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JP4771082B2 - 帯電防止性離型フィルム - Google Patents

帯電防止性離型フィルム Download PDF

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JP4771082B2
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Description

本発明は、剥離や摩擦による帯電を防止し、被離型面からの良好な剥離性を有し、且つ基材フィルムとの密着性に優れる帯電防止性離型層を有する離型フィルム及び該フィルムの製造方法に関する。
詳細には、ピロール及び/又はピロール誘導体のポリマー微粒子からなる帯電防止剤、離型剤、樹脂バインダ並びに界面活性剤を含有する層を基材フィルム上に形成して離型フィルムと為すことにより、該フィルムを粘着フィルムや樹脂シート等の成形用キャリヤフィルムとして用いた際に、剥離や摩擦帯電による静電気障害を防止するだけでなく、粘着フィルム等を剥離した際には、優れた剥離性を発揮するとともに、帯電防止性離型層が脱落して粘着フィルムに付着することがない、帯電防止性離型フィルム及び該フィルムの製造方法に関する。
離型フィルムは、一般にポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等のキャスト成膜用工程フィルムや粘着フィルムの粘着層の保護フィルムとして利用されている。
従来、離型フィルムとしては、一般に基材フィルムの表面にシリコン塗布などの剥離処理を施して離型層を形成したものが知られ利用されている。該離型層の上に、例えばポリ塩化ビニル樹脂と溶媒からなる塗液を塗工した後、溶媒を加熱除去することにより、離型フィルム上に塩化ビニルシートが形成されることとなる。このように樹脂シートや粘着フィルムは離型フィルム(キャリヤフィルム)上に成形された積層フィルムの形態で搬送され、適当な大きさに切断され、印刷等に供されることとなる。
一般に離型フィルム上に成膜した樹脂シートや粘着フィルムは、上述の搬送、切断又は印刷等の工程で種々のロールやコンベヤと接触することにより帯電しやすく(この場合の帯電を摩擦帯電と称する)、さらには、離型フィルムから剥離した際にも帯電しやすい(この場合の帯電を剥離帯電と称する)という問題があった。
こうした静電気障害は、例えば樹脂シート等を積み重ねて保管する場合、離型フィルムとの剥離前後にかかわらず電気的反発又は引き合いによって、樹脂シート同士が反発あるいは張り付いた状態となる不具合や、あるいは、粘着フィルムの場合、粘着層に塵埃等の異物が付着し、目的とする製品へ一緒に貼り合わせてしまうといった不具合を引き起こす原因となっていた。
このため、これまでにも帯電防止処理が為された離型フィルムが種々提案されてきた。一例として、基材フィルムの一方の表面に離型層を設け、他方の表面に帯電防止層を設けてなることを特徴とする離型フィルム(例えば特許文献1参照)、基材フィルムの表面に帯電防止層を形成し、その帯電防止層の上に離型層を形成することを特徴とする帯電防止性を有する離型フィルム(例えば特許文献2、特許文献3参照)、あるいは、イオン導電性組成物(帯電防止剤)を離型層に直接添加させてなる離型フィルム(例えば特許文献4参照)、などの開示を挙げることができる。
特開平11−157013号公報 特開2000−52495公報 特開2005−153250号公報 特開平10−44336号公報
しかしながら、離型層とは反対側の表面に帯電防止層を設けた離型フィルムの場合、剥離帯電を抑制するには帯電防止性能が不十分という問題点があった。
また、帯電防止層の上に離型層を重ねて設けた離型フィルムの場合、剥離性を優先すると帯電防止性能が低下したり、あるいは、帯電防止剤によって離型層の曇りや脱落を引き起こすという問題が発生した。
さらに、上記2種の離型フィルムにおいては、基材の表裏両面、或いは片面に2層のコートを設けるため、少なくとも2工程以上必要となり費用の面で不利である。加えて、いずれも表層にシリコン層(離型層)が存在することとなるため、離型フィルムの剥離時において被離型面(相手材、例えば粘着フィルム)は一般に負に強く帯電することとなり、例え帯電防止機能を有する層を介在させたとしてもその現象は変わることがない。すなわちこの方法は、離型フィルム自体の無帯電化には有効であるものの、被離型面を完全に無帯電化することはできなかった。
