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JP7037684B1 - 粉末醤油及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、十分な耐固結性を有する粉末醤油を提供すること目的とする。【解決手段】本発明は、えんどう豆粉及び大豆粉の少なくともいずれか一方を含有する、粉末醤油に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、粉末醤油、特に耐固結性に優れた粉末醤油、およびその製造方法に関する。
醤油は、従来、主に液体の形態で使用されていたが、近年、複数種類の粉末醤油が開発され、市販されている。粉末醤油の用途としては、従来はインスタントラーメンのスープのベース等に使用されていたが、現在では、粉末調味料、冷凍食品または加工肉等の分野に拡大している。市販の粉末醤油は主に、液体醤油をスプレードライなどの乾燥粉末化処理を行うことにより製造される。
粉末醤油は、比較的高湿度下での使用または長期保存によって粉末が粘着し固結するという大きな問題点がある。その理由としては、粉末醤油中の成分において、食塩、糖やアミノ酸などの吸湿を起こしやすい成分が多く含まれているため、あるいは、粉末醤油中での糖とアミノ酸によるメイラード反応の進行により、水分が発生するためであると考えられている。
上記問題点を解決するために、例えば、マルトデキストリンのような分子量の大きい炭水化物を添加して粉末のガラス転移温度(Tg)を上昇させ、吸湿性を減少させる手段等が採用されている(非特許文献1~3参照)。また、醤油に低分子化アルギン酸カリウム、ゼラチン、デキストリン、あるいはコーンスターチなどの吸湿、固結防止剤を添加し粉末化する方法も知られている(例えば、特許文献1~5参照)。
一方、食塩を含む調味食品やオニオンなどの吸水性が高い粉末状のスパイス組成物に小麦やコーンのファイバーを添加混合することで吸湿による固結を防止する方法が知られている(特許文献6参照)。
特開2011-244711号公報 特公昭46-28839号公報 特許第2767679号公報 特許第3441219号公報 特開2001-037440号公報 特開平5-84048号公報
Sablani,S.S.,Shrestha,A.K,Bhandari,B.R.(2008).Journal of food Engineering,87,416-421. Cai,Y.Z.,Corke,H.(2000).Journal of Food Science,65,1248-1252. Ersus,S.,Yurdagel,U.(2007).Journal of Food Engineering,80,805-812.
しかしながら、非特許文献1~3に記載のマルトデキストリンは、その非結晶の性質により、高い相対湿度の環境にさらされると吸湿性および粘着性が高まるという問題があり、粉末醤油の耐固結性を向上させるのに十分ではなかった。また、醤油に低分子化アルギン酸カリウム、ゼラチン、デキストリン、あるいはコーンスターチなどを添加して製造した特許文献1~5に記載の粉末醤油に関しても、耐固結性を十分に向上させることはできなかった。一方、吸湿性が高い粉末状の食塩含有組成物に穀物のファイバーを添加することで固結を防止する特許文献6に記載の方法においては、粉末醤油に関する記載はなく、粉末状のスパイス組成物の固結防止に関する技術である。
そこで、本発明は、十分な耐固結性を有する粉末醤油およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、えんどう豆粉及び大豆粉の少なくともいずれか一方を粉末醤油に含有させることによって、十分な耐固結性を有する粉末醤油が得られることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]えんどう豆粉及び大豆粉の少なくともいずれか一方を含有する、粉末醤油。
