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JP7093011B2 - 近赤外線センサ用カバー - Google Patents

近赤外線センサ用カバー Download PDF

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JP7093011B2
JP7093011B2 JP2018198793A JP2018198793A JP7093011B2 JP 7093011 B2 JP7093011 B2 JP 7093011B2 JP 2018198793 A JP2018198793 A JP 2018198793A JP 2018198793 A JP2018198793 A JP 2018198793A JP 7093011 B2 JP7093011 B2 JP 7093011B2
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Description

本発明は、車両に搭載される近赤外線センサを覆う近赤外線センサ用カバーに関する。
近年、車両の運転支援システムの開発が活発に行われている。LIDAR(Light Detection and Ranging)は、光を用いたリモートセンシング技術であり、運転支援システムに利用されている。
LIDARでは、レーザーを用いて比較的短波長の光を対象物に向けて出射し、かつ、対象物に当たって反射した当該光を検知する。LIDARのなかでも、近赤外線を用いたセンシングを行うものは、比較的近距離の障害物を検知するのに有利である。
ところで、車両外部の障害物を検知する必要上、LIDARの出射部および検知部は、車両の最外側(つまり、車両の前端側、側端側、後端側等)に搭載される。当該出射部および検知部が車外から視認されると、車両の意匠性が損なわれるため、出射部および検知部の更に外側には、出射部および検知部を覆うカバーを設けるのが一般的である。以下、必要に応じて、近赤外線を用いたLIDARにおける出射部および検知部を、近赤外線センサと称する。また、必要に応じて、当該近赤外線センサを覆うカバーを、近赤外線センサ用カバーと称する。
近赤外線センサ用カバーには、(1)近赤外線センサを外側から隠して車両の意匠性を維持する機能と、(2)近赤外線を透過させる機能と、が要求される。
このうち(1)については、近赤外線センサ用カバーを有色とすれば、近赤外線センサを外側から隠すことが可能である。また、当該近赤外線センサ用カバーに有色の部分を2以上設け、当該2以上の有色の部分によって意匠を表示することで、近赤外線センサ用カバーに優れた意匠性を付与することもできると考えられる。
また、このうち(2)については、近赤外線透過率の高い材料を用いて、十分な近赤外線透過率を発揮するように、近赤外線センサ用カバーを構成すれば良いと考えられる。
特許文献1には、透明樹脂層とミラーコート層とを交互に積層して近赤外線センサ用カバーを形成する技術が紹介されている。
特許文献1に紹介されている近赤外センサ用カバーは、透明樹脂層およびミラーコート層の各々が近赤外線透過率の十分に高い層であれば、上記の要件(2)を満足すると考えられる。また、当該近赤外線センサ用カバーは、ミラーコート層により近赤外線センサ用カバーに金属光沢が付与されることで、上記の要件(1)を満足すると考えられる。
しかし、特許文献1に紹介されているように、ミラーコート層を製造するには、屈折率の異なる多数の層を積層する等の非常に多くの工数を要する。また、当該屈折率の異なる層を形成する方法も、真空蒸着やイオンプレーティング、スパッタリング等の大量生産に適さない方法であるため、ミラーコート層を用いることによって近赤外線センサ用カバーのコストが高くなってしまう問題があった。
特許第4627610号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、近赤外線センサ用カバーの新規な製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の近赤外線センサ用カバーの製造方法は、
透明基材層の裏面に、有色の第1の近赤外線透過塗料を材料とする第1層を形成する工程と、
UVレーザーにより前記第1層の一部を剥離して、前記第1層の残部と前記透明基材層とを有する意匠表示部を形成する工程と、
