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JP2005303007A - 軟磁性材料、圧粉磁心、および軟磁性材料の製造方法 - Google Patents

軟磁性材料、圧粉磁心、および軟磁性材料の製造方法 Download PDF

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JP2005303007A JP2004117008A JP2004117008A JP2005303007A JP 2005303007 A JP2005303007 A JP 2005303007A JP 2004117008 A JP2004117008 A JP 2004117008A JP 2004117008 A JP2004117008 A JP 2004117008A JP 2005303007 A JP2005303007 A JP 2005303007A
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Abstract

【課題】 交流磁気特性および成形性を向上することのできる軟磁性材料、圧粉磁心、および軟磁性材料の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の軟磁性材料は、圧粉磁心の作製に用いられる軟磁性材料であって、絶縁被膜20aが表面に形成された鉄粒子10aと、センダストまたはパーマロイの少なくともいずれか一方よりなる添加物粒子10bとを含んでいる。添加物粒子10bは0質量%より大きく30質量%以下の割合で含まれている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、軟磁性材料、圧粉磁心、および軟磁性材料の製造方法に関し、より特定的には、交流磁気特性および成形性を向上することのできる軟磁性材料、圧粉磁心、および軟磁性材料の製造方法に関する。
電磁弁、モータ、または電源回路などを有する電気機器には、軟磁性材料が使用されている。この軟磁性材料は、複数の複合磁性粒子よりなっており、複合磁性粒子は、たとえば純鉄よりなる金属磁性粒子と、その表面を被覆するたとえばリン酸塩よりなる絶縁被膜とを有している。軟磁性材料には、小さな磁場の印加で大きな磁束密度を得ることができ、外部からの磁界変化に対して敏感に反応できる磁気的特性が求められる。
この軟磁性材料を用いて作製した圧粉磁心を交流磁場で使用した場合、鉄損と呼ばれるエネルギー損失が生じる。この鉄損は、ヒステリシス損と渦電流損との和で表わされる。ヒステリシス損とは、軟磁性材料の磁束密度を変化させるために必要なエネルギーによって生じるエネルギー損失をいう。ヒステリシス損は作動周波数に比例するので、主に低周波領域において支配的になる。また、ここで言う渦電流損とは、主として軟磁性材料を構成する金属磁性粒子間を流れる渦電流によって生じるエネルギー損失をいう。渦電流損は作動周波数の2乗に比例するので、主に高周波領域において支配的になる。
圧粉磁心にはこの鉄損の発生を小さくする磁気的特性、すなわち高い交流磁気特性が求められる。これを実現するためには、軟磁性材料の透磁率μ、飽和磁束密度Bsおよび電気抵抗率ρを大きくし、軟磁性材料の保磁力Hを小さくすることが必要となる。従来の軟磁性材料の原料である純鉄は磁気異方性を有しているため、純鉄からなる軟磁性材料の交流磁気特性を向上するには限界があった。
圧粉磁心の交流磁気特性を向上する方法として、純鉄と比較して透磁率μが高く、保磁力Hが低いパーマロイおよびセンダストを用いて軟磁性材料を製造する方法が考えられる。しかし、純鉄の硬度と比較してパーマロイおよびセンダストの硬度は非常に大きいので、パーマロイおよびセンダストを用いて製造した軟磁性材料は成形性が悪く、その結果、得られる成形体の密度が低いという問題があった。
そこで、センダストを用いた軟磁性材料の成形性を向上することのできる製造方法として、65質量%〜98質量%の割合のセンダストと、2質量%〜35質量%の割合の高圧縮性軟磁性金属粉との混合物をバインダーによって結合させる製造方法が、たとえば特開平6−236808号公報(特許文献1)に開示されている。
特開平6−236808号公報