[2]前記粉末醤油に対しえんどう豆粉を固形分で8質量%以上含有する、前記[1]に記載の粉末醤油。
[3]前記粉末醤油に対し大豆粉を固形分で8質量%以上含有する、前記[1]または[2]に記載の粉末醤油。
[4]液体醤油にえんどう豆粉及び大豆粉の少なくともいずれか一方を添加した液体醤油を乾燥粉末化させて得られる、前記[1]~[3]のいずれか1に記載の粉末醤油。
[5]液体醤油にえんどう豆粉及び大豆粉の少なくともいずれか一方を添加した後、前記液体醤油を乾燥粉末化処理する工程を含む、粉末醤油の製造方法。
[6]
前記えんどう豆粉または大豆粉は45質量%以上の食物繊維を含む、前記[5]に記載の粉末醤油の製造方法。
[7]
前記えんどう豆粉の吸水率が500%以下である、前記[5]または[6]に記載の粉末醤油の製造方法。
[8]
前記大豆粉の吸水率が600%以下である、前記[5]または[6]に記載の粉末醤油の製造方法。
本発明によれば、十分な耐固結性を有する粉末醤油及びその製造方法を提供できる。
図1は、実験例1にて評価した粉末醤油の固結強度を示すグラフである。 図2は、実験例2-1にて評価した粉末醤油の固結強度を示すグラフである。 図3は、実験例2-2にて評価した粉末醤油の固結強度を示すグラフである。 図4は、実験例3にて評価した粉末醤油の固結強度を示すグラフである。 図5は、実験例4にて評価した粉末醤油の固結強度を示すグラフである。 図6は、実験例5にて評価した粉末醤油の固結強度を示すグラフである。
以下、この発明の構成及び好ましい形態について更に詳しく説明する。
なお、本明細書において、範囲を示す「A~B」は、「A以上B以下」を意味する。また、本明細書において、「重量」と「質量」、および「重量%」と「質量%」は、それぞれ同義語として扱う。
<粉末醤油>
本発明の一実施形態の粉末醤油は、えんどう豆粉及び大豆粉の少なくともいずれか一方を含有する。本実施形態の粉末醤油は、えんどう豆粉や大豆粉を含有することによって、顕著に良好な耐固結性が得られることを見出したことに基づくものである。
本実施形態の粉末醤油が、えんどう豆粉や大豆粉を含有することによって、耐固結性が良好となる理由は明らかではないが、えんどう豆粉や大豆粉は加熱や酵素による分解に強く、賦形剤としての効果が強く発揮されるため、あるいはえんどう豆粉や大豆粉に含まれる食物繊維が固結を促進する水分を多量に吸着できるためであると推測される。なお、本発明は上記作用機序を有するものに限定されるものではない。
えんどう豆粉は、えんどう豆を乾燥させ粉砕することにより得られる。なかでも、後述する食物繊維の含有量が多いという観点から、えんどう豆外皮またはえんどう豆子葉を乾燥させ粉砕することにより得られるものが好ましい。
乾燥や粉砕の方法は特に制限されず、従来公知の方法を任意に採用できる。例えば、えんどう豆の乾燥は一般的な市販の穀類乾燥機で乾燥することができる。また、えんどう豆の粉砕は、例えば、市販の業務用大型粉砕機で粉末化する方法が挙げられる。例えば、業務用大型粉砕機としてはエアータグミル(ミクロパウテック社製)、ナノジェットマイザー(アイシンナノテクノロジー社製)等を用いることができる。
えんどう豆粉は、えんどう豆由来の食物繊維を含む。えんどう豆由来の食物繊維は大きく分けて2種類存在し、えんどう豆外皮由来の食物繊維、及び、えんどう豆子葉由来の食物繊維である。えんどう豆外皮由来の食物繊維はセルロースを中心とした非水溶性の多糖類を含み、えんどう豆子葉由来の食物繊維はセルロースの他にヘミセルロースやペクチンなどの多糖類を含む。
えんどう豆粉は45質量%以上の食物繊維を含むことが好ましく、55質量%以上の食物繊維を含むことがより好ましい。食物繊維の含有量が上記範囲であることにより、より良好な耐固結性効果が得られる。食物繊維の含有量の上限は特に制限されないが、例えば90質量%以下である。