前記意匠表示部の裏面に、第1の近赤外線透過塗料とは異なる有色の第2の近赤外線透過塗料を材料とする第2層を形成する工程とを有し、
前記透明基材層、前記第1層および前記第2層の各々を、波長800~1000nmの近赤外線透過率が、直射光のみで50%以上となるように形成し、
前記UVレーザーの照射エネルギーを単位面積1mmあたり0.18mJ以上0.9mJ以下とする、近赤外線センサ用カバーの製造方法である。
本発明の近赤外線センサ用カバーの製造方法は、近赤外線センサ用カバーを製造する新規な製造方法である。
実施例の近赤外線センサ用カバーを車両のフロントグリルに配設した様子を模式的に表す説明図である。 実施例の近赤外線センサ用カバーの断面を模式的に表す説明図である。 実施例の近赤外線センサ用カバーの製造方法における第1層形成工程を模式的に説明する説明図である。 実施例の近赤外線センサ用カバーの製造方法における剥離工程を模式的に説明する説明図である。 実施例の近赤外線センサ用カバーの製造方法における第2層形成工程を模式的に説明する説明図である。 剥離工程におけるUVレーザーの照射が十分でなく、剥離残渣が生じた様子を模式的に説明する説明図である。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a~b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
以下、必要に応じて、本発明の近赤外線センサ用カバーの製造方法を、本発明の製造方法と称し、当該本発明の製造方法で得られる近赤外線センサ用カバーを、本発明の近赤外線センサ用カバーと称する。
本発明の製造方法では、透明基材層の裏面に有色の第1の近赤外線透過塗料を材料とする第1層を形成し、当該第1層の一部をUVレーザーにより剥離して、第1層の残部と透明基材層とを有する意匠表示部を形成し、さらに、当該意匠表示部の裏面に、有色の第2の近赤外線透過塗料を材料とする第2層を形成する。当該第2の近赤外線透過塗料は、第1の近赤外線透過塗料とは異なる塗料である。
第1層および第2層は何れも有色であるため、本発明の製造方法で得られる本発明の近赤外線センサ用カバーは、第1層の残部および第2層によって、近赤外線センサを外部から隠すことができる。また、当該第1層の残部および第2層によって意匠を表示することで、本発明の近赤外線センサ用カバーには優れた意匠性が付与される。したがって、本発明の製造方法で得られる本発明の近赤外線センサ用カバーは、上記の要件(1)を満たす。
以下、必要に応じて、本発明の近赤外線センサ用カバーにおける第1層の残部を、意匠部と称する。
さらに、上記のように第1層を形成しその一部を剥離して意匠部とすることで、本発明の製造方法によると、上記した特許文献1に紹介されているミラーコート層を用いなくても、意匠性に優れる近赤外線センサ用カバーを容易に製造できる利点がある。
第1層の部分的な剥離はUVレーザーによって行われるため、例えばマスキング等の方法に比べて、第1層の残部すなわち意匠部の形状を微細に入り組んだ形状にできる。つまり、このため、本発明の製造方法によると意匠性に優れる近赤外線センサ用カバーを製造できる。
ところで、近赤外線センサ用カバーには、ある程度以上の近赤外線を透過する性能が要求される。ここでいう近赤外線とは、波長が800~1000nmの範囲にある光を意味する。
本発明の製造方法では、上記の透明基材層および第2層、並びに、意匠部の前駆層である第1層の各層を、近赤外線透過率が直射光のみで50%以上となるように形成するため、上記の要件(2)を満たし得ると考えられる。
上記した近赤外線センサ用カバーにおける各層の近赤外線透過率が、直射光のみで50%以上あれば、近赤外線センサ用カバーを透過する際の近赤外線の減衰が過大にならず、センシングに十分な量の近赤外線が検知部に戻ると考えられるためである。
なお、上記した各層の近赤外線透過率は、近赤外線センサ用カバーにおける近赤外線の照射域において満足されれば良く、例えば近赤外線センサ用カバーのうち近赤外線の出入りに関係しない部分については、直射光のみの近赤外線透過率が50%に満たなくても良い。
また、上記した近赤外線透過率については、透明基材層、第2層および第1層の各層について、各々、直射光のみの近赤外線透過率が50%であれば良いが、より好ましくは、各層が積層されてなる近赤外線センサ用カバーの全体として、近赤外線透過率が、直射光のみで50%以上であるのが良い。
