JP6799551B2 - リチウム二次電池用正極活物質の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、前記特許文献1〜6に記載のようなリチウム二次電池用正極活物質においては、初回充放電効率を向上させる観点から改良の余地があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、初回充放電効率に優れるリチウム二次電池用正極活物質、該リチウム二次電池用正極活物質を用いたリチウム二次電池用正極及び該リチウム二次電池用正極を有するリチウム二次電池を提供することを課題とする。
[1]一般式(1)で表されるリチウム金属複合酸化物粉末からなるリチウム二次電池用正極活物質であって、前記リチウム金属複合酸化物粉末が一次粒子と、該一次粒子が凝集して形成された二次粒子と、から構成され、前記リチウム金属複合酸化物粉末のBET比表面積が1m2/g以上3m2/g以下であり、前記二次粒子の平均圧壊強度が10MPa以上100MPa以下であることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質。
Li[Lix(Ni(1−y−z−w)CoyMnzMw)1−x]O2 (1)(ただし、MはFe、Cu、Ti、Mg、Al、W、B、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の金属元素であり、−0.1≦x≦0.2、0<y≦0.4、0<z≦0.4、0≦w≦0.1、0.25<y+z+wを満たす。)
[2]前記一般式(1)において、y<zである[1]記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[3]前記リチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径が2μm以上10μm以下である[1]または[2]に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[4]CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=18.7±1°の範囲内の回折ピークの半値幅をA、2θ=44.4±1°の範囲内の回折ピークの半値幅をBとしたとき、AとBの積が0.014以上0.030以下である[1]〜[3]のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[5]前記半値幅Aの範囲が0.115以上0.165以下である[4]に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[6]前記半値幅Bの範囲が0.120以上0.180以下である[4]又は[5]に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[7]前記リチウム金属複合酸化物粉末に含まれる炭酸リチウム成分が0.4質量%以下である[1]〜[6]のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[8]前記リチウム金属複合酸化物粉末に含まれる水酸化リチウム成分が0.35質量%以下である[1]〜[7]のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[9][1]〜[8]のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質を有するリチウム二次電池用正極。
[10][9]に記載のリチウム二次電池用正極を有するリチウム二次電池。
本発明は、一般式(1)で表されるリチウム金属複合酸化物粉末からなるリチウム二次電池用正極活物質であって、前記リチウム金属複合酸化物粉末が一次粒子と、該一次粒子が凝集して形成された二次粒子と、から構成され、前記リチウム金属複合酸化物粉末のBET比表面積が1m2/g以上3m2/g以下であり、前記二次粒子の平均圧壊強度が10MPa以上100MPa以下であることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質である。
Li[Lix(Ni(1−y−z−w)CoyMnzMw)1−x]O2 (1)(ただし、MはFe、Cu、Ti、Mg、Al、W、B、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の金属元素であり、−0.1≦x≦0.2、0<y≦0.4、0<z≦0.4、0≦w≦0.1、0.25<y+z+wを満たす。)
Li[Lix(Ni(1−y−z−w)CoyMnzMw)1−x]O2 (1)(ただし、MはFe、Cu、Ti、Mg、Al、W、B、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の金属元素であり、−0.1≦x≦0.2、0<y≦0.4、0<z≦0.4、0≦w≦0.1、0.25<y+z+wを満たす。)
