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JP6695302B2 - リチウム空気二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウム空気二次電池に関する。
正極活物質として空気中の酸素を用いるリチウム空気二次電池は、電池外部から常に酸素が供給され、電池内に大量の負極活物質である金属リチウムを充填することができるため、電池の単位体積当たり非常に大きな放電容量を示すことが報告されている。
これまで、非特許文献1や非特許文献2に報告されているように、正極であるガス拡散型空気極に触媒を添加する、あるいは空気極にガス拡散層を積層させることにより、放電容量、サイクル特性などの電池性能を改善する試みがなされている。
例えば、空気極の電極触媒として、非特許文献1ではSnO2、非特許文献2では主に酸化鉄(Fe23)、コバルト酸化物(Co34)などの遷移金属酸化物が検討されている。
B. Wang, et al., "Graphene-supported SnO 2 nanoparticles prepared by a solvothermal approach for an enhanced electrochemical performance in lithium-ion batteries", Nanoscale Research Lett., 2012, 7, 215. Aurelie Debart, et al., "An O2 cathode for rechargeable lithium batteries: The effect of a catalyst", Journal of Power Sources, Elsevier B.V., 2007, 174, 1177.
しかしながら、非特許文献1の二次電池では、SnO2を添加したセルが、初回放電容量1542mAh/gを示し、触媒無添加のセルと比較して、3倍に向上したが、放電容量は小さい。10サイクル後の放電容量維持率については約37%と比較的高いが、実際の二次電池として使用するには放電容量が小さく、サイクル特性が乏しい。
一方、非特許文献2では、9種類の触媒を検討し、空気極に含まれるカーボンの重量当たり1000〜3000mAh/gと比較的大きな放電容量が得られている。しかしながら、例えば初回放電容量が最も大きかったFeは、充放電を繰り返すと、放電容量の低下が著しく、10サイクルで容量維持率は2%となる。非特許文献2の二次電池でも著しい容量の減少が見られ、二次電池としての十分な特性は得られていない。
リチウム空気二次電池の高寿命化、高効率化が課題である。
なお、非特許文献1及び2を含む多くの文献の報告では、リチウム空気二次電池の有機電解液として、LiClO、LiPF、LiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)などのリチウム塩を、炭酸プロピレンなどの炭酸エステル系溶媒に1.0mol/l程度の濃度で溶解した溶液が、用いられている。
本発明は、リチウム空気二次電池を、高容量の二次電池として作動させ、高容量、高寿命を実現することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の特徴に係るリチウム空気二次電池は、カーボンを含む空気極と、金属リチウムまたはリチウム含有物質を含む負極と、空気極と負極に接する有機電解質とを含み、有機電解質は、金属6,6’−bis(benzoylamino)−2,2’−bipyridine(babp)錯体を含む。
本発明では、金属babp錯体の金属がCu、Ni、Co及びZnから選択されることが好ましい。
有機電解液中での金属babp錯体濃度が高い程、優れた電池特性が得られるため、本発明では、金属錯体が1.0〜50mmol/Lの濃度で電解液に溶解していることが好ましい。
さらに、有機電解質は、有機電解液であって、金属錯体が、飽和濃度で有機電解液に溶解していることが好ましい。
本発明のリチウム空気二次電池は、金属babp錯体を含むことを特徴とする。リチウム空気二次電池は、金属babp錯体として、Cu、Ni、Co及びZnから選択される金属を含むことを特徴とする。リチウム空気二次電池は、充電反応電圧が低減し、放電電圧が上昇することで、電池特性の改善を達成することができる。
本発明のリチウム空気二次電池の構成を採用することによって、高容量、高寿命リチウム空気二次電池を提供することが可能となる。
本発明の実施の形態によるリチウム空気二次電池の基本的な概略図である。 実施例において測定に用いたリチウム空気二次電池の構造を示すための概略断面図である。 実施例1のリチウム空気二次電池の充放電曲線を示す図である。 実施例において用いた電解液添加剤である金属錯体を示す構造式である。
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
以下に、図面を参照しつつ、本願に係るリチウム空気二次電池について詳細に説明する。
[リチウム空気二次電池の構成]
