された圧粉成形体は熱処理される。この熱処理は、非酸化雰囲気中、望ましくは水素ガス又は窒素と水素の混合ガス等の還元雰囲気中にて、600℃以上且つ軟磁性粉末の周囲に形成された絶縁層が破壊される温度(例えば、900℃とする)よりも低い温度で、圧粉成形体の熱処理を行う。この熱処理を経ることで圧粉磁心が作製される。
(実施例)
実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
まず、表1に示すように、複数の純鉄粉末及びFeSiAl合金粉末を用意した。
Figure 0007405817000001
表1に示す粉末A及びB(以下、表1に示す種類に記載した粉末を粉末A、粉末B・・粉末Hという。)は、純鉄粉末であり、Aが水アトマイズ法により生成したものであり、BがA同様、水アトマイズ法により生成した純鉄粉末を平滑化処理したものである。平滑化処理は、高速気流衝突法によって行った。平滑化処理の条件は、ローター回転数4800rpmで5分間である。
ここで、平滑化処理の条件を変えた場合における純鉄粉末の円形度を表2に示す。条件1はローター回転数8000rpmで5分間平滑化処理し、条件2はローター回転数6400rpmで5分間平滑化処理し、条件3はローター回転数6400rpmで10分間平滑化処理し、条件4はローター回転数4800rpmで5分間平滑化処理した。
Figure 0007405817000002
上記表2に示すように、回転数が最も少ない条件4においても、円形度は、D10で0.781、D50で0.952となっている。即ち、ローター回転数4800rpmで5分間平滑化処理を行うことで、上記粉末Bのように高い円形度となる純鉄粉末を得ることはできる。
表1に示す粉末C~Hは、FeSiAl合金粉末である。粉末C~Gは、ガスアトマイズ法により生成されたFeSiAl合金粉末であり、各粉末は表1に示すように粒子径が異なる。粉末Hは、粉砕法により生成されたFeSiAl合金粉末であり、粉末C~Gとは生成方法が異なる。
(FeSiAl合金粉末の種類・添加量の比較)
まず、実施例1~3及び比較例1~5の圧粉磁心を作製した。実施例1は、表1に示す粉末Bに対してアルミナ粉末(1次粒径が13nm)を1.0wt%添加・混合し、水素濃度5%の雰囲気において、温度1000℃で2時間熱処理を行った。そして、熱処理後の粉末Bに対して、粉末熱処理を行っていない粉末Dを5wt%添加して混合し、複合粉末を作製した。
粉末Bと粉末Dを混合した後、シランカップリング剤を0.5wt%、シリコーンレジンを2.0wt%添加して混合し、温度150℃で2時間乾燥させた。凝集を解消する目的で絶縁層が形成された複合粉末を目開き500μmの篩に通し、潤滑剤としてエチレンビシステアラミドを0.5wt%添加・混合した。
潤滑剤を混合した後、この粉末を金型に充填し、加圧成形を行い、外径20.85mm、内径12.4mm、高さ5.0mmの圧粉成形体を得た。プレス成形の圧力は、12ton/cmで行った。圧粉成形体が作製された後、この圧粉成形体を水素濃度5%の雰囲気下において、温度600℃で2時間熱処理を行った。これにより、実施例1の圧粉磁心が作製された。
実施例2は、粉末Dの添加量が10wt%である点を除いて、製造方法及び製造条件は実施例1と同一である。実施例3は、粉末Dの添加量が20wt%である点を除いて、製造方法及び製造条件は実施例1と同一である。
比較例1は、純鉄粉末として粉末Bではなく、平滑化処理されていない粉末Aを用いた。粉末Aは、実施例1の粉末Bの熱処理と同様の条件・方法で熱処理を行った。また、実施例1とは異なり、FeSiAl合金粉末を混合させず、粉末A(純鉄粉末)のみで圧粉磁心を作製した。その他の製造方法及び製造条件は実施例1と同一である。