また、イオン導電性組成物(帯電防止剤)を離型層に添加した離型フィルムの場合、該層の形成には帯電防止剤と離型剤の混合溶液(塗工液)をコーティングすることとなるが、該層の強度を挙げるために混合溶液に添加したバインダ成分によって、該溶液の配合成分が凝集を起こしやすくなり、該溶液の安定性が保たれないという問題があった。
さらに、該基材フィルムに塗布し、該層が形成できた場合においても、離型剤の働きによって該層と該基材フィルムの密着性低下が起こることとなった。また、帯電防止能の発現はイオン導電性に由来するものであるため、このようなイオン導電性組成物の帯電防止剤の使用により剥離性の由来となるシリコン樹脂層の架橋反応が阻害され、剥離性・滑り性の低下などを引き起こすこととなった。
すなわちこの方法は、塗工液の分散安定性が悪く、離型層の密着性が低下し、且つ剥離性も低下するという課題を抱えていた。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、帯電防止剤として有機溶媒中において安定に分散したピロール及び/またはピロール誘導体のポリマー微粒子を用い、該帯電防止剤と有機溶媒に可溶な界面活性剤、離型剤及び樹脂バインダを含有する帯電防止性離型層を基材フィルムの片面に設けることにより、帯電防止性と剥離性を兼ね備え、且つ基材フィルムへの高い密着性及び耐久性が向上した離型層を有する離型フィルムを簡易な工程且つ平易なハンドリングで安定に生産できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
基材フィルムの少なくとも片面に
帯電防止剤、有機溶媒に可溶な界面活性剤、離型剤及び樹脂バインダを含む帯電防止性離型層を設けてなる離型フィルムであって、
該帯電防止剤がピロール及び/又はピロール誘導体のポリマー微粒子からなり、
該界面活性剤が複数個の疎水性末端を有するアニオン系界面活性剤であり、
該離型剤が、シリコン系化合物、フッ素系化合物、炭素原子数10以上の長鎖アルキル基含有ポリマー、脂肪酸アマイド系化合物又はポリエチレンワックスから選ばれる少なくとも1種であり、
該帯電防止剤、該界面活性剤及び該樹脂バインダが1質量部:0.6乃至3.0質量部:10乃至50質量部の割合で含有されてなることを特徴とする、帯電防止性離型フィルム、
に関するものである。
また、本発明は、
前記帯電防止性離型フィルムの製造方法において、
帯電防止剤、有機溶媒に可溶な界面活性剤、離型剤及び樹脂バインダを有機溶媒に加え混合して塗工液を調製する工程、及び
該塗工液を基材フィルムの少なくとも片面に塗布し、乾燥させて帯電防止性離型層を形成する工程よりなる離型フィルムの製造方法、
に関するものである。
本発明の離型フィルムは、帯電防止剤、有機溶媒に可溶な界面活性剤、離型剤及び樹脂バインダを含む帯電防止性離型層を基材フィルム上に形成することにより、剥離帯電及び摩擦帯電の両者の帯電防止性と剥離性とを兼ね備える離型フィルムである。
上記帯電防止性離型層を為すことにより、本発明の離型フィルムは表層にシリコン層のみが存在することはないため、離型フィルムの剥離時に被離型面(相手材)に対して帯電を生じさせることを減少させ得る。
また、本発明の離型フィルムは、該帯電防止性離型層に疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤を配合することにより、離型剤による樹脂バインダの効果阻害を引き起こすことを抑え、該層の基材フィルムへの密着性や耐摩耗性を向上させることができる。
そして、該帯電防止性離型層に配合される帯電防止剤は、ピロール及び/またはピロール誘導体の導電性を有するポリマー微粒子を有機溶媒に微分散したタイプであるため、離型剤にシリコン系化合物を用いた場合においても、これまでイオン導電性の帯電防止剤とシリコン樹脂層との組み合わせにおいて見られたシリコン樹脂の架橋阻害が生ずることがない。さらには、該導電性を有するポリマー微粒子の分散液を含む塗工液を調製し、コーティングし、その後加熱乾燥すると、導電性微粒子同士が凝集して強固な塗膜を形成するため、その後有機溶媒と接触させた場合においても再び溶媒に溶解することはない。
さらに、本発明の離型フィルムの製造方法によれば、各成分を混合して塗工液を調製する際、前記界面活性剤として疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤を塗工液に配合したことにより、配合成分を凝集させることなく安定な分散を保った塗工液を調製することができる。
