以下に添付図面を参照して開示の技術に係るモータ制御装置の実施形態の一例について説明する。以下の実施形態は、周期的な負荷トルク変動を有する圧縮機を駆動するモータのトルク制御を、位置センサレスベクトル制御により行う、例えば空気調和装置又は低温保存装置等のモータ制御装置に関する。しかし、開示の技術は、周期的な負荷トルク変動を有する負荷を駆動するモータのトルク制御を行うモータ制御装置に広く適用可能である。
なお、以下に示す実施形態は、開示の技術を限定するものではない。また、以下に示す実施形態及びその変形例は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせることができる。また、以下に示す実施形態は、開示の技術に係る構成及び処理について主に示し、その他の構成及び処理の説明を簡略又は省略する。また、各実施形態において、同一の構成及び処理には同一の符号を付与し、既出の構成及び処理の説明は省略する。
なお、以下の実施形態で用いる記号の説明の一覧を、下記(表1)に示す。
実施形態の説明に先立ち、開示の技術の背景及び概略について説明する。dq回転座標系のd軸及びq軸で独立した出力電圧指令を生成するトルク制御では、負荷トルク変動を抑制するために出力電圧振幅に脈動を生じさせる脈動電圧を生成する。よって、脈動電圧を生成するトルク制御方式は、出力電圧を調整できる通常制御領域では適用できるが、出力電圧が飽和して電圧調整ができない電圧飽和領域では、脈動電圧が生成できない。
そこで、以下の実施形態では、電圧飽和領域のように出力電圧が飽和している領域であっても調整可能なパラメータである出力電圧の位相(電圧ベクトル角(δ角))を電圧飽和領域において調整する。以下の実施形態では、電圧飽和領域において電圧ベクトル角を調整することにより、モータの回転速度を制御する、弱め磁束制御のトルク制御を行う。
図1Aは、モータに印加される電圧ベクトルの概略を示す図である。図2を参照して図1Aを説明すると、平均電圧ベクトル角指令値(目標値)δ0 *に補正ベクトル角(トルク制御量)Δδを加算して電圧ベクトル角を調整してトルク制御を行う。補正ベクトル角Δδは、周期的トルク変動による機械角推定角速度変動(略して、速度変動という)Δωmと同期して周期的に変動する(図1B参照)。平均電圧ベクトル角指令値(目標値)δ0 *は、補正電圧ベクトル角Δδで補正した補正後電圧ベクトル角指令値(目標値)δ*からd軸電圧指令値Vd *及びq軸電圧指令値Vq *を生成する。生成されたこれら指令値をもとにモータを制御することにより、機械角推定角速度変動Δωmの振幅(速度変動振幅|Δωm|)が抑制され、モータのピーク電流を低減する。
この実現のため、まず、機械角指令角速度(目標値)ωm *と現在の角速度を推定した機械角推定角速度ωmとの偏差から、d軸電流指令値(目標値)Id *を生成する。そして、d軸電流指令値(目標値)Id *とd軸電流値Idの偏差から、平均電圧ベクトル角指令値δ0 *を生成する。平均電圧ベクトル角指令値δ0 *と補正電圧ベクトル角(トルク制御量)Δδを加算し、補正後電圧ベクトル角指令値(目標値)δ*を生成する。
そして、補正後電圧ベクトル角指令値(目標値)δ*と、出力電圧振幅限界値Vdq_limitから、d軸電圧指令値Vd *及びq軸電圧指令値Vq *を生成する。出力電圧振幅限界値Vdq_limitは、IPM(Intelligent Power Module)20に外部(例えば、図示しない電源コンバータ)から供給される直流電圧Vdcを制御系であるdq回転座標軸系における電圧値に変換し、直流電圧Vdcに重畳しているリップルの影響のない最大値(リップル電圧のボトム値)に設定する。そして、2相(dq回転座標系)から3相(3相静止座標系)への変換及びPWM(Pulse Width Modulation)変調を経て交流電圧がモータに印加された際に、機械角推定角速度ωmが一定に保たれるように平均電圧ベクトル角指令値δ0 *が調整される。
次に、周期的なトルク変動によって生じる機械角推定角速度変動Δωmを補正電圧ベクトル角(トルク制御量)Δδを重畳することにより抑制する手法について述べる。先ず、機械角推定角速度変動Δωmの基本波成分の振幅及び位相をフーリエ変換等により抽出する。
図1Bは、機械角推定角速度変動Δωm及び補正電圧ベクトル角(トルク制御量)Δδの時系列変化の概略を示す図である。図1Bに示す機械角推定角速度ωmは、機械角指令角速度(目標値)ωm *を中心に機械角推定角速度変動Δωm分脈動していることを示している。速度変動修正位相φωiは、機械角周期毎に取得される速度変動成分の位相を修正する。電圧ベクトル角(トルク制御量)δは、平均電圧ベクトル角指令値(目標値)δ0 *を中心に補正電圧ベクトル角(トルク制御量)Δδ分脈動していることを示し、補正電圧ベクトル角(トルク制御量)Δδは機械角推定角速度変動Δωmと同期し、機械角推定角速度変動Δωmよりもシフト位相θshiftだけ進み又は遅れ位相で補正電圧ベクトル角Δδを周期的に変動させることで生成する。なお、シフト位相θshiftが0である場合、補正電圧ベクトル角Δδは、機械角推定角速度変動Δωmと同位相である。補正電圧ベクトル角Δδは、機械角推定角速度変動Δωmと同期して機械角周期毎に変動させるものであり、その際シフト位相θshiftを設けることで制振効果が向上する。