比較例2は、純鉄粉末として粉末Bを用いた点は実施例1と同様であるが、FeSiAl合金粉末を混合していない点が異なる。その他の製造方法及び製造条件は実施例1と同一である。
比較例3及び4は、実施例1とは粉末Dの添加量のみが異なる。比較例3は、25.0wt%、比較例4は30.0wt%添加した。その他の製造方法及び製造条件は実施例1と同一である。
比較例5は、実施例1とはFeSiAl合金粉末の種類が異なる。即ち、比較例5は、ガスアトマイズ法によって生成された粉末Dではなく、粉砕法によって生成された粉末Hを用いた。また、粉末Hの添加量が20wt%であることを除き、その他の製造方法及び製造条件は実施例1と同一である。
このように作製された各圧粉磁心の密度を測定した。密度(g/cm)は、見かけ密度である。圧粉磁心の外径、内径、及び高さを測り、これらの値から各圧粉成形体の体積(cm)を、π×(外径-内径)×高さに基づき算出した。そして、圧粉磁心の重量を測定し、測定した重量を算出した体積で除して密度を算出した。
また、各圧粉磁心に、φ0.5mmの銅線で1次巻線30ターン、2次巻線30ターンの巻線を巻回し、鉄損及び透磁率を測定した。測定条件は、周波数20kHz、最大磁束密度Bm=200mTとした。磁気計測機器は、BHアナライザ(岩通計測株式会社:SY-8219)を用いた。そして、次の(1)~(3)式で最小2乗法により、ヒステリシス損失係数を算出することで、最終的にヒステリシス損失を算出した。
Pcv =Kh×f+Ke×f・・(1)
Ph =Kh×f・・(2)
Pe =Ke×f・・(3)
Pcv:鉄損
Kh :ヒステリシス損失係数
Ke :渦電流損失係数
f :周波数
Ph :ヒステリシス損失
Pe :渦電流損失
透磁率は、鉄損の測定時に最大磁束密度Bmを設定したときの振幅透磁率とし、LCRメータ(アジレント・テクノロジー株式会社製:4284A)を使用して算出した。透磁率は、直流電流を重畳させずに磁界がゼロの初透磁率(0A/m)及び磁界を10kA/m印加した場合の透磁率(10kA/m)を測定した。
測定結果を表3に示す。また、実施例1~3と比較例2~4のFeSiAl合金粉末(粉末D)の添加量と鉄損、ヒステリシス損失及び渦電流損失の関係を示すグラフを図1に示す。実施例1~3と比較例2~4のFeSiAl合金粉末(粉末D)の添加量と直流重畳特性の関係を示すグラフを図2に示す。
Figure 0007405817000003
まず、純鉄粉末として平滑化処理行った粉末Bを用いた比較例2は、平滑化処理を行っていない粉末Aを用いた比較例1よりも直流重畳特性が上昇し、かつ、ヒステリシス損失、渦電流損失及び鉄損の何れも低下していることが確認された。即ち、水アトマイズ法により生成された純鉄粉末は、平滑化処理を行うと直流重畳特性が上昇し、ヒステリシス損失、渦電流損失及び鉄損の何れも低下していることが確認された。
さらに、実施例1~3は、直流重畳特性は、比較例1よりも向上し、良好な値を維持している。これに加えて、実施例1~3のヒステリシス損失、渦電流損失及び鉄損は、粉末Dの添加量が多いほど、低下する傾向にあり、何れも比較例2よりも低下している。特に、実施例1~3のヒステリシス損失は、1000(kW/m)よりも低下し、FeSiAl合金粉末を添加していない比較例2よりも低下していることが確認された。
また、FeSiAl合金粉末の添加量が同量の実施例3と比較例5を比較すると、実施例3の方が直流重畳特性は良好な値を維持し、ヒステリシス損失、渦電流損失及び鉄損が低下している。これにより、純鉄粉末に混合するFeSiAl合金粉末は、ガスアトマイズ粉末であると直流重畳特性が良好で、低鉄損となることが確認された。