xの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
本明細書において、「サイクル特性が高い」とは、放電容量維持率が高いことを意味する。
yの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
zの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
wの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
本実施形態において、初回充放電効率が高いリチウム二次電池を得る意味で、リチウム金属複合酸化物粉末のBET比表面積(m2/g)は1m2/g以上であることが好ましく、1.05m2/g以上であることがより好ましく、1.1m2/g以上であることがさらに好ましい。また、リチウム二次電池用正極活物質のハンドリング性を高める意味で、3m2/g以下であることが好ましく、2.95m2/g以下であることがより好ましく、2.9m2/g以下であることがさらに好ましい。
BET比表面積の上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
本実施形態において、リチウム金属複合酸化物粉末は、一次粒子と、該一次粒子が凝集して形成された二次粒子とから構成されている。
本実施形態において、初回充放電効率が高いリチウム二次電池を得る意味で、前記二次粒子の平均圧壊強度は10MPa以上であることが好ましく、11MPa以上であることがより好ましく、12MPa以上であることがさらに好ましい。また、高い電流レートにおいて放電容量が高いリチウム二次電池を得る意味で、100MPa以下であることが好ましく、99MPa以下であることがより好ましく、98MPa以下であることがさらに好ましい。
平均圧壊強度の上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
図2(a)に本実施形態の二次粒子の断面の模式図を示す。図2(a)に示すとおり、本実施形態の正極活物質は空隙が多いため電解液との接触面積が多くなる。このため、図2(a)の符号Aに示すリチウムイオンの脱離(充電)と、符号Bに示すリチウムイオンの挿入(放電)が、二次粒子の内部と表面で進行しやすくなる。このため、初回放電効率を向上させることができる。
図2(b)に従来用いられてきた緻密な粒子構造の二次粒子の断面の模式図を示す。図2(b)に記載の通り、緻密な粒子構造の場合、符号Aに示すリチウムイオンの脱離(充電)と、符号Bに示すリチウムイオンの挿入(放電)が、粒子の表面近傍でのみ進行する。これに対し、上述の通り本実施形態では、二次粒子の内部だけでなく、表面でも進行するため、初回放電効率を向上させることができる。
本実施形態において、二次粒子の平均圧壊強度は、下記の測定方法により測定した値である。
本発明において、リチウム金属複合酸化物粉末に存在する二次粒子の「平均圧壊強度」とは、以下の方法によって測定される値を指す。
St=2.8×P/(π×d×d) (d:二次粒子径) …(A)
本実施形態において、サイクル特性が高いリチウム二次電池を得る意味で、一般式(1)において、y<zであることが好ましい。y≧zである場合は、リチウム二次電池のサイクル特性が低下する場合がある。
本実施形態において、リチウム二次電池用正極活物質のハンドリング性を高める意味で、前記リチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径は2μm以上であることが好ましく、2.1μm以上であることがより好ましく、2.2μm以上であることがさらに好ましい。
また、高い電流レートにおいて放電容量が高いリチウム二次電池を得る意味で、10μm以下であることが好ましく、9.9μm以下であることがより好ましく、9.8μm以下であることがさらに好ましい。
平均粒子径の上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
本発明において、リチウム金属複合酸化物粉末の「平均粒子径」とは、以下の方法(レーザー回折散乱法)によって測定される値を指す。
本実施形態において、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=18.7±1°の範囲内の回折ピークの半値幅をA、2θ=44.4±1°の範囲内の回折ピークの半値幅をBとしたとき、高い電流レートにおいて放電容量が高いリチウム二次電池を得る意味で、AとBの積が0.014以上であることが好ましく、0.015以上であることがより好ましく、0.016以上であることがさらに好ましい。また、サイクル特性が高いリチウム二次電池を得る意味で、0.030以下であることが好ましく、0.029以下であることがより好ましく、0.028以下であることがさらに好ましい。
AとBの積の上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