そしてこの塗工液を用いることにより、該帯電防止性離型層の形成、すなわち基材フィルム上への塗布は一工程で済むため、離型フィルムの製造コスト削減も実現できる。
前述の通り、これまでにも離型フィルムに帯電防止性を付与する各種の処理が提案されているされているものの(特許文献1乃至4参照)、これらには一長一短があり、剥離帯電と摩擦帯電によるいずれの静電気障害をも防止する帯電防止性を有し且つ良好な剥離性をも兼ね備え、さらに、基材フィルムへの離型層の密着性に優れ、該層が脱落して相手材への付着等が生じないなどの性能を全て十分に満足できるものではないという点で課題を残すものであった。また、帯電防止剤や離型剤等の混合溶液を調製した場合には該溶液の分散安定性に問題が生じるなど、離型フィルムの製造方法においても改善の余地があった。
本発明は離型フィルムの作製にあたり、帯電防止性離型層の形成に用いる塗工液、すなわち帯電防止剤、離型剤、樹脂バインダ及び界面活性剤の混合溶液の調製時に、所定の界面活性剤を選択し、さらに、帯電防止剤、界面活性剤及びバインダの配合量を選択することで、塗工液の凝集の抑制を初めて可能としたものである。これにより、該塗工液を塗布し完成した本発明の離型フィルムは、剥離性と帯電防止性(剥離帯電及び摩擦帯電)の両立、離型フィルム及び被離型面(相手材)の双方における静電気障害の削減、離型層の基材フィルムへの高い密着性と離型層の耐久性向上の両立も実現したものである。
以下に上記各成分について説明する。
<帯電防止剤>
本発明の離型フィルムの帯電防止性離型層に含有される帯電防止剤は、ピロール及び/又はピロール誘導体のポリマー微粒子からなり、実際には該微粒子を有機溶媒中に分散させた分散液の形態で用いる。
該ピロール及び/又はピロール誘導体のポリマー微粒子は導電性を有する微粒子であり、有機溶媒と水とアニオン系界面活性剤とを混合撹拌してなるO/W型の乳化液中に、ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーを添加し、該モノマーを酸化重合することにより製造される。
上記ピロール及び/又はピロール誘導体としては、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール、3−フェニルナフチルアミノピロール等が挙げられる。特に好ましいのはピロールである。
前記導電性微粒子の製造において使用される前記アニオン系界面活性剤としては、種々のものが使用できるが、有機溶媒に可溶であって疎水性末端を複数個有するものが好ましい。疎水性末端基としては、枝分れ構造を有するものでもよい。このような疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤を使用することにより、安定したミセルを形成させることができる。
疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤の中でも、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−エチルオクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が好適に使用できる。
反応系中での前記アニオン系界面活性剤の量は、ピロール及び/又はピロール誘導体のモノマー1molに対し0.8mol未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.05mol〜0.6molである。0.05mol未満では収率や分散安定性が低下し、一方、0.6mol以上では得られた導電性微粒子に導電性の湿度依存性が生じてしまう場合がある。
前記導電性微粒子の製造において使用される前記乳化液の有機相を形成する有機溶媒は疎水性であることが好ましい。なかでも、芳香族系の有機溶媒であるトルエンやキシレンは、O/W型エマルションの安定性およびピロールモノマーとの親和性の観点から好ましい。両性溶媒でもポリピロールの重合を行うことはできるが、生成した導電性微粒子を回収する際の有機相と水相との分離が困難になる。
前記乳化液における有機相と水相との割合は、水相が75体積%以上であることが好ましい。水相が20体積%以下ではピロールモノマーの溶解量が少なくなり、生産効率が悪くなる。