ここで、本発明の製造方法で製造する対象、すなわち、本発明の赤外線センサ用カバーは、第1層そのものを有するのではなく、当該第1層を部分的に剥離することで得られる意匠部を有する。この部分的な剥離が十分に為されなければ、意匠部以外に、透明基材層と第2層との間に、剥離しきれなかった第1層の残部が残る。以下、必要に応じて、当該第1層の残部を剥離残部と称する。
本発明の発明者は、透明基材層と第2層との間の当該剥離残部が、本発明の赤外線センサ用カバーの意匠性に悪影響を及ぼすだけでなく、本発明の赤外線センサ用カバーの近赤外線透過性にも悪影響を及ぼす虞があると推測した。そして、本発明の製造方法においては、剥離残部を低減するのが肝要だと考えた。
本発明者は、鋭意研究の結果、UVレーザーの照射エネルギーを適切な範囲にコントロールすることで、剥離残部を低減することを志向した。そして、実際に、近赤外線透過塗料を用いて形成した第1層を、UVレーザーにより様々な条件で剥離した結果、第1層を剥離して本発明の近赤外線センサ用カバーを製造するのに最適なUVレーザーの照射エネルギーの範囲を見いだした。具体的には、本発明の製造方法では、UVレーザーの照射エネルギーを、単位面積1mmあたり0.18mJ以上0.9mJ以下とする。
既述したように、UVレーザーの照射エネルギーが過小であれば、第1層が十分に剥離されず、剥離残渣が生じる。当該剥離残渣と第1層が剥離した部分との界面で屈折や散乱が生じることにより、剥離残渣のある近赤外線センサ用カバーでは、UVレーザー未照射の第1層、すなわち、意匠部のある部分では近赤外線透過率が十分に高くても、剥離残渣のある部分においては近赤外線透過率が不足する場合があると考えられる。
一方、UVレーザーの照射エネルギーが過大であれば、第1層は十分に剥離するものの、UVレーザーの照射方向において当該第1層よりも先側に位置する透明基材層までもが紫外線により変性する場合がある。当該変性により透明基材層が白濁すると、近赤外線センサ用カバーの意匠性が悪化するばかりでなく、当該近赤外線センサ用カバーの近赤外線透過利率が低下する。
本発明の製造方法では、UVレーザーの照射エネルギーを、上記したように、単位面積1mmあたり0.18mJ以上0.9mJ以下の範囲内とすることで、第1層を十分に剥離して剥離残渣を低減し、かつ、透明基材層の変性を十分に抑制することが可能である。よって、本発明の製造方法によると上記の要件(1)および(2)を満たす近赤外線センサ用カバーを製造することが可能である。
以下、本発明の製造方法を、工程毎に説明する。
本発明の製造方法においては、先ず、透明基材層の裏面に、第1の近赤外線透過塗料を材料とする第1層を形成する。以下、必要に応じて、この工程を第1層形成工程と称する。
第1層形成工程において、第1層が形成される透明基材層は、透明材料で構成される。
例えば、本発明の近赤外線センサ用カバーを車両のフロントグリルに配設する場合には、本発明の近赤外線センサ用カバーは、近赤外センサよりも車両進行方向の前側に配置され、近赤外線センサを当該前側から覆う。そして透明基材層は、意匠層および第2層よりも当該前側に配置され、意匠層および第2層は透明基材層を通して車両の前側から視認される。
また例えば、本発明の近赤外線センサ用カバーを車両のフロントグリルに配設する場合には、本発明の近赤外線センサ用カバーは、近赤外センサよりも車両進行方向の前側に配置され、近赤外線センサを前側から覆う。そして透明基材層は、意匠層および第2層よりも当該後側に配置され、意匠層および第2層は透明基材層を通して車両の前側から視認される。
つまり、透明基材層は、本発明の近赤外線センサ用カバーを車両に搭載したときに、意匠層および第2層よりも外側、すなわち、車室内から遠い側に配置される。このため、近赤外線センサは、近赤外線センサ用カバーに覆われて、車外にいる人から視認され難い。また、近赤外線センサ用カバーには、透明基材層を通して、意匠層および第2層に由来する意匠が表示される。
透明基材層を構成する透明材としては、例えば、アクリルやポリカーボネート等の透明な樹脂材料を用いても良いし、ガラスや石英等のその他の透明材を用いても良い。なお、ここでいう透明とは、半透明を含む概念であり、透明基材層は、意匠層および第2層を透明基材層の表側から視認できる程度の透明度を有すれば良い。透明基材層は無色かつ透明であっても良いし、有色かつ透明であっても良い。何れの場合も、透明基材層の近赤外線透過率は直射光のみで50%以上であれば良い。なお、当該透明基材層の近赤外線透過率は、直射光のみで、70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましく、85%以上であるのが更に好ましく、90%以上であるのが特に好ましい。
