JP7133893B2 - 固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルム - Google Patents
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Description
1. ポリエステルフィルムの少なくとも片面に帯電防止層、離型層の順に積層されている離型フィルムであって、160℃における熱収縮率が0.8%以下であり、離型フィルム表面の表面固有抵抗が1×1011Ω/□以下であることを特徴とする固体高分子型燃料電池成型用離型フィルム。
2. ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする上記第1に記載の固体高分子型燃料電池成型用離型フィルム。
3. 離型層表面の表面自由エネルギーの極性成分と水素結合成分を合計した値が8mJ/m2以下であることを特徴とする上記第1または第2に記載の固体高分子型燃料電池成型用離型フィルム。
4. 離型層に含まれる樹脂の少なくとも一つがガラス転移温度130℃以上であることを特徴とする上記第1~第3のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池成型用離型フィルム。
5. 離型層に含まれる樹脂が、環状ポリオレフィン系の樹脂であることを特徴とする上記第1~第4のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池成型用離型フィルム。
6. 離型層にナノ粒子を含むことを特徴とする上記第1~第5のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池成型用離型フィルム。
本発明で基材として用いるポリエステルフィルムは、主としてポリエステル樹脂より構成されるフィルムである。ここで、「主としてポリエステル樹脂より構成されるフィルム」とは、ポリエステル樹脂を50質量%以上含有する樹脂組成物から形成されるフィルムであり、他のポリマーとブレンドする場合は、ポリエステル樹脂が50質量%以上含有していることを意味し、他のモノマーが共重合されている場合は、ポリエステルの繰り返し構造単位を50モル%以上含有することを意味する。好ましくは、ポリエステルフィルムは、フィルムを構成する樹脂組成物中において、ポリエステル樹脂を90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは100質量%含有する。
本発明の離型フィルムには、帯電防止層を積層することが必要である。帯電防止層を積層することで、離型層と転写物との静電相互作用を低減することができ、転写性を向上することができることを見出した。本発明において帯電防止層は、ポリエステルフィルムと離型層の間に設けることが好ましい。帯電防止層をポリエステルフィルムの離型層を積層した面とは反対側に積層した場合は、離型層表面の導電性が悪く効果が少なく好ましくない。また、離型層に導電性を有する添加剤を添加することも触媒層への移行などが懸念されるため好ましくない。
本発明においては、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面には離型層が積層する必要がある。離型層に使用される樹脂は特に限定されないが、下記記載の樹脂(A)を含有する離型層を設けることが好ましい。
フィルムにかかる張力(mN/mm2)=乾燥炉内の張力(mN)÷フィルムの幅(mm)÷フィルムの厚み(mm)
本発明の離型フィルム表面の表面抵抗値は、温度23℃、湿度55%の条件下で24時間調湿後、離型層表面の表面抵抗値を表面抵抗測定器(シムコジャパン(株)製、ワークサーフェイステスター ST-3)を用いて測定し、下記の判定基準で評価した。
◎:表面抵抗値が106~107Ω/□
○:表面抵抗値が108~109Ω/□
△:表面抵抗値が1010~1011Ω/□
×:表面抵抗値が1012Ω/□以上
非接触表面形状計測システム(VertScan R550H-M100)を用いて、下記の条件で測定した値である。領域表面平均粗さ(Sa)は、5回測定の平均値を採用し、最大突起高さ(P)は5回測定の最大値を採用した。
(測定条件)
・測定モード:WAVEモード
・対物レンズ:50倍
・0.5×Tubeレンズ
・測定面積 187×139μm
なお、表1の(Sa)及び(P)は基材ポリエステルフィルムの離型層を積層する面のデータを示している。
離型フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、熱風オーブンにて160℃で30分熱処理を行った。熱処理後、試料フィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下記(1)式に従い熱収縮率を求めた。測定はn=5回行い、試料フィルムの縦方向及び横方向の熱収縮率データの各々の平均値のうち、大きい方の熱収縮率データを採用し、その離型フィルムの熱収縮率データとする。なお、熱処理前後の寸法を測定するときは、サンプルフィルムを25℃の部屋で12時間以上エージング後に測定を行った。
熱収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/ 収縮前の長さ}×100 (%) (1)式
表面張力が既知の水、ジヨードメタン、ブロモナフタレンの接触角を25℃、50%RHの条件下で接触角計(協和界面科学株式会社製: 全自動接触角計 DM-701)を用いて測定した。
得られた接触角データを「北崎-畑」理論より計算し離型フィルムの表面自由エネルギーの分散成分γsd、極性成分γsp、水素結合成分γshを求め、各成分を合計したものを表面自由エネルギーγsとした。本計算には、本接触角計ソフトウェア(FAMAS)内の計算ソフトを用いて行った。