前記導電性微粒子の製造において使用される酸化剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸およびクロロスルホン酸のような無機酸、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルナフタレンスルホン酸のような有機酸、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよび過酸化水素のような過酸化物が使用できる。これらは単独で使用しても、二種類以上を併用してもよい。塩化第二鉄等のルイス酸でもポリピロールを重合できるが、生成した粒子が凝
集し、ポリピロールを微分散できない場合がある。特に好ましい酸化剤は、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩である。
反応系中での前記酸化剤の量は、ピロール及び/又はピロール誘導体のモノマー1molに対して0.1mol以上、0.8mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.6molである。0.1mol未満ではモノマーの重合度が低下し、導電性微粒子を分液回収することが困難になり、一方、0.8mol以上ではポリピロールが凝集して導電性微粒子の粒径が大きくなり、分散安定性と塗膜の透明性が悪化する。
前記導電性微粒子の製造方法は、例えば以下のような工程で行われる:
(a)アニオン系界面活性剤、有機溶媒および水を混合攪拌し乳化液を調製する工程、
(b)ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーを乳化液中に分散させる工程、(c)モノマーを酸化重合しポリピロールを形成する工程、
乳化液の調製時に行う混合攪拌は、特に限定されないが、例えばマグネットスターラー、攪拌機、ホモジナイザー等を適宜選択して行うことができる。また重合温度は0〜25℃で、好ましくは20℃以下である。重合温度が25℃を越えると副反応が起こるので好ましくない。
酸化重合反応が停止されると、反応系は有機相と水相の二相に分かれるが、この際に未反応のモノマー、酸化剤および塩は水相中に溶解して残存する。ここで有機相を分液回収し、イオン交換水で数回洗浄すると、有機溶媒に分散したポリピロール微粒子を入手することができる。
上記の製造法により得られる導電性微粒子は、主としてピロールおよび/またはピロール誘導体のポリマーよりなり、そしてアニオン系界面活性剤等を含む構成の微粒子である。
また、導電性微粒子が有する粒径は、1〜100nmの範囲が挙げられ、好ましくは1〜30nmである。この粒径は、従来の導電性微粒子が有する数百nmの粒径と比較して格段に小さい。また、該導電性微粒子は、平均粒径の±5nmの範囲内に全微粒子の90%以上が含まれるという極めて単分散に近い狭い粒径分布を有するものであり、この点でも、粒径分布が広い従来の導電性微粒子と異なるものである。この非常に小さな粒径が、該導電性微粒子が有する長期にわたる分散安定性の要因の1つであると考えられる。
従って、上記に記載した方法により得られる導電性微粒子は、有機溶媒中での分散安定性が高い。
<有機溶媒可溶な界面活性剤>
本発明の離型フィルムの帯電防止性離型層に含有される有機溶媒に可溶な界面活性剤とは、上記導電性微粒子の製造に使用するアニオン系界面活性剤とほぼ同種のものを使用できるが、複数個の疎水性末端(例えば枝分れ構造の疎水基でもよい。)を有するものであることが必要とされる。その中でも、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−エチルオクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が好適に使用できる。
このような疎水性末端を複数個有するアニオン系界面活性剤を使用することにより、帯電防止剤、離型剤及び樹脂バインダを加えて混合して塗工液を作製した際、配合成分が凝集することなく、塗工液を安定な状態に保つことができる。
これら有機溶媒可溶な界面活性剤は、好ましくは上記帯電防止剤(固形分換算)1質量部に対し0.6乃至3.0質量部の割合にて用いられることが必要とされ、好ましくは1.5乃至2.5質量部にて用いられることが望ましい。使用量が0.6質量部未満では分散安定性が低下して凝集が起こり、塗工液の安定が保てなくなり、一方、3.0質量部を超えると湿度依存性が高くなり、その結果、分散安定性が低下して凝集が起こり、塗工液
の安定性が保てなくなったり、或いは、帯電防止性能の低下を生ずる場合がある。