透明基材層は一層構造であっても良いし、多層構造であっても良い。例えば、透明基材層を、透明樹脂を材料とする透明樹脂層と、当該透明樹脂層の表面に形成されたハードコート層とで構成しても良い。ハードコート層は、例えば、アクリル-ウレタン系の樹脂材料を塗装することで形成できる。
なお、透明基材層が多層構造である場合には、透明基材層の近赤外線透過率とは、多層構造をなす当該透明基材層全体の近赤外線透過率を意味する。
第1層形成工程において、透明基材層に形成される第1層は、第1の近赤外線透過塗料を材料とする。当該第1の近赤外線透過塗料としては、アクリル-ウレタン系の基材に着色顔料が配合された、熱硬化型の塗料が挙げられる。着色顔料の色は特に限定されない。また、基材と着色顔料との配合割合は、第1層の近赤外線透過率が直射光のみで50%以上であるように、適宜適切に設計すれば良い。第1層の近赤外線透過率は、直射光のみで、70%以上であるのが好ましく、75%以上であるのがより好ましく、80%以上であるのが更に好ましく、85%以上であるのが特に好ましい。当該第1層の近赤外線透過率の好ましい範囲は、意匠部の近赤外線透過率の好ましい範囲と読み替えることもできる。
本発明の製造方法では、第1層の厚さは特に限定しないが、上記したように、近赤外線透過率が直射光のみで50%以上であるように、適宜適切に設計すれば良い。なお、第1層の厚さが薄すぎると、第1層に由来する意匠部を透過して当該意匠部の裏側に位置する第2層が視認される可能性があり、本発明の近赤外線センサ用カバーに優れた意匠性を付与し難い場合がある。また、第1層の厚さが厚いと、第1層をUVレーザーによって剥離する際に、比較的大きな照射エネルギーを要する。
このため、第1層の厚さには、好ましい範囲が存在する。当該第1層の厚さの好ましい範囲としては、25~35μm、20~30μmの各範囲が挙げられる。
本発明の製造方法は、上記した第1層形成工程後に、UVレーザーにより上記の第1層の一部を剥離して、当該第1層の残部と上記の透明基材層とを有する意匠表示部を形成する工程を有する。当該工程を、必要に応じて、剥離工程と称する。なお、剥離工程により生じる第1層の残部は、既述した意匠部である。
剥離工程においては、透明基材層と第1層との複合体に対し、第1層に焦点を合わせて、UVレーザーを照射すれば良い。UVレーザーの照射範囲は、意匠部によって表示すべき意匠に応じて適宜設定すれば良い。
UVレーザーは、第1層の一部に照射される。当該第1層の一部はUVレーザーの照射によって変性して、剥離する。第1層の他の一部である意匠部は、このときUVレーザーが照射されず、その結果、剥離せずに残る。UVレーザーの照射により剥離した部分と、意匠部との境界は、グラデーションがかかったように見える。このことは、本発明の近赤外線センサ用カバーの意匠部が、優れた意匠性を発揮する一要因である。
UVレーザーの照射エネルギーは、単位面積1mmあたり0.18mJ以上0.9mJ以下とすれば良い。ここで、UVレーザーは、第1層のうち照射対象すなわち剥離したい部分にのみ照射され、意匠部には照射されない。したがって、上記したUVレーザーは、UVレーザーの照射対象に対して、単位面積1mmあたり0.18mJ以上0.9mJ以下の照射エネルギーで照射される。UVレーザーの照射エネルギーが上記の範囲内であれば、上記した剥離残渣が十分に抑制され、かつ、透明基材層の変性も十分に抑制される。
ここで、UVレーザーの照射エネルギー(mJ)は、{UVレーザーの1パルスあたりのレーザーパワー(W)}×{単位面積あたりのUVレーザーの照射時間(秒)}で算出できる。ここでいう単位面積については上記したとおりである。
また、UVレーザーの1パルスあたりのレーザーパワー(W)は、{UVレーザーの出力(W)}×{第1層のUV透過率(%)}で算出できる。なお、ここでいうUVレーザーの出力(W)は、使用するUVレーザー装置および必要に応じて当該UVレーザー装置の運転モードに応じた数値となる。
また、単位面積あたりの照射時間(秒)は、{照射径の面積(mm)}/{移動速度(mm/秒)×ピッチ(mm)}で算出できる。