補正電圧ベクトル角Δδの変動振幅は、図1Bで示すと平均電圧ベクトル角指令値(目標値)δ0 *を中心に補正電圧ベクトル角(トルク制御量)Δδの脈動する振幅であり、図1Aでは、平均電圧ベクトル角指令値(目標値)δ0 *を中心に補正電圧ベクトル角(トルク制御量)Δδの振れ角をいう。この補正電圧ベクトル角Δδの変動振幅は、フーリエ変換等により得られた機械角推定角速度変動Δωmの基本波振幅(速度変動振幅|Δωm|)と振動が許容される機械角推定角速度変動Δωmの範囲を示す速度変動許容値|Δωm|*との偏差の積分制御により生成される。これにより、速度変動振幅|Δωm|の帰還ループが形成されるため、補正電圧ベクトル角Δδの変動振幅を固定値として設定せずとも、機械角推定角速度変動Δωmと同期して変動し、負荷の状態に応じた適切な値となる。
また、補正電圧ベクトル角Δδを調整する際に、速度変動振幅|Δωm|をフィードバックする方法の他に、q軸電流の変動位相をフィードバックすることで補正電圧ベクトル角Δδの変動振幅を生成する方法がある。q軸電流の変動位相をフィードバックする方法でも、速度変動振幅|Δωm|をフィードバックする方法と同様に、制振効果及びモータのピーク電流低減効果を得ることができる。
すなわち、q軸電流の変動位相をフィードバックする方法では、速度変動位相から負荷トルク変動位相を推定し、負荷トルク変動位相とq軸電流の変動位相が同位相となるように補正電圧ベクトル角Δδを調整する。q軸電流の変動はマグネットトルクの変動と同位相であるため、負荷トルク変動位相とマグネットトルクの変動位相を一致させることでモータのピーク電流低減効果と制振効果を得ることができる。
[実施形態1]
実施形態1では、弱め磁束制御領域等の出力電圧が飽和して電圧を上げることができない電圧飽和領域において、速度変動振幅をフィードバックする。そして、実施形態1では、振動が許容される速度変動振幅となり、速度変動と同期して変動するように補正電圧ベクトル角の振幅及び位相を機械角周期毎に調整する。
(実施形態1に係るモータ制御装置)
図2は、実施形態1に係るモータ制御装置100を示すブロック図である。実施形態1は、弱め磁束制御領域等の出力電圧が制限される電圧飽和領域において、速度変動振幅|Δωm|をフィードバックして、振動が実用上問題とならない速度変動許容値|Δωm|*となるように補正電圧ベクトル角Δδを機械角周期毎に調整する。
実施形態1に係るモータ制御装置100は、例えば永久磁石同期電動機(PMSM:Permanent Magnet Synchronous Motor)であるモータ10を制御する。モータ制御装置100は、減算器11,13、速度制御部12、電流制御部14、補正電圧ベクトル角生成部15、加算器16、d軸q軸電圧生成部17を有する。また、モータ制御装置100は、d−q/u,v,w変換部18、PWM変調部19、IPM(Intelligent Power Module)20を有する。また、モータ制御装置100は、電流センサ21,22、3φ電流算出部23、u,v,w/d−q変換部24、軸誤差演算処理部25、PLL(Phase Lock Loop)制御部26、位置推定部27、1/Pn処理部28を有する。
減算器11は、モータ制御装置100へ入力された機械角指令角速度ωm *から、1/Pn処理部28により出力された推定された現在の角速度である機械角推定角速度ωmを減算した角速度偏差Δωを、速度制御部12へ出力する。
速度制御部12は、減算器11から入力された角速度偏差Δωが小さくなるようなd軸電流指令値Id *を出力する。減算器13は、速度制御部12により出力されたd軸電流指令値Id *から、u,v,w/d−q変換部24により出力されたd軸電流値Idを減算したd軸電流偏差ΔIdを、電流制御部14へ出力する。電流制御部14は、減算器13から入力されたd軸電流偏差ΔIdを小さくするような平均電圧ベクトル角指令値δ0 *を出力する。
補正電圧ベクトル角生成部15は、1/Pn処理部28により出力された機械角推定角速度ωm、位置推定部27により出力された機械角位相θm、u,v,w/d−q変換部24により出力されたq軸電流値Iq等から、補正電圧ベクトル角Δδを生成する。補正電圧ベクトル角生成部15の処理の詳細は、後述する。
加算器16は、電流制御部14により出力された平均電圧ベクトル角指令値δ0 *と、補正電圧ベクトル角生成部15により出力された補正電圧ベクトル角Δδを加算した補正後電圧ベクトル角指令値δ*を、d軸q軸電圧生成部17へ出力する。d軸q軸電圧生成部17は、補正後電圧ベクトル角指令値δ*と、出力電圧振幅限界値Vdq_limitから、d軸電圧指令値Vd *及びq軸電圧指令値Vq *を生成して、d−q/u,v,w変換部18及び軸誤差演算処理部25へ出力する。