なお、上記のように食物繊維の含有量の多いえんどう豆粉は、「えんどう豆ファイバー」とも称される。また、えんどう豆ファイバーは、えんどう豆粉が含有する食物繊維自体とは区別されるものとする。
えんどう豆粉は食物繊維の他に、水分、灰分、タンパク質、脂質、炭水化物、塩分、その他の成分を含んでもよい。
えんどう豆粉における水分量は、例えば0~15質量%である。
えんどう豆粉における灰分は、例えば0~5質量%である。灰分とは食品を高温で灰化し、有機物及び水分を除いた残留物の量を意味し、例えば、カリウム、ナトリウム、及び鉄などのミネラル等が挙げられる。
えんどう豆粉におけるタンパク質は、例えば0~25質量%である。
えんどう豆粉における脂質は、例えば0~5質量%である。
えんどう豆粉における炭水化物(食物繊維を除く)は、例えば5~70質量%である。炭水化物(食物繊維を除く)としては、例えば、でん粉、ショ糖等が挙げられる。
えんどう豆粉における塩分は、例えば0~1質量%である。
えんどう豆粉の吸水率は500%以下であることが好ましく、400%以下であることがより好ましく、370%以下であることがさらに好ましい。えんどう豆粉の吸水率が上記範囲であることにより、より良好な耐固結性効果が得られる。えんどう豆粉の吸水率の上限は特に制限されない。
なお、えんどう豆粉の吸水率は以下の測定方法により得られる。
えんどう豆粉5gに水を50g加え、水分を含浸させたえんどう豆粉を、ろ紙でろ過することにより水切りし、水切り後のえんどう豆粉の重量を測定する(重量1)。つづいて、温度15~20℃、相対湿度40~60%に調整した雰囲気下で、上記水切り後のえんどう豆粉を48時間保存することで、えんどう豆粉を乾燥させ、当該乾燥したえんどう豆粉の重量を測定する(重量2)。上記重量1から重量2を減じ(重量1-重量2)、蒸発した水分重量を求める(重量3)。そして、以下の式により吸水率を求める。
吸水率(%)={(蒸発した水分重量(g)-乾燥後のえんどう豆粉の重量(g))/乾燥後のえんどう豆粉の重量(g)}×100
={(重量1-重量2)/重量2}×100
=(重量3/重量2)×100
えんどう豆粉は市販のものを使用してもよく、例えば、AGFeeding Sp.zo.o.社製のPea FiberやCOSUCRA社製のSwelite(R)Fが挙げられる。
えんどう豆粉は、ほとんど無味、無臭であることから、粉末醤油の風味に悪い影響を与えない。
えんどう豆粉は、本実施形態の粉末醤油に対し、固形分で、8質量%以上含有するのが好ましく、10質量%以上含有するのがより好ましく、12質量%以上含有するのがさらに好ましく、16質量%以上含有するのがさらに好ましく、20質量%以上含有するのがさらに好ましく、22質量%以上含有するのが特に好ましい。実施形態の粉末醤油がえんどう豆粉を固形分で8質量%以上含有することにより、より良好な耐固結性効果が得られる。
また、えんどう豆粉は、本実施形態の粉末醤油に対し、固形分で、66質量%以下含有するのが好ましく、40質量%以下含有するのがより好ましく、30質量%以下含有するのがさらに好ましく、25質量%以下含有するのが特に好ましい。本実施形態の粉末醤油がえんどう豆粉を固形分で66質量%以下含有することにより、醤油の風味を損なうことなく、良好な耐固結性効果が得られる。
また、えんどう豆粉は、本実施形態の粉末醤油に対し、固形分で、8~66質量%含有するのが好ましく、10~40質量%含有するのがより好ましく、20~30質量%含有するのがさらに好ましい。
えんどう豆粉は、特に制限されないが、例えば、粒子の80質量%は20~59μmに分布し、メディアン径が30~40μmであるものを用いることができる。