なお、ここでいう照射径の面積(mm)は、UVレーザーのスポット径を意味する。
また、ここでいうピッチ(mm)}は、UVレーザーの照射間隔を意味する。
剥離工程におけるUVレーザーの照射エネルギーの好ましい範囲として、単位面積1mmあたり0.20mJ以上0.8mJ以下、0.22mJ以上0.75mJ以下、0.25mJ以上0.58mJ以下の各範囲を挙げることができる。以下、必要に応じて、「単位面積1mm」を単に単位面積と称する場合がある。
上記の剥離工程によって意匠部が形成され、意匠部と透明基材層とを有する意匠表示部が得られる。
なお、第1層および意匠部は一層構造であっても良いし、2以上の層を有する多層構造であっても良い。より具体的には、意匠部は色の異なる2以上の層を有しても良い。この場合、本発明の近赤外線センサ用カバーに、より複雑な色彩と意匠とが付与される。
この場合、剥離工程は2回以上行っても良い。例えば、透明基材層の裏面に第1層(I)を形成し、第1の剥離工程を行い、UVレーザーの照射を受けなかった第1層(I)の裏面、および、透明基材層の裏面のうち第1層(I)が剥離された部分に、第1層(I)とは異なる色の第1層(II)を形成しても良い。そして、第1層(I)と第1層(II)とが積層された部分や、第1層(II)が単独で存在する部分に対して、第2の剥離工程を行えばよい。こうすることで、透明基材層の裏面に形成された第1層には、第1層(I)のみからなる部分、第1層(I)と第1層(II)からなる部分、第1層(II)のみからなる部分の3種が形成され得る。この場合には、意匠部によって表示できる意匠のバリエーションが増大する。
本発明の製造方法は、上記の剥離工程で得られた意匠表示部の裏面に、第2の近赤外線透過塗料を材料とする第2層を形成する工程を有する。当該工程を、必要に応じて、第2層形成工程と称する。
剥離工程で得られた意匠表示部は、透明基材層と、当該透明基材層の裏面に部分的に形成されている第1層すなわち意匠部と、を有する。
第2層形成工程では、意匠部の裏面、および、透明基材層のうち意匠部の形成されていない部分の裏面に、第2層が形成される。透明基材層は透明であるため、意匠表示部を表側から見ると、隙間をもって断続的に設けられている意匠部と、当該意匠部の隙間にある第2層と、が透明基材層を通して視認される。
なお、本発明の製造方法は、剥離工程後かつ第2層形成工程前に、剥離された第1層がまだ透明基材層の裏面に存在する場合には、当該剥離された第1層を意匠表示部から除去する、除去工程を備えても良い。当該除去工程は、エアや溶剤等の流体を意匠表示部の裏面に吹きかける等の方法で行えば良い。
第2層の材料である第2の近赤外線透過塗料としては、アクリル-ウレタン系の基材に着色顔料が配合された、熱硬化型の塗料が挙げられる。第1層と同様に、着色顔料の色は特に限定されない。また、基材と着色顔料との配合割合は、第2層の近赤外線透過率が直射光のみで50%以上であるように、適宜適切に設計すれば良い。第2層の近赤外線透過率は、直射光のみで、60%以上であるのが好ましく、65%以上であるのがより好ましく、70%以上であるのが更に好ましく、75%以上であるのが特に好ましい。
第2の近赤外線透過塗料は、第1の近赤外線透過塗料と異なるものであれば良く、例えば、着色顔料の種類や量のみが異なっていても良い。第1の近赤外線透過塗料と、第2の近赤外線透過塗料とは、互いに色の異なる塗料であるのが好ましい。具体的には、第1の近赤外線透過塗料と第2の近赤外線透過塗料とは、色相、彩度、明度、透明度の少なくとも一つが異なれば良い。または、第1の近赤外線透過塗料と第2の近赤外線透過塗料とは、本発明の近赤外線センサ用カバーを透明基材層側から視認した人が、意匠層と第2層との違いを視覚的に認識できる程度に異なれば良い。第1の近赤外線透過塗料は、第2の近赤外線透過塗料よりも明度が低いのがより好ましく、黒色であるのが特に好ましい。
本発明の製造方法では、第2層の厚さもまた特に限定しないが、第1層と同様に、近赤外線透過率が直射光のみで50%以上であるように、適宜適切に設計すれば良い。第2層の厚さの好ましい範囲としては、25~35μm、20~30μmの各範囲が挙げられる。
以下、具体例を挙げて本発明の近赤外線センサ用カバーの製造方法を説明する。
(実施例)
実施例の近赤外線センサ用カバーの製造方法で製造する近赤外線センサ用カバーは、車両のフロントグリルに配設されるものである。当該近赤外線センサ用カバーを、実施例の近赤外線センサ用カバーと称する。