しかしながら、純鉄よりなる圧粉磁心の飽和磁束密度Bsが2.15Tであるのに対し、上記特許文献1の圧粉磁心の飽和磁束密度Bsはいずれも0.83T以下となっており、十分な飽和磁束密度Bsが得られていなかった。これは、センダストの飽和磁束密度Bsが低いことに起因するものである。飽和磁束密度Bsが低いと、圧粉磁心の磁束密度を一定以上にするのに必要な交流磁場が大きくなってしまうため、交流磁気特性が低下してしまう。特にモータや電源用トランスコアなどに用いられる圧粉磁心には少なくとも1.5T以上の飽和磁束密度が必要であり、上記特許文献1の圧粉磁心では十分な飽和磁束密度Bsが得られなかった。
また、上記特許文献1の軟磁性材料は、センダストを主成分としているため、成形性が十分ではないという問題が依然としてあった。
そこで本発明の目的は、上記の課題を解決することであり、交流磁気特性および成形性を向上することのできる軟磁性材料、圧粉磁心、および軟磁性材料の製造方法を提供することである。
本発明の軟磁性材料は、圧粉磁心の作製に用いられる軟磁性材料であって、絶縁被膜が表面に形成された鉄粒子と、センダストまたはパーマロイの少なくともいずれか一方よりなる添加物粒子とを含んでいる。添加物粒子は0質量%より大きく30質量%以下の割合で含まれている。
本発明の軟磁性材料の製造方法は、以下の工程を備えている。絶縁被膜が表面に形成された鉄粒子と、センダストまたはパーマロイの少なくともいずれか一方よりなる添加物粒子とが混合された混合粉末を作製する。混合粉末を加圧成形して成形体を形成する。成形体を熱処理する。混合粉末を作製する際に、添加物粒子は0質量%より大きく30質量%以下の割合で混合される。
本発明の軟磁性材料およびその製造方法によれば、軟磁性材料に交流磁界が印加されると、軟磁性材料に含まれるセンダストまたはパーマロイが容易に磁化され、磁化されたセンダストまたはパーマロイが周囲の鉄分の磁化を促進する。その結果、純鉄よりなる場合では到達することのできない高い交流磁気特性を有する軟磁性材料を得ることができる。また、センダストまたはパーマロイの量を30質量%以下とすることで、センダストまたはパーマロイによる飽和磁束密度Bsの低下を抑えることができる。さらに、センダストまたはパーマロイの量を30質量%以下とすることで、センダストまたはパーマロイによる成形性の低下を抑えることができる。したがって、軟磁性材料の成形性を向上することができる。
本発明の軟磁性材料において好ましくは、添加物粒子が5質量%以上25質量%以下の割合で含まれている。
本発明の軟磁性材料の製造方法において好ましくは、混合粉末を作製する際に、添加物粒子が5質量%以上25質量%以下の割合で混合される。
これにより、軟磁性材料の交流磁気特性を一層向上することができる。
本発明の軟磁性材料において好ましくは、熱可塑性樹脂が0.01質量%以上0.1質量%以下の割合でさらに含まれている。
本発明の軟磁性材料において好ましくは、混合粉末を作製する際に、熱可塑性樹脂が0.01質量%以上0.1質量%以下の割合でさらに混合される。
これにより、熱可塑性樹脂が鉄粒子および添加物粒子の間に介在している状態になる。
熱可塑性樹脂の割合を0.01質量%以上とすることにより、加圧成形時の応力を受けて鉄粒子および添加物粒子の間で熱可塑性樹脂がたわむことにより、鉄粒子および添加物粒子の間で潤滑剤として機能するようになる。また、鉄粒子同士の間の絶縁性を高めることができる。一方、熱可塑性樹脂の割合を0.1質量%以下とすることにより、軟磁性材料の磁性体部分の密度を高くすることができるので、交流磁気特性を高く保つことができる。
本発明の軟磁性材料の製造方法において好ましくは、成形体を形成する際に、混合粉末に980MPa以上の圧力が加えられる。
これにより、軟磁性材料を高密度化することができるので、飽和磁束密度Bsを向上することができ、交流磁気特性を向上することができる。
本発明の軟磁性材料を用いて圧粉磁心を作製することにより、飽和磁束密度が1.5T以上の圧粉磁心を得ることができる。
本発明の軟磁性材料およびその製造方法によれば、軟磁性材料に交流磁界が印加されると、軟磁性材料に含まれるセンダストまたはパーマロイが容易に磁化され、磁化されたセンダストまたはパーマロイが周囲の鉄分の磁化を促進する。その結果、純鉄よりなる場合では到達することのできない高い交流磁気特性を有する圧粉磁心を得ることができる。また、センダストまたはパーマロイの量を30質量%以下とすることで、センダストまたはパーマロイによる飽和磁束密度Bsの低下を抑えることができる。さらに、センダストまたはパーマロイの量を30質量%以下とすることで、センダストまたはパーマロイによる成形性の低下を抑えることができる。したがって、軟磁性材料の成形性を向上することができる。