本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池100は、図1に示されるように、空気極102、負極104及び電解質(例えば有機電解質)106を少なくとも含み、空気極102が正極として機能する。また、これらの空気極102と負極104との間に電解質106が配置されうる。電解質106は、金属6,6’−bis(benzoylamino)−2,2’−bipyridine(babp)錯体を含むことを特徴とする。
空気極102は、触媒及び導電性材料を構成要素に含むことができる。また、空気極102には、触媒及び導電性材料を一体化するための結着剤を含むことが好ましい。負極104は金属リチウム又はリチウムイオンを放出及び吸収することができるリチウム含有合金などの物質を構成要素とすることができる。
以下に上記の各構成要素について説明する。なお、本明細書において、電解液とは、電解質が液体形態である場合をいう。
(I)電解質
本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池100における電解質106は、添加剤として金属babp錯体を少なくとも含む。より具体的には、リチウム空気二次電池100では、電解質106は、Li塩と有機溶媒を含み、かつ、添加剤として金属babp錯体を含む。
本明細書では、金属babp錯体は、図4を有する化合物である。
本発明の一実施形態では、金属babp錯体の金属として、Cu、Ni、Co、及び、Znから選択されることが好ましい。
本発明の実施の形態では、金属babp錯体は、1種類で用いてもよく、または2種以上混合して用いてもよい。金属babp錯体を2種以上混合する場合の、混合割合は特に限定されず、どのような割合であってもよい。
電解質106は、上記金属babp錯体と共に、Li塩を含む。Li塩は、リチウムを含む金属塩から供給される。金属塩の具体例は、例えば、溶質の金属塩には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムトリフルオロメタンスルホニルアミド(LiTFSA)[(CFSONLi]などを挙げることができる。
また、電解質106は溶媒を含む。溶媒は、例えば、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸メチルイソプロピル(MIPC)、炭酸メチルブチル(MBC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸エチルイソプロピル(EIPC)、炭酸エチルブチル(EBC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸ジイソプロピル(DIPC)、炭酸ジブチル(DBC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸1、2−ブチレン(1、2−BC)などの炭酸エステル系溶媒、1、2−ジメトキシエタン(DME)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、などのエーテル系溶媒、γ−ブチロタクトン(GBL)などのラクトン系溶媒、或いはこれらの中から二種類以上を混合した溶媒を挙げることができる。本発明の実施の形態では、混合溶媒を用いる場合の混合割合は、特に限定されない。
有機電解液中の金属babp錯体は、有機電解液量を基準に、1.0〜50mmol/L以上の濃度で添加され、好ましくは飽和濃度で存在する。なお、飽和濃度については、吸光度測定により求められる。有機電解液中での金属babp錯体濃度が高いほど優れた電池特性が得られるため、本発明の実施の形態では、金属babp錯体は添加する有機電解液の飽和濃度で添加されていることが望ましい。
(II)空気極(正極)
本発明の実施の形態では、空気極102は、導電性材料を少なくとも含み、必要に応じて触媒及び/又は結着剤等を含むことができる。
(II−1)導電性材料
本発明の実施の形態に係る空気極102に含まれる導電性材料は、カーボンであることが好ましい。特に、本発明の実施の形態において導電性材料としては、以下のものに限定されないが、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック類、活性炭類、グラファイト類、カーボンファイバー類、カーボンシート、カーボンクロス等を挙げることができる。また、これらのカーボンは、例えば市販品として、又は合成により入手することが可能である。
(II−2)触媒
本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池100では、空気極102の触媒は、酸化マンガン(MnO)、ルテニウム酸化物(RuO)等の酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)の両反応に対して高活性な、従来から公知の酸化物触媒であれば、特に限定されない。具体的に空気極102の触媒は、MnO、Mn、MnO、FeO、Fe、FeO、CoO、Co、NiO、NiO、V、WOなどの単独酸化物や、La0.6Sr0.4MnO、La0.6Sr0.4FeO、La0.6Sr0.4CoO、La0.6Sr0.4CoO、Pr0.6Ca0.4MnO、LaNiO、La0.6Sr0.4Mn0.4Fe0.6などのペロブスカイト型構造を有する複合酸化物を用いることができる。これらの触媒は、固相法や液相法などの公知のプロセスを用いて合成することができる。