さらに、粉末Dの添加量を増加させるにつれてヒステリシス損失、渦電流損失及び鉄損が低減させることが確認された。もっとも、比較例3及び4の結果を見ると、ヒステリシス損失、渦電流損失及び鉄損は低下しているものの、直流重畳特性が32以下になり、比較例1と同程度に低下してしまう。そのため、粉末Dの添加量は、5.0wt%以上20wt%以下にすると、良好な直流重畳特性を維持しつつ、ヒステリシス損失、渦電流損失及び鉄損を低下させることができることが確認された。
(FeSiAl合金粉末の粒子径の比較)
次に、実施例4~6及び比較例6の圧粉磁心を作製し、上記と同様の測定条件、測定方法で密度、鉄損及び透磁率を測定した。
実施例4~6及び比較例6は、実施例1とFeSiAl合金粉末の粒子径が異なるのみである。実施例4(粉末C)の粒子径(D50)は31.8μmで、実施例1(粉末D)の粒子径(D50)は19.5μmで、実施例5(粉末E)の粒子径(D50)は16.4μmで、実施例6(粉末F)の粒子径(D50)は13.0μmで、比較例5(粉末G)の粒子径(D50)は5.5μmである。その他の製造方法及び製造条件は実施例1と同一である。
測定結果を表4に示す。
Figure 0007405817000004
表4に示すように、粒子径31.8μmのFeSiAl合金粉末を用いた実施例4は、初期の透磁率が高い値を維持しつつ、低鉄損化できている。また、FeSiAl合金粉末の粒子径が小さくなるほど、ヒステリシス損失が増大し、鉄損が大きくなる。特に、比較例6は、ヒステリシス損失が900(kW/m)となり、鉄損も1000(kW/m)を超えている。特に、実施例3、5及び6は、直流重畳特性が34であり、鉄損も940(kW/m)よりも小さく、良好な直流重畳特性を維持しつつ、低鉄損化できることが確認された。即ち、FeSiAl合金粉末の粒子径は、13.0μm以上19.5μm以下がより望ましいことが確認された。
(製法を変えた比較)
次に、純鉄粉末とFeSiAl合金粉末の混合のタイミングを変えた実施例7~9の圧粉磁心を作製し、上記と同様の測定条件、測定方法で密度、鉄損及び透磁率を測定した。
実施例7~9は、まず、純鉄粉末である粉末Bを実施例1と同様の条件で熱処理行った。熱処理を行った粉末Bに、シランカップリング剤を0.5wt%、シリコーンレジンを2.0wt%添加・混合して、150℃の温度で2時間乾燥させた。そして、凝集を解消する目的で絶縁層が形成された粉末Bを目開き500μmの篩に通し、潤滑剤としてエチレンビシステアラミドを0.5wt%添加・混合した。
一方で、FeSiAl合金粉末である粉末Dは、粉末熱処理を行わず、シランカップリング剤を0.5wt%、シリコーンレジンを2.0wt%添加・混合して、150℃の温度で2時間乾燥させた。そして、凝集を解消する目的で絶縁層が形成された粉末Dを目開き500μmの篩に通し、潤滑剤としてエチレンビシステアラミドを0.5wt%添加・混合した。
そして、それぞれ絶縁層が形成された粉末B及び粉末Dを下記表5に示す添加量で粉末BとDを添加・混合した。即ち、実施例7は粉末Dの添加量を5wt%、実施例8は粉末Dの添加量を10wt%、実施例8は粉末Dの添加量を20wt%添加した。その後の工程は実施例1と同様である。
測定結果を表5に示す。
Figure 0007405817000005
表5に示すように、実施例7~9は、FeSiAl合金粉末を添加していない比較例2と比べても、良好な直流重畳特性は維持しつつ、ヒステリシス損失、渦電流損失及び鉄損が低減できていることが確認された。また、FeSiAl合金粉末の添加量を増加させるにつれて、ヒステリシス損失、渦電流損失及び鉄損が低減されており、表3に示すものと同様の傾向が確認された。即ち、純鉄粉末とFeSiAl合金粉末を混合してから絶縁層を形成させる製法であっても、純鉄粉末とFeSiAl合金粉末にそれぞれ絶縁層を形成させた後、混合させる製法であっても本発明の効果を得ることができることが確認された。