なお、本明細書中において「パーマロイ」とは、40質量%以上50質量%以下の割合のNi(ニッケル)と、Fe(鉄)とで構成されている合金を意味している。また、「センダスト」とは、4質量%以上13質量%以下の割合のSi(シリコン)と、4質量%以上7質量%以下のAl(アルミニウム)と、Feとで構成されている合金を意味している。
以下、本発明の一実施の形態について、図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における軟磁性材料の製造方法によって作製された成形体を拡大して示す模式図である。
図1を参照して、軟磁性材料の成形体(圧粉磁心)は、複数の複合磁性粒子30によって構成されており、複合磁性粒子30は、2種類の複合磁性粒子30a,30bにより構成されている。複合磁性粒子30aは、金属磁性粒子としての鉄粒子10aと、鉄粒子10aの表面に形成された絶縁被膜20aとを有している。また、複合磁性粒子30bは、金属磁性粒子としての添加物粒子10bと、添加物粒子10bの表面に形成された絶縁被膜20bとを有している。添加物粒子10bは、センダストまたはパーマロイの少なくともいずれか一方よりなっている。添加物粒子10bは0質量%より大きく30質量%以下の割合、好ましくは5質量%以上25質量%以下の割合で軟磁性材料中に含まれている。複数の複合磁性粒子30の各々の間には有機物40が介在している。複数の複合磁性粒子30の各々は、有機物40によって接合されていたり、複合磁性粒子30が有する凹凸の噛み合わせによって接合されていたりする。有機物40は、0.01質量%以上0.1質量%以下の割合で軟磁性材料中に含まれている。
鉄粒子10aの平均粒径は、5μm以上300μm以下であることが好ましい。鉄粒子10aの平均粒径が5μm以上である場合、鉄が酸化されにくくなるため、軟磁性材料の磁気的特性の低下を抑止できる。また、鉄粒子10aの平均粒径が300μm以下である場合、後に続く成形工程時において混合粉末の圧縮性が低下することを抑止できる。これにより、成形工程によって得られた成形体の密度が低下せず、取り扱いが困難になることを防ぐことができる。
なお、平均粒径とは、ふるい法によって測定した粒径のヒストグラム中、粒径の小さい方からの質量の和が総質量の50%に達する粒子の粒径、つまり50%粒径Dをいう。
絶縁被膜20a,20bは、たとえばリン酸アルミニウム化合物と、リン酸カルシウム化合物とを含む絶縁体よりなっている。また、添加物粒子10bがセンダストよりなっている場合には、センダストに含有されるAlの酸化膜を絶縁被膜20bとしてもよい。絶縁被膜20a,20bは、鉄粒子10aおよび添加物粒子10b間の絶縁層として機能する。鉄粒子10aおよび添加物粒子10bを絶縁被膜20a,20bで覆うことによって、軟磁性材料の電気抵抗率ρを大きくすることができる。これにより、鉄粒子10aおよび添加物粒子10b間に渦電流が流れるのを抑制して、軟磁性材料の渦電流損に起因する鉄損を低減させることができる。
絶縁被膜20a,20bの厚みは、0.005μm以上20μm以下であることが好ましい。絶縁被膜20の厚みを0.005μm以上とすることによって、渦電流によるエネルギー損失を効果的に抑制することができる。また、絶縁被膜20a,20bの厚みを20μm以下とすることによって、軟磁性材料に占める絶縁被膜20a,20bの割合が大きくなりすぎない。このため、軟磁性材料の磁束密度が著しく低下することを防止できる。
有機物40はたとえば熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドまたはポリエーテルエーテルケトンなどの熱可塑性樹脂よりなっている。
なお、本実施の形態においては、添加物粒子10bの表面に絶縁被膜20bが形成されている場合について示したが、添加物粒子10bの表面には絶縁被膜20bが形成されていなくてもよい。また、本実施の形態においては、複数の複合磁性粒子30の各々の間に有機物40が介在している場合について示したが、有機物40はなくてもよい。
次に、本実施の形態における軟磁性材料の製造方法について説明する。
図2は、本発明の一実施の形態における軟磁性材料の製造方法を示す工程図である。