まず、正極活物質について、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=18.7±1°の範囲内の回折ピーク(以下、ピークA’と呼ぶこともある)、2θ=44.4±1°の範囲内の回折ピーク(以下、ピークB’と呼ぶこともある)を決定する。
さらに、決定したピークA’の半値幅Aと、ピークB’の半値幅Bとを算出し、Scherrer式 D=Kλ/Bcosθ (D:結晶子サイズ、K:Scherrer定数、B:ピーク線幅)を用いることで結晶子サイズを算出することが出来る。該式により、結晶子サイズを算出することは従来から使用されている手法である(例えば「X線構造解析−原子の配列を決める−」2002年4月30日第3版発行、早稲田嘉夫、松原栄一郎著、参照)。
半値幅Aの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
半値Bの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
リチウムニッケル複合酸化物の結晶構造は、層状構造であり、六方晶型の結晶構造又は単斜晶型の結晶構造であることがより好ましい。
リチウム二次電池用正極活物質のハンドリング性を高める意味で、リチウム金属複合酸化物粉末に含まれる炭酸リチウム成分は0.4質量%以下であることが好ましく、0.39質量%以下であることがより好ましく、0.38質量%以下であることが特に好ましい。
また、リチウム二次電池用正極活物質のハンドリング性を高める意味で、リチウム金属複合酸化物粉末に含まれる水酸化リチウム成分は0.35質量%以下であることが好ましく、0.25質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることが特に好ましい。
本発明のリチウム金属複合酸化物を製造するにあたって、まず、リチウム以外の金属、すなわち、Ni、Co及びMnから構成される必須金属、並びに、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、B、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVのうちいずれか1種以上の任意金属を含む金属複合化合物を調製し、当該金属複合化合物を適当なリチウム塩と焼成することが好ましい。金属複合化合物としては、金属複合水酸化物又は金属複合酸化物が好ましい。以下に、正極活物質の製造方法の一例を、金属複合化合物の製造工程と、リチウム金属複合酸化物の製造工程とに分けて説明する。
金属複合化合物は、通常公知のバッチ共沈殿法又は連続共沈殿法により製造することが可能である。以下、金属として、ニッケル、コバルト及びマンガンを含む金属複合水酸化物を例に、その製造方法を詳述する。
また、溶媒として水が使用される。
本発明におけるリチウム金属複合酸化物粉末のBET比表面積や、二次粒子の平均圧壊強度は、前記の金属複合化合物を用いて、後述する焼成条件等を制御することにより、本発明の特定の範囲内とすることができる。
なお、上記の例では、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を製造しているが、ニッケルコバルトマンガン複合酸化物を調製してもよい。
上記金属複合酸化物又は水酸化物を乾燥した後、リチウム塩と混合する。乾燥条件は、特に制限されないが、例えば、金属複合酸化物又は水酸化物が酸化・還元されない条件(酸化物→酸化物、水酸化物→水酸化物)、金属複合水酸化物が酸化される条件(水酸化物→酸化物)、金属複合酸化物が還元される条件(酸化物→水酸化物)のいずれの条件でもよい。酸化・還元がされない条件のためには、窒素、ヘリウム及びアルゴン等の不活性ガスを使用すれば良く、水酸化物が酸化される条件では、酸素又は空気を使用すれば良い。
また、金属複合酸化物が還元される条件としては、不活性ガス雰囲気下、ヒドラジン、亜硫酸ナトリウム等の還元剤を使用すれば良い。リチウム塩としては、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、水酸化リチウム水和物、酸化リチウムのうち何れか一つ、または、二つ以上を混合して使用することができる。
金属複合酸化物又は水酸化物の乾燥後に、適宜分級を行っても良い。以上のリチウム塩と金属複合水酸化物とは、最終目的物の組成比を勘案して用いられる。例えば、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を用いる場合、リチウム塩と当該金属複合水酸化物は、LiNixCoyMnzO2(式中、x+y+z=1)の組成比に対応する割合で用いられる。ニッケルコバルトマンガン金属複合水酸化物及びリチウム塩の混合物を焼成することによって、リチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物が得られる。なお、焼成には、所望の組成に応じて乾燥空気、酸素雰囲気、不活性雰囲気等が用いられ、必要ならば複数の加熱工程が実施される。