なお、上述の通り、帯電防止剤(ピロール及び/又はピロール誘導体のポリマー微粒子)はアニオン系界面活性剤を含む微粒子として製造され、そのまま帯電防止性離型層の形成に供される。このため、上記に規定した界面活性剤の添加量には、帯電防止剤製造時に使用したアニオン系界面活性剤の添加量も含まれることに注意が必要である。したがって、上記使用量を超えない範囲で、製造時に使用した界面活性剤に加え、さらにここで規定する有機溶媒可溶な界面活性剤を加えることができるものとする。
<離型剤>
本発明の離型フィルムの帯電防止性離型層に含有される離型剤としては、シリコン系化合物、フッ素系化合物、炭素原子数10以上の長鎖アルキル基含有ポリマー、脂肪酸アマイド系化合物、ポリエチレンワックスを挙げることができる。
これら離型剤は、好ましくは上記帯電防止剤(固形分換算)1質量部に対し0.03乃至5質量部の割合にて用いられることが望ましい。使用量が0.03質量部未満では十分な剥離性を発現できず、また、5質量部を超えると帯電防止性能の低下や基材フィルムとの密着性低下を生ずる場合がある。
なお離型剤は剥離性を付与するだけでなく、塗工液の安定性、特に1〜2日経過後の分散安定性を向上させる機能も有する。
<樹脂バインダ>
本発明の離型フィルムの帯電防止性離型層に含有される樹脂バインダとしては、特にその種類を限定されるものではない。例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができる。
これら樹脂バインダは、上記帯電防止剤(固形分換算)1質量部に対し10乃至50質量部の割合にて用いられることが必要とされ、好ましくは20乃至30質量部にて用いられることが望ましい。使用量が1質量部未満では塗膜の耐磨耗性や密着性が低下し、また、20質量部超えると塗工液が凝集する場合、或いは、帯電防止性能が低下する場合がある。
<その他配合可能な各種添加剤>
本発明の離型フィルムの帯電防止離型層には、本発明の効果が損なわれない範囲内で各種の添加剤、例えば熱安定剤、耐候剤、上記以外の帯電防止剤、顔料又は染料などの着色剤、有機又は無機微粒子、可塑剤などを加えてもよい。
<基材フィルム>
本発明の離型フィルムに使用する基材フィルムは、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
これら基材フィルムの厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜選択できるが、通常、5μm乃至150μmの範囲にて好適に用いられる。
<離型フィルムの製造:コーティング方法>
本発明の離型フィルムは、上記帯電防止剤、有機溶媒に可溶な界面活性剤、離型剤及び樹脂バインダ含有する塗工液を調整し、基材フィルム上に塗布、乾燥することによって形成される。該塗工液は、上記各成分を有機溶媒にを加えて撹拌混合して調製することができる。
ここで使用される有機溶媒としては、上記各成分の分散又は溶解時に通常使用される溶媒を使用することができ、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類
、及びこれらとメタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、またはセロソルブ等のエーテル類を適宜混合したもの等を挙げることができる。
上記塗工液の基材フィルムへの塗布方法としては特に限定はないが、例えばグラビア印刷機、インクジェット印刷機、ディッピング、スピンコーター、ロールコーター等を用いて、印刷またはコーティングすることができる。
上記方法にて塗布された後、60℃以上、好ましくは80乃至200℃の温度で乾燥が実施され、塗膜が形成される。
また、上述の方法にて形成される塗膜の厚みは50乃至2000nmであることが望ましい。塗膜の厚みが50nm未満であると、所定の剥離性及び帯電防止性を得にくく、また、2000nmを超えると塗工液の溶媒が乾燥し難く、溶媒の一部が塗膜中に残存し、本発明の諸物性が得られない場合がある。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[離型フィルムの作製:実施例1乃至10、比較例1乃至7]
<アニオン系界面活性剤含有ポリピロール分散液の調製>