図2を参照して、まず、鉄粒子10aを準備し、温度400℃以上900℃未満で熱処理する。熱処理の温度は、700℃以上900℃未満であることがさらに好ましい。熱処理前の鉄粒子10aの内部には、多数の歪み(転位、欠陥)が存在している。鉄粒子10aに熱処理を実施することによって、この歪みを低減させることができる。次に、たとえば、絶縁被膜20aの成分が溶解した水溶液中に鉄粒子10aを浸漬し、その後乾燥することにより、鉄粒子10aの表面に絶縁被膜20aを形成する(ステップS1a)。これにより、複合磁性粒子30aが得られる。
一方、センダストまたはパーマロイの少なくともいずれか一方よりなっている添加物粒子10bを準備し、鉄粒子10aと同様の方法により熱処理される。次に、鉄粒子10aと同様の方法により、添加物粒子10bの表面に絶縁被膜20bを形成する(ステップS1b)。これにより、複合磁性粒子30bが得られる。
このように、鉄粒子10aの表面に絶縁被膜20aを形成する工程(ステップS1a)と、添加物粒子10bに絶縁被膜20bを形成する工程(ステップS1b)とを別々に行なうことによって、鉄粒子10aの粒径と添加物粒子10bの粒径とが大きく異なる場合にも、均一な絶縁被膜をそれぞれの粒子に形成することができる。
次に、複合磁性粒子30aと、複合磁性粒子30bと、熱可塑性樹脂よりなる有機物40とを混合する(ステップS1c)。混合粉末に占める添加物粒子の割合は0質量%より大きく30質量%以下、好ましくは5質量%以上25質量%以下であり、混合粉末に占める有機物40の割合は0.01質量%以上0.1質量%以下である。なお、混合方法に特に制限はなく、たとえばメカニカルアロイング法、振動ボールミル、遊星ボールミル、メカノフュージョン、共沈法、化学気相蒸着法(CVD法)、物理気相蒸着法(PVD法)、めっき法、スパッタリング法、蒸着法またはゾル−ゲル法などのいずれを使用することも可能である。以上のステップS1a〜S3aが混合粉末を作製する工程(ステップS1)である。
次に、得られた混合粉末を金型に入れ、たとえば980MPa以上の圧力で加圧成形する(ステップS2)。これにより、混合粉末が圧縮されて成形体が得られる。加圧成形する雰囲気は、不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気とすることが好ましい。この場合、大気中の酸素によって混合粉末が酸化されるのを抑制できる。
加圧成形の際、有機物40は、複合磁性粒子30の間で緩衝材として機能する。これにより、複合磁性粒子30同士の接触によって絶縁被膜20a,20bが破壊されることを防ぐ。
次に、加圧成形によって得られた成形体を、温度200℃以上絶縁被膜20a,20bの熱分解温度未満で熱処理する(ステップS3)。絶縁被膜20a,20bの熱分解温度は、たとえばリン酸系絶縁被膜の場合、500℃である。この熱処理は、主に、加圧成形時に成形体の内部に発生した歪みを低減させることを目的として実施される。
この際、鉄粒子10aおよび添加物粒子10bの内部に元々存在した歪みは、上述した熱処理によって既に取り除かれているため、加圧成形後に成形体の内部に存在する歪みの量は比較的少ない。また、加圧成形時に発生する歪みが、鉄粒子10aおよび添加物粒子10bの内部に元々存在する歪みに複雑に絡み合うということがない。さらに、新たな歪みは、金型に収容された混合粉末に対して圧力が一方向から加わることによって発生する。これらの理由から、絶縁被膜20a,20bの熱分解温度以下という比較的低い温度で熱処理しているにもかかわらず、成形体の内部に存在する歪みを容易に低減させることができる。
また、鉄粒子10aおよび添加物粒子10bの内部には歪みがほとんど存在しないため、複合磁性粒子30は加圧成形時に変形しやすい。このため、図1に示すように複数の複合磁性粒子30が互いに噛み合った隙間のない状態で、成形体を形成することができる。これにより、成形体の密度を大きくし、高い透磁率を得ることができる。
また、成形体に対する熱処理は比較的低い温度で実施されるため、絶縁被膜20a,20bが劣化するということがない。これにより、熱処理後においても絶縁被膜20a,20bの各々が鉄粒子10aおよび添加物粒子10bの各々を覆う状態が保持され、絶縁被膜20a,20bによって鉄粒子10aおよび添加物粒子10b間に渦電流が流れるのを確実に抑制することができる。さらに好ましくは、加圧成形によって得られた成形体を、温度200℃以上300℃以下で熱処理する。この場合、絶縁被膜20a,20bの劣化をさらに抑制することができる。