また、空気極102に添加される触媒として、中心金属にMn、Fe、Co、Ni、V、W等の少なくとも一種の遷移金属を含むポルフィリンやフタロシアニンなどの大環状金属錯体も用いることができる。これらの金属錯体は、カーボンと混合後、不活性ガス雰囲気中で熱処理を行い活性化させてもよい。
本発明の実施の形態に係る空気極102に添加される触媒としては上記の化合物系だけでなく、Pt、Au、Pdなどの貴金属、及びCo、Ni、Mnなどの遷移金属の単体金属を用いてもよい。例えば、これらの金属をカーボン上に高分散担持させることにより高い活性を発現することができる。
本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池100の空気極102では、電解液/電極触媒/ガス(酸素)の三相部分において、電極反応が進行する。即ち、空気極102中に有機電解液106が浸透し、同時に大気中の酸素ガスが供給され、電解液−電極触媒−ガス(酸素)が共存する三相部位が形成される。電極触媒が高活性であれば、酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)がスムーズに進行し、電池特性は大きく向上することになる。
空気極102での放電反応は次のように表すことができる。
2Li+(1/2)O+2e→LiO …式(1)
2Li+O+2e→Li …式(2)
上式中のリチウムイオン(Li)は、負極104から電気化学的酸化により有機電解液106中に溶解し、この有機電解液106中を空気極102表面まで移動してきたものである。また、酸素(O)は、大気(空気)中から空気極102内部に取り込まれたものである。なお、負極104から溶解する材料(Li)、空気極102で析出する材料(Li)、及び空気(O)を、図1の構成要素と共に示した。
空気極(正極)102の電極触媒として用いることができる酸化物、特に酸化マンガン(MnO)、酸化ルテニウム(RuO)などは、マンガン及びルテニウムが、+4、+3などの価数を有するイオンで存在しうる。また、これらの酸化物を合成する際の条件によっては、酸化マンガン、酸化ルテニウム等の酸化物内に酸素を取り込むことができる空孔(本明細書では酸素空孔とも称する)が存在し、活性サイトとして機能すると考えられる。そのため、このような酸化物触媒は、正極活物質である酸素との相互作用が強く、多くの酸素種を酸化物表面上に吸着でき、又は酸素空孔内に酸素種を吸蔵することができる。
このように、酸化物表面上に吸着された、又は酸素空孔内に吸蔵された酸素種は、上記式(1)及び式(2)の酸素源(活性な中間反応体)として酸素還元反応に使用され、上記反応が容易に進むようになる。また、式(1)及び式(2)の逆反応である充電反応に対しても、上記の酸化物は活性を有している。従って、電池の充電、つまり、空気極102上での酸素発生反応も効率よく進行する。このように、酸化マンガン、酸化ルテニウムなどの酸化物は、電極触媒として有効に機能する。
本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池100では、電池の効率を上げるために、電極反応を引き起こす反応部位(上記の電解液/電極触媒/空気(酸素)の三相部分)がより多く存在することが望ましい。このような観点から、本発明の実施の形態では、上述の三相部位が電極触媒表面に多量に存在することが重要であり、使用する触媒は比表面積が高い方が好ましい。例えば、焼成後の比表面積が10m/g以上であることが好適である。
(II−3)結着剤(バインダー)
空気極102は結着剤(バインダー)を含むことができる。この結着剤は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリブタジエンゴムなどを例として挙げることができる。これらの結着剤は、粉末として又は分散液として用いることができる。
本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池100において、空気極102中での触媒含有量は、空気極102の重量を基準に、例えば0を越え、100重量%以下であることが望ましい。その他の成分の割合は、従来のリチウム空気二次電池と同様である。
(II−4)空気極の調製
空気極102は以下のように調製することができる。触媒である酸化物粉末、カーボン粉末及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)のようなバインダー粉末を所定量混合し、この混合物をチタンメッシュ等の支持体上に圧着することにより、空気極102を成形することができる。また、前述の混合物を有機溶剤等の溶媒中に分散してスラリー状にし、金属メッシュ又はカーボンクロスやカーボンシート上に塗布して乾燥することによって、空気極102を形成することができる。