(成形体の熱処理温度を変えた比較)
次に、実施例1とは圧粉成形体の熱処理温度のみを変えた実施例10、11を作製した。実施例10は、圧粉成形体を650℃で熱処理し、実施例11は、圧粉成形体を675℃で熱処理した。
一方、比較例2とは圧粉成形体の熱処理温度のみを変えた比較例7、8を作製した。比較例7は、圧粉成形体を650℃で熱処理し、比較例8は、圧粉成形体を675℃で熱処理した。
さらに、比較例5とは圧粉成形体の熱処理温度のみを変えた比較例9、10を作製した。比較例9は、圧粉成形体を650℃で熱処理し、比較例10は、圧粉成形体を675℃で熱処理した。
上記と同様の測定条件、測定方法で密度、鉄損及び透磁率を測定した。その結果を表6に示す。
Figure 0007405817000006
ガスアトマイズ粉末であるFeSiAl合金粉末(粉末C)を含有させた実施例1、10及び11は、圧粉成形体の熱処理温度上げても良好な渦電流損失を維持していることが確認された。一方、FeSiAl合金粉末を添加していない比較例2、7、8及び粉砕紛であるFeSiAl合金粉末を添加した比較例5、9、10を見ると、熱処理温度を675℃に上げると渦電流損失が大幅に増加することが確認された。
これは推測でありこれに限定されるものではないが、実施例1、10及び11が良好な渦電流損失を維持している理由としては下記のことが考えられる。ガスアトマイズ粉末のFeSiAl合金粉末(粉末C)は、球形のため絶縁層が粉末表面に均一に形成されやすい。一般的に、絶縁層が均一に形成されず薄い部分が生じる場合、熱処理温度を上げていくと、この薄い部分の絶縁層が破壊されてしまう。そのため、均一に絶縁層が形成された粉末が一定量含まれる実施例1、10及び11は、絶縁層が薄い部分が減少し、高い温度で熱処理を行っても絶縁層が破壊されなかったと推察する。一方で、粉砕紛のFeSiAl合金粉末(粉末H)は角ばっており、この角部分は絶縁層を均一に形成しにくく薄い部分が生じやすく、また、他の粉末に角部分が食い込むことで絶縁層が薄くなる要因となる。そのため、ガスアトマイズ粉末であるFeSiAl合金粉末よりも絶縁層が破壊されやすく、渦電流損失が増加したものと推察する。なお、上記実施例では、粉末Cを用いて実験を行ったが、粉末D~Fについても同様の結果になるものと推察する。
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。

Claims (3)

  1. 純鉄粉末とFeSiAl合金粉末を混合して成る軟磁性粉末であって、
    前記純鉄粉末は、水アトマイズ粉末であり、平滑化された粉末であり、
    前記FeSiAl合金粉末は、ガスアトマイズ粉末であり、
    前記FeSiAl合金粉末の粒子径は、13.0μm以上31.8μm以下であり、
    前記軟磁性粉末に含まれる前記純鉄粉末の含有量は、80wt%以上95wt%以下であり、前記FeSiAl合金粉末の含有量は、5wt%以上20wt%以下であること、
    を特徴とする軟磁性粉末。
  2. 前記平滑化された純鉄粉末の円形度は、0.95以上であること、
    を特徴すると請求項1に記載の軟磁性粉末。
  3. 請求項1又は2の軟磁性粉末を含むこと、
    を特徴すると圧粉磁心。
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