以上に説明した工程によって、図1に示す成形体が完成する。なお本発明において、複合磁性粒子30に対する有機物40の混合は必須の工程ではなく、有機物40を混合することなく、複合磁性粒子30のみで続く加圧成形工程を実施してもよい。
また、本実施の形態では、鉄粒子10aの表面に絶縁被膜20aを形成する工程と、添加物粒子10bに絶縁被膜20bを形成する工程とが別々に行なわれる場合について示したが、本発明はこのような場合に限定されるものではなく、鉄粒子10aと添加物粒子10bとを混合した後で、鉄粒子10aと添加物粒子10bとの各々に絶縁被膜20a,20bの各々を同時に形成してもよい。これにより、製造工程を簡略化することができる。
また、本実施の形態においては、絶縁被膜20aの成分が溶解した水溶液中に鉄粒子10aを浸漬して絶縁被膜20aを形成する方法が示されたが、本発明はこのような場合に限定されるものではなく、鉄粒子の表面に絶縁被膜を形成する方法は任意である。また、本実施の形態においては、絶縁被膜20a,20bがリン酸アルミニウム化合物と、リン酸カルシウム化合物とを含む絶縁体である場合について示したが、本発明はこのような場合の他、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムなどの酸化物絶縁体よりなる絶縁被膜が形成されてもよい。
本実施の形態の軟磁性材料は、圧粉磁心の作製に用いられる軟磁性材料であって、絶縁被膜20aが表面に形成された鉄粒子10aと、センダストまたはパーマロイの少なくともいずれか一方よりなる添加物粒子10bとを含んでいる。添加物粒子10bは0質量%より大きく30質量%以下の割合で含まれている。
本実施の形態の軟磁性材料の製造方法は、以下の工程を備えている。絶縁被膜20aが表面に形成された鉄粒子10aと、センダストまたはパーマロイの少なくともいずれか一方よりなる添加物粒子10bとが混合された混合粉末を作製する(ステップS1)。混合粉末を加圧成形して成形体を形成する(ステップS2)。成形体を熱処理する(ステップS3)。混合粉末を作製する(ステップS1)際に、添加物粒子は0質量%より大きく30質量%以下の割合で混合される。
本実施の形態の軟磁性材料およびその製造方法によれば、軟磁性材料に交流磁界が印加されると、軟磁性材料に含まれるセンダストまたはパーマロイが容易に磁化され、磁化されたセンダストまたはパーマロイが周囲の鉄分の磁化を促進する。その結果、純鉄よりなる場合では到達することのできない高い交流磁気特性を有する軟磁性材料を得ることができる。また、センダストまたはパーマロイの量を30質量%以下とすることで、センダストまたはパーマロイによる飽和磁束密度Bsの低下を抑えることができる。さらに、センダストまたはパーマロイの量を30質量%以下とすることで、センダストまたはパーマロイによる成形性の低下を抑えることができる。したがって、軟磁性材料の成形性を向上することができる。
本実施の形態の軟磁性材料においては、添加物粒子10bが5質量%以上25質量%以下の割合で含まれている。
本実施の形態の軟磁性材料の製造方法においては、混合粉末を作製する(ステップS1)際に、添加物粒子10bが5質量%以上25質量%以下の割合で混合される。
これにより、軟磁性材料の交流磁気特性を一層向上することができる。
本実施の形態の軟磁性材料においては、有機物40としての熱可塑性樹脂が0.01質量%以上0.1質量%以下の割合でさらに含まれている。
本発明の軟磁性材料においては、混合粉末を作製する(ステップS1)際に、有機物40としての熱可塑性樹脂が0.01質量%以上0.1質量%以下の割合でさらに混合される。
これにより、熱可塑性樹脂が複合磁性粒子30aおよび複合磁性粒子30bの間に介在している状態になる。熱可塑性樹脂の割合を0.01質量%以上とすることにより、加圧成形時の応力を受けて複合磁性粒子30aおよび複合磁性粒子30bの間で熱可塑性樹脂がたわむことにより、複合磁性粒子30aおよび複合磁性粒子30bの間で潤滑剤として機能するようになる。また、鉄粒子10a同士の間の絶縁性を高めることができる。一方、熱可塑性樹脂の割合を0.1質量%以下とすることにより、軟磁性材料の磁性体部分の密度を高くすることができるので、交流磁気特性を高く保つことができる。