また、電極の強度を高め電解液の漏洩を防止するために、冷間プレスだけでなく、ホットプレスを適用することによっても、より安定性に優れた空気極を作製することができる。
空気極102は、これを構成する電極の片面は大気に曝され、もう一方の面は電解質106と接する。
(III)負極
本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池100は、負極104に負極活物質を含む。この負極活性物質は、リチウム二次電池の負極材料として用いることができる材料であれば特に制限されない。例えば、金属リチウムを挙げることができる。或いは、リチウム含有物質として、リチウムイオンを放出及び吸蔵することができる物質である、リチウムと、シリコン又はスズとの合金、或いはLi2.6Co0.4Nなどのリチウム窒化物を例として挙げることができる。
本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池100の負極104は、公知の方法で形成することができる。例えば、リチウム金属を負極とする場合には、複数枚の金属リチウム箔を重ねて所定の形状に成形することで、負極を作製すればよい。
なお、上記のシリコン又はスズの合金を負極104として用いる場合、負極104を合成する時にリチウムを含まないシリコン又はスズなどを用いることもできる。しかし、この場合には、空気電池の作製に先立って、化学的手法又は電気化学的手法(例えば、電気化学セルを組んで、リチウムとシリコン又はスズとの合金化を行う方法)によって、シリコン又はスズが、リチウムを含む状態にあるように処理しておく必要がある。具体的には、作用極にシリコン又はスズを含み、対極にリチウムを用い、有機電解液106中で還元電流を流すことによって合金化を行う等の処理をしておくことが好ましい。ここで、放電時の負極104(金属リチウム)の反応は以下のように表すことができる。
(放電反応)
Li→Li+e …式(3)
なお、充電時の負極においては、式(3)の逆反応であるリチウムの析出反応が起こる。
(IV)他の要素
本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池100は、上記構成要素に加え、セパレータ、電池ケース、金属メッシュ(例えばチタンメッシュ)などの構造部材、その他のリチウム空気二次電池100に要求される要素を含むことができる。これらは、従来公知のものを使用することができる。
(V)リチウム空気二次電池の調製
本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池100は、上述した通り、少なくとも空気極(正極)102、負極104及び電解質106を含み、例えば図1に示されるように、空気極102と負極104の間に上述した金属錯体を含有する電解質106を狭持するように構成される。このような構成のリチウム空気二次電池100は、従来型の二次電池と同様に調製することができる。
一実施形態では、例えば図2のような円柱形のリチウム空気二次電池100を調製することができる。具体的には、まず、空気極102を、絶縁被覆された空気極支持体2に配置して固定する。負極104は、負極支持体11に固定する。空気二次電池の内部(空気極102と負極104の間となる部分)に、上述したような金属錯体を含有した電解質106を充填し、負極104が空気極の大気と接する面と逆の面に配置されるように負極支持体11を被せて空気二次電池全体を固定する。
上記構成要素に加え、空気極102と負極104の間となる部分にはセパレータ5等の部材を配置することができ、その他絶縁部材、Oリング9、固定具などを適宜配置することができる。
本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池100は、電気自動車やスマートフォン等のモバイル機器の駆動を大幅に長時間化することが期待できる。
[実施例]
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池100についての実施例を詳細に説明する。なお、本発明の実施の形態は下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
(実施例1)
[Cu(babp)を含む電解液の調製]
市販の2,2’−ビピリジン−6,6’−ジアミン(東京化成工業社製)に塩化ベンゾイル(東京化成工業)を加え、ショッテン・バウマン反応によりbabpHを得た。得られたbabpHと酢酸銅(II)一水和物(東京化成工業社製)をメタノール中にて錯体形成反応させ、ベンゼン中にて再結晶化させることでCu(babp)を得た。
得られたCu(babp)を有機電解液106に混合した。混合する際、超音波洗浄機を用いて最大出力で約2時間の分散を行った。また、有機電解液106はLiTFSAを有機溶媒TEGDMEに1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。有機電解液106に、添加剤としてCu(babp)を50mmol/Lを混合した。