界面活性剤−1(スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム;ペレックス OT−P)2.0mmolをトルエン50mLに溶解し、さらにイオン交換水100mLを加え20℃に保持しつつ乳化するまで攪拌した。得られた乳化液にピロールモノマー28mmolを加え、次いで0.12M過硫酸アンモニウム水溶液50mL(6mmol相当)を少量ずつ滴下し、24時間反応を行った。反応終了後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエン中に分散した状態で黒色の導電性微粒子(平均粒径50nm)を得てアニオン系界面活性剤含有のポリピロール分散液(PPy分散液,PPy微粒子濃度:0.6%)を調製した。
なお比較例2においては界面活性剤−1を用いずにPPy分散液を調製し、比較例5又は6においては界面活性剤−1をそれぞれ0.07mmol(界面活性剤:0.03部)、0.79mol(界面活性剤:0.35部)として調製した。また比較例7においては界面活性剤−1の代わりに界面活性剤−2(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ネオペレックス G−15)0.4mmolを用いてPPy分散液を調製した。
<塗工液の調製>
後述の表2及び表3に示す配合割合に基づき、上記PPy分散液、有機溶媒、樹脂バインダ及び離型剤を配合し、ディスパーミキサーにて撹拌速度100rpmで30分間撹拌し、実施例及び比較例の離型フィルムの作製に用いる塗工液を各々調製した。
なお、各PPy分散液または各塗工液に使用した界面活性剤、樹脂バインダ、及び離型剤について表1に記す。
Figure 0004771082
<離型フィルムの作製>
(実施例1乃至10及び比較例1乃至7)
表2及び表3に示す配合割合で調製した各塗工液を、ポリエチレンテレフタレート(東洋紡績(株)製 コスモシャインA4100、厚み50μm)の片面に、150メッシュのグラビヤロールを用いキスリバース法にて塗布した後、140℃乾燥炉(3m)、速度10m/minで乾燥し、実施例1乃至11及び比較例1乃至7の離型フィルム(塗膜厚み:250nm)を得た。
(比較例8)
前記<アニオン系界面活性剤含有ポリピロール分散液の調製>に従ってアニオン系界面活性剤含有のPPy分散液を調製し、これに有機溶媒、樹脂バインダを加えて混合し、上記実施例で用いたポリエチレンテレフタレートの片面に5g/m2(wet)の塗工量で
塗布し、140℃で30秒間加熱乾燥し、帯電防止層(層厚み:250nm)を形成した。次に、離型剤及び有機溶媒を、離型剤の固形分濃度が5%になるように有機溶媒の添加量を調整して混合した。この混合物を帯電防止層の上に2g/m2(wet)の塗工量で
塗布し、140℃で30秒間加熱乾燥し、離型層(層厚み:50nm)を形成した。
[離型フィルムの性状評価]
実施例1乃至10及び比較例1乃至8の各離型フィルムにおいて行った各特性の測定法及び評価法は下記の通りである。なお、得られた結果を表2及び表3に示す。
(1)塗工液の安定性
前述の通り調製した帯電防止剤、有機溶剤、界面活性剤、離型剤、樹脂バインダからなる塗工液を静置し、4時間経過後及び2日間経過後の該塗工液の状態を目視にて評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:粒子の凝集が全く見られない。
△:粒子の凝集が若干見られる。
×:粒子が凝集し、沈殿が見られる。
(2)剥離性
形成された塗膜に粘着テープ(日東電工(株)製、31Bテープ、幅2.5cm、長さ5cm)を貼り、ゴムロールを用いて10回強ローラーをかけて塗膜と粘着テープの間のエアを抜いた。
万能型引張り試験機を用い、粘着テープの剥離強度を180度方向に剥がした時の平均荷重(g)にて評価した。なお、平均荷重500g以下が剥離性としての適正範囲である
(3)塗膜の耐摩耗性
学振型磨耗試験機にて、綿布(茶金3号)、荷重200gにて塗膜を100回学振し、その後の塗膜の状態を目視にて評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:塗膜に全く変化なし。
○:塗膜に若干傷が見られるが、実用上全く問題なし。
□:塗膜に傷が多く入っており、実用上の使用は不可。
△:塗膜がかなり剥げている。
×:塗膜が殆ど剥げている。
(4)塗膜密着性
塗膜にセロハンテープを貼り、指を用いて10回強く擦り、塗膜とセロハンテープの間のエアを抜いた。
その後セロハンテープを剥がし、剥がした部分の塗膜の状態を目視にて評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:塗膜に全く変化なし。
