JP7284700B2 - 摺動機構 - Google Patents
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Description
(1)第1部材と、該第1部材と摺動する第2部材とを組み合わせた摺動機構であって、
前記第1部材の摺動面は、Feを主成分として含み、質量%でCrを8%以上含む鉄系溶射皮膜により形成され、
前記第2部材は、前記第1部材の摺動面との摺動面が、実質的に水素を含まない非晶質炭素皮膜により形成され、
前記非晶質炭素皮膜のビッカース硬さが1100HV以上2100HV以下であり、かつ、前記非晶質炭素皮膜の塑性変形エネルギーWpの弾性変形エネルギーWeに対する比Wp/Weが0.60以上であることを特徴とする摺動機構。
シリンダ10において高クロム含有鉄系溶射皮膜14を形成する基材は特に限定されないが、例えば、一般的なアルミニウム合金を用いることができる。シリンダ10は、当該アルミニウム合金からなる基材の内周面に、クロム含有率の高い鉄系合金粉末を直接溶射して高クロム含有の鉄系溶射皮膜14を形成した、ライナーレスのシリンダとする。溶射は、プラズマ溶射、アーク溶射、高速フレーム溶射(HVOF,HVAF)等、特に限定しないが、鉄系合金のワイヤを使用するワイヤアーク溶射が経済的に優れており好ましい。
ピストンリングの基材20Aは特に限定されず、例えば、コンプレッションリング用のシリコンクロム鋼(JIS SEOSC-V)やマルテンサイト系ステンレス鋼(JIS SUS440B)など、公知又は任意の材料を用いることができる。
非晶質炭素皮膜の水素含有率の評価は、摺動部が平坦な面や曲率が十分大きな面に形成された非晶質炭素皮膜に対してはRBS(Rutherford Backscattering Spectrometry)/HFS(Hydrogen Forward Scattering Spectrometry)によって評価することができる。これに対して、ピストンリングの外周面など平坦でない摺動面に形成された非晶質炭素皮膜に対しては、RBS/HFS及びSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)を組み合わせることによって評価する。RBS/HFSは公知の皮膜組成の分析方法であるが、平坦でない面の分析には適用できないので、以下のようにしてRBS/HFS及びSIMSを組み合わせる。
本実施形態では、DLC皮膜28が、(A)ビッカース硬さが1100HV以上2100HV以下であることと、(B)塑性変形エネルギーWpの弾性変形エネルギーWeに対する比Wp/Weが0.60以上であることの両方を満たすことが重要である。これら(A)及び(B)を満足することによって、シリンダの内周面12が高クロム含有鉄系溶射皮膜14により形成されている場合において、DLC皮膜28の摩耗量を低減することが可能である。以下、より詳細に説明する。
本実施形態では、第一に、DLC皮膜28のビッカース硬さが1100HV以上2100HV以下であることが肝要である。後述する実験例2(図4)から明らかなように、DLC皮膜のビッカース硬さが2100HVを超える場合、DLC皮膜の摩耗量が大きくなってしまう。これに対して、DLC皮膜28のビッカース硬さが2100HV以下である場合、DLC皮膜28の摩耗量を低減することが可能である。ピストンリングの外周面を構成するDLC皮膜の面積はシリンダボアの摺動範囲の面積に対して十分小さいため、従来は、ピストンリングの外周面を形成するDLC皮膜に関しては、その硬度が高いほど耐摩耗性が高くなり、DLC皮膜の摩耗量が少なくなると考えられていた。しかしながら、本発明では、ピストンリングとシリンダボアとの間で適切な硬さの大小関係があるという技術思想に基づき、DLC皮膜の硬度を従来の思想とは反対である低硬度側で適用したところ、DLC皮膜の摩耗量が低減することが分かった。
本実施形態では、第二に、DLC皮膜28の塑性変形エネルギーWpの弾性変形エネルギーWeに対する比Wp/Weが0.60以上であることが肝要である。塑性変形エネルギーWpは、ナノインデンテーション試験において皮膜表面から押し込まれる圧子が皮膜の変形に費やす仕事(エネルギー)のうち、圧子を除去しても皮膜が変形したままの状態になる塑性変形に費やされるエネルギーである。また、弾性変形エネルギーWeは、圧子が除去されて皮膜が元に戻ることによって解放されるエネルギーである。したがって、Wp/Weは、皮膜表面に異物が押し込まれた場合の塑性変形のしやすさを示す指標となる。
なお、前述の実施の形態に係るピストンリングには、ピストンリングの基材に直接DLC皮膜を形成したものを例示したが、本発明はこれだけに限られない。例えば、ピストンリングの基材とDLC皮膜の間に、0.1~1.0μmの厚さで金属系中間層を形成して密着性を高めることもできる。金属系中間層の材質としては、クロム、チタン、及びタングステンからなる群から選択された一つ以上の元素、又はこれらの炭化物を挙げることができる。さらに、使用環境によりDLC皮膜が万が一摩滅した場合でも、スカッフが発生しないように、耐スカッフ性に優れた硬質金属窒化物をピストンリング基材とDLC皮膜との間、あるいは、基材と金属中間層との間に1~30μmの厚さで形成してもよい。硬質金属窒化物としては窒化クロム、窒化チタンやこれらの炭化物などであってもよい。