本実施の形態の軟磁性材料の製造方法においては、成形体を形成する(ステップS2)際に、混合粉末に980MPa以上の圧力が加えられる。
これにより、軟磁性材料を高密度化することができるので、飽和磁束密度Bsを向上することができ、交流磁気特性を向上することができる。
本発明の軟磁性材料を用いて圧粉磁心を作製することにより、飽和磁束密度が1.5T以上の圧粉磁心を得ることができる。
なお、本発明による軟磁性材料の製造方法は、たとえば、圧粉磁心、チョークコイル、スイッチング電源素子、磁気ヘッド、各種モータ部品、自動車用ソレノイド、各種磁気センサおよび各種電磁弁などの製品の作製に利用することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
本実施例においては、センダストよりなる添加物粒子の割合を0質量%〜50質量%の範囲で変化させ、交流磁気特性の変化を調べた。具体的には、ガスアトマイズセンダスト粉であるDAPMSA10(大同特殊鋼製)を700℃の温度で1時間、窒素雰囲気中で熱処理して添加物粒子を作製した。また、純鉄よりなる複合磁性粒子としてSomaloy(ヘネガス社製)を用いた。これら2つの粒子を用いて上記実施の形態とほぼ同様の方法で軟磁性材料を作製し、この軟磁性材料を用いて圧粉磁心を作製した。得られた圧粉磁心について、BHカーブトレーサを用いて保磁力Hc、磁束密度B100(100Oe(≒8.0×106A/m)の外部磁界を印加したときの磁束密度)、および飽和磁束密度Bsを測定した。保磁力Hcについては、理論値の保磁力Hcを算出し、理論値に対する保磁力Hcの低下率を算出した。
なお、理論値の保磁力Hcは以下の方法により算出した。100質量%のSomaloyの保磁力HcをAとし、50質量%のSomaloyと50質量%のセンダストとを混合したときの保磁力Hcを(0.5A+0.5B)としてA,Bの値を算出した、そして、このA,Bの値を用いて、理論値の保磁力HcをHc=A(1−x)+Bx(x:センダストの質量の割合)の式から算出した。この結果を表1、図3および図4に示す。
Figure 2005303007
表1、図3および図4に示すように、センダストの混合比が0質量%より大きく30質量%以下の場合には、理論値に対する保磁力Hcの低下率は0%より大きくなっている。特に、センダストの混合比が5質量%以上25質量%以下の場合には、理論値に対する保磁力Hcの低下率は4%以上大きくなっている。これにより、センダストの混合比が0質量%より大きく30質量%以下の場合、特に5質量%以上25質量%以下の場合には、交流磁気特性が向上することが分かる。また、センダストの混合比が0質量%より大きく30質量%以下の場合には、飽和磁束密度Bsがいずれも1.5T以上となっており、磁束密度B100がいずれも1.3T以上となっていることが分かる。
(実施例2)
本実施例では、ポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと記す)の割合を0質量%〜0.6質量%の範囲で変化させ、交流磁気特性の変化を調べた。具体的には、実施例1とほぼ同様の方法で作製した約20質量%の添加物粒子と、約80質量%のSomaloyと、0質量%〜0.6質量%のPPSとを混合し、軟磁性材料を作製した。そして、この軟磁性材料を用いて圧粉磁心を作製した。得られた圧粉磁心について、BHカーブトレーサを用いて保磁力Hc、磁束密度B100、飽和磁束密度Bs、および鉄損を測定した。鉄損については、印加する外部磁場の周波数を1kHz、出力を10kG(=1T)として測定した。この結果を表2、図5および図6に示す。
Figure 2005303007
表2、図5および図6に示すように、PPSの混合比が0.01質量%以上0.1質量%以下の場合には、鉄損が約150W/kg以下の低い値となっていることが分かる。また、PPSの混合比が0.1質量%以下の場合には、磁束密度B100が約1.34T以上の高い値となっていることが分かる。以上の結果から、PPSの割合を0.01質量%以上とすることで鉄粒子同士の間の絶縁性を高めることができ、PPSの割合を0.1質量%以下とすることにより、交流磁気特性を高く保てることが分かる。
(実施例3)