大豆粉は、大豆を乾燥させ粉砕することにより得られる。乾燥や粉砕の方法は特に制限されず、従来公知の方法を任意に採用できる。例えば、大豆の乾燥は一般的な市販の穀類乾燥機で乾燥することができる。また、大豆の粉砕は、例えば、市販の業務用大型粉砕機で粉末化する方法が挙げられる。例えば、業務用大型粉砕機としてはエアータグミル(ミクロパウテック社製)、ナノジェットマイザー(アイシンナノテクノロジー社製)等を用いることができる。
大豆粉は、大豆粉由来の食物繊維を含む。大豆由来の食物繊維としては、例えば、セルロースの他にヘミセルロースが挙げられる。
大豆粉は45質量%以上の食物繊維を含むことが好ましく、50質量%以上の食物繊維を含むことがより好ましく、75質量%以上の食物繊維を含むことがさらに好ましい。食物繊維の含有量が上記範囲であることにより、より良好な耐固結性効果が得られる。
なお、上記のように食物繊維の含有量の多い大豆粉は、「大豆ファイバー」とも称する。また、大豆ファイバーは、大豆粉が含有する食物繊維自体とは区別されるものとする。
大豆粉は食物繊維の他に、水分、灰分、タンパク質、脂質、炭水化物、塩分、その他の成分を含んでもよい。
大豆粉における水分量は、例えば0~15質量%である。
大豆粉における灰分は、例えば0~6質量%である。灰分としては、例えば、カリウム、リン、カルシウム等が挙げられる。
大豆粉におけるタンパク質は、例えば0~40質量%である。
大豆粉における脂質は、例えば0~30質量%である。
大豆粉における炭水化物(食物繊維を除く)は、例えば0~60質量%である。炭水化物(食物繊維を除く)としては、例えば、でん粉、ショ糖等が挙げられる。
大豆粉における塩分は、例えば0~1質量%である。
大豆粉の吸水率は600%以下であることが好ましく、550%以下であることがより好ましく、500%以下であることがさらに好ましい。大豆粉の吸水率が上記範囲であることにより、より良好な耐固結性効果が得られる。大豆粉の吸水率の上限は特に制限されない。
なお、大豆粉の吸水率は、上記えんどう豆粉の吸水率と同様の方法で測定できる。
大豆粉は、市販のものを使用してもよく、例えば、日本ガーリック社製のソイファイバーや、Nutra food INGREDIENTS社のソイファイバーが挙げられる。
大豆粉は、ほとんど無味、無臭であることから、粉末醤油の風味に悪い影響を与えない。
大豆粉は、本実施形態の粉末醤油に対し、固形分で、8質量%以上含有するのが好ましく、10質量%以上含有するのがより好ましく、16質量%以上含有するのがさらに好ましく、20質量%以上含有するのがさらに好ましく、22質量%以上含有するのが特に好ましい。本実施形態の粉末醤油が大豆粉を固形分で8質量%以上含有することにより、より良好な耐固結性効果が得られる。
また、大豆粉は、本実施形態の粉末醤油に対し、固形分で、66質量%以下含有するのが好ましく、40重量%以下がより好ましく、30質量%以下含有するのがさらに好ましい。本実施形態の粉末醤油が大豆粉を固形分で66質量%以下含有することにより、醤油の風味を損なうことなく、良好な耐固結性効果が得られる。
また、大豆粉は、本実施形態の粉末醤油に対し、固形分で、8~66質量%含有するのが好ましく、22~30質量%含有するのがさらに好ましい。
大豆粉は、特に制限されないが、例えば、粒子の80質量%は24~65μmに分布し、メディアン径が35~45μmであるものを用いることができる。
本実施形態の粉末醤油は、耐固結性向上の観点から、えんどう豆粉および大豆粉のうち、いずれか一方を含有させるかあるいは混合して用いることもできるが、いずれか一方を単独で含有させることが好ましく、えんどう豆粉のみを含有することがさらに好ましい。
さらに本実施形態の粉末醤油は、耐固結性向上の観点から、えんどう豆粉および大豆粉以外の賦形剤を含まない方がより好ましい。
<粉末醤油の製造方法>