次いで、リチウム二次電池の構成を説明しながら、本発明のリチウム二次電池用正極活物質を、リチウム二次電池の正極活物質として用いた正極、およびこの正極を有するリチウム二次電池について説明する。
(正極)
本実施形態の正極は、まず正極活物質、導電材およびバインダーを含む正極合剤を調整し、正極合剤を正極集電体に担持させることで製造することができる。
本実施形態の正極が有する導電材としては、炭素材料を用いることができる。炭素材料として黒鉛粉末、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、繊維状炭素材料などを挙げることができる。カーボンブラックは、微粒で表面積が大きいため、少量を正極合剤中に添加することにより正極内部の導電性を高め、充放電効率および出力特性を向上させることができるが、多く入れすぎるとバインダーによる正極合剤と正極集電体との結着力、および正極合剤内部の結着力がいずれも低下し、かえって内部抵抗を増加させる原因となる。
本実施形態の正極が有するバインダーとしては、熱可塑性樹脂を用いることができる。
この熱可塑性樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。
)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;を挙げることができる。
本実施形態の正極が有する正極集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を用いることができる。なかでも、加工しやすく、安価であるという点でAlを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
(負極)
本実施形態のリチウム二次電池が有する負極は、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能であればよく、負極活物質を含む負極合剤が負極集電体に担持されてなる電極、および負極活物質単独からなる電極を挙げることができる。
負極が有する負極活物質としては、炭素材料、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)、窒化物、金属又は合金で、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能な材料が挙げられる。
負極が有する負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を挙げることができる。なかでも、リチウムと合金を作り難く、加工しやすいという点で、Cuを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
本実施形態のリチウム二次電池が有するセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質膜、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができる。また、これらの材質を2種以上用いてセパレータを形成してもよいし、これらの材料を積層してセパレータを形成してもよい。
本実施形態のリチウム二次電池が有する電解液は、電解質および有機溶媒を含有する。
(1)リチウム二次電池用正極活物質の評価
1.二次粒子の平均圧壊強度
二次粒子の平均圧壊強度の測定は、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCT−510)を用い、リチウム金属複合酸化物粉末中から任意に選んだ二次粒子1個に対して試験圧力をかけて測定した。試験圧力がほぼ一定で、二次粒子の変位量が最大となる圧力値を試験力(P)とし、前述した平松らの式により、圧壊強度(St)を算出した。最終的に、圧壊強度試験を計5回行った平均値から平均圧壊強度を求めた。
リチウム金属複合酸化物粉末1gを窒素雰囲気中、105℃で30分間乾燥させた後、マウンテック社製Macsorb(登録商標)を用いて測定した。
平均粒子径の測定は、レーザー回折粒度分布計(株式会社堀場製作所製、LA−950)を用い、リチウム金属複合酸化物粉末0.1gを、0.2質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液50mlに投入し、該粉末を分散させた分散液を得た。得られた分散液について粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得る。得られた累積粒度分布曲線において、50%累積時の微小粒子側から見た粒子径(D50)の値を、リチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径とした。