d−q/u,v,w変換部18は、位置推定部27により出力された現在のロータの位置である電気角位相θeから、d軸q軸電圧生成部17により出力された2相のd軸電圧指令値Vd *及びq軸電圧指令値Vq *を3相のU相出力電圧指令値Vu *,V相出力電圧指令値VV *,W相出力電圧指令値VW *へ変換する。そして、d−q/u,v,w変換部18は、U相出力電圧指令値Vu *,V相出力電圧指令値VV *,W相出力電圧指令値VW *をPWM変調部19へ出力する。PWM変調部19は、U相出力電圧指令値Vu *,V相出力電圧指令値VV *,W相出力電圧指令値VW *と、PWMキャリア信号から、6相のPWM信号を生成して、IPM20へ出力する。
IPM20は、PWM変調部19により出力された6相のPWM信号をもとに、モータ10のU相,V相,W相それぞれへ印可する交流電圧を外部から供給される直流電圧Vdcから変換して生成し、それぞれの交流電圧をモータ10のU相,V相,W相へ印加する。
電流を計測する方式は、母線電流を計測する1シャント(shunt)方式に限らず、2つのCT(Current Transformer)で、例えば、電流センサ21でモータ10のU相の電流を、電流センサ22でモータ10のV相の電流を計測してもよい。3φ電流算出部23は、1シャント方式で母線電流を計測した場合、PWM変調部19から出力された6相PWMスイッチング情報と、計測された母線電流から、モータ10のU相電流値Iu,V相電流値Iv,W相電流値Iwを算出する。または、2つのCTで相電流を計測した場合、残りのW相電流値Iwは、Iu+Iv+Iw=0の関係より算出する。算出した各相の相電流値Iu,Iv,Iwをu,v,w/d−q変換部24へ出力する。
u,v,w/d−q変換部24は、位置推定部27により出力された電気角位相θeをもとに、3φ電流算出部23により出力された3相のU相電流値Iu,V相電流値Iv,W相電流値Iwを、2相のd軸電流値Id及びq軸電流値Iqへ変換する。そして、u,v,w/d−q変換部24は、d軸電流値Idを減算器13へ、q軸電流値Iqを補正電圧ベクトル角生成部15へ、d軸電流値Id及びq軸電流値Iqを軸誤差演算処理部25へそれぞれ出力する。
軸誤差演算処理部25は、d軸q軸電圧生成部17により出力されたd軸電圧指令値Vd *及びq軸電圧指令値Vq *、u,v,w/d−q変換部24により出力されたd軸電流値Id及びq軸電流値Iqから、軸誤差Δθを算出して、PLL制御部26へ出力する。
PLL制御部26は、軸誤差演算処理部25により出力された軸誤差Δθから、推定された現在の角速度である電気角推定角速度ωeを算出して、位置推定部27及び1/Pn処理部28それぞれへ出力する。位置推定部27は、PLL制御部26により出力された電気角推定角速度ωeから、電気角位相(dq軸位相)θe及び機械角位相θmを算出する。そして、位置推定部27は、機械角位相θmを補正ベクトル角生成部15へ、電気角位相θeをd−q/u,v,w変換部18及びu,v,w/d−q変換部24へそれぞれ出力する。
1/Pn処理部28は、PLL制御部26により出力された電気角推定角速度ωeをモータ10の極対数Pnで除算して機械角推定角速度ωmを算出し、機械角推定角速度ωmを減算器11及び補正電圧ベクトル角生成部15へ出力する。
(実施形態1に係る補正電圧ベクトル角生成部)
図3は、実施形態1に係る補正電圧ベクトル角生成部15を示すブロック図である。実施形態1に係る補正電圧ベクトル角生成部15は、速度変動成分分離部15a、速度変動振幅算出部15b、減算器15c、補正電圧ベクトル角振幅算出部15d、速度変動位相修正部15e、補正電圧ベクトル角算出部15fを有する。
速度変動成分分離部15aは、下記(1−1)式及び(1−2)式により、機械角周期毎に、機械角推定角速度変動Δωmの基本波成分を、直交成分である2つのフーリエ係数ωsin(速度変動のsin成分)及びωcos(速度変動のcos成分)に分離する。基本波成分のフーリエ係数を機械角周期毎に算出することで、速度変動の高調波成分を排除した速度変動基本波成分を、精度よく抽出することができる。
速度変動振幅算出部15bは、下記(2)式により、速度変動成分分離部15aにより算出されたフーリエ係数ωsin(速度変動のsin成分)及びωcos(速度変動のcos成分)から、機械角推定角速度変動Δωmの基本波成分の振幅(速度変動振幅|Δωm|)を算出する。なお、フーリエ係数ωsin(速度変動のsin成分)及びωcos(速度変動のcos成分)は機械角周期毎に更新される値であるため、速度変動振幅|Δωm|も機械角周期毎に更新される。
減算器15cは、速度変動振幅算出部15bにより算出された速度変動振幅|Δωm|から速度変動許容値|Δωm|*を減算した偏差を、補正電圧ベクトル角振幅算出部15dへ出力する。補正電圧ベクトル角振幅算出部15dは、例えば下記(3)式を用いて補正電圧ベクトル角振幅|Δδ|を累積する積分制御により、速度変動振幅|Δωm|と速度変動許容値|Δωm|*の偏差に応じて、補正電圧ベクトル角振幅|Δδ|を機械角周期毎に算出する。なお、速度変動許容値|Δωm|*は、振動が許容できる範囲での速度変動振幅を規定する。