本発明の一実施形態の粉末醤油の製造方法は、液体醤油に、えんどう豆粉及び大豆粉の少なくとも一方を添加した後、乾燥粉末化処理する工程を含む。
本実施形態の粉末醤油の製造方法は、液体醤油にえんどう豆粉及び大豆粉の少なくとも一方を添加した後に乾燥粉末化処理することにより、乾燥粉末化処理後に上記えんどう豆粉や大豆粉を添加する場合と比較して、粉末醤油の耐固結性が顕著に向上することを見出したことに基づくものである。上記理由は明らかではないが、えんどう豆粉や大豆粉が含有する、吸湿しにくい食物繊維が一体となって粒子を形成することにより、粉末醤油の吸湿が抑制されるためであると推測される。なお、本発明は上記作用機序を有するものに限定されるものではない。
液体醤油としては、特に制限されず、例えば、濃口醤油、低食塩醤油、淡口醤油、たまり醤油、再仕込醤油および白醤油等が挙げられる。また、例えば、製造途中の醤油、生醤油および生揚げ醤油等が挙げられる。
液体醤油は、よく知られているように、蛋白質含有原料として蒸煮大豆と炒熬割砕小麦を混和し、これに醤油用種麹菌を接種、培養して醤油麹を調製し、これに適当量の食塩水を加えて諸味を調製し、一定期間発酵、熟成させて熟成諸味を調製し、最後に圧搾、濾過、火入れ(殺菌)、清澄して製造される。
また、低食塩醤油の製造法としては、例えば、腐敗を避けることのできる限界の低濃度の食塩水を用いる方法、仕込み水にアルコールを併用して腐敗の防止を計り、より低濃度の食塩水を用いる方法、通常の方法で得られた食塩濃度15~18質量%の醤油を電気透析または膜処理等により脱塩し、低食塩醤油を製造する方法、醤油中の食塩の一部を塩化カリウム(KCl)で置換する方法(特公昭38-6582号公報、特開昭56-68372号公報、特開2006-87328号公報)、並びに醤油中の香気成分および呈味成分の含有量を特定範囲とする製造方法(国際公開第2011/034049号)が挙げられる。
乾燥粉末化処理は、例えば、スプレードライ法、ドラムドライ法、フリーズドライ法など、当分野において通常用いられている方法により行うことができる。なかでもスプレードライ法が好ましい。
スプレードライに用いる装置としては、例えば、加圧ノズル式スプレードライヤー、二流体ノズル式スプレードライヤー、回転円盤(ディスクアトマイザー)式スプレードライヤー、噴霧乾燥・造粒兼用乾燥機等が挙げられる。スプレードライの条件は、通常の液体醤油のスプレードライ条件と変わるところはなく、適宜決定する。具体的には、例えば、ノズル方式の実機では、吸気(入口)温度150~230℃、出口温度85~130℃、フィード量500~2000リットル/時間の条件で粉末化することが好ましい。
本実施形態の粉末醤油の製造方法において、乾燥粉末化処理する工程を行う以外は、一般の醤油の製造方法における各工程(例えば、醤油麹の調製(製麹)工程、醤油諸味の調製(醤油麹と食塩水の混和)工程、醤油諸味の発酵・熟成工程、圧搾工程等)および条件に従って行えばよい。
本実施形態の粉末醤油の耐固結性は、固結強度により評価できる。ここで固結強度とは、粉末醤油の固結しにくさの指標となる粉体の強度をいい、所定の吸湿処理を行った後、レオメーター(クリープメーター)を用いて特定条件下で測定した破断荷重(破断強度)で表すことができる。固結強度は数値が低いほど粉体が保存中に固結しにくい、すなわち耐固結性に優れることを意味する。
具体的には、本実施形態の粉末醤油は、吸湿処理(温度30℃、相対湿度80%に調整した雰囲気下で3時間保存)後、直径1mmの円筒形プランジャーを用い、測定速度1mm/秒、歪率50%の条件で、レオメーターで測定された破断強度(最大荷重)が、200g/mm以下が好ましく、より好ましくは120g/mm以下、さらに好ましくは50g/mm以下である。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実験例1>