粉末X線回折測定は、X線回折装置(PANalytical社製、X‘Pert PRO)を用いて行った。リチウム金属複合酸化物粉末を専用の基板に充填し、Cu−Kα線源を用いて、回折角2θ=10°〜90°の範囲にて測定を行うことで、粉末X線回折図形を得た。粉末X線回折パターン総合解析ソフトウェアJADE5を用い、該粉末X線回折図形から2θ=18.7±1°の回折ピークの半値幅A及び、2θ=44.4±1°の回折ピークの半値幅Bを求めた。
半値幅Aの回折ピーク: 2θ=18.7±1°
半値幅Bの回折ピーク: 2θ=44.4±1°
後述の方法で製造されるリチウム金属複合酸化物粉末の組成分析は、得られたリチウム金属複合酸化物の粉末を塩酸に溶解させた後、誘導結合プラズマ発光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SPS3000)を用いて行った。
リチウム金属複合酸化物粉末20gと純水100gを100mlビーカーに入れ、5分間撹拌した。撹拌後、リチウム金属複合酸化物を濾過し、残った濾液の60gに0.1mol/L塩酸を滴下し、pHメーターにて濾液のpHを測定した。pH=8.3±0.1時の塩酸の滴定量をAml、pH=4.5±0.1時の塩酸の滴定量をBmlとして、下記の計算式より、リチウム金属複合酸化物中に残存する炭酸リチウム及び水酸化リチウム濃度を算出した。下記の式中、炭酸リチウム及び水酸化リチウムの分子量は、各原子量を、H;1.000、Li;6.941、C;12、O;16、として算出した。
炭酸リチウム濃度(%)=
0.1×(B−A)/1000×73.882/(20×60/100)×100水酸化リチウム濃度(%)=
0.1×(2A−B)/1000×23.941/(20×60/100)×100
後述する製造方法で得られるリチウム二次電池用正極活物質と導電材(アセチレンブラック)とバインダー(PVdF)とを、リチウム二次電池用正極活物質:導電材:バインダー=92:5:3(質量比)の組成となるように加えて混練することにより、ペースト状の正極合剤を調製した。正極合剤の調製時には、N−メチル−2−ピロリドンを有機溶媒として用いた。
次に、負極活物質として人造黒鉛(日立化成株式会社製MAGD)と、バインダーとしてCMC(第一工業薬製株式会社製)とSBR(日本エイアンドエル株式会社製)とを、負極活物質:CMC:SRR=98:1:1(質量比)の組成となるように加えて混練することにより、ペースト状の負極合剤を調製した。負極合剤の調製時には、溶媒としてイオン交換水を用いた。
以下の操作を、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
「(2)リチウム二次電池用正極の作製」で作製したリチウム二次電池用正極を、コイン型電池R2032用のパーツ(宝泉株式会社製)の下蓋にアルミ箔面を下に向けて置き、その上に積層フィルムセパレータ(ポリエチレン製多孔質フィルムの上に、耐熱多孔層を積層(厚み16μm))を置いた。ここに電解液を300μl注入した。電解液は、エチレンカーボネート(以下、ECと称することがある。)とジメチルカーボネート(以下、DMCと称することがある。)とエチルメチルカーボネート(以下、EMCと称することがある。)の30:35:35(体積比)混合液に、LiPF6を1.0mol/lとなるように溶解したもの(以下、LiPF6/EC+DMC+EMCと表すことがある。)を用いた。
次に、負極として金属リチウムを用いて、前記負極を積層フィルムセパレータの上側に置き、ガスケットを介して上蓋をし、かしめ機でかしめてリチウム二次電池(コイン型ハーフセルR2032。以下、「ハーフセル」と称することがある。)を作製した。
以下の操作を、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
「(2)リチウム二次電池用正極の作製」で作製したリチウム二次電池用正極を、コイン型電池R2032用のパーツ(宝泉株式会社製)の下蓋にアルミ箔面を下に向けて置き、その上に積層フィルムセパレータ(ポリエチレン製多孔質フィルムの上に、耐熱多孔層を積層(厚み16μm))を置いた。ここに電解液を300μl注入した。電解液は、エチレンカーボネート(以下、ECと称することがある。)とジメチルカーボネート(以下、DMCと称することがある。)とエチルメチルカーボネート(以下、EMCと称することがある。)の16:10:74(体積比)混合液にビニレンカーボネート(以下、VCと称することがある。)を1体積%加え、そこにLiPF6を1.3mol/lとなるように溶解したもの(以下、LiPF6/EC+DMC+EMCと表すことがある。)を用いた。
次に、「(3)リチウム二次電池用負極の作製」で作製したリチウム二次電池用負極を積層フィルムセパレータの上側に置き、ガスケットを介して上蓋をし、かしめ機でかしめてリチウム二次電池(コイン型フルセルR2032。以下、「フルセル」と称することがある。)を作製した。
「(4)リチウム二次電池(コイン型ハーフセル)の作製」で作製したハーフセルを用いて、以下に示す条件で初回充放電試験を実施した。
<初回充放電試験>
試験温度25℃
充電最大電圧4.3V、充電時間6時間、充電電流0.2CA、定電流定電圧充電