なお、上記(3)式における“k”は、補正電圧ベクトル角振幅|Δδ|の変化量を決める補正ゲインである。この値“k”を適切に設定することで、速度変動が速度変動許容値境界でハンチングする問題や、急激な負荷トルク変化によって速度変動が速度変動許容値よりも大きくなり振動や騒音が発生するという問題を抑制することができる。
速度変動位相修正部15eは、機械角周期毎に取得される速度変動成分の位相を修正する。修正方法は、例えば、速度変動のsin成分(ωsin)及びcos成分(ωcos)をそれぞれ補正ゲイン“k”を適用した下記(4−1)式〜(4−2)式を用いて速度変動成分のsin成分(ωsin)及びcos成分(ωcos)をそれぞれ累積する積分制御する。そして、速度変動位相修正部15eは、下記(4−3)式により、下記(4−1)式〜(4−2)式により算出した速度変動のsin成分(ωsin)及びcos成分(ωcos)の積分結果であるωsin_i及びωcos_iからωcos_i/ωsin_iの逆正接を演算する。速度変動位相修正部15eは、ωcos_i/ωsin_iの逆正接から、速度変動修正位相φωiを得る。
なお、速度変動位相修正部15eは、速度変動位相算出後において積分演算後の直交成分ωsin_i及びωcos_iにより形成されるベクトルの位相が変化しないように、下記(5−1)式及び(5−2)式により、振幅を丸めこむ(以下、位相フィルタ処理とする)。この処理によって、それぞれの直交成分ωsin_i及びωcos_iの積分値が発散しないようにする。ここで、下記(5−1)式及び(5−2)式における“A”は、位相の修正速度や安定性を決定するためのベクトルの振幅であり、いわば位相フィルタである。
補正電圧ベクトル角算出部15fは、下記(6)式により、補正電圧ベクトル角Δδを算出する。補正電圧ベクトル角Δδは、機械角位相θmにおける補正電圧ベクトル角Δδを、速度変動修正位相φωiと、速度変動修正位相φωiに対して補正電圧ベクトル角Δδの変動位相差を設定するシフト位相θshiftだけ進ませた又は遅れさせた位相における瞬時値となる。なお、ここで、下記(6)式におけるシフト位相θshiftは、制振効果やモータ10の電流ピーク値の低減度合いから調整されるものであり、0として機械角推定角速度変動Δωmと同位相で補正電圧ベクトル角Δδを生成しても効果を得ることができる。また、シフト位相θshiftが、補正電圧ベクトル角Δδの位相を進ませるものである場合は、平均電圧ベクトル角指令値δ0 *に対して先行して電圧ベクトル角の補正を行うことができ、補正の応答性能が向上する場合がある。
(実施形態1に係る補正電圧ベクトル角生成処理)
図4は、実施形態1に係る補正電圧ベクトル角生成処理を示すフローチャートである。実施形態1に係る補正電圧ベクトル角生成処理は、弱め磁束制御領域等の出力電圧が制限される電圧飽和領域において、機械角周期毎に実行される。先ず、補正電圧ベクトル角生成部15の速度変動成分分離部15aは、上記(1−1)式及び(1−2)式により、機械角推定角速度変動Δωmの基本波成分を、直交成分である2つのフーリエ係数ωsin(速度変動のsin成分)及びωcos(速度変動のcos成分)に分離する(ステップS11)。
次に、速度変動振幅算出部15bは、上記(2)式により、速度変動成分分離部15aにより算出されたフーリエ係数ωsin(速度変動のsin成分)及びωcos(速度変動のcos成分)から、機械角推定角速度変動Δωmの速度変動振幅|Δωm|を算出する(ステップS12)。
次に、補正電圧ベクトル角振幅算出部15dは、上記(3)式により、速度変動振幅|Δωm|から速度変動許容値|Δωm|*を減算した偏差を積分制御することにより、補正電圧ベクトル角振幅|Δδ|を算出する(ステップS13)。
次に、速度変動位相修正部15eは、上記(4−1)式〜(4−2)式により、速度変動のsin成分(ωsin)及びcos成分(ωcos)を算出する。そして、速度変動位相修正部15eは、上記(4−3)式により、速度変動のsin成分(ωsin)及びcos成分(ωcos)の積分結果であるωsin_i及びωcos_iからωcos_i/ωsin_iの逆正接、すなわち速度変動修正位相φωiを算出する(ステップS14)。
次に、速度変動位相修正部15eは、上記(5−1)式及び(5−2)式による位相フィルタ処理を行う(ステップS15)。次に、補正電圧ベクトル角算出部15fは、上記(6)式により、補正電圧ベクトル角Δδを算出する(ステップS16)。補正電圧ベクトル角生成部15は、ステップS16で算出した補正電圧ベクトル角Δδを出力する。
実施形態1は、速度変動振幅|Δωm|をフィードバックして、予め記憶されている振動が実使用上問題とならない範囲の速度変動許容値|Δωm|*となるように補正電圧ベクトル角Δδの振幅及び位相を機械角周期毎に調整する。よって、実施形態1によれば、補正電圧ベクトル角Δδを、電流制御部14により出力された平均電圧ベクトル角指令値δ0 *で補正することで、モータ10の制振効果及びピーク電流の低減効果を得ることができる。
実施形態1は、周期的なトルク変動を有する圧縮機等の負荷を駆動するに際し、出力電圧振幅に制限のある弱め磁束制御領域での振動抑制を目的としたトルク制御技術を提供する。実施形態1は、振動抑制だけでなくモータのピーク電流抑制にも効果を発揮するため、過電流保護停止等に至ることなく安定してモータを駆動でき、モータ効率も向上させることができる。