リチウム空気二次電池セルを以下の手順で作製した。
ケッチェンブラック粉末及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)粉末を9:1の重量比で、ミキサーを用いてN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)に十分混合し、スラリーを作製した。このスラリーを直径17mmのカーボンペーパーに塗布し、90℃の真空乾燥機に入れ、一晩乾燥させ、ガス拡散型の空気極を得た。
図2に示す断面構造を有する円柱形のリチウム空気二次電池セルを作製した。図2は、リチウム空気二次電池セルの断面図である。リチウム空気電池セルは、露点が−60℃以下の乾燥空気中で、以下の手順で作製した。
上記の方法で調製した空気極(正極)102を、PTFEで被覆された空気極支持体2の凹部に配置し、空気極固定用PTFEリング3で固定した。なお、空気極102と空気極支持体2が接触する部分は、電気的接触をとるためにPTFEによる被覆を施さないものとした。
次に、空気極102と大気が接触する面とは逆の面に、リチウム二次電池用のセパレータ5を凹部の底面に配置した。続いて、図2に示すような負極固定用座金7に負極104である厚さ150μmの4枚の金属リチウム箔を同心円上に重ねて圧着した。続いて、負極固定用PTFEリング6を、空気極102を設置する凹部と対向する逆の凹部に配置し、中央部に金属リチウムが圧着された負極固定用座金7を更に配置した。続いて、Oリング9を、図2に示すように空気極支持体2の底部に配置した。
次に、セルの内部(空気極(正極)102と負極104との間)に、有機電解液106を充填し、負極支持体11を被せて、セル固定用ねじ12で、セル全体を固定した。有機電解液106は、上述のCoサレン錯体含有有機電解液(1mol/L LiTFSA/TEGDME溶液)を用いた。
続いて、空気極端子(正極端子)4を空気極支持体2に設置し、負極端子13を負極支持体11に設置した。
電池のサイクル試験は、充放電測定システム(Bio Logic社製)を用いて、空気極102の重量当たりの電流密度で100mA/gを通電し、開回路電圧から電池電圧が、2.0Vに低下するまで放電電圧の測定を行った。電池の充電試験は、放電時と同じ電流密度で、電池電圧が、4.4Vに達するまで行った。電池の充放電試験は、通常の生活環境下で行った。充放電容量は空気極(カーボン+酸化物+PVDF)重量当たりの値(mAh/g)で表した。
電流密度100mA/gを通電した場合の初回の放電及び充電曲線を図3に示す。表1に、本実施例の性能を示した。
Figure 0006695302
図3より、Cu(babp)含有1mol/L LiTFSA/TEGDME溶液を有機電解液に用いたときの電流密度100mA/g時の初回放電容量は7778mA/g、であった。このCu(babp)含有1mol/L LiTFSA/TEGDME溶液を有機電解液106として使用したリチウム空気二次電池100は、非特許文献1及び2で報告されたものよりも初回放電容量がそれ以上、且つ、10サイクル目における容量維持率が82%と高いことがわかった。初回放電容量及び初回放電容量に対する10サイクル目における放電容量維持率を表1に示す。
このように、Cu(babp)含有1mol/LLiTFSA/TEGDME溶液を有機電解液106として使用したリチウム空気二次電池100は、電池特性を向上できることが確認された。
(実施例2)
実施例1と同様の手順で、有機電解液106に、添加剤としてCu(babp)を1.0mmol/Lを混合した際の測定結果を表1に示す。表1より、添加濃度が低い場合においても、初回放電容量が3436mAh/g、放電容量維持率が58%と電池特性を向上できることが確認された。
(実施例3)
[Ni(babp)を含む電解液の調製]
実施例1と同様にして得られたbabpHと酢酸ニッケル(II)四水和物(和光純薬工業社製)を錯体形成反応させることでNi(babp)を得た。
得られたNi(babp)を、有機電解液106に50mmol/Lを有機電解液に混合した。他の条件は、すべて実施例1と同様にして、セルを作製し、電池特性の評価を行った。
本実施例の測定結果を、表1に示す。表1より、初回放電容量は8140mAh/g、放電容量維持率が89%と高い維持率を示した。このように、有機電解液106の添加剤としてNi(babp)を用いた場合においてもリチウム空気二次電池100の電池特性を向上できることが確認された。
(実施例4)
実施例3と同様の手順で、有機電解液106に、添加剤としてNi(babp)を1.0mmol/Lを混合した際の測定結果を表1に示す。表1より、添加濃度が低い場合においても、初回放電容量が3340mAh/g、放電容量維持率が51%と電池特性を向上できることが確認された。
(実施例5)
[Co(babp)を含む電解液の調製]