本実験例では、種々の賦形剤を用いて粉末醤油を調製し、耐固結性の評価を行った。本実験例で用いた賦形剤の種類は表1に示すとおりである。
Figure 0007037684000001
なお、えんどう豆ファイバー(えんどう豆粉)は、食物繊維量が65%、吸水率が347.5%であり、粒子の80質量%が20~59μmに分布し、メディアン径が36μmのものを使用した。
また、大豆ファイバー(大豆粉)は、食物繊維量が79%、吸水率が539%であり、粒子の80質量%が24~65μmに分布し、メディアン径が40μmのものを使用した。
なお上記吸水率とは、上述した測定方法により求めたものをいう。
(1)粉末醤油の調製(試験例1~7)
液体醤油(濃口醤油、食塩濃度16%(w/v))に、下記表2に示す賦形剤を所定量添加し、85℃に加温して撹拌しながら溶解・懸濁させた。
次に、各溶液をモービルマイナー型スプレードライヤー(TM-2000Model-A;NIRO JAPAN社製)にて入口温度150~160℃、出口温度90~95℃の条件で噴霧乾燥(スプレードライ)し、粉末醤油を得た。
Figure 0007037684000002
なお、表2に示す賦形剤の添加量(g)は乾燥固形分の重量である。下記表3に各賦形剤2gを60℃で3時間減圧乾燥させ、固形分量と水分量を示した。
Figure 0007037684000003
(2)耐固結性の評価
[固結強度]
耐固結性の評価方法の一つとして、粉末醤油の吸湿固化試験後の固結強度(破断強度)を測定することにより行った。具体的には、まず、上記(1)で得られた各粉末醤油(試験例1~7)をシャーレ(直径35mm,深さ10mm)に塗布し、ヘラですり切り表面を平らにして、評価用の試験サンプルを作製した。これを温度30℃、相対湿度80%に調整した雰囲気下で3時間保存することにより、吸湿固化試験を行った。吸湿固化試験後の試験サンプルについて、レオメーター(RHEONER II CREEP METER RE2-33005;山電社製)を用い、ロードセル:2kgf用、プランジャー:接触面直径1mmの円筒形、測定速度:1mm/sec、測定歪率:50%の条件で、破断強度(最大破断荷重:g/mm)を測定し、15検体の平均値(5点/1枚のシャーレ×3枚)を求めた。結果を図1に示す。
また、固結強度の評価は以下の指標で行った。結果を表4に示す。
◎:50g/mm以下
〇:50g/mm超120g/mm以下
△:120g/mm超200g/mm以下
×:200g/mm
[表面状態および内部状態の観察]
別の耐固結性の評価方法として、粉末醤油の製造開発に従事し、専門知識を有する担当者にて、試験サンプルの表面状態および内部状態を目視にて観察することにより行った。なお、上記評価は、評価する前にそれぞれの評価についてのすり合わせを行い、評価の平準化を図った。
上記評価は以下の指標で行った。結果を表4に示す。
<表面状態>
◎:さらさら(吸湿固化試験前とほぼ同等)
〇:若干吸湿がみられるが触ると粉末状になる
△:水分を吸湿ししっとりしている
×:水分を吸湿しペースト状になっている
<内部状態>
◎:さらさら(吸湿固化試験前とほぼ同等)
〇:さらさらではなくわずかにしっとり感があり、流動性が若干悪い
△:しっとり感があり粉末状に見えるが流動性が悪い
×:水分を吸湿しペースト状になっている
Figure 0007037684000004
上記結果から、賦形剤の中でも、特にえんどう豆粉、大豆粉を添加することにより、より良好な耐固結性が得られることがわかった。
<実験例2>
本実験例では、上記実験例1で用いた賦形剤の中で最も耐固結性が良好であったえんどう豆粉について、耐固結性を得るために最適な含有量を調べた。
実験例2-1では、試験例7において賦形剤として使用したデキストリンの全部または一部を、えんどう豆ファイバーに置き換えた場合における耐固結性について調べた。