放電最小電圧2.5V、放電時間5時間、放電電流0.2CA、定電流放電また、初回充放電効率は以下のようにして求めた。
初回充放電効率(%=0.2CAの初回放電容量/0.2CAの初回充電容量×100
「(5)リチウム二次電池(コイン型フルセル)の作製」で作製したフルセルを用いて、以下に示す条件で初回充放電試験を実施した。
<充放電試験条件>
試験温度:25℃
充電最大電圧4.2V、充電時間6時間、充電電流0.2CA、定電流定電圧充電
放電最小電圧2.7V、放電時間5時間、放電電流0.2CA、定電流放電<電池抵抗測定>
上記で測定した放電容量を充電深度(以下、SOCと称することがある。)100%として、−15℃において、SOC15%、50%の電池抵抗を測定した。なお、各SOCへの調整は25℃環境下で行った。電池抵抗測定は、−15℃の恒温槽内にSOCを調整したフルセルを2時間静置し、20μAで15秒間放電、5分静置、20μAで15秒間充電、5分静置、40μAで15秒間放電、5分静置、20μAで30秒間充電、5分静置、80μAで15秒間放電、5分静置、20μAで60秒間充電、5分静置、160μAで15秒間放電、5分静置、20μAで120秒間充電、5分静置の順に実施した。電池抵抗は、20、40、80、120μA放電時に測定された10秒後の電池電圧と各電流値とのプロットから、最小二乗近似法を用いて傾きを算出し、この傾きを電池抵抗とした。
1.リチウム二次電池用正極活物質1の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を50℃に保持した。
リチウム二次電池用正極活物質1の組成分析を行い、一般式(1)に対応させたところ、x=0.06、y=0.328、z=0.356、w=0であった。
リチウム二次電池用正極活物質1を用いて、コイン型ハーフセルを作製し、初回充放電試験を実施した。初回充電容量、初回放電容量、初回充放電効率は、それぞれ170.4mAh/g、161.1mAh/g、94.5%であった。
1.リチウム二次電池用正極活物質2の製造
実施例1と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物1を得た。
リチウム二次電池用正極活物質2の組成分析を行い、一般式(1)に対応させたところ、MがW、x=0.06、y=0.327、z=0.354、w=0.005であった。
リチウム二次電池用正極活物質2を用いて、コイン型ハーフセルを作製し、初回充放電試験を実施した。初回充電容量、初回放電容量、初回充放電効率は、それぞれ170.6mAh/g、161.2mAh/g、94.5%であった。
1.リチウム二次電池用正極活物質3の製造
実施例1と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物1を得た。
リチウム二次電池用正極活物質3の組成分析を行い、一般式(1)に対応させたところ、MがZr、x=0.06、y=0.328、z=0.354、w=0.003であった。
リチウム二次電池用正極活物質3を用いて、コイン型ハーフセルを作製し、初回充放電試験を実施した。初回充電容量、初回放電容量、初回充放電効率は、それぞれ170.5mAh/g、160.2mAh/g、94.0%であった。
1.リチウム二次電池用正極活物質4の製造
酸素濃度が2.1%、反応槽内の溶液のpHが11.2となるように操作したこと以外は実施例1と同様に実施し、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物2を得た。
リチウム二次電池用正極活物質4の組成分析を行い、一般式(1)に対応させたところ、MがMg、x=0.04、y=0.328、z=0.355、w=0.003であった。
リチウム二次電池用正極活物質4を用いて、コイン型ハーフセルを作製し、初回充放電試験を実施した。初回充電容量、初回放電容量、初回充放電効率は、それぞれ173.4mAh/g、157.1mAh/g、90.6%であった。
1.リチウム二次電池用正極活物質5の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を50℃に保持した。
リチウム二次電池用正極活物質5の組成分析を行い、一般式(1)に対応させたところ、x=0.03、y=0.222、z=0.267、w=0であった。
リチウム二次電池用正極活物質5を用いて、コイン型ハーフセルを作製し、初回充放電試験を実施した。初回充電容量、初回放電容量、初回充放電効率は、それぞれ189.6mAh/g、174.1mAh/g、91.8%であった。
1.リチウム二次電池用正極活物質6の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を50℃に保持した。
リチウム二次電池用正極活物質6の組成分析を行い、一般式(1)に対応させたところ、x=0.03、y=0.208、z=0.242、w=0であった。