本実施例では、成形体を形成する際に混合粉末に加える圧力を7〜13t/cm2(686〜1275MPa)の間で変化させ、得られる圧粉磁心の交流磁気特性の変化を調べた。具体的には、実施例1とほぼ同様の方法で作製した約20質量%の添加物粒子と、約80質量%のSomaloyと、0.1質量%のPPSとを混合して混合粉末を作製した。そして、この混合粉末を7〜13t/cm2の圧力でそれぞれ圧粉成形し、その後400℃の温度で1時間熱処理した。得られた圧粉磁心について、BHカーブトレーサを用いて保磁力Hc、磁束密度B100、飽和磁束密度Bs、および鉄損を測定した。鉄損については、印加する外部磁場の周波数を1kHz、出力を10kG(=1T)として測定した。この結果を表3、図7および図8に示す。
Figure 2005303007
表3、図7および図8に示すように、圧力が10t/cm2(980MPa)以上の場合には、飽和磁束密度Bsが1.7(T)以上となって飛躍的に向上しており、また、保磁力Hcの値も低下している。さらに、圧力が10t/cm2以上の場合には、鉄損も148W/kg以下の低い値となっている。以上の結果から、成形体を形成する際に混合粉末に10t/cm2(980MPa)以上の圧力を加えることで、交流磁気特性を向上できることが分かる。
以上に開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態および実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものと意図される。
本発明の一実施の形態における軟磁性材料の製造方法によって作製された成形体を拡大して示す模式図である。 本発明の一実施の形態における軟磁性材料の製造方法を示す工程図である。 本発明の実施例1におけるセンダストの混合比と保磁力Hcとの関係を示す図である。 本発明の実施例1におけるセンダストの混合比と理論値に対する保磁力Hcの低下率との関係を示す図である。 本発明の実施例2におけるPPSの混合比と鉄損との関係を示す図である。 本発明の実施例2におけるPPSの混合比と磁束密度B100との関係を示す図である。 本発明の実施例3における飽和磁束密度Bsと鉄損との関係を示す図である。 本発明の実施例3におけるプレス圧と鉄損との関係を示す図である。
符号の説明
10a 鉄粒子、10b 添加物粒子、20a,20b 絶縁被膜、30,30a,30b 複合磁性粒子、40 有機物。

Claims (8)

  1. 圧粉磁心の作製に用いられる軟磁性材料であって、
    絶縁被膜が表面に形成された鉄粒子と、センダストまたはパーマロイの少なくともいずれか一方よりなる添加物粒子とを含み、前記添加物粒子を0質量%より大きく30質量%以下の割合で含むことを特徴とする軟磁性材料。
  2. 前記添加物粒子を5質量%以上25質量%以下の割合で含むことを特徴とする、請求項1に記載の軟磁性材料。
  3. 熱可塑性樹脂を0.01質量%以上0.1質量%以下の割合でさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の軟磁性材料。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の軟磁性材料を用いて作製された圧粉磁心であって、飽和磁束密度が1.5T以上であることを特徴とする、圧粉磁心。
  5. 絶縁被膜が表面に形成された鉄粒子と、センダストまたはパーマロイの少なくともいずれか一方よりなる添加物粒子とが混合された混合粉末を作製する工程と、
    前記混合粉末を加圧成形して成形体を形成する工程と、
    前記成形体を熱処理する工程とを備え、
    前記混合粉末を作製する工程において、前記添加物粒子を0質量%より大きく30質量%以下の割合で混合することを特徴とする、軟磁性材料の製造方法。
  6. 前記混合粉末を作製する工程において、前記添加物粒子を5質量%以上25質量%以下の割合で混合することを特徴とする、請求項5に記載の軟磁性材料の製造方法。
  7. 前記混合粉末を作製する工程において、熱可塑性樹脂を0.01質量%以上0.1質量%以下の割合でさらに混合することを特徴とする、請求項5または6に記載の軟磁性材料の製造方法。
  8. 前記成形体を形成する工程において、前記混合粉末に980MPa以上の圧力を加えることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の軟磁性材料の製造方法。
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