実験例2-2では、賦形剤としてえんどう豆ファイバーのみを使用し、えんどう豆ファイバーの含有量による耐固結性の違いを調べた。
[実験例2-1]
(1)粉末醤油の調製(試験例8~11、試験例1、7)
液体醤油(濃口醤油、食塩濃度16%(w/v))に、下記表5に示す賦形剤(えんどう豆ファイバーとデキストリンの混合物または単体)を所定量添加し、85℃に加温して撹拌しながら溶解・懸濁させた。
次に、各溶液をモービルマイナー型スプレードライヤー(TM-2000Model-A;NIRO JAPAN社製)にて入口温度150~160℃、出口温度90~95℃の条件で噴霧乾燥(スプレードライ)し、粉末醤油を得た。
なお、表5に示す賦形剤の添加量(g)は乾燥固形分の重量である。また、試験例1、7は、上記実験例1と同じものを用いた。
Figure 0007037684000005
(2)耐固結性の評価
実験例1と同様に、耐固結性の評価を行った結果を下記表6に示す。また、固結強度の結果は図2にも示す。
Figure 0007037684000006
上記結果から、粉末醤油中のえんどう豆粉の含有量が、固形分で8質量%以上であれば良好な耐固結性が得られ、16質量%以上であればより良好な耐固結性が得られ、20質量%以上であればさらに良好な耐固結性が得られることがわかった。
[実験例2-2]
(1)粉末醤油の調製(試験例12~18、試験例1)
下記表7に示す配合量で液体醤油(濃口醤油、食塩濃度16%(w/v))にえんどう豆ファイバーを添加し、85℃に加温して撹拌しながら溶解・懸濁させた。次に、各溶液をモービルマイナー型スプレードライヤー(TM-2000Model-A;NIRO JAPAN社製)にて入口温度150~160℃、出口温度90~95℃の条件で噴霧乾燥(スプレードライ)し、粉末醤油を得た(試験例12~18、試験例1)。
なお、表7に示すえんどう豆ファイバーの添加量(g)は乾燥固形分の重量である。また、試験例1は上記実験例1と同じものを用いた。
Figure 0007037684000007
(2)耐固結性の評価
実験例1と同様に、耐固結性の評価を行った結果を下記表8に示す。また、固結強度の結果は図3にも示す。
(3)風味の評価
粉末醤油の製造開発に従事し、専門知識を有する担当者にて、試験サンプルを試食し、醤油風味の有無について、以下の指標で評価した。
〇:醤油風味がある
△:醤油風味が弱いが感じられる
×:醤油風味がない
Figure 0007037684000008
上記結果から、賦形剤としてえんどう豆粉のみを用いる場合は、粉末醤油中のえんどう豆粉の含有量が固形分で8質量%以上であることで、良好な耐固結性が得られることがわかった。また、66質量%を超えると、醤油の風味が消失した。
<実験例3>
本実験例では、上記実験例1で用いた賦形剤の中で耐固結性が良好であった大豆粉について、耐固結性を得るために最適な含有量を調べた。
(1)粉末醤油の調製(試験例19~22、試験例4、18)
下記表9に示す配合量で液体醤油(濃口醤油、食塩濃度16%(w/v))に大豆ファイバーを添加し、85℃に加温して撹拌しながら溶解・懸濁させた。次に、各溶液をモービルマイナー型スプレードライヤー(TM-2000Model-A;NIRO JAPAN社製)にて入口温度150~160℃、出口温度90~95℃の条件で噴霧乾燥(スプレードライ)し、粉末醤油を得た(試験例19~22、試験例4、18)。
なお、表9に示す大豆ファイバーの添加量(g)は乾燥固形分の重量である。また、試験例4は上記実験例1、試験例18は上記実験例2-2のものを用いた。
Figure 0007037684000009
(2)耐固結性の評価
実験例1と同様に、耐固結性の評価を行った結果を下記表10に示す。また、固結強度の結果は図4にも示す。
(3)風味の評価
粉末醤油の製造開発に従事し、専門知識を有する担当者にて、試験サンプルを試食し、醤油風味の有無について、以下の指標で評価した。