本発明のフィルムヘイズはJIS K 7136に準拠し、濁度計(日本電色製、NDH2000)を用いて測定した。
JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ製、DSC6200)を使用して、樹脂サンプル10mgを25~350℃の温度範囲にわたって20℃/minで昇温させ、DSC曲線から得られた補外ガラス転移開始温度をガラス転移温度とした。
ナノ粒子の1次粒径の測定方法は、加工後のフィルムの断面の粒子を透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で観察を行い、凝集していない粒子100個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする方法で行った。粒子の形状が球状以外である不定形の粒子の1次粒径は円相当径として計算することができる。円相当径は、観察された粒子の面積をπで除し、平方根を算出し2倍した値である。
転写性については、以下の方法で行った。20%Nafion(登録商標)Dispersion Solution DE2021 CS type(和光純薬工業社製)の固形分とカーボンブラック(CABOT社製、VERCANX72R)を質量比で1/9になるように混合し、総固形分が15%になるようにイソプロパノール/水(質量比8/2)で調整後、遠心攪拌機にて分散を行い擬似触媒層用スラリーを得た。得られた擬似触媒層スラリーをアプリケーターを用いて、乾燥後の膜厚が10μmになるように離型フィルムの上に塗工し、熱風オーブンで90℃2分乾燥を行った。その後、熱風オーブンで150℃15分間熱処理後に室温に戻した後にメンディングテープを用いてメンディングテープが180°の角度で剥離した。転写性を以下の基準で評価した。
○:離型フィルム上に擬似触媒層は残らなかった。
△:離型フィルム上に擬似触媒層はうっすらと残った。
(白色台紙上で観察すると擬似触媒層が残っていることがなんとか認識できるレベル)
×:離型フィルム上に擬似触媒層はうっすらと残った。
(白色台紙上で観察すると黒く残った擬似触媒層がはっきりと認識できるレベル)
触媒層の割れなどの外観評価は以下のように行った。まず、20%Nafion(登録商標)Dispersion Solution DE2021 CS type(和光純薬工業社製)の固形分と、カーボンブラック(CABOT社製、VERCANX72R)を質量比で2/8になるように混合し、遠心攪拌機にて分散を行い擬似触媒層用スラリーを得た。得られた擬似触媒層スラリーをアプリケーターを用いて、乾燥後の膜厚が5μmになるように離型フィルムの上に塗工し、熱風オーブンで90℃1分乾燥を行った。作成した擬似触媒層付き離型フィルムを10cm×10cmの大きさに裁断し熱風オーブンで150℃、10分間熱処理し擬似触媒層の状態を以下の基準で評価した。
○:擬似触媒層にひび割れがなく良好
△:擬似触媒層の一部(全面積の10%未満)にひび割れなどの外観不良が見られた
×:擬似触媒層の大部分(全面積の10%以上)にひび割れなどの外観不良が見られた
さらに高温での加工性についても評価するため、上記と同様の擬似触媒層付き離型フィルムを170℃、10分間熱処理し擬似触媒層の状態について、転写性と触媒層の割れ性を評価した。評価基準は上記基準と同じとした。
環状ポリオレフィン系樹脂のTOPAS(登録商標)6017S(ポリプラスチックス社製)をトルエンに固形分が10質量%になるように投入し、冷却管付きのフラスコでトルエンが還流するまで加熱し、前記樹脂のトルエン溶液を得た。
乾燥した300mLの2口フラスコ内を窒素ガスで置換した後、ジメチルアニリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート8.1mg、トルエン235.7mL、7.5mol/Lの濃度でノルボルネンを含有するトルエン溶液7.0mL、1-オクテン3.3mL、トリイソブチルアルミニウム2mLを添加して、反応溶液を25℃に保持した。この溶液とは別個に、グローブボックス中で、触媒として、92.9mgの(t-ブチルアミド)ジメチル-9-フルオレニルシランチタンジメチル[(t-BuNSiMe2Flu)TiMe2]をフラスコに入れ、5mLのトルエンに溶解させた。この触媒溶液2mLを300mLフラスコに加えて重合を開始した。2分後に2mLのメタノールを添加して反応を終了させ、得られた反応混合物を塩酸で酸性に調整した大量のメタノール中に入れ沈殿物を析出させた後に、濾別、洗浄後、乾燥して、2-ノルボルネン・1-オクテン共重合体を5.0g得た。得られた共重合体の数平均分子量Mnは121,000、ガラス転移温度(Tg)は268℃、動的貯蔵弾性率(E’)が-20℃付近に転移点を有し、2-ノルボルネンと1-オクテンとの組成(モル比)は、前者/後者=83/17であった。得られた環状ポリオレフィンの共重合体をトルエンに固形分10質量%になるように溶解した。
以下の組成で塗液を調整した。
水 34.47質量部
イソプロピルアルコール 51.20質量部
ポリエステル樹脂 1.00質量部
(バイロナール(登録商標)MD1500、東洋紡社製、固形分30質量%)
PEDOT/PSS/PTS分散液 13.30質量部
(ベラゾール(登録商標)WED-SM、綜研化学社製、固形分1.5質量%)
界面活性剤(サーフィノールダイノール604、日信化学工業社製) 0.03質量部
以下の組成で塗液を調整した。
水 28.7質量部
イソプロピルアルコール 43.0質量部
シリケート加水分解液 15.0質量部
(コルコート(登録商標)N-103X、コルコート社製、固形分2質量%)
PEDOT/PSS/PTS分散液 13.3質量部
(ベラゾール(登録商標)WED-SM、綜研化学社製、固形分1.5質量%)
以下の組成で塗液を調整した。
水 30.0質量部
イソプロピルアルコール 45.0質量部
シリケート加水分解液 25.0質量部