○:塗膜が若干剥がれているが、実用上全く問題なし。
□:塗膜が少し剥がれている。
△:塗膜がかなり剥がれている。
×:塗膜が全て剥がれている。
(5)塗膜の表面抵抗値
表面抵抗値の測定は、室温25℃、湿度40%雰囲気下にて、(株)ダイアインスツルメンツ製 抵抗率計 ハイレスタUP MCP−HT450を用いて測定した。また測定は二端子法にて行い、UAプローブ(MCP−HTP111)を用いた。なお、表面抵抗値1010Ω未満が帯電防止性としての適正範囲である。
(6)塗膜のフィルム剥離帯電性評価
形成された塗膜に、粘着処理したPETフィルム(サイデン化学(株)製粘着剤・サイビノールATR−340をPETフィルムに5g/m2にて塗布したもの)を幅25mm
、長さ200mmとなるように貼り付け、ゴムローラーで圧着した(線圧500g/cm)。この粘着PETフィルムを、PALMEC社製ピール機 PFT−50Sにて引張速度300mm/min、剥離角度180度にて一気に塗膜から剥離した。
剥離直後の塗膜(離型フィルム)側、並びに、粘着フィルム(PETフィルム)側の帯電量をトレック・ジャパン(株)製ELECTROSTATIC VOLTMETER MODEL520を用いて測定した。なお測定は室温25℃、湿度50%雰囲気下にて行い、10回の測定を行った平均値を帯電量とし、帯電量が1.0kV未満であるとき○、1.0kV以上であるとき×としてそれぞれ評価した。
Figure 0004771082
Figure 0004771082
実施例1乃至10の離型フィルムは、いずれも良好な塗工液安定性、並びに優れた剥離性、塗膜の耐磨耗性、塗膜密着性を示し、表面抵抗値も小さく、帯電防止性能にも優れるとする結果が得られた。
バインダ、界面活性剤又は離型剤のうちいずれか一つ以上を含有しない比較例1乃至4においては、剥離性、帯電防止性(表面抵抗値、剥離帯電性)、耐摩耗性及び塗膜密着性のすべてを満足する離型フィルムを得ることができなかった。なお、界面活性剤を含有しない比較例2に用いる塗工液は、調製後すぐに粒子が凝集し、また、離型剤を含有しない比較例3に用いる塗工液は、1〜2日静置後に粒子が凝集して沈殿が見られた。
界面活性剤の配合量が適正範囲の下限を下回る比較例5においては、塗工液の凝集が調製後しばらくして起こり、塗膜を形成することができなかった。また、界面活性剤の配合量が適正範囲の上限を上回る比較例6においては、塗膜密着性に劣り、帯電防止性(表面抵抗値、剥離帯電性)も非常に劣るとする結果を示した。
界面活性剤が疎水性末端を1つのみ有するアニオン系界面活性剤を用いた比較例7は、塗工液の凝集が起こり、塗膜を形成することができなかった。
また、導電層(帯電防止層)と離型層を別々に重ねて形成した比較例8においては、非常に大きな表面抵抗値を示し、剥離帯電性にも欠け、十分な帯電防止性能を得られなかった。
以上より、界面活性剤含有のポリピロール分散液、離型剤及び樹脂バインダからなる塗工液より作成した塗膜は表面抵抗値及び剥離帯電性の何れの評価からも帯電防止性に優れ、剥離性を兼ね備え、さらには密着性、耐久性にも優れた層であることが示された。
またこの塗膜を基材フィルム上に形成することにより、帯電防止性を有する離型フィルムを実現できた。

Claims (2)

  1. 基材フィルムの少なくとも片面に
    帯電防止剤、有機溶媒に可溶な界面活性剤、離型剤及び樹脂バインダを含む帯電防止性離型層を設けてなる離型フィルムであって、
    該帯電防止剤がピロール及び/又はピロール誘導体のポリマー微粒子からなり、
    該界面活性剤が複数個の疎水性末端を有するアニオン系界面活性剤であり、
    該離型剤が、シリコン系化合物、フッ素系化合物、炭素原子数10以上の長鎖アルキル基含有ポリマー、脂肪酸アマイド系化合物又はポリエチレンワックスから選ばれる少なくとも1種であり、
    該帯電防止剤、該界面活性剤及び該樹脂バインダが固形分で1質量部:0.6乃至3.0質量部:10乃至50質量部の割合で含有されてなることを特徴とする、帯電防止性離型フィルム。
  2. 請求項1記載の帯電防止性離型フィルムの製造方法において、
    帯電防止剤、有機溶媒に可溶な界面活性剤、離型剤及び樹脂バインダを有機溶媒に加え混合して塗工液を調製する工程、及び
    該塗工液を基材フィルムの少なくとも片面に塗布し、乾燥させて帯電防止性離型層を形成する工程よりなる離型フィルムの製造方法。
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