図1は実施例の近赤外線センサ用カバーを車両のフロントグリルに配設した様子を模式的に表す説明図である。図2は実施例の近赤外線センサ用カバーを図1中のA-A位置で切断した様子を模式的に表す説明図である。図3~図5は、実施例の近赤外線センサ用カバーの製造方法を模式的に説明する説明図である。詳しくは、図3は第1層形成工程を表し、図4は剥離工程を表し、図5は第2層形成工程を表す。図6は剥離工程におけるUVレーザーの照射が十分でなく、剥離残渣が生じた様子を模式的に説明する説明図である。以下、上、下、左、右、前、後とは、図1に示す上、下、左、右、前、後を意味し、幅方向とは図1に示す左右方向を意味する。より詳しくは、前は車両進行方向における前に相当し、後は車両進行方向における後に相当し、幅方向は車幅方向に相当する。更に、表とは前を意味し、裏とは後を意味する。
図1に示すように、実施例の近赤外線センサ用カバー1は、車両のフロントグリル90に配設される。図1および図2に示すように、フロントグリル90には窓状の開口91が設けられている。実施例の近赤外線センサ用カバー1は、当該開口91に配設される。図2に示すように、近赤外線センサ用カバー1の後方には近赤外線センサ92が配置される。
実施例の近赤外線センサ用カバー1は、透明基材層2と、意匠部3と、第2層4と、を有し、透明基材層2を前側に向け、第2層4を後側、すなわち、近赤外線センサ側92に向ける。
透明基材層2は、表面2aを前に、裏面2bを後ろに向ける。透明基材層2は、透明樹脂層20、および、透明樹脂層20の表面に形成されているハードコート層21で構成される2層構造をなす。意匠部3は、透明基材層2の裏面2b側に部分的に形成された黒色の層であり、透明基材層2の裏面2bには、意匠部3の形成されている部分と意匠部3の形成されていない部分とが存在する。第2層4は、有色の層であり、意匠部3の裏面3bと、透明基材層2の裏面2bのうち意匠部3の形成されていない部分25bと、に連続的に形成されている。
実施例の近赤外線センサ用カバー1における意匠部3は、フロントグリル90のブレード95に対して幅方向に隣り合う部分に設けられている。したがって、フロントグリル90および近赤外線センサ用カバー1を前側から見ると、フロントグリル90のブレード95は意匠部3にまで連続しているように見える。
以下、実施例の赤外線センサカバーの製造方法を説明する。
(第1層形成工程)
先ず、透明樹脂の一種でありポリカーボネートを材料として、型成形することで、透明樹脂層20を形成した。次いで、透明樹脂層20の表面に、アクリル-ウレタン系のハードコート用塗料を塗装することで、ハードコート層21を形成し、透明樹脂層20とハードコート層21とを有する透明基材層2(図3参照)を製造した。透明基材層2の近赤外線透過率は、直射光のみで90%であった。
次いで、上記の透明基材層2の裏面2bに、第1の近赤外線透過塗料を塗装することで、第1層30を形成した。第1の近赤外線透過塗料としては、アクリル-ウレタン系の基材と黒色顔料とを含む黒色塗料を用いた。第1層30の近赤外線透過率は、直射光のみで88%であった。また、第1層の厚さは20~30μmであった。
(剥離工程)
上記の第1層形成工程で得た透明基材層2と第1層30との複合体(図3参照)に対し、裏側、すなわち、第1層30側からUVレーザーを照射した。このとき、UVレーザーの焦点を第1層30に合わせ、かつ、UVレーザーの照射エネルギーを、第1層30の単位面積あたり0.18mJ以上0.9mJ以下となるよう調整した。
図4に示すように、第1層30のうちUVレーザーが照射された部分は剥離し、UVレーザーが照射されなかった部分(すなわち意匠部3)は残存した。図1に示すように、意匠部3は、透明基材層2の裏面2b側に断続的に形成された。
意匠部3の近赤外線透過率は、直射光のみで88%であった。また、意匠部3の厚さは20~30μmであった。
以上の剥離工程によって、透明基材層2と意匠部3とを有する意匠表示部15が得られた。
(第2層形成工程)
図5に示すように、剥離工程で得られた意匠表示部15の裏面15bに、第2の近赤外線透過塗料を塗装することで、意匠部3の裏面3b、および、透明基材層2のうち意匠部3が形成されていない部分25の裏面25bに第2層4を形成した。第2の近赤外線透過塗料としては、アクリル-ウレタン系の基材と着色顔料とを含む塗料を用いた。第2層4の近赤外線透過率は、直射光のみで72%であった。また、第2層4の厚さは20~30μmであった。