リチウム二次電池用正極活物質6を用いて、コイン型ハーフセルを作製し、初回充放電試験を実施した。初回充電容量、初回放電容量、初回充放電効率は、それぞれ192.3mAh/g、175.8mAh/g、91.4%であった。
1.リチウム二次電池用正極活物質7の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物4を得た。
リチウム二次電池用正極活物質7の組成分析を行い、一般式(1)に対応させたところ、MがW、x=0.04、y=0.208、z=0.241、w=0.003であった。
リチウム二次電池用正極活物質7を用いて、コイン型ハーフセルを作製し、初回充放電試験を実施した。初回充電容量、初回放電容量、初回充放電効率は、それぞれ191.6mAh/g、184.1mAh/g、96.1%であった。
1.リチウム二次電池用正極活物質8の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を60℃に保持した。
リチウム二次電池用正極活物質8の組成分析を行い、一般式(1)に対応させたところ、MがAl、x=0.01、y=0.142、z=0.095、w=0.05であった。
リチウム二次電池用正極活物質8を用いて、コイン型ハーフセルを作製し、初回充放電試験を実施した。初回充電容量、初回放電容量、初回充放電効率は、それぞれ205.4mAh/g、197.6mAh/g、96.2%であった。
1.リチウム二次電池用正極活物質9の製造
実施例1と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物1を得た。
リチウム二次電池用正極活物質9の組成分析を行い、一般式(1)に対応させたところ、x=0.00、y=0.328、z=0.356、w=0であった。
リチウム二次電池用正極活物質9を用いて、コイン型ハーフセルを作製し、初回充放電試験を実施した。初回充電容量、初回放電容量、初回充放電効率は、それぞれ172.4mAh/g、153.3mAh/g、88.9%であった。
1.リチウム二次電池用正極活物質10の製造
実施例1と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物1を得た。
リチウム二次電池用正極活物質10の組成分析を行い、一般式(1)に対応させたところ、x=0、y=0.329、z=0.356、w=0であった。
リチウム二次電池用正極活物質10を用いて、コイン型ハーフセルを作製し、初回充放電試験を実施した。初回充電容量、初回放電容量、初回充放電効率は、それぞれ172.9mAh/g、154.4mAh/g、89.3%であった。
1.リチウム二次電池用正極活物質11の製造
反応槽内の酸素濃度を6.2%、反応槽内の溶液のpHを12.4としたこと以外は、実施例5と同様にして、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物6を得た。
リチウム二次電池用正極活物質11の組成分析を行い、一般式(1)に対応させたところ、x=0、y=0.222、z=0.266、w=0であった。
リチウム二次電池用正極活物質11を用いて、コイン型ハーフセルを作製し、初回充放電試験を実施した。初回充電容量、初回放電容量、初回充放電効率は、それぞれ192.7mAh/g、171.6mAh/g、89.1%であった。
1.リチウム二次電池用正極活物質12の製造
反応槽内の液温を60℃、酸素濃度を0%、反応槽内の溶液のpHを11.5としたこと以外は実施例5と同様にして、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物7を得た。
リチウム二次電池用正極活物質12の組成分析を行い、一般式(1)に対応させたところ、x=0.02、y=0.221、z=0.265、w=0であった。
リチウム二次電池用正極活物質12を用いて、コイン型ハーフセルを作製し、初回充放電試験を実施した。初回充電容量、初回放電容量、初回充放電効率は、それぞれ194.7mAh/g、169.2mAh/g、86.9%であった。
1.リチウム二次電池用正極活物質13の製造
反応槽内の液温を60℃、酸素濃度を0%、反応槽内の溶液のpHを11.5としたこと以外は実施例6と同様にして、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物8を得た。
リチウム二次電池用正極活物質13の組成分析を行い、一般式(1)に対応させたところ、x=0.02、y=0.209、z=0.241、w=0であった。
リチウム二次電池用正極活物質13を用いて、コイン型ハーフセルを作製し、初回充放電試験を実施した。初回充電容量、初回放電容量、初回充放電効率は、それぞれ195.5mAh/g、172.4mAh/g、88.2%であった。
図3に示す結果の通り、本発明を適用した実施例2の二次粒子は、断面図を観察すると、空隙の多い粒子であることが明らかであった。
これに対し、本発明を適用しない比較例1〜5は、初回充放電効率がいずれも90%以下と低い結果であった。また、低温放電試験において、低温時では直流抵抗が高くなってしまった。