[実施形態2]
実施形態2では、弱め磁束制御領域等の出力電圧が制限される電圧飽和領域において、q軸電流の変動位相をフィードバックする。そして、実施形態2では、マグネットトルク(q軸電流によるトルク)の位相が負荷トルク変動位相と同位相となるように補正電圧ベクトル角の振幅及び位相を機械角周期毎に調整する。
(実施形態2に係る補正電圧ベクトル角生成部)
図5は、実施形態2に係る補正電圧ベクトル角生成部15−2を示すブロック図である。実施形態2に係るモータ制御装置100−2は、補正電圧ベクトル角生成部15−2を有する(図2参照)。実施形態2に係る補正電圧ベクトル角生成部15−2は、速度変動成分分離部15a−2、速度変動位相修正部15b−2、q軸電流目標変動位相算出部15c−2、q軸電流成分分離部15d−2、q軸電流変動位相算出部15e−2、減算器15f−2を有する。また、補正電圧ベクトル角生成部15−2は、位相偏差正規化処理部15g−2、補正電圧ベクトル角振幅算出部15h−2、補正電圧ベクトル角算出部15i−2を有する。
速度変動成分分離部15a−2は、実施形態1の速度変動成分分離部15aと同様に、上記(1−1)式及び(1−2)式により、機械角周期毎に、機械角推定角速度変動Δωmの基本波成分を直交成分である2つのフーリエ係数ωsin(速度変動のsin成分)及びωcos(速度変動のcos成分)に分離する。
速度変動位相修正部15b−2は、実施形態1に係る速度変動位相修正部15eと同様に、上記(4−1)式〜(4−3)式により、速度変動修正位相φωiを算出する。また、速度変動位相修正部15b−2は、実施形態1に係る速度変動位相修正部15eと同様に、上記(5−1)式〜(5−2)式により、位相フィルタ処理を行う。
q軸電流目標変動位相算出部15c−2は、下記(7)式により、q軸電流の目標変動位相θIq *を算出する。ここで、速度変動を抑制するためのq軸電流の変動位相(マグネットトルクの変動位相)は、速度変動位相に対してπ/2だけ遅れた位相となる。
q軸電流成分分離部15d−2は、下記(8−1)式及び(8−2)式により、機械角周期毎に、q軸電流値Iqの基本波成分を直交成分である2つのフーリエ係数Iq_sin(q軸電流のsin成分)及びIq_cos(q軸電流のcos成分)に分離する。基本波成分のフーリエ係数を機械角周期毎に算出することで、q軸電流変動の高調波成分を排除したq軸電流基本波成分を、精度よく抽出することができる。
q軸電流変動位相算出部15e−2は、下記(9)式により、機械角周期毎に取得されるq軸電流変動成分の位相θIqを算出する。
減算器15f−2は、下記(10)式により、q軸電流の目標変動位相θIq *からq軸電流変動成分の位相θIqを減算した位相偏差θIq_err’を算出する。
位相偏差正規化処理部15g−2は、例えば、下記(11)式により、位相偏差θIq_err’を所定の位相範囲に正規化処理した位相偏差θIq_errを算出する。正規化処理は、位相に対して積分制御を適用する際に発生する次の不都合を回避するためのものである。例えば、位相偏差が+π/2[rad]と−3π/2[rad]では、ベクトルとしては同位相であるが、積分制御を実施する場合、増加方向への変化と減少方向への変化といった具合に、調整対象の変化方向と大きさが異なる。この不都合を回避するために、下記(11)式のように、例えば、−3π/2[rad]を+π/2[rad]とするように、位相を−π[rad]〜+π[rad]の範囲に正規化する。
補正電圧ベクトル角振幅算出部15h−2は、例えば、下記(12)式により、位相偏差θIq_errに応じて補正電圧ベクトル角振幅|Δδ|を機械角周期毎に調整する。補正電圧ベクトル角振幅算出部15h−2は、例えば、下記(12)式による積分制御を行う。なお、下記(12)式における“k”は、上記(3)式における“k”と同様である。
補正電圧ベクトル角算出部15i−2は、実施形態1に係る補正電圧ベクトル角算出部15fと同様に、上記(6)式により、補正電圧ベクトル角Δδを算出する。
(実施形態2に係る補正電圧ベクトル角生成処理)
図6は、実施形態2に係る補正電圧ベクトル角生成処理を示すフローチャートである。実施形態2に係る補正電圧ベクトル角生成処理は、弱め磁束制御領域等の出力電圧が飽和した電圧飽和領域において、機械角周期毎に実行される。先ず、補正電圧ベクトル角生成部15−2の速度変動成分分離部15a−2は、上記(1−1)式及び(1−2)式により、機械角推定角速度変動Δωmの基本波成分を、直交成分である2つのフーリエ係数ωsin(速度変動のsin成分)及びωcos(速度変動のcos成分)に分離する(ステップS21)。
次に、速度変動位相修正部15b−2は、上記(4−1)式〜(4−3)式により、速度変動修正位相φωiを算出する(ステップS22)。次に、速度変動位相修正部15b−2は、上記(5−1)式及び(5−2)式による位相フィルタ処理を行う(ステップS23)。次に、q軸電流目標変動位相算出部15c−2は、上記(7)式により、q軸電流の目標変動位相θIq *を算出する(ステップS24)。