実施例1と同様にして得られたbabpHと酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬工業社製)、さらに、水酸化カリウム(関東化学社製)を加え、錯体形成反応させることでCo(babp)を得た。
得られた50mmol/LのCo(babp)を、有機電解液106に混合した。他の条件は、すべて実施例1と同様にして、セルを作製し、電池特性の評価を行った。
本実施例の測定結果を、表1に示す。表1より、初回放電容量は8895mAh/g、放電容量維持率が90%と高い維持率を示した。このように、有機電解液106の添加剤としてCo(babp)を用いた場合においてもリチウム空気二次電池100の電池特性を向上できることが確認された。
(実施例6)
実施例5と同様の手順で、有機電解液106に、添加剤として1.0mmol/LのCo(babp)を混合した際の測定結果を表1に示す。表1より、添加濃度が低い場合においても、初回放電容量が4246mAh/g、放電容量維持率が82%と電池特性を向上できることが確認された。
(実施例7)
[Zn(babp)を含む電解液の調製]
実施例1と同様にして得られたbabpHと酢酸亜鉛(II)二水和物(和光純薬工業社製)をテトラヒドロフラン中にて錯体形成反応させることでZn(babpH)(OAc)を得た。得られたZn(babpH)(OAc)を減圧環境中で280℃に加熱することでZn(babp)を得た。
得られた50mmol/LのZn(babp)を、有機電解液106に混合した。他の条件は、すべて実施例1と同様にして、セルを作製し、電池特性の評価を行った。
本実施例の測定結果を、表1に示す。表1より、初回放電容量は7783mAh/g、放電容量維持率が55%と高い維持率を示した。このように、有機電解液106の添加剤としてZn(babp)を用いた場合においてもリチウム空気二次電池100の電池特性を向上できることが確認された。
(実施例8)
実施例7と同様の手順で、有機電解液106に、添加剤として1.0mmol/LのZn(babp)を混合した際の測定結果を表1に示す。表1より、添加濃度が低い場合においても、初回放電容量が3842mAh/g、放電容量維持率が37%と電池特性を向上できることが確認された。
(比較例1)
有機電解液として1mol/lのLiTFSA/TEGDME溶液を用いて、リチウム空気二次電池セルを実施例1と同様にして作製した。有機電解液以外のリチウム空気二次電池100の作製条件及びサイクル試験の条件は、実施例1と同様である。
本比較例の初回充放電結果を、図3に示す。図3より、電流密度100mA/g時の初回放電容量は、742mAh/gを示した。また、初回放電容量に対する10サイクル目における放電容量維持率を表1に示す。表1より、放電容量維持率は4%と低い維持率を示した。
以上の結果より、本発明の実施の形態のように金属(babp)錯体を添加した有機電解液106を使用したリチウム空気二次電池100は、公知の材料よりも、電流密度特性に優れており、リチウム空気二次電池用電解液添加剤として有効であることが確認された。本発明の実施の形態に係るリチウム空気二次電池100は、鉛蓄電池やリチウムイオン電池などの従来の二次電池よりも小型、軽量でかつ遙かに大きい放電容量を実現できる。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
有機電解液の添加剤として金属(babp)錯体を用いることにより、高容量、高寿命なリチウム空気二次電池を作製することができ、様々な電子機器や自動車等の駆動源として有効利用することができる。
2 正極支持体(PTFE被覆)
3 正極固定用リング(PTFEリング)
4 空気極端子
5 セパレータ
6 負極固定用リング(PTFEリング)
7 負極固定用座金
9 Oリング
11 負極支持体
12 セル固定ねじ(PTFE被覆)
13 負極端子
100 リチウム空気二次電池
102 空気極
104 負極
106 電解質(有機電解液)

Claims (4)

  1. カーボンを含む空気極と、
    金属リチウムまたはリチウム含有物質を含む負極と、
    前記空気極と前記負極に接する有機電解質とを含み、
    前記有機電解質は、金属6,6’−bis(benzoylamino)−2,2’−bipyridine(babp)錯体を含むことを特徴とするリチウム空気二次電池。
  2. 前記金属錯体の金属がCu、Ni、Co及びZnから選択されることを特徴とする請求項1に記載のリチウム空気二次電池。
  3. 前記金属錯体が1.0〜50mmol/Lの濃度で添加された有機電解質を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム空気二次電池。
  4. 前記有機電解質は、有機電解液であって、
    前記金属錯体が飽和濃度で前記有機電解液に溶解していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のリチウム空気二次電池。
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