図4に示す結果のとおり、本発明を適用しない比較例4の二次粒子は、断面図を観察すると、空隙がほとんどなく、緻密な粒子であることが明らかであった。
Claims (9)
- 一般式(1)で表されるリチウム金属複合酸化物粉末からなるリチウム二次電池用正極活物質の製造方法であって、
前記リチウム金属複合酸化物粉末が一次粒子と、該一次粒子が凝集して形成された二次粒子と、から構成され、
前記リチウム金属複合酸化物粉末のBET比表面積が1m2/g以上3m2/g以下であり、
前記二次粒子の平均圧壊強度は10MPa以上100MPa以下であり、
ニッケル塩溶液、コバルト塩溶液及びマンガン塩溶液を含む混合原料液を調製する工程と、
前記混合原料液と錯化剤を連続的に反応槽へ供給しつつ、前記反応槽に酸素濃度が2.1%以上となるように窒素ガスに空気を混合して得た酸素含有ガスを連続的に通気させて、金属複合化合物を得る工程と、
得られた金属複合化合物に含まれる、ニッケル、コバルト、マンガン及び元素Mの合計量(Ni+Co+Mn+M)に対するリチウムの比(Li/(Ni+Co+Mn+M))が1.02以上となるように、金属複合化合物とリチウム化合物とを混合する工程と、混合した混合粉を焼成する工程と、を備えることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
Li[Lix(Ni(1−y−z−w)CoyMnzMw)1−x]O2 (1)
(ただし、MはFe、Cu、Ti、Mg、Al、W、B、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の金属元素であり、−0.1≦x≦0.2、0<y≦0.4、0<z≦0.4、0≦w≦0.1、0.25<y+z+wを満たす。) - 一般式(1)で表されるリチウム金属複合酸化物粉末からなるリチウム二次電池用正極活物質の製造方法であって、
前記リチウム金属複合酸化物粉末が一次粒子と、該一次粒子が凝集して形成された二次粒子と、から構成され、
前記リチウム金属複合酸化物粉末のBET比表面積が1m 2 /g以上3m 2 /g以下であり、
前記二次粒子の平均圧壊強度は10MPa以上100MPa以下であり、
ニッケル塩溶液、コバルト塩溶液及びマンガン塩溶液を含む混合原料液を調製する工程と、
前記混合原料液と錯化剤を連続的に反応槽へ供給しつつ、前記反応槽に酸素濃度が2.1%以上9.5%以下の酸素含有ガスを連続的に通気させて、金属複合化合物を得る工程と、
得られた金属複合化合物に含まれる、ニッケル、コバルト、マンガン及び元素Mの合計量(Ni+Co+Mn+M)に対するリチウムの比(Li/(Ni+Co+Mn+M))が1.02以上となるように、金属複合化合物とリチウム化合物とを混合する工程と、混合した混合粉を焼成する工程と、を備えることを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
Li[Li x (Ni (1−y−z−w) Co y Mn z M w ) 1−x ]O 2 (1)
(ただし、MはFe、Cu、Ti、Mg、Al、W、B、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の金属元素であり、−0.1≦x≦0.2、0<y≦0.4、0<z≦0.4、0≦w≦0.1、0.25<y+z+wを満たす。) - 前記一般式(1)において、y<zである請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記リチウム金属複合酸化物粉末の平均粒子径が2μm以上10μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
- CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=18.7±1°の範囲内の回折ピークの半値幅をA、2θ=44.4±1°の範囲内の回折ピークの半値幅をBとしたとき、AとBの積が0.014以上0.030以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記半値幅Aの範囲が0.115以上0.165以下である請求項5に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記半値幅Bの範囲が0.120以上0.180以下である請求項5又は6に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記リチウム金属複合酸化物粉末に含まれる炭酸リチウム成分が0.4質量%以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記リチウム金属複合酸化物粉末に含まれる水酸化リチウム成分が0.35質量%以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
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