次に、q軸電流成分分離部15d−2は、上記(8−1)式及び(8−2)式により、機械角周期毎に、q軸電流値Iqの基本波成分を直交成分である2つのフーリエ係数Iq_sin(q軸電流のsin成分)及びIq_cos(q軸電流のcos成分)に分離する(ステップS25)。次に、q軸電流変動位相算出部15e−2は、上記(9)式により、機械角周期毎に取得されるq軸電流変動成分の位相θIqを算出する(ステップS26)。
次に、減算器15f−2は、上記(10)式により、q軸電流の目標変動位相θIq *からq軸電流変動成分の位相θIqを減算した位相偏差θIq_err’を算出する(ステップS27)。次に、位相偏差正規化処理部15g−2は、上記(11)式により、位相偏差θIq_err’を所定の位相範囲に正規化処理した位相偏差θIq_errを算出する(ステップS28)。
次に、補正電圧ベクトル角振幅算出部15h−2は、上記(12)式により、位相偏差θIq_errに応じて補正電圧ベクトル角振幅|Δδ|を機械角周期毎に算出する(ステップS29)。次に、補正電圧ベクトル角算出部15i−2は、上記(6)式により、補正電圧ベクトル角Δδを算出する(ステップS30)。補正電圧ベクトル角生成部15−2は、ステップS30で算出した補正電圧ベクトル角Δδを出力する。
実施形態2は、q軸電流の変動位相をフィードバックして、マグネットトルク(q軸電流によるトルク)の位相が負荷トルク変動位相と同位相となるように補正電圧ベクトル角の振幅及び位相を機械角周期毎に調整する。よって、実施形態2によれば、マグネットトルクの位相が最適化されるため、速度変動振幅及びモータのピーク電流が抑制される。
[実施形態3]
実施形態2では、ピーク電流の低減効果が得られるように、q軸電流変動位相が速度変動に対してπ/2だけ遅れた位相となるように補正電圧ベクトル角を制御している。
そこで、実施形態3では、弱め磁束制御領域等の出力電圧が飽和した電圧飽和領域において、速度変動振幅|Δωm|をフィードバックする実施形態1と、q軸電流変動位相をフィードバックする実施形態2を切り替えて用いる。そして、実施形態3では、実施形態2の制御方式を実行中に速度変動振幅|Δωm|が速度変動許容値|Δωm|*を上回るときに、実施形態1の制御方式に切り替えて動作させることで、制振効果を優先させることができる。
また、実施形態3では、実施形態1の制御方式を実行中にq軸電流変動位相θIqがq軸電流目標変動位相θIq *より遅れた場合に、実施形態2の制御方式に切り替えて動作する。
(実施形態3に係る補正電圧ベクトル角生成部)
図7は、実施形態3に係る補正電圧ベクトル角生成部15−3を示すブロック図である。実施形態3に係るモータ制御装置100−3は、補正電圧ベクトル角生成部15−3を有する(図2参照)。補正電圧ベクトル角生成部15−3は、速度変動成分分離部15a−3、速度変動振幅算出部15b−3、減算器15c−3、速度変動位相修正部15d−3、q軸電流目標変動位相算出部15e−3、q軸電流成分分離部15f−3を有する。また、補正電圧ベクトル角生成部15−3は、q軸電流変動位相算出部15g−3、減算器15h−3、位相偏差正規化処理部15i−3を有する。また、補正電圧ベクトル角生成部15−3は、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3、補正電圧ベクトル角振幅算出部15k−3、補正電圧ベクトル角算出部15l−3を有する。
速度変動成分分離部15a−3、速度変動振幅算出部15b−3、減算器15c−3、補正電圧ベクトル角振幅算出部15k−3、補正電圧ベクトル角算出部15l−3を含む構成は、実施形態1に係る補正電圧ベクトル角生成部15(図3参照)と同様の機能を有する。速度変動成分分離部15a−3、速度変動位相修正部15d−3、q軸電流目標変動位相算出部15e−3、q軸電流成分分離部15f−3、q軸電流変動位相算出部15g−3、減算器15h−3、位相偏差正規化処理部15i−3、補正電圧ベクトル角振幅算出部15k−3、補正電圧ベクトル角算出部15l−3を含む構成は、実施形態2に係る補正電圧ベクトル角生成部15−2(図5参照)と同様の機能を有する。
補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、機械角周期毎に、下記(13)式により、減算器15c−3が算出した、速度変動振幅|Δωm|から速度変動許容値|Δωm|*を減算した偏差|Δωm|_errが入力される。
また、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、機械角周期毎に、上記(10)式及び(11)式により算出された位相偏差θIq_errが入力される。
そして、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、現在の補正電圧ベクトル角制御方式がq軸電流変動位相フィードバック方式の時、下記(14−1)式が成立する、つまり速度変動振幅|Δωm|が速度変動許容値|Δωm|*よりも大きい場合に、補正電圧ベクトル角制御方式を速度変動振幅フィードバック方式へ切り換える。なお、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、現在の補正電圧ベクトル角制御方式がq軸電流変動位相フィードバック方式の時、下記(14−1)式が成立しない場合には、現在の補正電圧ベクトル角制御方式であるq軸電流変動位相フィードバック方式を継続する。