〇:醤油風味がある
△:醤油風味が弱いが感じられる
×:醤油風味がない
Figure 0007037684000010
上記結果から、賦形剤として大豆粉のみを用いる場合は、粉末醤油中の大豆粉の含有量が固形分で8質量%以上であることで、良好な耐固結性が得られることがわかった。また、66質量%を超えると、醤油の風味が消失した。
<実験例4>
本実験例では、えんどう豆粉を液体醤油に含有させるにあたり、えんどう豆粉を液体醤油の粉末化前に添加するか、粉末化後に添加するかによって、粉末醤油の耐固結性の向上効果に差があるか調べた。
(1)粉末醤油の調製(試験例1、23)
えんどう豆ファイバーを液体醤油の粉末化前に添加して得た粉末醤油の例として、上記試験例1の粉末醤油を使用した。
また、えんどう豆ファイバーを液体醤油の粉末化後に添加して得た粉末醤油の例としては、以下のように調製した試験例23の粉末醤油を使用した。すなわち、液体醤油(濃口醤油、食塩濃度16%(w/v))を85℃に加温し、モービルマイナー型スプレードライヤー(TM-2000Model-A;NIRO JAPAN社製)にて入口温度150~160℃、出口温度90~95℃の条件で噴霧乾燥(スプレードライ)して得られた粉末醤油にえんどう豆ファイバーを添加し、試験例23の粉末醤油を調製した(表11参照)。
なお、表11に示すえんどう豆ファイバーの添加量(g)は乾燥固形分の重量である。
Figure 0007037684000011
(2)耐固結性の評価
実験例1と同様に、耐固結性の評価を行った結果を下記表12に示す。また、固結強度の結果は図5にも示す。
Figure 0007037684000012
上記結果から、えんどう豆粉を液体醤油の粉末化前に添加する方が、粉末化後に添加するよりも、耐固結性の向上により効果が高いことがわかった。
<実験例5>
本実験例では、えんどう豆粉と大豆粉との添加量による、耐固結性に対する効果の比較を行った。
(1)粉末醤油の調製(試験例24~26、試験例1、4、8~10)
液体醤油(濃口醤油、食塩濃度16%(w/v))に、下記表13に示す賦形剤を所定量添加し、85℃に加温して撹拌しながら溶解・懸濁させた。
次に、各溶液をモービルマイナー型スプレードライヤー(TM-2000Model-A;NIRO JAPAN社製)にて入口温度150~160℃、出口温度90~95℃の条件で噴霧乾燥(スプレードライ)し、粉末醤油を得た。
なお、表13に示す賦形剤の添加量(g)は乾燥固形分の重量である。また、試験例1、4は上記実験例1、8~10は上記実験例2-1と同じものを使用した。
Figure 0007037684000013
(2)耐固結性の評価
実験例1と同様に、耐固結性の評価を行った結果を下記表14に示す。また、固結強度の結果は図6にも示す。
Figure 0007037684000014
上記結果から、えんどう豆粉も大豆粉も、添加量を増やすことにより、耐固結性が良好となることがわかった。また、えんどう豆粉の方が、大豆粉よりも耐固結性に優れていることがわかった。

Claims (5)

  1. えんどう豆粉を含有する粉末醤油であって、液体醤油にえんどう豆粉を添加した後、前記液体醤油を乾燥粉末化処理して得られる、粉末醤油
  2. 前記粉末醤油に対しえんどう豆粉を固形分で8質量%以上含有する、請求項1に記載の粉末醤油。
  3. 液体醤油にえんどう豆粉を添加した後、前記液体醤油を乾燥粉末化処理する工程を含む、粉末醤油の製造方法。
  4. 前記えんどう豆粉は45質量%以上の食物繊維を含む、請求項3に記載の粉末醤油の製造方法。
  5. 前記えんどう豆粉の吸水率が500%以下である、請求項3または4に記載の粉末醤油の製造方法。
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