(評価試験)
透明基材層と、当該透明基材層の裏面に形成された第1層と、を有する同じテストピースを3個準備した。当該テストピースにおける透明基材層はポリカーボネート製であり、第1層は実施例と同じ第1の近赤外線透過塗料製である。透明基材層の厚さは2mmであり、第1層の厚さは30μmであった。
テストピースの一つである第1テストピースには、UVレーザーの照射エネルギーが第1層の単位面積あたり0.18mJとなる剥離工程を行った。テストピースの他の一つである第2テストピースには、UVレーザーの照射エネルギーが第1層の単位面積あたり0.32mJとなる剥離工程を行った。テストピースの他の一つである第3テストピースには、UVレーザーの照射エネルギーが第1層の単位面積あたり0.9mJとなる剥離工程を行った。これらの剥離工程では、第1層の全体を剥離した。
剥離工程後の第1テストピース~第3テストピースにつき、直射光のみの近赤外線透過率を測定した。その結果、第1テストピースおよび第3テストピースの当該近赤外線透過率は50%程度であったのに対して、第2テストピースの当該近赤外線透過率は87%程度であった。
剥離工程におけるUVレーザーの照射エネルギーが第1層の単位面積あたり0.18mJであった第1のテストピースでは、剥離工程におけるUVレーザーの照射が十分でなく、図6に示すように、剥離残渣50が生じた結果、近赤外線透過率が50%と比較的低い値に留まったものと推測される。また、剥離工程におけるUVレーザーの照射エネルギーが第1層の単位面積あたり0.18mJに満たないと、剥離工程におけるUVレーザーの照射エネルギーが更に不足して、テストピースの近赤外線透過率がより小さくなると推測される。
また、剥離工程におけるUVレーザーの照射エネルギーが第1層の単位面積あたり0.9mJであった第3のテストピースでは、剥離工程におけるUVレーザーの照射が必要以上に大きく、その結果、透明基材層に一部変性が生じた結果、近赤外線透過率が50%と比較的低い値に留まったものと推測される。また、剥離工程におけるUVレーザーの照射エネルギーが第1層の単位面積あたり0.9mJを超えると、剥離工程におけるUVレーザーの照射エネルギーが更に過剰となり、テストピースの近赤外線透過率がより小さくなると推測される。
これらの結果から、剥離工程におけるUVレーザーの照射エネルギーを、第1層の単位面積あたり0.18~0.9mJの範囲内とすることで、剥離工程における第1層の剥離を十分に行うことができることがわかる。そしてこの結果から、本発明の製造方法によると剥離工程における第1層の剥離を十分に行うことができ、近赤外線センサによるセンシングに必要なだけの近赤外線透過率を有する近赤外線センサ用カバーを製造できることがわかる。
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
1:近赤外線センサ用カバー 2:透明基材層
2b:透明基材層の裏面 3:意匠部(第1層の残部)
30:第1層 4:第2層
15:意匠表示部 15b:意匠表示部の裏面

Claims (3)

  1. 透明基材層の裏面に、有色の第1の近赤外線透過塗料を材料とする1層を形成する工程と、
    UVレーザーにより前記第1層の一部を剥離して、前記第1層の残部と前記透明基材層とを有する意匠表示部を形成する工程と、
    前記意匠表示部の裏面に、第1の近赤外線透過塗料とは異なる有色の第2の近赤外線透過塗料を材料とする第2層を形成する工程とを有し、
    前記透明基材層、前記第1層および前記第2層の各々を、波長800~1000nmの近赤外線透過率が、直射光のみで50%以上となるように形成し、
    前記UVレーザーの照射エネルギーを単位面積1mmあたり0.18mJ以上0.9mJ以下とする、近赤外線センサ用カバーの製造方法。
  2. 前記透明基材層、前記第1層および前記第2層の各々を、波長800~1000nmの近赤外線透過率が、直射光のみで75%以上となるように形成する、請求項1に記載の近赤外線センサ用カバーの製造方法。
  3. 前記第1の近赤外線透過塗料は、アクリルウレタン系の塗料である請求項1または請求項2に記載の近赤外線センサ用カバーの製造方法。
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