また、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、現在の補正電圧ベクトル角制御方式が速度変動振幅フィードバック方式の時、下記(14−2)式が成立する、つまりq軸電流変動成分の位相θIqがq軸電流の目標変動位相θIq *よりも遅れている場合に、補正電圧ベクトル角制御方式をq軸電流変動位相フィードバック方式へ切り換える。なお、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、現在の補正電圧ベクトル角制御方式が速度変動振幅フィードバック方式の時、下記(14−2)式が成立しない場合には、現在の補正電圧ベクトル角制御方式である速度変動振幅フィードバック方式を継続する。
そして、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、決定したフィードバック方式をCONTROL_TYPE信号で補正電圧ベクトル角振幅算出部15k−3へ通知する。補正電圧ベクトル角振幅算出部15k−3は、通知されたCONTROL_TYPE信号がq軸電流変動位相フィードバック方式を示す場合には、下記(15−1)式により、位相偏差θIq_errの比例積分制御を行って、補正電圧ベクトル角振幅|Δδ|を機械角周期毎に調整する。
また、補正電圧ベクトル角振幅算出部15k−3は、通知されたCONTROL_TYPE信号が速度変動振幅フィードバック方式を示す場合には、下記(15−2)式により、偏差|Δωm|_errの比例積分制御を行って、補正電圧ベクトル角振幅|Δδ|を機械角周期毎に調整する。
そして、補正電圧ベクトル角算出部15l−3は、機械角位相θm、シフト位相θshift、補正電圧ベクトル角振幅算出部15k−3により算出された補正電圧ベクトル角振幅|Δδ|、速度変動位相修正部15d−3により算出された速度変動修正位相φωiから、上記(6)式により、補正電圧ベクトル角Δδを算出する。なお、シフト位相θshiftは、速度変動修正位相φωiに対する補正電圧ベクトル角Δδの位相である。
(実施形態3に係る補正電圧ベクトル角生成処理)
図8は、実施形態3に係る補正電圧ベクトル角生成処理を示すフローチャートである。実施形態3に係る補正電圧ベクトル角生成処理は、弱め磁束制御領域等の出力電圧が飽和した電圧飽和領域において、機械角周期毎に実行される。先ず、補正電圧ベクトル角生成部15−3の速度変動成分分離部15a−3は、上記(1−1)式及び(1−2)式により、機械角周期毎に、機械角推定角速度変動Δωmの基本波成分を、機械角周期毎に、直交成分である2つのフーリエ係数ωsin(変動成分のsin成分)及びωcos(変動成分のcos成分)に分離する(ステップS31)。
次に、速度変動振幅算出部15b−3は、上記(2)式により、速度変動成分分離部15a−3により算出されたフーリエ係数ωsin及びωcosから、機械角推定角速度変動Δωmの基本波成分の振幅(速度変動振幅|Δωm|)を算出する(ステップS32)。
次に、速度変動位相修正部15d−3は、上記(4−1)式〜(4−2)式により、速度変動のsin成分(ωsin)及びcos成分(ωcos)を算出し、上記(4−3)式により、sin成分(ωsin)及びcos成分(ωcos)の積分結果であるωsin_i及ωcos_iからωcos_i/ωsin_iの逆正接を演算することにより、速度変動修正位相φωiを算出する(ステップS33)。
次に、速度変動位相修正部15d−3は、上記(5−1)式及び(5−2)式による位相フィルタ処理を行う(ステップS34)。
次に、q軸電流目標変動位相算出部15e−3は、上記(7)式により、q軸電流の目標変動位相θIq *を算出する(ステップS35)。次に、q軸電流成分分離部15f−3は、上記(8−1)式及び(8−2)式により、機械角周期毎に、q軸電流値Iqの基本波成分を直交成分である2つのフーリエ係数Iq_sin(q軸電流のsin成分)及びIq_cos(q軸電流のcos成分)に分離する(ステップS36)。次に、q軸電流変動位相算出部15g−3は、上記(9)式により、機械角周期毎に取得されるq軸電流変動成分の位相θIqを算出する(ステップS37)。
次に、減算器15c−3は、上記(13)式により、速度変動偏差|Δωm|_errを算出する(ステップS38)。次に、減算器15h−3は、上記(10)式により、q軸電流の目標変動位相θIq *からq軸電流変動成分の位相θIqを減算した位相偏差θIq_err’を算出する(ステップS39)。次に、位相偏差正規化処理部15i−3は、上記(11)式により、位相偏差θIq_err’を所定の位相範囲に正規化処理した位相偏差θIq_errを算出する(ステップS40)。