ADC12アルミ合金製のシリンダーブロック内壁に機械加工により凹凸を設け、その後、窒素ガスをキャリアとしたアーク式溶射法にて、Cr量が種々の水準で残部はFeの成分組成を有する厚さ約250μmの溶射皮膜を成膜した。溶射皮膜の表面は研削加工を行って、表面粗さをRa0.05μm程度に仕上げ、評価用に20mm×20mmの試験片を切り出した。切出した試験片の側面およびアルミ合金製の裏面は、酸による腐食を防ぐため樹脂コーティングを行い、試験片の重量を測定した。その後、25℃にて硝酸1%水溶液に1時間浸漬した。浸漬後十分に乾燥させて、再び試験片の重量を測定し、浸漬前後の重量差を腐食量とした。溶射皮膜のCr量と腐食量との関係を図3に示す。
ピストンリングの外周面に、1100~2400HVの範囲のビッカース硬さを有し、Wp/Weが0.60以上の種々の水準のDLC皮膜を形成した。DLC皮膜の成膜は、真空アーク方式による成膜装置を用い、バイアス電圧を種々に設定して行った。各水準のDLC皮膜について、既述の方法により水素含有率を測定したところ、いずれも2原子%以下であった。
水準1:SUS410鋼(気孔率1.4%)
水準2:SUS410鋼(気孔率0.9%)
振動摩擦摩耗試験(オプチモール社:SRV4試験機)により、ピストンリングの外周面とボア試験片とを線接触させた状態で、往復動試験を行った。なお、ボア試験片の表面には100℃の潤滑油(エンジン油ベースオイル)を0.25mL/hの量で滴下した。試験条件は以下のとおりである。
荷重 :450N
往復摺動時の周波数 :25Hz
往復摺動時の振幅 :3mm
試験時間 :12時間
ピストンリングに対応する試験片として、φ6mm×長さ12mmのSUJ2製円柱を基材とし、その曲面に、ビッカース硬さ1800HVの水準と、ビッカース硬さ2300HVの水準のDLC皮膜を形成した。なお、いずれの水準でもWp/Weは0.60以上である。DLC皮膜の成膜は、真空アーク方式による成膜装置を用い、バイアス電圧を種々に設定して行った。各水準のDLC皮膜について、既述の方法により水素含有率を測定したところ、いずれも2原子%以下であった。
荷重 :360N
往復摺動時の周波数 :25Hz
往復摺動時の振幅 :3mm
試験時間 :2時間
ピストンリングに対応する試験片として、φ6mm×長さ12mmのSUJ2製円柱を基材とし、その曲面に、ビッカース硬さ1800HVの水準と、ビッカース硬さ2300HVの水準のDLC皮膜を形成した。なお、いずれの水準でもWp/Weは0.60以上である。DLC皮膜の成膜は、真空アーク方式による成膜装置を用い、バイアス電圧を種々に設定して行った。各水準のDLC皮膜について、既述の方法により水素含有率を測定したところ、いずれも2原子%以下であった。
ピストンリングの外周面に、表1に示す種々の水準のDLC皮膜を形成した。DLC皮膜の成膜は、真空アーク方式による成膜装置を用い、バイアス電圧及び基材の温度を種々に設定して行った。
振動摩擦摩耗試験(オプチモール社:SRV4試験機)により、ピストンリングの外周面とボア試験片とを線接触させた状態で、往復動試験を行った。なお、ボア試験片の表面には100℃の潤滑油(エンジン油ベースオイル)を0.25mL/hの量で滴下した。試験条件は以下のとおりである。
荷重 :450N
往復摺動時の周波数 :25Hz
往復摺動時の振幅 :3mm
試験時間 :12時間
12 シリンダの内周面(ボア面)
14 高クロム含有鉄系溶射皮膜(又はステンレス溶射皮膜)
20 ピストンリング
20A ピストンリングの基材
22 ピストンリングの外周面
24 ピストンリングの内周面
26A ピストンリングの上面(上側面)
26B ピストンリングの下面(下側面)
28 非晶質炭素皮膜
Claims (2)
- 第1部材と、該第1部材と摺動する第2部材とを組み合わせた摺動機構であって、
前記第1部材の摺動面は、Feを主成分として含み、質量%でCrを8%以上含む鉄系溶射皮膜により形成され、
前記第2部材は、前記第1部材の摺動面との摺動面が、実質的に水素を含まない非晶質炭素皮膜により形成され、
前記非晶質炭素皮膜のビッカース硬さが1100HV以上2100HV以下であり、かつ、前記非晶質炭素皮膜の塑性変形エネルギーWpの弾性変形エネルギーWeに対する比Wp/Weが0.60以上であることを特徴とする摺動機構。 - 前記第1部材が内燃機関のシリンダであり、前記第2部材が前記シリンダの内周面と摺動する外周面を有するピストンリングである、請求項1に記載の摺動機構。
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US20150292622A1 (en) | 2012-10-31 | 2015-10-15 | Federal-Mogul Burscheid Gmbh | Sliding element, in particular a piston ring, having a coating |
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