(コルコート(登録商標)N-103X、コルコート社製、固形分2質量%)
以下の組成で塗液を調整した。
水 40.6質量部
イソプロピルアルコール 58.4質量部
カチオン系アクリル樹脂 1.0質量部
(エレコンドPQ-10、綜研化学社製、固形分50質量%)
幅1000mm、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名E5100、東洋紡社製)に、帯電防止層塗液AS-1をグラビアコート法にてコロナ面に乾燥後の膜厚で40nmになるように塗工後、120℃で5秒間乾燥した。その後、前記帯電防止層の上に、下記離型剤B-1をグラビアコート法にて乾燥後の膜厚が100nmになるように塗工し170℃で9秒間乾燥させた。このとき乾燥炉内の張力は40N/m(単位は幅1m当たりの張力(N))になるように調整し、アニール処理も同時に行うことで、固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルムを得た。
(離型剤B-1)
トルエン 60.0質量部
テトラヒドロフラン 20.0質量部
樹脂溶液A-1 20.0質量部
帯電防止層塗液をAS-2に変更した以外は、実施例1と同様にして固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルムを得た。
帯電防止層塗液をAS-3に変更した以外は、実施例1と同様にして固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルムを得た。
帯電防止層塗液をAS-4に変更した以外は、実施例1と同様にして固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルムを得た。
離型剤B-1を下記B-2に変更した以外は、実施例2と同様にして固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルムを得た。
(離型剤B-2)
トルエン 79.5質量部
樹脂溶液A-1 20.0質量部
ナノシリカ粒子分散液 2.5質量部
(日産化学工業社製 TOL-ST 粒径10nm 固形分40質量%)
(樹脂(A)/ナノ粒子(B)=100質量部/50質量部)
離型剤B-1を下記B-3に変更した以外は、実施例2と同様にして固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルムを得た。
(離型剤B-3)
トルエン 79.5質量部
樹脂溶液A-1 20.0質量部
ナノシリカ粒子分散液 5.0質量部
(日産化学工業社製 TOL-ST 粒径10nm 固形分40質量%)
(樹脂(A)/ナノ粒子(B)=100質量部/100質量部)
離型層加工時の乾燥条件を120℃、30秒に変更し、乾燥炉内の張力を120N/m(単位は幅1m当たりの張力(N))に変更した以外は、実施例5と同様に加工することで固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルムを得た。
離型層加工時の乾燥温度を130℃に変更した以外は、実施例5と同様に加工することで固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルムを得た。
樹脂溶液をA-1からA-2に変更した以外は、実施例2と同様に加工することで固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルムを得た。
帯電防止層を設けなかったこと以外は実施例2と同様にして固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルムを得た。
帯電防止層をポリエステルフィルムの離型層を塗工する面とは反対側に設けたこと以外は実施例2と同様にして固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルムを得た。
Claims (6)
- ポリエステルフィルムの少なくとも片面に帯電防止層、離型層の順に積層されている離型フィルムであって、160℃で30分処理したときの熱収縮率が0.8%以下であり、離型フィルム表面の表面固有抵抗が1×103Ω/□以上、1×107Ω/□以下であり、
離型フィルムのヘイズは、0.2%以上10%以下であり、
離型層は、ガラス転移温度が130℃以上である環状ポリオレフィン系の樹脂を含み
(ただし、離型層はシリコーン樹脂を含まない)、
前記離型フィルムは、乾燥温度150℃以上、張力800mN/mm2以下の条件でアニールされたフィルムである
ことを特徴とする固体高分子型燃料電池成型用離型フィルム。 - ポリエステルフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池成型用離型フィルム。
- 離型層表面の表面自由エネルギーの極性成分と水素結合成分を合計した値が8mJ/m2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の固体高分子型燃料電池成型用離型フィルム。
- 離型層にナノ粒子を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池成型用離型フィルム。
- 離型層に含まれるナノ粒子の1次粒径が1nm以上100nm以下である、請求項4に記載の固体高分子型燃料電池成型用離型フィルム。
- 前記ポリエステルフィルムの離型層を積層する面の領域表面平均粗さ(Sa)は、1~50nmであり、かつ、最大突起高さ(P)は、2μm以下である、請求項1~5のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池成型用離型フィルム。
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