次に、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、現在の補正電圧ベクトル角制御方式がq軸電流変動位相フィードバック方式であるか否かを判定する(ステップS41)。補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、現在の補正電圧ベクトル角制御方式がq軸電流変動位相フィードバック方式である場合(ステップS41:Yes)、ステップS42へ処理を移す。一方、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、現在の補正電圧ベクトル角制御方式が速度変動振幅フィードバック方式である場合(ステップS41:No)、ステップS44へ処理を移す。
ステップS42では、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、速度変動偏差|Δωm|_err>0であるか否かを判定する。補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、速度変動偏差|Δωm|_err>0である場合(ステップS42:Yes)、ステップS43へ処理を移す。一方、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、速度変動偏差|Δωm|_err≦0である場合(ステップS42:No)、ステップS46へ処理を移す。ステップS43では、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、q軸電流変動位相フィードバック方式から速度変動振幅フィードバック方式へ、補正電圧ベクトル角制御方式を切り替え、CONTROL_TYPE信号で補正電圧ベクトル角振幅算出部15k−3へ通知する。
他方、ステップS44では、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、q軸電流変動位相偏差θIq_err>0であるか否かを判定する。補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、q軸電流変動位相偏差θIq_err>0である場合(ステップS44:Yes)、ステップS45へ処理を移す。一方、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、q軸電流変動位相偏差θIq_err≦0である場合(ステップS44:No)、ステップS46へ処理を移す。ステップS45では、補正電圧ベクトル角制御方式切替処理部15j−3は、速度変動振幅フィードバック方式からq軸電流変動位相フィードバック方式へ、補正電圧ベクトル角制御方式を切り替え、CONTROL_TYPE信号で補正電圧ベクトル角振幅算出部15k−3へ通知する。
ステップS46では、補正電圧ベクトル角振幅算出部15k−3は、CONTROL_TYPE信号で通知された補正電圧ベクトル角制御方式に応じた補正電圧ベクトル角振幅|Δδ|を、上記(15−1)式又は(15−2)式により算出する。そして、補正電圧ベクトル角算出部15l−3は、機械角位相θm、シフト位相θshift、補正電圧ベクトル角振幅算出部15k−3により算出された補正電圧ベクトル角振幅|Δδ|、速度変動位相修正部15d−3により算出された速度変動修正位相φωiから、上記(6)式により、補正電圧ベクトル角Δδを算出する(ステップS47)。補正電圧ベクトル角生成部15−3は、ステップS47で算出した補正電圧ベクトル角Δδを出力する。
実施形態3は、補正電圧ベクトル角振幅|Δδ|を、q軸電流変動位相フィードバック方式で生成しているとき速度変動振幅|Δωm|に応じて速度変動振幅フィードバック方式に切り替え、速度変動振幅フィードバック方式で生成しているときq軸電流変動位相θIqに応じてq軸電流変動位相フィードバック方式に切り替えて選択することで、速度変動振幅及びモータのピーク電流をより適切に抑制することができる。
上記の実施形態では、シングルロータリーコンプレッサやツインロータリーコンプレッサ等の圧縮機に用いるIPMモータを制御対象とし、モータに流れる電流から角速度及び回転角度をセンサレス方式で推定する構成とする。しかし、開示の技術は、ロータの回転位置をセンサ(エンコーダ)で直接検出する構成において、実施形態において説明した制振制御を行うことにより、周期的な回転速度変動を抑制することができる。
上記の実施形態における各処理の一部を公知の方法で行うことができる場合がある。また、上記の実施形態における各処理を示すフローチャートにおいて、最終結果へ影響を与えない(つまり最終結果が同一である)限りにおいて処理途中のステップの実行順序を入れ替える、もしくは、ステップを並行して実行することができる。この他、上記及び図示の具体的名称、処理手順、制御手順、各種のデータやパラメータを含む情報については、一例を示すに過ぎず、特記する場合を除いて適宜変更することができる。
開示の技術のより広範な態様は、上記のように表しかつ記述した特定の詳細及び代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。